(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る燃料電池システムについて
図1〜
図6を用いて説明する。この燃料電池システム1は例えば電気自動車に適用される。
図1は本実施形態に係る燃料電池システム1の全体構成を示した図であり、
図2は、燃料電池システム1の空気流路20を模式的に示した図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の燃料電池システム1は、水素と酸素との電気化学反応を利用して電力を発生する燃料電池10を備えている。この燃料電池10は、図示しない電気負荷や2次電池等の電気機器に電力を供給するものである。因みに、電気自動車の場合、車両走行駆動源としての電動モータが電気負荷に相当している。
【0014】
本実施形態では燃料電池10として固体高分子電解質型燃料電池を用いており、基本単位となるセル10aが集電板11、12の間に複数積層され、かつ電気的に直列接続されている。
【0015】
燃料電池10の複数のセル10aでは、それぞれ、以下の水素と酸素の電気化学反応が起こり電気エネルギーが発生する。
【0016】
負極側:H
2→2H
++2e
-
正極側:2H
++1/2O
2+2e
-→H
2O
これにより、上記電気化学反応に伴って、複数のセル10aを通して集電板11、12の間には電流が流れる。集電板11、12のうち一方の集電板は、セル10aに対してその面方向に分散化して電流を供給し、他方の集電板は、セル10aにその面方向に分散して流れる電流を集める。
【0017】
燃料電池システム1には、燃料電池10の空気極(正極)側に空気(酸素)を供給するための空気流路20と、燃料電池10の水素極(負極)側に水素を供給するための水素流路30が設けられている。ここで、空気流路20における燃料電池10より上流側を空気供給流路20aといい、下流側を空気排出路20bという。また、水素流路30における燃料電池10より上流側を水素供給流路30aといい、下流側を水素排出流路30bという。なお、空気は本発明の酸化剤ガスに相当し、水素は本発明の燃料ガスに相当している。
【0018】
空気供給流路20aの最上流部には、大気中から吸入した空気を燃料電池10に圧送するための空気ポンプ21が設けられ、空気供給流路20aにおける空気ポンプ21と燃料電池10との間には、空気への加湿を行う加湿器22と空気ポンプ21から圧送された空気を分流させるための空気分流機構70が設けられている。空気分流機構70は、流量調整部に相当する。また、空気排出路20bには、燃料電池10内の空気の圧力を調整するための空気調圧弁23が設けられている。
【0019】
水素供給流路30aの最上流部には、水素が充填された高圧水素タンク31が設けられ、水素供給流路30aにおける高圧水素タンク31と燃料電池10との間には、燃料電池10に供給される水素の圧力を調整するための水素調圧弁32が設けられている。
【0020】
水素排出流路30bには、水素供給流路30aにおける水素調圧弁32の下流側に接続されて閉ループを構成する水素循環流路30cが分岐して設けられており、これにより水素流路30内で水素を循環させて、未反応の水素を燃料電池10に再供給するようにしている。そして、水素循環流路30cには、水素流路30内で水素を循環させるための水素ポンプ33が設けられている。
【0021】
燃料電池10は発電効率確保のために運転中一定温度(例えば80℃程度)に維持する必要がある。このため、燃料電池10を冷却するための冷却システムが設けられている。冷却システムには、燃料電池10に冷却水(熱媒体)を循環させる冷却水経路40、冷却水を循環させるウォータポンプ41、およびファン42を備えたラジエータ(放熱器)43が設けられている。
【0022】
冷却水経路40には、冷却水をラジエータ52をバイパスさせるためのバイパス経路44が設けられている。冷却水経路40とバイパス経路44との合流点には、バイパス経路44に流れる冷却水流量を調整するための流路切替弁45が設けられている。また、冷却水経路40における燃料電池10の出口側近傍には、燃料電池10から流出した冷却水の温度を検出する温度検出手段としての温度センサ46が設けられている。この温度センサ46により冷却水温度Wtを検出することで、燃料電池10の温度を間接的に検出することができる。
【0023】
燃料電池システム1は、各種制御を行う制御部(ECU)50およびセルモニタ60を備えている。制御部50は、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータとその周辺回路にて構成されている。セルモニタ60は、セル10aから出力される電圧をセル10a毎に測定する。
【0024】
制御部50は、セルモニタ60によって測定された各セル10aの電圧および温度センサ46の検出温度等に基づいて空気ポンプ21、加湿器22、空気分流機構70、空気調圧弁23、水素調圧弁32、水素ポンプ33、ウォータポンプ41、流路切替弁45を制御する。
【0025】
図2、
図3に示すように、空気分流機構70は、導入ポート71aと、第1〜第3導出ポート71b〜71dと、を有する筐体71を備えている。
【0026】
導入ポート71aは、加湿器22を介して空気ポンプ21に接続されている。第1導出ポート71bは、空気入口マニホールド13に接続され、第2導出ポート71cは、端部供給ライン14に接続され、第3導出ポート71dは、バイパスライン15に接続されている。なお、空気入口マニホールド13は、第1空気供給路に相当し、端部供給ライン14は、第2空気供給路に相当する。
【0027】
筐体71には、第1導出ポート71bから空気ポンプ21から圧送された空気が導入される。空気分流機構70は、導入ポート71aから導入された空気を、空気入口マニホールド13、端部供給ライン14およびバイパスライン15に供給する。空気分流機構70は、後述する制御部50からの信号に応じて、空気入口マニホールド13、端部供給ライン14およびバイパスライン15に供給する空気の流量を調整する。
【0028】
空気入口マニホールド13は、空気分流機構70より導入された空気を各セル10aのそれぞれに分配する。空気分流機構70より導入された空気は、空気入口マニホールド13を介して各セル10aの全体に供給される。
【0029】
端部供給ライン14は、空気分流機構70より導入された空気を、各セル10aのうち集電板12側の端部に配置された複数の端部セル10aに向けて局所的に供給する。端部供給ライン14は、一端が空気分流機構70の第2導出ポート71cに接続され、他端が閉塞されたチューブ形状を成すチューブ部材14aを有している。チューブ部材14aにおける他端側の端部の近くの側面には、空気分流機構70の第2導出ポート71cから導入された空気を各セル10aのうち集電板12側の端部に配置された複数の端部セル10aに向けて吹き出す吹出口14bが設けられている。
【0030】
空気出口マニホールド16は、各セル10aから排出される生成水や不純物を空気とともに燃料電池10の外部へ排出する。各セル10aから排出される生成水、不純物、空気等は、空気出口マニホールド16を介して燃料電池10の外部へ排出される。
【0031】
バイパスライン15は、空気分流機構70より導入された空気を、燃料電池10を迂回させて空気出口マニホールド16へ合流させる。空気出口マニホールド16は、例えば、氷点下で燃料電池システム1を始動する際に、空気出口マニホールド16に多く含まれる燃料ガスをバイパスライン15より導入された空気で希釈するために設けられている。
【0032】
次に、空気分流機構70の構造について
図3、
図4を用いて説明する。
図3に示すように、空気分流機構70は、筐体71、モータ721、回転弁722、ピニオンギア723およびシャット弁724を有している。モータ721、回転弁722、ピニオンギア723およびシャット弁724は、筐体71内に収納されている。なお、モータ721は、パルス信号の入力に応じて回転角度を制御するステッピングモータにより構成されている。
【0033】
筐体71は、導入ポート71aと、第1〜第3導出ポート71b〜71dと、を有している。
【0034】
回転弁722は、モータ721の回転軸に結合された扇形のロータリードアとして形成されている。回転弁722は、モータ721の回転軸を中心としてこの回転軸の軸周り方向に回動する。回転弁722は、円弧状の曲面部722aを有し、この曲面部722aにて、第1〜第3導出ポート71b〜71dの開度を調整する。ピニオンギア723は、モータ721の回転軸に固定されている。
【0035】
シャット弁724は、平板状の棒に歯すじが形成されたラックギア724aと、第2導出ポート71c内に配置され、ラックギア724aの一端に接続された弁機構724bと、を備えている。モータ721の回転軸の回転によりピニオンギア723に回転力が与えられると、ピニオンギア723に噛み合わされたラックギア724aが直線移動させられる。このラックギア724aの直線移動によりラックギア724aの一端に接続された弁機構724bが第2導出ポート71cを開閉する。シャット弁724は、回転弁722に連動して第2導出ポート71cを開閉する。
【0036】
図4(a)〜(c)は、第1〜第3導出ポート71b〜71dにおける回転弁722とシャット弁724の状態を表している。
【0037】
図4(a)は、回転弁722により第3導出ポート71dが閉じられ、第1導出ポート71bと第2導出ポート71cの開度が大となっている状態を表している。
【0038】
図4(b)は、回転弁722により第3導出ポート71dが閉じられ、第1導出ポート71bの開度が大となり、弁機構724bにより第2導出ポート71cの開度が小となった状態を表している。
【0039】
図4(c)は、回転弁722により第3導出ポート71dが閉じられ、弁機構724bによりシャット弁75により第2導出ポート71cが閉じられ、第1導出ポート71bの開度が大となった状態を表している。
【0040】
次に、本実施形態の燃料電池システム1の作動について説明する。
【0041】
制御部50は、アクセルペダルの操作量などに応じて燃料電池10の要求電力を算出するとともに、この算出される要求電力に燃料電池10から実際の出力される電力(以下、実際の電力という)を近づけるために、空気ポンプ21、加湿器22、空気分流機構70、空気調圧弁23、水素調圧弁32、水素ポンプ33、ウォータポンプ41、流路切替弁45を制御する通常時処理を行う。
【0042】
ここで、要求電力は、燃料電池10から出力されることが要求される電力であって、アクセルペダルの操作量が大きくなるほど、要求電力が大きくなる。燃料電池10の実際の電力は、セルモニタ60により測定された各セル10aの電圧によって求められる。
【0043】
この際に、水素タンク31から燃料電池10に水素調圧弁32により調圧された水素が吐出する。水素ポンプ33は、水素供給流路30a→燃料電池10の複数のセル10a→水素排出流路30bの順に流れる水素の流れを発生させる。
【0044】
これに伴い、水素排出流路30bは、燃料電池10の複数のセル10aから排出された反応水等の廃液を排気弁34を通して排出する。
【0045】
空気ポンプ21は、大気中から空気を吸い込んでこの吸い込んだ空気を空気供給流路20aへ圧送する。空気供給流路20aに圧送された空気は、加湿器22により加湿された後、空気分流機構70に導入される。
【0046】
ここで、通常時、空気分流機構70は、空気供給流路20aより導入された空気の全量を空気入口マニホールド13に導入する。空気入口マニホールド13に流れ込んだ空気は、複数のセル10aのそれぞれに分配される。この分配された空気は、複数のセル10aのそれぞれを通過して空気出口マニホールド16に集合される。この集合された空気は、空気出口マニホールド16から空気排気流路20bに設けられた空気調圧弁23を通して排出される。
【0047】
また、例えば、氷点下で燃料電池システム1を始動する際には、空気分流機構70は、空気入口マニホールド13に導入する空気の流量を減少させて各セル10aの発熱を促進させるとともに、バイパス経路44に導入する空気の流量を多くする。このとき、燃料ガスが空気極側に透過してきて空気出口マニホールド16に多量の燃料ガスが流れ込む。しかし、空気出口マニホールド16に流れ込んだ燃料ガスは、バイパス経路44に導入された空気で希釈されて外部に排出される。
【0048】
本実施形態の制御部は、例えば、複数のセル10aのうち集電板12側の端部に配置された複数の端部セル10aの電圧が目標電圧よりも低下した場合に、空気分流機構70から空気入口マニホールド13に導入される空気の流量を減少させるとともに、空気分流機構70から端部供給ライン14に導入される空気の流量を増加させる処理を実施する。
【0049】
図5に、この処理のフローチャートを示す。制御部50は、上記した通常時処理と並行して
図5に示す処理を周期的に実施する。なお、各図面のフローチャートにおける各制御ステップは、制御部50が有する各種の機能実現部を構成している。
【0050】
まず、S100にて、端部セル10aの電圧を取得する。具体的には、セルモニタ60から集電板12側の端部セル10aの電圧を取得する。
【0051】
次に、S102にて、端部セル10aの電圧が予め定められた目標電圧よりも低下しているか否かを判定する。
【0052】
ここで、端部セル10aの電圧が予め定められた目標電圧以上となっている場合、空気分流機構70から空気入口マニホールド13に導入される空気の流量を変更することなく本処理を終了する。具体的には、空気分流機構70から空気入口マニホールド13に、空気分流機構70に導入された全ての空気が導入されるよう空気分流機構70を制御する。
【0053】
また、冷却されやすい端部セル10aに生成水の滞留が生じて端部セル10aの空気極に十分な空気を供給できない状態(フラッディング)になっており、端部セル10aの電圧が予め定められた目標電圧よりも低下している場合、S102の判定はYESとなり、S104にて、空気分流機構70から端部供給ライン14に流す空気の増加量Xを特定する。具体的には、目標電圧と端部セル10aの電圧の差分を変数とする関数Fを用いて端部供給ライン14に流す空気の増加量Xを特定する。なお、関数Fは、制御部50のROMに予め記憶されている。
【0054】
次に、空気入口マニホールド13に流れる空気の流量と端部供給ライン14に流れる空気の流量が、S104にて特定した増加量Xに基づく流量となるよう端部供給ライン14を制御する(S106)。具体的には、空気入口マニホールド13に流れる空気の流量は流量X分だけ減少し、端部供給ライン14に流れる空気の流量は流量X分だけ増加するよう端部供給ライン14を制御する。
【0055】
これにより、端部セル10aに生成水の滞留が生じて端部セル10aの電圧が目標電圧よりも低下したときに、空気入口マニホールド13から各セル10aに供給される空気の流量を低下させるとともに、端部供給ライン14を介して端部セル10aに供給する空気の流量が増加する。
【0056】
なお、端部供給ライン14を介して端部セル10aに供給する空気の流量が増加するので、フラッディングが生じている端部セル10aに溜まった生成水を飛ばすことが可能となる。また、空気入口マニホールド13から各セル10aに供給される空気の流量を低下させるので、フラッディングが生じていないセル10aが乾いてしまうといったことを防止することも可能である。
【0057】
図6は、空気分流機構70および端部供給ライン14を備えることなく空気入口マニホールド13から各セル10aに空気を供給する従来の燃料電池システムと、空気分流機構70、空気入口マニホールド13および端部供給ライン14を備えた本発明の燃料電池システムの空気過剰率に対するスタック電圧の特性を示した図である。なお、空気過剰率は、実際に供給された空気の質量を理論上必要な最少空気質量で除した値をいう。ここでは、燃料電池10の端部セル10aにフラッディングを生じさせた状態で、空気ポンプ21から圧送される空気の流量を変化させて空気過剰率を変化させている。
【0058】
従来の燃料電池システムでは、特に、空気過剰率が1.1〜1.3程度のときにセル10全体の電圧が大きく低下している。これに対し、本実施形態の燃料電池システムでは、端部セル10aの電圧向上によりセル10a全体の電圧が上昇している。すなわち、本実施形態の燃料電池システムは、従来の燃料電池システムよりも発電効率が向上している。
【0059】
上記した構成によれば、燃料電池システムは、複数のセルのうち第1の範囲に向けて空気を供給する第1空気供給路13と、複数のセルのうち第1の範囲と異なる第2の範囲に向けて空気を供給する第2空気供給路14と、第1空気供給路に供給する空気の流量と第2空気供給路に供給する空気の流量を調整する流量調整部70と、を備えている。
【0060】
このような構成によれば、複数のセルのうち第1の範囲に供給する空気の流量と、複数のセルのうち第1の範囲と異なる第2の範囲に向けて供給する空気の流量を調整することができ、複数のセルへ向けて適正に空気を供給することができる。
【0061】
ここで、第1の範囲は、複数のセルの全体を含む範囲とし、第2の範囲は、複数のセルのうち少なくとも一方の端部に配置されたセルに対応する範囲とすることができる。
【0062】
また、燃料電池システムは、空気を圧送する空気ポンプ21を備えている。また、流量調整部70は、空気ポンプ21から圧送された空気を導入する導入ポート71a、第1空気供給路13に空気を導出する第1導出ポート71bおよび第2空気供給路14に空気を導出する第2導出ポート71cを有する筐体71と、筐体71内に移動可能に配置され、第1導出ポート71bおよび第2導出ポート71cの開度を調整する流量調整機構721〜724と、を備えている。
【0063】
このように、流量調整部70は、導入ポート71a、第1導出ポート71bおよび第2導出ポート71cを有する筐体71と、第1導出ポート71bおよび第2導出ポート71cの開度を調整する流量調整機構721〜724により構成することができる。
【0064】
また、流量調整機構721〜724は、モータ721の回転軸を中心として該回転軸の回転軸周り方向に回動する回転弁722を有し、回転弁722の位置に応じて第1導出ポート71bおよび第2導出ポート71cの開度を調整することができる。
【0065】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について
図7を参照して説明する。上記第1実施形態の端部供給ライン14は、空気分流機構70より導入された空気を、各セル10aのうち集電板12側の端部に配置された複数の端部セル10aに向けて集中的に供給している。これに対し、本実施形態の端部供給ライン14は、
図7に示すように、空気分流機構70より導入された空気を、各セル10aのうち集電板11側と集電板12側の両側の端部に配置された複数の端部セル10aに向けて集中的に供給する。
【0066】
端部供給ライン14は、チューブ部材14a、吹出口14bおよび吹出口14cを有している。吹出口14bは、空気分流機構70の第2導出ポート71cから導入された空気を各セル10aのうち集電板12側の端部に配置された複数の端部セル10aに向けて吹き出す。
【0067】
吹出口14cは、空気分流機構70の第2導出ポート71cから導入された空気を各セル10aのうち集電板11側の端部に配置された複数の端部セル10aに向けて吹き出す。
【0068】
このように、端部供給ライン14は、空気分流機構70より導入された空気を、複数のセル10aのうち両方の端部に配置された複数のセル10aに向けて集中的に分配することもできる。
【0069】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について
図8を参照して説明する。本実施形態の燃料電池システムは、上記第1実施形態の燃料電池システムに対し、さらに、端部供給ライン14から供給される空気を集電板12側の端部セル10aへ案内する仕切板18aを備えている。
【0070】
これによれば、仕切板18aにより端部供給ライン14から供給される空気が集電板12側の端部セル10a以外の部位へ流れ出るのが防止されるので、仕切板18aを設けていない場合と比較して集電板12側の端部セル10aへ十分な空気を供給することができる。
【0071】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について
図9を用いて説明する。本実施形態の燃料電池システムは、上記第2実施形態の燃料電池システムに対し、さらに、端部供給ライン14から供給される空気を集電板12側の端部セル10aへ案内する仕切板18aと、集電板11側の端部セル10aへ案内する仕切板18bを備えている。
【0072】
これによれば、さらに、仕切板18bにより端部供給ライン14から供給される空気が集電板11側の端部セル10a以外の部位へ流れ出るのも防止されるので、集電板12側の端部セル10aへ十分な空気を供給することができる。
【0073】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態について
図10を用いて説明する。上記第1〜第4実施形態の空気分流機構70は、モータ721の回転軸の回転に伴う回転弁722の回転およびシャット弁724の移動により空気入口マニホールド13、端部供給ライン14およびバイパスライン15に供給する空気の流量を調整している。これに対し、本実施形態の空気分流機構70は、ピニオンギア732および分流スリット731を有し、ピニオンギア732の回転に伴って分流スリット731が直線移動することにより空気入口マニホールド13、端部供給ライン14およびバイパスライン15に供給する空気の流量を調整する。なお、ピニオンギア732および分流スリット731は、流量調整機構に相当する。
【0074】
ピニオンギア732は、図示しないモータの回転軸に固定されている。分流スリット731は、板状を成している。分流スリット731の中央部には、表裏を貫通するスリット穴731aが形成されている。また、分流スリット731の一面には、歯すじが形成されている。
【0075】
モータの回転軸の回転の回転によりピニオンギア732に回転力が与えられると、ピニオンギア732と歯すじが噛み合わされた分流スリット731が直線移動させられる。この分流スリット731の直線移動により分流スリット731のスリット穴731aを通過する空気の流れが変更される。
【0076】
このように、本実施形態の空気分流機構70は、空気を流すスリット731aが形成されるとともに直線移動させられる板状の分流スリット731を有しており、スリット731の位置に応じて第1導出ポート71bおよび第2導出ポート71cの開度を調整することができる。
【0077】
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態について
図11〜
図12を用いて説明する。本実施形態の空気分流機構70は、モータ742の回転軸に固定された分流スリット741を有している。分流スリット741は、三角形板状部材741aにより構成されている。三角形板状部材741aの一辺には、2つのガイド壁741bが立設されている。2つのガイド壁741bの間には、スリット741cが形成されている。
【0078】
モータ742の回転軸の回転により分流スリット741に回転力が与えられると、2つのガイド壁741bの間に形成されたスリット741cの位置が移動し、このスリット741cを通過する空気の流れが変更される。なお、分流スリット741およびモータ742は、流量調整機構に相当する。
【0079】
このように、本実施形態の空気分流機構70は、空気を流すスリット741aが形成されるとともにモータ721の回転軸を中心として該回転軸の回転軸周り方向に回動する分流スリット741を有している。そして、スリット741の位置に応じて第1導出ポート71bおよび第2導出ポート71cの開度を調整することができる。
【0080】
(第7実施形態)
本発明の第7実施形態について
図13を用いて説明する。上記第1実施形態の空気分流機構70は、ピニオンギア723によりモータ721の回転軸の回転運動をラックギア724aの直線運動に変換している。これに対し、本実施形態の空気分流機構70は、筐体71、回転弁722、リンク機構753、シャット弁724を有し、リンク機構753によりモータ721の回転軸の回転運動をシャット弁724の直線運動に変換している。なお、リンク機構753は流量調整機構を構成している。
【0081】
リンク機構753は、2つの板部材753a、753bを有している。板部材753aの一端は、モータ721の回転軸に固定され、板部材753aの他端は、板部材753bの一端とリベット等により接続されている。
シャット弁724は、平板状のラックギア724aと、第2導出ポート71c内に配置され、ラックギア724aの一端に接続された弁機構724bと、を備えている。ラックギア724aの一端は、弁機構724bに接続され、ラックギア724aの他端は、板部材753bの他端にリベット等により接続されている。
【0082】
モータ721の回転軸の回転に伴って板部材753aが回動すると、その回動力は板部材753bによりラックギア724aに伝達される。なお、ラックギア724aはリンク機構752により直線移動させられ、ラックギア724aの一端接続された弁機構724bが第2導出ポート71cを開閉する。
【0083】
リンク機構752は、モータ721の回転軸の回転運動をラックギア724aの直線運動に変換する。すなわち、モータ721の回転軸の回転によりリンク機構753の板部材753aが回動すると、ラックギア724aは直線移動し、ラックギア724aの一端に接続された弁機構724bは第2導出ポート71cを開閉する。
【0084】
(第8実施形態)
本発明の第8実施形態について
図14を用いて説明する。本実施形態の空気分流機構70は、筐体71、回転弁722、偏心カム763、シャット弁724を有し、偏心カム763によりモータ721の回転軸の回転運動をシャット弁724の直線運動に変換している。なお、偏心カム763は流量調整機構を構成している。
【0085】
偏心カム763は、円盤状を成している。偏心カム763は、モータ721の回転軸に、該回転軸に対して偏心して取り付けられている。
【0086】
シャット弁724は、平板状のラックギア724aと、第2導出ポート71c内に配置され、ラックギア724aの一端に接続された弁機構724bと、を備えている。ラックギア724aの一端は、弁機構724bに接続され、ラックギア724aの他端は、図示しないバネ等により偏心カム763の側面に付勢されている。
【0087】
偏心カム763は、モータ721の回転軸の回転運動をラックギア724aの直線運動に変換する。すなわち、モータ721の回転軸の回転により偏心カム763が回動すると、ラックギア724aは直線移動し、ラックギア724aの一端に接続された弁機構724bは第2導出ポート71cを開閉する。
【0088】
(第9実施形態)
本発明の第9実施形態について
図15〜
図16を用いて説明する。本実施形態の空気分流機構70は、モータ772の回転軸に固定された分流スリット771を有している。分流スリット771は、底板部771aと、底板部771aの一面側に所定の間隔を設けて立設された2つのガイド部771bを有している。2つのガイド部771bの間にスリット771cが形成されている。
【0089】
モータ772の回転軸の回転により分流スリット771に回転力が与えられると、2つのガイド部771bの間に形成されたスリット771cの位置が移動し、このスリット771cを通過する空気の流れが変更される。なお、分流スリット771およびモータ772は、流量調整機構を構成している。
【0090】
このように、本実施形態の空気分流機構70は、分流スリット771がモータ772の回転軸の軸周りに回動することにより空気入口マニホールド13、端部供給ライン14およびバイパスライン15に供給する空気の流量を調整することができる。
【0091】
(第10実施形態)
本発明の第10実施形態について
図17を用いて説明する。本実施形態の燃料電池システムは、3つの空気ポンプ21a〜21cを備えている。各空気ポンプ21a〜21cは、制御部50に接続されている。制御部50は、空気入口マニホールド13、端部供給ライン14およびバイパスライン15に供給する空気の流量を調整する。
【0092】
空気ポンプ21aは、バイパスライン15に空気を供給するものであり、空気ポンプ21bは、空気入口マニホールド13に空気を供給するものである。また、空気ポンプ21cは、端部供給ライン14に空気を供給するものである。
【0093】
このように、空気入口マニホールド13、端部供給ライン14およびバイパスライン15に吸気を供給する空気ポンプ21a〜21cを備え、制御部50の制御により空気入口マニホールド13、端部供給ライン14およびバイパスライン15に供給する空気の流量を調整することもできる。
【0094】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、複数のセル10aの全体を含む範囲を第1の範囲とし、この第1の範囲に向けて空気入口マニホールド13から空気を供給するよう構成した。これに対し、必ずしも複数のセル10aの全体を含む範囲に向けて空気入口マニホールド13から空気を供給するよう構成しなくてもよい。
【0095】
(2)上記各実施形態では、空気入口マニホールド13に対して1つの端部供給ライン14を設けるようにしたが、2つ以上の端部供給ライン14を設けるようにしてもよい。
【0096】
(3)上記各実施形態では、複数のセル10aのうち少なくとも一方の端部に配置されたセルに端部供給ライン14から空気を供給するよう構成にしたが、例えば、複数のセル10aのうち中央部に配置されたセルに端部供給ライン14から空気を供給するよう構成にしてもよい。
【0097】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。