(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記耐火被覆材は、前記主桁板に塗布される不定形材、又は、前記主桁板に貼付される定形板材が用いられて、前記不定形材又は前記定形板材と前記耐火コンクリートとのトンネルの軸方向での境界が、前記主桁板よりもトンネルの軸方向で前記鋼殻の内部側に形成されること
を特徴とする請求項1記載のセグメント。
前記不定形材又は前記定形板材と前記耐火コンクリートとのトンネルの軸方向での境界は、前記主桁板から50mm以上離間させて、前記主桁板よりもトンネルの軸方向で前記鋼殻の内部側に形成されること
を特徴とする請求項2又は3記載のセグメント。
前記耐火被覆材は、前記中詰めコンクリートとなる前記耐火コンクリートが、前記鋼殻の内部側から前記主桁板の内空側まで、トンネルの軸方向に連続させて設けられることで、前記主桁板の内空側を被覆するものとなること
を特徴とする請求項1記載のセグメント。
前記耐火被覆材は、トンネルの軸方向又は周方向で互いに隣接させる一方のセグメントにおける前記耐火被覆材と他方のセグメントにおける前記耐火被覆材とを離間させることで、5mm以上、13mm以下の隙間が形成されること
を特徴とする請求項1〜8の何れか1項記載のセグメント。
前記主桁板又は前記継手板は、トンネルの軸方向又は周方向で互いに隣接させる一方のセグメントにおける前記主桁板又は前記継手板と他方のセグメントにおける前記主桁板又は前記継手板とが、1mm以上離間させて配置されること
を特徴とする請求項1〜9の何れか1項記載のセグメント。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明を適用したセグメントで構築されるトンネルを示す斜視図である。
【
図2】本発明を適用したセグメントを示す斜視図である。
【
図3】本発明を適用したセグメントの主桁板を示す周方向の拡大正面図である。
【
図4】本発明を適用したセグメントで主桁板として非対称に形成されたセグメント形鋼が用いられた状態を示す周方向の正面図である。
【
図5】本発明を適用したセグメントで主桁板として線対称に形成されたセグメント形鋼が用いられた状態を示す周方向の正面図である。
【
図6】本発明を適用したセグメントに用いられるセグメント形鋼で図心位置と重心位置とが略一致する状態を示す周方向の拡大正面図である。
【
図7】本発明を適用したセグメントに用いられるセグメント形鋼の変形例で図心位置と重心位置とが略一致する状態を示す周方向の拡大正面図である。
【
図8】(a)は、本発明を適用したセグメントに設けられる頭付スタッドのずれ止め部材を示す側面図であり、(b)は、その底面図である。
【
図9】(a)は、本発明を適用したセグメントに設けられる鋼板のずれ止め部材を示す側面図であり、(b)は、その底面図である。
【
図10】(a)は、本発明を適用したセグメントに設けられる鋼板の補強部材を示す側面図であり、(b)は、その底面図である。
【
図11】(a)は、本発明を適用したセグメントに設けられる鉄筋又は棒鋼の補強部材を示す側面図であり、(b)は、その底面図である。
【
図12】(a)は、本発明を適用したセグメントに設けられる複数の主鋼材及び配力筋を示す側面図であり、(b)は、その底面図である。
【
図13】本発明を適用したセグメントに設けられる複数の主鋼材及び配力筋を示す周方向の正面図である。
【
図14】(a)は、本発明を適用したセグメントで地山側のスキンプレートに当接させた縦リブを示す側面図であり、(b)は、その底面図である。
【
図15】(a)は、本発明を適用したセグメントでスキンプレートから離間させた縦リブを示す側面図であり、(b)は、その底面図である。
【
図16】(a)は、本発明を適用したセグメントで縦リブから離間させた配力筋を示す側面図であり、(b)は、その底面図である。
【
図17】(a)は、本発明を適用したセグメントでスキンプレートから離間させた縦リブに当接される配力筋を示す側面図であり、(b)は、その底面図である。
【
図18】(a)は、本発明を適用したセグメントでスキンプレートに当接させた縦リブに当接される配力筋を示す側面図であり、(b)は、その底面図である。
【
図19】本発明を適用したセグメントに設けられる縦リブ、複数の主鋼材及び配力筋を示す周方向の正面図である。
【
図20】(a)は、本発明を適用したセグメントで三角リブの配置を示す側面図であり、(b)は、その周方向の正面図である。
【
図21】本発明を適用したセグメントが軸方向に複数連結された状態を示す正面図である。
【
図22】本発明を適用したセグメントが軸方向に複数連結された状態の変形例を示す正面図である。
【
図23】本発明を適用したセグメントの各々の主桁板が軸方向に当接された状態を示す周方向の拡大正面図である。
【
図24】(a)は、本発明を適用したセグメントで地下水圧が作用する前の止水溝を示す拡大正面図であり、(b)は、その地下水圧が作用した後の止水溝を示す拡大正面図である。
【
図25】本発明を適用したセグメントで嵌合凸部又は嵌合受部から独立して形成された止水溝を示す拡大正面図である。
【
図26】本発明を適用したセグメントでずれ量と製作難度との関連性を示すグラフである。
【
図27】(a)は、本発明を適用したセグメントで非対称に形成されたセグメント形鋼の主桁板の耐火被覆材を示す周方向の正面図であり、(b)は、線対称に形成されたセグメント形鋼の主桁板の耐火被覆材を示す周方向の正面図である。
【
図28】(a)は、本発明を適用したセグメントの第1実施形態における不定形材の耐火被覆材を示す正面図であり、(b)は、定形板材の耐火被覆材を示す正面図である。
【
図29】(a)は、本発明を適用したセグメントの第1実施形態において金網を介して固定された耐火被覆材を示す正面図であり、(b)は、接着材で固定された耐火被覆材を示す正面図である。
【
図30】(a)は、本発明を適用したセグメントの第2実施形態において非対称に形成されたセグメント形鋼の主桁板の耐火被覆材を示す正面図であり、(b)は、線対称に形成されたセグメント形鋼の主桁板の耐火被覆材を示す正面図である。
【
図31】(a)は、本発明を適用したセグメントの第2実施形態においてジベルを介して固定された耐火被覆材を示す正面図であり、(b)は、主桁板との間に不織布が挿入された耐火被覆材を示す正面図である。
【
図32】本発明を適用したセグメントで複数のセグメントの主桁板及び耐火被覆材が軸方向に離間することで形成された隙間を示す正面図である。
【
図33】本発明を適用したセグメントで複数のセグメントの継手板及び耐火被覆材が周方向に離間することで形成された隙間を示す正面図である。
【
図34】(a)は、本発明を適用したセグメントで耐火性コーキング材のみが充填された耐火被覆材の隙間を示す正面図であり、(b)は、その耐火性コーキング材と併せてバックアップ材が充填された耐火被覆材の隙間を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を適用したセグメント1を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
本発明を適用したセグメント1は、
図1に示すように、複数のセグメント1がトンネル7の軸方向X及び周方向Yで連結されることで、トンネル7が構築されるものである。
【0033】
トンネル7は、シールド工法等により地山等を掘削して形成された掘削穴、又は、地山等を開削して形成された開削穴に設けられる。トンネル7は、例えば、軸方向Xで略円筒形状に形成されるものであるが、これに限らず、略角筒形状等に形成されてもよい。
【0034】
トンネル7は、複数のセグメント1が周方向Yに連結されて、セグメントリング70が構築される。また、トンネル7は、複数のセグメントリング70が軸方向Xに連結されることで、トンネル7の延長方向となる軸方向Xで略円筒形状等に形成されるものとなる。
【0035】
トンネル7は、複数のセグメントリング70が軸方向Xに連結されることで、トンネル7の半径方向となる法線方向Zで、地山側Z1と内空側Z2とを隔てるように構築されるものとなり、法線方向Zの内空側Z2に所定の内部空間Sが確保される。
【0036】
本発明を適用したセグメント1は、
図2に示すように、軸方向Xの両端部に配置される一対の主桁板3と、周方向Yの両端部に配置される一対の継手板4とを備える。
【0037】
本発明を適用したセグメント1は、軸方向Xに所定の間隔を空けて、一対の主桁板3が互いに略平行に配置される。また、本発明を適用したセグメント1は、周方向Yに所定の間隔を空けて、一対の継手板4が互いに傾斜等するように配置される。
【0038】
本発明を適用したセグメント1は、主桁板3の周方向Yの両端部が、継手板4の軸方向Xの両端部と互いに接合されることで、軸方向X及び周方向Yに所定の間隔を空けた一対の主桁板3及び一対の継手板4に四方を取り囲まれた略箱状の鋼殻6が形成される。
【0039】
本発明を適用したセグメント1は、一対の主桁板3及び一対の継手板4に取り囲まれることで、中詰めコンクリート60が内部6aに充填される鋼殻6が形成される。本発明を適用したセグメント1は、必要に応じて、法線方向Zで地山側Z1及び内空側Z2の何れか一方又は両方に、鋼殻6の内部6aを覆うようにスキンプレート5が設けられる。
【0040】
本発明を適用したセグメント1は、特に、所定の断面形状で形成されたセグメント形鋼2が各々の主桁板3として用いられて、このセグメント形鋼2が周方向Yに湾曲等させて形成される。また、本発明を適用したセグメント1は、必要に応じて、各々の継手板4として、このセグメント形鋼2が湾曲等させることなく用いられてもよい。
【0041】
各々の主桁板3は、
図3に示すように、所定の断面形状で形成されたセグメント形鋼2が用いられることで、周方向Yに対する断面方向で、法線方向Zに延びる本体部20と、軸方向Xに凸状の嵌合凸部21と、軸方向Xに凹状の嵌合受部22とが形成される。
【0042】
各々の主桁板3は、法線方向Zに延びる本体部20に、本体部20から軸方向Xの外側Aに突出する嵌合凸部21が形成されるとともに、嵌合凸部21よりも軸方向Xの内側Bに配置される嵌合受部22が形成される。
【0043】
各々の主桁板3は、必要に応じて、嵌合凸部21又は嵌合受部22が、断面略円弧状等の湾曲面2aが形成されて湾曲状となる。また、各々の主桁板3は、必要に応じて、嵌合凸部21又は嵌合受部22が、断面略平坦状等の平坦面2bが形成されて平坦状となる。
【0044】
ここで、一対の主桁板3は、
図4に示すように、軸方向Xの一端側に配置される主桁板3が一端側主桁板31となるとともに、軸方向Xの他端側に配置される主桁板3が他端側主桁板32となり、一端側主桁板31と他端側主桁板32とが一対の主桁板3となる。
【0045】
一端側主桁板31は、鋼殻6の内部6aの反対側となる軸方向Xの外側Aに向けて突出して、湾曲状の嵌合凸部21が形成されるとともに、湾曲状の嵌合凸部21よりも鋼殻6の内部6a側となる軸方向Xの内側Bに、平坦状の嵌合受部22が形成される。
【0046】
他端側主桁板32は、鋼殻6の内部6aの反対側となる軸方向Xの外側Aに向けて突出して、平坦状の嵌合凸部21が形成されるとともに、平坦状の嵌合凸部21よりも鋼殻6の内部6a側となる軸方向Xの内側Bに、湾曲状の嵌合受部22が形成される。
【0047】
一対の主桁板3は、軸方向Xの両端部に配置される一端側主桁板31及び他端側主桁板32の各々に、法線方向Zに延びる本体部20が形成される。このとき、一対の主桁板3は、本体部20から軸方向Xに突出する嵌合凸部21が一端側主桁板31に形成されるとともに、本体部20から軸方向Xに陥没する嵌合受部22が他端側主桁板32に形成される。
【0048】
一対の主桁板3は、一端側主桁板31の湾曲状の嵌合凸部21と、他端側主桁板32の湾曲状の嵌合受部22とが、法線方向Zで互いに略同一の位置に形成される。また、一対の主桁板3は、一端側主桁板31の平坦状の嵌合受部22と、他端側主桁板32の平坦状の嵌合凸部21とが、法線方向Zで互いに略同一の位置に形成される。
【0049】
各々の主桁板3は、
図3に示すように、所定の断面形状で形成されたセグメント形鋼2が用いられることで、軸方向Xで本体部20の両側面の各々に、湾曲状又は平坦状の嵌合凸部21及び嵌合受部22が形成される。
【0050】
このとき、各々の主桁板3は、例えば、本体部20の一方側面20aに、湾曲状の嵌合凸部21及び平坦状の嵌合受部22が形成されるとともに、本体部20の他方側面20bに、平坦状の嵌合凸部21及び湾曲状の嵌合受部22が形成される。
【0051】
各々の主桁板3は、本体部20の一方側面20aの湾曲状の嵌合凸部21と、他方側面20bの湾曲状の嵌合受部22とが、法線方向Zで互いに略同一の位置に形成される。また、各々の主桁板3は、本体部20の一方側面20aの平坦状の嵌合受部22と、他方側面20bの平坦状の嵌合凸部21とが、法線方向Zで互いに略同一の位置に形成される。
【0052】
各々の主桁板3は、法線方向Zで本体部20の両端部の各々で、本体部20の両側面の各々に、湾曲状の嵌合凸部21又は嵌合受部22が1箇所に形成されるとともに、平坦状の嵌合凸部21又は嵌合受部22が1箇所に形成される。
【0053】
各々の主桁板3は、
図4に示すように、軸方向Xで非対称に形成されたセグメント形鋼2が、一対の主桁板3の各々に共通して用いられる。このとき、各々の主桁板3は、本体部20の一方側面20aの嵌合凸部21と、本体部20の他方側面20bの嵌合受部22とが、法線方向Zで互いに略同一の位置で湾曲状又は平坦状に形成されるものとなる。
【0054】
各々の主桁板3は、これに限らず、
図5に示すように、軸方向Xで線対称に形成されたセグメント形鋼2が、一対の主桁板3の各々に用いられてもよい。このとき、セグメント形鋼2は、軸方向Xに延びる一対のフランジ25と、法線方向Zに延びるウェブ26とを組み合わせて、法線方向Zに延びる本体部20が形成される。
【0055】
各々の主桁板3は、軸方向Xで線対称に形成されたセグメント形鋼2が用いられる場合に、一対のフランジ25の各々の両側端に、平坦状等の嵌合凸部21及び嵌合受部22が形成される。このとき、一対の主桁板3は、特に、一端側主桁板31の嵌合凸部21と、他端側主桁板32の嵌合受部22とが、法線方向Zで互いに略同一の位置に周方向Yに連続して形成される。
【0056】
各々の主桁板3は、
図3に示すように、周方向Yに対する断面方向で、セグメント形鋼2の図心位置と重心位置とが略一致するように、法線方向Zで本体部20の両端部の各々で、本体部20の両側面の所定の位置に、嵌合凸部21及び嵌合受部22が形成される。ここで、重心位置は、周方向Yに対する断面方向に関し、軸方向X、法線方向Zに対する幾何学的寸法の釣り合い点を指す。また、図心位置は、周方向Yに対する断面方向に関し、軸方向X、法線方向Zに対する断面1次モーメントの釣り合い点を指す。
【0057】
セグメント形鋼2は、
図6に示すように、法線方向Zの全高H又は軸方向Xの全幅Wに対して、図心位置と重心位置との軸方向Xのずれ量Δが8%以下となるときに、図心位置と重心位置とが略一致するものとなる。セグメント形鋼2は、全高H又は全幅Wに対して、図心位置と重心位置とのずれ量Δが、特に、3%以下となることが望ましい。
【0058】
セグメント形鋼2は、例えば、法線方向Zの全高H=225mm、軸方向Xの全幅W=38mmとする。このとき、セグメント形鋼2は、
図6(a)に示すように、軸方向Xのずれ量Δ=0.055mmとすると、軸方向Xの全幅Wに対して、軸方向Xのずれ量Δが0.14%(=0.055/38×100)となるとともに、法線方向Zのずれ量Δ=0mmであるから、法線方向Zの全高Hに対して、法線方向Zのずれ量Δが0%となるため、図心位置と重心位置とが略一致する。
【0059】
軸方向Xのずれ量のみを示せば、セグメント形鋼2は、
図6(b)に示すように、ずれ量Δ=0.160mm、
図6(c)に示すように、ずれ量Δ=0.286mm、
図6(d)に示すように、ずれ量Δ=1.828mmの場合の何れについても、ずれ量Δが8%以下となる。また、セグメント形鋼2は、
図7(a)に示すように、ずれ量Δ=0.527mm、
図7(b)に示すように、ずれ量Δ=0.923mmの場合の何れについても、ずれ量Δが8%以下となることで、図心位置と重心位置とが略一致するものとなる。なお、セグメント形鋼2は、
図7(c)、
図7(d)に示すように、ずれ量Δ≒0.000mmとすることもできる。
【0060】
本発明を適用したセグメント1は、
図8、
図9に示すように、鋼殻6の内部6aに所定のずれ止め部材61が設けられる。ずれ止め部材61は、軸方向Xの一方の片端部のみが各々の主桁板3に溶接等で固着されるとともに、軸方向Xの他方の片端部が鋼殻6の内部6aに延びて配置されて、中詰めコンクリート60に埋め込まれる。
【0061】
ずれ止め部材61は、
図8に示すように、頭付スタッドが用いられるほか、
図9に示すように、略平板状に形成された鋼板等が用いられて、一対の主桁板3の各々で、法線方向Zの2段程度に亘って、周方向Yの4箇所程度に断続的に設けられる。本発明を適用したセグメント1は、ずれ止め部材61が中詰めコンクリート60に埋め込まれて係止されて、中詰めコンクリート60と鋼殻6とのずれ止め機能を発揮することが可能となる。
【0062】
鋼殻6の内部6aに設けられるずれ止め部材61は、主に鋼殻6と中詰めコンクリート60とをトンネル接線方向に一体化させることを目的に設けられるものである。このとき、本発明を適用したセグメント1は、トンネル外力が作用した場合にも、鋼殻6と中詰めコンクリート60との間でトンネル接線方向にずれ変形を生じさせる挙動に対して、このずれ変形を略同一状態として、いわゆる一体はり構造の挙動を確保できる。そして、この両者間のずれ変形に抵抗するずれ止め剛性は、トンネル外力に応じてずれ止め部材61の数量で適宜調整可能となる。トンネル接線方向に対するずれ止め剛性は、セグメント1の外力に対する法線方向Zの剛性を飛躍的に高める効果があり、トンネルセグメントの高耐力化、高剛性化を生み、結果的にトンネルセグメントの薄壁化を図ることができる。その結果、大深度トンネルへの適用や、トンネル外径の縮小化に寄与するものとなる。
【0063】
本発明を適用したセグメント1は、
図10、
図11に示すように、鋼殻6の内部6aに所定の補強部材62が設けられる。補強部材62は、軸方向Xの両端部が一対の主桁板3に溶接等で固着されて、鋼殻6の内部6aで一対の主桁板3に架設された状態で、中詰めコンクリート60に埋め込まれる。
【0064】
補強部材62は、
図10に示すように、略平板状に形成された鋼板等が用いられるほか、
図11に示すように、異形鉄筋等の鉄筋又は棒鋼が用いられて、法線方向Zの2段程度に亘って、周方向Yの4箇所程度に断続的に設けられる。本発明を適用したセグメント1は、補強部材62が架設されることで、中詰めコンクリート60の高耐力化と、主桁板3への確実な荷重伝達とを実現して、幅広のセグメント1にも対応することが可能となる。
【0065】
本発明を適用したセグメント1は、
図12に示すように、鋼殻6の内部6aで周方向Yに延びる複数の主鋼材63が設けられるとともに、軸方向Xに延びて各々の主鋼材63に当接される配力筋64が設けられる。複数の主鋼材63は、各々に異形鉄筋等の鉄筋又は棒鋼等が用いられて、軸方向Xの6箇所程度に断続的に設けられる。
【0066】
配力筋64は、異形鉄筋等の鉄筋又は棒鋼等が用いられて、
図13に示すように、複数の主鋼材63を取り囲むように設けられる。配力筋64は、
図13(a)に示すように、法線方向Zで地山側Z1の端部がフック状に形成されてもよく、
図13(b)に示すように、地山側Z1及び内空側Z2の主鋼材63を全周で取り囲むように形成されてもよい。
【0067】
本発明を適用したセグメント1は、複数の主鋼材63を配力筋64で一体化することで、複数の主鋼材63及び配力筋64が埋め込まれた中詰めコンクリート60の補強を実現して、セグメント1に負荷される大深度での高荷重にも対応することが可能となる。
【0068】
本発明を適用したセグメント1は、
図14〜
図18に示すように、鋼殻6の内部6aに所定の縦リブ65が設けられる。縦リブ65は、略平板状に形成された鋼板が用いられて、軸方向Xの両端部が一対の主桁板3に溶接等で固着されて、鋼殻6の内部6aで一対の主桁板3に架設された状態で、中詰めコンクリート60に埋め込まれる。
【0069】
縦リブ65は、略平板状に形成された鋼板が法線方向Zに延びて配置されて、周方向Yの4箇所程度に断続的に設けられる。このとき、配力筋64は、特に、
図16に示すように、縦リブ65から周方向Yに離間させて設けられてもよく、
図17、
図18に示すように、周方向Yの両側から縦リブ65に当接させて設けられてもよい。
【0070】
本発明を適用したセグメント1は、
図16に示すように、配力筋64が縦リブ65から離間させて設けられることで、複数の縦リブ65の間が配力筋64で補強されて、中詰めコンクリート60に耐力の低い箇所が形成されることを回避することが可能となる。また、本発明を適用したセグメント1は、
図17、
図18に示すように、配力筋64が縦リブ65に当接させて設けられることで、主鋼材63、配力筋64、縦リブ65及び主桁板3を簡便に固着させて、一体性の高いセグメント1を提供することが可能となる。
【0071】
配力筋64は、周方向Yの両側から縦リブ65に当接させて設けられる場合に、
図19(a)に示すように、地山側Z1及び内空側Z2の複数の主鋼材63を取り囲むことで、縦リブ65の上下端部と配力筋64とで主鋼材63を法線方向Zに挟み込んで拘束する。さらに、配力筋64は、
図19(b)に示すように、法線方向Zの端部を周方向Yに折り曲げて、配力筋64の折り曲げた端部が縦リブ65の上端部に引っ掛けられてもよい。
【0072】
本発明を適用したセグメント1は、鋼殻6の内部6aを覆うように、略平板状の鋼板等を湾曲させたスキンプレート5が地山側Z1に設けられる。このとき、本発明を適用したセグメント1は、
図15に示すように、法線方向Zで縦リブ65の地山側Z1の上端部が、スキンプレート5から法線方向Zに離間させて設けられて、スキンプレート5と縦リブ65との間に所定の隙間Gが形成される。
【0073】
本発明を適用したセグメント1は、スキンプレート5と縦リブ65との間に所定の隙間Gが形成されることで、中詰めコンクリート60となるフレッシュコンクリートを鋼殻6の内部6aに充填するときに、フレッシュコンクリートが隙間Gを通過できるものとなる。このとき、本発明を適用したセグメント1は、フレッシュコンクリートの流動性を隙間Gで確保して、鋼殻6の内部6aへの充填性を向上させることが可能となる。
【0074】
また、本発明を適用したセグメント1は、スキンプレート5と縦リブ65との間に所定の隙間Gが形成されることで、スキンプレート5と縦リブ65とが互いに離間するものとなるが、スキンプレート5と主桁板3との接合箇所付近に、
図20に示すように、適宜、両者を接続する三角リブ、四角リブ又は台形リブ66等の補強材を配置することで、接合箇所付近の剛性が高まるため、セグメント1の性能を向上させる効果が期待できる。なお、三角リブ、四角リブ又は台形リブ66等の補強材は、縦リブ65の有無によらずに適宜配置されて、セグメント1の性能向上を図ることができる。
【0075】
なお、本発明を適用したセグメント1は、必要に応じて、
図8〜
図19に示す鋼殻6の内部6aで、ずれ止め部材61、補強部材62、主鋼材63、配力筋64及び縦リブ65が適宜組み合わされた状態で、中詰めコンクリート60が充填されるものとなる。
【0076】
本発明を適用したセグメント1は、
図21に示すように、所定のセグメント1の一端側主桁板31に、軸方向Xに隣り合って連結される他のセグメント1の他端側主桁板32が当接されて、複数のセグメント1が互いに連結されるものとなる。
【0077】
本発明を適用したセグメント1は、
図21(a)に示すように、
図4に示す軸方向Xで非対称に形成されたセグメント形鋼2を、一対の主桁板3の各々に共通して略同一形状のものとして用いることで、複数のセグメント1が互いに連結される。
【0078】
また、本発明を適用したセグメント1は、これに限らず、
図21(b)に示すように、
図5に示す軸方向Xで線対称に形成されたセグメント形鋼2を、一対の主桁板3の各々に用いることで、複数のセグメント1が互いに連結されてもよい。
【0079】
さらに、本発明を適用したセグメント1は、
図21(c)に示すように、
図4に示す非対称に形成されたセグメント形鋼2と、
図5に示す線対称に形成されたセグメント形鋼2とを組み合わせて用いることで、複数のセグメント1が互いに連結されてもよい。
【0080】
なお、本発明を適用したセグメント1は、
図22に示すように、軸方向Xに隣り合って連結される他のセグメント1の主桁板3が当接された状態で、一端側主桁板31に形成された嵌合凸部21と、他のセグメント1の他端側主桁板32に形成された嵌合受部22とが、法線方向Zで互いに略同一の位置に周方向Yに連続して形成されてもよい。このとき、本発明を適用したセグメント1は、軸方向Xに隣り合って連結される各々のセグメント1において、軸方向Xの両端部の主桁板3の断面形状を統一させて、主桁板3の断面形状を1種類で済ませることができる。
【0081】
これにより、本発明を適用したセグメント1は、主桁板3の断面形状が1種類で済むので、主桁板3の製造において製造治具を少なくできることから、製造コストを抑えることが可能となる。また、本発明を適用したセグメント1は、組立時においても主桁板3の向きを統一できるので、組立時の材料管理や組立手間も少なく済ませることが可能となる。
【0082】
また、本発明を適用したセグメント1は、主桁板3として
図7(b)に示すセグメント形鋼2を採用した場合に、
図22(a)に示すように、一端側主桁板31及び他端側主桁板32が、セグメント1の周方向Yの断面での中心点に対して点対称に配置される。このとき、本発明を適用したセグメント1は、中詰めコンクリート60に係止される嵌合凸部21が法線方向Zの両端部に配置されるため、中詰めコンクリート60を法線方向Zに挟み込む効果が得られ、鋼殻6と中詰めコンクリート60とをより強固に一体化することができる。さらに、中詰めコンクリート60と当接する面の嵌合凸部21が、主桁板3の法線方向Zの両端部のみに配置されるため、
図14〜
図19に示す縦リブ65等の補強材の配置が容易となり、セグメント1の製作コストを低減することが可能となる。
【0083】
ここで、本発明を適用したセグメント1は、
図23に示すように、軸方向Xの両端部で各々の主桁板3が互いに当接されて、一方の主桁板3の嵌合凸部21が他方の主桁板3の嵌合受部22に嵌合されることで、複数のセグメント1が互いに連結されるものとなる。
【0084】
このとき、本発明を適用したセグメント1は、特に、一端側主桁板31の湾曲状の嵌合凸部21と、他端側主桁板32の湾曲状の嵌合受部22とが、法線方向Zで互いに略同一の位置に形成されることで、湾曲状の嵌合凸部21が嵌合受部22に確実に嵌め込まれる。さらに、本発明を適用したセグメント1は、他端側主桁板32の平坦状の嵌合凸部21も、一端側主桁板31の平坦状の嵌合受部22に確実に嵌め込まれる。
【0085】
本発明を適用したセグメント1は、各々の主桁板3に所定の断面形状のセグメント形鋼2が用いられて、互いに対応する形状で湾曲状等に形成された嵌合凸部21及び嵌合受部22が、一対の主桁板3の各々に形成されて確実かつ強固に嵌合するものとなる。本発明を適用したセグメント1は、特に、一対の主桁板3の各々の嵌合凸部21と嵌合受部22とが、法線方向Zで互いに略同一の位置で対応する形状に形成されることで、軸方向Xに連結される複数のセグメント1の一体性を向上させることが可能となる。
【0086】
また、本発明を適用したセグメント1は、一対の主桁板3の各々の嵌合凸部21と嵌合受部22とが、法線方向Zで互いに略同一の位置で対応する形状に形成されて確実に嵌合されることで、複数のセグメント1の現場での組立てを容易に実施することが可能となる。さらに、本発明を適用したセグメント1は、複数のセグメント1の現場での組立容易性が向上することで、複数のセグメント1の一体性を確実に向上させて、互いに連結される複数のセグメント1の地震時の高耐久性も実現することが可能となる。
【0087】
本発明を適用したセグメント1は、
図6、
図7に示すセグメント形鋼2を各々の主桁板3に用いることで、
図23に示すように、中詰めコンクリート60に係止される嵌合凸部21及び嵌合受部22の何れか一方又は両方が、鋼殻6の内部6a側に配置される本体部20の側面にも形成される。これにより、本発明を適用したセグメント1は、嵌合凸部21又は嵌合受部22が鋼殻6の内部6a側で中詰めコンクリート60に係止されることで、鋼殻6の内部6aに充填される中詰めコンクリート60と鋼殻6との一体性を向上させることが可能となる。
【0088】
本発明を適用したセグメント1は、嵌合凸部21及び嵌合受部22が、各々の主桁板3で鋼殻6の内部6aの反対側に配置される何れか一方の側面のみに形成されるだけでなく、鋼殻6の内部6a側に配置される何れか他方の側面にも形成されるものとなる。これにより、本発明を適用したセグメント1は、鋼殻6の内部6a側でも嵌合凸部21及び嵌合受部22が中詰めコンクリート60に係止されることで、鋼殻6の内部6aに充填される中詰めコンクリート60と鋼殻6との一体性を向上させることが可能となる。
【0089】
また、本発明を適用したセグメント1は、鋼殻6の内部6a側でも嵌合凸部21及び嵌合受部22が中詰めコンクリート60に係止されることで、鋼殻6と中詰めコンクリート60とが法線方向Zに対して一体化されて、トンネル外力に対する鋼殻6の法線方向Zのたわみと中詰めコンクリート60のたわみが略同一状態となり、いわゆる重ねはり構造の挙動を確保することができる。これにより、本発明を適用したセグメント1は、嵌合凸部21及び嵌合受部22と中詰めコンクリート60との係止部分が周方向Yに連続して形成されることで、ずれ止め機能の剛性が極めて高くなり、一体化の効果が格段に高まるものとなる。そして、本発明を適用したセグメント1は、トンネル外力が作用した場合にも、中詰めコンクリート60がトンネル内部に剥落することを抑止する効果が得られるため、トンネル構造の安全性に大きく寄与するものとなる。
【0090】
また、本発明を適用したセグメント1は、
図4に示すように、軸方向Xで非対称に形成されたセグメント形鋼2を、一対の主桁板3の各々で互いに略同一形状のものとして共通して用いることができる。これにより、本発明を適用したセグメント1は、略同一形状のセグメント形鋼2が各々の主桁板3として用いられることで、主桁板3となるセグメント形鋼2の共通化を図り、セグメント1の製作コストを低減することが可能となる。
【0091】
本発明を適用したセグメント1は、特に、
図24に示すように、軸方向Xに隣り合って連結される他のセグメント1の他端側主桁板32が、所定のセグメント1の一端側主桁板31に当接された状態で、軸方向Xに凹状となる止水溝23が形成される。
【0092】
止水溝23は、軸方向Xで一端側主桁板31と他端側主桁板32とが互いに当接された状態で、嵌合凸部21又は嵌合受部22から法線方向Zに連続させて、軸方向Xの外側Aから内側Bに向けて断面略S字状に湾曲するように凹状に形成される。
【0093】
止水溝23は、
図24(a)に示すように、断面略S字状に湾曲するように形成されることで、比較的大きな間隙となる拡幅部23aと、比較的小さな間隙となる狭小部23bとが形成される。止水溝23は、地山側Z1から地下水圧が作用する前の状態で、ゴム製等のシール材24が拡幅部23aに嵌装されるものとなる。
【0094】
止水溝23は、
図24(b)に示すように、地山側Z1から地下水圧が作用することで、地山側Z1から内空側Z2へ地下水等が浸入しようとして、地下水等の水圧でシール材24が押圧Pされる。このとき、シール材24は、拡幅部23aから狭小部23bに飛び出すように変形して、比較的小さな間隙の狭小部23bに密着するように挟み込まれる。
【0095】
本発明を適用したセグメント1は、軸方向Xで一端側主桁板31と他端側主桁板32とが互いに当接されて、地山側Z1から地下水圧が作用した後の状態で、比較的小さな間隙の狭小部23bにシール材24が密着して挟み込まれる。これにより、本発明を適用したセグメント1は、密着したシール材24で地下水等の浸入が確実に遮断されるため、複数のセグメント1の連結箇所での止水性能を著しく向上させることが可能となる。
【0096】
また、本発明を適用したセグメント1は、嵌合凸部21又は嵌合受部22から法線方向Zに連続させて、軸方向Xに凹状となる止水溝23が形成されるため、独立した止水構造をセグメント1に設けることが不要となる。これにより、本発明を適用したセグメント1は、独立した止水構造を不要とすることで、止水構造を設けるためのセグメント1の製作コストを抑制することが可能となる。
【0097】
また、本発明を適用したセグメント1は、
図25に示すように、止水溝23が嵌合凸部21又は嵌合受部22から独立して形成されて、かつ、軸方向Xに隣り合って連結される他のセグメント1の止水溝23と法線方向Zで互いに略同一の位置に形成される場合に、シール材24の幅を自由に選択することが可能となり、さらに、軸方向Xに隣り合う2枚のシール材24が重なり合って地下水圧に抵抗することで、高い止水性能を発揮することが可能となる。このとき、本発明を適用したセグメント1は、軸方向Xで本体部20の両側面に凹状となる止水溝23が形成されて、本体部20の外側Aで凹状となる止水溝23と、本体部20の内側Bで凹状となる止水溝23とが、法線方向Zで互いに略同一の位置に形成されてもよい。本発明を適用したセグメント1は、止水溝23を両面に設けておくことで、内側Bの止水溝23による中詰めコンクリート60との一体性が飛躍的に向上するだけでなく、主桁板3の形状が対称形となって製造効率が飛躍的に向上して、同時に止水機能の代わりにずれ止めの機能を兼用させることが可能となる。
【0098】
本発明を適用したセグメント1は、
図3〜
図7に示すように、各々の主桁板3に所定の断面形状のセグメント形鋼2が用いられて、嵌合凸部21及び嵌合受部22が形成されることで、各々の主桁板3の面外方向及び面内方向の剛性が向上する。これにより、本発明を適用したセグメント1は、各々の主桁板3の面外方向及び面内方向の剛性を向上させて、各々の主桁板3の高耐力化を図ることが可能となる。
【0099】
本発明を適用したセグメント1は、
図2に示すように、各々の主桁板3と同様に、必要に応じて、所定の断面形状で形成されたセグメント形鋼2を、各々の継手板4として用いてもよい。各々の継手板4は、
図6、
図7に示すセグメント形鋼2を用いることで、周方向Yの一端側に配置される一端側継手板41の嵌合凸部21と、周方向Yの他端側に配置される他端側継手板42の嵌合受部22とが、法線方向Zで互いに略同一の位置に軸方向Xに連続して形成される。
【0100】
これにより、本発明を適用したセグメント1は、一対の継手板4の各々の嵌合凸部21と嵌合受部22とが、法線方向Zで互いに略同一の位置で対応する形状に形成されることで、周方向Yに連結される複数のセグメント1の一体性を向上させることが可能となる。なお、本発明を適用したセグメント1は、例えば、主桁板3及び継手板4の何れか一方においてのみ、所定の断面形状で形成されたセグメント形鋼2が用いられてもよい。
【0101】
本発明を適用したセグメント1は、特に、一対の主桁板3及び一対の継手板4の両方において、所定の断面形状で形成されたセグメント形鋼2が用いられることで、
図1に示すように、複数のセグメント1が軸方向X及び周方向Yで一体的に連結される。このとき、本発明を適用したセグメント1は、複数のセグメント1が周方向Yで一体的に連結されてセグメントリング70が構築されるとともに、複数のセグメントリング70が軸方向Xで一体的に連結されてトンネル7が構築されるものとなる。
【0102】
ここで、セグメント1は、
図2に示すように、複数の部材の組立工程において、一般的に、鋼板、形鋼等の切断、切削、曲げ加工、溶接等の多様な加工を実施する必要がある。そして、セグメント1は、加工後の製品として、幅、高さ、捻じれ、曲がり等の寸法精度を許容範囲内に収める必要があるものの、各々の部材の強度及び成分等が異なることから、寸法精度の管理が経験によるところが多く、極めて困難を要していた。
【0103】
特に、セグメント1の主桁板3は、土水圧等の外荷重に対して抵抗する際の主要部材であり、セグメント1の鋼殻6の外周に配置されるため、品質及び寸法精度として高い水準が要求されている。このため、本発明を適用したセグメント1は、
図6、
図7に示すように、特に、セグメント形鋼2の全高H又は全幅Wに対して図心位置と重心位置とのずれ量Δを8%以下として、図心位置と重心位置とが略一致するものとする。
【0104】
ここで、主桁板3の図心位置と重心位置との軸方向X(法線方向Z)のずれ量Δが大きいと、曲げ加工や溶接加工に伴う反り、ねじれなどの変形が大きくなり、セグメント1の所要の寸法精度を確保することが難しくなる。一方、主桁板3の軸方向X(法線方向Z)の全幅W(全高H)が大きいと、主桁板3の剛性が大きくなり、曲げ加工や溶接加工に伴う反り、ねじれなどの変形に対する抵抗性が高まり、セグメント1の所要の寸法精度を確保することが容易になる。
【0105】
製作難度を示す指標として、全高H又は全幅Wに対する図心位置と重心位置とのずれ量Δを採用すると、ずれ量Δが大きいほど反り、ねじれ変形は大きくなり、製作難度が上がることになる。本発明の発明者は、
図26に示すように、これまでの種々の製作実績により、ずれ量Δが8%以下であれば、簡易な矯正で高い水準の品質及び寸法精度を確保することが可能であり、さらにずれ量Δが3%以下であれば、矯正の必要なくより高い水準の品質及び寸法精度を確保することが可能であることを見出した。なお、ずれ量Δが8%を超えると、通常の矯正で所要の寸法精度を確保することは極めて困難となり、大規模な冶具による加工が必要となるため、組立加工費を大幅に増加させることになる。
【0106】
これにより、本発明を適用したセグメント1は、セグメント形鋼2の断面方向で、図心位置と重心位置とが略一致することで、セグメント形鋼2の組立加工が大幅に削減されるだけでなく、高い水準の品質及び寸法精度も確保することが可能となる。そして、本発明を適用したセグメント1は、特に、セグメント形鋼2の図心位置と重心位置とのずれ量Δを3%以下としたとき、より高い水準の品質及び寸法精度を確保することが可能となる。
【0107】
本発明を適用したセグメント1の基本思想は、法線方向Zのずれ止め剛性を相対的に大きく設定して、トンネル崩壊等の極限的リスクを回避することに重点を置きつつ、
図8、
図9に示すトンネル接線方向のずれ止め部材61等を適宜設けることで、トンネルに作用する外力に適切に抵抗するトンネルセグメント構造を提供することにある。さらに、この基本思想に加えて、周方向Yに連続する嵌合凸部21及び嵌合受部22を主桁板3に形成することで、嵌合機能、止水機能だけでなく、ずれ止め機能を付与することを同時に達成することを可能にしている。しかも、安価に製造するために主桁板3の凹凸形状の配置を工夫することで、低コストと多機能性とを両立させることを可能にしている。
【0108】
ここで、本発明を適用したセグメント1は、
図27に示すように、鋼殻6の内部6aに充填される中詰めコンクリート60に、特に、ポリプロピレン系繊維又はビニロン系繊維等の火災時に熱で溶融又は消失する合成繊維が混入された耐火コンクリートが用いられる。このとき、本発明を適用したセグメント1は、一対の主桁板3の何れか一方又は両方に、法線方向Zで内空側Z2から被覆される耐火被覆材8が設けられる。
【0109】
中詰めコンクリート60として用いられる耐火コンクリートは、ポリプロピレン系繊維又はビニロン系繊維等の熱溶融性の合成樹脂繊維が混入されることで、火災時に熱で溶融又は消失する合成繊維を混入させたコンクリートとなる。このコンクリートの成分や作製方法は、例えば、“トンネル施工管理要領(繊維補強覆工コンクリート編)、平成15年9月、日本道路公団”、又は“コンクリート構造物の耐火技術研究小委員会報告ならびにシンポジウム論文集P72〜P75 土木学会編”等の記載に基づくものでもよい。
【0110】
中詰めコンクリート60として用いられる耐火コンクリートは、例えば、鋼殻6の内部6aから内空側Z2に露出させるものとする。このとき、耐火被覆材8は、
図27(a)に示すように、非対称に形成されたセグメント形鋼2が用いられた主桁板3の内空側Z2に設けられるほか、
図27(b)に示すように、線対称に形成されたセグメント形鋼2が用いられた主桁板3の内空側Z2に設けられてもよい。
【0111】
本発明を適用したセグメント1は、第1実施形態において、主桁板3の内空側Z2から被覆される耐火被覆材8として、
図28(a)に示すように、主桁板3に塗布される不定形材81が用いられる。また、本発明を適用したセグメント1は、必要に応じて、主桁板3の内空側Z2から被覆される耐火被覆材8として、
図28(b)に示すように、主桁板3に貼付される定形板材82が用いられてもよい。
【0112】
不定形材81又は定形板材82が用いられた耐火被覆材8は、例えば、セメント、セラミック、ひる石又は石膏等の不燃性物質を含有し、必要に応じて、ロックウール、グラスウール、ポリプロピレン系繊維及び水の何れか一以上をさらに含有する。不定形材81又は定形板材82が用いられた耐火被覆材8は、主桁板3のフランジ25の下面等の下端部3aから内空側Z2に、例えば、20mm以上の被覆厚tで形成される。
【0113】
不定形材81は、主桁板3のフランジ25の下面等の下端部3aに、ロックウール等が塗装、吹付け又は巻付け等されることで、内空側Z2から主桁板3に塗布される。また、定形板材82は、主桁板3のフランジ25の下面等の下端部3aに、セメントボード等の略平板状の板材が取り付けられることで、内空側Z2から主桁板3に貼付される。
【0114】
不定形材81又は定形板材82は、主桁板3のフランジ25の下面等の下端部3aから軸方向Xで鋼殻6の内部6a側に突出させることで、中詰めコンクリート60となる耐火コンクリートとの間に軸方向Xの境界8aが形成される。そして、不定形材81又は定形板材82は、例えば、主桁板3から境界8aまで軸方向Xに離間させた離間距離dを50mm以上として、中詰めコンクリート60となる耐火コンクリートとの軸方向Xでの境界8aが、主桁板3よりも軸方向Xで鋼殻6の内部6a側に形成されるものとなる。
【0115】
不定形材81又は定形板材82は、主桁板3から境界8aまでの離間距離dを50mm以上とし、20mm以上の被覆厚tで形成されることで、中詰めコンクリート60の露出させた表面から主桁板3の下端部3aまで、少なくとも70mm(=50mm+20mm)の伝熱距離となる。ここで、火災時において、一般に、主桁板3のフランジ25の表面温度を300℃以下に抑制することが要求されて、中詰めコンクリート60の表面温度を350℃以下に抑制することが要求されるが、70mm以上の伝熱距離を確保することで、これらの要求水準を満たすように温度上昇を抑制することが可能となる。
【0116】
また、一般に、火災によるCO
2ガスがコンクリートに接触すると、アルカリ性であるコンクリートは中性化し、強度が低下するとともに水及び酸素の接触により内部の鋼材が錆びるおそれがある。しかし、最高温度1200℃が60分程度継続するトンネル火災では、コンクリートの中性化は表面から50mm程度しか進行しないため、少なくとも70mmの伝熱距離を確保することで、表面から50mm中性化しても残りの20mmの厚みの部分で中性化を防止し、ひいては主桁板3のフランジ25の錆びを防止することが可能となる。さらに、耐火コンクリートは、混入された合成繊維が熱により溶失して、軽石状になってしまうが、合成繊維の溶失は、最高温度1200℃、継続時間60分程度のトンネル火災においては、コンクリート表面から50mm程度である。このため、主桁板3のフランジ25に至るまで、70mm以上の伝熱距離を確保することで、表面から50mmの繊維が溶失しても残りの20mmの厚みの部分で軽石化を防止することが可能となる。
【0117】
不定形材81又は定形板材82は、必要に応じて、
図29(a)に示すように、中詰めコンクリート60となる耐火コンクリート及び主桁板3の何れか一方又は両方に金網83を介して固定される。金網83は、鉄筋又は棒鋼等が縦筋及び横筋として略格子状に配置されて用いられるほか、複数の網目が略格子状に形成されたエキスパンドメタル又はラス等が用いられて、必要に応じて、縦筋と横筋とが互いに溶接等で固着される。
【0118】
金網83は、中詰めコンクリート60となる耐火コンクリートに取り付けられる場合に、例えば、中詰めコンクリート60の表面に穿設されたドリル孔にアンカー部材83aが挿入されて、このアンカー部材83aに取り付けられる。また、金網83は、主桁板3に取り付けられる場合に、例えば、主桁板3のフランジ25に溶接等でアンカー部材83aが固着されて、このアンカー部材83aに取り付けられる。なお、アンカー部材83aは、例えば、頭付きネジが用いられるほか、略L字状に折り曲げた鋼線等が用いられる。
【0119】
不定形材81又は定形板材82は、必要に応じて、
図29(b)に示すように、中詰めコンクリート60となる耐火コンクリート及び主桁板3の何れか一方又は両方に耐火性の接着材85で固定されてもよい。このとき、不定形材81又は定形板材82は、
図29に示すように、中詰めコンクリート60となる耐火コンクリート又は主桁板3に、金網83を介して固定されて、又は、接着材85で固定されることで、主桁板3から内空側Z2への耐火被覆材8の落下を防止することが可能となる。
【0120】
また、本発明を適用したセグメント1は、第2実施形態において、
図30に示すように、中詰めコンクリート60となる耐火コンクリートが、鋼殻6の内部6a側から主桁板3の内空側Z2まで軸方向Xに連続させて設けられることで、主桁板3の内空側Z2を被覆する耐火被覆材8となる。このとき、主桁板3の内空側Z2を被覆する耐火コンクリートは、主桁板3のフランジ25の下面等の下端部3aから内空側Z2に、例えば、50mm以上、65mm以下の被覆厚tで形成される。
【0121】
主桁板3の内空側Z2を被覆する耐火コンクリートは、必要に応じて、
図31(a)に示すように、スタッドジベル若しくは螺旋ジベル等のジベル84を介して主桁板3に固定される。ジベル84は、例えば、主桁板3のフランジ25に溶接等で固着される。主桁板3の内空側Z2を被覆する耐火コンクリートは、必要に応じて、
図29(a)に示す金網83を介して固定されてもよく、
図29(b)に示す接着材85で固定されてもよい。
【0122】
主桁板3の内空側Z2を被覆する耐火コンクリートは、必要に応じて、
図31(b)に示すように、主桁板3の下端部3aとの間に不織布86が挿入されて、耐火コンクリートと主桁板3とが互いを固着しないものとなる。このとき、本発明を適用したセグメント1は、耐火被覆材8となる耐火コンクリートと主桁板3とが互いに固着されないため、耐火コンクリートが主桁板3に固着されることによるひび割れを防止することが可能となる。
【0123】
本発明を適用したセグメント1は、第1実施形態及び第2実施形態の何れにおいても、
図32、
図33に示すように、複数のセグメント1が軸方向X及び周方向Yに連結されて、軸方向X又は周方向Yで一方のセグメント1と他方のセグメント1とが互いに隣接する。そして、本発明を適用したセグメント1は、一方のセグメント1における耐火被覆材8と、他方のセグメント1における耐火被覆材8とを、軸方向X又は周方向Yに離間させることで、5mm以上、13mm以下の隙間G1が形成される。
【0124】
このとき、本発明を適用したセグメント1は、第1実施形態及び第2実施形態の何れにおいても、
図32に示すように、一方のセグメント1における主桁板3と、他方のセグメント1における主桁板3とが、軸方向Xで互いに離間させて配置され、1mm以上の隙間G2が形成されてもよい。また、本発明を適用したセグメント1は、
図33に示すように、一方のセグメント1における継手板4と、他方のセグメント1における継手板4とが、周方向Yで互いに離間させて配置され、1mm以上の隙間G2が形成されてもよい。
【0125】
このとき、隙間G1には、
図34に示すように、耐火性コーキング材87が充填される。耐火性コーキング材87は、耐火性又は不燃性の充填材が用いられて、例えば、「信越化学工業株式会社製のシーラント40KKS耐火」が用いられる。シーラント40KKS耐火の硬化前の特性は、外観がペースト状で、比重(20℃)1.58、タックフリーが20分、押し出し性(5℃)が8秒、スランプが0mmであって、硬化後の特性は、加熱減量(%)が6.7で、50%引張り応力N/mm
2が0.57で、最大引張り応力N/mm
2が1.01で、伸び率%が120で、凝集破壊率(%)が100で、汚染性がなく、耐オゾン性としてオゾンによる亀裂がなく、耐久性のある材料である。
【0126】
隙間G1には、
図34(a)に示すように、耐火性コーキング材87のみが充填されるほか、
図34(b)に示すように、耐火性コーキング材87と併せてバックアップ材88が充填されてもよい。このとき、隙間G1には、法線方向Zで地山側Z1となる深部Gaにバックアップ材88が充填されるとともに、法線方向Zで内空側Z2となる浅部Gbにバックアップ材88を被覆するように耐火性コーキング材87が充填される。
【0127】
バックアップ材88は、例えば、セラミックファイバー等のファイバー、ロックウール等のブランケット、又は、耐火性ボード若しくは不燃性ボード等、耐火性若しくは不燃性の安価な材料で、施工性及び変形追随性が高いものが用いられることが望ましい。バックアップ材88は、主に、耐火性材料が用いられるが、例えば、バックアップ材88を被覆する耐火性コーキング材87が1500℃対応である場合は、非耐火性材料が用いられてもよい。そして、バックアップ材88は、必要に応じて、2種以上の耐火性材料等が2段以上に亘って充填される。なお、バックアップ材88に耐火性材料が用いられる場合には、非耐火性のコーキング材が耐火性コーキング材87として用いられてもよい。
【0128】
本発明を適用したセグメント1は、耐火性コーキング材87及びバックアップ材88が隙間G1に充填されなくてもよく、必要に応じて、小さな隙間G1に耐火性コーキング材87又はバックアップ材88が充填されるに過ぎないため、耐火性コーキング材87及びバックアップ材88を5mm程度の厚みとして、その使用量を極力抑制することで、耐火対策の工期を短縮させるとともに低コストに耐火構造を提供することが可能となる。
【0129】
本発明を適用したセグメント1は、一方のセグメント1における耐火被覆材8と、他方のセグメント1における耐火被覆材8との間に、5mm以上、13mm以下の隙間G1を形成するだけの簡単な構成で、軸方向X及び周方向Yで連結される複数のセグメント1の十分な耐火性を確保しながら、耐火被覆材8同士の接触による破損を防止することが可能となる。そして、本発明を適用したセグメント1は、耐火性コーキング材87又はバックアップ材88が隙間G1に充填されることで、複数のセグメント1の耐火性を向上させることが可能となり、耐火性コーキング材87又はバックアップ材88として、高価な材料と安価な材料とを選択的に使用することで、経済的な耐火構造とすることが可能となる。
【0130】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、上述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならない。