(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、実施の形態及びその図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面に示される構成要素の大きさ又は大きさの比は、必ずしも厳密ではない。
【0017】
(実施の形態1)
[1.1 弾性表面波素子]
まず、実施の形態1に係る弾性表面波素子1の構成について
図1A及び
図1Bを用いて説明する。
【0018】
図1Aは、実施の形態1に係る弾性表面波素子1の一例を示す上面図である。
【0019】
図1Bは、
図1AのIB−IB線における断面を拡大したときの断面図である。
【0020】
弾性表面波素子1は、例えば、急峻な遮断特性を有する弾性表面波フィルタに用いられる素子である。弾性表面波素子1は、
図1Aに示されるように、圧電基板60と、櫛形形状を有するIDT(InterDigital Transducer)電極40と、反射器50とを備える。
【0021】
圧電基板60は、例えば、LN(LiNbO
3)基板又はLT(LiTaO
3)基板である。圧電基板60では、
図1Aの紙面と平行な方向であって
図1Aの上下方向(
図1Bの紙面と垂直な方向)に弾性表面波が主に伝搬する。つまり、当該上下方向が弾性表面波の主伝搬方向となる。当該上下方向は、言い換えると、後述する複数の電極指11の延びる方向の直交方向である。なお、圧電基板60では、当該上下方向以外の方向にも弾性表面波が伝搬する。
【0022】
IDT電極40は、圧電基板60上に形成される。また、IDT電極40は、複数の電極指11の対を有するフィンガー10とフィンガー10を挟んで互いに対向するバスバー20の対とを含む。IDT電極40における電極指11は、互いに対向するバスバー20の対のいずれかに接続されている。言い換えると、IDT電極40における電極指11は、互いに対向するバスバー20の対の両方には接続されない。
【0023】
反射器50は、圧電基板60上に形成される。また、IDT電極40は、フィンガー10とフィンガー10を挟んで互いに対向するバスバー20の対とを含む。なお、反射器50におけるフィンガー10は、複数の電極指11を有するが、反射器50における電極指11は、互いに対向するバスバー20の対の両方に接続されている。また、反射器50は、弾性表面波の主伝搬方向においてIDT電極40と隣り合うように設けられる。具体的には、弾性表面波素子1は、例えば互いに対向する2つの反射器50を備え、2つの反射器50は、IDT電極40を挟むように設けられる。反射器50は、当該弾性表面波の主伝搬方向において弾性表面波が弾性表面波素子1から漏れないように弾性表面波を反射して弾性表面波素子1内に閉じ込める。
【0024】
フィンガー10は、バスバー20の対からそれぞれ弾性表面波の主伝搬方向に直交して延びるように形成された電極指11から構成される。電極指11は、例えば密着層と電極層との積層構造を有する。密着層は、圧電基板60と電極層との密着性を向上させるための層であり、材料として、例えば、Tiが用いられる。弾性表面波の波長は、複数の電極指11のピッチ(例えば2.5μm)で規定される。弾性表面波素子1に高周波信号が入力されると、圧電基板60が歪むことで弾性表面波が発生する。このとき、複数の電極指11のピッチと通過帯域の波長とを略一致させておくことにより、通過させたい周波数成分を有する高周波信号が弾性表面波素子1を通過する。なお、
図1Aには、フィンガー10は数本の電極指11を有するように模式的に示されているが、実際には複数の電極指11の数は例えば数10本から数100本程度となっている。したがって、
図1Aには、複数の電極指11のピッチが実際よりも大きく示されている。
【0025】
バスバー20は、複数の電極指11の延びる方向において弾性表面波が弾性表面波素子1から漏れないように弾性表面波を反射して弾性表面波素子1内に閉じ込める。バスバー20は、圧電基板60上に形成された下地層21と、下地層21上に形成された第1層22と、第1層22上に形成された第2層23とを有する。つまり、バスバー20は、圧電基板60上に下地層21、第1層22、第2層23の順番でそれぞれが積層された3層構造を有している。下地層21は、例えば密着層と電極層との積層構造を有する。密着層は、圧電基板60と電極層との密着性を向上させるための層であり、材料として、例えば、Tiが用いられる。なお、
図1A及び
図1Bに示されるように、下地層21と複数の電極指11とは、連続して形成される。ここでは、連続して形成された複数の電極指11及び下地層21の領域うち指状に形成された領域を複数の電極指11と呼んでいる。
【0026】
また、
図1Aに示されるように、バスバー20を上面視したときに、第1層22は下地層21に対してはみ出さないように重複し、第2層23は第1層22に対してはみ出さないように重複している。具体的には、バスバー20を上面視したときに、第1層22の面積は下地層21の面積よりも小さく、第2層23の面積は第1層22の面積よりも小さい。より具体的には、
図1Aに示されるように、バスバー20を上面視したときに、バスバー20の短手方向における第1層22の両端付近が露出するように、第1層22上に第2層23が形成されている。また、第1層22及び第2層23は、膜厚が厚過ぎると膜剥がれが発生する恐れがあるため薄く形成されることが好ましい。例えば、下地層21の厚みは4um、第1層22の厚みは15um、第2層23の厚みは15umである。
【0027】
また、バスバー20の下地層21の複数の電極指11側の端から第1層22の複数の電極指11側の端までの距離d1は、弾性表面波の波長の0.95倍から1.05倍である。つまり、距離d1は、弾性表面波の波長とほぼ同じ長さである。また、第1層22の上面28の複数の電極指11側の端から第2層23の複数の電極指11側の端までの距離d2は、弾性表面波の波長の0.95倍から1.05倍である。つまり、距離d2についても、弾性表面波の波長とほぼ同じ長さである。なお、バスバー20を上面視したときに、第2層23が第1層22に対してはみ出さないように重複していれば、第1層22が露出しなくてもよい。例えば、距離d2がほぼ0であってもよい。つまり、側面24と側面27とが連続していてもよい。
【0028】
第1層22の複数の電極指11側の側面24と下地層21の上面25とのなす角度のうちの複数の電極指11とは反対側の第1角度26は90度未満である。第2層23の複数の電極指11側の側面27と第1層22の上面28とのなす角度のうちの複数の電極指11とは反対側の第2角度29は90度以下である。そして、第1角度26と第2角度29とは異なる角度であり、第1角度26は、第2角度29よりも小さい。具体的には、第1角度26は、45度未満であり、第2角度29は、45度以上90度以下である。本実施の形態では、第2角度29は約90度(略直角)である。
【0029】
また、バスバー20を上面視したときに、下地層21、第1層22及び第2層23は、互いに類似した形状を有する。具体的には、バスバー20を上面視したときに、下地層21、第1層22及び第2層23は、例えばそれぞれ略長方形の形状を有する。これにより、弾性表面波素子1の製造工程において下地層21、第1層22及び第2層23を形成する際に、蒸着、フォトリソグラフィ及びエッチング等の加工を容易に行うことができる。
【0030】
図1Bに示されるように、側面24の領域は、第1層22の膜厚が漸増する領域(膜厚漸増領域と呼ぶ)となっている。当該膜厚漸増領域は、
図7Bに示される膜厚漸増領域230に対応する領域である。第1層22が複数の電極指11側に膜厚漸増領域を有することで、バスバー20に質量分布ができ、バスバー20によって弾性表面波素子1内に複数の電極指11からバスバー20の方向における弾性表面波を閉じ込めることができると共に弾性表面波素子1内に閉じ込める弾性表面波の振幅強度を当該方向に徐々に減衰させることができる。
【0031】
このとき、当該膜厚漸増領域の形状にばらつきが生じることで、弾性表面波が漏れてしまうことがある。ここで、膜厚漸増領域の形状にばらつきが生じるとは、1つの膜厚漸増領域において、例えば、側面24の表面が波打っていたり、湾曲していたりする状態を意味する。第1層22の膜厚漸増領域の形状がばらつくことにより、弾性表面波を第1層22で閉じ込めきれないことがある。しかしながら、本実施の形態では、第1角度26を有する第1層22上に、第1角度26と異なる角度である第2角度29を有する第2層23が設けられている。第1角度26と第2角度29とが異なる角度であることで、第1層22によって閉じ込めきれなかった弾性表面波を、第2層23によって閉じ込めることができる。このように、第1層22及び第2層23を含むバスバー20が反射器の役割をすることで、複数の電極指11からバスバー20の方向における弾性表面波の漏洩を抑制でき、挿入損失をより低下できる。
【0032】
なお、複数の電極指11及び下地層21(電極層)は、例えば、Ti、Al、Cu、Pt、Au、Ag、Pdなどの金属又は合金から構成されてもよく、また、上記の金属又は合金から構成される複数の積層体から構成されてもよい。また、第1層22及び第2層23は、例えば、上記の金属又は合金から構成されてもよく、絶縁体又は半導体から構成されてもよい。
【0033】
[1.2 弾性表面波フィルタ]
次に、弾性表面波素子1を用いた弾性表面波フィルタ70について
図2から
図3Bを用いて説明する。
【0034】
図2は、実施の形態1に係る弾性表面波フィルタ70の一例を示す回路図である。
【0035】
弾性表面波フィルタ70は、1以上の直列腕共振子及び1以上の並列腕共振子で構成されるラダー型の弾性表面波フィルタである。また、弾性表面波フィルタ70は、端子Inと端子Outとを備える。1以上の直列腕共振子及び1以上の並列腕共振子の少なくとも1つは、弾性表面波素子1である。本実施の形態では、弾性表面波フィルタ70は、4つの直列腕共振子及び3つの並列腕共振子で構成される。4つの直列腕共振子は、端子Inと端子Outとの間に直列に接続されている。また、3つの並列腕共振子は、各直列腕共振子の接続点と基準端子(グランド)との間に接続され、互いに並列に接続されている。これにより、直列腕共振子と並列腕共振子とで構成される組が連続して接続されて、ラダー型のフィルタを構成している。本実施の形態では、4つの直列腕共振子及び3つの並列腕共振子は、それぞれが弾性表面波素子1である。
【0036】
次に、弾性表面波素子1を用いた弾性表面波フィルタ70の通過特性について
図3A及び
図3Bを用いて説明する。
【0037】
図3Aは、実施の形態1に係る弾性表面波フィルタ70及び従来の弾性表面波フィルタの通過特性を示すグラフである。
【0038】
図3Bは、
図3Aに示されるグラフの縦軸を拡大したときのグラフである。具体的には、
図3Aでは、縦軸の1目盛りを10dB及び0.5dBとしているが、
図3Bでは、縦軸の1目盛りを0.2dBとしている。
図3A及び
図3Bには、弾性表面波フィルタ70を経由する経路及び従来の弾性表面波フィルタを経由する経路の通過特性が示されており、弾性表面波フィルタ70に着目すると、端子Inに入力された信号の強度に対する端子Outから出力された信号の強度比である挿入損失が示されている。
【0039】
図3A及び
図3Bに示される実線が弾性表面波フィルタ70の通過特性を示し、破線が従来の弾性表面波フィルタの通過特性を示す。なお、従来の弾性表面波フィルタは、弾性表面波素子1の代わりに
図7A及び
図7Bに示される従来の弾性表面波素子を用いたフィルタである。つまり、従来の弾性表面波フィルタは、膜厚漸増領域230の形状がばらついている弾性表面波素子を用いたフィルタである。また、弾性表面波フィルタ70及び従来の弾性表面波フィルタは、例えば、LTE(Long Term Evolution)のBand8における上り周波数帯(880−915MHz)を通過帯域とする送信フィルタである。
【0040】
図3Bに示されるように、通過帯域内の丸で囲んでいる例えば約890MHzにおいて弾性表面波フィルタ70の挿入損失は約1.05dBであり、従来の弾性表面波フィルタの挿入損失は約1.1dBである。つまり、弾性表面波フィルタ70は、通過帯域において従来の弾性表面波フィルタよりも0.05dBの低損失化ができている。同様に、通過帯域内の丸で囲んでいる例えば約910MHzにおいて弾性表面波フィルタ70の挿入損失は約1.07dBであり、従来の弾性表面波フィルタの挿入損失は約1.1dBである。つまり、弾性表面波フィルタ70は、通過帯域において従来の弾性表面波フィルタよりも0.03dBの低損失化ができている。また、弾性表面波フィルタ70は、例えば880−915MHzのように通過帯域の広帯域化が実現されていることがわかる。このように、弾性表面波素子1を使用した弾性表面波フィルタ70は、広帯域化を実現しつつ、かつ、挿入損失をより低下できる。
【0041】
[1.3 マルチプレクサ]
次に、弾性表面波素子1を用いたマルチプレクサ80について
図4から
図5Bを用いて説明する。
【0042】
図4は、実施の形態1に係るマルチプレクサ80の一例を示す回路図である。
【0043】
マルチプレクサ80は、それぞれ所定の周波数帯域を選択的に通過させる複数の帯域通過フィルタを有する。本実施の形態では、マルチプレクサ80は、例えばデュプレクサである。
図4に示されるように、マルチプレクサ80は、帯域通過フィルタ81a及び81b、端子Ant、端子Tx及び端子Rxを備える。端子Antにはアンテナが接続され、端子Txには送信機が接続され、端子Rxには受信機が接続される。帯域通過フィルタ81aは送信フィルタであり、帯域通過フィルタ81bは受信フィルタである。帯域通過フィルタ81aの出力端と帯域通過フィルタ81bの入力端とは束ねられて端子Antに接続されている。
【0044】
帯域通過フィルタ81aは、送信機から端子Txに入力された送信信号を、第1の通過帯域でフィルタリングして端子Antからアンテナへ出力するフィルタである。帯域通過フィルタ81bは、アンテナから端子Antに入力された受信信号を、第1の通過帯域とは異なる第2の通過帯域でフィルタリングして端子Rxから受信機へ出力するフィルタである。
【0045】
複数の帯域通過フィルタ(帯域通過フィルタ81a及び81b)のうちの少なくとも1つは、弾性表面波素子1を少なくとも1つ含む。本実施の形態では、帯域通過フィルタ81aは、例えば4つの直列腕共振子及び3つの並列腕共振子で構成されるラダー型の弾性表面波フィルタであり、4つの直列腕共振子及び3つの並列腕共振子はそれぞれ弾性表面波素子1である。帯域通過フィルタ81aは、
図2で説明したものと同じであるため、詳細な説明を省略する。帯域通過フィルタ81bは、直列腕共振子と縦結合型共振器82とを備える。本実施の形態では、当該直列腕共振子は弾性表面波素子1である。なお、本実施の形態では、縦結合型共振器82を構成する共振子は弾性表面波素子1ではないが、当該共振子が弾性表面波素子1であってもよい。また、本実施の形態では、例えば、帯域通過フィルタ81aにおいて通過帯域内の低損失化をするために、帯域通過フィルタ81aにラダー型の弾性表面波フィルタが用いられている。一方、例えば、帯域通過フィルタ81bにおいて通過帯域外の減衰の強化をするために、帯域通過フィルタ81bに縦結合型共振器が用いられている。
【0046】
次に、弾性表面波素子1を用いたマルチプレクサ80の通過特性について
図5A及び
図5Bを用いて説明する。
【0047】
図5Aは、実施の形態1に係るマルチプレクサ80及び従来のマルチプレクサの通過特性を示すグラフである。
【0048】
図5Bは、
図5Aに示されるグラフの縦軸を拡大したときのグラフである。具体的には、
図5Aでは、縦軸の1目盛りを10dB及び0.5dBとしているが、
図5Bでは、縦軸の1目盛りを0.2dBとしている。また、マルチプレクサ80及び従来のマルチプレクサの送信側の帯域通過フィルタの通過特性に「Tx」と付し、受信側の帯域通過フィルタの通過特性に「Rx」と付している。
図3A及び
図3Bには、マルチプレクサ80を経由する経路及び従来のマルチプレクサを経由する経路の通過特性が示されており、マルチプレクサ80に着目すると、端子Txに入力された信号の強度に対する端子Antから出力された信号の強度比である挿入損失及び端子Antに入力された信号の強度に対する端子Rxから出力された信号の強度比である挿入損失が示されている。
【0049】
図5A及び
図5Bに示される実線がマルチプレクサ80の通過特性を示し、破線が従来のマルチプレクサの通過特性を示す。なお、従来のマルチプレクサは、弾性表面波素子1の代わりに
図7A及び
図7Bに示される従来の弾性表面波素子を用いたマルチプレクサである。つまり、従来のマルチプレクサは、膜厚漸増領域230の形状がばらついている弾性表面波素子を用いたマルチプレクサである。また、マルチプレクサ80及び従来のマルチプレクサにそれぞれ含まれる送信フィルタは、例えば、LTEのBand8における上り周波数帯(880−915MHz)を通過帯域とするフィルタである。また、マルチプレクサ80及び従来のマルチプレクサにそれぞれ含まれる受信フィルタは、例えば、LTEのBand8における下り周波数帯(925−960MHz)を通過帯域とするフィルタである。
【0050】
図5Bに示されるように、通過帯域内の丸で囲んでいる例えば約890MHzにおいてマルチプレクサ80(帯域通過フィルタ81a)の挿入損失は約1.05dBであり、従来のマルチプレクサの挿入損失は約1.1dBである。つまり、マルチプレクサ80は、通過帯域において従来のマルチプレクサよりも0.05dBの低損失化ができている。同様に、通過帯域内の丸で囲んでいる例えば約910MHzにおいてマルチプレクサ80(帯域通過フィルタ81a)の挿入損失は約1.07dBであり、従来のマルチプレクサの挿入損失は約1.1dBである。つまり、マルチプレクサ80は、通過帯域において従来のマルチプレクサよりも0.03dBの低損失化ができている。また、通過帯域内の丸で囲んでいる例えば約950MHzにおいてマルチプレクサ80(帯域通過フィルタ81b)の挿入損失は約1.41dBであり、従来のマルチプレクサの挿入損失は約1.43dBである。つまり、マルチプレクサ80は、通過帯域において従来のマルチプレクサよりも0.02dBの低損失化ができている。また、マルチプレクサ80は、例えば880−915MHz、925−960MHzのように通過帯域の広帯域化が実現されている。このように、弾性表面波素子1を使用したマルチプレクサ80は、広帯域化を実現しつつ、かつ、挿入損失をより低下できる。
【0051】
以上のように、下地層21、第1層22及び第2層23の3層構造のバスバー20であって、第1層22の第1角度26と第2層23の第2角度29とが異なるバスバー20を有する弾性表面波素子1は、弾性表面波素子1の広帯域化を実現しつつ、かつ、挿入損失をより低下できる。また、弾性表面波素子1を使用したフィルタ(例えば弾性表面波フィルタ70又はマルチプレクサ80等)は、当該フィルタの広帯域化を実現しつつ、かつ、挿入損失をより低下できる。
【0052】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る弾性表面波素子1aの構成について
図6A及び
図6Bを用いて説明する。
【0053】
図6Aは、実施の形態2に係る弾性表面波素子1aの一例を示す上面図である。
【0054】
図6Bは、
図6AのVIB−VIB線における断面を拡大したときの断面図である。
【0055】
実施の形態2に係る弾性表面波素子1aは、IDT電極40の代わりにIDT電極40aを備える点が、実施の形態1に係る弾性表面波素子1と異なる。その他の構成は、実施の形態1におけるものと同じであるため、説明は省略する。
【0056】
IDT電極40aは、圧電基板60上に形成される。また、IDT電極40aは、複数の電極指11の対を有するフィンガー10とフィンガー10を挟んで互いに対向するバスバー20aとを含む。IDT電極40aにおける電極指11は、互いに対向するバスバー20aの対のいずれかに接続されている。言い換えると、IDT電極40aにおける電極指11は、互いに対向するバスバー20aの対の両方には接続されない。
【0057】
バスバー20aは、複数の電極指11の延びる方向において弾性表面波が弾性表面波素子1aから漏れないように弾性表面波を反射して弾性表面波素子1a内に閉じ込める。バスバー20aは、圧電基板60上に形成された下地層21と、下地層21上に形成された第1層22と、第1層22上に形成された第2層23aとを有する。つまり、バスバー20aは、圧電基板60上に下地層21、第1層22、第2層23aの順番でそれぞれが積層された3層構造を有している。
【0058】
また、
図6Aに示されるように、バスバー20aを上面視したときに、第1層22は下地層21に対してはみ出さないように重複し、第2層23aは第1層22に対してはみ出さないように重複している。具体的には、バスバー20aを上面視したときに、第1層22の面積は下地層21の面積よりも小さく、第2層23aの面積は第1層22の面積よりも小さい。より具体的には、
図6Aに示されるように、バスバー20aを上面視したときに、バスバー20aの短手方向における複数の電極指11側の第1層22の端部付近が露出するように、第1層22上に第2層23aが形成されている。また、第1層22及び第2層23aは、膜厚が厚過ぎると膜剥がれが発生する恐れがあるため薄く形成されることが好ましい。例えば、下地層21の厚みは4um、第1層22の厚みは15um、第2層23aの厚みは15umである。
【0059】
また、バスバー20aの下地層21の複数の電極指11側の端から第1層22の複数の電極指11側の端までの距離d1は、弾性表面波の波長の0.95倍から1.05倍である。つまり、距離d1は、弾性表面波の波長とほぼ同じ長さである。また、第1層22の上面28の複数の電極指11側の端から第2層23aの複数の電極指11側の端までの距離d2は、弾性表面波の波長の0.95倍から1.05倍である。つまり、距離d2についても、弾性表面波の波長とほぼ同じ長さである。なお、バスバー20aを上面視したときに、第2層23aが第1層22に対してはみ出さないように重複していれば、第1層22が露出しなくてもよい。例えば、距離d2がほぼ0であってもよく、側面24と側面27aとが連続していてもよい。
【0060】
第2層23aの複数の電極指11側の側面27aと第1層22の上面28とのなす角度のうちの複数の電極指11とは反対側の第2角度29aは90度以下である。そして、第1角度26と第2角度29aとは異なる角度であり、第1角度26は、第2角度29aよりも小さい。具体的には、第1角度26は、45度未満であり、第2角度29aは、45度以上90度以下である。実施の形態1では、第2角度29は約90度(略直角)であったが、実施の形態2では、
図6Bに示されるように、第2角度29aは45度以上90度以下である。
【0061】
第2層23aが側面27aにおいて膜厚が漸増する領域を有している(第2角度29aが略90度でない)場合であっても、第1角度26と第2角度29aとが異なる角度であることで、第1層22によって閉じ込めきれなかった弾性表面波を、第2層23aによって閉じ込めることができる。このように、第1層22及び第2層23aを含むバスバー20aが反射器の役割をすることで、複数の電極指11からバスバー20aの方向における弾性表面波の漏洩を抑制でき、挿入損失をより低下できる。
【0062】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態に係る弾性表面波素子、弾性表面波フィルタ及びマルチプレクサについて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0063】
例えば、上記実施の形態では、IDT電極40(40a)のバスバー20(20a)と反射器50のバスバー20(20a)とに、それぞれ別体として、第1層22及び第2層23(23a)が形成されたが、これに限らない。例えば、IDT電極40(40a)のバスバー20(20a)と反射器50のバスバー20(20a)とに跨って第1層22及び第2層23(23a)が連続的に形成されてもよい。これにより、IDT電極40(40a)のバスバー20(20a)と反射器50のバスバー20(20a)との間から弾性表面波が漏れるのを抑制することができる。
【0064】
また、例えば、上記実施の形態では、弾性表面波素子1(1a)は、反射器50を備えたが、これに限らず、備えなくてもよい。つまり、弾性表面波素子1(1a)は、少なくともバスバー20(20a)において弾性表面波を反射可能な素子であればよい。
【0065】
また、例えば、上記実施の形態では、第1層22及び第2層23(23a)は、例えばそれぞれ略長方形の形状を有していたが、これに限らず、略三角形等の形状を有していてもよい。
【0066】
また、例えば、上記実施の形態では、弾性表面波フィルタ70は送信フィルタであったが、これに限らず、受信フィルタであってもよい。
【0067】
また、例えば、上記実施の形態では、弾性表面波フィルタ70は、弾性表面波フィルタ70を構成する1以上の直列腕共振子及び1以上の並列腕共振子の全てが弾性表面波素子1であったが、これに限らず、1以上の直列腕共振子及び1以上の並列腕共振子の少なくとも1つが弾性表面波素子1であればよい。
【0068】
また、例えば、上記実施の形態では、弾性表面波フィルタ70は、4つの直列腕共振子及び3つの並列腕共振子から構成されたが、これに限らず、1以上の直列腕共振子及び1以上の並列腕共振子の数は適宜変更してもよい。
【0069】
また、例えば、上記実施の形態では、弾性表面波フィルタ70及びマルチプレクサ80は、LTEのBand8を通過帯域としたが、これに限らず、他の周波数帯域を通過帯域としてもよい。
【0070】
また、例えば、上記実施の形態では、マルチプレクサ80は、デュプレクサであったが、これに限らない。例えば、マルチプレクサ80は、クワッドプレクサ、3つのフィルタのアンテナ端子が共通化されたトリプレクサ、又は、6つのフィルタのアンテナ端子が共通化されたヘキサプレクサ等であってもよい。つまり、マルチプレクサ80は、2以上のフィルタを備えていればよい。さらには、マルチプレクサ80は、送信フィルタ及び受信フィルタの双方を備える構成に限らず、送信フィルタのみ、または、受信フィルタのみを備える構成であってもよい。
【0071】
また、例えば、上記実施の形態では、帯域通過フィルタ81a及び81bの両方が弾性表面波素子1を少なくとも1つ含んだが、これに限らず、帯域通過フィルタ81a及び81bの少なくとも一方が弾性表面波素子1を少なくとも1つ含んでいればよい。
【0072】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。