(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、前記第1の検知方式においては、前記走査線を流れる電流、前記信号線を流れる電流、または前記X線検出素子に逆バイアス電圧を印加するバイアス線または結線を流れる電流に基づいてX線の照射開始を検知することを特徴とする請求項1に記載のX線画像撮影装置。
前記第2の検知方式における前記検知閾値として、複数種類の検知閾値が設定されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のX線画像撮影装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るX線画像撮影装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
なお、以下では、X線画像撮影装置として、シンチレーター等を備え、放射されたX線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型のX線画像撮影装置について説明するが、本発明は、シンチレーター等を介さずにX線を検出素子で直接検出する、いわゆる直接型のX線画像撮影装置に対しても適用することができる。
【0021】
[X線画像撮影装置の構成]
図1は、本実施形態に係るX線画像撮影装置の外観を示す斜視図であり、
図2は、
図1のX−X線に沿う断面図である。なお、以下では、X線画像撮影装置1における上下方向については、X線画像撮影装置1を
図2の状態に配置した場合に基づいて説明する。
【0022】
図1に示すように、X線画像撮影装置1の筐体2の一方の側面には、電源スイッチ37や切替スイッチ38、コネクター39、インジケーター40等が配置されている。また、図示を省略するが、筐体2の反対側の側面には、外部と無線方式で通信を行うためのアンテナ41(後述する
図4参照)が設けられている。
【0023】
図2に示すように、筐体2の内部には、基台31が配設されており、基台31の上面側には、図示しない鉛の薄板等を介して基板4が配置されている。基板4の上面には前述したX線検出素子7等が設けられているが、この点については後で説明する。そして、基板4の上方には、シンチレーター基板34に形成されたシンチレーター3と基板4のX線検出素子7等とが対向する状態でシンチレーター3やシンチレーター基板34が配置されている。
【0024】
基台31の下面側には、電子部品32等が配設されたPCB基板33や内蔵電源24等が取り付けられている。また、基台31の下面側には、X線センサー25が取り付けられている。本実施形態では、このようにしてセンサーパネルSPが形成されている。また、本実施形態では、センサーパネルSPと筐体2の側面との間に、それらがぶつかり合うことを防止するための緩衝材35が設けられている。
【0025】
図3に示すように、基板4の上面(すなわちシンチレーター3に対向する面)4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。また、複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各領域rには、X線検出素子7がそれぞれ設けられている。本実施形態では、このように、各X線検出素子7が二次元状(マトリクス状)に配列されている。
【0026】
また、本実施形態では、複数のバイアス線9が各信号線6に平行に配設されており、各バイアス線9は結線10に接続されている。そして、基板4の周縁部に、複数の入出力端子11が設けられており、各入出力端子11はそれぞれ各走査線5や各信号線6、結線10と接続されている。そして、図示を省略するが、各入出力端子11は、後述する読み出しIC16等のチップがフィルム上に組み込まれたフレキシブル回路基板と接続され、フレキシブル回路基板が基板4の裏面側に引き回されて前述したPCB基板33等に接続されるようになっている。
【0027】
ここで、X線画像撮影装置1の回路構成について説明する。
図4は本実施形態に係るX線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図である。各X線検出素子7では、図示しない被写体を介して照射されたX線の線量(或いはシンチレーター3で変換された電磁波の光量)に応じた電荷が各X線検出素子7内でそれぞれ発生するようになっている。なお、以下では、X線検出素子7がフォトダイオードで構成されている場合について説明するが、X線検出素子7を例えばフォトトランジスターやCCD(Charge Coupled Device)等を用いることも可能である。
【0028】
そして、各X線検出素子7の一方の電極7aには、バイアス線9が接続されており、バイアス線9や結線10を介してバイアス電源14から各X線検出素子7に逆バイアス電圧が印加されるようになっている。また、各X線検出素子7の他方の電極7bには、スイッチ素子としてTFT8が接続されており、TFT8は信号線6に接続されている。
【0029】
また、TFT8は、後述する走査駆動手段15から走査線5を介してオン電圧が印加されるとオン状態となり、X線検出素子7内に蓄積されている電荷を信号線6に放出させる。また、走査線5を介してオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、X線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、X線検出素子7内に電荷を蓄積させるようになっている。
【0030】
各走査線5は、それぞれ走査駆動手段15のゲートドライバー15bに接続されている。走査駆動手段15では、配線15cを介して電源回路15aからゲートドライバー15bにオン電圧とオフ電圧が供給されるようになっており、ゲートドライバー15bで走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替えるようになっている。
【0031】
また、各信号線6は、それぞれ読み出しIC16内に内蔵された各読み出し回路17に接続されている。本実施形態では、読み出し回路17は、積分回路18と相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサー21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、
図4では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。
【0032】
撮影時に、スイッチ素子である各TFT8がオフ状態とされた状態で図示しないX線照射装置からX線画像撮影装置1にX線が照射されると、X線の照射により各X線検出素子7内で発生した電荷がX線検出素子7内に蓄積される。そして、各X線検出素子7からの画像データdの読み出し処理の際には、走査駆動手段15のゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧が順次印加されて、各X線検出素子7内から信号線6に電荷がそれぞれ放出される。
【0033】
そして、その電荷が、各読み出し回路17の積分回路18に流れ込んで蓄積され、蓄積された電荷量に応じた電圧値が出力される。相関二重サンプリング回路19は、各X線検出素子7から電荷が流れ込む前と後にそれぞれ積分回路18から出力された出力値の差分をアナログ値の画像データdとして出力する。
【0034】
そして、出力された各画像データdがアナログマルチプレクサー21を介してA/D変換器20に順次送信され、A/D変換器20でデジタル値の画像データdに順次変換されて記憶手段23に出力されて順次保存される。このようにして画像データdの読み出し処理が行われるようになっている。
【0035】
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピューターや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等で構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。
【0036】
制御手段22には、SRAM(Static RAM)やSDRAM(Synchronous DRAM)、NAND型フラッシュメモリー等で構成される記憶手段23や、リチウムイオンキャパシター等で構成される内蔵電源24、X線センサー25等が接続されている。また、制御手段22には、前述したアンテナ41やコネクター39を介して外部と無線方式や有線方式で通信を行うための通信部42が接続されている。
【0037】
なお、例えばX線センサー25と制御手段22とを結ぶ配線でノイズを拾ったりしないように配線をシールドしたり、或いはX線センサー25にX線が到達し易いようにするために、基台31(
図2参照)のX線センサー25に対応する部分には鉛の薄板を設けないようにする等の処理が適宜行われる。
【0038】
一方、制御手段22は、後述する第1の検知方式と第2の検知方式に基づいてX線の照射開始を検知するようになっている。そして、第1の検知方式と第2の検知方式のいずれかの方式により、または両方の方式によりX線の照射開始を検知した場合には、走査駆動手段15のゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧を印加して、各TFT8をオフ状態として、X線の照射によりX線検出素子7内で発生する電荷を各X線検出素子7内に蓄積させる電荷蓄積状態に移行させる。
【0039】
そして、制御手段22は、電荷蓄積状態に移行してから所定時間が経過すると、ゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加させ、各読み出し回路17に読み出し動作をさせて、前述したようにして各X線検出素子7からの画像データdの読み出し処理を行わせるようになっている。
【0040】
[X線の照射開始を検知する検知方式について]
本実施形態では、制御手段22は、X線の照射開始を検知する検知方式として2つの検知方式を有している。
【0041】
[第1の検知方式]
制御手段22は、第1の検知方式として、X線の照射によりX線画像撮影装置1内を流れる電流が増加することに基づいてX線の照射開始を検知するように構成されている。そして、本実施形態では、
図4に示すように、バイアス線9の結線10に、結線10中を流れる電流Iを検出する電流検出手段43を有しており、電流検出手段43が検出した電流I(本実施形態では後述する電流Iの積分量ΣI)に基づいてX線の照射開始を検知するようになっている。
【0042】
電流検出手段43は、例えば
図5(A)に示すように積分回路として構成することが可能である。すなわち、電流検出手段43は、例えばオペアンプ43aとコンデンサー43bとスイッチ43c等で構成されており、オペアンプ43aの反転入力端子と出力端子間がコンデンサー43bとスイッチ43cとで接続されている。
【0043】
そして、オペアンプ43aの非反転入力端子は前述したバイアス電源14と接続されており、オペアンプ43aの反転入力端子にはバイアス線9や結線10が接続されている。本実施形態では、このようにして、電流検出手段43のオペアンプ43aを介してバイアス電源14からバイアス線9や結線10に逆バイアス電圧が印加されるようになっている。
【0044】
また、本実施形態では、このような構成の電流検出手段43にバイアス線9や結線10を流れる電流Iがコンデンサー43bに流れ込むことで、コンデンサー43bに電荷が蓄積していき、コンデンサー43bの電極間の電位差に応じた電圧値(すなわち電流Iの積分値ΣIに対応する電圧値)が出力される。そして、本実施形態では電流検出手段43から出力される電圧値が負の値であるため、それを正の値に反転させたり、出力された電圧値をデジタル値に変換する等の処理が行われた後、制御手段22に出力されるようになっている。
【0045】
なお、このように、電流検出手段43から出力されるのは電圧値であるが、説明を簡単にするために、以下では、電流検出手段43で検出された電流Iの積分値ΣIが出力されるものとして説明する。また、電流検出手段43で検出される対象は、本実施形態のように電流Iの積分値ΣIである必要はなく、バイアス線9や結線10を流れる電流Iそのものの値であってもよい。
【0046】
また、電流Iがコンデンサー43bに流れ込み続けると飽和してしまうため、本実施形態では、
図5(B)に示すように、所定時間ごとにスイッチ43cがオンされてリセット処理(
図5(B)中のR参照)が行われるように構成される。その際、X線画像撮影装置1にX線が照射されていない場合でも、各X線検出素子7内で暗電荷(暗電流等ともいう。)が発生しており、バイアス線9の結線10中に値は小さいが電流Iが流れている。そのため、
図5(B)に示すように、電流検出手段43から出力される電流Iの積分値ΣIは少しずつ増加してはリセットされる状態が繰り返される。
【0047】
そして、X線画像撮影装置1にX線が照射されると、X線検出素子7内で、暗電荷とはケタ違いの量の電荷が発生してX線検出素子7の2つの電極7a、7b間の電位が変化する。そのため、
図5(B)に示すように、それを補うためにバイアス線9や結線10を流れる電流Iが格段に増加する。
【0048】
そこで、本実施形態では、電流検出手段43で検出される電流Iの積分値ΣIに検知閾値ΣIthを設定しておき、制御手段22は、電流検出手段43が検出した電流Iの積分値ΣIが検知閾値ΣIthを越えた時点で、X線の照射開始を検知するようになっている。なお、この検知方式については、例えば特開2009−219538号公報等に詳述されているため、詳しくはそちらを参照されたい。
【0049】
なお、以下では、上記のように構成されている場合について説明するが、第1の検知方式は、上記の場合に限定されない。すなわち、本実施形態のように、バイアス線9や結線10を流れる電流以外にも、例えば、走査線5や信号線6等を流れる電流も、X線の照射が開始されると増加するため、それに基づいてX線の照射開始を検知するように構成することができる。このように、第1の検知方式は、X線の照射によりX線画像撮影装置1内を流れる電流の量が増加することに基づいてX線の照射開始を検知するものであればよく、本実施形態の場合に限定されない。
【0050】
また、本実施形態では、上記のように、X線画像撮影装置1にX線が照射されていない状態でも各X線検出素子7内で暗電荷が発生しており、電流検出手段43で検出される電流Iには、暗電荷に起因するオフセット分oが重畳されている。そのため、例えば、X線画像撮影装置1にX線が照射されていない時点で結線10中を流れる電流Iの積分値ΣIを電流検出手段43で検出して暗電荷に起因するオフセット分oの積分値Σoとして保存しておく。
【0051】
実際には、
図5(B)に示したリセットと次のリセットとの間の電流Iの積分値ΣIの時間的推移をオフセット分oの積分値Σoの時間的推移として保存しておく。オフセット分oの積分値Σoの時間的推移を複数回検出して、それらの平均をオフセット分oの積分値Σoの時間的推移とするように構成することも可能である。そして、X線の照射開始の検知処理を行う際に、電流検出手段43で検出された電流Iの積分値ΣIから上記のオフセット分oの積分値Σoを減算した値に基づいて処理を行うように構成することも可能である。
【0052】
さらに、電流検出手段43が検出した電流Iの積分値ΣIや電流I自体の値等に対してローパスフィルター処理を行って高周波ノイズを除去することで、例えば、X線画像撮影装置1の近くに電磁波を発する機器等があった場合にその電磁波によりX線画像撮影装置1がX線の照射開始を誤検知してしまったり、X線画像撮影装置1に衝撃や振動が加わった際にその衝撃や振動によりX線の照射開始を誤検知してしまうことを防止することが可能となる。なお、この場合、ローパスフィルターの時定数は適宜調整される。
【0053】
[第2の検知方式]
制御手段22は、第2の検知方式として、X線センサー25の出力に基づいてX線の照射開始を検知するようになっている。本実施形態では、X線センサー25として、フォトンカウンティングセンサーが用いられている。本実施形態では、X線センサー25は、
図6に示すように、X線が照射されると発生するアナログ値の電圧値Vaが変動し、電圧値Vaが正の設定値Vth+を上回った場合や負の設定値Vth−を下回った場合に、パルス信号Pを出力するようになっている。
【0054】
なお、X線発生装置から照射されたX線がX線センサー25に入射した場合には、例えば
図6にBやCで示すように、X線センサー25にX線の1つの光子(photon)が入射するごとに1つのパルス信号Pが出力される。しかし、X線センサー25に例えばエネルギーが大きい自然放射線等の放射線が入射すると、発生する電圧値Vaが大きく波打ち、X線センサー25に1つの光子が入射したにもかかわらず、例えば
図6にAで示すようにパルス信号Pが複数回出力される場合がある。
【0055】
そして、このような場合、X線センサー25から出力されるパルス信号Pだけを見ていると、X線発生装置から高い線量率のX線が照射されてパルス信号Pが複数出力されているのか、或いはエネルギーが大きい自然放射線等の放射線が入射してパルス信号Pが複数出力されているのかの判別がつかない。そして、エネルギーが大きい自然放射線等の放射線が入射してパルス信号Pが複数出力されているのに、X線発生装置からX線が照射されていると誤検知されかねない。
【0056】
そのため、本実施形態では、制御手段22は、このような誤検知が生じることを防止するために、X線センサー25からパルス信号Pが出力された場合には、パルス信号Pが出力されてから所定のマスク時間Δtmが経過するまでの間は、少なくともX線センサー25からパルス信号Pが出力されたか否かの判断を行わないように構成されている。
【0057】
すなわち、
図7(A)に示すように、制御手段22は、X線センサー25からパルス信号Pが出力されてから所定のマスク時間Δtmが経過するまでの間は、X線センサー25からパルス信号Pが出力されてもそれをいわば無視する。そのため、制御手段22は、X線センサー25が最初のパルス信号Pを出力した後、マスク時間Δtm内にパルス信号Pを何回出力したとしても、X線センサー25からのパルス信号Pの出力を1回としてカウントする。
【0058】
そのため、例えば
図7(B)に示すように、X線センサー25がパルス信号Pを出力したとしても、2回目のパルス信号Pに続く3回目のパルス信号Pはマスク時間Δtm内に出力されているため、制御手段22はこれをカウントしないようになっている。
【0059】
また、本実施形態では、制御手段22は、例えば
図7(B)に示すように、このようなマスク時間Δtmによる制約が存在する条件の下で、上記のように、X線センサー25からパルス信号Pが出力されてから所定時間ΔT内に所定の回数Nのパルス信号Pが出力された時点で、X線発生装置からのX線の照射が開始されたと判断するように構成されている。
【0060】
そのため、例えば所定の回数Nが3に設定されている場合、
図7(B)に示したように、所定時間ΔT内にパルス信号Pが3回出力された場合には、制御手段22は、3回目のパルス信号Pが出力された時点でX線の照射が開始されたと判断する。
【0061】
また、例えばX線画像撮影装置1に衝撃や振動が加わってX線センサー25からパルス信号Pが短期間に複数回出力されても、
図7(A)に示したように、制御手段22は、パルス信号Pの出力を1回としてカウントする。そして、X線画像撮影装置1に衝撃や振動が加わらなくなれば、X線センサー25からはパルス信号Pは出力されない。
【0062】
そのため、このようにX線画像撮影装置1に衝撃や振動が加わったような場合には、最初にパルス信号Pが出力されてから所定時間ΔT内に所定の回数Nのパルス信号Pが出力されないため、制御手段22は、X線の照射が開始されたとは判断しない。そのため、本実施形態では、第2の検知方式によってX線の照射開始を検知する場合でも、X線画像撮影装置1に衝撃や振動が加わった場合にX線の照射開始が誤検知されることはない。
【0063】
なお、
図2や
図4では、X線画像撮影装置1にX線センサー25を1つだけ設ける場合を示したが、例えば
図8に示すように複数設けることも可能である。すなわち、X線センサー25を、基台31の下面側の中央の位置だけでなく、中央の位置以外の位置にも配置するように構成することが可能である。なお、
図8では、X線センサー25を2個設ける場合を示したが、3個以上設けてもよい。
【0064】
このように構成すれば、X線がX線画像撮影装置1に対して照射野が絞られて照射された場合でも、複数のX線センサー25のうちのいずれかでX線を感知することが可能となり、第2の検知方式を用いてX線の照射開始をより的確に検知することが可能となる。なお、本実施形態では、X線センサー25が設けられていない位置にX線の照射野が絞られた場合でも、第1の検知方式を用いてX線の照射開始を検知することができる。
【0065】
[本実施形態に係る検知方式の特徴]
本実施形態に係る第1の検知方式では、X線画像撮影装置1に強いX線すなわち線量率が高いX線が照射された場合には、
図5(B)に示したように、電流検出手段43で検出される電流Iの積分値ΣIの増加率が非常に大きくなり、速やかに検知閾値ΣIthを越える。そのため、線量率が高いX線の照射が開始されると、それを速やかに(すなわち応答性良く)検知することができる。
【0066】
また、例えばX線画像撮影装置1に衝撃や振動が加わった場合にも、
図9にDで示すように、電流検出手段43で検出される電流Iの積分値ΣIの量が一時的に増えるだけであり、電流Iの積分値ΣIは検知閾値ΣIthを越えない。そのため、本実施形態では、X線画像撮影装置1に衝撃や振動が加わってもX線の照射開始として誤検知されることはない。それに対し、X線画像撮影装置1にX線が照射された場合には、
図9にEで示すように、電流検出手段43で検出される電流Iの積分値ΣIの量が急激に増えて検知閾値ΣIthを越えるため、本実施形態では、X線画像撮影装置1に対するX線の照射が開始された場合には、それを的確に検知する。
【0067】
逆の言い方をすれば、本実施形態では、このように衝撃や振動をX線の照射開始と誤検知しないようにするために、検知閾値ΣIthが比較的高い値に設定されている。そのため、本実施形態では、X線画像撮影装置1に衝撃や振動が加わった場合にはX線の照射開始を誤検知せず、X線画像撮影装置1に対するX線の照射が開始された場合にはX線の照射開始を的確に検知するようになっている。
【0068】
また、電流検出手段43が検出する電流Iの積分値ΣIの値のダイナミックレンジ(すなわち
図9における縦軸方向のレンジ)が狭いと、すなわち検知可能なX線の線量率のダイナミックレンジが狭いと、電流Iの積分値ΣIが飽和し易くなり、上記のように、衝撃や振動による電流Iの積分値ΣIの増加とX線の照射による電流Iの積分値ΣIの増加とを切り分ける検知閾値ΣIthをうまく設定することができなくなる。そのため、本実施形態では、電流検出手段43が検出可能な電流Iの積分値ΣIの値のダイナミックレンジ(すなわち検知可能なX線の線量率のダイナミックレンジ)をできるだけ広くとるように構成されている。
【0069】
一方、本実施形態では、上記のように、第2の検知方式では、X線センサー25からパルス信号PがN回(ただし所定時間ΔT内)出力された時点で初めてX線の照射開始が検知される。そのため、第2の検知方式では、X線の照射開始を即座に検知することができる第1の検知方式よりも応答性が遅くなるように構成されている。
【0070】
しかし、X線発生装置から照射されたX線の線量率が低い場合、第1の検知方式では、電流検出手段43で検出される電流Iの積分値ΣIの増加量が少なく、リセット(
図9等のR参照)の間に増加した電流Iの積分値ΣIが検知閾値ΣIthに到達しないと、X線が照射されていることを検知することができない場合があるが、第2の検知方式では、そのような場合でも、
図7(B)に示したように所定時間ΔT内にX線センサー25からパルス信号Pが所定回数N以上出力されれば、X線の照射開始を確実に検知することができる。
【0071】
そのため、本実施形態では、制御手段22は、X線発生装置から高い線量率のX線が照射された場合には第1の検知方式を用いて照射開始を検知し、X線発生装置から低い線量率のX線が照射された場合には第2の検知方式を用いて照射開始を検知するようになっている。
【0072】
そして、第2の検知方式では、このように低い線量率のX線の照射が開始された場合にはそれを的確に検知するようにするため、上記の第1の検知方式ほど検知可能なX線の線量率のダイナミックレンジは広くなくてよいが低い線量率のX線に対応するようにダイナミックレンジが調整される。また、検知閾値(この場合は所定時間ΔTや所定回数N)がより低い線量率のX線を検知することができるように適切に設定される。
【0073】
なお、前述したRI(radioisotope)検査後の患者のX線撮影を行うような場合、患者の体内からある程度の頻度でγ線が放射されるため、それを第2の検知方式で検知してしまうとX線の照射開始の誤検知が生じる可能性がある。そこで、RI検査後の患者からγ線が放射される頻度(すなわちX線センサー25から出力されるパルス信号P(RI)の頻度)と、X線発生装置から低い線量率のX線が照射された場合にX線センサー25にX線の光子が到達する頻度(すなわちX線センサー25から出力されるパルス信号P(X)の頻度)を比べると、通常、患者から放射されるγ線の頻度(
図10(A)参照)よりも、低い線量率のX線が照射された場合(
図10(B)参照)の方が頻度が高い。
【0074】
そのため、第2の検知方式における検知閾値である所定時間ΔTや所定回数Nを適切に設定することで、低い線量率のX線が照射された場合には照射開始を的確に検知することが可能となり、また、RI検査後の患者の体内から照射されるγ線により、X線が照射されていないにもかかわらずX線の照射開始を誤検知してしまう可能性を非常に低くすることが可能となる。
【0075】
すなわち、本実施形態に係る第2の検知方式では、上記のように第1の検知方式よりも応答性が遅くなるが、時間(上記の所定時間ΔT)をある程度かけて、低い線量率のX線が照射されたのか、RI検査後の患者の体内から照射されたγ線であるかを的確に判別する。
【0076】
そして、このように所定時間ΔTをある程度長くして判別することで、
図11に示すように、上記の所定時間ΔTが短い場合に比べて、X線センサー25から出力されるパルス信号P(RI)の回数nやパルス信号P(X)の回数nのばらつき(誤差)が小さくなり、上記の所定回数Nを適切に設定することで、RI検査後の患者の体内から照射されたγ線の場合(P(RI)参照)と、低い線量率のX線が照射された場合(P(X)参照)とを的確に切り分けて判別することが可能となる。
【0077】
本実施形態では、このようにして、第2の検知方式における検知閾値である所定時間ΔTをある程度長く設定し、所定回数Nを適切に設定することで、低い線量率のX線が照射された場合には照射開始を的確に検知するとともに、RI検査後の患者の体内から照射されるγ線による誤検知の発生を可能な限り低減させるようになっている。
【0078】
[作用]
次に、本実施形態に係るX線画像撮影装置1の作用について説明する。
【0079】
本実施形態に係るX線画像撮影装置1では、例えば被写体が乳幼児であり被写体の動きが激しいため、X線発生装置からX線画像撮影装置1に比較的高い線量率のX線が短時間照射された場合、
図5(B)等に示したように、電流検出手段43で検出される、バイアス線9や結線10を流れる電流Iの積分値ΣIが速やかに増加して検知閾値ΣIthを越える。そのため、X線画像撮影装置1に高い線量率のX線が短時間照射された場合には、制御手段22は、第1の検知方式に基づいてX線の照射開始を的確に検知することが可能となる。
【0080】
また、例えばX線発生装置のパワーが弱く、X線発生装置からX線画像撮影装置1に比較的低い線量率のX線が長時間照射された場合、第1の検知方式では、リセット間に電流Iの積分値ΣIが検知閾値ΣIthに達しない場合があり得る。しかし、そのような場合でも、第2の検知方式では、
図7(B)に示したように、所定時間ΔT内に所定の回数Nのパルス信号Pが出力された時点でX線の照射が開始されたと判断される。そのため、X線画像撮影装置1に低い線量率のX線が長時間照射された場合には、制御手段22は、第2の検知方式に基づいてX線の照射開始を的確に検知することが可能となる。
【0081】
さらに、例えばRI検査後の患者の体内からある程度の頻度でγ線が放射される場合(
図10(A)参照)、第1の検知方式では、γ線によりX線検出素子7内で電荷が発生して、バイアス線9や結線10を流れる電流Iが多少増加したとしても、電流検出手段43で検出される電流Iの積分値ΣIがリセット間に検知閾値ΣIthを越えることはない。
【0082】
そのため、制御手段22は、患者の体内からある程度の頻度でγ線が放射される場合であっても、X線発生装置からX線が照射されない限り、第1の検知方式に基づいてX線の照射開始を誤検知することはない。
【0083】
また、例えばRI検査後の患者の体内からある程度の頻度でγ線が放射される場合、第2の検知方式における検知閾値である所定時間ΔTや所定回数Nが適切に設定されていれば、制御手段22は、そのような場合であっても、X線発生装置からX線が照射されない限り、第2の検知方式に基づいてX線の照射開始を誤検知することはない。
【0084】
一方、X線発生装置からX線の照射が開始されて第1の検知方式或いは第2の検知方式における上記の条件が満たされた場合には、制御手段22は、上記のようにしてX線の照射が開始されたことを的確に検知する。
【0085】
このように、本実施形態では、RI検査後の患者の撮影を行う場合、制御手段22は、患者の体内からγ線が放射されても、それによってX線の照射開始を誤検知することはなく、また、X線発生装置からX線の照射が開始された場合には、それを的確に検知して、撮影を適切に行うことが可能となる。
【0086】
また、本実施形態では、前述したように、第1の検知方式の場合も第2の検知方式の場合も、いずれもX線画像撮影装置1に衝撃や振動が加わった場合には、制御手段22は、それに基づいてX線の照射が開始されたとは判断しない。そのため、本実施形態では、X線画像撮影装置1に衝撃や振動が加わっても、それによってX線の照射開始の誤検知が生じることが的確に防止される。
【0087】
さらに、本実施形態では、上記のように、X線センサー25にエネルギーが大きい自然放射線等の放射線が入射しても、それによってX線の照射開始の誤検知が生じることが的確に防止される。
【0088】
[効果]
以上のように、本実施形態に係るX線画像撮影装置1によれば、X線画像撮影装置1に照射されるX線の線量率が高い場合でも低い場合でも、或いはRI検査後の患者を撮影する場合でも、制御手段22は、X線の照射開始の誤検知の発生を的確に抑制して、X線の照射開始を的確に検知することが可能となる。
【0089】
そのため、例えば被写体が乳幼児であり被写体の動きが激しいため、照射するX線の線量率を高くして短時間照射する場合でも、或いはX線発生装置のパワーが弱く比較的低い線量率のX線しか照射できないため長い時間照射する場合でも、X線の照射開始の誤検知を的確に抑制して、X線の照射が開始された場合にはそれを的確に検知することが可能となる。
【0090】
また、RI検査後の、体内からγ線を放射する患者のX線撮影を行うような場合でも、X線の照射開始の誤検知を的確に抑制して、X線の照射が開始された場合にはそれを的確に検知することが可能となる。
【0091】
[変形例]
なお、上記の実施形態では、制御手段22は、X線画像撮影装置1に照射されるX線の線量率が高い場合には第1の検知方式を用い、照射されるX線の線量率が低い場合には第2の検知方式を用いてX線の照射開始を検知する場合について説明した。なお、この場合、照射されるX線の線量率が高くもなく低くもなく中間の線量率である場合には、第1の検知方式と第2の検知方式のいずれの方式でも検知可能である。
【0092】
しかし、このように、第1の検知方式で線量率が比較的低い場合(すなわち上記の中間の線量率の場合)でもX線の照射開始を検知しようとすると、上記の検知閾値ΣIthを相対的に小さい値にせざるを得なくなるが、そうすると、RI検査後の患者の体内から放射されるγ線のために増加した電流Iの積分値ΣIが検知閾値ΣIthを越え易くなり、このような場合にX線の照射開始の誤検知が生じる可能性が生じ得る。
【0093】
そこで、本実施形態では、第2の検知方式における検知閾値である所定時間ΔTや所定回数Nを1種類(以下、所定時間ΔTa、所定回数Naという。)だけ設定する場合について説明したが、それとは別の所定時間ΔTb或いは所定回数Nbを設け(すなわち複数種類の検知閾値を設け)、X線の線量率が多少高い場合(すなわち上記の中間の線量率の場合)をカバーするように構成することが可能である。
【0094】
この場合、前述したX線の線量率が低い場合に比べて、上記の中間の線量率の場合にはX線の線量率がやや高いため、単位時間あたりにX線センサー25から出力されるパルス信号Pが増加する。そのため、上記の所定回数Nを変えず、所定時間ΔTbを所定時間ΔTaより短くなるように設定してもよい。また、上記の所定時間ΔTを変えず、所定回数Nbを所定回数Naより増やすように設定してもよい。さらに、所定時間ΔTbを所定時間ΔTaよりも短くし、かつ所定回数Nbを所定回数Naよりも増やすように設定することも可能である。
【0095】
また、X線センサー25に設定されている設定値(すなわち前述した正の設定値Vth+や負の設定値Vth−)を複数種類設けるように構成しても、第2の検知方式で、前述したX線の線量率が低い場合よりもX線の線量率が多少高い上記の中間の線量率の場合もカバーして、そのような線量率のX線が照射された場合でも、第2の検知方式を用いてX線の照射開始を的確に検知することが可能となる。
【0096】
そして、上記のように構成すれば、第1の検知方式における検知閾値ΣIthを小さい値にする必要はなくなるため、第1の検知方式で誤検知が生じる可能性をより低減することが可能となるとともに、第2の検知方式で検知できるX線の線量率の範囲を上記の中間の線量率の領域にも拡大して、X線の照射開始を的確に検知することが可能となる。なお、その際、前述したマスク時間Δtm等が適宜調整されることは言うまでもない。
【0097】
なお、X線センサー25は、前述したX線を検出してパルス信号として出力する方式(パルス出力方式)に限定されず、X線により発生する電荷信号を積分するなどして、連続的な出力信号として取り出す方式(連続出力方式)でもよい。この場合は、連続出力方式の出力信号に対して、第1の検知方式よりも遅い時定数を持つローパスフィルターを適用した後に、第1の検知方式より低い線量率を検知することができる検知閾値で検知判定することで、パルス出力方式のもの同様の効果を得ることができる。
【0098】
また、連続出力方式の出力信号に対して、複数のローパスフィルターと検知閾値の組み合わせをもつことで、第2の検知方式で検知できる線量率範囲を拡大することも可能である。
【0099】
なお、本発明が上記の実施形態等に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。