特許第6780411号(P6780411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6780411-化粧シート 図000002
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6780411
(24)【登録日】2020年10月19日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】化粧シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20201026BHJP
【FI】
   B32B27/00 E
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-189393(P2016-189393)
(22)【出願日】2016年9月28日
(65)【公開番号】特開2018-51874(P2018-51874A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】寺田 知弘
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−064628(JP,A)
【文献】 特開2007−268717(JP,A)
【文献】 特開2011−224956(JP,A)
【文献】 特開平11−024201(JP,A)
【文献】 特開2004−262105(JP,A)
【文献】 特開2001−262092(JP,A)
【文献】 特開2008−235508(JP,A)
【文献】 特開2011−202422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の基材シート上に絵柄模様層、透明接着層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層が、この順で形成され、
前記透明熱可塑性樹脂層上に形成された表面保護層は、透明熱可塑性樹脂層上全面に設けられる第1表面保護層と、第1表面保護層上に部分的に形成された第2表面保護層と、からなり、
前記第1表面保護層は、ウレタン結合を有する硬化型樹脂を含み、
前記第2表面保護層は、ビーズ、無機化合物フィラーのいずれか、又はビーズおよび無機化合物フィラーを含み、且つ、表面は、接触式粗さ計で測定した最大高さRz値が30μm以上であり、切断レベル50高さ%における負荷長さ率Rmrが3〜33%であることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
第1表面保護層の光沢と、第2表面保護層の光沢との差が、JISZ 8741に準拠した60度鏡面光沢で3〜15であることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記第2表面保護層が、前記絵柄模様層の絵柄と同調したパターンで形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記第2表面保護層に含まれる無機化合物フィラーは、シリカ粒子であって、5質量%以上35質量%以下含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項5】
前記第2表面保護層に含まれるビーズは、ポリメチルメタアクリレートからなる合成樹
脂ビーズ、あるいは、表面処理したガラスビーズであることを特徴とする請求項1〜4の
いずれかに記載の化粧シート。
【請求項6】
前記第2表面保護層は、ウレタン結合を有する硬化型樹脂を含んでいることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の床材、壁材、扉などの表面化粧シートや、テーブルなどの家具の表面化粧シート、あるいは、自動車、電車などの内装用化粧シートなど、表面に貼って耐傷性や見栄えなどを向上させる化粧シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の内装材や家具材などに用いられる化粧シートは、基材シートの表面に、隠蔽性を付与するベタ印刷や、意匠性を向上させる絵柄などを施した模様印刷層を設け、さらにその上に化粧シートの耐久性の向上を上げる表面保護層を施していた。
【0003】
例えば、特許文献1では、繊維質基材に、絵柄層、シーラー層及び硬化した電離放射線硬化性樹脂をこの順に積層し、該シーラー層が、ブチラール樹脂と二液硬化型ウレタン樹脂のブレンド樹脂をバインダーとし、さらに脂肪族イソシアネートを含有する樹脂組成物からなることを特徴とする化粧紙を提案している。
【0004】
しかしながら、この化粧紙表面に使用している電離放射線硬化性樹脂層は、人が立ち入ることが出来ない特殊な装置を使用して電離放射線を照射する必要があり、高価であると共に、目視等で生産状態を確認しにくく、安定した生産性に問題があった。
【0005】
また、特許文献2では、基材上に着色層およびまたは絵柄模様層を有し、最表面に表面保護層を有する化粧シートにおいて、表面保護層に無機粒子あるいは合成樹脂粒子を含有し、無機粒子あるいは合成樹脂粒子が、化粧シート表面に一定の面積比率で表出していることを特徴とする化粧シートを提案している。
【0006】
この化粧シートは、無機粒子あるいは合成樹脂粒子によって、表面に凹凸を設け、触感により立体感を感じさせる。また、このような化粧シートでは、最外層の光沢と、最外層を透過して内側の層から反射した下層の光沢と、の二通りの反射される光によって、深みのある光沢を作っているなどの効果がある。
しかしながら、この方法では、無機粒子あるいは合成樹脂粒子によって、表面に凹凸を設けただけなので、表面が一様で、耐傷性や耐汚染性が低くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4286949号公報
【特許文献2】特開2015−77709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、表面硬度が高く、耐傷性や耐汚染性があって、かつ、通常の汎用設備で生産でき、生産性の高く、品質を確認しながら安定して製造可能な化粧シートを得ることが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に記載の化粧シートは、樹脂製の基材シート上に絵柄模様層、透明接着層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層が、この順で形成され、前記透明熱可塑性樹脂層上に形成された表面保護層は、透明熱可塑性樹脂層上全面に設けられる第1表面保護層と、第1 表面保護層上に部分的に形成された第2 表面保護層と、からなり、
前記第1 表面保護層は、ウレタン結合を有する硬化型樹脂を含み、
前記第2 表面保護層は、ビーズ、無機化合物フィラーのいずれか、又はビーズおよび無機化合物フィラーを含み、且つ、表面は、接触式粗さ計で測定した最大高さRz値が30μm以上であり、切断レベル50高さ%における負荷長さ率Rmrが3〜33%であることを特徴とする化粧シートである。
【0010】
請求項1に記載の化粧シートは、第1表面保護層を硬度の高い樹脂で形成して耐傷性及び耐汚染性を得ると共に、第2表面保護層によって、耐傷性を高く向上できる上に、さらに、視覚的な立体感を付与することができる。
また、この化粧シートは、汎用設備で生産できるので、生産性も高く、品質を目視等でも確認しながら生産できるので、安定した製造が可能である。
また、請求項1に記載の化粧シートは、触感による立体感をより適切に感じることができる。
【0011】
本発明の請求項2に記載の化粧シートは、第1表面保護層の光沢と、第2表面保護層の光沢との差が、JIS Z 8741に準拠した60度鏡面光沢で3〜15としたことを特徴とする請求項1に記載の化粧シートである。
【0012】
請求項2に記載の化粧シートは、第1表面保護層を全面に形成すると共に、第2表面保護層にビーズや無機化合物フィラーを加え、かつ、第1表面保護層上に部分的に形成している。この時、第2表面保護層には透明樹脂を用いているので、第1表面保護層の光沢の影響を受けずに視覚的な立体感を表現可能な樹脂で形成でき、より、視覚的な立体感を付与できる。そして、触感による立体感を維持しつつ、耐傷性及び耐汚染性に優れ、かつ視覚的な立体感を有する化粧シートを提供できる。
【0013】
本発明の請求項3に記載の化粧シートは、前記第2表面保護層が、前記絵柄模様層の絵柄と同調したパターンで形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧シートである。
【0014】
請求項3に記載の化粧シートは、絵柄模様層の絵柄と同調したパターンで形成されるので、立体感や質感が相乗作用で向上する。
【0015】
本発明の請求項4に記載の化粧シートは、第2表面保護層に含まれる無機物フィラーが、シリカ粒子であって、5質量%以上35質量%以下含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の化粧シートである。
【0016】
請求項4に記載の化粧シートは、第2表面保護層を印刷する面積が小面積であっても、光沢差を出せるので、立体感が際立たせることができる。特に第2表面保護層に含む無機物フィラーは、安価で手に入り易いシリカ粒子であるので、量産性が高い。また、その配合率が5質量%以上35質量%以下含有させることによって、光沢を充分に低下させることができると共に、配合上強度の低下が抑えられ、耐傷性が発揮できる。
【0017】
本発明の請求項5に記載の化粧シートは、第2表面保護層に含まれるビーズは、ポリメチルメタアクリレートからなる合成樹脂ビーズ、あるいは、表面処理したガラスビーズであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の化粧シートである。
【0018】
請求項5に記載の化粧シートは、光の透過性が高く、硬度の高いポリメチルメタアクリレートからなる合成樹脂ビーズやガラスビーズを使用することによって、光沢を向上させ、かつ、高い耐傷性を発揮できる。
【0021】
本発明の請求項に記載の化粧シートは、第2表面保護層が、ウレタン結合を有する硬化型樹脂を含んでいることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の化粧シートである。
【0022】
請求項に記載の化粧シートは、第1表面保護層との相性が良く、密着性が高いので、化粧シートを貼る時の変形追随性や耐傷性が高い。
【発明の効果】
【0023】
本発明の化粧シートは、第1表面保護層を硬度の高い樹脂で形成して耐傷性及び耐汚染性を得ると共に、第2表面保護層によって、耐傷性を高く向上できる上に、さらに、視覚的な立体感を付与することができる。
また、この化粧シートは、汎用設備で生産できるので、生産性も高く、品質を目視等でも確認しながら生産できるので、安定した製造が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の化粧シートにおける実施形態例で、層構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の化粧シートにおける実施形態例について、図を用いて詳細に説明する。本発明の化粧シートは、図1で示すように、シート基材1のおもて側から、絵柄模様層2、透明接着層3および透明熱可塑性樹脂層4が積層され、更に第1表面保護層5、第2表面保護層6が積層されている。
また、基材シート1の裏面側には、裏面樹脂コート層7が設けられている。
【0026】
基材シート1は樹脂製のシートで、着色された熱可塑性樹脂からなる。
熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂などのビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、アクリロニトリルなどのアクリル系樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体などのスチレン系樹脂、6−ナイロンなどのポリアミド系樹脂などの他、ポリプロピレンやポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体鹸化物、アイオノマーなどのポリオレフィン系樹脂などを用いることができる。なかでも環境適合性や加工性、価格の点でポリオレフィン系樹脂が好ましい。
上記樹脂、あるいはそれらを2種以上の混合物、または積層して用いても良い。それらの樹脂のグレードや組成は、シーティングの容易さや印刷適性、曲げ加工に対する適性を考慮して選択することができる。
【0027】
基材シート1を着色する場合には、化粧シートを貼り合せる基材を隠蔽し、また絵柄模様層2の下地色として色相を適宜、選択することができる。例えば熱可塑性樹脂のシーティングに際して、顔料などの着色剤を混合、練りこむなどしておくことで着色ができる。あるいは絵柄模様層2を設ける前にベタインキ層として、コーティングあるいは印刷の手法を用いて絵柄模様層2の下に着色層を設けることもできる。
【0028】
絵柄模様層2は、シート基材1上に既知の印刷手法により形成され、意匠性を付与するための絵柄を付加するための層である。印刷手法は特に限定するものではないが、生産性や絵柄の品位を考慮すれば、例えばグラビア印刷法を用いることができる。絵柄としては、例えば、木目、コルク、石目、タイル、焼き物、抽象柄等、化粧シート8を用いる箇所に適した絵柄を選ぶことができる。
印刷インキについては、特に限定するものではないが、印刷方式に対応したインキを適宜選ぶことができる。とくに樹脂製の基材シート1に対する密着性や印刷適性、あるいは、建築化粧材としての耐候性を考慮して選択することが好ましい。
また必要な場合には、絵柄模様層2と透明接着層3および透明接着層3と透明熱可塑性樹脂層4との接着性向上を目的として、絵柄模様層2の上に接着層(不図示)を設けても良い。この接着層(不図示)に用いる樹脂は特に限定するものではないが、例えば2液硬化型ウレタン樹脂などを用いることができ、例えばコーティング装置やグラビア印刷装置などを用いて設けることができる。
【0029】
透明接着層3は、基材シート1および絵柄模様層2と透明熱可塑性樹脂層4の接着を強固にする目的で設けられる。この接着が強固であることによって、化粧シート8に対し曲面や直角面に追随する曲げ加工性を付与することができる。
【0030】
透明熱可塑性樹脂層4は、例えば塩化ビニル樹脂などのビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、アクリロニトリルなどのアクリル系樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体などのスチレン系樹脂、6−ナイロンなどのポリアミド系樹脂などの他、ポリプロピレンやポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体鹸化物、アイオノマーなどのポリオレフィン系樹脂などを用いることができる。なかでも環境適合性や加工性、価格の点でポリオレフィン系樹脂を好ましく用いることができる。
樹脂のグレードや組成は、そのほかにシーティングの容易さや印刷適性、曲げ加工に対する適性を考慮して選択することができる。特に曲げ加工性においては曲げ部の白化や割れが発生しないことを考慮して選択することが重要である。
透明接着層3と透明熱可塑性樹脂層4の形成は、例えばドライラミネートにより基材1と透明熱可塑性樹脂層4とを透明接着層を介して貼り合せる方法、あるいは、共押し出し装置で両者を同時に押し出して基材に貼り合せる方法などで、行うことができる。
透明熱可塑性樹脂層4を押し出す時に、エンボスロールなどによって凹凸パターンを付けることもできる。エンボスの入った透明熱可塑性樹脂層4によって、化粧シートは意匠的に厚みや深みが出る効果を出すほか、化粧シートの耐候性、耐磨耗性能を向上させることができる。
【0031】
第1表面保護層5は、透明熱可塑性樹脂層4上に形成され、透明熱可塑性樹脂層4の全体を被覆する被覆層である。第1表面保護層5は、第1表面保護層5を通して、絵柄模様層2の絵柄を透視できる程度に透明または半透明な素材で形成されている。第1表面保護層5は単層でも良いが、複数の層を重ねた積層状態の表面保護層5としても良い。
第1表面保護層5の材料としては、第2表面保護層6との接着性、化粧シート8の変形追従性、耐擦傷性等を考慮する必要がある。
第1表面保護層5のバインダーとして、硬化型樹脂が好ましい。硬化型樹脂の中でも、2液硬化型ウレタン樹脂等のウレタン結合を有する熱硬化型樹脂を用いるのが好ましい。この熱硬化型樹脂に、シリカ粒子等の艶消剤を添加してもよい。
【0032】
2液硬化型ウレタン樹脂としては、例えば、ポリオールを主体とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするウレタン樹脂を用いることができる。
ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するものであって、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオールを用いることができる。
また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートを用いることができる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、キシレ
ンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族あるいは脂環式のイソシアネートを用いることができる。
さらに、上記各種イソシアネートの付加体又は多量体を用いることができる。例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体等がある。なお、上記イソシアネートにおいて脂肪族あるいは脂環式のイソシアネートは、耐候性、耐熱黄変性も良好にできる点で好ましく、例えば1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを使用できる。
上記、第1表面保護層5は、ウレタン結合を有する硬化型樹脂、つまり、硬度が高い樹脂を含むため、表面に露出した第1表面保護層5によって、化粧シート8の耐傷性や耐汚染性を向上できる。
【0033】
第2表面保護層6は、第1表面保護層5上に部分的に印刷などで形成され、例えば絵柄模様層2の印刷インキと対向する部分を被覆する層である。
これにより、化粧シート8の意匠を、絵柄模様層2に由来する視覚と、表面保護層6の凹凸に由来する触感と、の両方で表現できる。
第2表面保護層6は、少なくとも第1表面保護層5の塗工面積の0.1%以上の面積に形成すればよい。本実施形態では、第1表面保護層5を耐傷性や耐汚染性が高いものとしたため、第2表面保護層6の面積が小さくても、化粧シート8を耐傷性や耐汚染性に優れたものとすることができる。
また、第2表面保護層6は、第2表面保護層6と第1表面保護層5を通して、絵柄模様層2の絵柄を透視できる程度に透明または半透明な材料(樹脂)で形成される。
【0034】
第2表面保護層6に使用するバインダーとしては、硬化型樹脂が好ましい。
硬化型樹脂としては、第1表面保護層5との接着性等を考慮し、2液硬化型ウレタン樹脂等のウレタン結合を有する熱硬化型樹脂とし、熱硬化型樹脂に、シリカ粒子等の艶消剤や合成樹脂ビーズを添加した混合物として使用する。
艶消剤や合成樹脂ビーズを適宜添加することにより、第1表面保護層5の光沢と第2表面保護層6の光沢に差をつけることができる。
光沢度は化粧シートの使用条件下における意匠上の要請から任意に選択され、JIS Z
8741に準拠した60度鏡面光沢度で測定した場合、4〜60の範囲で用いられる。第2表面保護層6の光沢度と、第1表面保護層5の光沢度と、の差は低光沢においても目視での差を感ずることができるよう3以上であることが好ましく、また、高光沢においては光沢の差が少ない場合は変化を感じ難いため、地の光沢度の50%程度のコントラストがあることが好ましい。実用上は15程度までの差があれば意匠的に優れた効果を得られる。したがって光沢度の差は0〜30の範囲、好ましくは3〜15である。
このように、第2表面保護層6を第1表面保護層5と異なる光沢で形成することにより、第2表面保護層6と第1表面保護層5で、視覚的な立体感を適切に表現できる。また、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂は、硬度が高いため、化粧シート8の耐傷性や耐汚染性を向上できる。
【0035】
第2表面保護層6に含まれるシリカ粒子は、硬化性樹脂の全質量に対し、5質量%以上含むのが好ましい。これにより、第2表面保護層6の光沢を十分に低下でき、第2表面保護層6と第1表面保護層5との光沢差を調整することができる。それゆえ、第1表面保護層5の全面積に対し、第2表面保護層6の面積が小さくても、視覚的な立体感を適切に感じさせることができる。なお、シリカ粒子の上限は、熱硬化性樹脂の全質量に対し、35質量%以下とする。35質量%より多くすると、塗工適性が低下すると共に、耐傷性が低下する。
【0036】
表面保護層6に添加するビーズとしては、例えば、合成樹脂ビーズとして透明度の高いポリメチルメタアクリレート樹脂ビーズ、表面処理した反射しやすく硬度の高いガラスビーズ、あるいは、表面処理した無機質のフィラーを用いることができる。バインダー樹脂との密着を考慮しポリメチルメタアクリレート樹脂ビーズが好ましい。これにより、第2表面保護層6の透明度を向上でき、意匠を付与するための絵柄模様層2の絵柄をより明瞭に透視することができる。添加するビーズの平均粒径は30μm以上とする。
また、ビーズとバインダーの材質によって、反射する光沢が大きく変化する場合があるので、それらの屈折率の差も、大きく光沢に影響する。
なお、溶剤としては、一般的な酢酸エチル、酢酸n−ブチルを用いることができる。
【0037】
第2表面保護層6の表面は、接触式粗さ計で測定した最大高さRz値を30μm以上とし、切断レベル50高さ%における負荷長さ率Rmrが3〜33%とする。Rmrがこれより低いとまばらで凹凸感に欠け、高いと逆に凹凸感がなく平滑に感じることを見出した。これにより、触感による立体感をより適切に感じさせることができる。
【0038】
なお、本実施形態では、バインダーとして、熱硬化型樹脂を用いる例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば紫外線硬化型樹脂を使用しても良い。紫外線硬化型樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂を使用できる。これにより、第2表面保護層6、つまり、化粧シート8の最表面層の硬度を向上でき、化粧シート8の耐摩耗性や、耐擦傷性、耐溶剤性等の表面物性を向上できる。また、例えば、バインダーとして、熱硬化型樹脂と紫外線硬化型樹脂との混合物を用いる構成としてもよい。
また、本実施形態では、熱硬化型樹脂に、合成樹脂ビーズを添加する例を示したが、他の構成を採用してもよく、例えば、無機化合物のフィラーを添加する構成としてもよい。
また、第2表面保護層6の形状は、特に限定されず、丸、四角形、六角形等の規則的に並んだ定形の形状としてもよく、不定型な絵柄形状としてもよい。
【0039】
以上のように、本発明の化粧シートは、第1表面保護層5と第2表面保護層6を異なる光沢で設けることにより、第1表面保護層5と第2表面保護層6で視覚的に立体感を感じさせることができる。さらに、第2表面保護層6にビーズまたはフィラーを含むため、触感によっても立体感を感じさせるので、より高い立体感を得ることができる。
また、本発明の化粧シートは、汎用設備で生産可能であり、生産性も高く、絵柄と第2表面保護層との位置あわせ精度など、品質を高く維持し易く、本発明のメリットは大きい。
【符号の説明】
【0040】
1・・・・・・・・シート基材
2・・・・・・・・絵柄模様層
3・・・・・・・・透明接着層
4・・・・・・・・透明熱可塑性樹脂層
5・・・・・・・・第1表面保護層
6・・・・・・・・第2表面保護層
7・・・・・・・・裏面樹脂コート層
8・・・・・・・・化粧シート
図1