(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明を実施するための形態(以下「実施の形態」という)について添付の図面を参照しながら説明する。
【0014】
[実施の形態1]
図1から
図4は、実施の形態1に係る送風管の一例としての送風ダクト及びそれを用いた送風装置及び画像形成装置をそれぞれ示すものである。
図1はその画像形成装置の概要を示し、
図2はその送風ダクト又は送風装置により空気を吹きつけるべき対象構造物の一例としての帯電装置を示し、
図3はその送風ダクト及び送風装置の概要を示し、
図4はその送風ダクト等の内部構造を示している。
【0015】
<画像形成装置の構成>
画像形成装置1は、
図1に示すように、支持フレーム、外装カバー等で構成される筐体10の内部空間に、現像剤としてのトナーで構成されるトナー像を形成して被記録材の一例としての記録用紙9に転写する作像ユニット20と、作像ユニット20に供給する記録用紙9を収容するとともに搬送する給紙装置30と、作像ユニット20で形成されたトナー像を記録用紙9に定着する定着装置35等を配置している。
【0016】
上記作像ユニット20は、例えば、公知の電子写真方式を利用して構成される作像装置である。具体的には、作像ユニット20は、矢印Aで示す方向に回転駆動する感光体ドラム21と、感光体ドラム21の像形成領域となる周面を所要の電位に帯電させる帯電装置4と、感光体ドラム21の帯電後の周面に外部から入力される画像情報(信号)に基づく光(矢付き点線)を照射して静電潜像を形成する露光装置23と、その静電潜像をトナーにより現像してトナー像にする現像装置24と、そのトナー像を感光体ドラム21から記録用紙9に転写する転写装置25と、感光体ドラム21の転写後の周面に残留するトナー等の不要物を除去して清掃する清掃装置26とで主に構成されている。
【0017】
このうち帯電装置4としては、コロナ放電器で構成されるものが使用されている。このコロナ放電器からなる帯電装置4は、
図2等に示すように、いわゆるスコロトロン型のコロナ放電器で構成されている。
【0018】
すなわち、帯電装置4は、長方形状の天板40aとその天板40aの一方向に長い長手方向Bに沿って延びる長辺部から下方に垂れ下がった状態の側板40b,40cを有した外観形状からなる包囲部材としてのシールドケース40と、シールドケース40の長手方向Bにおける両端部(短辺部)にそれぞれ取り付けられる図示しない2つの端部支持体と、この2つの端部支持体の間に、シールドケース40の長手方向Bに沿う長尺な内部空間内に存在するとともにほぼ平行して張り渡すよう取り付けられる2本のコロナ放電ワイヤ41A,41Bと、シールドケース40の放電用の下部開口部に、その下部開口部をほぼ覆ってコロナ放電ワイヤ41A,41Bと感光体ドラム21の周面との間に存在する状態で取り付けられる多孔型のグリッド電極(電界調整板)42とを備えている。
図4等に示す符号40dは、2本のコロナ放電ワイヤ41A,41Bがそれぞれ配置される空間(S1,S2)をシールドケース40の長手方向Bに沿って区切る隔壁板である。上記下部開口部は、その開口形状が長方形になるよう形成されている。
【0019】
また、帯電装置4は、2本のコロナ放電ワイヤ41A,41Bが、感光体ドラム21の周面と所要の間隔(例えば放電ギャップ)をあけて対向する状態で且つ感光体ドラム21の回転軸の方向に沿ってその像形成領域と向き合う状態で少なくとも存在するようそれぞれ配置されている。また、帯電装置4は、画像形成動作時になると、図示しない電源装置から各コロナ放電ワイヤ41A,41B(と感光体ドラム21との間)に帯電用の電圧がそれぞれ供給されるようになっている。
【0020】
さらに、帯電装置4は、その使用に伴ってコロナ放電ワイヤ41A,41Bやグリッド電極42に、記録用紙9の紙粉、コロナ放電により生成される放電生成物、トナーの外添剤等の物質(不要物)が付着して汚染されてしまい、その結果としてコロナ放電が十分に又は均一に行われなくなって帯電むら等の帯電不良が発生することがある。このため、帯電装置4には、コロナ放電ワイヤ41A,41B及びグリッド電極42に不要物が付着することを防止又は抑制する目的で、そのコロナ放電ワイヤ41A,41Bとグリッド電極42にむけて空気を吹きつけるための送風装置5が併設されている。また、帯電装置4は、送風装置5から送り出される空気を取り込むため、そのシールドケース40の天板40aに開口部43が形成されている。開口部43は、その開口形状が長方形になるよう形成されている。なお、送風装置5の詳細については後述する。
【0021】
給紙装置30は、画像を形成する際に使用する所要のサイズ、種類等からなる複数枚の記録用紙9を積み重ねた状態で収容する用紙収容体31と、その用紙収容体31に収容される記録用紙9を1枚ずつ搬送路にむけて送り出す送出装置32とを備え、給紙の時期が到来すると、記録用紙9を1枚ずつ送り出すようになっている。用紙収容体31は、利用態様に応じて複数装備される。
図1における矢付きの二点鎖線は、筐体10の内部空間において記録用紙9が主に搬送されて移動する搬送路を示す。この記録用紙9の搬送路は、複数の用紙搬送ロール対33a,33bや、図示しない搬送ガイド部材等で構成されている。
【0022】
定着装置35は、記録用紙9が通過する導入口及び排出口が形成された筐体36の内部に、表面温度が加熱手段により所要の温度に加熱されて保持されるロール形態、ベルト形態等の加熱用回転体37と、この加熱用回転体37の軸方向にほぼ沿うように所要の圧力で接触して従動回転するロール形態、ベルト形態等の加圧用回転体38とを備えている。この定着装置35は、その加熱用回転体37と加圧用回転体38とが接触して形成される接触部が所要の定着処理(加熱および加熱)を行う定着処理部として構成されており、その接触部に対してトナー像転写後の記録用紙9を導入して通過させることで定着を行うようになっている。
【0023】
この画像形成装置1による画像形成は、次のようにして行われる。ここでは、代表して記録用紙9の片面に画像を形成するときの基本的な画像形成動作を説明する。
【0024】
画像形成装置1では、その図示しない制御装置等が画像形成動作の開始指令を受けると、作像ユニット20において、回転始動する感光体ドラム21の周面が帯電装置4により所定の極性及び電位に帯電される。このとき、帯電装置4では、2本のコロナ放電ワイヤ41A,41Bに帯電用の電圧がそれぞれ印加されて各コロナ放電ワイヤ41A,41Bと感光体ドラム21の周面との間に電界を形成した状態でコロナ放電を発生させ、これにより感光体ドラム21の周面を所要の電位に帯電させる。この際、感光体ドラム21の帯電電位はグリッド電極42により調整される。
【0025】
続いて、帯電された感光体ドラム21の周面に対して、露光装置23から画像情報に基づく露光が行われて所要の電位からなる静電潜像が形成される。しかる後、感光体ドラム21に形成された静電潜像が、現像装置24を通過する際に、現像ロールから供給される所要の極性に帯電されたトナーにより現像されてトナー像として顕像化される。
【0026】
次いで、感光体ドラム21上に形成されたトナー像は、感光体ドラム21の回転により転写装置25と対向する転写位置まで搬送されると、このタイミングに合わせて給紙装置30から搬送路を経由して供給される記録用紙9に対して転写装置25の転写作用により転写される。この感光体ドラム21の転写後の周面は、清掃装置26により清掃される。
【0027】
続いて、作像ユニット20においてトナー像が転写された記録用紙9は、感光体ドラム21から剥離された後に定着装置35に導入されるよう搬送され、定着装置35の加熱用回転体37と加圧用回転体38の接触部を通過する際に加圧下で加熱されてトナー像が溶融して記録用紙9に定着される。この定着が終了した後の記録用紙9は、定着装置35から排出されて筐体10の外部等に設けられる図示しない排紙収容部等に搬送されて収容される。
【0028】
以上により、1枚の記録用紙9の片面に対して1色のトナーで構成される単色画像が形成され、基本的な画像形成動作が終了する。複数枚の画像形成動作の指示がある場合には、上記一連の動作がその枚数分だけ同様に繰り返されることになる。
【0029】
<送風装置(主に送風ダクト)の構成>
次に、送風装置5について説明する。
【0030】
送風装置5は、
図1や
図3等に示されるように、空気を送る回転ファンを有する送風機50と、その送風機50から送られる空気を取り入れて送風対象の構造物である帯電装置4にまで導いて排出させる送風ダクト51Aとを備えている。
【0031】
送風機50としては、例えば輻流型の送風ファンが使用される。また、送風機50は、所要の風量の空気を送るように動作が制御される。
また、送風ダクト51Aは、
図3から
図6等に示されるように、送風機50から送られる空気を取り入れる入口52とその入口52から取り入れた空気を排出する一方向に長い開口形状からなる出口53とをつないで空気を流すための通路空間TSが途中で2回曲げられた形状になるよう形成された通路部(本体部)54と、通路部54の通路空間TSの空気を流す方向において異なる部位に設けられ、空気の流れを抑制する2つの抑制部61,62とを備えたものである。
【0032】
送風ダクト51Aの入口52は、その全体の開口形状が、例えば少し横長の長方形になるよう形成されている。また、入口52には、その入口52と送風機50との間を接続して送風機50で発生させた空気を入口52まで送るための接続ダクト55が取り付けられている。
【0033】
送風ダクト51Aの出口53は、その全体の開口形状が細長い長方形になるよう形成されている。また、出口53は、空気を吹きつけるべき一方向に長い形態からなる送風対象の帯電装置4における長手方向の部分(本例では後記シールドケース40の開口部43)とほぼ平行して向き合う状態になるよう配置されている。さらに、出口53は、
図4、
図6等に示されるように、その出口53が存在する通路部54(第2曲げ通路部54C)の終端部の全域よりも少し狭い開口面積になる状態で形成されている。
【0034】
送風ダクト51Aの通路部54は、
図3から
図5等に示されるように、導入通路部54Aと第1曲げ通路部54Bと第2曲げ通路部54Cで構成されている。
【0035】
導入通路部54Aは、例えば出口53の開口形状における一方向に長い長手方向B(帯電装置4の長手方向や感光体ドラム21の軸方向と同じ)とほぼ平行して直線状に延びるとともに、その長手方向の一端部に入口52を存在させた角筒形状からなる第1通路空間TS1が形成された通路部である。この導入通路部54Aは、入口52が存在する端部とは反対側の端部になる他端部が閉鎖されている。
【0036】
第1曲げ通路部54Bは、導入通路部54Aの他端部寄りの部位(途中)からほぼ水平方向(
図4等では座標軸Xで示す方向とほぼ平行する方向)に向けてほぼ直角に曲げられた状態で延びる扁平な角筒の形状からなる第2通路空間TS2が形成された曲げ通路部である。また、第1曲げ通路部54Bは、導入通路部54Aに対して、第2通路空間TS2の高さが第1通路空間TS1の高さHと同じで且つその幅(長手方向Bの寸法)Wだけを広げることで第2通路空間TS2全体の通路断面積を水平方向に延ばして拡大させた通路部になっている。この第1曲げ通路部54Bは、送風ダクト51Aにおいて入口52に最も近い位置で最初に曲げられている曲げ通路部になる。
【0037】
第2曲げ通路部54Cは、第1曲げ通路部54Bの空気を流す方向の下流側の端部から下方に向かう鉛直方向(座標軸Yで示す方向とほぼ平行する方向)に所要の曲率で曲げられて送風対象
の対象構造物である帯電装置4に近づくよう延ばされた扁平な角筒の形状からなる第3通路空間TS3が形成された曲げ通路部である。また、第2曲げ通路部54Cは、その第3通路空間TS3の幅(長手方向Bに沿う寸法)が第1曲げ通路部54Bの第2通路空間TS2の幅と同じであり、その第2通路空間TS2から下方側にむけて曲げられた形状の曲げ通路部になっている。第2曲げ通路部54Cの終端部には、前述した構成からなる出口53が存在するよう設けられている。
【0038】
送風ダクト51Aの1つの抑制部61は、
図4、
図7等に示されるように、空気の流れを遮断する板状の遮断部65と、空気を通過させる通気部66とで構成される第1抑制部61として設けられている。このうち遮断部65は、第1曲げ通路部54Bの第2通路空間TS2の一部を横断するよう配置されて空気の流れを遮断する板状の部位(部材)として構成されている。一方、通気部66は、遮断部65の一端と第1曲げ通路部54Bの第2通路空間TS2のうち第2曲げ通路部54Cの曲げる方向の内側にある内壁面(底面)54dとの間に存在するよう配置されて空気を通過させる長方形の開口形状からなる部位(空間)として構成されている。
【0039】
この第1抑制部61における遮断部65及び通気部66は、第2通路空間TS2内において出口53の開口形状の長手方向Bとほぼ平行した状態で存在するよう配置している。また、板状の遮断部65は、
図4、
図5等に示されるように、空気を流す方向の上流側になる面部65aが、入口52の開口部のうち出口53寄りに存在する側端部52aから第1曲げ通路部54Bの第2通路空間TS2における空気を流す方向の下流側に所要の距離Nだけずれた位置に存在するよう配置されている。一方、通気部66は、その開口形状の高さ(遮断部65の下端65cと第2通路空間TS2の底面54dとの間の隙間寸法)h1及び幅(第2通路空間TS2の幅と同じ)Wと経路長(空気を流す方向の寸法であり、遮断部65の厚さと同じ)Mを所要の寸法にそれぞれ設定している。
【0040】
第1抑制部61における遮断部65は、送風ダクト51Aと同じ材料で一体的に成形したものでも、あるいは、送風ダクト51Aとは別に製作して後付けするものでもよい。また、第1抑制部61は、その遮断部65の配置位置(上記距離N)や、その通気部66の高さh1、幅W及び経路長M1の各値については、導入通路部54Aから第1曲げ通路部54Bに流れ込んだ空気の風速を可能な限り均一化するという観点から選択設定される。また、それらの値は、送風ダクト51Aの寸法(通路部54の容量)や、送風ダクト51A又は帯電装置4に流すべき空気の単位時間当たりの流量(風量)なども考慮して設定される。
【0041】
送風ダクト51Aのもう1つの抑制部62は、第2曲げ通路部54Cの末端(出口53)に存在させた最下流の抑制部として設けられている。この最下流の抑制部62は、複数の通気孔71を有する多孔部材70により出口53が塞がれたような状態になるよう構成されている。
【0042】
実施の形態1における多孔部材70は、例えば、板状の基材75に複数の通気孔71が均等に点在するよう設けられた多孔板として構成されている。複数の通気孔71は、
図6に示すように、その各開口形状が円形であって空気を通過させる方向に沿って延びるように貫通する貫通孔である。また、複数の通気孔71は、例えば出口53の開口形状の長手方向Bに沿って等間隔に並べるとともに、その長手方向Bと直交する短手方向Cにも前記等間隔と同じまたは異なる等間隔で複数の例(例えば4〜7列)をなすように並べた状態になるよう配置されている。これにより、複数の通気孔71は、第2曲げ通路部54Cの末端の第3通路空間TS3又は出口53の開口形状の全域に、ほぼ均一に点在している。
【0043】
そして、この多孔部材70における複数の通気孔71については、
図8等に拡大して示すように、その開口面積が空気の通過する方向Jの下流側になるにつれて連続的に小さくなる貫通孔として構成されている。
【0044】
実施の形態1では、通気孔71の開口形状が円形であるため、その円形からなる開口の直径Rを空気の通過する方向Jの下流側になるにつれて連続的に小さくすることにより、通気孔71の開口面積が空気の通過する方向Jの下流側になるにつれて連続的に小さくなるようにしている。具体的には、実施の形態1における通気孔71は、その内壁面71aが、基材75の表面のうち第3通路空間TS3に向く内側表面75aにおける鉛直線(二点鎖線)に対して孔の中心側に近づく側に所要の傾斜角(勾配)αだけ傾斜した内壁面になるよう形成されている(
図8(c))。この結果、実施の形態1における通気孔71は、板状の基材75において空気の通過する方向Jの上流側の端部における通気孔71の開口端71bの直径R1が最大となり、その空気の通過する方向J1の下流側の端部における通気孔71の開口端71cの直径R2が最小になる貫通孔になっている(
図8(b))。つまり、この通気孔71は、その内壁面71aが円錐台の外周面の形状になっている。
【0045】
多孔部材70は、送風ダクト51Aと同じ材料で一体的に成形したものでも、あるいは、送風ダクト51Aとは別に製作して後付けするものでもよい。通気孔71の開口形状、開口寸法、孔長さ、及び孔の存在密度の各値については、第2曲げ通路部54Cから出口53を通して流れ出る空気の風速を可能な限り均一化するという観点から選択設定される。また、これらの値は、送風ダクト51Aの寸法(通路部54の通路空間TSの容量)や、送風ダクト51A又は帯電装置4に流すべき空気の単位時間当たりの流量なども考慮して設定される。
【0046】
<送風装置の動作>
以下、この送風装置5の動作(主に送風ダクト51Aに起因した動作)について説明する。
【0047】
送風装置5は、画像形成動作時などの駆動設定時期が到来すると、まず送風機50が回転駆動して所要の風量の空気を送り出す。その始動した送風機50から送られる空気(E)は、接続ダクト55を通して送風ダクト51Aの入口52から取り入れられた後、それに続く導入通路部54Aの第1通路空間TS1内に流れ込むように送られる(
図5)。
【0048】
続いて、送風ダクト51Aに取り入れられた空気(E)は、
図5や
図9に示すように、導入通路部54Aの第1通路空間TS1を通して第1曲げ通路部54Bの第2通路空間TS2に流れ込む(矢印E1a,E1b,E1c等を参照)。この第1曲げ通路部54Bに流れ込む空気(E1)は、第1抑制部61における遮断部65によって遮断される一方で第1抑制部61における通気部66を通過し、その進行方向(空気の流れる方向)がほぼ直角の方向に変えられた状態になって進む。
【0049】
この際、第1抑制部61の通気部66を通過するときの空気(E2)は、その流れが導入通路部54Aの第1通路空間TS1の断面積よりも相対的に狭い開口形状(開口面積)からなる通気部66を通過することで抑制されて圧力が上昇した状態になり、その通気部66から均一な状態になって流れ出る。
【0050】
続いて、第1抑制部61の通気部66を通過して第2曲げ通路部54Cの第3通路空間TS3に流れる空気(E2)は、少し下方に曲がって進み、その一部が下方側にある出口53にむけて進む空気(E2a)になる一方で、その残りが第2曲げ通路部54Cのうち第1抑制部61の通気部66から遠い側の内壁面54gに衝突して上方にある広い第3通路空間TS3内で旋回するような状態で拡散しながら進む空気(E2b)になる。この旋回するように進む空気(E2b)は、第1抑制部61の通気部66を通過して第3通路空間TS3内に流れ込む空気(E2)にその上方側から接近して合流するとともにその空気(E2)の流れを下方に少し押し下げるように進む。
【0051】
この際、第3通路空間TS3内に流れ込む空気(E2)は、特に第1抑制部61の通気部66の空間よりも容積が広い第3通路空間TS3(厳密には第2通路空間TS2の残り一部を含む)内で旋回するような状態で拡散しながら進む空気(E2b)によって第3通路空間TS3内で一時的に滞留するようになり、その風速のむらが低減される。
【0052】
最後に、第2曲げ通路部54Cの第3通路空間TS3内に流れた空気は、
図9に矢印E3として示すように、第2曲げ通路部54Cの末端における出口53に設けられた最下流の抑制部62を構成する多孔部材70における複数の通気孔71を通過することで、出口53から排出される。
【0053】
この際、出口53から排出される空気(E3)は、第2曲げ通路部54Cの第3通路空間TS3や出口53の開口面積よりも相対的に狭い多孔部材70における複数の通気孔71を通過することで流れが抑制されて圧力が上昇した状態になり、出口53から均一な状態になって流れ出る。
【0054】
また、多孔部材70における複数の通気孔71は、
図10に示されるように、その開口面積が空気の通過する方向Jの下流側になるにつれて連続的に小さくなる貫通孔であるため、特に第2曲げ通路部54Cの第3通路空間TS3内で旋回するように流れる空気(E2b)が二点鎖線の矢印で例示するように各通気孔71に導入されやすくなり、多孔部材70の各通気孔71のすべてに対して通過しやすくなる。しかも、この各通気孔71を通過するときの空気は、その通過する方向Jの下流側になるにつれて各通気孔71の開口面積が小さくなって通路が次第に絞られるような空間を通過することで圧力損失が生じる。この結果、各通気孔71を通過して排出されるときの空気(T3)の風速が均一化されやすくなる。
【0055】
以上により、送風ダクト51Aの出口53から排出される空気(E3)は、2つの抑制部61,62を通過して排出されることにより、出口53の開口形状(細長い長方形)の特に長手方向Bにおいて風速のむらが少なくほぼ揃った状態になる。また、出口53から排出される空気(E3)は、2つの抑制部61,62を通過して排出されることにより、出口53の開口形状の長手方向Bはもとよりその短手方向Cにおいても風速の違いが少なく一定の範囲内に揃えられた状態になる。
【0056】
そして、この送風装置5における送風ダクト51Aの出口53から排出された空気(E3)は、
図9に示されるように、帯電装置4のシールドケース40における開口部43を通してシールドケース40内に吹き込まれて流入した後、シールドケース40の内部空間Sにおいて隔壁40dを境に区分される各空間(S1,S2)内にそれぞれあるコロナ放電ワイヤ41A,41Bと、そのシールドケース40の下部開口部にあるグリッド電極42に吹きつけられる。
このコロナ放電ワイヤ41A,41Bとグリッド電極42に吹きつけられる空気は、前述したように空気(E3)が送風ダクト51Aの出口53の開口形状における長手方向B及び短手方向Cにおいてほぼ揃った風速で排出されやすくなるので、コロナ放電ワイヤ41A,41Bとグリッド電極42とに対してその各長手方向Bにおいてほぼ等しい状態で吹きつけられるとともに、2つのコロナ放電ワイヤ41A,41Bにもほぼ等しい状態で吹きつけられる。
【0057】
これにより、帯電装置4における2本のコロナ放電ワイヤ41A,41Bとグリッド電極42にそれぞれ付着しようとする紙粉、トナーの外添剤、放電生成物などの不要物を、より均一性が向上した空気の吹きつけでむらなく遠ざけることができる。
この結果、帯電装置4では、そのコロナ放電ワイヤ41A,41Bやグリッド電極42に不要物が疎らに付着することが原因で放電性能(帯電性能)にむら等の劣化現象が発生してしまうことが防止され、感光体ドラム21の周面をより均一(その回転軸方向に対して均一)に長期にわたり帯電することが可能になる。
【0058】
<試験>
ここで、下記構成の送風ダクト51Aを適用した送風装置5の性能特性(送風ダクト51Aの出口53から排出される空気の風速分布)を調べる試験を行った。
【0059】
試験は、各構成の送風ダクト51Aに対して、その入口52から送風機50により平均風量が0.27m
3/分になる空気を導入したとき、その出口53から排出される空気の風速をシミュレーションにより測定したものである。
このときの風速の測定は、
図6や
図11に示すように、出口53に設けた最下流の抑制部62の多孔部材70として、複数の通気孔71を出口53の長手方向Bに沿って等間隔で列状に並べるとともにその列を出口53の短手方向Cに対して等間隔で7つ(7列)配置した構成のものを適用し、その7列のうち短手方向Cにおける両端にある列(第1列目:line.1及び第7列目:line.7)を除く第2列目(line.2)から第6列目(line.6)までの各通気孔71からそれぞれ排出される空気の風速を測定することにより行った。ちなみに、第4列目(line.4)が出口53の短手方向Cの中央位置にほぼ相当する。
【0060】
送風ダクト51Aとしては、その全体の形状が
図3〜
図8に示すような形状の通路部54を備えたものであって、入口52が縦横の寸法:23mm×22mmからなるほぼ正方形(少し縦長の長方形)の開口形状であり、出口53が長手方向B及び短手方向Cの寸法:350mm×17.5mmの細長い長方形の開口形状であるものを使用した。第1曲げ通路部54Bの第2通路空間TS2は、その幅Wが354mm、その高さHが23mmの長方形の断面形状からなる通路空間とした。送風ダクト51Aの全通路空間TS1〜TS3の合計容積は、約450cm
3とした。
【0061】
また、送風ダクト51Aにおける第1抑制部61は、その遮断部65の上流側面部65aが、第1曲げ通路部54Bの第2通路空間TS2において入口52の一端部52aからのずれ量Nが6mmとなる部位に存在するように設けた(
図4)。試験では、
図5に二点鎖線で例示するように、送風ダクト51Aにおいて、その入口52の一端部52aから第1抑制部61の入口52側に存在する端部までの間を平面の内壁面でつなげたような形状にしている。
第1抑制部61における遮断部65は、その厚さ(通気部66の経路長M)を8mmとした。一方、第1抑制部61における通気部66は、その高さh1が1.5mm、幅Wが354mm、経路長Mが8mmからなる長方形の開口形状からなるものとした。
【0062】
さらに、送風ダクト51Aにおける第2抑制部62は、孔径が1mm、長さ(基材75の厚さ)が3mmの通気孔71を、上述した7列の状態に配置してその密度が約42個/cm
2となる条件で設けた多孔部材70を用いて構成した。
また、多孔部材70としては、
図11に示すように厚さKが3mmの基材75に、その内側表面75a側の端部開口71bの孔径R1が1mmφとなり、内壁面72の傾斜角α(
図8(c))が1°,2°,3°のいずれかの角度になる形状(断面形状)の通気孔71をそれぞれ設けたものを適用した。
【0063】
この各通気孔71を設けた多孔部材70をそれぞれ適用した送風ダクト51Aを用いてシミュレーションによる測定を行った。
このときの試験結果を
図13から
図15に示す。
【0064】
また比較のため、内壁面72の傾斜角αが「0°」になる形状(換言すれば通気孔の開口面積が一定になる形状)の通気孔71を設けた多孔部材70を適用した送風ダクト(比較例)を用いて上記試験を同様に行った。
比較例の送風ダクトは、通気孔71の傾斜角αが上記のように異なる値にした点で相違するのみで、それ以外については上記試験の送風ダクト51A(実施例)と同じ構成からなるものである。
この比較例の試験結果を
図12に示す。
【0065】
図12に示す結果から、比較例(通気孔71の傾斜角αが0°の場合)の送風ダクトでは、出口53から排出される空気の風速が長手方向Bにおいてむらがあることがわかる。特に比較例では、感光体ドラム21の表面のうち両端部における非画像形成領域の間に挟まれる画像形成領域の片側において、風速がゼロに近い状態に遅くなる顕著なむらが発生することがわかる。
【0066】
これに対して、実施例(特に通気孔71の傾斜角αが1°及び2°の場合)の送風ダクト51Aでは、
図13及ぶ
図14に示す結果から、通気孔71のいずれの列においても風速が長手方向Bでむらが少なく、ほぼ均一化されることがわかる。しかも、この実施例の送風ダクト51Aでは、第2列目(line.2)から第6列目(line.6)までの各通気孔71からの風速が画像形成領域において2m/sの誤差範囲におさまる良好な結果が得られることもわかる。
ちなみに、この実施例の送風ダクト51Aでは、いずれの列の通気孔71からの風速も、比較例の送風ダクトの場合に比べて上昇していることもわかる。これは、通気孔71を上記傾斜角αからなる形状にしていることにより、第2曲げ通路部54Cの第3通路空間TS3に流れ込んだ空気(E2)が多孔部材70における各通気孔71に入りやすくなることによるものと推測される。
【0067】
しかし、実施例のうち通気孔71の傾斜角αが3°の場合の送風ダクト51Aでは、
図15に示す結果から、上記他の実施例の送風ダクト51Aの場合に比べて、風速が長手方向Bにおいて少しむらになっていることがわかる(ただし、画像形成領域の一端側で風速が極端に遅くなるむらの発生はない)。しかも、第2列目(line.2)から第6列目(line.6)までの各通気孔71からの風速が画像形成領域において2m/sの誤差範囲にはおさまらなくなることもわかる。これは、通気孔71の上記傾斜角αが大きすぎると、第3通路空間TS3に流れ込んだ空気(E2)がその各通気孔71に入りやすくなりすぎて抑制部62の多孔部材70による整流機能がやや不十分になってしまうからであると推測される。
【0068】
この試験結果からすると、通気孔71の傾斜角αについては例えば「0°<α<3°」の範囲内で設定することが好ましいといえそうである。
【0069】
[他の実施の形態]
実施の形態1では、多孔部材70における複数の通気孔71として、その開口面積が空気の通過する方向Jの下流側になるにつれて連続的に小さくなる貫通孔を例示したが、その複数の通気孔71については、
図16(a)に例示するように、その開口面積が空気の通過する方向Jの下流側になるにつれて段階的に小さくなる通気孔(73)として構成することもできる。
【0070】
図16に例示する多孔部材70における複数の通気孔73は、その開口面積が3段階で小さくなる構成例である。実際には、開口形状が円形の通気孔73は、孔径が最大の直径R1の1段孔部73Aと、孔径が最小の直径R2の2段孔部73Cと、孔径が中間の直径R3(R2<R3<R1)の3段孔部73Bとから構成されている。
このような多段型の通気孔73は、例えば、
図16(b)に示されるように、多孔部材70の基板75を構成する3分割した厚さ(例えば3等分したK/3)の3つの分割基板75A,75B,75Cに1段孔部73A,2段孔部73C,3段孔部73Bをそれぞれ形成し、その3分割した分割基板75A,75B,75Cを通気孔73の中心点を基準にして重ね合わせて一体にすることで得られる。
なお、この多段型の通気孔73は、2段構成の貫通孔や、4段以上の貫通孔であっても構わない。
【0071】
また、実施の形態1では、多孔部材70における複数の通気孔71(73)として、その開口形状が円形からなる貫通孔を例示したが、その複数の通気孔71(73)については、
図17に例示するように、その開口形状が円形以外の形状(例えば、楕円形、長方形、ひし形)からなる貫通孔にしても構わない。
図17(a)に示す通気孔71(73)は、開口形状が楕円形からなる貫通孔の構成例であり、同図(b)に示す通気孔71(73)は、開口形状が長方形からなる貫通孔の構成例である。
【0072】
このうち
図17に例示するような一方向に長い開口形状の通気孔71(73)については、そのすべての孔の長手方向が出口53の長手方向Bに沿うよう揃えて配置することが好ましい。このように配置した場合は、その各通気孔71(73)から排出される空気の風速をその長手方向Bにおいてむらがより少なくより均一化しやすくなる。
【0073】
また、実施の形態1では、多孔部材70における複数の通気孔71(73)として、その開口面積(特に基材75の内側表面75aの端部開口71bの開口面積)又は孔径がすべて同じ条件にした構成例を例示したが、その複数の通気孔71(73)については、その開口面積又は孔径を場所により異なる値に設定した構成を採用しても構わない。この場合、例えば、出口53又は最下流の抑制部62の多孔部材70のうち複数の通気孔71(73)に空気が入り込みにくい領域に配置される通気孔71(73)の開口面積又は孔径を他の領域に配置される通気孔71(73)の開口面積又は孔径よりも相対的に大きい値に設定することが好ましい。このように構成した場合は、多孔部材70に配置されるすべての通気孔71(73)から排出される空気の風速を全体としてよりむらが少なく均一化しやすくなる。
【0074】
また、実施の形態1では、送風ダクト51Aとして、通路空間TSが途中で2回曲げられた形状になるよう形成された通路部(導入通路部54A、第1曲げ通路部54B及び第2曲げ通路部54Cからなる形状の通路部)54を備えた送風ダクトの構成例を示したが、送風ダクトとしては、それ以外にも、例えば
図18に例示するような通路空間TSが途中で1回曲げられた形状になるよう形成された通路部(導入通路部54A及び第1曲げ通路部54Dからなる通路部)54を備えた送風ダクト51Bを適用することができる。
【0075】
図18に例示する送風ダクト51Bは、実施の形態1に係る送風ダクト51Aと同様の導入通路部54Aの途中から水平方向にほぼ直角に曲がった後に直線状に延びる通路空間TS4を有し、その終端(面)に出口53を存在させた形状からなる第4曲げ通路部54Dを備えたものである。
【0076】
そして、この送風ダクト51Bにおいては、第1抑制部61として、実施の形態1における第1抑制部61の場合(
図4、
図7等を参照)と同様に、遮断部65と1つの通気部66とで構成された構造の抑制部を設けている。遮断部65の位置Nなどの条件は実施の形態1における遮断部65と同じ内容であっても又は異なる内容であってもよい。また、通気部66の長さMや高さh1等の条件についても実施の形態1における遮断部65と同じ内容であっても又は異なる内容であってもよい。
また、この送風ダクト51Bでは、その第4曲げ通路部54Dの終端にある出口53に実施の形態1の場合と同様の構成からなる多孔部材70を用いた最下流の抑制部62を設けている。
【0077】
さらに、実施の形態1等においては、送風装置5の送風ダクト51A,51Bにおける複数の抑制部として2つの抑制部61,62を設けた場合を示したが、3個以上設けても構わない。また、出口53に設けた最下流の抑制部62以外の抑制部は、ダクト51の通路部54の通路空間TSにおいてその断面形状が変更される部位や、その通路空間TSにおいて空気を流す方向が変更された後(直後など)の部位に設けることが好ましい。
【0078】
また、送風装置5を適用する帯電装置4については、グリッド電極42を設置しない形式の帯電装置、いわゆるコロトロン型の帯電装置であってよい。また、帯電装置4は、コロナ放電ワイヤ41として1本使用するものや3本以上使用するものであってもよい。また、送風装置5を適用する対象構造物としては、感光体ドラム21等の除電を行うコロナ放電器や、感光体ドラム21以外の被帯電体を帯電又は除電させるコロナ放電器であってもよい他、コロナ放電器以外であって且つ送風装置5による空気の吹きつけが必要であって長尺な構造物であっても構わない。
【0079】
この他、画像形成装置1については、送風装置5を適用する必要がある長尺な対象構造物を装備するものであれば、その画像形成方式等の構成については特に限定されない。例えば、実施の形態1では、画像形成装置1として1つの作像ユニット20を使用して単色の画像を形成するものを例示しているが、画像形成装置としては、異なる色の画像を形成する複数の作像ユニット20を使用して多色の画像を形成する画像形成装置であってもよい。また必要であれば、画像形成装置としては、現像剤以外の材料で構成される画像を形成する画像形成方式の画像形成装置であっても構わない。