(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1フィルムの前記バリア層が、有機被覆層及び/又は無機酸化物層で構成される、1又は複数の層である、請求項1から3のいずれかに記載の波長変換シート用バリアフィルム。
前記それぞれの波長変換シート用バリアフィルムが、前記蛍光体層側から、前記バリア層と、前記第1基材層と、前記接着剤層と、前記第2基材層と、がこの順に積層されているバリアフィルムである請求項5に記載の波長変換シート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0021】
<波長変換シート>
本実施形態の波長変換シート用バリアフィルム1に用いられる波長変換シート10は、
図1に示すように、蛍光体112と封止樹脂111とが含有される蛍光体層11と、蛍光体層11の両表面に配置される波長変換シート用バリアフィルム1とを備える波長変換シートである。蛍光体層11の両表面に、波長変換シート用バリアフィルム1を配置させることにより、バリア性に優れる波長変換シートとすることができる。尚、本明細書において蛍光体層の両表面側とは、波長変換シート10をバックライト光源として用いた場合に、光源が配置されている側(入光面側)と、バックライト光源が配置されている側から反対側(出光面側)と、の両方の表面側であることを意味する。
【0022】
そして、本実施形態の波長変換シート用バリアフィルム1は、
図2に示すように、第1基材層121とバリア層122とを備える第1フィルム12aと、第2基材層124を備える第2フィルム12bと、を備える。又、第1フィルム12aの第1基材層121と、第2フィルム12bの第2基材層124と、が接着剤層123を介して接着される。第1フィルム12aに更に第1フィルム12aのバリア層積層側の反対側に第2フィルム12bを積層されることにより、波長変換シートの剛性を増加させ、蛍光体層形成用の組成物を塗布する工程、及び蛍光体層が形成された波長変換シートを表示装置のバックライト光源に貼り付ける工程等のハンドリング性を向上する剛性を付与することができる。
【0023】
又、接着剤層123は、水酸基を有する主剤樹脂と、NCO基を有する硬化剤と、を含む2液タイプの接着剤を硬化させることにより形成される接着剤層である。更に、主剤樹脂の水酸基の数と、硬化剤のNCO基の数と、の比がNCO/OH比で0.5以上1.5以下とすることにより、接着剤層123の気泡の発生を抑制することができる。又、第1基材層121と、第2基材層124との接着強度を向上させることができる。接着剤層123を形成する接着剤については後述する。
【0024】
尚、本発明の波長変換シートは、
図1の波長変換シートに限定されず、例えば、バリア層122の蛍光体層11側の表面には、必要に応じてプライマー層(図示せず)を積層してもよいし、第2基材フィルムのいずれかの表面にバリア層を備えてもよい。
【0025】
次に本実施形態に関する波長変換シート用バリアフィルム1及び蛍光体層11についてそれぞれ説明する。
【0026】
[波長変換シート用バリアフィルム]
本実施形態の波長変換シートにおいて、波長変換シート用バリアフィルム1とは、
図1に示すように蛍光体層11の両表面側に配置される層である。蛍光体層11の両表面に、波長変換シート用バリアフィルム1を配置させることにより、バリア性に優れる波長変換シートとすることができる。
【0027】
本実施形態の波長変換シート用バリアフィルム1は、
図2に示すように、第2基材層124と、接着剤層123と、第1基材層121と、バリア層122と、がこの順に積層された積層フィルムである。以下、本実施形態の波長変換シート用バリアフィルムを構成する基材層、接着剤層、バリア層について各々説明する。
【0028】
(基材層)
第1基材層121及び第2基材層124に用いることのできる材質は、波長変換シートの機能を害することのない材質であれば特に制限はされず、例えば、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、非晶ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂、液晶ポリマー等の樹脂を挙げることができる。波長変換シートの機能を害することのない透明性と耐熱性等の観点からポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)であることが好ましい。尚、第1基材層121及び第2基材層124の材質は同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
【0029】
第1基材層121の厚さは特に制限がされるものではないが、バリア層が形成される基材であるので、バリア層の性能を損なわない様に、8μm以上150μm以下であることが好ましく、10μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0030】
第2基材層124は、波長変換シート用バリアフィルム1に蛍光体層形成用の組成物を塗布する工程、及び蛍光体層が形成された波長変換シートを表示装置のバックライト光源に貼り付ける工程等でのハンドリング性を向上する剛性を持つように、その厚さは、50μm以上、200μm以下であることが好ましい。又、第2基材層124の厚みを調整することにより、一つの波長変換シート用バリアフィルムを基にして、様々な厚みの波長変換シート用バリアフィルムを容易に作成することができる。
【0031】
本実施形態に関する第1基材層121及び第2基材層124は、バックライト光源からの光が遮られることを回避するために、JIS K 7361に基づき測定される全光線透過率が高いことが好ましい。具体的には、本実施形態に関する第1基材層121及び第2基材層124は、JIS K 7361に基づき測定される全光線透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【0032】
(接着剤層)
本実施形態に関する接着剤層を形成する接着剤は、水酸基を有する主剤樹脂と、NCO基を有する硬化剤と、を含む2液タイプの接着剤であり、主剤樹脂の水酸基の数と、硬化剤のNCO基の数と、の比がNCO/OH比で0.5以上1.5以下とすることにより、接着剤層123の気泡の発生を抑制することができる。以下、水酸基を有する主剤樹脂とNCO基を有する硬化剤の好ましい一実施形態について説明する。
【0033】
次に本実施形態の波長変換シート用バリアフィルム及び波長変換シートについてそれぞれ説明する。
【0034】
(主剤樹脂)
主剤樹脂とは、水酸基を有し、硬化剤によって架橋されて硬化する前の樹脂化合物である。接着剤層に含まれる架橋樹脂とは区別される。主剤樹脂としては、例えば、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール等のジオール成分とジイソシアネート化合物によって末端イソシアネート化合物に誘導した後に、下記の構造式1〜6の構造を有すジオール成分の開環反応により得られるポリカプロラクトンジオール、シクロヘキサンジメタノールのいずれか単体、又は複数をイソシアネート基数よりも過剰の水酸基となるように反応させたポリウレタンポリオールを挙げることができる。
【0035】
主剤樹脂の水酸基は、10mgKOH/g以上30mgKOH/g以下の範囲が好ましく、10mgKOH/g未満の場合、得られたポリウレタンポリオールの粘度が高くなり、塗工時の希釈溶剤の使用量が増える問題や塗工適性が悪くなる問題が発生する。一方、水酸基価が30mgKOH/gを超える場合、分子量が低い為に、ラミネート初期の接着力が劣る傾向にあり、巻き取り時に、所謂、巻きズレを引き起こすことがあるので、水酸基価は、塗工適性やラミネート初期時の物性確保の観点から、12mgKOH/g以上25mgKOH/g以下がより好ましい。
【0036】
(硬化剤)
硬化剤とは、NCO基を有し、水酸基を有する主剤樹脂を架橋されて硬化する機能を有する。硬化剤は、例えばポリイソシアネート化合物を主成分とするものを用いることができる。ポリイソシアネート化合物は、1分子中に2以上のNCO基を有する化合物であり、このNCO基が主剤樹脂の水酸基と反応することにより、主剤樹脂を架橋する。このような硬化剤としては、NCO基を有し、水酸基を有する主剤樹脂を架橋することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートや、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等のトリメチロールプロパンアダクト、アロファネート体、ヌレート体やビューレット体等であって、これらを単体で、又は混合して使用する事もできる。
【0037】
(溶剤)
接着剤を塗布するための溶剤は、ポリウレタンジオール又はイソシアネートと反応するような水酸基やアミノ基を含有しない溶剤であり、具体的には、酢酸エチル、メチルエチルケトン等が挙げられる。又、接着剤には、必要に応じて、粘着付与剤、酸化防止剤、レベリング剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤を加えることもできる。
【0038】
(接着剤層の形成)
本実施態様において、主剤樹脂と硬化剤からなる2液タイプの接着剤は基材層(基材シート)の表面に塗布され、続いて塗布された接着剤から溶剤成分が蒸発することによって、基材の表面に接着剤層を形成させることができる。この接着剤膜は、被接合基材の表面と接合された状態で硬化し、接着剤層となる。基材の表面に接着剤を塗布する方法は、特に制限されるものではないが、グラビアコーター法、ロールコータ法、はけ塗り法等を挙げることができる。なお、そのコーティング量としては、2.0g/m
2以上20.0g/m
2以下(乾燥状態)が好ましい。
【0039】
接着剤層の厚さは、2.0μm以上20.0μm以下であることが好ましく3.0μm以上15.0μm以下であることが更に好ましい。接着剤層の厚さを2.0μm以上20.0μm以下とすることで、層間の密着性、耐久性及び印刷適性を向上させることができる。
【0040】
接着剤層の内部において、接着剤の主剤成分であるポリウレタンジオールに含まれる水酸基成分と、硬化剤成分であるポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基とが反応して、ウレタン結合を形成する硬化反応が進行する。この反応によって、主剤成分は硬化剤成分によって架橋され、高分子量化する。主剤成分であるポリウレタンジオールが十分に架橋されると、接着剤膜は硬化し、接着剤層となる。
【0041】
(バリア層)
バリア層は、波長変換シート用バリアフィルムにバリア性を付与する層であり、一般にポリビニルアルコール等の水溶性高分子等を含むコーティング剤を塗布して形成される有機被覆層、及び/又は、無機酸化物を蒸着することにより形成される無機酸化物薄膜層である。
図2に示した本実施形態に関するバリア層は、有機被覆層と無機酸化物薄膜層とが積層された複数の層からなる層である。尚、本発明に関するバリア層は、有機被覆層と無機酸化物薄膜層とが積層された複数の層に限定されるものではなく、有機被覆層と無機酸化物薄膜層がそれぞれ単層であってもよく、又は有機被覆層と無機酸化物薄膜層とが交互に2層以上積層されるような層であってもよい。
【0042】
有機被覆層122aは、主に無機酸化物薄膜層122bの損傷を防止すると共に、波長変換シート用バリアフィルムに高いバリア性を付与する層である。有機被覆層は、例えば水溶性高分子と、1種以上の金属アルコキシド及び加水分解物、又は塩化錫の少なくとも一方を含む水溶液若しくは水/アルコール混合溶液と、を含むコーティング液を塗布して形成される。有機被覆層122aは、水酸基含有高分子化合物、金属アルコキシド、金属アルコキシド加水分解物及び金属アルコキシド重合物からなる群より選択される少なくとも1種を成分として含有していることが好ましい。有機被覆層122aに用いられる水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びデンプン等が挙げられるが、特にポリビニルアルコールを用いた場合に、有機被覆層122aのガスバリア性が最も優れたものとなる。
【0043】
有機被覆層122aの膜厚は、特に限定されるものではないが、100nm以上500nm以下であることが好ましい。有機被覆層122aの膜厚が100nm以上であることにより、波長変換シート用バリアフィルムに十分なバリア性を付与することができる。有機被覆層122aの膜厚が500nm以下であることにより、透明性に優れ、波長変換シートの特性を低下させることがなくなる。
【0044】
無機酸化物薄膜層122bは、有機被覆層122aと同様に波長変換シート用バリアフィルムに高いバリア性を付与する層である。無機酸化物薄膜層122bは、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム又はこれらの混合物からなる層を例示することができる。波長変換シート用バリアフィルムに十分なバリア性を付与することができるという観点及び波長変換シート用バリアフィルムの生産性の観点から、酸化アルミニウム又は酸化珪素を含むことが好ましい。
【0045】
無機酸化物薄膜層122bを形成する方法は、無機酸化物をCVD、PVDの真空蒸着法、スパッタリング、イオンプレーティング、スパッタリング等の蒸着方法により基材の表面に形成する方法を挙げることができる。
【0046】
無機酸化物薄膜層122bの膜厚は、特に限定されるものではないが、10nm以上500nm以下であることが好ましい。無機酸化物薄膜層122bの膜厚が10nm以上であることにより、無機酸化物薄膜層が均一となり、波長変換シート用バリアフィルムに十分なバリア性を付与することができる。無機酸化物薄膜層121bの膜厚が500nm以下であることにより、無機酸化物薄膜層122bに十分に可撓性を付与することができるようになり、無機酸化物薄膜層122bに傷や割れが発生する危険性を軽減することができる。
【0047】
本実施形態に関するバリア層122は、バックライト光源からの光が遮られることを回避するために、JIS K 7361に基づき測定される全光線透過率が高いことが好ましい。具体的には、本実施形態に関する波長変換シート用バリアフィルム1は、JIS K 7361に基づき測定される全光線透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。なお、全光線透過率は、12μmのPETフィルム上にバリア層を形成した際の測定値である。
【0048】
(プライマー層)
本実施形態に関するバリア層122の蛍光体層11側の表面には、必要に応じてプライマー層を積層してもよい(図示せず)。プライマー層は、バリア層122と、蛍光体層11との間に積層されることにより、バリア層122と、蛍光体層11との密着性を向上させることができる。プライマー層は、ポリウレタン系樹脂を含むプライマー層であることが好ましく、プライマー層は、更に、シランカップリング剤と、充填材と、を含むことがより好ましい。
【0049】
ポリウレタン系樹脂としては、具体的には、例えば、多官能イソシアネートとヒドロキシル基含有化合物との反応により得られるポリマー、具体的には、例えば、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート、あるいは、ヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアネートと、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール等のヒドロキシル基含有化合物との反応により得られる一液ないし二液型ポリウレタン系樹脂を使用することができる。本実施形態において、上記のようなポリウレタン系樹脂を使用することにより、プライマー層の伸長度を向上させ、例えば、ラミネート加工、あるいは、製袋加工等の後加工適性を向上させ、後加工時におけるバリア層のクラック等の発生を防止するものである。
【0050】
プライマー層中には、上記のポリウレタン系樹脂組成物をプライマー層全量中40質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することがより好ましい。70質量%以上であると、プライマー層の伸長度向上とバリア層のクラック発生防止の点から好ましい。
【0051】
シランカップリング剤としては、二元反応性を有する有機官能性シランモノマー類を使用することができ、例えば、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルシリコーンの水溶液等の1種ないしそれ以上を使用することができる。
【0052】
シランカップリング剤は、その分子の一端にある官能基、通常、クロロ、アルコキシ、又は、アセトキシ基等が加水分解し、シラノール基(SiOH)を形成し、これが、有機被覆層又は無機酸化物薄膜層の表面上及び蛍光体層の表面上にシランカップリング剤が共有結合等で修飾され、強固な結合を形成する。
【0053】
プライマー層中には、上記のシランカップリング剤をプライマー層全量中1質量%以上30質量%以下含有することが好ましく、3質量%以上20質量%以下含有することがより好ましい。3質量%以上であると、バリア層とプライマー層とあるいはプライマー層と蛍光体層との密着性が向上する点で好ましい。20質量%以下であるとプライマー層の伸長度向上によるバリア層のクラック防止の点で好ましい。
【0054】
本実施形態に関するポリウレタン系樹脂に含まれる充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト、シリカ、タルク、ガラスフリット、樹脂粉末、その他等のものを使用することができる。これは、プライマー剤の粘度等を調整し、そのコーティング適性等を高めるものである。
【0055】
プライマー層中には、上記の充填剤をプライマー層全量中0.5質量%以上30質量%以下含有することが好ましいく、1質量%以上10質量%以下含有することがより好ましい。1質量%以上であると、プライマー層のコーティング性の向上と、波長変換シート用バリアフィルムあるいは波長変換シート用バリアフィルムを巻き取り形態にした時のプライマー層と対抗する基材とのブロッキングを防止する点で好ましく、10質量%以下であると、波長変換シート用バリアフィルムのヘイズを抑える点で好ましい。
【0056】
プライマー層を形成するプライマー剤を、例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、デップコート、スプレイコート、その他のコーティング法で有機被覆層又は無機酸化物薄膜層の表面上にコーティングし、しかる後コーティング膜を乾燥させて溶媒、希釈剤等を除去して、本実施形態に関するプライマー層を形成することができる。なお、本実施形態において、プライマー層の膜厚としては、例えば、0.01μm以上50μm以下位が好ましく、0.1μm以上5μm以下がより好ましい。
【0057】
[蛍光体層]
本実施形態の波長変換シートにおいて、蛍光体層11とは、バックライト光源から発せられた光の発光波長を調整するための層である。蛍光体層11には、量子ドットからなる1種又は2種以上の蛍光体が含有される。
【0058】
蛍光体110を形成する量子ドットは、量子閉じ込め効果(quantum confinement effect)を有する所定のサイズの半導体粒子である。量子ドットは、励起源から光を吸収してエネルギー励起状態に達すると、量子ドットのエネルギーバンドギャップに該当するエネルギーを放出する。量子ドットのサイズ又は物質の組成を調節すると、エネルギーバンドギャップを調節することができ、様々なレベルの波長帯のエネルギーを得ることができる。とりわけ、量子ドットは、狭い波長帯で強い蛍光を発生することができる。このため、表示装置が色純度の優れた三原色の光で照明することができるようになることで、優れた色再現性を有する表示装置とすることができる。
【0059】
蛍光体は、発光部としてのコアが保護層(シェル)により被覆されたものである。コアには、例えばセレン化カドニウム(CdSe)、テルル化カドニウム(CdTe)、硫化カドニウム(CdS)を使用することができる。保護層には硫化亜鉛(ZnS)を使用することができる。
【0060】
蛍光体層11は、蛍光体110が含有された封止樹脂111を、第1フィルム12aのバリア層122に積層することで形成することができる。例えば、蛍光体110と封止樹脂111とが含有された混合液をバリア層122の表面(プライマー層付波長変換シート用バリアフィルムを使用した時には、バリア層122に形成されたプライマー層の表面)に塗布し、硬化することにより形成することができる。
【0061】
<波長変換シート用バリアフィルム及び波長変換シートの製造方法>
本実施形態の波長変換シート用バリアフィルムの製造方法は、例えば、基材フィルム(第1基材層)の一方の表面にバリア層を積層するバリア層積層工程と、基材フィルム(第1基材層)の他方の表面に接着剤層を介して基材フィルム(第2基材層)を積層する基材層積層工程と、を含む波長変換シート用バリアフィルムの製造方法を挙げることができる。
【0062】
更に、本実施形態の波長変換シートの製造方法は、更に、この方法により製造された一対の波長変換シート用バリアフィルムを蛍光体層を介して積層し、波長変換シートを製造する蛍光体層積層工程と、を含む波長変換シートの製造方法を挙げることができる。
【0063】
[バリア層積層工程]
バリア層積層工程では、基材フィルム(第1基材層)の一方の表面にバリア層として有機被覆層、及び/又は、無機酸化物薄膜層を積層する。有機被覆層は、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子等を含むコーティング剤を塗布、硬化して形成することができる。コーティング剤を塗布する方法は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、デップコート、スプレイコート、その他のコーティング法の塗布方式を挙げることができる。無機酸化物薄膜層は、無機酸化物を蒸着することにより形成することができる。無機酸化物を蒸着する方法は、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の物理的蒸着法を挙げることができる。尚、基材フィルムの一方の表面に予め、プライマーコート剤層、アンダーコート剤層、アンカーコート剤層、接着剤からなる層、あるいは、蒸着アンカーコート剤層等を任意に形成して、表面処理層とすることもできる。
【0064】
[基材層積層工程]
基材層積層工程では、基材フィルム(第1基材層)の他方の表面(バリア層が積層された側の表面の反対側の表面)に接着剤層を介して基材フィルム(第2基材層)を積層する。主剤樹脂と硬化剤からなる2液タイプの接着剤は基材フィルムの他方の表面に塗布され、続いて塗布された接着剤から溶剤成分が蒸発することによって、基材の表面に接着剤層を形成させることができる。この接着剤膜は、被接合基材の表面と接合された状態で硬化し、接着剤層となる。基材の表面に接着剤を塗布する方法は、特に制限されるものではないが、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、デップコート、スプレイコート、その他のコーティング法、あるいは、印刷法等によって施すことができる。バリア層積層工程及び基材層積層工程により波長変換シート用バリアフィルムを製造することができる。
【0065】
[蛍光体層積層工程]
蛍光体層積層工程は、この方法により製造された一対の波長変換シート用バリアフィルム1のうち一方の波長変換シート用バリアフィルム1のバリア層122の表面(プライマー層付波長変換シート用バリアフィルムを使用した時には、バリア層122に形成されたプライマー層の表面)に蛍光体110と封止樹脂111とが含有された混合液を塗布し、その塗布面にもう一方の波長変換シート用バリアフィルム1のバリア層122の面(プライマー層付波長変換シート用バリアフィルムを使用した時には、バリア層122に形成されたプライマー層の面)を接触させ、つまり、混合液を2枚の波長変換シート用バリアフィルム12でサンドイッチさせた状態で、混合液を硬化させる工程である。混合液の塗布は、例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、デップコート、スプレイコート、その他のコーティング法で行うことができる。蛍光体層積層工程を経ることによって、
図1の実施形態のような波長変換シート10を製造することができる。
【0066】
<表示装置>
波長変換シートを用いることにより、バックライト光源の発光波長の可視領域全体に渡って調整可能である。更に本実施形態の波長変換シート用バリアフィルムと基材シートとを接着する接着剤層を形成する接着剤の水酸基を有する主剤樹脂と、NCO基を有する硬化剤との含有量比を調整された波長変換シートを備えたバックライト光源を用いた表示装置であれば、接着剤層の気泡の発生を抑制することのできる表示装置とすることができる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【0068】
(実施例1)
A.水酸基20mgKOH/gのポリウレタンポリオールと、ヘキサメチレンジイソシアネートを、酢酸エチルに溶解させて、固形分含有量20質量%として、NCO/OH比が0.6となるように調整した接着剤を準備した(表1中、接着剤のNCO/OH比について、「NCO/OH」と表記)。
【0069】
B.表面がプラズマ処理された12μmのPETフィルムである第1フィルムのプラズマ処理面に、CVD蒸着により50nmの厚さで積層された酸化珪素薄膜である無機酸化物層の上に、ポリビニルアルコールとテトラエトキシシランからなる有機被覆層が200
nm形成されたガスバリアフィルム(第1フィルム)を準備した。
【0070】
C.第2フィルムとして、厚さ75μmのPETフィルムを用意した。
【0071】
D.75μmのPETフィルムの表面に、接着剤1を固形分塗布量10g/m
2(硬化後膜厚10μm)となるようにバーコーダーにて塗布した。
【0072】
E.接着剤層の表面をタックフリーに乾燥した後に、第1フィルムの無機酸化物層と有機被覆層であるバリア層の反対面側であるPETフィルム表面と接着剤層が密着するように張り合わせ、55℃のオーブンにて5日間エージングを行い、実施例1の波長変換シート用バリアフィルムを製造した。
【0073】
(実施例2)
波長変換シート用バリアフィルムのバリア層(有機被覆層)の表面に、プライマー層を積層した。まず、シランカップリング剤として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを使用し、該シランカップリング剤1.0重量%、シリカ粉末1.0重量%、ポリウレタン系樹脂13〜15重量%、ニトロセルロ−ス3〜4重量%、トルエン31〜38重量%、メチルエチルケトン(MEK)29〜30重量%、イソプロピルアルコール(IPA)15〜16%からなるポリウレタン系樹脂組成物を調製した。
【0074】
そして、波長変換シート用バリアフィルムのバリア層(有機被覆層)の表面に、上記のポリウレタン系樹脂組成物をロールコート法を利用してコーティングし、次いで、120℃で20秒間乾燥して、ポリウレタン系樹脂組成物によるプライマー層を500nm積層した。そして、プライマー層の表面に蛍光体層を形成した。それ以外は実施例1の波長変換シートと同様に波長変換シートを製造し、実施例2の波長変換シートとした(表1中、実施例2のようにプライマー層を設けた実施例については「プライマー層」を「あり」と表記し、実施例1のようにプライマー層を設けていない実施例については「プライマー層」を「なし」と表記した。)。
【0075】
(実施例3)
実施例1の接着剤1において、NCO/OH比を1とした以外実施例1の波長変換シートと同様に波長変換シートを製造し、実施例3の波長変換シートとした。
【0076】
(実施例4)
実施例2の接着剤1において、NCO/OH比を1とした以外実施例1の波長変換シートと同様に波長変換シートを製造し、実施例4の波長変換シートとした。
【0077】
(実施例5)
実施例1の接着剤1において、NCO/OH比を1.5とした以外実施例1の波長変換シートと同様に波長変換シートを製造し、実施例5の波長変換シートとした。
【0078】
(実施例6)
実施例2の接着剤1において、NCO/OH比を1.5とした以外実施例1の波長変換シートと同様に波長変換シートを製造し、実施例4の波長変換シートとした。
【0079】
(比較例1)
実施例1の接着剤1において、NCO/OH比を0.3とした以外実施例1の波長変換シートと同様に波長変換シートを製造し、比較例1の波長変換シートとした。
【0080】
(比較例2)
実施例1の接着剤1において、NCO/OH比を2とした以外実施例1の波長変換シートと同様に波長変換シートを製造し、比較例2の波長変換シートとした。
【0081】
(比較例3)
実施例1の接着剤1においてアクリル樹脂系の接着剤(東洋モートン社製、主剤L−292、硬化剤CR−3A)とした以外実施例1の波長変換シートと同様に波長変換シートを製造し、比較例3の波長変換シートとした。
【0082】
<気泡確認試験>
実施例及び比較例の波長変換シート用バリアフィルムについて、気泡確認試験を行った。具体的には実施例及び比較例の波長変換シート用バリアフィルムをA4シート上に載せて接着剤層の気泡数を確認した。気泡が確認できなかった試験例の波長変換シート用バリアフィルムを「○」とし、気泡が確認できた試験例の波長変換シート用バリアフィルムを「×」とした。評価結果を表1に示す(表1中、「気泡確認試験」と表記)。
【0083】
<密着性試験>
実施例及び比較例の波長変換シート用バリアフィルムについて、密着性試験を行った。具体的には、試験例の波長変換シート用バリアフィルムを180℃ピール、剥離強度50mm/分の条件でテンシロン型引張試験機を用いて、第1フィルムと、第2フィルムとが剥離する際に要する力を測定した。測定結果が5N/cm以上のサンプルを「○」とし、5N/cm未満のサンプルを「×」とした。測定結果を表1に示す(表1中、「密着性試験」と表記)。
【0084】
【表1】
【0085】
表1より、接着剤層は、水酸基を有する主剤樹脂と、NCO基を有する硬化剤と、からなる2液タイプの接着剤の硬化物であり、NCO/OH比が0.5以上1.5以下である実施例1〜6の波長変換シート用バリアフィルムは、気泡確認試験、密着性試験において、良好な試験結果となっている。本試験結果から、接着剤層の気泡の発生を抑制することのできる波長変換シート用バリアフィルムであることが分かる。