(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記タンデム圧延機の最初の圧延スタンド入側において、前記熱間圧延後の鋼板を200℃以上500℃以下に予備加熱した後、前記熱間圧延後の鋼板を温間圧延する請求項2に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、最終冷間圧延の圧下率(以下「トータル圧下率」とも称する)を上げると、鉄損が低減することが知られている。一方、産業用モータの運転時、高調波成分が重なり周波数が増加する。その結果、同じ最終冷間圧延の圧下率で製造した鋼板でも、表皮効果によって鋼板表層に磁束が集中し、鉄損は増加するため、モータ効率は劣化する。鋼板表層においてはヒステリシス損の増加が著しいことが知られており、高磁磁束密度でも高周波鉄損が低く、ヒステリシス損も低い特性が強く望まれる。そのためには、鋼板表層近傍の集合組織を低コストで生産性を損なうことなく改善する技術が必要である。しかしながら、鋼板表層の集合組織を、低コストで生産性を損なうことなく、容易に改善して板厚方向の磁束分布を均一化する技術は確立されていなかった。
【0009】
一方で、高周波での鉄損を低減するために、合金元素を多量に添加すると、加工硬化による圧延荷重が増加して圧延が困難になる。この観点からタンデム圧延よりもゼンジミア圧延機による圧延が一般的である。しかしながらタンデム圧延機に比べるとゼンジミア圧延機は生産性が低いため、コスト面でタンデム圧延機に劣っていた。
【0010】
また、無方向性電磁鋼板の表層と内層との集合組織の差が大きく異なると、歪感受性が高くなり、打ち抜き加工等の剪断加工後に歪の分布が広がるため、焼鈍を施し、歪の分布を解消する必要があり、高コスト化に繋がる。また、バリ等も発生し易くなる。
【0011】
これらの観点を鑑み、本発明者らは、生産性が高くコスト面で優れるタンデム圧延機に着目して、温間圧延による磁気特性向上、圧延荷重の軽減、及び加工性について鋭意検討を重ねてきた。
【0012】
その結果、最終冷間圧延工程において、最終冷間圧延の圧下率(トータル圧下率)、温間圧延と冷間圧延との圧下率のバランス、及び各圧延温度を所定範囲にして製造することで、低コストで生産性を損なうことなく、磁気特性及び加工性を向上できることを見出した。特に、タンデム圧延機による温間圧延では、主に鋼板表層の集合組織を改善し、板厚方向の磁束分布(つまり集合組織)を均一化できる知見を得ることができた。
【0013】
そこで、本発明の課題は、かかる点に鑑みてなされたものであり、高磁束密度における高周波数鉄損が低く、かつ加工性に優れた無方向性電磁鋼板、および、その無方向性電磁鋼板を低コストで生産性良く製造する無方向性電磁鋼板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述したように、本発明では、タンデム圧延機による最終冷間圧延工程において、最終冷間圧延の圧下率(トータル圧下率)、温間圧延と冷間圧延との圧下率のバランス、及び各圧延温度を所定範囲とすることにより、鋼板表層近傍の集合組織を制御し、板厚方向の磁束分布(つまり集合組織)を均一化する。つまり、鋼板表層の{100}面近傍の集積度を増加させ、板厚方向の磁束分布(つまり集合組織)を均一化することにより、ヒステリシス損を低減できる。その結果、同じ最終冷間圧延の圧下率で製造した鋼板でも、高磁束密度における高周波鉄損を低減できるようになる。また、打ち抜き加工等の剪断加工後の歪分布の広がりおよびバリの発生が低減でき、高い加工性が得られる。本発明の要旨は、以下の通りである。
【0015】
[1]
質量%で
2.5%≦Si≦5.0%、
0.1%≦Al≦2.0%、
0.1%≦Mn≦2.0%、
P≦0.02%、
0.001%≦C≦0.005%、
0.001%≦N≦0.005%、
S≦0.005%、
Cu≦0.1%、
Ni≦0.1%、
並びに、残部としてFeおよび不純物元素を含有し、
鋼板表面から1/10板厚の部分の集合組織の結晶方位分布関数ODFにおけるφ
2=45°断面の10°≦φ
1≦35°、および0°≦Φ≦10°の集積度の平均値I(s)が3.5以上であり、
鋼板表面から1/2板厚の部分の集合組織の結晶方位分布関数ODFにおけるφ
2=45°断面の10°≦φ
1≦35°、および0°≦Φ≦10°の集積度の平均値I(c)が4.0以上であり、
かつ前記集積度の平均値I(s)と前記集積度の平均値I(c)との差が下記式(1)を満足する無方向性電磁鋼板。
式(1): 0.0<|I(c)−I(s)|≦1.0
【0016】
[2]
質量%で
2.5%≦Si≦5.0%、
0.1%≦Al≦2.0%、
0.1%≦Mn≦2.0%、
P≦0.02%、
0.001%≦C≦0.005%、
0.001%≦N≦0.005%、
S≦0.005%、
Cu≦0.1%、
Ni≦0.1%、
を満たし、残部としてFeおよび不純物元素を含有するスラブを、熱間圧延する熱間圧延工程と、
複数の圧延スタンドを有するタンデム圧延機により、熱間圧延後の鋼板を200℃以上500℃以下で温間圧延した後、100℃以下で冷間圧延して、最終板厚とする最終冷間圧延工程であって、下記式(2)で表される最終冷間圧延の圧下率を85%以上95%以下、下記式(3)で表される温間圧延の圧下率を30%以上、下記
式(4)で表される冷間圧延の圧下率を40%以上とする最終冷間圧延工程と、
を有する無方向性電磁鋼板の製造方法。
式(2): 最終冷間圧延の圧下率(%)=(t
0−t
f)/t
0×100
(式(2)中、t
0:200℃以上500℃以下の温間圧延開始時の鋼板板厚(mm)、t
f:鋼板の最終板厚(mm))
式(3): 温間圧延の圧下率(%)=(t
0−t
c)/t
0×100
(式(3)中、t
0:200℃以上500℃以下の温間圧延開始時の鋼板板厚(mm)、t
c:100℃以下の冷間圧延開始時の鋼板板厚(mm))
式(4): 冷間圧延の圧下(%)=(t
c−t
f)/t
c×100
(式(4)中、t
c:100℃以下の冷間圧延開始時の鋼板板厚(mm)、t
f:鋼板の最終板厚(mm))
【0017】
[3]
前記タンデム圧延機の最初の圧延スタンド入側において、前記熱間圧延後の鋼板を200℃以上500℃以下に予備加熱した後、前記熱間圧延後の鋼板を温間圧延する請求項2に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高磁束密度における高周波数鉄損が低く、かつ加工性に優れた無方向性電磁鋼板、および、その無方向性電磁鋼板を低コストで生産性良く製造する無方向性電磁鋼板の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
<無方向性電磁鋼板>
本発明の無方向性電磁鋼板は、質量%で、2.5%≦Si≦5.0%、0.1%≦Al≦2.0%、0.1%≦Mn≦2.0%、P≦0.02%、0.001%≦C≦0.005%、0.001%≦N≦0.005%、S≦0.005%、Cu≦0.1%、Ni≦0.1%、並びに、残部としてFeおよび不純物元素を含有する。ただし、本発明の無方向性電磁鋼板は、P、S、Cu、Niの各元素を含まない鋼板も含む。また、本発明の無方向性電磁鋼板は、Si、Al、Mn、P、C、N、S、Cu、およびNiを上記範囲で含有し、かつ残部がFeおよび不純物元素からなる鋼板であることがよい。
【0022】
以下、本発明の無方向性電磁板の成分組成の詳細を説明する。なお、鋼板の成分組成について、「%」は「質量%」である。
【0023】
(2.5≦Si≦5.0%)
Siは、鋼板の固有抵抗を増加させ、渦電流損を低減する作用を呈する。また、Siは、ヒステリシス損を低減する作用も有する。このため、Siを積極添加することが望ましく、Si含有量は2.5%以上が必要である。一方、Si含有量が5.0%を超えると、温間圧延での圧延性、および打抜き加工性が低下する。従って、Si含有量は2.5%以上、5.0%以下とする。Si含有量は、好ましくは3.0%以上4.5%以下である。
【0024】
(0.1≦Al≦2.0%)
Alは、脱酸材として有効であり、更に窒化物を粗大にして無害化することもできる。また、Alは、Siと同様に鋼の固有抵抗を増加させ鉄損を低減させる。これらの作用を得るためには、Al含有量は0.1%以上が必要である。しかし、Al含有量が2.0%を超えると酸洗の能率低下だけでなく、ヒステリシス損を増加させる。従って、Al含有量は0.1%以上、2.0%以下とする。Al含有量は、好ましくは0.1%以上、1.5%以下である。
【0025】
(0.1≦Mn≦2.0%)
Mnは、鋼の固有抵抗を高め、硫化物を粗大化して無害化する作用を呈する。この作用を得るためには、Mn含有量は0.1%以上が必要である。一方、Mn含有量が2.0%を超えると、磁束密度の低下及びコストの上昇を招く。従って、Mn含有量は0.1%以上2.0%以下とする。Mn含有量は、好ましくは0.2%以上1.5%以下である。
【0026】
(P≦0.02%)
P含有量が0.02%超では、冷間圧延時に破断を生じる可能性がある。したがって、P含有量は、0.02%以下とする。P含有量の下限値は、特に制限はないが、脱Pのコスト及び生産性の観点から、0.01%とすることが好ましい。
【0027】
(0.001%≦C≦0.005%)
Cは、鋼中に固溶Cとして存在して温間圧延時の動的ひずみ時効による集合組織改善効果を発現することにより、磁束密度を向上させる。その効果を得るために、C含有量は0.001%以上とする。一方、C含有量は0.005%を超えると微細な炭化物が析出して磁気特性が劣化する。従って、C含有量は0.001%以上、0.005%以下とする。C含有量は、好ましくは0.001%以上0.004%以下である。
【0028】
(0.001%≦N≦0.005%)
NもC同様、鋼中に固溶Nとして存在して温間圧延時の動的ひずみ時効による集合組織改善効果を発現することにより、磁束密度を向上させる。その効果を得るために、N含有量は0.001%以上とする。一方、N含有量は0.005%を超えると微細なAlNが析出して磁気特性が劣化する。従って、N含有量は0.001%以上、0.005%以下とする。N含有量は、好ましくは0.001%以上0.004%以下である。
【0029】
(S≦0.005%)
S含有量が0.005%を超えるとMnS等の硫化物量が多くなり、鉄損が増加する。従って、S含有量は0.005%以下とする。S含有量の下限値は、特に制限はないが、脱Sのコスト及び生産性の観点から、0.001%以上とすることが好ましい。
【0030】
(Cu≦0.1%)
Cuは、飽和磁束密度を下げるため、磁束密度B
50が低下する。また、CuSとして析出するため、鉄損が劣化する。さらにNiとともに含有すると鋼板表面に内部酸化層が形成されやすいため高周波鉄損が劣化する。従って、Cu含有量は0.1%以下とする。Cu含有量の下限値は、特に制限はないが、鉄スクラップから混入される観点から、0.01%以上とすることが好ましい。
【0031】
(Ni≦0.1%)
Niは、磁束密度B
50を高め、鋼板強度を増加させる作用があるが、コスト増加を招く。また、Cuと複合含有すると鋼板表面に内部酸化層が形成されやすいため高周波鉄損が劣化する。従って、Ni含有量は0.1%以下とする。Ni含有量の下限値は、特に制限はないが、磁束密度B
50及び鋼板強度の観点から、0.01%とすることが好ましい。
【0032】
(Feおよび不純物)
鋼板の残部は、Feおよび不純物元素である。ここで、不純物元素とは、原材料に含まれる成分、または、製造の過程で混入する成分であって、意図的に鋼板に含有させたものではない成分を指す。
【0033】
(その他元素)
本発明の無方向性電磁鋼板は、次の元素を含有していてもよい。
Cr:0.01%以上、0.2%以下
Sn:0.02%以下
【0034】
ここで、本発明の無方向性電磁鋼板の化学組成は、Cu≦0.1%、かつNi≦0.1%としている。これにより、鋼板表面への内部酸化層形成を抑制し高周波鉄損を低減できる。
【0035】
次に、本発明の無方向性電磁鋼板の集合組織について説明する。
本発明の無方向性電磁鋼板の集合組織は、下記(A)〜(C)に示す特徴を有する。
(A)鋼板表面から1/10板厚の部分の集合組織の結晶方位分布関数ODFにおけるφ
2=45°断面の10°≦φ
1≦35°、および0°≦Φ≦10°の集積度の平均値I(s)が3.5以上である。
(B)鋼板表面から1/2板厚の部分の集合組織の結晶方位分布関数ODFにおけるφ
2=45°断面の10°≦φ
1≦35°、および0°≦Φ≦10°の集積度の平均値I(c)が4.0以上である。
(C)集積度の平均値I(s)と前記集積度の平均値I(c)との差が下記式(1)を満足する。
式(1) : 0.0<|I(c)−I(s)|≦1.0
【0036】
ここで、鋼板の{100}面のX線積分強度が多いほど、磁気特性に好ましい集合組織になる。つまり、磁束密度が向上する。また、所定の磁束密度に到達するための磁化力が減少するため、所定の磁束密度で動作させたときのヒステリシス損を低減・改善する作用も有する。つまり、高磁磁束密度における高周波鉄損を低減・改善する作用を有する。
このため、鋼板の表層及び中心層における{100}面近傍の集積度が多くして、ヒステリシス損を確実に低くし、高磁磁束密度における高周波鉄損を低減するためには、鋼板表面から1/10板厚の部分における集積度の平均値I(s)を3.5以上、かつ、鋼板表面から1/2板厚の部分における集積度の平均値I(c)を4.0以上とする。
【0037】
なお、高磁磁束密度における高周波鉄損低減の観点から、鋼板表面から1/10板厚の部分における集積度の平均値I(s)を4.0以上、かつ、鋼板表面から1/2板厚の部分における集積度の平均値I(c)を4.5以上とすることが好ましい。集積度の平均値I(s),I(c)の上限値は、特に制限はしないが、例えば10.0以下とすることがよい。
【0038】
一方で、鋼板の表層及び中心層における{100}面近傍の集積度の差が大きくなると、鋼板表面と中心で磁束密度差が発生する。磁束密度差が発生すると、表層に磁束が集中しヒステリシス損が大幅増加する。このため、モータでの高速回転時にモータ特性が劣化する。
また、鋼板の表層及び中心層における{100}面近傍の集積度の差が大きくなると、鋼板に打ち抜き加工等の剪断加工を施したとき、歪みの分布の広がり、バリの発生が生じ易くなる。破断面は{100}面近傍に平行になることが多い特徴があり、{100}面近傍の集積度差が小さい場合には滑らかにせん断される。しかしながら{100}面近傍の集積度差が大きい場合には、{100}面近傍に平行に破断することができないために、せん断面が滑らかにならず、歪みの分布の広がり、バリの発生が大きくなる。
このため、鋼板の表層及び中心層における{100}面近傍の集積度の差を小さくし、磁気特性、及び加工性を向上させるには、0.0<|I(c)−I(s)|≦1.0として、板厚方向の磁束分布(つまり集合組織)を均一化する。なお、磁気特性、及び加工性を向上させる観点からも、0.0<|I(c)−I(s)|≦1.0とすることが好ましい。
【0039】
ここで、鋼板表面から1/10板厚の部分における集積度の平均値I(s)、および鋼板表面から1/2板厚の部分における集積度の平均値I(c)は、次のように測定する。まず、鋼板を切り出し、試料片を得た後、化学研磨により、板厚の1/10減厚した試料片および板厚の1/2減厚した試料片を各々得る。次に、各試料片に対して、X線回折装置にて、{200}面、{110}面、{211}面の極点図を測定し、結晶方位分布関数ODF(Orientation Determination Function)を作成する。そして、φ
2=45°断面の10°≦φ
1≦35°、および0°≦Φ≦10°の集積度の平均値を求める。具体的には、φ
1とΦは5°おきに集積度が表示される。すなわち、(φ
1、Φ)=(10°、0°)、(15°、0°)、(20°、0°)、(25°、0°)、(30°、0°)、(35°、0°)、(10°、5°)、(15°、5°)、(20°、5°)、(25°、5°)、(30°、5°)、(35°、5°)、(10°、10°)、(15°、10°)、(20°、10°)、(25°、10°)、(30°、10°)、(35°、10°)における集積度を平均している。
【0040】
ここで、本発明の無方向性電磁鋼板は、集合組織が下記(A)〜(C)に示す特徴を有しても、鋼板の平坦度が高いと、磁気特性が悪化する。このため、鋼板の平坦度は1.0%以下とする。JIS C 2552で規定された長さの鋼板を用いて,JIS C 2550−2に規定された方法で測定して波形係数を算出し,この値を平坦度とする。
【0041】
<無方向性電磁鋼板の製造方法>
本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法は、上記本発明の無方向性電磁鋼板の化学組成のスラグを、熱間圧延する熱間圧延工程と、熱間圧延後の鋼板(以下「熱延板」とも称する)を最終冷間圧延し、最終板厚とする最終冷間圧延工程と、を有する。
【0042】
以下、本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法の詳細について説明する。
【0043】
−熱間圧延工程−
熱間圧延工程では、例えば、本発明の無方向性電磁鋼板の化学組成の鋼を連続鋳造法又は鋼塊を分塊圧延する方法等の一般的な方法により得られたスラブ(鋼片)に、熱間圧延を施す。熱間圧延の際のスラブ加熱温度は特に限定されるものではないが、コストおよび熱間圧延性の観点から1000℃〜1300℃とすることが好ましい。より好ましくは1050℃〜1250℃である。
【0044】
熱延板の焼鈍を実施する場合、熱間圧延の各種条件は、特に限定されるものではなく、例えば、仕上げ温度が700℃〜950℃、巻き取り温度が750℃以下など、一般的な条件に従って行えばよい。一方、熱延板の焼鈍を実施しない場合、熱間圧延の各種条件は、仕上温度が850〜900℃、巻き取り温度が850℃以下とすることがよい。
【0045】
熱間圧延後、最終冷間圧延前に、熱延板に焼鈍を施す場合、熱延板に焼鈍を施さない場合のいずれでもよい。熱延板に焼鈍を施す場合は、熱延板の焼鈍は、例えば950℃以上1050℃以下で、1秒以上3分以下保持する連続焼鈍にて実施する。熱延板の焼鈍温度が上記範囲を超えると設備への負荷が大きくなることがあり、熱延板の焼鈍時間が上記範囲を超えると生産性の劣化を招くことがある。熱延板の焼鈍温度および熱延板の焼鈍時間が上記範囲を下回ると磁気特性向上の効果が小さくなることがある。
【0046】
−最終冷間圧延工程−
最終冷間圧延工程では、複数の圧延スタンドを有するタンデム圧延機により、熱間圧延後の鋼板を200℃以上500℃以下で温間圧延した後、100℃以下で冷間圧延して、最終板厚とする。そして、下記式(2)で表される最終冷間圧延の圧下率(トータル圧下率)を85%以上95%以下、下記式(3)で表される温間圧延の圧下率を30%以上、下記
式(4)で表される冷間圧延の圧下率を40%以上とする。
【0047】
式(2): 最終冷間圧延の圧下率(%)=(t
0−t
f)/t
0×100
(式(2)中、t
0:200℃以上500℃以下の温間圧延開始時の鋼板板厚(mm)、t
f:鋼板の最終板厚(mm))
式(3): 温間圧延の圧下率(%)=(t
0−t
c)/t
0×100
(式(3)中、t
0:200℃以上500℃以下の温間圧延開始時の鋼板板厚(mm)、t
c:100℃以下の冷間圧延開始時の鋼板板厚(mm))
式(4): 冷間圧延の圧下(%)=(t
c−t
f)/t
c×100
(式(4)中、t
c:100℃以下の冷間圧延開始時の鋼板板厚(mm)、t
f:鋼板の最終板厚(mm))
【0048】
最終冷間圧延工程とは、熱間圧延後の鋼板(熱延板)を温間圧延および冷間圧延し、得られる無方向性電磁鋼板の製品板厚である最終板厚とする工程である。そして、最終冷間圧延工程を実施する熱間圧延後の鋼板(熱延板)は、焼鈍、中間冷間圧延、中間焼鈍等を経てた熱延板であってもよいし、これらを経ない熱延板であってもよい。
【0049】
最終冷間圧延工程において、200℃以上500℃以下での温間圧延は、200℃以上500℃以下(好ましくは200℃以上400℃以下)で1パス以上の圧延(好ましくは1パス〜5パスの圧延)を行うことである。ただし、温間圧延は、タンデム圧延機の1パス目(最初のスタンドによる圧延)から200以上500℃以下で実施することがよい。このため、タンデム圧延機の1パス目入側(最初のスタンド入側)において、電磁誘導加熱、通電加熱、ヒーター加熱、雰囲気ガス中での加熱等の加熱方法により、鋼板を予備加熱することがよい。この予備加熱を行うことにより、生産性の向上と共に、磁気特性の向上、さらに冷間圧延中の破断要因での1つである双晶変形の抑制が図られる。
【0050】
一方、100℃以下での冷間圧延とは、100℃以下で1パス以上(好ましくは1パス〜3パスの圧延)の圧延を行うことである。
【0051】
200℃以上500℃以下での温間圧延、および100℃以下の冷間圧延は、一機のタンデム圧延機で実施してもよいし、二機のタンデム圧延機で各々実施してもよい。ただし、生産性の点から、一機のタンデム圧延機で実施することがよい。
【0052】
なお、パスとは、タンデム圧延機における複数の圧延スタンドのうち、一機の圧延スタンドに熱間圧延後の鋼板が通過し圧延されることを示す。
【0053】
そして、タンデム圧延による温間圧延および冷間圧延を行う最終冷間圧延工程において、トータル圧下率、温間圧延の圧下率、冷間圧延の圧下率、各圧延温度を上記範囲内とすることにより、鋼板表層近傍の集合組織が制御され、板厚方向の磁束分布(つまり集合組織)が均一化される。その結果、集積度の平均値I(s)、集積度の平均値I(c)、集積度の平均値I(s)と前記集積度の平均値I(c)との差(|I(c)−I(s)|)が上記範囲を満たし、高磁束密度における高周波数鉄損が低く、かつ加工性に優れた無方向性電磁鋼板を低コストで生産性良く製造することができる。その理由は、次の通りである。
【0054】
まず、合金元素を多量に添加した鋼では、加工硬化による圧延荷重増加の観点からタンデム圧延よりもゼンジミア圧延機による圧延が一般的である。しかしながらタンデム圧延機に比べると生産性が低いため、コスト面で劣る。そこで、コスト競争力向上の観点から、生産性が高くコスト面で優れるタンデム圧延機で最終冷間圧延を実施する。特に、タンデム圧延機による圧延では、ゼンジミア圧延機に比べてロール径が大きいためロール径と板厚で決まる圧延形状比が大きい特徴がある。通常の冷間圧延では圧延形状比が小さい方が有利であるため、ゼンジミア圧延機による圧延の方が磁気特性には好ましいと考えられる。ところが、圧延温度を高めた場合には、圧延油が蒸発して鋼板とロールとの摩擦が増加する傾向があり、鋼板表層への変形が入りやすくなる。圧延形状比がゼンジミア圧延機よりも大きいタンデム圧延機では、摩擦による鋼板表層への変形が入りやすくなる傾向があるため、温間圧延の効果を享受しやすいと考えられる。つまり、タンデム圧延機によって、所定の圧下率での温間圧延及び冷間圧延を経る最終冷間圧延工程を実施することで、鋼板表層の集合組織を改善し(鋼板の表層及び中心層における{100}面近傍の集積度の差を小さく)、板厚方向の磁束分布(集合組織)を均一化できるようになる。
なお、圧延荷重の増加、又は脆性の低下は、温間圧延により解決する。
【0055】
また、トータル圧下率は、薄手材製造上の制約に加え、{100}面近傍の集積度を高める点から定められる。例えば、熱延板の板厚を2.0mmとすると、無方向性電磁鋼板の板厚である最終板厚0.10mm以上0.30mm以下を得るためには、トータル圧下率が85%以上95%以下になる。また、{100}面近傍の集積度をより高めるために、トータル圧下率は高い方が望ましい。これら観点から、トータル圧下率は、85%以上95%以下が好ましく、85%以上92.5%以下がより好ましい。
【0056】
一方、200℃以上500℃以下で温間圧延、100℃以下の温度で冷間圧延すると、鋼板表層近傍の{100}面強度を向上させることができるため、高磁束密度化できる。その結果として、同じ最終冷間圧延の圧下率で製造した鋼板でも、高磁束密度における高周波鉄損を低減することができる。
ここで、高Si鋼圧延時の脆性対策の観点から、温間圧延の温度の下限は200℃とし、温間圧延時の圧延機の負荷増大の観点から、温間圧延温度の上限は500℃とする。温間圧延に続く冷間圧延では、製品の板厚精度を向上させる観点から、圧延温度を100℃以下とする。
【0057】
さらに、温間圧延での圧下率を30%以上とし、冷間圧延の圧下率を40%以上とすることで、鋼板表層近傍の{100}面を増加させ、磁束密度向上による鉄損低減できる。
ここで、温間圧延の圧下率を30%以上とするは、30%未満であると鋼板表層近傍と中心層の{100}面強度が増加せず、磁束密度向上もなく、高磁束密度における高周波数鉄損が有意義に低減しないためである。加えて、鋼板表層近傍と中心層の{100}近傍の集積度の差|I(c)−I(s)|が1.0を超え、高周波駆動時に板厚方向の磁束密度分布が不均一となるためである。そして、鋼板の加工性も低下するためである。これら観点から、温間圧延の圧下率は、30%以上92.5%以下が好ましく、45%以上90%以下がより好ましい。
温間圧延に続く冷間圧延の圧下率を40%以上としたのは、板厚精度を向上と平坦度確保のためである。最終板厚付近まで温間圧延すると、鋼板の集合組織は改善され、磁束密度は向上する。しかしながら、板厚精度が悪い上に、平坦度が不良となり、高磁束密度における高周波数鉄損が有意義に低減しないためである。これら観点から、冷間圧延の圧下率は、40%以上92.5%以下が好ましく、45%以上90%以下がより好ましい。
【0058】
なお、最終冷間圧延後には、鋼板に対して、固溶Cを低減する脱炭焼鈍、仕上げ焼鈍、ひずみ取り焼鈍等の周知の焼鈍を施してもよい。特に、脱炭焼鈍は、鋼板中に一定量以上の炭素があると、現実の電気機器運転中においては、鉄心の温度が150℃〜200℃まで上昇する場合があることから、時効効果により鉄心の磁気特性が劣化する問題を確実に防ぐ目的で行う。これら焼鈍の条件は通常行われている操業条件で構わない。
【0059】
本発明の無方向性電磁鋼板およびその製造方法は、例えば、産業用モータ、家庭用コージェネレーションシステムに搭載される小型発電機等、高いエネルギー効率と小型・高出力化を同時に要求される電気機器の鉄心の素材およびその製造方法に好適に利用できる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を例示して、本発明を具体的に説明する。
【0061】
[実施例1]
質量%で、Si:3.1%、Al:0.6%、Mn:0.2%、P:0.01%、C:0.002%、N:0.002%、S:0.001%、Cu:0.05%、Ni:0.05%を含有し、残部がFeおよび不純物元素からなるスラグ(鋼片)に熱間圧延を施し、熱延板(板厚2.0mm)を得る。次に、熱延板(板厚2.0mm)に1000℃で2分均熱する熱延板の焼鈍を施す。その後、5個のスタンドが並列されたタンデム圧延機により、1パス目入り側の鋼板温度(以下「1パス目温間圧延入側温度」とも称する)を表1に示す温度として、2パス目入り側の鋼板温度(以下「2パス目温間圧延入側温度」とも称する)を表1に示す温度として、2パス温間圧延して、板厚1.0mm(温間圧延の圧下率=50%)とし、鋼板を冷却して、冷間圧延開始時の鋼板温度を表1に示す温度として3パス冷間圧延し、最終板厚0.30mm(冷間圧延の圧下率=70%)にする最終冷間圧延(トータル圧下率=85%)を実施する。その後、冷延板に1000℃で15秒均熱する仕上げ焼鈍を施し、750℃で2時間均熱するひずみ取り焼鈍を施す。
なお、1パス目入側温度が200℃以上、400℃未満では,外気やロールとの接触によって鋼板温度が一旦低下するが、温間圧延の圧下率を30%以上にすると、加工量が増加するとともに,発熱量が増加するので、結果として2パス目入側の鋼板温度は上昇し、200℃以上で圧延できる。一方,1パス目入側温度が400℃以上600℃以下では,外気やロールとの接触によって鋼板温度が一旦低下し、加工時の発熱によって鋼板温度が上昇する点は1パス目入側温度が200℃以上、400℃未満の場合と同じであるが、発熱量よりも鋼板温度が低下する方が大きいため、結果として、2パス目入側の鋼板温度は減少する。
【0062】
得られた無方向性電磁鋼板に対して、55mm角磁気測定試験を実施し、5000A/mにおける磁束密度B
50、200Hz、1.5Tにおける鉄損W15/200、400Hz、1.5Tにおける鉄損W15/400を測定する。磁束密度B
50、鉄損W15/200、鉄損W15/400は、L方向(圧延方向)およびC方向(圧延方向に直交する方向)の平均値として求める。
【0063】
また、得られる無方向性電磁鋼板に、打ち抜き加工を施し、加工性(歪み分布、バリの発生)を評価する。
歪みの分布については、次のように評価する。鋼板中心層の打抜き端面からの長さ方向に50gfの圧根を打ち,その硬度を測定し、硬度がある値に集束した時の打抜き端面からの距離で評価する。
一方、バリの発生については、次のように評価する。打抜き部分を含めた部分を樹脂に埋め込んで、光学顕微鏡で打抜き端面を撮影し、
図3に示すバリ高さを測定する。具体的には、打抜き部分の打ち抜き方向の縁部において、鋼板の表面から突出している突出部の長さを「バリ高さ」として測定する。
【0064】
一方、ゼンジミア圧延機により、1パス目入り側の鋼板温度(1パス目温間圧延入側温度)を表1に示す温度とし、2パス目入り側の鋼板温度(2パス目温間圧延入側温度)を表1に示す温度として2パス温間圧延して板厚1.0mm(温間圧延の圧下率=50%)とし、鋼板を冷却して、冷間圧延開始時の鋼板温度を表1に示す温度として3パス冷間圧延し、最終板厚0.30mm(冷間圧延の圧下率=70%)にする最終冷間圧延(トータル圧下率=85%)を実施する以外は、上記同様にして、無方向性電磁鋼板を作製する。そして、磁束密度B
50、鉄損W15/200、鉄損W15/400を求める。また、加工性(歪み分布、バリの発生)を評価する。
【0065】
磁気測定結果を表1に示す。その結果、タンデム圧延による最終冷間圧延では、温間圧延入側温度の上昇により、磁束密度B
50が向上する。また、鉄損W15/200、W15/400も減少する。これにより、磁束密度B
50が高く、高磁束密度における高周波数鉄損が低くなることがわかる。特に、温間圧延入側温度(つまり、温間圧延する温度)を200℃以上にして圧延すると効果が大きいことがわかる。また、タンデム圧延による最終冷間圧延では、温間圧延入側温度の上昇により、加工性(歪み分布、バリの発生)も改善されていることがわかる。
一方、ゼンジミア圧延による最終冷間圧延では、温間圧延入側温度を上昇しても、磁束密度B
50向上効果はタンデムに比べると低い。また、鉄損W15/200、W15/400低減効果もタンデムに比べると低い。これにより、ゼンジミア圧延による最終冷間圧延では、磁束密度B
50、および高磁束密度における高周波数鉄損が改善効果は小さいことがわかる。また、ゼンジミア圧延による最終冷間圧延では、温間圧延入側温度を上昇しても、加工性(歪み分布、バリの発生)も改善され難いことがわかる。
【0066】
【表1】
【0067】
磁束密度B
50および高磁束密度における高周波数鉄損の磁気特性が向上する原因、並びに加工性が改善した原因を明らかにするため、タンデム圧延における温間圧延入側温度25℃と400℃との場合、およびゼンジミア圧延における温間圧延入側温度25℃と400℃との場合について、既述の方法にしたがって、X線回折によって板厚表面から1/10板厚の部分、1/2板厚の部分の{200}面、{110}面、{211}面極点図を測定し、ODFを求める。結果を
図1に示す。
【0068】
図1に示すように、磁気特性に有利な{100}面を指すΦ=0°断面の10°≦φ
1≦30°、60°≦φ
1≦80°部分、及び{100}面に近い結晶面である0°<Φ≦15°断面の10°≦φ
1≦30°の方位の集積度は、タンデム圧延における温間圧延入側温度25℃に対して400℃の方が高くなっていることがわかる。一方で、ゼンジミア圧延における温間圧延入側温度25℃と400℃とでは、この集積度の高まりが少ないことがわかる。この変化は板厚表面から1/10部分の位置、すなわち鋼板表層近傍で大きくなっていることがわかる。また、
図4に示すように|I(c)−I(s)|が低いと,バリ高さを小さくすることができ、タンデム圧延における温間圧延入側温度200℃以上において磁気特性および加工性が飛躍的に向上したのは、鋼板表層と鋼板中心層の{100}面やその近傍の面の方位の集積度の差である|I(c)−I(s)|が小さくなるためであることがわかる。また、
図1に示すように、板厚表面から1/10部分の位置と、板厚表面から1/2部分の位置とで、鋼板表層の{100}面やその近傍の面の方位の集積度が小さくなっていることもわかる。
【0069】
[実施例2]
温間圧延による磁気特性および加工性の改善効果が享受できる製造条件について検討するため、以下の実験をおこなう。表2に示す化学組成のスラブ(鋼片)に熱間圧延を施し、熱延板(膜厚2.0mm)を得る。次に、熱延板(板厚2.0mm)に1000℃で2分均熱する熱延板の焼鈍を施す。その後、表3に示す条件とした以外は、実施例1と同様な、タンデム圧延機による温間圧延および冷間圧延を施す、最終冷間圧延を実施する。なお、表3において、熱延板板厚t
0は「温間圧延開始時の鋼板板厚t
0」を示す。中間板厚t
Cは「冷間圧延開始時の鋼板板厚」を示す。製品板厚t
fは「鋼板の最終板厚」を示す。ただし、温間圧延および冷間圧延の圧下率の各欄で「0.0」と示しているのは、該当する欄の圧延を実施しないことを示す。その後、冷延板に1000℃で15秒均熱する仕上げ焼鈍を施し、750℃で2時間均熱するひずみ取り焼鈍を施す。
得られる無方向性電磁鋼板について、実施例1と同様に、磁束密度B50、鉄損W15/200、鉄損W15/400を求める。また、加工性(歪み分布、バリの発生)を評価する。そして、既述の方法にしたがって、X線回折によって板厚表面から1/10板厚の部分および1/2板厚の部分の{200}面、{110}面、{211}面極点図を測定し、ODFを求める。このODFに基づいて、集積度の平均値I(s)、集積度の平均値I(c)、及びその絶対値差(|I(c)−I(s)|)を調べる。さらに,鋼板の平坦度を測定する。鋼板の平坦度は、長さ1mの鋼板を定盤の上にのせて、鋼板の幅方向単位長さあたりの最高高さ(板厚を除いた高さ)の百分率(%)として求めた。
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
No.11−1、12−1、13−1、14−1は、温間圧延の温度(温間圧延入口温度)が低く、鉄損特性が劣位である。
No.11−2〜11−7は、トータル圧下率が低くI(s)が高められず鉄損は劣位である。
No.12−2、13−2、14−2は、温間圧延の圧下率が低すぎるため、|I(c)−I(s)|の差が1.0を超え、鉄損は劣位である。
No.12−7、13−7、13−8.14−8、14−9は、I(s)、I(c)、I(c)−I(s)の値は良いが、温間圧延の圧下率が高すぎて圧延時にクラウンが発生し、平坦度が悪く、鉄損は劣位である。
No.21−1〜21−7、No.22−1〜22−7、No.23−1〜23−8、No.24−1〜24−9は、I(s)、I(c)、I(c)−I(s)の値が良い場合もあるが、Cu及びNiの含有量が高いスラブを使用しているため、鉄損は劣位である。
これらに対し、No.12−3〜No.12−6、No.13−3〜No.13−6、No.14−3〜7では、I(s)、I(c)の値が高く、I(c)とI(s)の差が1.0以下と低く、かつ鋼板の平坦度が1.0以下であり、鉄損が良好である。
そして、この特性を得るための製造条件は、トータル圧下率(最終板厚とする最終冷間圧延の圧下率)を85%以上95%以下で、200℃以上500℃以下で温間圧延の圧下率30%以上かつ100℃以下で冷間圧延の圧下率40%以上であることがわかる。その結果を
図2に示す。
【0073】
以上、本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。