特許第6780504号(P6780504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6780504固体撮像装置、赤外線吸収性組成物及び平坦化膜形成用硬化性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6780504
(24)【登録日】2020年10月19日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】固体撮像装置、赤外線吸収性組成物及び平坦化膜形成用硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20201026BHJP
【FI】
   H01L27/146 D
【請求項の数】26
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2016-570677(P2016-570677)
(86)(22)【出願日】2016年1月20日
(86)【国際出願番号】JP2016051560
(87)【国際公開番号】WO2016117596
(87)【国際公開日】20160728
【審査請求日】2018年7月30日
(31)【優先権主張番号】特願2015-9475(P2015-9475)
(32)【優先日】2015年1月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】畠山 耕治
(72)【発明者】
【氏名】高見 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 遵生子
【審査官】 上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−080926(JP,A)
【文献】 特開2014−199925(JP,A)
【文献】 特開2008−005213(JP,A)
【文献】 特開2014−207493(JP,A)
【文献】 特開2014−152194(JP,A)
【文献】 特開2014−130343(JP,A)
【文献】 特開2006−282480(JP,A)
【文献】 特開平06−217079(JP,A)
【文献】 特開平06−204444(JP,A)
【文献】 特開2014−103657(JP,A)
【文献】 特開2012−209913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H04N 5/369,9/07
G02B 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の受光素子の受光面上に、可視光線波長領域に透過帯域を有するカラーフィルタ層が設けられた第1の画素と、
第2の受光素子の受光面上に、赤外線波長領域に透過帯域を有する赤外線パスフィルタ層が設けられた第2の画素と、
前記カラーフィルタ層と重なる位置に設けられた、赤外線波長領域の光を遮断して可視光線波長領域の光を透過させる赤外線カットフィルタ層と、
前記カラーフィルタ層と前記赤外線カットフィルタ層との間に設けられ、前記カラーフィルタ層及び前記赤外線カットフィルタ層に接する硬化膜と、を含み、
前記赤外線カットフィルタ層は、赤外線吸収剤を含み、
前記赤外線吸収剤は、タングステン化合物であることを特徴とする固体撮像装置。
【請求項2】
前記赤外線カットフィルタ層は、前記カラーフィルタ層の上面側に設けられ、
前記硬化膜は、前記赤外線カットフィルタ層の下面に接して設けられる、請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記赤外線カットフィルタ層の上面に接して、さらに第2の硬化膜が設けられる、請求項2に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記赤外線カットフィルタ層は、前記カラーフィルタ層の下面側に設けられ、
前記硬化膜は、前記赤外線カットフィルタ層の上面に接して設けられる、請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記赤外線パスフィルタ層の上面は、前記赤外線カットフィルタ層の上面と高さが略一致する、請求項2又は3に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
前記赤外線パスフィルタ層の下面は、前記赤外線カットフィルタ層の下面と高さが略一致する、請求項4に記載の固体撮像装置。
【請求項7】
前記赤外線カットフィルタ層は、波長600〜2000nmの範囲内に極大吸収波長を有する赤外線吸収剤を含み、且つ膜厚が0.1〜15μmである、請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項8】
前記赤外線カットフィルタ層は、前記赤外線吸収剤の割合が、全固形分質量に対して0.1〜80質量%である、請求項7に記載の固体撮像装置。
【請求項9】
前記赤外線カットフィルタ層は、さらに、バインダー樹脂及び重合性化合物から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項10】
前記バインダー樹脂が、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂およびポリシロキサンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項9に記載の固体撮像装置。
【請求項11】
前記タングステン化合物は、セシウム酸化タングステンである請求項1乃至10のいずれか一項に記載の固体撮像装置。
【請求項12】
前記硬化膜が、有機膜である、請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項13】
前記有機膜が、平坦化膜形成用硬化性組成物を用いて得られる平坦化膜である、請求項12に記載の固体撮像装置。
【請求項14】
前記赤外線カットフィルタ層及び前記赤外線パスフィルタ層の上面に、波長430〜580nmの範囲における平均透過率が75%以上、波長720〜750nmの範囲における平均透過率が15%以下、波長810〜820nmに範囲における平均透過率が60%以上、および波長900〜2000nmの範囲における平均透過率が15%以下である光学フィルタ層をさらに有する、請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項15】
前記カラーフィルタ層の下面に、有機膜が設けられている、請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項16】
前記赤外線カットフィルタ層の下面に、有機膜が設けられている、請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項17】
前記カラーフィルタ層が、赤色の波長帯域を透過するカラーフィルタ層、緑色の波長帯域を透過するカラーフィルタ層及び青色の波長帯域を透過するカラーフィルタ層から選ばれた一つである、請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項18】
第1の受光素子の受光面上に、可視光線波長領域に透過帯域を有するカラーフィルタ層が設けられた第1の画素と、
第2の受光素子の受光面上に、赤外線波長領域に透過帯域を有する赤外線パスフィルタ層が設けられた第2の画素と、
前記カラーフィルタ層の下面に接して設けられた、赤外線波長領域の光を遮断して可視光線波長領域の光を透過させる赤外線カットフィルタ層と、
前記赤外線カットフィルタ層の下面に接して設けられた有機膜と、を含み、
前記赤外線カットフィルタ層は、赤外線吸収剤を含み、
前記赤外線吸収剤は、タングステン化合物であることを特徴とする固体撮像装置。
【請求項19】
前記赤外線パスフィルタ層の上面は、前記カラーフィルタ層の上面と高さが略一致する、請求項18に記載の固体撮像装置。
【請求項20】
前記赤外線カットフィルタ層は、波長600〜2000nmの範囲内に極大吸収波長を有する赤外線吸収剤を含み、且つ膜厚が0.1〜15μmである、請求項18に記載の固体撮像装置。
【請求項21】
前記赤外線カットフィルタ層は、前記赤外線吸収剤の割合が、全固形分質量に対して0.1〜80質量%である、請求項20に記載の固体撮像装置。
【請求項22】
前記赤外線カットフィルタ層は、さらに、バインダー樹脂及び重合性化合物から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項18に記載の固体撮像装置。
【請求項23】
前記バインダー樹脂が、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂およびポリシロキサンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項22に記載の固体撮像装置。
【請求項24】
前記タングステン化合物は、セシウム酸化タングステンである請求項18乃至23のいずれか一項に記載の固体撮像装置。
【請求項25】
前記赤外線カットフィルタ層及び前記赤外線パスフィルタ層の上面に、波長430〜580nmの範囲における平均透過率が75%以上、波長720〜750nmの範囲における平均透過率が15%以下、波長810〜820nmに範囲における平均透過率が60%以上、および波長900〜2000nmの範囲における平均透過率が15%以下である光学フィルタ層をさらに有する、請求項18に記載の固体撮像装置。
【請求項26】
前記カラーフィルタ層が、赤色の波長帯域を透過するカラーフィルタ層、緑色の波長帯域を透過するカラーフィルタ層及び青色の波長帯域を透過するカラーフィルタ層から選ばれた一つである、請求項18に記載の固体撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置、固体撮像装置に用いることのできる赤外線吸収性組成物及び平坦化膜形成用硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ等の撮像機器に使用される固体撮像装置は、画素ごとに可視光を検出する受光素子(可視光検出用センサ)を備え、外界から入射した可視光に応じて電気信号を発生し、その電気信号を処理して撮像画像を形成するものである。固体撮像装置の受光部の構成は、半導体基板を用いて形成されたCMOSイメージセンサやCCDイメージセンサなどが知られている。
【0003】
固体撮像装置は、受光素子に入射する可視光の強さを正確に検出するため、ノイズ成分となる可視光以外の光を遮蔽することも行われている。例えば、入射光が受光素子に到達する前に、赤外線カットフィルタを用いて赤外光成分を遮蔽する技術がある。この場合、ほぼ可視光域の光のみが受光素子に到達するため、ノイズ成分の比較的少ないセンシング動作が可能となる。
【0004】
一方で、近赤外線を利用したモーションキャプチャや距離認識(空間認識)などのセンシング機能を固体撮像装置に付与するニーズが高まっている。それを実現するために、TOF(Time Of Flight)方式を採用した距離画像センサを、固体撮像装置に組み込むことが試みられている。
【0005】
TOF方式とは、光源から出力された照射光が撮像対象物で反射し、その反射光が受光部で検知されるまでの時間を測定することにより、光源から撮像対象物までの距離を測定する技術である。測距は光の位相差を用いている。つまり、撮像対象物までの距離に応じて反射光に位相差が生じるため、TOF方式では、その位相差を時間差に変換し、その時間差と光の速度とに基づいて、画素ごとに撮像対象物までの距離を計測している。
【0006】
このようなTOF方式を用いた固体撮像装置は、画素ごとに可視光の強さと近赤外線の強さとを検出する必要があるため、各画素に可視光検出用の受光素子と近赤外線検出用の受光素子とを備える必要がある。例えば、可視光検出用の受光素子と近赤外線検出用の受光素子を各画素に設けた例として、特許文献1に記載された技術が知られている。
【0007】
特許文献1には、2バンドパスフィルタと赤外線パスフィルタを含む光学フィルタアレイと、RGB画素アレイとTOF画素アレイとを含む画素アレイとを組み合わせた固体撮像装置が開示されている。特許文献1に記載された技術では、2バンドパスフィルタによって可視光と赤外光を選択的に通過させ、TOF画素アレイ上にのみ赤外線パスフィルタを設けて赤外線を通過させる。これにより、RGB画素アレイには可視光及び赤外線が入射され、TOF画素アレイには赤外線が入射されるため、それぞれの画素アレイで必要な光線を検出することができる。
【0008】
TOF方式を用いた固体撮像装置では、可視光を検出するRGB画素アレイに赤外光を検出する画素アレイが付加されることにより、赤外線カットフィルタの性能や製造容易性が重要となる。赤外線カットフィルタの例として、特許文献2には、赤外線吸収剤として金属酸化物及びジインモニウム色素を用い、赤外線吸収性液状組成物をスピン塗布する技術が開示されている。また、特許文献3には、赤外線吸収性組成物として金属酸化物と色素を含有する赤外線カットフィルタが開示されている。さらに、特許文献4には、波長600〜850nmの範囲内に極大吸収波長を有する色素を含有し塗布法により形成可能な硬化性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014−103657号公報
【特許文献2】特開2013−137337号公報
【特許文献3】特開2013−151675号公報
【特許文献4】特開2014−130343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、スマートフォンやタブレット端末等の携帯型情報機器に撮像機能が付加されているように、固体撮像装置は多くの電子機器で使用されている。そして、用途の拡大に伴って、固体撮像装置は薄型化が求められている。
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示される固体撮像装置は、RGB画素アレイ及びTOF画素アレイの上面にマイクロレンズアレイが設けられ、別途2バンドパスフィルタ、可視光パスフィルタ及び赤外線パスフィルタ等が追加されている。すなわち、画素アレイに加え、光学フィルタが別部品で設けられているため固体撮像装置の薄型化が図られていない。
【0012】
固体撮像装置の小型化を図るためには、画素アレイの上面に光学フィルタを直接的に積層させることが考えられる。その場合、特定の光学フィルタを形成する層を、他の光学フィルタを形成する層と直接、または間に他の中間層を挟んで積層する必要がある。また、固体撮像装置の薄型化を図るためには、光学フィルタを薄膜化する必要がある。しかし、特許文献2乃至4に開示される光学フィルタを形成するための組成物および光学フィルタ層は、積層界面の密着性や、薄膜化については何ら考慮されていない。
【0013】
本発明の一実施形態は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、固体撮像装置の小型化又は薄型化を図ることを目的の一つとする。
【0014】
本発明の一実施形態は、赤外線カットフィルタの薄膜化を図ること、さらにそれを可能とする組成物を提供することを目的の一つとする。
【0015】
本発明の一実施形態は、赤外線カットフィルタ層と硬化膜の密着性の向上を図ることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一実施形態によれば、第1の受光素子の受光面上に可視光線波長領域に透過帯域を有するカラーフィルタ層が設けられた第1の画素と、第2の受光素子の受光面上に赤外線波長領域に透過帯域を有する赤外線パスフィルタ層が設けられた第2の画素と、カラーフィルタ層と重なる位置に設けられた赤外線波長領域の光を遮断して可視光線波長領域の光を透過させる赤外線カットフィルタ層と、赤外線カットフィルタ層に接して設けられた硬化膜とを含む固体撮像装置が提供される。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、第1の受光素子の受光面上に可視光線波長領域に透過帯域を有するカラーフィルタ層が設けられた第1の画素と、第2の受光素子の受光面上に赤外線波長領域に透過帯域を有する赤外線パスフィルタ層が設けられた第2の画素と、カラーフィルタ層の下面に接して設けられた赤外線波長領域の光を遮断して可視光線波長領域の光を透過させる赤外線カットフィルタ層と、赤外線カットフィルタ層の下面に接して設けられた有機膜とを含む固体撮像装置が提供される。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、波長600〜2000nmの範囲内に極大吸収波長を有する化合物と、バインダー樹脂及び重合性化合物から選ばれる少なくとも1種とを含む固体撮像装置の赤外線カットフィルタ層の形成に用いられる赤外線吸収性組成物が提供される。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、硬化性化合物及び溶媒を含む、固体撮像装置の平坦化膜の形成に用いられる平坦化膜形成用硬化性組成物が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、赤外線カットフィルタを薄くし、それに接する硬化膜との密着性を向上させたことにより、固体撮像装置の薄型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る固体撮像装置の一例を示す概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る固体撮像装置の画素部の構成を示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る固体撮像装置の画素部の構成を示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る固体撮像装置の画素部の構成を示す断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る固体撮像装置の画素部の構成を示す断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る固体撮像装置の画素部の構成を示す断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る固体撮像装置の画素部の構成を示す断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る固体撮像装置の画素部の構成を示す断面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る固体撮像装置の画素部の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0023】
本明細書において、ある部材又は領域が他の部材又は領域の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限りこれは他の部材又は領域の直上(又は直下)にある場合のみでなく他の部材又は領域の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の部材又は領域の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
【0024】
1.第1の実施形態
1−1.固体撮像装置の構造
図1は、本実施形態に係る固体撮像装置100の一例を示す概略構成図である。図1に示すように、固体撮像装置100は、画素部102、垂直選択回路104、水平選択回路106、サンプルホールド回路108、増幅回路110、A/D変換回路112、タイミング発生回路114等を含んで構成される。画素部102及び画素部102に付随して設けられる各種機能回路は同一の基板(半導体チップ)に設けられていてもよい。画素部102は、CMOS型イメージセンサ又はCCD型イメージセンサの構成を有していてもよい。
【0025】
画素部102は、複数の画素が行方向及び列方向に配列され、例えば行方向にアドレス線が、列方向に信号線が配設された構成を有している。垂直選択回路104はアドレス線に信号を与え、画素を行単位で順に選択し、選択した行の各画素から検出信号を信号線に出力してサンプルホールド回路108から読み出す。水平選択回路106は、サンプルホールド回路108に保持されている検出信号を順に取り出し、増幅回路110に出力する。増幅回路110は、検出信号を適当なゲインで増幅し、A/D変換回路112に出力する。A/D変換回路112は、アナログ信号である検出信号をデジタル信号に変換し出力する。タイミング発生回路114は、垂直選択回路104、水平選択回路106及びサンプルホールド回路108の動作タイミングを制御する。
【0026】
なお、図1では、画素部102に対し上段の水平選択回路106a及びサンプルホールド回路108aが垂直選択回路104aと同期し、下段の水平選択回路106b及びサンプルホールド回路108bが垂直選択回路104bと同期する構成を示す。しかし、これは例示にすぎず、本発明に係る固体撮像装置は、一組の垂直選択回路、水平選択回路及びサンプルホールド回路によって駆動される構成を有していてもよい。また、画素部102を駆動する回路構成は、他の構成を有していてもよい。
【0027】
図1で示す拡大部116は、画素部102の一部を拡大して示す。画素部102には、上述のように画素117が行方向及び列方向に配列している。図2は、拡大部116において示される画素部102aのA−B線に沿った断面構造を示す。
【0028】
図2は、画素部102aに可視光検出用画素118と赤外光検出用画素120が含まれることを示している。可視光検出用画素118は第1の画素122a〜122cを含み、赤外光検出用画素120は第2の画素124を含んでいる。画素部102aは基板126側から、半導体層128、配線層130、光学フィルタ層132、マイクロレンズアレイ134が積層された構成を有している。
【0029】
基板126としては半導体基板が用いられる。半導体基板としては、例えば、シリコン基板や、絶縁層上にシリコン層が設けられた基板(SOI基板)等が用いられる。半導体層128は、このような基板126の半導体領域に設けられる。例えば、基板126がシリコン基板である場合、当該シリコン基板の上層部に半導体層128が含まれる。半導体層128には、各画素に対応してフォトダイオード136a〜136dが設けられる。
【0030】
本明細書では、フォトダイオード136a〜136cを「第1の受光素子」、フォトダイオード136dを「第2の受光素子」とも呼ぶ。なお、第1の受光素子及び第2の受光素子はフォトダイオードに限定されず、光起電力効果により電流や電圧を発生させる機能を有する素子であれば、他の素子で代用することもできる。また、半導体層128にはフォトダイオード136a〜136dのそれぞれから検出信号を取得するための回路が、トランジスタ等の能動素子を用いて形成されている。
【0031】
配線層130は、アドレス線及び信号線等、画素部102aに設けられる配線を含む層である。配線層130は、複数の配線が層間絶縁膜によって分離され、多層化されていてもよい。通常の場合において、アドレス線と信号線は、行方向と列方向に延びて交差するので、層間絶縁膜を挟んで異なる層に設けられている。
【0032】
光学フィルタ層132は、光学的特性が異なる複数の層を含んで構成されている。本実施形態では、配線層130上に、フォトダイオード136a〜136cに重ねて可視光線波長領域の透過帯域を有するカラーフィルタ層138a〜138cが設けられ、フォトダイオード136dに重ねて赤外線パスフィルタ層140が設けられている。
【0033】
可視光線波長領域の光を透過するカラーフィルタ層138a〜138cが設けられる領域の上面には、赤外線波長領域の光を遮断して可視光線波長領域の光を透過する赤外線カットフィルタ層142が重ねて配置されている。別言すれば、赤外線カットフィルタ層142は、カラーフィルタ層138a〜138cが設けられる領域の上面に設けられ、赤外線パスフィルタ層140が設けられる領域の上面には設けられていない。すなわち、赤外線カットフィルタ層142は、フォトダイオード136dが設けられる領域上に開口部を有している。
【0034】
図2で示すように、カラーフィルタ層138a〜138cと、赤外線カットフィルタ層142との間には第1の硬化膜144aが設けられている。第1の硬化膜144aを設けることで、カラーフィルタ層138a〜138cの表面凹凸を緩和して、平坦な表面上に赤外線カットフィルタ層142を設けることができる。それにより、赤外線カットフィルタ層142の薄膜化を図ることが可能となる。
【0035】
赤外線カットフィルタ層142の上面には、さらに第2の硬化膜144bが設けられている。赤外線カットフィルタ層142は、フォトダイオード136a〜136cの受光面上に設けられ、フォトダイオード136dの受光面上には設けられていない。そのため、赤外線カットフィルタ層142による段差部が出来てしまう。しかし、第2の硬化膜144bを設けることで、この段差部を埋め、マイクロレンズアレイ134下地面を平坦にすることができる。
【0036】
マイクロレンズアレイ134は光学フィルタ層132の上面に設けられている。マイクロレンズアレイ134は、個々のマイクロレンズの位置が各画素の位置に対応しており、各マイクロレンズで集光された入射光が、それぞれ対応する各画素(具体的には、各フォトダイオード)に受光される。マイクロレンズアレイ134は、樹脂材料を用いて形成することができるため、オンチップで形成することが可能である。例えば、第2の硬化膜144bの上に塗布した樹脂材料を加工してマイクロレンズアレイ134を形成することができる。
【0037】
本実施形態に係る固体撮像装置100は、基板126上に半導体層128、配線層130、光学フィルタ層132及びマイクロレンズアレイ134が積層されることにより、撮像可能な構成を備えている。以下において、光学フィルタ層132の詳細を説明する。
【0038】
1−2.カラーフィルタ層
カラーフィルタ層138a〜138cは、それぞれ異なる波長帯域の可視光線を透過するパスフィルタである。例えば、カラーフィルタ層138aは赤色光(概ね波長610〜780nm)の波長帯域の光を透過し、カラーフィルタ層138bは緑色光(概ね波長500〜570nm)の波長帯域の光を透過し、カラーフィルタ層138cは青色光(概ね波長430〜460nm)の波長帯域の光を透過することができるパスフィルタによって、それぞれを構成することができる。フォトダイオード136a〜136cには、それぞれカラーフィルタ層138a〜138cの透過光が入射される。したがって、それぞれの画素(第1の画素)は、赤色光検出用の第1の画素122a、緑色光検出用の第1の画素122b、青色光検出用の第1の画素122cと区別することもできる。
【0039】
カラーフィルタ層138a〜138cは、バインダー樹脂及び硬化剤等の樹脂材料に、特定の波長帯域に吸収を有する色素(顔料や染料)を加えて形成することができる。樹脂材料に含有させる色素は一種類又は複数種類を組み合わせて用いることができる。
【0040】
フォトダイオード136a〜136cがシリコンフォトダイオードであれば、可視光線波長領域から赤外線波長領域の広い範囲にわたって感度を有する。そのため、フォトダイオード136a〜136cに対応してカラーフィルタ層138a〜138cを設けることで、各色に対応した第1の画素122a〜122cを画素部102aに設けることができる。
【0041】
1−3.赤外線パスフィルタ層
赤外線パスフィルタ層140は、少なくとも近赤外線波長領域の光を透過するパスフィルタである。赤外線パスフィルタ層140は、バインダー樹脂や重合性化合物等に、可視光線波長領域の波長に吸収を有する色素(顔料や染料)を加えて形成することができる。赤外線パスフィルタ層140は、概略700nm未満、好ましくは750nm未満、より好ましくは800nm未満の光を吸収(カット)し、波長700nm以上、好ましくは750nm以上、より好ましくは800nm以上の光を透過する分光透過特性を有している。
【0042】
赤外線パスフィルタ層140は、上記したような所定波長未満(例えば、波長750nm未満)の光を遮断し、所定波長領域(例えば、750〜950nm)の近赤外線を透過することで、フォトダイオード136dに近赤外線が入射されるようにすることができる。これにより、フォトダイオード136dは、可視光に起因するノイズ等の影響を受けずに、精度良く赤外線を検出することができる。このように、赤外線パスフィルタ層140を設けることで、第2の画素124を赤外光検出用画素120として用いることができる。赤外線パスフィルタ層140は、例えば、特開2014−130332号公報に記載の感光性組成物を用いて形成することができる。
【0043】
1−4.赤外線カットフィルタ層
赤外線カットフィルタ層142は、可視光線波長領域の光を透過し、赤外線波長領域の光を遮断するパスフィルタである。赤外線カットフィルタ層142は、波長600〜2000nmの範囲内に極大吸収波長を有する化合物(以下、「赤外線吸収剤」とも称する。)を含むことが好ましく、例えば、赤外線吸収剤と、バインダー樹脂及び重合性化合物から選ばれる少なくとも1種とを含む赤外線吸収性組成物を用いて形成することができる。
【0044】
1−4−1.赤外線吸収剤
赤外線吸収剤としては、例えば、ジイミニウム系化合物、スクアリリウム系化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、クアテリレン系化合物、アミニウム系化合物、イミニウム系化合物、アゾ系化合物、アントラキノン系化合物、ポルフィリン系化合物、ピロロピロール系化合物、オキソノール系化合物、クロコニウム系化合物、ヘキサフィリン系化合物、金属ジチオール系化合物、銅化合物、タングステン化合物、金属ホウ化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることができる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
赤外線吸収剤として用いることのできる化合物を以下に例示する。
【0046】
ジイミニウム(ジインモニウム)系化合物の具体例としては、例えば、特開平1−113482号公報、特開平10−180922号公報、国際公開第2003/5076号、国際公開第2004/48480号、国際公開第2005/44782号、国際公開第2006/120888号、特開2007−246464号公報、国際公開第2007/148595号、特開2011−038007号公報、国際公開第2011/118171号の段落[0118]等に記載の化合物等が挙げられる。市販品としては、例えば、EPOLIGHT1178等のEPOLIGHTシリーズ(Epolin社製)、CIR−1085等のCIR−108Xシリーズ及びCIR−96Xシリーズ(日本カーリット社製)、IRG022、IRG023、PDC−220(日本化薬社製)等を挙げることができる。
【0047】
スクアリリウム系化合物の具体例としては、例えば、特許第3094037号明細書、特開昭60−228448号公報、特開平1−146846号明細書、特開平1−228960号公報、特開2012−215806号公報の段落[0178]等に記載の合物が挙げられる。
【0048】
シアニン系化合物の具体例としては、例えば、特開2007−271745号公報の段落[0041]〜[0042]、特開2007−334325号公報の段落[0016]〜[0018]、特開2009−108267号公報、特開2009−185161号公報、特開2009−191213号公報、特開2012−215806号公報の段落[0160]、特開2013−155353号公報の段落[0047]〜[0049]等に記載の化合物が挙げられる。市販品としては、例えば、Daito chmix 1371F(ダイトーケミックス社製)、NK−3212、NK−5060等のNKシリーズ(林原生物化学研究所製)等を挙げることができる。
【0049】
フタロシアニン系化合物の具体例としては、例えば、特開昭60−224589号公報、特表2005−537319号公報、特開平4−23868号公報、特開平4−39361号公報、特開平5−78364号公報、特開平5−222047号公報、特開平5−222301号公報、特開平5−222302号公報、特開平5−345861号公報、特開平6−25548号公報、特開平6−107663号公報、特開平6−192584号公報、特開平6−228533号公報、特開平7−118551号公報、特開平7−118552号公報、特開平8−120186号公報、特開平8−225751号公報、特開平9−202860号公報、特開平10−120927号公報、特開平10−182995号公報、特開平11−35838号公報、特開2000−26748号公報、特開2000−63691号公報、特開2001−106689号公報、特開2004−18561号公報、特開2005−220060号公報、特開2007−169343号公報、特開2013−195480号公報の段落[0026]〜[0027]等に記載の化合物等が挙げられる。市販品としては、例えば、FB−22、24等のFBシリーズ(山田化学工業社製)、Excolorシリーズ、Excolor TX−EX 720、同708K(日本触媒製)、Lumogen IR788(BASF製)、ABS643、ABS654、ABS667、ABS670T、IRA693N、IRA735(Exciton製)、SDA3598、SDA6075、SDA8030、SDA8303、SDA8470、SDA3039、SDA3040、SDA3922、SDA7257(H.W.SANDS製)、TAP−15、IR−706(山田化学工業製)等を挙げることができる。
【0050】
ナフタロシアニン系化合物の具体例としては、例えば、特開平11−152413号公報、特開平11−152414号公報、特開平11−152415号公報、特開2009−215542号公報の段落[0046]〜[0049]等に記載の化合物が挙げられる。
【0051】
クアテリレン系化合物の具体例としては、例えば、特開2008−009206号公報の段落[0021]等に記載の化合物等が挙げられる。市販品としては、例えば、Lumogen IR765(BASF社製)等を挙げることができる。
【0052】
アミニウム系化合物の具体例としては、例えば、特開平08−027371号公報の段落[0018]、特開2007−039343号公報等に記載の化合物が挙げられる。市販品としては、例えばIRG002、IRG003(日本化薬社製)等を挙げることができる。
【0053】
イミニウム系化合物の具体例としては、例えば、国際公開第2011/118171号の段落[0116]等に記載の化合物が挙げられる。
【0054】
アゾ系化合物の具体例としては、例えば、特開2012−215806号公報の段落[0114]〜[0117]等に記載の化合物が挙げられる。
【0055】
アントラキノン系化合物の具体例としては、例えば、特開2012−215806号公報の段落[0128]及び[0129]等に記載の化合物が挙げられる。
【0056】
ポルフィリン系化合物の具体例としては、例えば、特許第3834479号明細書の式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0057】
ピロロピロール系化合物の具体例としては、例えば、特開2011−068731号公報、特開2014−130343号公報の段落[0014]〜[0027]等に記載の化合物が挙げられる。
【0058】
オキソノール系化合物の具体例としては、例えば、特開2007−271745号公報の段落[0046]等に記載の化合物が挙げられる。
【0059】
クロコニウム系化合物の具体例としては、例えば、特開2007−271745号公報の段落[0049]、特開2007−31644号公報、特開2007−169315号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0060】
ヘキサフィリン系化合物の具体例としては、例えば、国際公開第2002/016144号パンフレットの式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0061】
金属ジチオール系化合物の具体例としては、例えば、特開平1−114801号公報、特開昭64−74272号公報、特開昭62−39682号公報、特開昭61−80106号公報、特開昭61−42585号公報、特開昭61−32003号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0062】
銅化合物としては銅錯体が好ましく、具体例としては、例えば、特開2013−253224号公報、特開2014−032380号公報、特開2014−026070号公報、特開2014−026178号公報、特開2014−139616号公報、特開2014−139617号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0063】
タングステン化合物としては酸化タングステン化合物が好ましく、セシウム酸化タングステン、ルビジルム酸化タングステンがより好ましく、セシウム酸化タングステンが更に好ましい。セシウム酸化タングステンの組成式としてはCs0.33WO等が挙げられ、またルビジルム酸化タングステンの組成式としてはRb0.33WO等を挙げることができる。酸化タングステン系化合物は、例えば、住友金属鉱山株式会社製のYMF−02A等のタングステン微粒子の分散物としても、入手可能である。
【0064】
金属ホウ化物の具体例としては、例えば、特開2012−068418号公報の段落[0049]等に記載の化合物が挙げられる。その中でも、ホウ化ランタンが好ましい。
【0065】
なお、上記した赤外線吸収剤が、後掲の有機溶媒に可溶である場合には、それをレーキ化して有機溶媒に不溶な赤外線吸収剤として用いることもできる。レーキ化する方法は公知の方法を採用することが可能であり、例えば、特開2007−271745号公報等を参照することができる。
【0066】
このような赤外線吸収剤の中でも、ジイミニウム系化合物、スクアリリウム系化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、クアテリレン系化合物、アミニウム系化合物、イミニウム系化合物、ピロロピロール系化合物、クロコニウム系化合物、金属ジチオール系化合物、銅化合物及びタングステン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。更に好ましくは、ジイミニウム系化合物、スクアリリウム系化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、クアテリレン系化合物、アミニウム系化合物、イミニウム系化合物、ピロロピロール系化合物、クロコニウム系化合物、金属ジチオール系化合物及び銅化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種とタングステン化合物とを含むか、ジイミニウム系化合物、スクアリリウム系化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、クアテリレン系化合物、アミニウム系化合物、イミニウム系化合物、ピロロピロール系化合物、クロコニウム系化合物、金属ジチオール系化合物及び銅化合物よりなる群から選ばれる2種以上を含むことが好ましい。このような態様により、受光素子に入射する赤外線をより効率的に遮断することができる。
【0067】
ところで、赤外線カットフィルタ層142は、赤外線吸収剤の種類及び含有割合が一定であれば、膜厚を増加させるほど赤外線の吸収特性を向上させることができる。それによって、固体撮像装置はより高いS/N比を得ることができ、高感度の撮像を行うことが可能となる。しかし、赤外線カットフィルタ層142の膜厚を増加させると、固体撮像装置100の薄膜化を図ることができないという問題がある。固体撮像装置の薄型化を図るため、赤外線カットフィルタ層142を薄膜化すると、赤外線遮断能力が低下してしまい可視光検出用画素が赤外線によるノイズの影響を受けやすくなってしまうという問題がある。
【0068】
一方、赤外線吸収剤の含有割合を増加させると、例えば、赤外線カットフィルタ層を形成する他の成分の一つである重合性化合物の割合が減ってしまい、赤外線カットフィルタ層142の硬度が低下してしまう。そうすると光学フィルタ層132が脆くなってしまい、赤外線カットフィルタ層142と接する層の剥離や、クラックが発生する原因となる。例えば、赤外線カットフィルタ層142と接する第1の硬化膜144a及び第2の硬化膜144bとの密着性が低下し、剥離しやすくなることが問題となる。
【0069】
上記から選択される赤外線吸収剤の割合は、赤外線カットフィルタ層142中に0.1〜80質量%の割合であることが好ましく、より好ましくは1〜70質量%、更に好ましくは3〜60質量%であることが好ましい。このような範囲で化合物を含ませることにより、赤外線カットフィルタ層142の膜厚を薄くしても、十分に赤外線を吸収することができる赤外線カットフィルタ層142を作製することができる。
【0070】
なお、赤外線吸収性組成物を用いて赤外線カットフィルタを作製する場合の、赤外線吸収性組成物の全固形分質量に対する赤外線吸収剤の好ましい含有割合は、赤外線カットフィルタ層142中の赤外線吸収剤の割合と同様である。この場合の固形分とは、赤外線吸収性組成物を構成する、溶媒以外の成分である。
【0071】
以下、本発明に係る赤外線カットフィルタ層142の作製に好適に用いることのできる赤外線吸収性組成物を構成する、他の成分について説明する。
【0072】
1−4−2.バインダー樹脂
赤外線吸収性組成物は、バインダー樹脂を含有することが好ましい。バインダー樹脂としては特に限定されるものではないが、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリシロキサンよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0073】
まず、アクリル樹脂について説明する。アクリル樹脂の中でも、カルボキシル基、フェノール性水酸基等の酸性官能基を有するアクリル樹脂が好ましい。酸性官能基を有するアクリル樹脂を用いることにより、赤外線吸収性組成物から得られる赤外線カットフィルタ層を所定のパターンに形成すべく露光を行った場合、未露光部をアルカリ現像液でより確実に除去することができ、アルカリ現像によってより優れたパターンを形成できる。酸性官能基を有するアクリル樹脂としては、カルボキシル基を有する重合体(以下、「カルボキシル基含有重合体」とも称する。)が好ましく、例えば、1個以上のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(以下、「不飽和単量体(1)」とも称する。)と他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体(以下、「不飽和単量体(2)」とも称する。)との共重合体を挙げることができる。
【0074】
上記不飽和単量体(1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、こはく酸モノ〔2−(メタ)アクリロイロキシエチル〕、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、p−ビニル安息香酸等を挙げることができる。これらの不飽和単量体(1)は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0075】
また、上記不飽和単量体(2)としては、例えば、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−位置換マレイミド、スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、アセナフチレン等の芳香族ビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ビニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の不飽和アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等のアリール(メタ)アクリレート;ポリエチレングルコール(重合度2〜10)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングルコール(重合度2〜10)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重合度2〜10)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(重合度2〜10)モノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;4−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールのエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート等のアリールアルコールの(メタ)アクリル酸エステル;シクロヘキシルビニルエーテル、イソボルニルビニルエーテル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルビニルエーテル、ペンタシクロペンタデカニルビニルエーテル、3−(ビニルオキシメチル)−3−エチルオキセタン等のビニルエーテル;ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ−n−ブチル(メタ)アクリレート、ポリシロキサン等の重合体分子鎖の末端にモノ(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー;1,3−ブタジエン等の共役ジエン化合物等を挙げることができる。
【0076】
また、上記不飽和単量体(2)として、含酸素飽和複素環基を有する(メタ)アクリル酸エステルを使用することもできる。ここで、「含酸素飽和複素環基」とは、ヘテロ環を構成するヘテロ原子として酸素原子を有する飽和複素環基を意味し、環を構成する原子数が3〜7個の環状エーテル基が好ましい。環状エーテル基としては、オキシラニル基、オキセタニル基、テトラヒドロフラニル基等を挙げられる。その中でも、オキシラニル基、オキセタニル基が好ましく、オキシラニル基がより好ましい。
【0077】
含酸素飽和複素環基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のオキシラニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;3−〔(メタ)アクリロイルオキシメチル〕オキセタン、3−〔(メタ)アクリロイルオキシメチル〕−3−エチルオキセタン等のオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;テトラヒドロフルフリルメタクリレート等のテトラヒドロフラニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。
【0078】
更に、上記不飽和単量体(2)として、ブロックイソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸エステルを使用することもできる。ブロックイソシアネート基は、加熱によりブロック基が脱離し、反応性に富む活性なイソシアネート基に変換される。これにより、架橋構造を形成することができる。ブロックイソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、特開2012−118279号公報の段落[0024]に記載されている化合物を挙げることができるが、その中でも、メタクリル酸2−(3,5−ジメチルピラゾリルカルボニルアミノ)エチル、メタクリル酸2−(1−メチルプロピリデンアミノオキシカルボニルアミノ)エチルが好ましい。
【0079】
これらの不飽和単量体(2)は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0080】
不飽和単量体(1)と不飽和単量体(2)の共重合体において、該共重合体中の不飽和単量体(1)の共重合割合は、好ましくは5〜50質量%、更に好ましくは10〜40質量%である。このような範囲で不飽和単量体(1)を共重合させることにより、アルカリ現像性、保存安定性に優れた赤外線吸収性組成物を得ることができる。
【0081】
不飽和単量体(1)と不飽和単量体(2)の共重合体の具体例としては、例えば、特開平7−140654号公報、特開平8−259876号公報、特開平10−31308号公報、特開平10−300922号公報、特開平11−174224号公報、特開平11−258415号公報、特開2000−56118号公報、特開2004−101728号公報等に開示されている共重合体を挙げることができる。
【0082】
また、例えば、特開平5−19467号公報、特開平6−230212号公報、特開平7−207211号公報、特開平9−325494号公報、特開平11−140144号公報、特開2008−181095号公報等に開示されているように、側鎖に(メタ)アクリロイル基等の重合性不飽和基を有するカルボキシル基含有重合体を、バインダー樹脂として使用することもできる。これにより、硬化膜との密着性に優れる赤外線カットフィルタ層142を形成することができる。
【0083】
側鎖に重合性不飽和基を有するカルボキシル基含有重合体としては、例えば、下記(a)〜(d)の重合体が挙げられる。
(a)不飽和単量体(1)及び水酸基を有する重合性不飽和化合物を含有してなる単量体の共重合体に、不飽和イソシアネート化合物を反応させて得られる重合体、
(b)不飽和単量体(1)を含有してなる単量体の(共)重合体に、オキシラニル基を有する重合性不飽和化合物を反応させて得られる(共)重合体、
(c)オキシラニル基を有する重合性不飽和化合物及び不飽和単量体(1)を含有してなる単量体の共重合体に、不飽和単量体(1)を反応させて得られる重合体、
(d)オキシラニル基を有する重合性不飽和化合物を含有してなる単量体の(共)重合体に、不飽和単量体(1)を反応させ、更に多塩基酸無水物を反応させて得られる(共)重合体。
なお本明細書において「(共)重合体」とは、重合体及び共重合体を包含する用語である。
【0084】
水酸基を有する重合性不飽和化合物としては、前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の、分子内に水酸基及びエチレン性不飽和基を有する化合物を用いることができる。不飽和イソシアネート化合物としては、2−(メタ)アクリロイルオキシフェニルイソシアネートの他、特開2014−098140号公報の段落[0049]に記載の化合物を挙げることができる。オキシラニル基を有する重合性不飽和化合物としては、前記オキシラニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを用いることができる。多塩基酸無水物としては、後述する重合性化合物のところに例示する二塩基酸の無水物、四塩基酸二無水物の他、特開2014−142582号公報の段落[0038]に記載の化合物を挙げることができる。
【0085】
アクリル樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す。)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、通常1,000〜100,000、好ましくは3,000〜50,000、より好ましくは5,000〜30,000である。また、Mwと数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、通常1.0〜5.0、好ましくは1.0〜3.0である。このような態様とすることで、硬化性、密着性に優れる赤外線カットフィルタを形成することができる。なお、ここでいうMw、Mnは、GPC(溶出溶媒:テトラヒドロフラン)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量、数平均分子量をいう。
【0086】
酸性官能基を有するアクリル樹脂の酸価は、硬化膜との密着性の観点から、好ましくは10〜300mgKOH/g、より好ましくは30〜250mgKOH/g、更に好ましくは50〜200mgKOH/gである。このような態様により、接触角が低く、濡れ性に優れる赤外線カットフィルタ層を形成できるので、硬化膜との密着性を高めることができる。ここで、本明細書において「酸価」とは、酸性官能基を有するアクリル樹脂1gを中和するのに必要なKOHのmg数である。
【0087】
アクリル樹脂は、公知の方法により製造することができるが、例えば、特開2003−222717号公報、特開2006−259680号公報、国際公開第2007/029871号パンフレット等に開示されている方法により、その構造やMw、Mw/Mnを制御することもできる。
【0088】
アクリル樹脂の中では、以下の(1−I)〜(1−IV)のいずれかであることが好ましい。
(1−I)1個以上のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体と含酸素飽和複素環基を有する(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、
(1−II)1個以上のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体とブロックイソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、
(1−III)側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するカルボキシル基含有重合体、
(1−IV)1個以上のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体と他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体との共重合体であって、酸価が10〜300mgKOH/gである共重合体。
これら(1−I)〜(1−IV)における好ましい態様は、それぞれ上記した通りである。
【0089】
次に、ポリアミド樹脂およびポリイミド樹脂について説明する。ポリアミド樹脂としては、ポリアミド酸(ポリアミック酸)を挙げることができる。また、ポリイミド樹脂としては、ケイ素含有ポリイミド樹脂、ポリイミドシロキサン樹脂、ポリマレイミド樹脂等が挙げられ、例えば、前駆体としての前記ポリアミック酸を加熱閉環イミド化することによって形成される。ポリアミド樹脂およびポリイミド系樹脂の具体例としては、特開2012−189632号公報の段落[0118]〜[0120]に記載の化合物を挙げることができる。
【0090】
ポリウレタン樹脂は、繰り返し単位としてウレタン結合を有するものであれば特に限定されず、ジイソシアネート化合物とジオール化合物の反応により生成することができる。ジイソシアネート化合物としては、特開2014−189746号公報の段落[0043]に記載の化合物が挙げられる。ジオール化合物としては、例えば、特開2014−189746号公報の段落[0022]に記載の化合物が挙げられる。
【0091】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂を挙げることができ、その中でもビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。好ましいエポキシ樹脂のうち、ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。またノボラック型エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。
このようなエポキシ樹脂は市販品として入手でき、例えば特許5213944号明細書の段落[0121]に記載の市販品が挙げられる。
【0092】
ポリシロキサンは、加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物であることが好ましい。具体的には、下記式(1)で表される加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物を挙げることができる。
【0093】
【化1】
【0094】
なお式(1)において、xは0〜3の整数を示し、RおよびRは、相互に独立に、1価の有機基を示す。
【0095】
およびRにおける1価の有機基としては、置換若しくは非置換の脂肪族炭化水素基、置換若しくは非置換の脂環式炭化水素基、置換若しくは非置換の芳香族炭化水素基を挙げることができる。なお「脂環式炭化水素基」とは、環状構造を有さない炭化水素基を指す。
【0096】
脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基および芳香族炭化水素基における置換基としては、オキシラニル基、オキセタニル基、エピスルフィド基、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルファニル基、イソシアネート基、アミノ基、ウレイド基等を挙げることができる。その中でも、オキシラニル基、(メタ)アクリロイル基及びスルファニル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基が好ましい。
【0097】
このような加水分解性シラン化合物の具体例としては、特開2010−055066号公報の段落[0047]〜[0051]および段落[0060]〜[0069]に記載の化合物を挙げることができる。また、前記置換基を有する加水分解性シラン化合物としては、特開2008−242078号公報の段落[0077]〜[0088]に記載された加水分解性シラン化合物が挙げられる。このほか、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン等の6官能の加水分解性シラン化合物も併用できる。
【0098】
ポリシロキサンは公知の方法により合成することができる。GPCによるMwは、通常500〜20,000、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは1,500〜7,000、更に好ましくは2,000〜5,000である。また、Mw/Mnは、好ましくは1.0〜4.0、より好ましくは1.0〜3.0である。このような態様とすることにより、塗布性に優れるとともに、十分な密着性を発現することができる。
【0099】
本発明の一実施形態において、バインダー樹脂は単独で又は2種以上を混合して使用することができる。その中でも、硬化膜との密着性に優れる赤外線カットフィルタ層を形成する観点から、赤外線吸収性組成物を構成するバインダー樹脂としては、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリシロキサンが好ましく、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂がより好ましく、アクリル樹脂が更に好ましい。
【0100】
本発明の一実施形態において、バインダー樹脂の含有量は、赤外線吸収剤100質量部に対して、通常5〜1,000質量部、好ましくは10〜500質量部、より好ましくは20〜150質量部である。このような態様とすることで、塗布性及び保存安定性に優れる赤外線吸収性組成物を得ることができ、アルカリ現像性を付与した場合には、アルカリ現像性に優れる赤外線吸収性組成物とすることができる。
【0101】
1−4−3.重合性化合物
赤外線吸収性組成物は、重合性化合物(但し、前記バインダー樹脂を除く。)を含有することが好ましい。本明細書において重合性化合物とは、2個以上の重合可能な基を有する化合物をいう。重合性化合物の分子量は、4,000以下、更に2,500以下、更に1,500以下であることが好ましい。重合可能な基としては、例えば、エチレン性不飽和基、オキシラニル基、オキセタニル基、N−ヒドロキシメチルアミノ基、N−アルコキシメチルアミノ基等を挙げることができる。本発明において、重合性化合物としては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、又は2個以上のN−アルコキシメチルアミノ基を有する化合物が好ましい。
【0102】
重合性化合物における好ましい化合物のうち、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の具体例としては、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と(メタ)アクリル酸を反応させて得られる多官能(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性された多官能(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性された多官能(メタ)アクリレート、水酸基を有する(メタ)アクリレートと多官能イソシアネートを反応させて得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート、水酸基を有する(メタ)アクリレートと酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0103】
ここで、脂肪族ポリヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールの如き2価の脂肪族ポリヒドロキシ化合物;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールの如き3価以上の脂肪族ポリヒドロキシ化合物を挙げることができる。上記水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールジメタクリレート等を挙げることができる。上記多官能イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等を挙げることができる。酸無水物としては、例えば、無水こはく酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸の如き二塩基酸の無水物、無水ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物の如き四塩基酸二無水物を挙げることができる。
【0104】
また、カプロラクトン変性された多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、特開平11−44955号公報の段落[0015]〜[0018]に記載されている化合物を挙げることができる。上記アルキレンオキサイド変性された多官能(メタ)アクリレートとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも1種により変性されたビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも1種により変性されたイソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも1種により変性されたトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも1種により変性されたペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも1種により変性されたペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも1種により変性されたジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも1種により変性されたジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0105】
また、2個以上のN−アルコキシメチルアミノ基を有する化合物としては、例えば、メラミン構造、ベンゾグアナミン構造、ウレア構造を有する化合物等を挙げることができる。なお、メラミン構造、ベンゾグアナミン構造とは、1以上のトリアジン環又はフェニル置換トリアジン環を基本骨格として有する化学構造をいい、メラミン、ベンゾグアナミン又はそれらの縮合物をも含む概念である。2個以上のN−アルコキシメチルアミノ基を有する化合物の具体例としては、N,N,N’,N’,N’’,N’’−ヘキサ(アルコキシメチル)メラミン、N,N,N’,N’−テトラ(アルコキシメチル)ベンゾグアナミン、N,N,N’,N’−テトラ(アルコキシメチル)グリコールウリル等を挙げることができる。
【0106】
上記の他、重合性化合物として、エポキシ基を有する脂肪族化合物、エポキシ基を有する脂環式化合物を用いることもできる。エポキシ基を有する脂肪族化合物としては2〜4個のエポキシ基を有する脂肪族化合物が好ましく、具体的には、特開2010−053330号公報の段落[0042]に記載の化合物が挙げられる。エポキシ基を有する脂環式化合物としては2〜4個のエポキシ基を有する脂環式化合物が好ましく、具体的には、特開2010−053330号公報の段落[0043]に記載の化合物が挙げられる。また、ヘキサメチロールメラミン等の2個以上のN−ヒドロキシメチルアミノ基を有する化合物を用いることもできる。
【0107】
これらの重合性化合物のうち、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、2個以上のN−アルコキシメチルアミノ基を有する化合物が好ましく、3価以上の脂肪族ポリヒドロキシ化合物と(メタ)アクリル酸を反応させて得られる多官能(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性された多官能(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性された多官能(メタ)アクリレート、多官能ウレタン(メタ)アクリレート、カルボキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート、N,N,N’,N’,N’’,N’’−ヘキサ(アルコキシメチル)メラミン、N,N,N’,N’−テトラ(アルコキシメチル)ベンゾグアナミンがより好ましく、3価以上の脂肪族ポリヒドロキシ化合物と(メタ)アクリル酸を反応させて得られる多官能(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性された多官能(メタ)アクリレート、多官能ウレタン(メタ)アクリレート、カルボキシル基を有する多官能(メタ)アクリレートが更に好ましい。3価以上の脂肪族ポリヒドロキシ化合物と(メタ)アクリル酸を反応させて得られる多官能(メタ)アクリレートの中では、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが、アルキレンオキサイド変性された多官能(メタ)アクリレートの中では、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも1種により変性されたトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも1種により変性されたペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも1種により変性されたジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも1種により変性されたジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが、カルボキシル基を有する多官能(メタ)アクリレートの中では、ペンタエリスリトールトリアクリレートと無水こはく酸を反応させて得られる化合物、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートと無水こはく酸を反応させて得られる化合物が、赤外線カットフィルタの強度、表面平滑性に優れ、かつ、赤外線吸収性組成物にアルカリ現像性を付与した場合には、未露光部の基板上に地汚れ、膜残り等を発生し難い点で特に好ましい。本発明の一実施形態において、重合性化合物は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0108】
本発明の一実施形態における重合性化合物の含有量は、赤外線吸収剤100質量部に対して、10〜1,000質量部が好ましく、15〜500質量部がより好ましく、20〜150質量部が好ましい。このような態様とすることで、硬化性、密着性がより高められる。
【0109】
1−4−4.溶媒
赤外線吸収性組成物は、通常、溶媒を配合して液状組成物として調製される。溶媒としては、赤外線吸収性組成物を構成する成分を分散又は溶解し、かつこれらの成分と反応せず、適度の揮発性を有するものである限り、適宜に選択して使用することができる。
【0110】
このような溶媒としては、例えば、
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;
乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;
メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノール、t−ブタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール等の(シクロ)アルキルアルコール類;
ジアセトンアルコール等のケトアルコール類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;
メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;
プロピレングリコールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート等のジアセテート類;
3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート等のアルコキシカルボン酸エステル類;
酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、ぎ酸n−アミル、酢酸i−アミル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;
トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド又はラクタム類;
等を挙げることができる。
【0111】
これらの溶媒のうち、溶解性、塗布性等の観点から、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、乳酸アルキルエステル類、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、他のエーテル類、ケトン類、ジアセテート類、アルコキシカルボン酸エステル類、他のエステル類が好ましく、特にプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、ぎ酸n−アミル、酢酸i−アミル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸エチル等が好ましい。
【0112】
本発明の一実施形態において、溶媒は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0113】
溶媒の含有量は、特に限定されるものではないが、赤外線吸収性組成物の溶媒を除いた各成分の合計濃度が、5〜50質量%となる量が好ましく、10〜30質量%となる量がより好ましい。このような態様とすることにより、塗布性の良好な赤外線吸収性組成物を得ることができる。
【0114】
1−4−5.感光剤
本発明の赤外線吸収性組成物には、感光剤を含有することができる。ここで、本明細書において「感光剤」とは、光照射により赤外線吸収性組成物の溶媒に対する溶解性を変化させる性質を有する化合物をいう。このような化合物としては、例えば、光重合開始剤、酸発生剤等を挙げることができる。感光剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0115】
光重合開始剤としては、光により酸又はラジカルを発生できるものであれば特に限定されないが、例えば、チオキサントン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、O−アシルオキシム系化合物、オニウム塩系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α−ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、ジアゾ系化合物、イミドスルホナート系化合物等を挙げることができる。光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
その中でも、光重合開始剤としては、ビイミダゾール系化合物、チオキサントン系化合物、アセトフェノン系化合物、トリアジン系化合物、O−アシルオキシム系化合物の群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。なお、ビイミダゾール系化合物を用いる場合、2−メルカプトベンゾチアゾール等の水素供与体を併用してもよい。ここでいう「水素供与体」とは、露光によりビイミダゾール系化合物から発生したラジカルに対して、水素原子を供与することができる化合物を意味する。また、ビイミダゾール系化合物以外の光重合開始剤を用いる場合には、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル等の増感剤を併用することもできる。
【0116】
酸発生剤としては、熱又は光により酸を発生する化合物であれば特に限定されないが、スルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩等のオニウム塩、N−ヒドロキシイミドスルホネート化合物、オキシムスルホネート、o−ニトロベンジルスルホネート、キノンジアジド化合物等を挙げられる。酸発生剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。その中でも、スルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩、オキシムスルホネート、キノンジアジド化合物が好ましい。スルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩の具体例としては、例えば、4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4−ヒドロキシフェニル・ベンジル・メチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニル・ベンジル・メチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−ヒドロキシフェニルジベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルジベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジルベンゾチアゾリウムヘキサフルオロアンチモネート、1−(4,7−ジブトキシ−1−ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホナート等を挙げることができる。オキシムスルホネートの具体例としては、例えば、特開2014−115438号公報の段落[0122]〜[0131]に記載の化合物を挙げることができる。キノンジアジド化合物の具体例としては、例えば、特開2008−156393号公報の段落[0040]〜[0048]に記載の化合物、特開2014−174406号公報の段落[0172]〜[0186]に記載の化合物を挙げることができる。
【0117】
感光剤の含有量は、赤外線吸収性組成物の固形分中に、好ましくは0.03〜10質量%、より好ましくは0.1〜8質量%、更に好ましくは0.5〜6質量%である。このような態様とすることで、硬化性、密着性をより一層良好にすることができる。
【0118】
1−4−6.分散剤
赤外線吸収性組成物には、分散剤を含有せしめることができる。分散剤としては、例えば、ウレタン系分散剤、ポリエチレンイミン系分散剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系分散剤、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル系分散剤、ポリ(アルキレングリコール)ジエステル系分散剤、ソルビタン脂肪酸エステル系分散剤、ポリエステル系分散剤、(メタ)アクリル系分散剤等が挙げられ、市販品として、例えば、Disperbyk−2000、Disperbyk−2001、BYK−LPN6919、BYK−LPN21116、BYK−LPN22102(以上、ビックケミー(BYK)社製)等の(メタ)アクリル系分散剤、Disperbyk−161、Disperbyk−162、Disperbyk−165、Disperbyk−167、Disperbyk−170、Disperbyk−182(以上、ビックケミー(BYK)社製)、ソルスパース76500(ルーブリゾール(株)社製)等のウレタン系分散剤、ソルスパース24000(ルーブリゾール(株)社製)等のポリエチレンイミン系分散剤、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB880、アジスパーPB881(以上、味の素ファインテクノ(株)社製)等のポリエステル系分散剤の他、BYK−LPN21324(ビックケミー(BYK)社製)を使用することができる。
【0119】
これらの中でも、赤外線吸収性組成物にアルカリ現像性を付与した場合には、現像残渣の少ない赤外線カットフィルタ層142を形成する観点から、アルキレンオキサイド構造を有する繰り返し単位を含む分散剤が好ましい。
【0120】
分散剤は単独で又は2種以上を混合して使用することができる。分散剤の含有量は、赤外線吸収性組成物の全固形分100質量部に対して、5〜200質量部が好ましく、10〜100質量部がより好ましく、20〜70質量部が更に好ましい。
【0121】
1−4−7.添加剤
赤外線吸収性組成物には、必要に応じて、種々の添加剤を含有することもできる。添加剤としては、例えば、ガラス、アルミナ等の充填剤;ポリビニルアルコール、ポリ(フロオロアルキルアクリレート)類等の高分子化合物;フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤等の界面活性剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の密着促進剤;2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサ−スピロ[5・5]ウンデカン、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等の酸化防止剤;2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノン類等の紫外線吸収剤;ポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤;マロン酸、アジピン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、メサコン酸、2−アミノエタノール、3−アミノ−1−プロパノール、5−アミノ−1−ペンタノール、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、4−アミノ−1,2−ブタンジオール等の残渣改善剤;こはく酸モノ〔2−(メタ)アクリロイロキシエチル〕、フタル酸モノ〔2−(メタ)アクリロイロキシエチル〕、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等の現像性改善剤;ブロックイソシアネート化合物等を挙げることができる。
【0122】
平坦化膜や有機膜等の硬化膜との密着性を向上する観点からは、密着促進剤、重合性不飽和基を有する界面活性剤、多官能チオール、ブロックイソシアネート化合物を含有することが好ましい。
【0123】
密着促進剤の中では、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のオキシラニル基を有するシラン化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン等のエチレン性不飽和結合を有するシラン化合物が好ましい。密着促進剤の含有量としては、バインダー樹脂100質量部に対して、1〜30質量部が好ましい。
【0124】
重合性不飽和基を有する界面活性剤の具体例としては、例えば、特許4965083号明細書の段落[0041]〜[0055]に記載の化合物を挙げることができ、市販品としては、特許5626063号明細書の段落[0032]に記載の化合物、特許5552364号明細書の段落[0057]に記載の化合物等を挙げることができる。重合性不飽和基を有する界面活性剤の含有量としては、赤外線吸収剤100質量部に対して、1〜50質量部が好ましい。
【0125】
多官能チオールは2個以上のスルファニル基を有する化合物であり、例えば、置換基として2個以上のスルファニル基を有する炭化水素類、多価アルコールのポリ(メルカプトアセテート)類、多価アルコールのポリ(3−メルカプトプロピオネート)類、多価アルコールのポリ(2−メルカプトプロピオネート)類、多価アルコールのポリ(3−メルカプトブチレート)類、置換基として2個以上のスルファニル基を有する複素環類、2個以上のスルファニル基を有するポリシロキサン類等を挙げることができる。具体的には、特開2013−083932号公報の段落[0073]〜[0079]に記載の化合物を挙げることができる。多官能チオールの含有量としては、バインダー樹脂100質量部に対して、1〜50質量部が好ましい。
【0126】
ブロックイソシアネート化合物は、イソシアネート基を活性水素基含有化合物(ブロック剤)と反応させて常温で不活性としたものであり、これを加熱するとブロック剤が解離してイソシアネート基が再生されるという性質を持つものである。市販品としては、例えばイソシアネート基をメチルエチルケトンのオキシムでブロックしたものとして、デュラネートTPA−B80E、TPA−B80X、E402−B80T、MF−B60XN、MF−B60X、MF−B80M(以上、旭化成工業社);イソシアネート基を活性メチレンでブロックしたものとして、デュラネートMF−K60X(旭化成工業社);(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物のブロック体として、カレンズMOI−BP、カレンズMOI−BM(以上、昭和電工社)が挙げられる。ブロックイソシアネート化合物の含有量としては、バインダー樹脂100質量部に対して、5〜100質量部が好ましい。
【0127】
1−4−8.赤外線カットフィルタ層の製造方法
本発明の一実施形態に係る赤外線カットフィルタ層142は、例えば、上記した赤外線吸収性組成物を用いて形成することができ、赤外線波長領域における遮光性(赤外線遮蔽性)が高く、硬化膜との密着性にも優れる。
【0128】
赤外線吸収性組成物を用いて赤外線カットフィルタ層142を形成する方法について、工程毎に説明する。本発明の実施形態に係る赤外線カットフィルタ層142は、以下の工程(1)〜(4)の順に行うか、工程(1)及び(4)を含む工程の後に工程(5)を行って形成することができる。
(1)本発明の赤外線吸収性組成物を基板上に塗布して塗膜を形成する工程、
(2)塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
(3)塗膜を現像する工程(現像工程)、
(4)塗膜を加熱する工程(加熱工程)、
(5)工程(4)で得られた赤外線カットフィルタ層の一部を除去する工程。
【0129】
1−4−8−1.工程(1)
まず、基板上に、赤外線吸収性組成物を塗布し、好ましくは塗布面を加熱(プレベーク)することにより溶媒を除去して、塗膜を形成する。ここでいう基板とは、カラーフィルタ層や硬化膜、フォトダイオードの受光面等を包括する概念であり、実施形態に応じて適宜変更されうる。
【0130】
赤外線吸収性組成物の塗布方法としては特に限定されず、例えば、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法等の適宜の方法を採用することができる。特に、スピンコート法が好ましい。
【0131】
必要に応じて行われるプリベークは、オーブン、ホットプレート、IRヒーター等公知の加熱手段を用いることが可能であり、減圧乾燥と加熱乾燥を組み合わせて行ってもよい。加熱条件は、各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、例えば、温度60〜200℃で30秒〜15分程度とすることができる。
【0132】
1−4−8−2.工程(2)
工程(2)は、工程(1)で形成された塗膜の一部又は全部に放射線を照射する工程である。この場合、塗膜の一部を露光する際には、例えば、所定のパターンを有するフォトマスクを介して露光する。前述の通り、第1の実施形態に係る赤外線カットフィルタは、フォトダイオード136dが設けられる領域上に開口部を有している。赤外線カットフィルタを、アルカリ現像性を付与した赤外線吸収性組成物を用いて形成する場合には、フォトマスクのパターンをフォトダイオード136dのパターンに対応するものとすればよい。
【0133】
露光に使用される放射線としては、電子線、KrF、ArF、g線、h線、i線等の紫外線や可視光が挙げられ、その中でも、KrF、g線、h線、i線が好ましい。露光方式としては、ステッパー露光や高圧水銀灯による露光等が挙げられる。露光量は、5〜3000mJ/cmが好ましく、10〜2000mJ/cmがより好ましく、50〜1000mJ/cmが更に好ましい。露光装置としては特に制限はなく、公知の装置を適宜選択することができるが、例えば、超高圧水銀灯等のUV露光機が挙げられる。
【0134】
1−4−8−3.工程(3)
工程(3)は、工程(2)で得られた塗膜を、アルカリ現像液を用いて現像することにより、不要な部分(ポジ型の場合は放射線の照射部分。ネガ型の場合は放射線の非照射部分。)を溶解除去する工程である。
アルカリ現像液としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等の水溶液が好ましい。
アルカリ現像液には、例えば、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤や界面活性剤等を適量添加することもできる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗する。
現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。現像条件は、常温で5〜300秒が好ましい。
【0135】
1−4−8−4.工程(4)
工程(4)では、ホットプレート、オーブン等の加熱装置を用い、工程(1)〜(3)により得られるパターニングされた塗膜、又は、工程(1)及び必要に応じて行われる工程(2)により得られるパターニングされていない塗膜を、比較的高温で加熱することによって、本発明の赤外線カットフィルタ層を形成する。これにより、赤外線カットフィルタ層の機械的強度、耐クラック性を高めることができる。
本工程における加熱温度は、例えば、120℃〜250℃である。加熱時間は、加熱機器の種類により異なるが、例えば、ホットプレート上で加熱工程を行う場合には1分間〜30分間、オーブン中で加熱工程を行う場合には5分間〜90分間とすることができる。また、2回以上の加熱工程を行うステップベーク法等を用いることもできる。
【0136】
1−4−8−5.工程(5)
工程(5)は、工程(4)で得られた赤外線カットフィルタ層の一部を除去する工程である。例えば、工程(1)においてアルカリ現像性を有さない赤外線吸収性組成物を基板全面に塗布した場合、工程(4)の後には、開口部を有さない赤外線カットフィルタ層が形成される。そこで工程(5)により、赤外線パスフィルタ層140に対応する部分に開口部を設けることができる。具体的には、工程(1)及び(4)を含む工程で得られた赤外線カットフィルタ層上にフォトレジスト層を形成し、このフォトレジスト層をパターン状に除去してレジストパターンを形成し、このレジストパターンをエッチングマスクとしてドライエッチングによりエッチングし、エッチング後に残存するレジストパターンを除去する。これにより、赤外線カットフィルタ層の一部を除去することができる。より具体的な方法については、例えば、特開2008−241744号公報を参酌できる。
【0137】
このようにして作製される赤外線カットフィルタ層142は、15μm以下、好ましくは0.1〜15μm、より好ましくは0.2〜3μm、更に好ましくは0.3〜2μm、特に好ましくは0.5〜1.5μmの厚さで設けられる。赤外線カットフィルタ層142をこのような膜厚とすることで、光学フィルタ層132の厚さを薄くすることができる。また、赤外線カットフィルタ層142を薄くすることで、上層に設ける第2の硬化膜144bの膜厚も薄くすることができる。すなわち、第2の硬化膜144bを平坦化膜として用いるとき、赤外線カットフィルタ層142による段差の高さが低くなることにより、その分だけ第2の硬化膜144bの膜厚を薄くすることができる。このように、赤外線カットフィルタ層142の膜厚を薄くすることで、光学フィルタ層132全体の厚さを薄くすることができ、その結果、固体撮像装置の薄型化を図ることができる。
【0138】
赤外線カットフィルタ層142は、上記したような赤外線吸収性組成物を用いて形成することにより、波長600〜2000nm、好ましくは波長700〜1000nmの範囲内に吸収極大を有し、当該波長範囲の光を遮断する機能を有している。
【0139】
本実施形態に係る固体撮像装置は、このような光学的特性を有する赤外線カットフィルタ層142をカラーフィルタ層138a〜138cに重ねて設けることで、フォトダイオード136a〜136cには、赤外線波長領域の光がカットされ、それぞれのカラーフィルタ層138a〜138cに対応した特定波長帯域の可視光線が入射される。そのため、第1の画素122a〜122cは、赤外線によるノイズの影響を受けずに、精度良く可視光線を検出することができる。この場合において、赤外線カットフィルタ層142を薄膜化することにより、固体撮像装置の薄型化を図ることができる。
【0140】
1−5.硬化膜
硬化膜144は、カラーフィルタ層138a〜138cとマイクロレンズアレイ134との間に設けられる。硬化膜144は可視光線波長領域及び赤外線波長領域の双方に対し透光性を有することが好ましい。マイクロレンズアレイ134を介して入射した光は、赤外線カットフィルタ層142、赤外線パスフィルタ層140、カラーフィルタ層138によって特定の波長帯域の光がフォトダイオード136a〜136dに入射されるが、入射光の光路において前述の各種フィルタ層以外の領域ではなるべく光が減衰しないようにすることが好ましい。
【0141】
また、硬化膜144は、例えば、配線層130との間で寄生容量が生じないように、絶縁性を有していることが好ましい。硬化膜144は、光学フィルタ層132の略前面に設けられるため、仮に硬化膜144に導電性があると、配線層130との間で意図しない寄生容量が生じてしまう。寄生容量が生じると、フォトダイオード136a〜136dの検出動作に支障をきたすため、硬化膜144は絶縁性を有していることが好ましい。
【0142】
また、硬化膜144は、それと接する層との密着性に優れていることが望まれる。例えば、硬化膜144と赤外線カットフィルタ層142との密着性が悪いと、剥離が起こり、光学フィルタ層132が損傷してしまう。
【0143】
さらに、硬化膜144は、赤外線カットフィルタ層142、赤外線パスフィルタ層140、カラーフィルタ層138等を埋め込み、その上にマイクロレンズアレイ134を設けるため、表面が平坦化されていることが望ましい。すなわち、硬化膜144は平坦化膜としても用いられることが好ましい。
【0144】
このように要求される特性に対して、硬化膜144としては、有機膜を用いることが、透光性を有し、かつ絶縁性を有する硬化膜を得る観点から好ましい。有機膜は更に、平坦化膜形成用硬化性組成物を用いて得られる平坦化膜であることが好ましい。即ち、平坦化膜形成用硬化性組成物を塗布した後のレベリング作用により、下地面に凹凸を含んでいても平坦な表面を有する平坦化膜(硬化膜)を得ることができる。
【0145】
硬化膜144を作製するための組成物としては、硬化性化合物及び溶媒を含む硬化性組成物、特に硬化性化合物及び溶媒を含む平坦化膜形成用硬化性組成物が好ましい。硬化性組成物における溶媒としては、赤外線吸収性組成物における溶媒として記載したものと同様のものを用いることができ、好ましい態様も、前述と同様である。
以下、硬化性組成物を構成する硬化性化合物について説明する。
【0146】
1−5−1.硬化性化合物
硬化性組成物を構成する硬化性化合物としては、光又は熱により硬化しうる化合物であればよく、例えば、含酸素飽和複素環基を有する樹脂、側鎖に重合性不飽和基を有する樹脂、ポリシロキサン、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、重合性化合物等を挙げることができる。
【0147】
含酸素飽和複素環基を有する樹脂における含酸素飽和複素環基としては、前述と同様のものを挙げることができ、その中でも、オキシラニル基、オキセタニル基が好ましく、オキシラニル基がより好ましい。
含酸素飽和複素環基を有する樹脂としては、含酸素飽和複素環基を有するアクリル樹脂が好ましく、具体的には、含酸素飽和複素環基を有する(メタ)アクリル酸エステルの(共)重合体を挙げることができる。含酸素飽和複素環基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、前述と同様のもののほか、特開平6−157716号公報の段落[0014]に記載の化合物、特開2000−344866号公報の段落[0014]に記載の化合物が挙げられる。その中でも、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0148】
含酸素飽和複素環基を有する(メタ)アクリル酸エステルの(共)重合体は、更に他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体との共重合体であることが好ましい。このような他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、前記不飽和単量体(1)、前記不飽和単量体(2)(但し、含酸素飽和複素環基を有する(メタ)アクリル酸エステルを除く。)が挙げられる。不飽和単量体(1)の中では、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましい。不飽和単量体(2)の中では、芳香族ビニル化合物、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
含酸素飽和複素環基を有する(メタ)アクリル酸エステルの(共)重合体における、好ましい共重合割合は次の通りである。含酸素飽和複素環基を有する(メタ)アクリル酸エステルの共重合割合は、10〜90質量%、更に15〜80質量%、更に20〜70質量が好ましい。不飽和単量体(1)の共重合割合は、5〜40質量%、更に10〜30質量%が好ましい。不飽和単量体(2)(但し、含酸素飽和複素環基を有する(メタ)アクリル酸エステルを除く。)の共重合割合は、5〜85質量%、更に10〜70質量%が好ましい。
【0149】
含酸素飽和複素環基を有するアクリル樹脂の具体例としては、特開平6−157716号公報、特開平6−192389号公報、特開平9−100338号公報、特開2000−344866号公報等に開示されている共重合体を挙げることができる。
【0150】
側鎖に重合性不飽和基を有する樹脂における重合性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニルアリール基、ビニルオキシ基、アリル基等を挙げることができる。その中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
側鎖に重合性不飽和基を有する樹脂の具体例としては、側鎖に重合性不飽和基を有するカルボキシル基含有重合体の具体例として例示したb)の他、下記e)〜f)の重合体が挙げられ、具体的には、特開平5−19467号公報、特開平6−230212号公報、特開平7−207211号公報、特開平9−325494号公報、特開平11−140144号公報、特開2008−181095号公報等に開示されているようなアクリル樹脂を用いることができる。
e)水酸基を有する重合性不飽和化合物を含有してなる単量体の(共)重合体に、不飽和イソシアネート化合物を反応させて得られる(共)重合体、
f)オキシラニル基を有する重合性不飽和化合物を含有してなる単量体の(共)重合体に、不飽和単量体(1)を反応させて得られる(共)重合体。
【0151】
上記の他、側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂として、特許5586828号明細書の式(1)又は(2)で表される構造単位を有するアクリル樹脂を用いることもできる。
更に、側鎖に重合性不飽和基を有する樹脂として、エポキシ樹脂に不飽和単量体(1)を反応させて得られるエポキシアクリレート樹脂を用いることもできる。エポキシアクリレート樹脂は公知の方法により製造することができる。
【0152】
ポリシロキサンとしては、赤外線吸収性組成物のところで説明したものと同様のものが挙げられる。その中でも、オキシラニル基、(メタ)アクリロイル基及びスルファニル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を含有するポリシロキサンが好ましく、オキシラニル基、(メタ)アクリロイル基及びスルファニル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を有する加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物が好ましい。このような加水分解性シラン化合物としては、前述と同様のものを挙げることができる。
【0153】
ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、重合性化合物としては、赤外線吸収組成物のところで説明したものと同様のものが挙げられる。
【0154】
このような硬化性組成物を構成する重合性化合物の中でも、赤外線カットフィルタ層との密着性に優れる硬化膜を形成する観点からは、含酸素飽和複素環基を有する樹脂、側鎖に重合性不飽和基を有する樹脂、ポリシロキサン、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂が好ましく、含酸素飽和複素環基を有する樹脂、側鎖に重合性不飽和基を有する樹脂、ポリシロキサンがより好ましい。
【0155】
1−5−2.感光剤
硬化性組成物には、更に感光剤を含有することができる。感光剤としては前述と同様のものを挙げることができ、具体的な化合物及び態様は、前述と同様である。
【0156】
1−5−3.添加剤
硬化性組成物には、更に添加剤を含有することができる。添加剤としては前述と同様のものを挙げることができる。その中でも、密着促進剤、ブロックイソシアネート化合物が好ましい。
【0157】
以上説明した、平坦化膜形成用硬化性組成物の中でも、赤外線カットフィルタ層との密着性に優れる硬化膜を形成する観点からは、以下のいずれかであることが好ましい。
(2−I)含酸素飽和複素環基を有する樹脂及び溶媒を含む硬化性組成物、
(2−II)側鎖に重合性不飽和基を有する樹脂及び溶媒を含む硬化性組成物、
(2−III)ポリシロキサン及び溶媒を含む硬化性組成物。
これら(2−I)〜(2−III)における好ましい態様は、それぞれ上記した通りである。
【0158】
1−5−4.硬化膜の製造方法
本発明の固体撮像装置に係る硬化膜は、例えば、上記した硬化性組成物を用いて形成することができる。
【0159】
本発明の硬化膜は、前述の工程(1)において赤外線吸収性組成物に代えて硬化性組成物を用いる以外は、前述の工程(1)及び(4)を含む工程により形成できる。また、必要に応じて工程(2)、(3)を行ってもよい。これら工程の詳細及び好ましい態様は、前述の工程(1)〜(4)と同様である。
【0160】
上述の通り、本発明の固体撮像装置に係る赤外線カットフィルタ層142は十分に赤外線を吸収することができるため、赤外線カットフィルタ層142の膜厚を薄くすることが可能である。従って、例えば、第1の実施形態において第2の硬化膜144bを形成する際、第1の硬化膜144aの上面と赤外線カットフィルタ層142の上面との段差部を小さくできるので、第2の硬化膜の形成が容易になるという利点がある。言い換えると、第2の硬化膜である平坦化膜をスピンコート法で形成する際、段差部が小さいほど塗布が容易になるため、膜厚の薄い第2の硬化膜144bの形成が可能になり、ひいては固体撮像装置の薄型化を図ることができる。
また、赤外線カットフィルタ層142や硬化膜144がそれぞれ薄膜化すると、それらの積層界面での密着性が低下し、剥離に繋がるおそれがある。しかし本発明における赤外線吸収性組成物や硬化性組成物を上記のようにすることで、赤外線カットフィルタ層142や硬化膜144が薄膜であっても、積層界面での密着性に優れ、ひいては固体撮像装置の薄型化を図ることができるという点で、本発明の固体撮像装置の作製に好適である。
【0161】
なお、本実施形態に係る固体撮像装置100は、上記の構成に加え、マイクロレンズアレイ134上に2バンドパスフィルタを設けてもよい。すなわち、赤外線カットフィルタ層142及び赤外線パスフィルタ層140の上面に、波長430〜580nmの範囲における平均透過率が75%以上、波長720〜750nmの範囲における平均透過率が15%以下、波長810〜820nmに範囲における平均透過率が60%以上、および波長900〜2000nmの範囲における平均透過率が15%以下である2バンドパスフィルタを設けてもよい。2バンドパスフィルタを付加することで、可視光線波長領域と赤外線波長領域とにおけるフィルタリング能力をさらに高めることができる。
【0162】
1−6.固体撮像装置の動作
図2で示される固体撮像装置100は、マイクロレンズアレイ134を介して入射した光が、可視光検出用画素118においては赤外線カットフィルタ層142により赤外線がカットされ、可視光がカラーフィルタ層138a〜138cに入射する。一方、赤外光検出用画素120においては、赤外線パスフィルタ層140にそのまま入射する。
【0163】
第1の画素122a〜122cでは、カラーフィルタ層138a〜138cに入射した可視光線波長領域の光が、それぞれの光学的特性に応じて透過した可視光線が、フォトダイオード136a〜136cに入射する。これにより、赤外線によるノイズの影響を受けずに精度よく可視光線を検出することができる。第2の画素124では、赤外線パスフィルタ層140により、可視光線波長領域の光がカットされ、赤外線波長領域(特に、近赤外線波長領域)の光がフォトダイオード136dに入射する。これにより、可視光に起因するノイズ等の影響を受けずに、精度良く赤外線を検出することができる。
【0164】
本実施形態に係る固体撮像装置は、可視光検出用画素と赤外光検出用画素を一体に設けることにより、TOF方式で測距可能な固体撮像装置を実現することができる。すなわち、可視光検出用画素で被写体の画像データを取得し、赤外光検出用画素で被写体までの距離を計測することができる。それにより、三次元の画像データを取得することが可能となる。この場合において、可視光検出用画素においては、赤外線波長領域の光が遮断されて、ノイズの少ない高感度の撮像をすることができる。赤外線検出用画素では、可視光線波長領域の光が遮断され、高精度の測距をすることができる。
【0165】
さらに、本実施形態に係る固体撮像装置は、赤外線カットフィルタ層142が薄膜化され、結果として光学フィルタ層132が薄型化されることにより、固体撮像装置の薄型化を図ることが可能となる。それにより、スマートフォンやタブレット端末等の携帯型情報機器の筐体の薄型化に寄与することができる。
【0166】
1−7.変形例
図3は、赤外線パスフィルタ層140の厚さを変化させた固体撮像装置の画素部102bの一例を示す。図3で示す画素部102bは、赤外線パスフィルタ層140の上面の高さが、赤外線カットフィルタ層142の上面の高さと略一致している。より具体的には、赤外線パスフィルタ層140の上面と赤外線カットフィルタ層142の上面との高低差が、好ましくは0.3μm以内、より好ましくは0.2μm以内、更に好ましくは0.1μm以内である。別言すれば、赤外線パスフィルタ層140の膜厚は、赤外線カットフィルタ層142の膜厚と、第1の硬化膜144aと、その上面に並置されるカラーフィルタ層138a、カラーフィルタ層138b又はカラーフィルタ層138cの膜厚の合計値と概略等しい値となっている。
【0167】
このように、赤外線パスフィルタ層140の厚さを増加させることにより可視光線を十分に吸収し、フォトダイオード136dに可視光線が入射しないようにすることができる。それにより、赤外線に検出を高精度かつ高感度に行うことができる。この場合において、第2の画素124には、赤外線カットフィルタ層142が設けられていないので、赤外線パスフィルタ層140の膜厚を増加させても光学フィルタ層132の厚さに影響を与えることはない。
【0168】
さらに、赤外線パスフィルタ層140の上面の高さを、赤外線カットフィルタ層142の上面の高さと略一致させることにより、第2の硬化膜144bの下地面の平坦性を向上させることができる。第2の硬化膜144bは、それ自体で平坦化膜としての機能を有することができるが、第2の硬化膜144bを、前記硬化性組成物を塗布して形成する場合には、下地面が平坦に近いほど、硬化性組成物の塗りムラが少なくなり、且つ、第2の硬化膜144bの上表面の平坦性を向上させることができる。これにより、第2の硬化膜144bの上面に形成するマイクロレンズアレイ134を高精度で成形することができ、固体撮像装置は歪みの少ない画像を取得することができる。この場合における硬化性組成物としては、前記(2−I)〜(2−III)から選ばれた組成物がより好ましい。
【0169】
なお、図3に示す画素部102bは、赤外線パスフィルタ層140の膜厚を変化させたこと以外は図2で示す画素部102aと同様の構成を備えているため、固体撮像装置においては同様の作用効果を奏する。
【0170】
2.第2の実施形態
図4は、本実施形態に係る固体撮像装置の画素部102cの断面構造を示す。この画素部102cは、可視光検出用画素118及び赤外光検出用画素120を含み、層構造において半導体層128、配線層130、光学フィルタ層132、マイクロレンズアレイ134を含む点において第1の実施形態と同様である。しかしながら、本実施形態に係る固体撮像装置の画素部102cは、配線層130がフォトダイオード136a〜136dの下面側に配置された裏面照射型の構成を有している。裏面照射型の画素部は、半導体基板にフォトダイオード136a〜136dとその上に配線層130を形成した後、当該半導体基板の裏面を研削・研磨してフォトダイオード136a〜136dが露出するように薄片化されている。この場合、基板126は支持基材として半導体層128に貼り付けられている。
【0171】
裏面照射型の画素部102cは、フォトダイオード136a〜136dの受光面上に配線層130が無いので、広開口率が得られ、入射光の損失が抑えられ、同じ光量でも明るい画像を出力できるという利点がある。
【0172】
本実施形態において、光学フィルタ層132とマイクロレンズアレイ134の構成は、第1の実施形態と同様である。なお、フォトダイオード136a〜136dとカラーフィルタ層138a〜138c及び赤外線パスフィルタ層140との間には有機膜146が設けられている。有機膜146は、フォトダイオード136a〜136dの上面を覆い、カラーフィルタ層138a〜138c及び赤外線パスフィルタ層140の下地面を平坦化している。また、フォトダイオード136a〜136dの保護膜としての機能を兼ねている。
【0173】
有機膜146は、前記硬化膜144を作製するための組成物と同様に、硬化性化合物及び溶媒を含む硬化性組成物を用いて作製される。これらの材料を用いれば、フォトダイオード136a〜136dの上面を平坦化し、カラーフィルタ層138a〜138c及び赤外線パスフィルタ層140との密着性を向上させることができる。その中でも、前記(2−I)〜(2−III)から選ばれた組成物がより好ましい。
【0174】
なお、図4において、赤外線パスフィルタ層140の上面の高さを、図3で示す画素部102bと同様に、赤外線カットフィルタ層142の上面の高さと略一致するようにしてもよい。それにより、第2の硬化膜144bの下地面の平坦性を向上させることができるので、第2の硬化膜144bの上表面の平坦性をより向上させることができる。これにより、第2の硬化膜144bの上面に形成するマイクロレンズアレイ134を高精度で成形することができ、固体撮像装置は歪みの少ない画像を取得することができる。
【0175】
なお、本実施形態においても第1の実施形態と同様に、上記の構成に加えマイクロレンズアレイ134上に2バンドパスフィルタを設けてもよい。
【0176】
本実施形態によれば、画素部102cは裏面照射型としたことにより、光の利用効率を高め、感度の高い固体撮像装置が提供される。それに加え、光学フィルタ層132は第1の実施形態と同様の構成を備えているので、光学フィルタ層が薄型化され、固体撮像装置の薄型化を図ることが可能となる。すなわち、本実施形態によれば、裏面照射型の特徴を有しつつ、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する固体撮像装置を提供することができる。
【0177】
3.第3の実施形態
図5は、本実施形態に係る固体撮像装置の画素部102dの断面構造を示す。この画素部102dは、可視光検出用画素118及び赤外光検出用画素120を含み、層構造において半導体層128、配線層130、光学フィルタ層132、マイクロレンズアレイ134を含む点において第1の実施形態と同様である。しかし、光学フィルタ層132において、カラーフィルタ層138a〜138cの下面側に赤外線カットフィルタ層142が設けられている点で、第1の実施形態に係る画素部の構成と相違している。
【0178】
赤外線カットフィルタ層142は第1の実施形態で示すものと同様であり、0.1〜15μmの厚さ、より好ましくは0.2〜3μm、更に好ましくは0.3〜2μm、特に好ましくは0.5〜1.5μmの厚さで設けられている。赤外線カットフィルタ層142とカラーフィルタ層138a〜138cとの間には第1の硬化膜144aが設けられている。第1の硬化膜144aは、赤外線カットフィルタ層142を埋設し、上面が平坦化されている。すなわち、赤外線カットフィルタ層142は第1の画素122a〜122cに設けられ、第2の画素124には設けられないため、その直上にカラーフィルタ層を設けようとすると、赤外線カットフィルタ層142による段差部が問題となる。この段差部を第1の硬化膜144aで埋め込み平坦化することで、カラーフィルタ層138を均質に形成することができ、光学的特性に影響を与えないようにすることができる。
【0179】
この場合において、硬化膜として、前述の硬化性組成物と同様のものを用いて形成されたものが好ましく、その中でも、前記(2−I)〜(2−III)から選ばれた組成物を用いることで、赤外線カットフィルタ層142との密着性を高め、且つ、第1の硬化膜144aの上面を平坦化することができる。
【0180】
また、赤外線カットフィルタ層142において、第1の実施形態で示す赤外線吸収剤の中でも、金属ジチオール系化合物、銅化合物、タングステン化合物、金属ホウ化物を用いるか、又はレーキ化した赤外線吸収剤を用いることで、耐熱性を高めることができる。また、バインダー樹脂としてポリイミド樹脂及びポリシロキサンの群から選ばれる少なくとも1種を用いることでも、耐熱性を高めることができる。それにより、赤外線カットフィルタ層142の形成後に作製される硬化膜144形成時やカラーフィルタ層138形成時の加熱温度に対し耐熱性を有し、赤外線をカットするという光学的特性を維持することができる。
【0181】
赤外線カットフィルタ層142は、0.1〜15μmの厚さ、より好ましくは0.2〜3μm、更に好ましくは0.3〜2μm、特に好ましくは0.5〜1.5μmの厚さで設けられるので、その上に設ける第1の硬化膜144aの膜厚も薄くすることができる。それにより、赤外線カットフィルタ層142とカラーフィルタ層138a〜138cを近接して設けることができる。それにより、隣接画素間で生じ得る混色の影響を低減することができる。
【0182】
画素部102dにおいて、カラーフィルタ層138a〜138cの上面と赤外線パスフィルタ層140の上面とは、高さが略一致するように設けられることにより、第2の硬化膜144bの下地面の平坦性を向上させることができる。第2の硬化膜144bは、それ自体で平坦化膜としての機能を有することができるが、第2の硬化膜144bを、前記硬化性組成物を塗布して形成する場合には、下地面が平坦に近いほど、硬化性組成物の塗りムラが少なくなり、且つ、第2の硬化膜144bの上表面の平坦性を向上させることができる。これにより、第2の硬化膜144bの上面に形成するマイクロレンズアレイ134を高精度で成形することができ、固体撮像装置は歪みの少ない画像を取得することができる。
【0183】
また、別の態様として、赤外線パスフィルタ層140の膜厚を増加させつつ、下層側にある第1の硬化膜144aの厚さを減少させてもよいし、赤外線パスフィルタ層140の下層側にある第1の硬化膜144aを除去して、赤外線パスフィルタ層140の下面の高さと赤外線カットフィルタ層142の下面の高さとを略一致させてもよい。それにより、赤外線の検出を高精度かつ高感度に行うことができる。
【0184】
なお、本実施形態においても第1の実施形態と同様に、上記の構成に加えマイクロレンズアレイ134上に2バンドパスフィルタを設けてもよい。
【0185】
本実施形態における画素部102dの構成は、光学フィルタ層132において、赤外線カットフィルタ層142とカラーフィルタ層138a〜138cの配置を入れ替えたこと以外は、第1の実施形態と同様である。すなわち、本実施形態によれば、上記の特徴に加え、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する固体撮像装置を提供することができる。
【0186】
4.第4の実施形態
図6は、裏面照射型の固体撮像装置における画素部102eの構成を示す。画素部102eは、配線層130がフォトダイオード136a〜136dの下面側に設けられた裏面照射型の構成を有している点を除いては、第3の実施形態と同様の構成を有している。すなわち、光学フィルタ層132において、赤外線カットフィルタ層142がカラーフィルタ層138a〜138cの下面に設けられている。
【0187】
赤外線カットフィルタ層142が有機膜146の上面に設けられている。このとき、赤外線カットフィルタ層142を、第1の実施形態で示す赤外線吸収性組成物を用いて形成することで、有機膜146との密着性を高めることができる。それにより、光学フィルタ層132を有機膜146の上部に配置することができる。
【0188】
本実施形態においても、第3の実施形態で説明したように、赤外線パスフィルタ層140の膜厚を増加させつつ、下層側にある第1の硬化膜144aの厚さを減少させてもよいし、赤外線パスフィルタ層140の下層側にある第1の硬化膜144aを除去して、赤外線パスフィルタ層140の下面の高さと赤外線カットフィルタ層142の下面の高さとを略一致させてもよい。このように、赤外線パスフィルタ層140の厚さを増加させることにより可視光線を十分に吸収し、フォトダイオード136dに可視光線が入射しないようにすることができる。それにより、赤外線に検出を高精度かつ高感度に行うことができる。
【0189】
なお、本実施形態においても第1の実施形態と同様に、上記の構成に加えマイクロレンズアレイ134上に2バンドパスフィルタを設けてもよい。
【0190】
本実施形態によれば、高感度の撮像が可能になるとう裏面照射型の特徴に加え、第3の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0191】
5.第5の実施形態
図7は、本実施形態に係る固体撮像装置の画素部102fの断面構造を示す。この画素部102fは、可視光検出用画素118及び赤外光検出用画素120を含み、層構造において半導体層128、配線層130、光学フィルタ層132、マイクロレンズアレイ134を含む点において第1の実施形態と同様である。しかし、光学フィルタ層132において、赤外線カットフィルタ層142がカラーフィルタ層138a〜138cの上面に接して設けられている点で、第1の実施形態に係る画素部の構成と相違している。
【0192】
赤外線カットフィルタ層142は第1の実施形態で示すものと同様であり、0.1〜15μmの厚さで設けられている。赤外線カットフィルタ層142とカラーフィルタ層138a〜138cとの間に硬化膜が設けられておらず、両者が密接するように設けられている。
【0193】
このような構造において、赤外線カットフィルタ層142を、第1の実施形態で示す赤外線吸収性組成物を用いて形成することで、その上面と接して設けられる硬化膜144との密着性を高めることができる。
【0194】
また、赤外線カットフィルタ層142は、0.1〜15μmの厚さ、より好ましくは0.2〜3μm、更に好ましくは0.3〜2μm、特に好ましくは0.5〜1.5μmの厚さで設けられるので、その上に設ける硬化膜144の膜厚も薄くすることができる。それにより、赤外線カットフィルタ層142とマイクロレンズアレイ134とを近接して設けることができる。さらに、赤外線カットフィルタ層142とカラーフィルタ層138とを接して設けることにより、隣接画素間で生じ得る混色の影響を低減することができる。
【0195】
赤外線パスフィルタ層140を厚くして上面の高さが、赤外線カットフィルタ層142の上面の高さと略一致するようにしてもよい。このような構成とすることで、第2の硬化膜144bの下地面の平坦性を向上させることができる。第2の硬化膜144bは、それ自体で平坦化膜としての機能を有することができるが、下地面が平坦に近いほど第2の硬化膜144bの上表面の平坦性を向上させることができる。これにより、第2の硬化膜144bの上面に形成するマイクロレンズアレイ134を高精度で成形することができ、固体撮像装置は歪みの少ない画像を取得することができる。
【0196】
なお、本実施形態においても第1の実施形態と同様に、上記の構成に加えマイクロレンズアレイ134上に2バンドパスフィルタを設けてもよい。
【0197】
本実施形態によれば、光学フィルタ層132において赤外線カットフィルタ層142とカラーフィルタ層138a〜138cとを接して設けることにより、上記の特徴に加え、光学フィルタ層132の層構造が省略され、固体撮像装置の薄型化を図ることができる。そして、画素部102fの構成は、光学フィルタ層132の構成が異なる他は、第1の実施形態と同様である。すなわち、本実施形態によれば、上記の特徴に加え、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する固体撮像装置を提供することができる。
【0198】
6.第6の実施形態
図8は、本実施形態に係る固体撮像装置の画素部102gの断面構造を示す。この画素部102gは、配線層130がフォトダイオード136a〜136dの下面に設けられた裏面照射型の構成である点を除き、第5の実施形態で示す画素部102fと同様である。フォトダイオード136a〜136dとカラーフィルタ層138a〜138c及び赤外線パスフィルタ層140との間には有機膜146が設けられている。有機膜146は、フォトダイオード136a〜136dの上面を覆い、カラーフィルタ層138a〜138c及び赤外線パスフィルタ層140の下地面を平坦化している。また、フォトダイオード136a〜136dの保護膜としての機能を兼ねている。なお、有機膜146は第2の実施形態で示すものと同様である。
【0199】
なお、本実施形態においても、赤外線パスフィルタ層140の上面の高さを、赤外線カットフィルタ層142の高さと略一致するようにしてもよい。また、本実施形態においても第1の実施形態と同様に、上記の構成に加えマイクロレンズアレイ134上に2バンドパスフィルタを設けてもよい。
【0200】
本実施形態によれば、図8で示す画素部102gが裏面照射型であることにより、光の利用効率を高め、感度の高い固体撮像装置が提供される。他の構成は第5の実施形態と同様であるため、本実施形態に係る固体撮像装置においても同様の作用効果を奏する。
【0201】
7.第7の実施形態
図9は、本実施形態に係る固体撮像装置の画素部102hの断面構造を示す。この画素部102hは、可視光検出用画素118及び赤外光検出用画素120を含み、層構造において半導体層128、配線層130、光学フィルタ層132、マイクロレンズアレイ134を含み、配線層130がフォトダイオード136a〜136dの下面に設けられた裏面照射型の構成である点において第6の実施形態で示す画素部102gと同様である。しかし、光学フィルタ層132において、赤外線カットフィルタ層142がカラーフィルタ層138a〜138cの下面に接して設けられている点で、第1の実施形態に係る画素部の構成と相違している。画素部102hは、赤外線パスフィルタ層140の上面の高さが、カラーフィルタ層138a〜138cの上面の高さと略一致するように設けられている。すなわち、赤外線パスフィルタ層140の上面の高さは、赤外線カットフィルタ層142とその上面に積層されたカラーフィルタ層138a〜138cの上面の高さと略一致するように設けられている。より具体的には、赤外線パスフィルタ層140の上面とカラーフィルタ層138a〜138cの上面との高低差が、好ましくは0.3μm以内、より好ましくは0.2μm以内、更に好ましくは0.1μm以内である。別言すれば、赤外線パスフィルタ層140の膜厚は、赤外線カットフィルタ層142の膜厚と、カラーフィルタ層138a、カラーフィルタ層138b又はカラーフィルタ層138cの膜厚の合計値と概略等しい値となっている。
【0202】
このように、赤外線パスフィルタ層140の厚さを増加させることにより可視光線を十分に吸収し、フォトダイオード136dに可視光線が入射しないようにすることができる。それにより、赤外線に検出を高精度かつ高感度に行うことができる。
【0203】
赤外線パスフィルタ層140の上面の高さを、赤外線カットフィルタ層142の上面の高さと略一致させることにより、第2の硬化膜144bの下地面の平坦性を向上させることができる。第2の硬化膜144bは、それ自体で平坦化膜としての機能を有することができるが、第2の硬化膜144bを、前記硬化性組成物を塗布して形成する場合には、下地面が平坦に近いほど、硬化性組成物の塗りムラが少なくなり、且つ、第2の硬化膜144bの上表面の平坦性を向上させることができる。これにより、第2の硬化膜144bの上面に形成するマイクロレンズアレイ134を高精度で成形することができ、固体撮像装置は歪みの少ない画像を取得することができる。
【0204】
図9で示す画素部102hは、赤外線カットフィルタ層142が有機膜146の上面に設けられている。このとき、赤外線カットフィルタ層142を、第1の実施形態で示す赤外線吸収性組成物を用いて形成することで、有機膜146との密着性を高めることができる。それにより、光学フィルタ層132を有機膜146の上部に配置することができる。
【0205】
なお、本実施形態においても第1の実施形態と同様に、上記の構成に加えマイクロレンズアレイ134上に2バンドパスフィルタを設けてもよい。
【0206】
本実施形態によれば、高感度の撮像が可能になるという裏面照射型の特徴に加え、第3の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、硬化膜144はカラーフィルタ層138a〜138c及び赤外線パスフィルタ層140の上に設けられているだけなので、光学フィルタ層132の薄型化を図ることができる。
【実施例】
【0207】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0208】
実施例1
赤外線カットフィルタ層142、硬化膜144及び有機膜146の形成には、以下の各組成物を用いた。
【0209】
赤外線カットフィルタ層142の形成には、赤外線吸収剤としてYMF−02A(住友金属社製)を100質量部、バインダー樹脂としてアクリル樹脂であるベンジルメタクリレート/スチレン/N−フェニルマレイミド/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/2−エチルヘキシルメタクリレート/メタクリル酸=14/10/12/15/29/20(質量比)の共重合体(酸価130mgKOH/g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを33.9質量%溶液)を11.73質量部、重合性化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを3.98質量部、重合開始剤としてNCI−930(株式会社ADEKA製)を0.53質量部、添加剤としてフッ素系界面活性剤であるフタージェントFTX−218(株式会社ネオス社製)を0.02質量部、及び溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを68.75質量部含む赤外線吸収性組成物(S−142−1)を用いた。
【0210】
硬化膜144の形成には、含酸素飽和複素環基を有するアクリル樹脂であるスチレン/メタクリル酸/ジシクロペンタニルメタクリレート/グリシジルメタクリレート=22.5/44.5/56.25/90(質量比)の共重合体を25質量部、及び溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル75質量部を含む熱硬化性樹脂組成物(S−144−1)を用いた。
【0211】
有機膜146の形成には、含酸素飽和複素環基を有するアクリル樹脂であるt−ブチルメタクリレート/グリシジルメタクリレート=37.5/62.5(質量比)の共重合体を10質量部、添加剤としてトリメリット酸0.3質量部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.5質量部並びに商品名「FC−4432」(住友スリーエム(株)製)0.005質量部、及び溶媒としてメチル−3−メトキシプロピオネート55.2質量部並びにプロピレングリコールモノメチルエーテル3.4質量部を含む組成物(S−146−1)を用いた。
【0212】
第4の実施形態に係る光学フィルタ層132を模式的に再現した評価用基板を、次の手順で作製した。
【0213】
まず、2枚の6インチシリコンウェハー上に、自動塗布現像装置(東京エレクトロン(株)製クリーントラック、商品名「MARK−Vz」)を用いて、組成物(S−146−1)をスピンコート法にてそれぞれ塗布した後、250℃で2分間ベークを行い、膜厚0.6μmの有機膜146を形成した。
【0214】
この有機膜146上に赤外線吸収性組成物(S−142−1)をスピンコート法にて塗布した後、100℃のホットプレートで2分間プレベークを行って、膜厚1.0μmの塗膜を形成した。その後、200℃のホットプレートで5分間ポストベークを行うことにより、赤外線カットフィルタ層142を有するシリコンウェハーを2枚作製した。
【0215】
1枚のシリコンウェハーについて、有機膜146上に形成した赤外線カットフィルタ層142の密着性を、JISK5400における碁盤目セロハンテープ剥離試験に準拠し、1mm角、計100個の碁盤目における残膜率で以下の基準で密着性を評価した。
残膜率が100〜90%の場合を「○」
残膜率が90未満〜50%の場合を「△」
残膜率が50未満〜0%の場合を「×」
【0216】
その結果、密着性は「○」であった。よって、有機膜146と赤外線カットフィルタ層142との密着性が良好であると判断された。
【0217】
次に、もう一枚のシリコンウェハーに対して、熱硬化性樹脂組成物(S−144−1)を、塗膜の乾燥膜厚が0.5μmになるように上記シリコンウェハーに塗布し、180℃のホットプレートを用いて30分間加熱処理を行なった。このようにして、第1の硬化膜144aを形成した。
【0218】
赤外線カットフィルタ層142上に形成した第1の硬化膜144aの密着性を、JISK5400における碁盤目セロハンテープ剥離試験に準拠し、1mm角、計100個の碁盤目における残膜率で上記と同様の基準で密着性を評価した。
【0219】
その結果、密着性は「○」であった。よって、赤外線カットフィルタ層142と第1の硬化膜144aとの密着性が良好であると判断された。
【0220】
実施例2
赤外線吸収剤としてYMF−02A(住友金属社製)を100質量部、バインダー樹脂としてアクリル樹脂であるベンジルメタクリレート/スチレン/N−フェニルマレイミド/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/2−エチルヘキシルメタクリレート/メタクリル酸=14/10/12/15/29/20(質量比)の共重合体(酸価130mgKOH/g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの33.9質量%溶液)を19.08質量部、重合性化合物としてトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルを1.48質量部、添加剤としてフッ素系界面活性剤であるフタージェントFTX−218(株式会社ネオス社製)を0.02質量部、及び溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを61.77質量部含む赤外線吸収性組成物(S−142−2)を使用した以外は実施例1と同様にして、有機膜146、赤外線カットフィルタ層142、第1の硬化膜144aの形成および評価を行った。その結果、有機膜146上に形成した赤外線カットフィルタ層142の密着性は「○」であり、赤外線カットフィルタ層142上に形成した第1の硬化膜144aの密着性は「○」であった。
【0221】
実施例3
無水マレイン酸10.00gをプロピレングリコールモノメチルエーテル90.00gに加熱溶解させ、10%の無水マレイン酸溶液を調製した。続いて、10%の調製した無水マレイン酸溶液1.80gと水43.95gを混合し、酸触媒溶液を調製した。
【0222】
続いて、フラスコにメチルトリメトキシシランを33.26g、フェニルトリメトキシシラン112.98g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルを108.00g加えて、冷却管及びあらかじめ調製した酸触媒溶液を入れた滴下ロートをセットした。次いで、上記フラスコをオイルバスにて50℃に加熱した後、上記酸触媒溶液をゆっくり滴下し、滴下が完了してから60℃で3時間反応させた。反応終了後、反応溶液の入ったフラスコを放冷した。
【0223】
次に、反応溶液を別のフラスコに移し、エバポレーターで固形分量が50%になるまで濃縮した後、固形分量が30%となるまでPGMEで希釈した。次いで、固形分量50%となるまで再度濃縮を行った後、固形分濃度量35質量%となるようにPGMEで希釈する操作を行い、残存している水やメタノールを除去することで、固形分濃度量35質量%のポリシロキサン溶液(Mw=760、Mn=640、Mw/Mn=1.6)を得た。
【0224】
赤外線吸収剤としてYMF−02A(住友金属社製)を100質量部、バインダー樹脂として上記合成したポリシロキサン溶液を22.73質量部、触媒として1−(4,7−ジブトキシ−1−ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホナートを0.27質量部、添加剤としてフッ素系界面活性剤であるフタージェントFTX−218(株式会社ネオス社製)を0.02質量部、及び溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを60.67質量部含む赤外線吸収性組成物(S−142−3)を使用した以外は実施例1と同様にして、有機膜146、赤外線カットフィルタ層142、第1の硬化膜144aの形成および評価を行った。その結果、有機膜146上に形成した赤外線カットフィルタ層142の密着性は「○」であり、赤外線カットフィルタ層142上に形成した第1の硬化膜144aの密着性は「○」であった。
【符号の説明】
【0225】
100・・・固体撮像装置、102・・・画素部、104・・・垂直選択回路、106・・・水平選択回路、108・・・サンプルホールド回路、110・・・増幅回路、112・・・A/D変換回路、114・・・タイミング発生回路、116・・・拡大部、117・・・画素、118・・・可視光検出用画素、120・・・赤外光検出用画素、122・・・第1の画素、124・・・第2の画素、126・・・基板、128・・・半導体層、130・・・配線層、132・・・光学フィルタ層、134・・・マイクロレンズアレイ、136・・・フォトダイオード、138・・・カラーフィルタ層、140・・・赤外線パスフィルタ層、142・・・赤外線カットフィルタ層、144・・・硬化膜、146・・・有機膜
図1
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図9