(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
砥石軸を回転可能に支持する砥石台本体に取り付けられ、前記砥石軸に取り付けられた砥石を、研削点周りを開口部として残して、該開口部以外を覆う砥石カバー装置であって、
前記砥石は、断面円形の回転体であり、径の大きさの異なる2種類があり、径の大きい大径砥石と、径の小さい小径砥石とのいずれかであり、
前記大径砥石を収容する第1内部空間を形成する大径用砥石カバー装置と、
前記大径用砥石カバー装置により形成される第1内部空間内に着脱可能に配置され、前記小径砥石を収容する第2内部空間を形成する小径用砥石カバー装置とを備え、
前記大径用砥石カバー装置は、前記開口部として大径用開口部を備え、前記大径用開口部以外は、前記大径砥石を囲う大径用壁を備え、
前記小径用砥石カバー装置は、前記開口部として小径用開口部を備え、前記小径用開口部以外は、前記小径砥石を囲う小径用壁を備える、
砥石カバー装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態はエンジンのカム等を研削する研削盤である。
【0021】
図1〜
図3は、研削盤2の全体構成を示す。研削盤2は、ベッド10、テーブル20、主軸台30、心押台40、砥石台50等を有している。なお、X軸とY軸とZ軸が記載されている図では、X軸とY軸とZ軸は互いに直交しており、Y軸方向は鉛直上方を示し、Z軸方向は砥石55がワークWに切り込む水平方向を示し、X軸方向は主軸31の回転軸線31Jと平行な水平方向を示している。
【0022】
ベッド10は、
図3に良く示されるように、平面視において略T字状に構成されている。そして、
図1に良く示されるように、X軸方向に沿って延びるX軸案内面12、12Vが設けられ、X軸方向に沿って延びるX軸スリット12Kが設けられている。また、
図1及び
図3に良く示されるように、ベッド10には、Z軸方向に沿って延びるZ軸案内面15,15Vが設けられ、Z軸方向に沿って延びるZ軸スリット15Kが設けられている。
【0023】
砥石台50は、ベッド10に載置され、Z軸案内面15,15Vに静圧案内支持されて、Z軸方向に沿って往復移動可能である。砥石台駆動モータ50Mは、制御装置80からの制御信号に基づいて、ボールネジ50B(
図2参照)を回転させる。制御装置80は、エンコーダ50E(回転検出手段)からの検出信号に基づいた砥石台50のZ軸方向の位置を検出しながら砥石台駆動モータ50Mを制御して砥石台50のZ軸方向の位置を制御する。なお、
図2に示すように、ボールネジ50Bにはナット50Nが螺合されており、当該ナット50NはZ軸スリット15K(
図1参照)に挿通されたアーム50Aを介して砥石台50に接続されている。従って、砥石台駆動モータ50Mがボールネジ50Bを回転駆動するとナット50NのZ軸方向の位置が移動し、アーム50Aを介してナット50Nに接続された砥石台50がZ軸案内面15に沿ってZ軸方向に移動する。
【0024】
砥石台50には、X軸方向に平行な砥石回転軸線55J回りに回転自在に支持された砥石軸54、砥石モータ55M、が設けられている。なお、
図3に示すように砥石回転軸線55Jと主軸回転軸線31JはどちらもX軸に平行であり、
図2に示すように砥石回転軸線55Jと主軸回転軸線31Jは、同一の仮想平面VM上にある。
【0025】
砥石モータ55Mには大径プーリ51が取り付けられている。また砥石軸54の一方端には砥石55が取り付けられ、砥石軸54の他方端には小径プーリ52が取り付けられている。そして大径プーリ51と小径プーリ52には、動力伝達用のベルト53が掛けられている。砥石軸54の近傍には、砥石55の回転数を検出可能な回転検出手段55Sが設けられている。制御装置80は、回転検出手段55Sからの検出信号に基づいて砥石55の回転数を検出しながら砥石モータ55Mを制御して砥石55の回転数を制御する。
【0026】
砥石55は砥石軸54に直交する平面で切断した断面が円形であり、砥石55の外周面にはCBN砥粒が接着剤や電着等にて固められており、砥石軸54と一体となって砥石回転軸線55J回りに回転する。また砥石55は、ワークWを研削する研削点K(
図2参照)の周囲を除く大半が砥石収納ケース91にて覆われている。砥石収納ケース91の上部には、砥石55の研削点Kに向けて、冷却及び潤滑用のクーラントを吐出するクーラントノズル58が設けられている。当該クーラントノズル58には、図示省略したクーラントタンクからクーラントが供給され、研削点K(砥石回転軸線55Jと主軸回転軸線31Jとを含む仮想平面VMと、ワークWに対向する側の砥石55の外周面と、の交点)の冷却及び潤滑に使用されたクーラントは図示省略した流路にて回収され、クーラントタンクに戻される。クーラントタンクで図略の装置によって不純物が取り除かれる。
【0027】
テーブル20は、ベッド10に載置され、X軸案内面12に静圧案内支持されて、X軸方向に沿って往復移動可能である。テーブル駆動モータ20Mは、制御装置80からの制御信号に基づいて、ボールネジ(図示省略)を回転させる。制御装置80は、エンコーダ20E(回転検出手段)からの検出信号に基づいたテーブル20のX軸方向の位置を検出しながらテーブル駆動モータ20Mを制御してテーブル20のX軸方向の位置を制御する。なお、ボールネジにはナット(図示省略)が螺合されており、当該ナットはスリット12Kに挿通されたアーム(図示省略)を介してテーブル20と接続されている。従って、テーブル駆動モータ20Mがボールネジを回転駆動するとナットのX軸方向の位置が移動し、アームを介してナットに接続されたテーブル20がX軸案内面12に沿ってX軸方向に移動する。そしてテーブル20上のX軸方向における一方端には主軸台30が固定され、他方端には心押台40が固定されている。
【0028】
主軸台30は、X軸方向に平行な主軸回転軸線31J回りに回転する主軸31と、主軸回転軸線31Jを中心軸線とするセンタ32と、主軸31を回転駆動する主軸モータ31Mと、エンコーダ31E等を有している。主軸31には、主軸31とワークWとを接続する駆動金具33が取り付けられている。駆動金具33は、ワークWを把持する把持部33Aと、把持部33Aと主軸31とを接続する接続部33Bとを有しており、主軸31と一体となって主軸回転軸線31J回りに回転してワークWを回転させる。制御装置80は、エンコーダ31E(回転検出手段)からの検出信号に基づいて主軸31の回転角度や回転数を検出しながら主軸モータ31Mを制御して主軸31の回転角度や回転数(すなわち、ワークWの回転角度や回転数)を制御する。
【0029】
心押台40は、主軸回転軸線31Jを中心軸線とするセンタ42と、センタ42を収容して主軸台30に向かう方向に付勢されたラム41とを有している。心押台40のセンタ42の中心軸線と、主軸台30のセンタ32の中心軸線は、どちらも主軸回転軸線31Jと一致している。センタ32とセンタ42とで挟持されたワークWは、センタ42によって主軸台30の側に押し付けられ、主軸31及び駆動金具33の回転によって主軸回転軸線31J回りに回転する。
【0030】
上述した本実施形態の研削盤2における特徴とする点は、砥石軸54に取付けられる砥石55の径の大きさの種類がワークWの種類に応じて2種類設定される点である。例えば、ワークWのカム形状に凹部が形成される場合には、
図8及び
図9に示すような、比較的小径の小径砥石57が設定される。凹部が形成されない場合には、
図6及び
図7に示すような、比較的大径の大径砥石56が設定される。すなわち、両者の径の大きさは、小径砥石57<大径砥石56とされている。
【0031】
そして、本実施形態では、大径砥石56と小径砥石57は、それぞれの径の大きさに対応した砥石カバー装置60の構成をとることを特徴とする。
図6及び
図7は大径砥石56に対して装備した大径用砥石カバー装置60Lを示している。
図8及び
図9は小径砥石57に対して装備した小径用砥石カバー装置60Sの構成を示している。以下、それぞれの場合の構成について説明する。
【0032】
先ず、大径用砥石カバー装置60Lと、小径用砥石カバー装置60Sに共通する基本的構成を説明する。大径用砥石カバー装置60L及び小径用砥石カバー装置60Sは、
図4及び
図5に示される箱形状に形成される砥石収納ケース91の内部に形成される。その砥石収納ケース91の内部構成は
図6〜
図9に、特に、
図10及び
図11に良く示されている。
図6から
図9は
図4及び
図5に示される砥石収納ケース91の左側面カバー92を取外した状態を、内部に大径用砥石カバー装置60L(
図6及び
図7)を装着した場合と、小径用砥石カバー装置60S(
図8及び
図9)を装着した場合で示したものである。
図10及び
図11は砥石収納ケース91のみを拡大して示したものである。
【0033】
図6〜
図9、および
図10、
図11に示される各図から分かるよぅに、砥石収納ケース91は、右側面カバー93と、左側面カバー92(
図4及び
図5参照)と、該両カバー93、92の間に配設される外周面カバー94とから構成される。そして、内部に砥石55を配設することのできる空間Sを形成する。なお、外周面カバー94は、上面板94A、傾斜板94B、裏面板94C、底面板94Dが、この順序で接続されて構成されている。
【0034】
外周面カバー94は、ワークWが配設される側に空間部を有している。
図6〜
図9の各図において、上面板94Aから底面板94Dの間、左側面カバー92と右側面カバー93の間は開口部Fとされている。この開口部Fから、
図4及び
図5に良く示されるように、砥石収納ケース91の内部空間Sに配設された砥石55の一部が露出して配設されている。砥石55によりワークWを加工点Kで加工する。
【0035】
左側面カバー92は、
図4及び
図5に良く示されるように、当該図の左辺部において蝶番82で外周面カバー94の裏面板94Cに対して開閉回動可能かつ取り外し可能に連結されている。したがって、左側面カバー92は開閉可能とされており、
図6〜
図9に示される図示状態は、左側面カバー92が開かれた状態と同じ状態であり、この状態において、砥石55の取替え作業や、後述する小径用砥石カバー装置60Sの装備作業が行われる。なお、左側面カバー92は
図4及び
図5に示される固定用ボルト84により閉状態に固定される。
【0036】
右側面カバー93は、砥石台50に密接して配設されている。
【0037】
なお、砥石収納ケース91の上面板94Aの上面には、クーラント供給用のクーラント供給パイプ59が配管されている。クーラント供給パイプ59の先端にはクーラントノズル58が接続されており、クーラントノズル58から砥石55によるワークWの研削箇所(研削点K)に向けて、クーラントを吹きかける。本実施形態では、クーラントノズル58の吹きかけ位置は前後方向に調整可能とされている。
図14はその配管構成を示す。
図14に示すようにクーラント供給パイプ59は取付板59Aに固定されており、取付板59Aには長孔59Bが穿設されている。長孔59Bは調整ボルト59Cにより上面板94Aに固定されるようになっており、この調整ボルト59Cにより固定する長孔59Bを変更することによりクーラントノズル58の位置を変更することができる。
【0038】
次に、
図6及び
図7に示される大径砥石56が用いられる大径用砥石カバー装置60Lの構成について説明する。大径用砥石カバー装置60Lは、大径用外周面カバー62と、右側面カバー93と、左側面カバー92(
図6及び
図7には不図示、
図4及び
図5参照)とから構成される。大径用外周面カバー62は前述した砥石収納ケース91により形成される空間Sの内部に配設され、右側面カバー93に固定された一体的状態として配設されている。右側面カバー93と、左側面カバー92は、前述した砥石収納ケース91を形成する右側面カバー93と左側面カバー92がそのまま用いられている。そして、これらの大径用砥石カバー装置60Lの構成部品が本発明で言う大径砥石を囲う大径用壁である。
【0039】
大径用外周面カバー62は
図6及び
図7に示される大径砥石56の外径外周面56Gを覆うように、その外径外周面56G形状に沿って一定の隙間間隔で配設される。右側面カバー93は大径砥石56の右側面を覆うように配設される。左側面カバー92も大径砥石56の左側面を覆うように配設される。
【0040】
砥石収納ケース91の空間Sには、上述した大径用砥石カバー装置60Lにより画定される第1内部空間S1を形成する。すなわち、大径用砥石カバー装置60Lは、大径用外周面カバー62、右側面カバー93と、左側面カバー92により大径砥石56を収容する第1内部空間S1が形成される。なお、この第1内部空間S1は、
図6に示されるように、大径砥石56とワークWとの研削点(加工点)K周りを除いて大径砥石を覆うように配設される。なお、
図6で見て、大径砥石56の回転方向は時計廻り方向とされ、ワークWの回転方向は、時計廻り方向とされる。
【0041】
なお、大径用外周面カバー62と大径砥石56の外径外周面56Gとの間の配設隙間は、大径砥石56の回転により隙間の気流が大径砥石56につれまわることのできる隙間とされている。すなわち、つれまわることのできる気流の隙間は、径の大きさや、大径砥石56の外径外周面56Gの周速によって異なるため、これらを考慮して設定される。本実施形態では、大径用外周面カバー62は大径砥石56の外径外周面56Gから、外周に沿って一定の隙間を有して配設されている。
【0042】
大径砥石用カバー装置60Lには、大径用外周面カバー62の上端と下端間で、右側面カバー93と左側面カバー92間で、大径用壁がない大径用開口部FLが設けられている。先端が大径砥石56に近接し、ワークWの加工点K周りにクーラントのクーラントノズル58が配設されている。クーラントノズル58からクーラントが加工点Kに向けて吹き出されて、冷却を行う。本実施形態の大径砥石用カバー装置60Lの大径用開口部FLは、
図6及び
図7で見て、大径用外周面カバー62の上端部から下方部の位置まで開口形成されている。
【0043】
また、大径砥石用カバー装置60Lの、
図6及び
図7で見て、下方部位置には排出口68が設けられている。排出口68からは加工点Kに吹きかけられたクーラントや、ワークWの加工粉が下方向に向けて排出される。
【0044】
上述した大径用砥石カバー装置60Lは、従来通り、大径砥石56の外径外周面56Gとそれを覆う大径用外周面カバー62との間の空間が、比較的狭い。これにより当該空間の気流は大径砥石56の回転によりつれまわり、当該空間に切粉が進入しても、大径砥石56の回転によりつれまわる気流に乗って、排出口68からクーラントと共に排出されるとともに、大径用開口部FLから外部へ排出される。
【0045】
次に、
図8及び
図9に示される小径砥石57が用いられる小径用砥石カバー装置60Sの構成について説明する。小径用砥石カバー装置60Sは、小径用外周面カバー66と、右側面カバー93と、左側面カバー92(
図8及び
図9には不図示、
図4及び
図5参照)とから構成される。この小径用砥石カバー装置60Sの構成部品が本発明で言う小径砥石57を囲う小径用壁である。小径用砥石カバー装置60Sは、
図6及び
図7に示される大径用砥石カバー装置60Lにより形成される第1内部空間S1内に装備されて形成される。なお、この場合、大径砥石56が砥石軸54から取り外された状態で装備される。大径用外周面カバー62は取外されることなく、装備されたままの状態である。
【0046】
小径用外周面カバー66は
図8及び
図9に示される小径砥石57の外径外周面57Gを覆うように、その外径外周面57G形状に沿って、円弧形状に配設される。右側面カバー93と左側面カバー92は、前述した大径用カバー装置60Sの構成と同様に、前述した砥石収納ケース91を形成する右側面カバー93と左側面カバー92がそのまま用いられる。すなわち、右側面カバー93は、小径砥石57の右側面を覆うように配設され、左側面カバー92は小径砥石57の左側面を覆うように配設される。
【0047】
図12及び
図13は小径用外周面カバー66とその取付板76の組合わせ体の詳細構成を示す。当該図に示すように小径用外周面カバー66とその取付板76とは溶接等の適宜手段により一体的とされている。このため、小径用外周面カバー66の右側面カバー93への取付け、取外しの配設は、取付板76が右側面カバー93に着脱可能に取付けられることにより行われる。取付板76は小径用外周面カバー66の右端部に右側面カバー93に面した板状部材として配設されており、ボルト78等の締着具により右側面カバー93に取付けられる。
【0048】
小径用砥石カバー装置60Sは、上述した小径用外周面カバー66、右側面カバー93、左側面カバー92により小径砥石57を収容する第2内部空間S2が形成される。この第2内部空間S2は、
図8及び
図9に示されるように、小径砥石57とワークWとの研削点(加工点)K周りを除いて小径砥石57を覆うように配設される。なお、小径砥石57の配設形態の場合においても、上述した大径砥石56の配設形態の場合と同様に、
図8及び
図9で見て、小径砥石57の回転方向は時計廻り方向とされ、ワークWの回転方向は、時計廻り方向とされる。
【0049】
なお、小径用外周面カバー66と小径砥石57の外径外周面57Gとの間の配設隙間は、大径砥石56に設けられた配設隙間の場合と同様の隙間とされている。すなわち、小径砥石57の回転により隙間の気流が小径砥石57につれまわることのできる隙間とされている。このつれまわることのできる気流の隙間は、前述もしたように、径の大きさや、小径砥石57の外径外周面57Gの周速によって異なる。このため、この小径用外周面カバー66により形成される気流の隙間と、前述の大径用外周面カバー62により形成される気流の隙間とは、これらを考慮してそれぞれ設定されるものであり、必ずしも同じ隙間の大きさとは限らない。
【0050】
小径砥石用カバー装置60Sには、小径用外周面カバー62の上端と下端間で、右側面カバー93と左側面カバー92間で、小径用壁がない小径用開口部FSが設けられている。先端が小径砥石57に近接し、ワークWの加工点K周りにクーラントのクーラントノズル58が配設されている。このクーラントノズル58の配設位置は、大径砥石56に設けられたクーラントノズル58の配設位置とは異なった位置となっている。その配設位置の調整は、前述した
図14に示すクーラント供給パイプ59の位置調整を調整ボルト59Cで行うことにより調整される。クーラントの機能は大径砥石56において説明した通りである。なお、本実施形態の小径砥石用カバー装置60Sの小径用開口部FSは、
図8及び
図9で見て、小径用外周面カバー66の上端部から下方部の位置まで開口形成されている。
【0051】
また、小径用砥石カバー装置60Sの場合も、
図8及び
図9で見て、下方部位置には排出口69が設けられている。排出口69からは加工点Kに吹きかけられたクーラントや、ワークWの加工粉が排出される。
【0052】
なお、小径用砥石カバー装置60Sにおいては、排出口69の前方位置(
図8及び
図9で見て右方位置)に、排出口69を構成する遮蔽板70が設けられている。すなわち、小径用開口部FSにおける小径砥石56の回転方向前方位置に設けられている。遮蔽板70は小径砥石57の加工により生じる加工粉が、小径砥石57の気流によるつれまわりにより、小径用外周面カバー66と小径砥石57の外径外周面57Gとの間に進入するのを可及的に抑制する。このため、
図8及び
図9で見て、遮蔽板70の上端と小径砥石57の外径外周面57Gとの間の隙間は、小径用外周面カバー66と小径砥石57の外径外周面57Gとの間の隙間より小さく設定される。本実施形態の遮蔽板70が本発明の遮蔽部に相当する。
【0053】
図16は遮蔽板70単品の斜視図を示す。
図16に示すように、遮蔽板70と取付部85は接続部87を介してクランク形状に連結されて一体的に形成されている。取付部85には取付用の長穴86が穿設されており、この長穴86により遮蔽板70を小径用砥石カバー装置60Sに取付けるようになっている。
【0054】
図17は
図8及び
図9に配設された遮蔽板70の配設形態の斜視図を示す。遮蔽板70は
図17で見て右方位置に配設されており、左方位置の下部垂下板66Aおよび排出口形成板73との間に排出口69を形成する。排出口形成板73の右側位置には、小径用外周面カバー66の下部垂下板66Aが配設されている。これにより小径用砥石カバー装置60Sに進入した異物は排出口69から排出される。
【0055】
図18は上述した遮蔽板70が上下方向に調整可能とされた他の実施形態としての構成例を示す。
図18に示される遮蔽版70は垂直方向に上下移動し、遮蔽板70の上端と小径砥石57の外径外周面57Gとの間の隙間Xを調整可能としている。そのため、遮蔽板70の下端部には当該遮蔽板70を上下動させるアクチュエータ72が配設されている。また、遮蔽板70の上端部には遮蔽板70の上端部の隙間Xを監視して検知するための非接触距離センサ74が配設されている。これにより遮蔽板70と小径砥石57の距離(隙間)が変化した場合に、遮蔽板70を移動させて一定の距離に保つことを可能としている。なお、
図18において、符号57Aは小径砥石57のコアを示し、符号57Bは砥石(CBN砥粒)を示している。
【0056】
上記における遮蔽板70の上端と小径砥石57の外径外周面57Gとの間の隙間Xを直接検出する手段である非接触距離センサ74は、非接触であればどのような検出手段であってもよい。また、隙間による状態変化量(例えば、圧力、流速等)を計測することで、距離を推定する手段を用いてもよい。また、遮蔽板70を移動させる手段であるアクチュエータ72は、ボールネジ機構を作動させる電動モータであっても良く、直動シリンダ等直動させるものであれば、特に手段は問わない。
【0057】
なお、本実施形態では、遮蔽板70は大径砥石56の場合は設定されない。小径砥石57を用いるときに遮蔽板70を長穴86(
図16参照)で位置調整しながら取り付けるものである。したがって、遮蔽板70は小径用砥石カバー装置60Sに対しては取外し可能とされており、大径用砥石カバー装置60Lの場合には取り外される。
【0058】
図15はクーラント回収装置のトレイ構成90を示す。当該トレイ構成90は
図4〜
図9の各図に示すように砥石収納ケース91の下部位置に配設されており、クーラントノズル58から砥石55に吹き付けたクーラントを回収する。このクーラントの回収と共に、砥石55の加工粉も一緒に回収される。なお、
図15に示すトレイ構成90の右側位置には槽部88が設けられており、槽部88から樋を経てクリーン槽へ送られる。クリーン槽で回収されたクーラントを再使用するために切粉を除去するクリーン化を行う。
【0059】
上述した小径用砥石カバー装置60Sは、小径砥石57の外径外周面57Gとそれを覆う小径用外周面カバー66との間の空間は、大径用砥石カバー装置60Lの場合と同様に比較的狭い。これにより当該空間の気流は小径砥石57の回転によりつれまわり、当該空間に切粉が進入しても、小径砥石57の回転によりつれまわる気流に乗って排出口69からクーラントと共に排出されるとともに小径用開口部FSから外部へ排出される。そして、クーラントはクリーン槽に送られて処理され、切粉は不図示の磁気分離装置により分離される。
【0060】
なお、小径砥石57を用いる場合に遮蔽板70を設けて、遮蔽板70を垂直方向に上下動させる構成を取った場合には、次のような効果もある。先ず、切粉(加工粉)の進入量をコントロールすることで、切粉の体積が減り、切粉除去のメンテナンスが削減することができる。次に、切粉の堆積に起因した切粉と小径砥石57の接触による発熱がなくなり、加工精度の低下を防ぐことができる。
【0061】
以上のように、本実施形態によれば、大径砥石56や小径砥石57の2種類の砥石を用いる研削盤2においても、加工粉を排出できる気流を生じさせることができて、加工粉を排出させることができる。すなわち、従来のように、加工粉が排出されずに、空間部に堆積されてしまうという問題を生じることがない。
【0062】
以上、本発明を特定の実施形態について説明したが、本発明はその他各種の形態でも実施可能なものである。
【0063】
例えば、上述した実施形態では、研削盤2に適用したが、その他の工作機械にも適用可能なものである。
【0064】
また、上述した実施形態においては、小径用砥石カバー装置60Sには遮蔽板70を設定して小径用砥石カバー装置60Sとともに、第2内部空間S2に堆積する切粉を少なくする相乗効果を得ているが、遮蔽板70の設定は必ずしも必要とするものではなく、備えなくてもよい。