特許第6780324号(P6780324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6780324
(24)【登録日】2020年10月19日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】弾性波装置
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20201026BHJP
   H03H 9/72 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   H03H9/25 A
   H03H9/72
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-129454(P2016-129454)
(22)【出願日】2016年6月29日
(65)【公開番号】特開2018-6931(P2018-6931A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100158207
【弁理士】
【氏名又は名称】河本 尚志
(72)【発明者】
【氏名】亀岡 義宣
【審査官】 ▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−179018(JP,A)
【文献】 特開平03−006914(JP,A)
【文献】 特開2000−165192(JP,A)
【文献】 特開2005−295363(JP,A)
【文献】 特開2009−141036(JP,A)
【文献】 特表2003−516634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007−H03H3/10
H03H9/00−H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板の一方の主面に形成された機能電極と、
前記圧電基板の一方の主面と対向して配置されたカバー部材と、を備えた弾性波装置であって、
前記圧電基板の他方の主面に、信号用端子と、グランド用端子とが形成され、
前記圧電基板の側面に、前記機能電極と前記信号用端子とを接続する信号用側面配線、および、前記機能電極と前記グランド用端子とを接続するグランド用側面配線が形成され、
前記カバー部材の一方の主面に天面金属層が形成され、
前記天面金属層が、前記カバー部材の側面に形成されたカバー部材側面配線を経由して、前記グランド用側面配線に接続された弾性波装置。
【請求項2】
前記圧電基板と前記カバー部材との間に、環状の支持体が設けられた、請求項1に記載された弾性波装置。
【請求項3】
前記機能電極が、受信用機能電極と、送信用機能電極とを含み、分波器として機能する、請求項1または2に記載された弾性波装置。
【請求項4】
前記カバー部材の前記一方の主面に対して垂直な方向から透視したとき、
前記天面金属層が、前記カバー部材の前記一方の主面の、前記受信用機能電極と前記送信用機能電極との両方と重なる位置に形成された、請求項3に記載された弾性波装置。
【請求項5】
前記カバー部材の前記一方の主面に対して垂直な方向から透視したとき、
前記天面金属層が、前記カバー部材の前記一方の主面の、前記受信用機能電極と重なる位置に形成され、前記送信用機能電極と重なる位置に形成されていない、請求項3に記載された弾性波装置。
【請求項6】
カバー部材側面配線が、前記受信用機能電極と前記グランド用端子とを接続する前記グランド用側面配線に物理的に直接に接続され、前記送信用機能電極と前記グランド用端子とを接続するグランド用側面配線に物理的に直接に接続されていない、請求項3ないし5のいずれか1項に記載された弾性波装置。
【請求項7】
少なくとも、前記圧電基板の前記側面と、前記カバー部材の前記側面および前記天面金属層が形成された天面を、さらに、絶縁性の保護層で覆った、請求項1ないし6のいずれか1項に記載された弾性波装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性波装置に関し、さらに詳しくは、不要信号による特性の低下、および、不要電磁界結合による特性の低下が抑制された弾性波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性波装置が、フィルタや分波器などとして、通信機器などに広く使用されている。
【0003】
そのような弾性波装置が、特許文献1(特開2008-28713号公報)に開示されている。
【0004】
図に、特許文献1に開示された弾性波装置1000を示す。
【0005】
弾性波装置1000は、圧電基板(第1の基板)101を備える。圧電基板1の一方の主面(図における上側の主面)に、機能電極(櫛型電極)102が形成されている。
【0006】
圧電基板101上に、機能電極102を覆うように、カバー部材(第2の基板)103が設けられている。カバー部材103の一方の主面(図における上側の主面)に、端子(外部端子)104が形成されている。端子104は、カバー部材103の側面に形成されたカバー部材側面配線(キャスタレーション)105を経由して、機能電極102に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-28713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された弾性波装置1000は、内部で発生した不要信号や、外部との不要電磁界結合により、特性が低下してしまう場合があった。
【0009】
たとえば、弾性波装置1000は、圧電基板に受信用機能電極と送信用機能電極とを形成し、分波器を構成した場合には、送信用機能電極が発生させた不要信号がカバー部材103を伝搬し、受信用機能電極に伝わり、特性(アイソレーション特性など)を低下させてしまう場合があった。
【0010】
また、弾性波装置1000は、カバー部材103がシールドされていないため、たとえば、弾性波装置1000を実装したモジュールの金属シールドと、機能電極102とが電磁界結合してしまい、特性(アイソレーション特性など)を低下させてしまう場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上述した従来の問題を解決するためになされたものであり、その手段として本発明の弾性波装置は、圧電基板と、圧電基板の一方の主面に形成された機能電極と、圧電基板の一方の主面と対向して配置されたカバー部材と、を備え、圧電基板の他方の主面に、信号用端子と、グランド用端子とが形成され、圧電基板の側面に、機能電極と信号用端子とを接続する信号用側面配線、および、機能電極とグランド用端子とを接続するグランド用側面配線が形成され、カバー部材の一方の主面に天面金属層が形成され、天面金属層が、カバー部材の側面に形成されたカバー部材側面配線を経由して、グランド用側面配線に接続されたものとした。
【0012】
圧電基板とカバー部材との間には、環状の支持体を設けることができる。この場合には、カバー部材が板状であっても、機能電極とカバー部材との間に空間を形成することができる。
【0013】
圧電基板に、機能電極として、受信用機能電極と送信用機能電極とを形成することができる。この場合は、弾性波装置は、分波器として構成することができる。
【0014】
カバー部材の一方の主面に対して垂直な方向から透視したとき、天面金属層が、カバー部材の一方の主面の、受信用機能電極と送信用機能電極との両方と重なる位置に形成されたものとすることができる。この場合には、不要信号や不要電磁界結合による特性の低下を、確実に抑制することができる。
【0015】
カバー部材の一方の主面に対して垂直な方向から透視したとき、天面金属層が、カバー部材の一方の主面の、受信用機能電極と重なる位置に形成され、送信用機能電極と重なる位置に形成されていないものとすることができる。この場合には、不要信号による特性の低下がより深刻である受信用機能電極を、不要信号や不要電磁界結合から有効に保護することができる。
【0016】
カバー部材側面配線を、受信用機能電極とグランド用端子とを接続するグランド用側面配線に物理的に直接に接続し、送信用機能電極とグランド用端子とを接続するグランド用側面配線に物理的に直接に接続しないものとすることができる。送信用機能電極(送信用フィルタ)は、高調波特性を改善するために、グランド電位に直接に接続するのではなく、間にインダクタを介在させたうえでグランドに接続する場合がある。この場合において、仮に、カバー部材側面配線を、送信用機能電極とグランド用端子とを接続するグランド用側面配線に接続すると、送信用機能電極の高調波特性が改善されなくなったり、天面金属層のシールド効果が低下したりしてしまう。そこで、上記のように、カバー部材側面配線を、受信用機能電極とグランド用端子とを接続するグランド用側面配線に接続し、送信用機能電極とグランド用端子とを接続するグランド用側面配線に接続しないようにすれば、送信用機能電極の高調波特性を改善し、かつ、天面金属層のシールド効果を低下させないようにすることができる。
【0017】
少なくとも、圧電基板の側面と、カバー部材の側面および天面金属層が形成された天面を、さらに、絶縁性の保護層で覆うことができる。この場合には、天面金属層、信号用側面配線、グランド用側面配線、カバー部材側面配線が、外部の導体と接触し、短絡してしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の弾性波装置は、不要信号や不要電磁界結合による特性の低下が抑制されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態にかかる弾性波装置100を示す断面図である。
図2】弾性波装置100を示す斜視図である。
図3】弾性波装置100を示す分解斜視図である。
図4】第2実施形態にかかる弾性波装置200を示す斜視図である。
図5】第3実施形態にかかる弾性波装置300を示す斜視図である。
図6】実施例1、実施例2、比較例にかかる各弾性波装置のアイソレーション特性を比較して示したグラフである。
図7】モジュールに組込まれた実施例1、実施例2、比較例にかかる各弾性波装置のアイソレーション特性を比較して示したグラフである。
図8】特許文献1に開示された弾性波装置1000を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面とともに、本発明を実施するための形態について説明する。
【0021】
なお、各実施形態は、本発明の実施の形態を例示的に示したものであり、本発明が実施形態の内容に限定されることはない。また、異なる実施形態に記載された内容を組合せて実施することも可能であり、その場合の実施内容も本発明に含まれる。また、図面は、実施形態の理解を助けるためのものであり、必ずしも厳密に描画されていない場合がある。たとえば、描画された構成要素ないし構成要素間の寸法の比率が、明細書に記載されたそれらの寸法の比率と一致していない場合がある。また、明細書に記載されている構成要素が、図面において省略されている場合や、個数を省略して描画されている場合などがある。
【0022】
[第1実施形態]
図1図3に、第1実施形態にかかる弾性波装置100を示す。ただし、図1は、弾性波装置100の断面図である。図2は、保護層12を省略したうえで示した弾性波装置100の斜視図である。図3は、保護層12を省略したうえで各構成要素を分解して示した弾性波装置100の分解斜視図である。
【0023】
なお、図1は、図2の一点鎖線X-X部分を示している。また、図3では、受信用機能電極2、送信用機能電極3については、それぞれ、具体的な櫛歯電極などは描写せず、領域として示している。これらの領域内に、少なくとも1つの共振器が形成され、必要な回路(フィルタ回路など)が構成されている。
【0024】
弾性波装置100は、デュプレクサ(分波器)である。
【0025】
弾性波装置100は、圧電基板1を備える。圧電基板1の材質は任意であるが、たとえば、LiNbO基板、LiTaO基板、水晶基板などを用いることができる。
【0026】
圧電基板1の一方の主面(図における上側の主面)に、受信用機能電極2と、送信用機能電極3とが形成されている。受信用機能電極2と送信用機能電極3とは、それぞれ、櫛歯電極を含み、必要な回路(たとえばフィルタ回路)が構成されている。
【0027】
受信用機能電極2、送信用機能電極3は、それぞれ、たとえば、Pt、Au、Ag、Cu、Ni、W、Ta、Fe、Cr、AlおよびPdから選ばれる金属、もしくはこれらの金属を1種以上含む合金により形成されている。受信用機能電極2、送信用機能電極3は、それぞれ、複数種類の上記の金属や合金を使って、多層構造に形成されても良い。
【0028】
圧電基板1の他方の主面(図における下側の主面)に、信号用端子4と、グランド用端子5とが形成されている。信号用端子4と、グランド用端子5は、たとえば、1層目がTiからなり、2層目がCuからなる。
【0029】
また、圧電基板1の側面に、受信用機能電極2と信号用端子4とを接続する、または、送信用機能電極3と信号用端子4とを接続する信号用側面配線6が形成されている。また、圧電基板1の側面に、受信用機能電極2とグランド用端子5とを接続するグランド用側面配線Rx7、および、送信用機能電極3とグランド用端子5とを接続するグランド用側面配線Tx7が形成されている。信号用側面配線6、グランド用側面配線Rx7、Tx7は、それぞれ、一端が圧電基板1の一方の主面にまで及んで形成され、他端が圧電基板の他方の主面にまで及んで形成されている。なお、信号用側面配線6、グランド用側面配線Rx7、Tx7は、圧電基板1の側面に直接に形成されるのではなく、圧電基板1の側面に絶縁材(たとえば樹脂からなる)が形成され、その絶縁材上に形成される場合がある。信号用側面配線6、グランド用側面配線Rx7、Tx7は、たとえば、1層目がTiからなり、2層目がCuからなる。
【0030】
圧電基板1の一方の主面に、受信用機能電極2と送信用機能電極3とを囲むように、たとえば樹脂からなる環状の支持体8が取付けられている。なお、信号用側面配線6、グランド用側面配線Rx7、Tx7は、圧電基板1と支持体8との間を経由する。
【0031】
さらに、支持体8の上に、板状のカバー部材9が取付けられている。カバー部材9の材質は任意であり、たとえば、アルミナなどのセラミック、樹脂などからなる。あるいは、カバー部材9は、圧電基板1と同じ材質であっても良い。
【0032】
カバー部材9の一方の主面(図における上側の主面)全面に、天面金属層10が形成されている。天面金属層10は、たとえば、1層目がTiからなり、2層目がCuからなる。
【0033】
また、カバー部材9の側面に、カバー部材側面配線11が形成されている。カバー部材側面配線11は、天面金属層10とグランド用側面配線Rx7、Tx7とを接続する。カバー部材側面配線11は、たとえば、1層目がTiからなり、2層目がCuからなる。
【0034】
弾性波装置100は、下側主面(底面)の信号用端子4とグランド用端子5とが形成された部分を除いたすべての外表面に、樹脂からなる絶縁性の保護層12が形成されている。
【0035】
弾性波装置100は、保護層12から露出した信号用端子4およびグランド用端子5上に、たとえば半田からなるバンプ13が形成されている。
【0036】
第1実施形態にかかる弾性波装置100は、たとえば、次の方法で製造することができる。なお、通常は、多数の弾性波装置100が、マザー基板などを使って一括して製造されるが、ここでは便宜上、1個の弾性波装置100を製造する場合について説明する。
【0037】
まず、圧電基板1を準備する。
【0038】
次に、フォトリソ技術を利用して、圧電基板1の一方主面に、受信用機能電極2、送信用機能電極3を形成する。
【0039】
次に、たとえばスパッタリングやめっきにより、圧電基板1の他方の主面に、信号用端子4、グランド用端子5を形成し、圧電基板1の側面に信号用側面配線6、グランド用側面配線Rx7、Tx7を形成する。
【0040】
次に、圧電基板1上に、たとえば接着剤により、支持体8を取付ける。
【0041】
また、予め、カバー部材9を準備し、カバー部材9の上側主面に、たとえばスパッタリングやめっきにより、天面金属層10を形成しておく。
【0042】
次に、支持体8上に、たとえば接着剤により、カバー部材9を取付ける。
【0043】
次に、たとえばスパッタリングやめっきにより、カバー部材9の側面に、カバー部材側面配線11を形成する。なお、カバー部材側面配線11は、一端が天面金属層10と重なり、他端がグランド用側面配線Rx7、Tx7と重なるように形成する。
【0044】
次に、信号用端子4とグランド用端子5とが形成された部分を除いた全ての表面に、たとえばスピンコートにより、保護層12を形成する。
【0045】
最後に、保護層12から露出した信号用端子4およびグランド用端子5上に、たとえばスタッドバンプ法により、バンプ13を形成して、第1実施形態にかかる弾性波装置100を完成させる。
【0046】
第1実施形態にかかる弾性波装置100は、カバー部材9に天面金属層10が形成され、かつ、天面金属層10が、カバー部材側面配線11、グランド用側面配線Rx7、Tx7、グランド用端子5を経由して、グランド電位に接続されて使用される。
【0047】
この結果、弾性波装置100は、送信用機能電極3が発生させた不要信号がカバー部材9を伝搬しても、天面金属層10によってグランド電位に落とすことができるため、不要信号がこの経路で受信用機能電極2に伝搬することが抑制されており、特性(アイソレーション特性など)の低下が抑制されている。
【0048】
また、弾性波装置100は、カバー部材9が天面金属層10によってシールドされているため、受信用機能電極2や送信用機能電極3が、外部(たとえば弾性波装置100を実装したモジュールの金属シールドなど)と電磁界結合することが抑制されており、特性(アイソレーション特性など)の低下が抑制されている。
【0049】
[第2実施形態]
図4に、第2実施形態にかかる弾性波装置200を示す。ただし、図4は、保護層12を省略したうえで示した弾性波装置200の斜視図である。
【0050】
弾性波装置200は、第1実施形態にかかる弾性波装置100に変更を加えた。すなわち、弾性波装置100では、カバー部材9の一方の主面の全面に天面金属層10が形成されていたが、弾性波装置200では、大きさ(面積)を半分にした天面金属層20を、カバー部材9の一方の主面の受信用機能電極2に対応する位置に形成した。
【0051】
一般に、デュプレクサ(分波器)においては、受信信号の方が送信信号よりもSN比が小さいため、受信用機能電極(受信用フィルタ)2の方が、送信用機能電極(送信用フィルタ)3よりも、不要信号や、不要な電磁界結合による電気的特性の低下が大きく、深刻な問題となる。そこで、弾性波装置200では、受信用機能電極2に対応する位置に形成された天面金属層20により、受信用機能電極(受信用フィルタ)2を保護することにした。
【0052】
また、弾性波装置200では、天面金属層20に接続されたカバー部材側面配線11を、受信用機能電極2とグランド用端子5とを接続するグランド用側面配線Rx7に接続し、送信用機能電極3とグランド用端子5とを接続するグランド用側面配線Tx7には接続していない。上述したとおり、送信用機能電極3(送信用フィルタ)は、高調波特性を改善するために、グランド電位に直接に接続するのではなく、間にインダクタを介在させたうえでグランドに接続する場合がある。この場合において、仮に、カバー部材側面配線11を、送信用機能電極3とグランド用端子5とを接続するグランド用側面配線Tx7に接続に接続すると、送信用機能電極3の高調波特性が改善されなくなったり、天面金属層20のシールド効果が低下したりしてしまう。そこで、弾性波装置200は、天面金属層20に接続されたカバー部材側面配線11を、受信用機能電極2とグランド用端子5とを接続するグランド用側面配線Rx7に接続し、送信用機能電極3とグランド用端子5とを接続するグランド用側面配線Tx7に接続しないことにより、送信用フィルタを、間にインダクタを介在させたうえでグランドに接続した場合においても、送信用フィルタの高調波特性が改善され、かつ、天面金属層20のシールド効果が低下しないようにした。
【0053】
弾性波装置200の他の構成は、弾性波装置100と同じにした。
【0054】
[電気的特性(アイソレーション特性)の比較]
実施例1として、第1実施形態にかかる弾性波装置100を用意した。また、実施例2として、第2実施形態にかかる弾性波装置200を用意した。さらに、比較例として、天面金属層が形成されていない弾性波装置を用意した。比較例にかかる弾性波装置は、天面金属層とカバー部材側面配線とが形成されていないことを除けば、実施例1や実施例2の弾性波装置と同じ構造である。
【0055】
図6に、実施例1、実施例2、比較例の各弾性波装置について、単体でのアイソレーション特性を比較して示す。なお、周波数は、受信用フィルタの通過帯域である、1930MHz〜1990MHzをみている。
【0056】
図6から分かるように、比較例に比べて、実施例1は大きくアイソレーション特性が改善されている。また、実施例2も、アイソレーション特性が改善されている。
【0057】
以上より、実施例1、実施例2のように、カバー部材9に天面金属層10、20を形成し、天面金属層10をグランド電位に接続すれば、アイソレーション特性を改善できることが確認できた。
【0058】
次に、図7に、実施例1、実施例2、比較例の各弾性波装置について、モジュールに組込んだ状態でのアイソレーション特性を比較して示す。なお、各弾性波装置は、モジュールにおいて、天面から0.3mm離れたところに(モジュールの)金属シールドが配置された状態で、回路基板に実装された。
【0059】
図7から分かるように、比較例に比べて、実施例1は大きくアイソレーション特性が改善されている。また、実施例1には及ばないが、実施例2も、比較例に比べて大きくアイソレーション特性が改善されている。そして、モジュールに組込んで測定した場合の方が、弾性波装置を単体で測定した場合よりも、実施例1と実施例2の改善の度合いの差が縮まっている。
【0060】
以上より、外部との不要な電磁結合によるアイソレーション特性の低下を抑制するためには、特に受信用機能電極2をグランド電位に接続された天面金属層10、20で保護することが重要であることが分かった。すなわち、実施例2(弾性波装置200)のように、少なくとも受信用機能電極2を天面金属層20で保護すれば、ある程度、有効に、不要な電磁結合によるアイソレーション特性の低下を抑制できることが分かった。ただし、実施例1(弾性波装置100)のように、天面金属層10で受信用機能電極2と送信用機能電極3の両方を保護する方が、より好ましいことは言うまでもない。
【0061】
[第3実施形態]
図5に、第3実施形態にかかる弾性波装置300を示す。ただし、図5は、保護層12を省略したうえで示した弾性波装置300の斜視図である。
【0062】
弾性波装置300は、第1実施形態にかかる弾性波装置100と同様に、カバー部材9の一方の主面の全面に、天面金属層10を形成した。また、弾性波装置300は、第2実施形態にかかる弾性波装置200と同様に、天面金属層10に接続されたカバー部材側面配線11を、受信用機能電極2とグランド用端子5とを接続するグランド用側面配線Rx7に接続し、送信用機能電極3とグランド用端子5とを接続するグランド用側面配線Tx7には接続しなかった。弾性波装置300の他の構成は、弾性波装置100、200と同じにした。
【0063】
弾性波装置300は、送信用機能電極3が発生させた不要信号がカバー部材9を伝搬しても、天面金属層10によってグランド電位に落とすことができるため、不要信号がこの経路で受信用機能電極2に伝搬することが抑制されており、特性の低下が抑制されている。
【0064】
また、弾性波装置300は、カバー部材9が天面金属層10によってシールドされているため、受信用機能電極2や送信用機能電極3が、外部と電磁界結合することが抑制されており、特性(アイソレーション特性など)の低下が抑制されている。
【0065】
さらに、弾性波装置300は、天面金属層10を、受信用機能電極2とグランド用端子5とを接続するグランド用側面配線Rx7を経由させてグランド電位に接続しているため、送信用フィルタを、間にインダクタを介在させたうえでグランドに接続した場合においても、送信用フィルタの高調波特性が改善され、かつ、天面金属層10のシールド効果が低下しない。
【0066】
以上、第1実施形態〜第3実施形態にかかる弾性波装置100〜300について説明したが、本発明が上述した内容に限定されることはなく、発明の主に沿って、種々の変更をなすことができる。
【0067】
たとえば、弾性波装置100〜300はデュプレクサであったが、弾性波装置の種類は任意であり、デュプレクサに代えて、単体のフィルタであっても良く、あるいは、トリプレクサなどさらに機能が追加されたマルチプレクサであっても良い。
【符号の説明】
【0068】
1・・・圧電体
2・・・受信用機能電極
3・・・送信用機能電極
4・・・信号用端子
5・・・グランド用端子
6・・・信号用側面配線
Rx7・・・グランド用側面配線(受信用機能電極2に接続されたもの)
Tx7・・・グランド用側面配線(送信用機能電極3に接続されたもの)
8・・・支持体
9・・・カバー部材
10、20・・・天面金属層
11・・・カバー部材側面配線
12・・・保護層
13・・・バンプ
100、200、300・・・弾性波装置(分波器;デュプレクサ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8