特許第6780320号(P6780320)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6780320
(24)【登録日】2020年10月19日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】射出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20201026BHJP
   A45D 29/00 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   B41J2/01 109
   B41J2/01 305
   A45D29/00
   B41J2/01 301
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-126869(P2016-126869)
(22)【出願日】2016年6月27日
(65)【公開番号】特開2017-19269(P2017-19269A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2019年3月11日
(31)【優先権主張番号】特願2015-137979(P2015-137979)
(32)【優先日】2015年7月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000201113
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 康一
【審査官】 高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−306191(JP,A)
【文献】 特開2005−247436(JP,A)
【文献】 特表2005−506231(JP,A)
【文献】 特開2001−143056(JP,A)
【文献】 特開2000−353235(JP,A)
【文献】 特開2013−074921(JP,A)
【文献】 特許第3370345(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0181142(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第1559058(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第1843257(CN,A)
【文献】 特開2012−111093(JP,A)
【文献】 特開2011−218597(JP,A)
【文献】 特開2014−144647(JP,A)
【文献】 特開2001−301132(JP,A)
【文献】 特開2003−320660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
A45D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出装置であって、
対象物に対して液滴を吐出する吐出部と、
電気的にフレームグラウンドされている基体と、
前記基体に設けられ、前記対象物を固定する固定機構と、を備え、
前記固定機構は、
前記対象物を載せる載置部を有する置きホルダと、
前記置きホルダの両側方に位置するように前記基体に設けられた一対の支持部と、
前記載置部と対向するように前記一対の支持部に設けられ、前記載置部に置かれた前記対象物に接触して該対象物の動きを規制する位置決め部と、を含み、
前記置きホルダ、前記一対の支持部、および前記位置決め部は、いずれも導電性材料からなり、
前記置きホルダは、前記載置部が前記位置決め部に対して接離する方向に移動可能となるように構成されており、
前記置きホルダの両端部には、導電性材料からなる接続部が設けられており、
前記接続部は、前記置きホルダと移動一体に構成され、かつ前記一対の支持部に対し摺接可能に弾性接触するように構成されている、射出装置。
【請求項2】
請求項に記載の射出装置において、
前記位置決め部は、前記載置部に置かれた前記対象物の断面形状に沿うように凹状に湾曲した接触部を有する、射出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の射出装置において
記固定機構は、前記載置部に置かれた前記対象物が前記位置決め部に接触するように前記載置部を前記位置決め部に向けて付勢する付勢部材をさらに含む、射出装置。
【請求項4】
請求項に記載の射出装置において
記置きホルダは、前記付勢部材の付勢力によって前記位置決め部に向かう方向に付勢されている、射出装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の射出装置において、
前記付勢部材は、前記基体に電気的に接続された導電性材料からなる、射出装置。
【請求項6】
射出装置であって、
対象物に対して液滴を吐出する吐出部と、
電気的にフレームグラウンドされている基体と、
前記基体に設けられ、前記対象物を固定する固定機構と、を備え、
前記固定機構は、
前記基体に電気的に接続されている導電性材料からなる受け部と、
前記受け部に対して着脱可能に設けられ本体部と、を含み
前記本体部には、導電性材料からなり、前記対象物の動きを規制する位置決め部が設けられており、
前記本体部は、前記受け部に装着されたときに前記位置決め部が前記受け部に電気的に接続されるように構成されている、射出装置。
【請求項7】
請求項に記載の射出装置において、
前記本体部が前記受け部に、前記位置決め部が前記受け部に電気的に接続される正規の位置で装着されたことを検出する検出部が設けられている、射出装置。
【請求項8】
請求項に記載の射出装置において、
前記本体部は、前記位置決め部に電気的に接続されている第1の電極を有し、
前記受け部は、前記基体に電気的に接続され、前記本体部が正規の位置に装着されたときに前記第1の電極と接触する第2の電極を有し、
前記検出部は、前記本体部が前記受け部に装着されたときに前記第1の電極と前記第2の電極とが接触しないで、両電極同士の接触によりプルアップされている信号がフレームグラウンドレベルでない状態にあることを、前記本体部が前記受け部に正規の位置に装着されていないと判断する、射出装置。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の射出装置において、
前記固定機構は、前記本体部が該受け部に正規の位置に装着されて前記位置決め部と前記受け部とが互いに電気的に接続された状態を保持する保持部を備える、射出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に流体等の液滴を施すための射出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、射出装置の例として、対象物にデザインを施すために、色や絵柄を対象に印刷することができるプリンタが普及し始めている。プリンタでは、印刷する対象を載置するために、様々な構成の載置機構が提案されている。指の爪を例とする対象物にネイルデザインを施す場合、ユーザーが選択した色や絵柄を爪に印刷することができるネイルプリンタには、例えば特許文献1には、印刷する指を、流体を注入することで膨張する部材によって載置機構に載置するようにすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−152410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、射出装置であるインク印刷機構のノズルと対象物との距離が大きいと、インクが対象物の正確な位置に付かず、デザインに乱れが生じる。このため、プリンタでは、一般にノズルと対象物との距離は数mm程度と非常に短く設定されている。一方、対象物となる人の指や金属物は、静電気を帯びていることが多い。このため、指の爪や金属物からノズルに静電気が放電されると、ノズルの故障や破壊につながる可能性がある。したがって、静電気に対する対策をとる必要がある。
【0005】
本発明の目的は、射出装置の位置決め構造を工夫することにより、対象物の動きを規制して安定的に印刷できるようにするとともに、静電気の発生を抑制できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、電気的にフレームグラウンドされている基体に電気的に接続された導電性材料からなる対象物の位置決め部を設け、対象物の動きを規制して安定的に印刷できるようにするとともに、対象物に帯電している静電気を位置決め部に放電させることによって静電気の発生を抑制するようにした。
【0007】
具体的には、本発明の第1の形態は、射出装置であって、対象物に対して液滴を吐出する吐出部と、電気的にフレームグラウンドされている基体と、この基体に設けられ、対象物を固定する固定機構と、を備える。固定機構は、対象物を載せる載置部を有する置きホルダと、置きホルダの両側方に位置するように基体に設けられた一対の支持部と、載置部と対向するように一対の支持部に設けられ、載置部に置かれた対象物に接触して対象物の動きを規制する位置決め部と、を含む。置きホルダ、一対の支持部、および位置決め部は、いずれも導電性材料からなる。置きホルダは、載置部が位置決め部に対して接離する方向に移動可能となるように構成されている。置きホルダの両端部には、導電性材料からなる接続部が設けられている。そして、接続部は、置きホルダと移動一体に構成され、かつ一対の支持部に対し摺接可能に弾性接触するように構成されている。
【0008】
この第1の形態によれば、対象物を置きホルダの載置部に置きやすくなるとともに、位置決め部により置きホルダの載置部に置かれた対象物の動きが規制される。このため、吐出部を例とするインク印刷機構により対象物に安定して印刷することが可能となる。また、置きホルダは、載置部が位置決め部に対して接離する方向に移動可能となるように構成されている。かかる構成により、載置部が位置決め部に対して接近した場合には、載置部に置かれた対象物が位置決め部に押しつけられるようになる。位置決め部は、一対の支持部を介して基体に電気的に接続されて、基体とともに電気的にフレームグラウンドされた状態に維持される。これにより、対象物に帯電している静電気が位置決め部により放電される。さらに、接続部は、置きホルダと移動一体に構成され、かつ一対の支持部に対し摺接可能に弾性接触するように構成されている。かかる構成により、接続部が一対の支持部に常時接触した状態が維持される。そして、置きホルダは、接続部および一対の支持部を介して基体に電気的に接続されて、基体とともに電気的にフレームグラウンドされた状態に維持される。これにより、対象物が置きホルダの載置部に載せられた状態では、対象物に帯電している静電気が置きホルダにより放電される。このように、固定機構に固定された対象物が固定機構に接触することによって、対象物の動きが規制されるとともに、対象物に帯電している静電気が固定機構に放電されることになる。したがって、第1の形態に係る射出装置では、対象物の動きが規制されてインク印刷機構により安定的に印刷できるとともに、静電気の発生を抑制することができる。その結果、対象物に帯電している静電気が適切に放電された状態になって、静電気に起因するノズルの故障を未然に防止することが可能となる。
【0009】
の形態による射出装置では、第の形態において、位置決め部は、載置部に置かれた対象物の断面形状に沿うように凹状に湾曲した接触部を有することを特徴とする。
【0010】
この第の形態によれば、載置部に置かれた対象物を接触部が覆ったとき、その接触部は凹状に湾曲しているので、対象物に対する位置決め部の接触面積が増えることになり、対象物の動きが規制されやすくなるとともに、対象物に帯電している静電気が位置決め部により放電されやすくなる。
【0011】
の形態による射出装置では、第1または第2の形態において、固定機構は、載置部に置かれた対象物が位置決め部に接触するように載置部を位置決め部に向けて付勢する付勢部材をさらに含むことを特徴とする。
【0012】
この第の形態によれば、移動可能な載置部が付勢部材により位置決め部に向けて付勢されているため、位置決め部に対する対象物の動きがより一層強く規制され、インク印刷機構により対象物に安定して印刷を行うことができる。また、載置部に置かれた対象物が付勢部材により位置決め部に押しつけられるので、対象物に帯電している静電気が位置決め部により放電された状態が維持されて、静電気の発生を抑制することができる。
【0013】
の形態による射出装置では、第の形態において、置きホルダは、付勢部材の付勢力によって位置決め部に向かう方向に付勢されていることを特徴とする。
【0014】
この第の形態によれば、付勢部材の付勢力によって、置きホルダの載置部に置かれた対象物が位置決め部に押しつけられるため、対象物に帯電している静電気が位置決め部により放電された状態が維持されて、静電気の発生を抑制することができる。
【0015】
の形態による射出装置では、第3または第4の形態において、付勢部材は、基体に電気的に接続された導電性材料からなることを特徴とする。
【0016】
この第の形態によれば、置きホルダは、付勢部材および基体を介して、電気的にフレームグラウンドされた状態になる。これにより、置きホルダの載置部に対象物が載せられた状態で、対象物に帯電している静電気が置きホルダに放電されることになる。その結果、位置決め部と併せて、置きホルダによっても静電気の発生を抑制することができる。
【0017】
の形態による射出装置対象物に対して液滴を吐出する吐出部と、電気的にフレームグラウンドされている基体と、基体に設けられ、対象物を固定する固定機構と、を備えている。固定機構は、基体に電気的に接続されている導電性材料からなる受け部と、受け部に対して着脱可能に設けられ本体部と、を含む。本体部には、導電性材料からなり、対象物の動きを規制する位置決め部が設けられている。そして、本体部は、受け部に装着されたときに位置決め部が受け部に電気的に接続されるように構成されていることを特徴とする。
【0018】
この第の形態によれば、第1の形態と同様に、位置決め部で対象物の動きが規制されてインク印刷機構により安定的に印刷できる。しかも、対象物に帯電している静電気が位置決め部で放電された状態に保たれるため、静電気の発生を抑制することができる。
【0019】
の形態による射出装置では、第の形態において、本体部が受け部に、位置決め部が受け部に電気的に接続される正規の位置で装着されたことを検出する検出部が設けられていることを特徴とする。
【0020】
この第の形態によれば、例えば、本体部が受け部に正規の位置に装着されていない場合に、そのことを検出部により検出して、対象物に帯電している静電気の放電が位置決め部によって適切に行われていない可能性があると推定することができる。
【0021】
の形態による射出装置では、第の形態において、本体部は、位置決め部に電気的に接続されている第1の電極を有し、受け部は、基体に電気的に接続され、本体部が正規の位置に装着されたときに第1の電極と接触する第2の電極を有し、検出部は、本体部が受け部に装着されたときに第1の電極と第2の電極とが接触しないで、両電極同士の接触によりプルアップされている信号がフレームグラウンドレベルでない状態にあることを、本体部が受け部に正規の位置に装着されていないと判断することを特徴とする。
【0022】
この第の形態によれば、検出部は、本体部が受け部に正規の位置に装着されておらずに第1および第2の電極同士が非接触状態にあり、両電極同士が接触状態にあるときのフルアップ信号がグランウドレベルでないとき、対象物に帯電している静電気の放電が適切に行われていない可能性があると推定して、静電気に起因するノズルの故障を未然に防止することができる。
【0023】
の形態による射出装置では、第〜第のいずれか1つの形態において、固定機構は、本体部が受け部に正規の位置に装着されて位置決め部と受け部とが互いに電気的に接続された状態を保持する保持部をさらに備えることを特徴とする。
【0024】
この第の形態によれば、対象物に帯電している静電気が位置決め部で適切に放電された状態を保つことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る射出装置によれば、対象物の動きを規制して安定的に印刷できるとともに、静電気の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係るプリンタを示す斜視図である。
図2図2は、第1の実施形態による固定機構を示す斜視図である。
図3図3は、図2のIII−III線断面図である。
図4図4は、固定機構に対象物となる指を挿入する前の状態を示す図3相当図である。
図5図5は、本発明の第2の実施形態に係る固定機構を示す図3相当図である。
図6図6は、第2の実施形態に係る固定機構を示す図4相当図である。
図7図7は、本発明の第3の実施形態に係る固定機構における図2のVII−VII線断面相当図である。
図8図8は、本発明の第4の実施形態に係る固定機構を示す図7相当図である。
図9図9は、置きホルダおよび接続部の構成を示す斜視図である。
図10図10は、本発明の第5の実施形態に係る固定機構を示す斜視図である。
図11図11は、図10のXI−XI線断面図である。
図12図12は、受け部に本体部を装着する状態を示す斜視図である。
図13図13は、検出部の構成を示す回路図である。
図14図14は、本発明の第6の実施形態に係る固定機構を示す分解斜視図である。
図15図15は、本体部と保持部との嵌合状態を拡大して示す横断面図である。
図16図16は、第7の実施形態による固定機構を示す斜視図である。
図17図17は、本発明の第7の実施形態による固定機構を示す平面図である。
図18図18は、本発明の第7の実施形態に係る固定機構における図16のVIII−VIII線断面相当図である。
図19(a)】図19(a)は、本発明の第7の実施形態の変形例を示す断面図である。
図19(b)】図19(b)は、本発明の第7の実施形態の変形例を示す断面図である。
図20図20は、第8の実施形態による固定機構を示すY方向における概略図である。
図21図21は、第8の実施形態の変形例を示す断面図である。
図22図22は、第8の実施形態の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものではない。また、以下の各実施形態において、プリンタ及びそのインク印刷機構は、それぞれ射出装置及び吐出部の例として、説明します。
【0028】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係るプリンタPを示す。第1の実施形態において、このプリンタは、対象物となる使用者の指爪NLに対して印刷を行うものである。なお、図1に示すように、後述する固定機構30が配置されている側を正面側とし、この正面側にある固定機構30の水平左右方向をX方向、X方向に直交する水平前後方向(固定機構30の前後方向に相当する使用者の指が指し示す方向)をY方向、X方向およびY方向のそれぞれに直交する鉛直上下方向をZ方向とする。また、図1においては、固定機構30の構成を簡略化して図示している。このほか、本第1の実施形態は、使用者の指を対象物として説明しているが、対象物は指以外のものであってもよく、例えば、金属物等であってもよい。実施形態における固定機構30は指を例としており、対象物が指以外のものであるときは、固定機構30のサイズは、異なる対象物に対応させるために、対応して修正することができる。実施形態における対象物を指をもって説明していないときは、当然に、指を対象物とすることもできる。
【0029】
図1に示すように、プリンタPは基体10を備えている。この基体10は、例えば金属材料などの導電性材料からなり、プリンタPの各構成部品を設置するための筐体として用いられる。図2に示すように、基体10は電気的にフレームグラウンドになっている。
【0030】
図1および図3に示すように、基体10の上側には、インク印刷機構20が設けられている。このインク印刷機構20は、後述する固定機構30により載置された使用者の指爪NLに対して印刷を行うように構成されている。具体的には、図1に示すように、プリンタPは、X軸モータ21に連結されたX軸モータベルト22を回行させることによって、X軸モータベルト22に連結されたインク印刷機構20がX方向に移動する。また、プリンタPは、Y軸モータ23に連結されたY軸モータシャフト24を回転させることによって、Y軸モータシャフト24に連結されたインク印刷機構20がY軸方向に移動する。また、インク印刷機構20には、カメラ25が設けられている。このカメラ25は、後述する載置部32に置かれた指爪NLを撮像する。このカメラ25により撮像された画像は、指爪NLに対するインク印刷機構20の動作範囲を特定するために用いられる。
【0031】
図1に示すように、基体10には、インク印刷機構20の対象物となる使用者の指爪NLを載置するための固定機構30が設けられている。また、図2図4に示すように、この固定機構30には、使用者の指FNを載せる載置部32が設けられている。第1の実施形態において、この載置部32は、後述する付勢部材37を構成する収容体37bの上面に形成されている。
【0032】
図2に示すように、この固定機構30には、基体10の上面に、正面視においてアーチ状の挿入部31が設けられている。この挿入部31からY方向に向かって使用者の指FNが固定機構30の中に挿入されることによって、載置部32に使用者の指FNを置くことができるようになっている。この挿入部31は、X方向における載置部32の両側方に設けられた壁状の左右一対の支持部33,33と、この左右一対の支持部33,33の上部間に設けられた位置決め部34とにより構成されている。
【0033】
図2に示すように、一対の支持部33,33の下部には、X方向外側に突出した取付片33a,33a(一方のみ示す)が設けられており、この各取付片33aが基体10の上部でねじ33b,33bにより固定されている。この左右一対の支持部33,33によって、載置部32に置かれた使用者の指FNにおける左右方向(X方向)の動きが規制されている。そして、支持部33,33は、導電性材料(例えば導電性樹脂)からなる。すなわち、支持部33,33は、基体10に電気的に接続されており、電気的にフレームグラウンドされた状態となっている。
【0034】
図2図4に示すように、位置決め部34は、左右一対の支持部33,33により基体10に支持されて、載置部32の上方にそれと対向して設けられている。この位置決め部34は、平板状に形成されており、載置部32に対向している内表面(下面)が、載置部32に置かれた使用者の指FNの上側に接触するように構成されている。すなわち、載置部32に置かれた使用者の指FNが位置決め部34の内表面に接触することによって、使用者の指FNにおける上下方向(Z方向)の動きが規制されている。そして、位置決め部34は、導電性材料(例えば導電性樹脂)からなる。すなわち、位置決め部34は、左右一対の支持部33,33を介して基体10に電気的に接続されており、電気的にフレームグラウンドされた状態となっている。
【0035】
また、図2に示すように、Y方向における位置決め部34の先端側には、左右一対の支持部33,33の前側に連なる平面視略U字状の前壁部35が設けられている。この前壁部35により、載置部32に置かれた使用者の指FNにおける前方(Y方向)への動きが規制されている。さらに、図2および図3に示すように、位置決め部34のY方向における先端側であって前壁部35と位置決め部34との間には、上方に開口した開口部36が設けられている。この開口部36を通して、載置部32に置かれた使用者の指爪NLに上方からインク印刷機構20による印刷が行われるようになっている。なお、この実施形態において、左右一対の支持部33,33と位置決め部34と前壁部35とは一体に形成されている。
【0036】
以上のように、載置部32に置かれた使用者の指FNの動きが位置決め部34によって規制されているため、インク印刷機構20が使用者の指爪NLに安定して印刷できるようになっている。さらに、位置決め部34は、電気的にフレームグラウンドになっている基体10に電気的に接続された導電性材料からなるため、位置決め部34自体が電気的にフレームグラウンドになっている。このため、載置部32に置かれた使用者の指FNが位置決め部34に接触することによって、使用者の指爪NLの動きが規制されるとともに、使用者の指FNに帯電している静電気が位置決め部34に放電されることになる。したがって、第1の実施形態に係るプリンタPでは、使用者の指FNの動きが規制されてインク印刷機構20により安定的に印刷できるとともに、静電気の発生を抑制することができる。その結果、使用者の指FNに帯電している静電気が適切に放電された状態になって、静電気に起因するノズルの故障を未然に防止することが可能となる。
【0037】
さらに、固定機構30には、載置部32に置かれた使用者の指FNが位置決め部34に接触するように載置部32を位置決め部34に向けて付勢する付勢部材37が設けられている。この付勢部材37は、基体10の上面に取り付けられている。第1の実施形態における付勢部材37は、弾性体であるコイル状の圧縮ばね37aと、この圧縮ばね37aを内部に収容する伸縮可能な袋状の収容体37bとを備えている。また、図3に示すように、この収容体37bの上面には、位置決め部34の挿入部31から挿入された使用者の指FNを置くための載置部32が設けられている。
【0038】
そして、図4に示すように、載置部32に使用者の指FNが載せられていない状態では、圧縮ばね37aは上方に伸張した状態となっている。次に、図3に示すように、使用者の指FNが位置決め部34の挿入部31から付勢部材37を押し下げるように挿入されて載置部32に圧縮ばね37aの付勢力に抗して載せられた状態では、圧縮ばね37aの付勢力により、使用者の指FNを載置している載置部32が位置決め部34に向けて上方に付勢された状態となる。すなわち、圧縮ばね37aの付勢力により、載置部32に置かれた使用者の指FNの上側が位置決め部34の内表面に押しつけられた状態に保たれる。この状態で、インク印刷機構20が作動し、使用者の指爪NLに印刷が施される。
【0039】
このような付勢部材37(圧縮ばね37a)の作用により、位置決め部34に対する使用者の指FNの動きがより一層強く規制されるため、インク印刷機構20により使用者の指爪NLに安定して印刷することができる。また、圧縮ばね37aの付勢力により、載置部32に置かれた使用者の指FNが位置決め部34に押しつけられることによって、使用者の指FNに帯電している静電気が位置決め部34により放電された状態が維持されるため、静電気の発生を抑制することができる。
【0040】
[第2の実施形態]
図5および図6は、本発明の第2の実施形態に係るプリンタPの固定機構30を示す。この実施形態のプリンタPは、第1の実施形態による固定機構30の一部として置きホルダ38を加えたものである。また、付勢部材37は、収容体37bを有しないコイル状の圧縮ばね37aからなるものに置き換えられている。なお、この実施形態に係るプリンタPの他の構成は、第1の実施形態に係るプリンタPの構成と同様である。このため、この実施形態の説明では、図1図4と同じ部分について同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する(以下の各実施形態についても同様である。)。同様に、本第2の実施形態は指を対象物として説明しているが、使用者の指を対象物として説明しているが、対象物は指以外のものであってもよく、例えば、金属物等であってもよい。
【0041】
図5および図6に示すように、位置決め部34の下方でかつ左右一対の支持部33,33の内側には、置きホルダ38が設けられている。この置きホルダ38は、レバー形状のもので、内部に貫通状の軸挿通孔38cが形成されたボス部38aと、このボス部38aに連なる平板状に形成された載置部32とを有する。ボス部38aは、基体10に形成した左右一対のボス取付部11,11(一方のみ示す)間に嵌合された状態で配置され、このボス部38aの軸挿通孔38cにはボス取付部11,11間にX方向に延びるように掛け渡した回動軸38bが挿通されており、このことで置きホルダ38は基体10に対し、回動軸38bを中心に上下方向(Z方向)に揺動可能に支持されている。つまり、置きホルダ38は、位置決め部34に接離する方向に移動可能に構成されており、この置きホルダ38の載置部32上面に、位置決め部34の挿入部31から挿入された使用者の指FNを載せるようになっている。
【0042】
置きホルダ38の載置部32下方には、コイル状の圧縮ばねからなる付勢部材37が設けられている。この実施形態での付勢部材37(圧縮ばね)は、基体10の上面に形成した凹部12内底面と載置部32下面との間に取り付けられている。
【0043】
この実施形態においては、図6に示すように、載置部32に使用者の指FNが載せられていない状態では、付勢部材37は上方に伸張した状態となっており、この付勢部材37の付勢力によって置きホルダ38が上方に傾いた状態となっている。そして、図5に示すように、使用者の指FNが位置決め部34の挿入部31から付勢部材37を押し下げるように挿入されて載置部32に付勢部材37の付勢力に抗して載せられた状態では、付勢部材37の付勢力により、使用者の指FNを載せている指置きホルダ38の載置部32が位置決め部34に向けて上方に付勢された状態となる。すなわち、付勢部材37の付勢力により、置きホルダ38の載置部32に置かれた使用者の指FNの上側が位置決め部34の内表面に押しつけられた状態に保たれる。この状態で、インク印刷機構20が作動し、使用者の指爪NLに印刷が施される。
【0044】
このように、置きホルダ38は、位置決め部34に接離する方向に揺動可能なレバー状のものであって、付勢部材37の付勢力により位置決め部34に向かう方向に付勢されている。このため、置きホルダ38の載置部32に使用者の指FNが置きやすくなるとともに、位置決め部34により置きホルダ38の載置部32に置かれた使用者の指の動きが規制され、インク印刷機構20で使用者の指爪NLに安定して印刷させることができる。また、付勢部材37の付勢力によって、置きホルダ38の載置部32に置かれた使用者の指FNが位置決め部34の内表面に押しつけられる。これにより、使用者の指FNに帯電している静電気が位置決め部34により放電された状態が維持されて、静電気の発生を抑制することができる。
【0045】
[第2の実施形態の変形例]
第2の実施形態の変形例として、付勢部材37は、基体10に電気的に接続された導電性材料からなるものとし、置きホルダ38は、付勢部材37に電気的に接続された導電性材料からなるものとしてもよい。この場合、置きホルダ38は、付勢部材37および基体10を介して電気的にフレームグラウンドされた状態になる。したがって、置きホルダ38の載置部32に使用者の指FNが載せられた状態で、使用者の指FNに帯電している静電気が置きホルダ38に放電されることになる。その結果、上述した位置決め部34による効果と併せて、置きホルダ38によっても静電気の発生を抑制することができる。
【0046】
[第3の実施形態]
図7は、本発明の第3の実施形態に係るネイルプリンタPの固定機構30を示す。この実施形態のネイルプリンタPは、第2の実施形態による位置決め部34および置きホルダ38の形状を変更したものである。その他の構成は、第2の実施形態と同じである。同様に、本第3の実施形態は指を対象物として説明しているが、使用者の指を対象物として説明しているが、対象物は指以外のものであってもよく、例えば、金属物等であってもよい。
【0047】
すなわち、図7に示すように、位置決め部34はその下面に、置きホルダ38の載置部32に置かれた対象物(例えば、使用者の指FN)の断面形状に沿うように凹状に湾曲した接触部34aを有している。つまり、接触部34aは、載置部32に置かれた使用者の指FNの略上半部を覆うように形成されている。このため、載置部32に置かれた使用者の指FNに対する位置決め部34の接触面積が増えることになる。これにより、使用者の指爪NLの動きが規制されやすくなるとともに、使用者の指FNに帯電している静電気が位置決め部34により放電されやすくなる。
【0048】
また、置きホルダ38の載置部32についても、使用者の指FNの断面形状に沿うように凹状に湾曲した形状に形成されている。このような形状により、位置決め部34の接触部34aと併せて、使用者の指FNを上下方向から全体的に覆うように保持することができる。
【0049】
[第4の実施形態]
図8および図9は、本発明の第4の実施形態に係るプリンタPの固定機構30を示す。この実施形態のプリンタPは、第3の実施形態による置きホルダ38と支持部33,33とを電気的に接続する接続部39,39を追加したものである。その他の構成は、第3の実施形態と同じである。同様に、本第4の実施形態は指を対象物として説明しているが、対象物は指以外のものであってもよく、例えば、金属物等であってもよい。
【0050】
すなわち、図8に示すように、左右一対の支持部33,33は、置きホルダ38の両側方に設けられている。また、置きホルダ38の両端部には、板ばね等の弾性体からなる板状の一対の接続部39,39が設けられている。図9にも示すように、接続部39,39の各々は、置きホルダ38と一体に形成され、載置部32の左右両側から置きホルダ38の両側方に延びた後に置きホルダ38の上端から下方に向かって内側に湾曲するように延び、その湾曲部分の外側には支持部33の内面に摺接する摺接部39aが形成されている。また、指置きホルダ38が左右一対の支持部33,33間に配置されていないフリー状態で、接続部39,39間のX方向における最大間隔(摺接部39a,39a間の間隔)は左右一対の支持部33,33の内幅よりも長くなるように形成されている。このため、置きホルダ38が支持部33,33間に配置された状態では、接続部39,39の各々は、置きホルダ38との連結部分を起点とする回動付勢力が生じ、支持部33,33に向かって押し付けられる弾性力が生じている。このようにして、置きホルダ38の両端部に接続部39が移動一体に設けられ、接続部39,39は摺接部39a,39aで一対の支持部33,33にそれぞれ摺接可能に弾性接触している。
【0051】
また、この実施形態において、置きホルダ38および接続部39,39は導電性材料からなる。そして、図8に示すように、接続部39,39が導電性材料からなる支持部33,33に弾性接触することによって、置きホルダ38が接触部34aおよび一対の支持部33,33を介して基体10に電気的に接続された状態となる。すなわち、置きホルダ38は、接続部39,39および一対の支持部33,33を介して基体10に電気的に接続されて、電気的にフレームグラウンドされた状態になる。
【0052】
したがって、このように、置きホルダ38と支持部33,33とを電気的に接続する導電性材料からなる接続部39,39が設けられていることから、置きホルダ38が電気的にフレームグラウンドされた状態になる。このため、置きホルダ38の載置部32に使用者の指FNが載せられた状態で、使用者の指FNに帯電している静電気が置きホルダ38に放電されるようにすることができる。
【0053】
また、置きホルダ38の両端部に接続部39,39が移動一体に設けられ、接続部39,39は一対の支持部33,33にそれぞれ摺接可能に弾性接触していることから、接続部39が一対の支持部33,33に常時接触した状態が維持される。そして、置きホルダ38は、接続部39,39および一対の支持部33,33を介して基体10に電気的に接続されて、電気的にフレームグラウンドされた状態に維持される。このため、置きホルダ38の載置部32に使用者の指FNが載せられた状態で、使用者の指FNに帯電している静電気が置きホルダ38に放電される状態を維持することができる。
【0054】
[第5の実施形態]
図10図13は、本発明の第5の実施形態に係るプリンタPの固定機構30を示す。この実施形態のネイルプリンタPは、第1の実施形態による固定機構30を変更したものである。同様に、本第5の実施形態は指を対象物として説明しているが、使用者の指を対象物として説明しているが、対象物は指以外のものであってもよく、例えば、金属物等であってもよい。
【0055】
すなわち、図10に示すように、固定機構30には受け部50が設けられている。この受け部50は、基体10に電気的に接続されている導電性材料からなる。また、この受け部50の上側には本体部60が設けられている。この本体部60は非電導性材料からなるもので、受け部50に対して着脱可能に構成されている。例えば図14(第6の実施形態参照)に示すように、受け部50上面の左右中央部には、前後方向(Y方向)に延びる蟻溝52が、また本体部60の下面には蟻溝52に係合する前後方向(Y方向)に延びる嵌合部63(蟻ほぞ部)がそれぞれ形成されており、この嵌合部63と蟻溝52との係合により本体部60をスライド可能とするとともに、本体部60が前端にスライドしたときに嵌合部63と蟻溝52との係合が解除されて受け部50から離脱するようにしている。そして、本体部60を後方にスライドさせて受け部50に装着する一方、前方にスライドさせたときに受け部50から離脱させるようになっている。また、本体部60には、第1の実施形態による固定機構30と同様、少なくとも位置決め部34が設けられている。なお、この実施形態では、付勢部材37も本体部60に設けられている。
【0056】
本体部60は、受け部50に装着されたときに位置決め部34と受け部50とが互いに電気的に接続されるように構成されている。図11に示すように、本体部60の後側には、嵌合部63の下面を凹陥状に切り欠いた収納部62が形成されており、この収納部62内に第1の電極61が取付固定されている。この第1の電極61は、先端部分が下方に湾曲した板ばね等からなり、この先端部分が下方に向かうように付勢されている。また、第1の電極61は、図外の導電経路によって位置決め部34に電気的に接続されている。
【0057】
一方、図11および図12に示すように、受け部50上面の後端部には、第2の電極51が設けられている。第2の電極51は、本体部60および受け部50が互いに分離している状態(図12参照)から本体部60が受け部50に装着された状態(図10参照)になったときに、第1の電極61と接触するように受け部50の上面に設けられている。このように、両電極61,51が接触して位置決め部34と受け部50とが電気的に接続されるとき、本体部60が受け部50に正規の位置で装着される。また、この第2の電極51は、基体10に電気的に接続されている。すなわち、第2の電極51は、電気的にフレームグラウンドされた状態になっている。
【0058】
また、図13に示すように、固定機構30には、CPUなどから構成される検出部40が設けられている。この検出部40は、本体部60が正しく装着されたか否かを検出するように構成されている。より具体的には、検出部40は、本体部60が受け部50に、位置決め部34と受け部50とが互いに電気的に接続される正規の位置で装着されたことを検出する。
【0059】
具体的には、図13に示すように、検出部40は、本体部60が受け部50に正規の位置に装着された状態において、第1の電極61および第2の電極51が互いに接続されたときの信号線41の信号42を入力としている。例えば、この信号線41は3.3Vにプルアップされている。この信号線41の電圧レベルは、本体部60が受け部50に正規の位置で装着されたとき、すなわち第1の電極61と第2の電極51とが接続されたときに、第1の電極61が基体10を介して電気的にフレームグラウンドになった状態(フレームグラウンドレベル)となる。
【0060】
他方、検出部40は、信号線41の信号42がフレームグラウンドレベルでないとき、本体部60が受け部50に正しく装着されていないと判断する。すなわち、検出部40は、本体部60が受け部50に装着されたときに第1の電極61と第2の電極51とが接触しておらず、両電極61,51同士の接触によりプルアップされている信号42がフレームグラウンドレベルでない状態であることを、本体部60が受け部50に正規の位置に装着されていないと判断する。そして、検出部40は、本体部60が受け部50に正規の位置に装着されておらず使用者の指FNに帯電している静電気の放電が位置決め部34によって適切に行われていない可能性があると推定し、例えばインク印刷機構20の作動を停止するような制御を行う。
【0061】
このように、この実施形態による固定機構30では、本体部60が受け部50に対して着脱可能な構成であっても、本体部60は、受け部50に装着されたときに位置決め部34と受け部50とが互いに電気的に接続されるようになっているため、位置決め部34で使用者の指FNの動きが規制されてインク印刷機構20により安定的に印刷できるとともに、使用者の指FNに帯電している静電気が位置決め部34で適切に放電された状態に保たれ、静電気の発生を抑制することができる。また、検出部40により、本体部60が受け部50に正規の位置に装着されていない場合に使用者の指FNに帯電している静電気の放電が位置決め部34によって適切に行われていない可能性があると推定し、例えばインク印刷機構20の動作を停止するような制御を行うことによって、静電気に起因するノズルの故障を未然に防止することができる。
【0062】
[第6の実施形態]
図14および図15は、本発明の第6の実施形態に係るプリンタPの固定機構30を示す。この実施形態のプリンタPは、第5の実施形態による固定機構30に保持部を追加したものである。その他の構成は、第5の実施形態と同じである。同様に、本第6の実施形態は指を対象物として説明しているが、使用者の指を対象物として説明しているが、対象物は指以外のものであってもよく、例えば、金属物等であってもよい。
【0063】
すなわち、この実施形態においては、受け部50上面の左右両側部後端には、鉛直方向(Z方向)に延びる軸心を有する一対の軸部71,71が突設されている。軸部71,71の各々には、その軸心方向を中心として左右方向(X方向)に揺動可能な一対のアーム部72,72の基端部に支持されている。このアーム部72,72の先端部分には、その先端部分を受け部50の内側に向くように折り曲げてなる突起部72a,72aが設けられている。また、このアーム部72,72の内側部分であって軸部71,71近傍には、半円形状のばね係止部72b,72bが形成され、これら両ばね係止部72b,72bにはコイル状の引張ばね73が伸装されている。この引張ばね73は、一対のアーム部72,72の各々を突起部72a,72aが受け部50の内側に向かうように回動付勢している。なお、受け部50の上部であってアーム部72の内側に接する位置に一対のストッパピン74,74が突設されている。このストッパピン74,74は、本体部60が受け部50に保持されていない状態で、アーム部72,72が引張ばね73によって内側に過度に回動しないようにするものである。さらに、本体部60の左右両側面の下部において、前側寄り部分には、前記アーム部72,72の突起部72a,72aと係合可能な断面V字状の係合凹部64,64が設けられている。
【0064】
そして、図15に示すように、本体部60が受け部50に正規の位置に装着された状態になったとき、本体部60の係合凹部64,64にアーム部72,72の突起部72a,72aが嵌合するようになっている。このとき、引張ばね73の付勢力により、アーム部72,72は受け部50の内側方向に付勢されているため、アーム部72,72の突起部72a,72aが本体部60の係合凹部64に嵌合した状態が保持されるようになる。
【0065】
このように、この実施形態では、軸部71,71、アーム部72,72、および引張ばね73により、本体部60が受け部50に正規の位置に装着されて位置決め部34と受け部50とが互いに電気的に接続された状態を保持する保持部70が構成されている。この保持部70により、使用者の指FNに帯電している静電気が位置決め部34で適切に放電された状態を保つことができる。
【0066】
[第7の実施形態]
図16図18は、本発明の第7の実施形態に係るプリンタPの固定機構30を示す。この実施形態のプリンタPは、第1の実施形態による固定機構30を変更したものである。
【0067】
図16〜18に示すように、基体10は電気的にフレームグラウンドになっている。基体10に載せる対象物OBは、例えば、携帯電話等であるが、特に制限されない。このほか、固定機構30は、支持部33(第1の実施形態等の支持部と類似する構造または機能を有する)の内壁面に設けられ、対象物OBの左右 (図ではX方向)から対象物OBを把持する一対の位置決め部44,44をさらに含む。
【0068】
支持部33,33は、導電性材料(例えば導電性樹脂)からなる。すなわち、支持部33,33は、基体10に電気的に接続されており、電気的にフレームグラウンドされた状態となっている。
【0069】
図17〜18に示すように、一対の位置決め部44,44は、例えば本体部44aと、付勢部材47と、夾持部44bを含む。本体部は、所定の高度で支持部33の内壁面に固定されることができる。付勢部材47(本実施形態では圧縮ばね47aを例としている)は本体部内に設けられ、一端は、把持部44bに当接している。把持部44bの前端44cは対象物OBの固定に用いる。対象物OBが、前記一対の位置決め部44,44の中間に載せられたとき、把持部44bは圧縮ばね47aを押し下げ、圧縮ばね47aの付勢力により、対象物OBを固定する。すなわち、圧縮ばね47aの付勢力により、対象物OBの両側が位置決め部44の把持部44bの先端44cに押しつけられた状態に保たれる。この状態で、インク印刷機構20が作動し、対象物OBに印刷が施される。また、一対の位置決め部44は、導電性材料(例えば導電性樹脂)からなる。すなわち、位置決め部44は、左右一対の支持部33,33を介して基体10に電気的に接続されており、電気的にフレームグラウンドされた状態となっている。
【0070】
このような付勢部材47(圧縮ばね47a)の作用により、位置決め部44に対する対象物OBの動きがより一層強く規制されるため、インク印刷機構20により対象物OBに安定して印刷することができる。また、対象物OBが位置決め部44に押しつけられることによって、対象物OBに帯電している静電気が位置決め部44により放電された状態が維持されるため、静電気の発生を抑制することができる。
【0071】
このほか、図16に示すように、第1の実施形態と類似して、第7の実施形態も対象物OBの挿入方向の前方側(Y方向)に前壁部35が設けられる。この前壁部35により、位置決め部44に固定された対象物OBにおける前方(Y方向)への動きが規制されている。
【0072】
[第7の実施形態の変形例]
図19(a)に示すように、第7の実施形態の変形例として、一対の位置決め部44,44は基体10上に設けられ、このとき、支持部33、33を省略することもできる。同様に、一対の位置決め部44は、導電性材料(例えば導電性樹脂)からなる。すなわち、位置決め部34は、基体10に電気的に接続されており、電気的にフレームグラウンドされた状態となっている。また、図19(b)に示すように、第7の実施形態の別の変形例として、一対の位置決め部44,44は、第1の実施形態のように構成され、例えば、支持部33に取り付けられている付勢部材(例えば、圧縮ばね)47’と、この付勢部材47’を内部に収容する伸縮可能な袋状の収容体44dとを備えている。
【0073】
[第8の実施形態]
図20は、本発明の第8の実施形態に係るプリンタPの固定機構30を示す。第8の実施形態は、立体の対象物に表面印刷をするのに応用する3Dプリンタを描く。同様に、基体10は電気的にフレームグラウンドになっている。前記実施形態1〜7に記載のプリンタPのインク印刷機構20は、X軸モータ21、Y軸モータ23、X軸モータベルト22およびY軸モータシャフト24を介して、XY平面上を移動することができる。第8の実施形態においては、一組のZ軸モータおよびZ軸モータシャフト、または、Z軸モータおよびZ軸モータベルトを増設することによって、インク印刷機構20をZ軸方向において移動させることができる。この三組のモータによって、プリンタPのインク印刷機構20はXYZ軸において移動し、立体の対象物OBの表面に印刷をすることができる。
【0074】
図20に示すように、本実施形態の固定機構30は基体10上に設けられる一対の位置決め部44,44を含む。この位置決め部44,44の構造は、第7の実施形態の変化例および図19に記載される構造と同一であり、位置決め部44の付勢部材47によって、把持部44bは対象物OBの底座または底部等を把持し、これによって対象物OBの移動を制限する。このほか、この一対の位置決め部44は、導電性材料(例えば導電性樹脂)からなる。すなわち、位置決め部34は、基体10に電気的に接続されており、電気的にフレームグラウンドされた状態となっている。対象物OBが金属物、指または静電し易い物体であるときは、この方法によって、静電気を除去することができ、静電気がインク印刷機構のノズルを損傷するのを防止することができる。
【0075】
したがって、対象物OBが位置決め部44に押しつけられることによって、対象物OBに帯電している静電気が位置決め部44により放電された状態が維持されるため、静電気の発生を抑制することができる。また、このような付勢部材47(圧縮ばね47a)の作用により、位置決め部44に対する対象物OBの動きがより一層強く規制されるため、インク印刷機構20により対象物OBに安定して印刷することができる。
【0076】
[第8の実施形態の変形例]
図21〜22は第8の実施形態の変化例を描いており、図21はY方向の平面図で、図22はZ方向の平面図である。この実施形態においては、比較的細小の一対の位置決め部48を用いて対象物OBを固定している。付勢部材47は、一対の支持部33の内側面に設けられ、基体10の表面には所定の高度を有する。一対の位置決め部48を対象物OBに固定する位置は、インク印刷機構20のノズルが対象物OBの印刷に影響しない位置とする。一対の位置決め部48の構造は、基本的に、図18が示す構造と同一である。同様に、一対の位置決め部44は、導電性材料(例えば導電性樹脂)からなる。一対の支持部33も導電性材料(例えば導電性樹脂)からなる。したがって、一対の位置決め部48は、支持部33を介して基体10に電気的に接続されており、電気的にフレームグラウンドされた状態となっている。
【0077】
[その他の実施形態]
第1の実施形態に係るプリンタPでは、固定機構30として付勢部材37を備える形態としたが、この形態に限られない。すなわち、固定機構30が付勢部材37を備えていなくてもよい。要は、プリンタPが固定機構30として対象物(例えば、使用者の指FN)を載せる載置部32と位置決め部34とを備える構成であって、インク印刷機構20の印刷時に対象物の動きが規制され、対象物に帯電している静電気が位置決め部34に放電された状態になっているような形態であればよい。
【0078】
第2および第3の実施形態に係るプリンタPでは、置きホルダ38が回動軸38bを中心に上下方向(Z方向)に回動可能に構成された形態としたが、この形態に限られない。例えば、置きホルダ38上面の載置部32が水平状態を保ちながら上下方向に昇降するような形態であってもよい。要は、置きホルダ38が位置決め部34に接離する方向に移動可能に構成されている形態であればよい。
【0079】
第4の実施形態に係るプリンタPでは、一対の接続部39,39が置きホルダ38の両端部に一体的に形成された形態としたが、この形態に限られない。すなわち、一対の接続部39,39と置きホルダ38とは、別部材として互いに連結されるような形態であってもよい。
【0080】
第5および第6の実施形態に係るプリンタPでは、本体部60に設けられた固定機構30が位置決め部34および付勢部材37を備える形態としたが、この形態に限られない。例えば、固定機構30が第2〜第4の実施形態による指置きホルダ38を備える形態としてもよい。または、固定機構30が第4の実施形態による接続部39,39を備える形態としてもよい。
【0081】
第7および第8の実施形態に係るプリンタPでは、一対の位置決め部44,44(48,48)を設けているが、実際の需要に応じて、複数の位置決め部を設けることもできる。このほか、上記一対の位置決め部44,44(48,48)は固定によって支持部の内壁面に設けられているが、一対の位置決め部44,44(48,48)は内壁面においてZ方向に沿って上下に移動するように設けられてもよい。これによって、各種異なるサイズの印象対象物に対応することができる。
【0082】
なお、本発明の上記実施形態において、インクの代わりに、化粧品や皮膚などに作用する薬品が液体中に混入された流体等の液滴を吐出してもよい。これにより、例えば、人体の皮膚に、高い精度で化粧品や薬剤を塗布することができる。
【0083】
以上、本発明についての実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態のみに限定されず、発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、対象物に対して流体等の液滴を吐出する射出装置として産業上の利用が可能である。
【符号の説明】
【0085】
P:プリンタ
10:基体
20:インク印刷機構
30:固定機構
32:載置部
33:支持部
34:位置決め部
34a:接触部
37:付勢部材
37a:圧縮ばね
37b:収容体
38:置きホルダ
39:接続部
40:検出部
41:信号線
42:信号
44:位置決め部
50:受け部
51:第1の電極
60:本体部
61:第2の電極
70:保持部
FN:指
NL:爪
OB:対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19(a)】
図19(b)】
図20
図21
図22