特許第6780508号(P6780508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6780508防水用のプロテクタ及びプロテクタ付きワイヤハーネス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6780508
(24)【登録日】2020年10月19日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】防水用のプロテクタ及びプロテクタ付きワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20201026BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20201026BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   H02G3/04 062
   B60R16/02 623U
   H01B7/00 301
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-1496(P2017-1496)
(22)【出願日】2017年1月9日
(65)【公開番号】特開2018-113739(P2018-113739A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉野 秀寿
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−164742(JP,A)
【文献】 特開2013−51800(JP,A)
【文献】 特開平6−288495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
B60R 16/02
H01B 7/00
F16L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に電線が挿通された管部材の継ぎ目に取り付けられる防水用のプロテクタであり、
全体として筒状をなすとともに前記管部材に密着可能なシール部材が取り付けられるシール取付部を有する合成樹脂製の本体部を備え、
前記本体部が、全長にわたって内部が開放されるように分割された一対の分割体を有し、
前記一対の分割体の合わせ面が、液密状に固着され
前記本体部が、前記管部材に設けられた穴部に嵌合する突部を備えているプロテクタ。
【請求項2】
前記シール部材が、弾力性を有する材料によって、前記一対の分割体の合体時に前記管部材の全周に密着可能なリング状をなすように形成された一対の分割リング部材を有し、
前記一対の分割リング部材は、それぞれが前記分割体に取り付けられ、前記一対の分割体が合体していない状態では、前記分割リング部材の周方向における少なくとも一端側が前記合わせ面から前記一対の分割体の合体方向に突出している請求項1に記載のプロテクタ。
【請求項3】
前記合わせ面が、前記本体部の外周面から径方向の外側に突出して設けられている請求項1または請求項2に記載のプロテクタ。
【請求項4】
前記合わせ面が、前記本体部の軸方向における端面から軸方向の外側に突出して設けられている請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のプロテクタ。
【請求項5】
電線と、
前記電線が内部に挿通された管部材と、
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のプロテクタと、
を備えているプロテクタ付きワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水用のプロテクタ及びプロテクタ付きワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤハーネス用の外装部品として、コルゲートチューブやプロテクタ、またグロメット等が知られている。例えば下記特許文献1には、複数の電線がシールドパイプ及びコルゲートチューブに一括して挿通されたワイヤハーネスが記載されている。コルゲートチューブは、シールドパイプの端部に接続された編組部材を包囲して保護している。このワイヤハーネスのシールドパイプとコルゲートチューブとの間には、グロメットが取り付けられている。グロメットは筒形状をなし、一端がシールドパイプの端部に外嵌し、他端がコルゲートチューブの端部に外嵌している。グロメットの両端部は、結束バンドによって締め付けられ、シールドパイプ及びコルゲートチューブに弾性的に密着している。このグロメットは、シールドパイプとコルゲートチューブとの継ぎ目から内部へ水が浸入することを防ぐ防水用の外装部品である。
【0003】
上記のようなグロメットは、シールドパイプの内部に電線を挿通し、編組部材をシールドパイプの端部にかしめ付け、編組部材をコルゲートチューブで覆う作業を行った後に、所定の位置に取り付けられる。グロメットは、先の作業の間はシールドパイプ側またはコルゲートチューブ側に配され、先の作業後に軸方向にずらされて所定の位置に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−92979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような構成のグロメットを取り付ける作業は非常に困難である。なぜなら、グロメットをシールドパイプまたはコルゲートチューブの外周側に取り付けたり、所定の位置までずらしたり、シールドパイプまたはコルゲートチューブの端部に外嵌させる等、一連の作業を、グロメットを押し広げつつ行わなければならないからである。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、取り付け作業を容易に行うことが可能な防水用のプロテクタ及びプロテクタ付きワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプロテクタは、内部に電線が挿通された管部材の継ぎ目に取り付けられる防水用のプロテクタであり、全体として筒状をなすとともに前記管部材に密着可能なシール部材が取り付けられるシール取付部を有する合成樹脂製の本体部を備え、前記本体部が、全長にわたって内部が開放されるように分割された一対の分割体を有し、前記一対の分割体の合わせ面が、液密状に固着されているものである。
本発明のプロテクタ付きワイヤハーネスは、電線と、前記電線が内部に挿通された管部材と、前記プロテクタと、を備えているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一対の分割体の間に、電線が挿通された管部材を挟むようにしてプロテクタを取り付けることができるから、取り付け作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施例におけるワイヤハーネスであって、プロテクタが取り付けられている状態を示す一部拡大斜視図
図2】プロテクタが取り付けられている状態のワイヤハーネスを示す一部拡大側面図
図3】プロテクタが取り付けられている状態のワイヤハーネスを示す一部拡大断面であって、図2のA−A位置における断面に相当する断面図
図4】分割体を示す平面図
図5】分割体を示す断面図であって、図4のB−B位置における断面に相当する断面図
図6】分割体が取り付けられている状態のワイヤハーネスを示す一部拡大斜視図
図7】プロテクタが位置決めされている状態のワイヤハーネスを示す一部切欠き断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好ましい形態を以下に示す。
本発明のプロテクタは、前記シール部材が、弾力性を有する材料によって、前記一対の分割体の合体時に前記管部材の全周に密着可能なリング状をなすように形成された一対の分割リング部材を有し、前記一対の分割リング部材は、それぞれが前記分割体に取り付けられ、前記一対の分割体が合体していない状態では、前記分割リング部材の周方向における少なくとも一端側が前記合わせ面から前記一対の分割体の合体方向に突出しているものとしてもよい。
このような構成によれば、一対の分割体の合体時には、一対の分割リング部材の周方向における端面が潰れて互いに隙間なく密着するから、一対の分割リング部材からなるシール部材のシール性を高めることができる。
【0011】
また、本発明のプロテクタは、前記本体部が、前記管部材に設けられた穴部に嵌合する突部を備えているものとしてもよい。このような構成によれば、突部が穴部に嵌合することにより、プロテクタが軸方向及び周方向に位置決めされるから、バンド締め付け作業を不要とすることができる。
【0012】
また、本発明のプロテクタは、前記合わせ面が、前記本体部の外周面から径方向の外側に突出して設けられているものとしてもよい。このような構成によれば、本体部の厚さ分だけを合わせ面とする場合に比して、本体部の全長にわたって合わせ面を増すことができるから、一対の分割体を強固に固着することができる。
【0013】
また、本発明のプロテクタは、前記合わせ面が、前記本体部の軸方向における端面から軸方向の外側に突出して設けられているものとしてもよい。このような構成によれば、本体部の端部において合わせ面を増すことができるから、一対の分割体をより強固に固着することができる。
【0014】
<実施例>
以下、本発明を具体化した一実施例について、図1図7を参照しつつ詳細に説明する。
本実施例におけるワイヤハーネスは、ハイブリッド車等に搭載されるものであり、車両の後部に搭載されたバッテリ等の機器と、車両の前部に搭載されたインバータ等の機器とを接続するものである。ワイヤハーネスの大部分は、車両の床下に配されるようになっている。
【0015】
ワイヤハーネスは、複数(本実施例では2本)の電線Wと、電線Wが内部に挿通されたパイプ10及びコルゲートチューブ(管部材)20と、パイプ10とコルゲートチューブ20との継ぎ目に取り付けられたプロテクタ30とを備えている。
【0016】
電線Wは、可撓性を有する通常の電線であり、端部には端子金具(図示せず)が接続され、端子金具は機器に接続可能なコネクタ(図示せず)に収容されている。
【0017】
パイプ10には、電線Wの途中部分が挿通されている。パイプ10は、金属製(銅あるいは銅合金、またアルミニウムあるいはアルミニウム合金等)であり、内部に通された電線Wから発生する電磁ノイズを遮蔽するシールド機能、及び床下に配されたときに飛び石等から電線Wを保護する保護機能を有している。パイプ10は、断面が真円形状をなす長尺なものであり、ワイヤハーネスの配索経路に沿うように所定の形状に曲げ加工されている。パイプ10の大部分は、車両の床下において前後方向に略水平に配される。
【0018】
パイプ10の端部には、図6及び図7に示すように、プロテクタ30を固定可能な穴部11が設けられている。穴部11は、円形状をなしてパイプ10を厚さ方向(内外方向)に貫通している。穴部11は、パイプ10の中心線を間にして対向する位置に一対が設けられている。一対の穴部11は、同形状とされ、パイプ10の中心線を基準に対称となっている。
【0019】
パイプ10の端部には、図示しない可撓性シールド部材が接続されている。可撓性シールド部材は、電線Wのうちパイプ10から導出されている部分を包囲し、電線Wから発生する電磁ノイズを遮蔽するものである。可撓性シールド部材は、金属素線を筒状に編み込んで形成された編組部材や金属テープ等であり、良好な可撓性を有している。可撓性シールド部材の一端部はパイプ10の端部に固着され、他端部はコネクタに接続される。
【0020】
コルゲートチューブ20は、可撓性シールド部材の外周側を覆って可撓性シールド部材を保護するものである。コルゲートチューブ20は、合成樹脂製であって、全周にわたって切れ目のない筒状をなしている。コルゲートチューブ20は、山部21と谷部22とが軸方向に交互に連続した蛇腹形状をなしている。
【0021】
プロテクタ30は、合成樹脂製であって、パイプ10及びコルゲートチューブ20に外嵌可能な筒状をなす本体部31を有している。合成樹脂製の本体部31は、例えばゴム製のもののように伸縮しないので、製品寸法のばらつきを小さくすることができる。
【0022】
本体部31の一端部は、図1に示すように、パイプ10の端部に外嵌可能な第1嵌合部32とされ、他端部は、コルゲートチューブ20の端部に外嵌可能な第2嵌合部33とされている。第1嵌合部32、第2嵌合部33及び第1嵌合部32と第2嵌合部33との間の中間部34は、いずれも円筒形状をなしている。第1嵌合部32は、第2嵌合部33よりも径寸法が小さく、中間部34は、第1嵌合部32及び第2嵌合部33よりも径寸法が小さくされている。第1嵌合部32と中間部34との間、第2嵌合部33と中間部34との間には段差部35が形成されている。
【0023】
本体部31には、図7に示すように、パイプ10に設けられた穴部11に嵌合可能な突部39が設けられている。突部39は、第1嵌合部32の内周面に突設されている。突部39は、第1嵌合部32のうち後述する増厚部57よりも内側(軸方向における中心側)に全体がずれて設けられ、第1嵌合部32の軸方向における中心に位置している。
【0024】
突部39は、穴部11に整合した円形断面を有している。突部39の突出寸法は、パイプ10の厚さ寸法と同等もしくはパイプ10の厚さ寸法よりも若干大きい寸法とされている。突部39は、第1嵌合部32の中心線を間にして対向する位置に一対が設けられている。一対の突部39は、同形状とされ、第1嵌合部32の中心線を基準に対称とされている。
【0025】
第2嵌合部33には、コルゲートチューブ20の谷部22に入り込み可能な係止突条38が設けられている(図3参照)。係止突条38は、第2嵌合部33の内周面において全周にわたって内側に突出している。係止突条38は、複数(本実施例では4つ)が設けられている。複数の係止突条38は、コルゲートチューブ20の谷部22の間隔に合わせて等間隔で配されている。係止突条38は、第2嵌合部33側の本体部31の端面37よりも若干内側に位置している(図4参照)。
【0026】
本体部31には、パイプ10の外周面に密着可能な第1シール部材51、及びコルゲートチューブ20の外周面に密着可能な及び第2シール部材52が取り付けられている(図3参照)。
【0027】
第1シール部材51及び第2シール部材52は、弾力性を有する材料(ゴムやエラストマー等)によって本体部31とは別体に形成され、それぞれパイプ10及びコルゲートチューブの全周に密着可能なリング状をなしている。第1シール部材51は、第2シール部材52よりも一回り小さく、また細いものとされている。第2シール部材52は、コルゲートチューブ20の山部21と同等の幅寸法を有している。
【0028】
本体部31には、第1シール部材51及び第2シール部材52がそれぞれ取り付けられる第1シール取付部55及び第2シール取付部56が設けられている。
第1シール取付部55は、図3に示すように、第1嵌合部32に設けられている。第1シール取付部55は、第1嵌合部32の内周面において他の部分よりも一段外側に凹んだ溝状をなしている。第1シール取付部55は、第1嵌合部32の全周に連続して延びている。
【0029】
第1シール取付部55は、第1嵌合部32のうち他の部分よりも厚さ寸法が増している部分(以後、増厚部57と称する)に形成されている。増厚部57は、図2に示すように、第1嵌合部32側の本体部31の端面37に沿って設けられ、全周にわたって外周側が一段突出した形態をなしている。増厚部57の内周面は、図3に示すように、第1嵌合部32の内周面のうち他の部分と段差なく連なっている。増厚部57は、第1シール取付部55の凹み寸法(深さ寸法)と同等の寸法分が、第1嵌合部32の他の部分に比して厚くされている。第1シール取付部55は、増厚部57の幅方向(本体部31の軸方向)における略中心に設けられている。
【0030】
第2シール取付部56は、図3に示すように、第2嵌合部33に設けられている。第2シール取付部56は、第2嵌合部33の内周面において他の部分よりも一段外側に凹んだ溝状をなしている。第2シール取付部56は、第2嵌合部33の全周に連続して延びている。
【0031】
第2シール取付部56は、隣接する一対の係止突条38の間(コルゲートチューブ20の山部21が嵌合する部位)に設けられ、一対の係止突条38の間の全幅に形成されている。第2シール取付部56は、他の一対の係止突条38の間の部分に比して一段深く掘り下げられた溝状をなしている。第2シール取付部56は、複数の係止突条38のうち最も端面37に近い位置に配された係止突条38と、この係止突条38と隣接する位置に配された係止突条38との間に設けられている。
【0032】
第1シール部材51及び第2シール部材52は、第1シール取付部55及び第2シール取付部56に隙間なく嵌合している。第1シール部材51及び第2シール部材52は、それぞれ弾性的に若干潰れることで生じる自身の弾性力によって第1シール取付部55及び第2シール取付部56に保持されてもよいし、接着等によって第1シール取付部55及び第2シール取付部56に固定されてもよい。
【0033】
本体部31は、全長にわたって内部が開放されるように分割された一対の分割体40を有し、一対の分割体40の合わせ面41が、液密状に固着されている。一対の分割体40は、本体部31を略半分に分割したものであり、各分割体40は、断面半円形状をなしている。一対の分割体40は、幅方向における両端部(合わせ面41)同士が合わさって本体部31を構成する。一対の分割体40は、突部39が幅方向の中心に位置するように本体部31を分割してなり、互いに同形状をなしている。
【0034】
分割体40は、合わせ面41に沿って水平(分割体40の合体方向と直交する方向)に突出する突縁部42を有している。突縁部42は、本体部31の外周面46に対して略垂直に突出している。突縁部42は、分割体40の全長にわたって連続した薄い板状をなしている。また、突縁部42は、本体部31の両端面37から軸方向の外側に突出している。突縁部42の一面が、一対の分割体40の合わせ面41の一部を構成し、本体部31の厚さ寸法分よりも合わせ面41を増すように機能している。
【0035】
合わせ面41は、図4に示すように、本体部31の厚さ寸法と同等の幅寸法を有する部分(以後、第1合わせ部43と称する)と、本体部31の外周面46から径方向の外側に突出して設けられた部分(以後、第2合わせ部44と称する)と、本体部31の軸方向における端面37から軸方向の外側に突出して設けられた部分(以後、第3合わせ部45と称する)とを備えている。第2合わせ部44及び第3合わせ部45は、突縁部42の一面によって構成されている。
【0036】
第1合わせ部43及び第2合わせ部44は、分割体40の幅方向における両端部において本体部31を構成する部分の全長にわたって設けられている。第3合わせ部45の軸方向の寸法(本体部31の端面37からの突出寸法)は、第2合わせ部44の幅寸法(本体部31の外周面46からの突出寸法)と同等とされている。また、第3合わせ部45の径方向の寸法(図4の上下方向の寸法)は、第1合わせ部43及び第2合わせ部44をあわせた径方向の寸法(図4の上下方向の寸法)と同等とされている。これにより、第1合わせ部43、第2合わせ部44及び第3合わせ部45を含む合わせ面41の幅寸法は、全長にわたり概ね一定とされている。なお、合わせ面41は、全体として段差のない略水平な面とされている。
第1シール取付部55及び第2シール取付部56は、各分割体40の合わせ面41において周方向の両端が開放されている。
【0037】
第1シール部材51及び第2シール部材52は、一対の分割体40の合体時にリング状をなすように形成された一対の第1分割リング部材53及び一対の第2分割リング部材54を有している。
【0038】
第1分割リング部材53及び第2分割リング部材54は、それぞれ第1シール部材51及び第2シール部材52を概ね半分に割った形状をなし、合体前の各分割体40に予め取り付けられる(図5参照)。合体前の分割体40に取り付けられた第1分割リング部材53及び第2分割リング部材54の周方向における一端側は、合わせ面41から一対の分割体40の合体方向(第1分割リング部材53及び第2分割リング部材54の周方向)に突出している。第1分割リング部材53及び第2分割リング部材54のうち合わせ面41から突出している部分(以後、それぞれ第1シール突部58及び第2シール突部59と称する)は、各分割体40において同じ側に配されている。また、第1シール突部58及び第2シール突部59の突出寸法は同等とされている。第1分割リング部材53及び第2分割リング部材54の両端部のうち第1シール突部58及び第2シール突部59とは反対側の端部は、合わせ面41と段差なく面一に連なっている。
【0039】
次に、本実施例におけるプロテクタ30をワイヤーネスに取り付ける作業の一例を説明する。予め、複数の電線Wをパイプ10に挿通し、パイプ10から導出している電線Wを内部に通しつつ可撓性シールド部材をパイプ10の端部に固着し、可撓性シールド部材の外周にコルゲートチューブ20を被せ付けておく。
【0040】
まず、一対の分割体40のうち一方の分割体40をワイヤハーネスに取り付ける(図6参照)。第1嵌合部32をパイプ10の端部に嵌合し、第2嵌合部33をコルゲートチューブ20の端部に嵌合する。このとき、突部39をパイプ10の穴部11に嵌め入れる。突部39は穴部11にほぼ隙間なく嵌合し、分割体40はパイプ10の端部に対して軸方向及び径方向の位置ずれが規制された状態で取り付けられる。また、係止突条38をコルゲートチューブ20の谷部22に嵌め入れる。係止突条38の間にコルゲートチューブ20の山部21が入り込み、分割体40はコルゲートチューブ20の端部に対して軸方向の位置ずれが規制された状態で取り付けられる。一方の分割体40をワイヤハーネスに取り付けた状態では、第1分割リング部材53が、パイプ10の外周面に当接した状態になり、第2分割リング部材54が、コルゲートチューブ20の山部21に当接した状態になる。
【0041】
次に、他方の分割体40をワイヤハーネスに取り付ける。一方の分割体40と同様、突部39をパイプ10の穴部11に嵌め入れつつ第1嵌合部32をパイプ10の端部に嵌合し、係止突条38をコルゲートチューブ20の谷部22に嵌め入れつつ第2嵌合部33をコルゲートチューブ20の端部に嵌合する。
【0042】
次に、一対の分割体40を合体させる。一対の分割体40の合わせ面41に接着剤を塗布して接着し、もしくは一対の分割体40の合わせ面41を合わせた状態で溶着する(例えばレーザー溶接や超音波溶接等)。
【0043】
一対の分割体40が合体することにより、一方の第1分割リング部材53の第1シール突部58が弾性的に潰れて他方の第1分割リング部材53の端部に周方向に密着し、一対の第1分割リング部材53が全周にわたって連続するように合体し第1シール部材51を構成する。第1シール部材51は、弾性的に潰れてパイプ10の外周面に全周にわたって隙間なく密着し、プロテクタ30とパイプ10との間が止水される。
【0044】
また、一対の分割体40が合体することにより、一方の第2分割リング部材54の第2シール突部59が弾性的に潰れて他方の第2分割リング部材54の端部に周方向に密着し、一対の第2分割リング部材54が全周にわたって連続するように合体し第2シール部材52を構成する。第2シール部材52は、弾性的に潰れてコルゲートチューブ20の山部21に全周にわたって隙間なく密着し、プロテクタ30とコルゲートチューブ20との間が止水される。
【0045】
一対の突部39は、パイプ10の穴部11に嵌合し、プロテクタ30はパイプ10の端部に固定される。また、係止突条38は、全周が閉じる(連続する)とともに、コルゲートチューブ20の谷部22に入り込み、プロテクタ30はコルゲートチューブ20の端部に固定される。本体部31は合成樹脂製であって剛性が高く、拡開変形しないため、突部39と穴部11との嵌合状態、及び係止突条38と谷部22との嵌合状態は強固に維持される。
こうして、プロテクタ30をワイヤハーネスに取り付ける作業が完了する。
【0046】
次に、上記のように構成された実施例の作用および効果について説明する。
本実施例のワイヤハーネスは、電線Wと、電線Wが内部に挿通されたパイプ10及びコルゲートチューブ20と、パイプ10及びコルゲートチューブ20の継ぎ目に取り付けられるプロテクタ30と、を備えているものである。プロテクタ30は、全体として筒状をなす合成樹脂製の本体部31を備え、本体部31には、パイプ10及びコルゲートチューブ20に密着可能な第1シール部材51及び第2シール部材52が取り付けられる第1シール取付部55及び第2シール取付部56が設けられている。本体部31は、全長にわたって内部が開放されるように分割された一対の分割体40を有し、一対の分割体40の合わせ面41が、液密状に固着されている。
【0047】
この構成によれば、一対の分割体40の間に、電線Wが挿通されたパイプ10及びコルゲートチューブ20を挟むようにしてプロテクタ30を取り付けることができるから、取り付け作業を容易に行うことができる。
【0048】
また、第1シール部材51及び第2シール部材52が、弾力性を有する材料によって、一対の分割体40の合体時にパイプ10及びコルゲートチューブ20の全周に密着可能なリング状をなすように形成された一対の第1分割リング部材53及び第2分割リング部材54を有し、一対の分割リング部材53,54は、それぞれが分割体40に取り付けられ、一対の分割体40が合体していない状態では、第1分割リング部材53及び第2分割リング部材54の周方向における一端側が合わせ面41から一対の分割体40の合体方向に突出している。この構成によれば、一対の分割体40の合体時には、一対の第1分割リング部材53及び第2分割リング部材54の周方向における端面が潰れて互いに隙間なく密着するから、一対の第1分割リング部材53または一対の第2分割リング部材54からなる第1シール部材51及び第2シール部材52のシール性を高めることができる。
【0049】
また、本体部31が、パイプ10に設けられた穴部11に嵌合する突部39を備えている。この構成によれば、突部39が穴部11に嵌合することにより、プロテクタ30が軸方向及び周方向に位置決めされるから、バンド締め付け作業を不要とすることができる。
【0050】
加えて、本体部31が、コルゲートチューブ20の谷部22に入り込み可能な係止突条38を備えている。この構成によれば、係止突条38が谷部22に嵌合することにより、プロテクタ30が軸方向に位置決めされるから、バンド締め付け作業を不要とすることができる。
よって、プロテクタ30のずれを防止するための結束バンドやテープ等の固定手段が不要になるため部品点数を減らすことができる。
【0051】
また、合わせ面41が、本体部31の外周面46から径方向の外側に突出して設けられている。この構成によれば、本体部31の厚さ分だけを合わせ面とする場合に比して、本体部31の全長にわたって合わせ面41を増すことができるから、一対の分割体40を強固に固着することができる。
【0052】
また、合わせ面41が、本体部31の軸方向における端面37から軸方向の外側に突出して設けられている。この構成によれば、本体部31の端部において合わせ面を増すことができるから、一対の分割体40をより強固に固着することができる。
【0053】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、パイプ10は、シールド機能及び保護機能を備えているが、これに限らず、パイプは、例えば合成樹脂製の管部材等、保護機能のみを備えたものであってもよい。
(2)上記実施例では、パイプ10は金属管とされているが、これに限らず、パイプは、例えば、樹脂パイプ内に金属箔を同心で埋め込んだ構造のもの等であってもよい。
(3)上記実施例では、管部材が、形状保持性に優れたパイプ10、及び可撓性に優れたコルゲートチューブ20である場合を例示したが、これに限らず、管部材は、両方ともが形状保持性に優れた形状保持部材であってもよく、また両方ともが可撓性に優れた可撓部材であってもよい。
(4)上記実施例では、分割体40が同形状とされているが、必ずしも分割体は同形状でなくてもよい。
(5)上記実施例では、突部39及び穴部11が一対ずつ設けられているが、これに限らず、突部及び穴部は1ずつ、または3以上ずつ設けてもよい。
(6)上記実施例では、合体前の分割体40に取り付けられた第1分割リング部材53及び第2分割リング部材54の周方向における一端側が、合わせ面41から突出しているが、これに限らず、例えば第1分割リング部材及び第2分割リング部材の周方向における両端部を合わせ面から突出させてもよい。
(7)上記実施例では、第1分割リング部材53及び第2分割リング部材54が予め分割体40に取り付けられているが、これに限らず、例えば管部材側にOリングを予め嵌め着けてもよく、この場合には、各分割体のシール取付部をOリングの位置に合わせるようにして分割体を取り付けるようにしてもよい。
(8)上記実施例では、シール部材51,52がリング状をなす部品とされているが、これに限らず、シール部材は、リング状をなす部品でなくてもよく、例えばシール取付部に塗布された硬化性の止水剤(例えばポッティング剤)等であってもよい。
(9)上記実施例では、第1シール部材51及び第2シール部材52が一ずつ設けられているが、これに限らず、第1シール部材または第2シール部材を2以上ずつ設けてもよい。
【符号の説明】
【0054】
W…電線
10…パイプ(管部材)
11…穴部
20…コルゲートチューブ(管部材)
30…プロテクタ
31…本体部
39…突部
40…分割体
41…合わせ面
51…第1シール部材
52…第2シール部材
53…第1分割リング部材
54…第2分割リング部材
55…第1シール取付部
56…第2シール取付部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7