(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
従来のポリエステル系化合物を含有する導電ペーストは、ポリエステル系化合物が加水分解する性質を有することから湿気に触れる用途に用いることができない。すなわち、従来の導電ペーストを乾燥させて空気中に放置しておくと、空気中の水分によりポリエステル系化合物が加水分解するので、従来の導電ペーストの耐久性は低い。そこで、本発明者は、係る難点を改善するために、エーテル系のウレタン樹脂エマルジョン、及び/又はカーボネート系のウレタン樹脂エマルジョンを用いた水性導電ペーストを検討した。また、本発明者は、エーテル系のウレタン樹脂エマルジョン、及び/又はカーボネート系のウレタン樹脂エマルジョンを用いた水性導電ペースト中において導電性粒子を適切に分散させ、長期保存後においても水性導電ペースト中において導電性粒子を分離させない観点から、導電性粒子に配位しやすい水溶性の特定の高分子化合物を採用することが有効であることを見出した。更に、本発明者は、従来は、導電性粒子(例えば、銀ナノ粒子)を用いる場合、導電性粒子の周囲に存在する保護コロイドを焼成により除去しないと導通しないので熱に対する耐久性のないフィルムや基板に用いることができないところ、焼成等の加熱がなくても導通する水性導電ペーストを、特定の組成を採用することで実現できることを見出した。
【0015】
すなわち、本発明に係る水性導電ペーストは、エーテル系、若しくはポリカーボネート系のウレタン樹脂エマルジョンの少なくともいずれかと、金属粒子を含む導電性フィラーと、極性を有し、金属粒子に配位する非共有電子対を有する原子を含む水溶性の高分子化合物とを含有する。
【0016】
<ウレタン樹脂エマルジョン>
本発明のエーテル系、若しくはポリカーボネート系のウレタン樹脂エマルジョンとしては、ポリウレタンエマルジョン、水性ポリウレタン、水分散性ポリウレタン、ポリウレタンディスパージョン、ポリウレタンマイクロエマルジョン等が挙げられる。ウレタン樹脂エマルジョンは、水媒体中にウレタン樹脂を分散・安定化させたエマルジョンである。
【0017】
ウレタン樹脂は、イソシアネート化合物とアミノ基等の活性水素を有する化合物(例えば、ポリエーテル等のポリオール)との反応生成物である。また、合成して得られたイソシアネート化合物と、ジオール類やジアミン類等の鎖延長剤とを反応させて高分子量化することができる。
【0018】
イソシアネート化合物の例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネート−3,3−ジメチルビフェニル、トリフェニルメタントリイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等や、これらの誘導体であるポリイソシアネートプレポリマー等が挙げられる。
【0019】
また、活性水素を含有する化合物としては、ヒドロキシル基を含有するポリエーテル等のポリオール化合物が挙げられる(ただし、本発明では、ポリエステルを除く。)。ポリエーテルの例としては、ポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール、ポリ(オキシエチレン)・ポリ(オキシプロピレン)グリコール、ポリ(オキシブチレン)グリコール等やそれらの誘導体が挙げられる。
【0020】
また、活性水素を含有する化合物として、ポリカーボネート類が挙げられる。ポリカーボネートとしては、例えば、カーボネートとポリオールとの反応生成物が挙げられる。カーボネートとしては、例えば、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート等が挙げられる。これらは1種単独でも、2種以上を混合しても用いることができる。
【0021】
その他の活性水素基を有する化合物としては、ポリエステルアミド類、ポリチオエーテル類、アクリルポリオール類、ヒドロキシル基含有ポリブタジエン等が挙げられる。また、鎖延長剤としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、トリメチロールプロパン、ハイドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、水、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジン、アミノエチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン等の分子内に活性水素基を有する化合物等が挙げられる。
【0022】
上記ウレタン樹脂は、例えば、以下に示す様々な方法により水分散性のエマルジョンにすることができ、本発明のウレタン樹脂エマルジョンを得ることができる。
【0023】
1)水溶性原料を用い、ウレタン樹脂を水溶解性にする方法。
2)ウレタン樹脂をトルエン等の有機溶剤に溶解し、これを乳化剤水溶液中に機械的に強制乳化させる方法。
3)ポリオール化合物に過剰量のイソシアネート化合物を反応させ、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを合成し、フェノール類、ケトオキシム類等のブロック剤で処理してブロックイソシアネートを合成し、これを乳化剤水溶液中に滴下、撹拌する方法。
4)末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを合成し、これを鎖延長剤を添加した乳化剤水溶液中に高速で撹拌しながら添加して、乳化と鎖延長とを同時に実施する方法。
5)ウレタン樹脂製造時に、鎖延長剤としてジアミノベンゼンスルホネート、ジアミノベンゾエート、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンスルホン酸等の化合物を添加してウレタン樹脂の分子中にスルホン酸基、カルボキシル基等のアニオン性基を導入するか、若しくはN−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン等の化合物を添加してウレタン樹脂の分子中にアミノ基等のカチオン性基を導入して自己乳化性とし、これを中和剤を含む水中に分散させる方法。
【0024】
本発明においてウレタン樹脂エマルジョンは、水性導電ペーストの耐久性の観点から、エーテル系、若しくはポリカーボネート系ポリウレタンディスパージョンであることが好ましい。
【0025】
<導電性フィラー>
導電性フィラーは、電気導電性を有する材料を用いて形成される。導電性フィラーとしては、炭素粒子、又は銀、銅、ニッケル、金、スズ、亜鉛、白金、パラジウム、鉄、タングステン、モリブデン、はんだ等の金属粒子若しくは合金粒子、又はこれらの粒子表面を金属等の導電性コーティングで覆って調製した粒子等の導電性粒子を用いることができる。また、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、若しくはベンゾグアナミン樹脂から構成される非導電性粒子であるポリマー粒子、又はガラスビーズ、シリカ、黒鉛、若しくはセラミックから構成される無機粒子の表面に金属等の導電性コーティングを施して得られる導電性粒子を用いることもできる。本発明においては、高分子化合物による配位のしやすさの観点から、金属粒子を含む導電性フィラーを用いることが好ましく、銀粒子若しくは銀ナノ粒子を含んで構成された導電性フィラーを用いることがより好ましい。
【0026】
導電性フィラーの形状としては、種々の形状(例えば、球形状、楕円、円筒形、フレーク、平板、又は粒塊等)を採用できる。導電性フィラーは、やや粗いか、又はぎざぎざの表面を有することもできる。導電性フィラーの粒子形状、大きさ、及び/又は硬度を組み合わせて本発明の水性導電ペーストに用いることができる。また、水性導電ペーストの硬化物の導電性をより向上させることを目的として、導電性フィラーの粒子形状、大きさ、及び/又は硬度が互いに異なる複数の導電性フィラーを組み合わせることもできる。なお、組み合わせる導電性フィラーは2種類に限られず、3種類以上であってもよい。例えば、銀製であってフレーク状の導電性フィラーを粒状等の他の導電性フィラーと併用してもよい。
【0027】
ここで、フレーク状とは、扁平状、薄片状、若しくは鱗片状等の形状を含み、球状や塊状等の立体形状の銀粉を一方向に押し潰した形状を含む。また、粒状とは、フレーク状を有さない全ての導電性フィラーの形状を意味する。例えば、粒状としては、ブドウの房状に粉体が凝集した形状、球状、略球状、塊状、樹枝状、またこれらの形状を有する銀粉の混合物等が挙げられる。
【0028】
また、導電性フィラーとして銀を用いる場合、この導電性フィラーは様々な方法により製造できる。例えば、フレーク状の銀粉を導電性フィラーとして用いる場合、球状銀粉、及び/又は塊状銀粉等の銀粉をジェットミル、ロールミル若しくはボールミル等の装置を用いて機械的に粉砕等することで製造できる。また、粒状の銀粉を導電性フィラーとして用いる場合、電解法、粉砕法、熱処理法、アトマイズ法、又は還元法等により製造できる。
【0029】
本発明の水性導電ペーストは、良好な電気導電性を発揮する観点から、ウレタン樹脂エマルジョンの樹脂分100重量部に対し、500重量部以上800重量部以下の導電性フィラーを含むことが好ましい。特に、硬化物の十分な伸び物性を確保する観点からは、800重量部以下の導電性フィラーを含むことが好ましい。
【0030】
<高分子化合物>
本発明の水性導電ペーストは、導電性フィラーの金属粒子に配位し得る非共有電子対を有する原子を含み、極性を有する高分子化合物を含有する。この高分子化合物は、親水性を有することが好ましく、水溶性であることが好ましい。金属粒子に配位し得る非共有電子対を有する原子としては、例えば、窒素原子や酸素原子等が挙げられる。そして、本発明においては、窒素原子及び酸素原子を含んでいるピロリドン基を含有する高分子化合物を用いることが好ましい。
【0031】
ピロリドン基を有する高分子化合物としては、N−ビニル−2−ピロリドンの単独重合体(ポリビニルピロリドン)、N−ビニル−2−ピロリドンと他の単量体との共重合体、無水マレイン酸共重合体とヒドロキシ基含有ピロリドンとを反応させて得られる重合体等が挙げられる。本発明においては、金属粒子(特に、銀粒子)への配位のしやすさの観点からポリビニルピロリドンを含有する高分子化合物を用いることが好ましい。
【0032】
また、本発明の高分子化合物の重量平均分子量は、水中で会合挙動を発揮させる観点から45,000以上が好ましく、10万以上がより好ましい。また、本発明の高分子化合物の重量平均分子量は、水溶性を確保する観点から120万以下が好ましく、100万以下がより好ましい。
【0033】
<その他の添加剤>
本発明に係る水性導電ペーストには、水性導電ペーストの導電性や硬化性等の機能を損なわない範囲で、必要に応じ、安定剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、フィラー、破泡剤、イオン交換水、界面活性剤、粘着付与樹脂、増量剤、物性調整剤、補強剤、着色剤、難燃剤、タレ防止剤、チキソトロピー剤、沈殿防止剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、香料、顔料、染料等の各種添加剤を加えてもよい。
【0034】
安定剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられる。分散剤としては、例えば、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩等の無機系分散剤、ポリカルボン酸塩等の高分子分散剤等が挙げられる。消泡剤としては、例えば、鉱物油系ノニオン系界面活性剤や、ポリジメチルシロキサンオイル、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド変性のジメチルシリコーン又はジメチルシリコーンエマルジョン等のシリコーン系消泡剤、鉱物油、アセチレンアルコール等のアルコール系消泡剤等が挙げられる。防腐剤としては、例えば、環状窒素系化合物、環状窒素硫黄系化合物等が挙げられる。増粘剤としては、例えば、ポリアクリル酸塩、ヒドロキシエチルセルロース、水溶性ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0035】
(フィラー)
フィラーとしては樹脂フィラー(樹脂微粉末)や無機フィラー、及び機能性フィラーを用いることができる。フィラーに、シランカップリング剤、チタンキレート剤、アルミカップリング剤、脂肪酸、脂肪酸エステル、ロジン等で表面処理を施してもよい。樹脂フィラーとしては、有機樹脂等からなる粒子状のフィラーを用いることができる。例えば、樹脂フィラーとして、ポリアクリル酸エチル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂系、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂等の有機質微粒子を用いることができる。
【0036】
無機フィラーとしては、例えば、タルク、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ素、含水ケイ素、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。
【0037】
機能性フィラーとしては、例えば、特開2016−199668等に記載の断熱性や軽量性等に優れる中空粒子;特開2016−199669等に記載の遮音性、及び制振性等に優れるコアシェル粒子;特開2016−199670等に記載のガスバリア等に優れる層状ケイ酸塩;特開2016−199671等に記載の光反射性フィラー;特開2016−199750等に記載の電磁波遮蔽材等を用いることができる。
【0038】
<水性導電ペーストの製造方法>
水性導電ペーストは、以下の手順により製造できる。まず、エーテル系、若しくはポリカーボネート系のウレタン樹脂エマルジョンの少なくともいずれか、金属粒子を含む導電性フィラー、極性を有し、金属粒子に配位する非共有電子対を有する原子を含む高分子化合物、及び/又はその他の添加剤のそれぞれを所定量秤量し、準備する(準備工程)。次に、エーテル系、若しくはポリカーボネート系のウレタン樹脂エマルジョンの少なくともいずれかを所定の容器に投入し、所定時間撹拌する。続いて、エーテル系、若しくはポリカーボネート系のウレタン樹脂エマルジョンの少なくともいずれかに金属粒子を含む導電性フィラーを添加して所定時間、撹拌する(フィラー添加工程)。更に、導電性フィラーを含むエーテル系、若しくはポリカーボネート系のウレタン樹脂エマルジョンの少なくともいずれかに、極性を有し、金属粒子に配位する非共有電子対を有する原子を含む高分子化合物を添加して所定時間、撹拌する(高分子化合物添加工程)。これにより、本発明に係る水性導電ペーストを製造できる。なお、各工程、若しくはいずれかの工程において、他の添加物を適宜添加してもよい。
【0039】
<水性導電ペーストの硬化物を構成要素として有する製品>
本発明の水性導電ペーストは、対象物に塗布し、常温常圧下で静置若しくは乾燥させることで、硬化する。なお、乾燥速度を向上させるために、加熱してもよい。そして、硬化後の水性導電ペーストは、導電性を有する。この乾燥若しくは硬化により、水性導電ペーストの硬化物が得られる。したがって、水性導電ペーストの硬化物を構成要素として用い、電子回路、電子部品、自動車部品等の様々な製品を製造できる。例えば、本発明に係る水性導電ペーストを所定の被着体に塗布し、乾燥させることで製品を製造できる。
【0040】
そして、本発明の水性導電ペーストは、導電性が要求される様々な用途に用いることができる。また、水性導電ペーストは接着剤として用いることもできる。例えば、本発明の水性導電ペーストは、電子・電気回路基板のジャンパーラインの形成用途、電子機器・電気機器の導通を要する箇所の接着用途等に用いることができる。
【0041】
<実施の形態の効果>
本発明に係る水性導電ペーストは、エーテル系、若しくはポリカーボネート系のウレタン樹脂エマルジョンの少なくともいずれかを含有するので加水分解することがなく、硬化若しくは乾燥した水性導電ペーストの湿気に対する耐久性がポリエステル系のウレタン樹脂エマルジョンを用いた場合に比べて大きく向上する。また、本発明に係る水性導電ペーストは、エーテル系、若しくはポリカーボネート系のウレタン樹脂エマルジョンの少なくともいずれかと導電性フィラーとを含み、ここに特定の水溶性の高分子化合物を更に含むので、長期保存後においても水性導電ペースト内で導電性フィラーが分離することを抑制できる。更に、本発明の水性導電ペーストは、エーテル系、若しくはポリカーボネート系のウレタン樹脂エマルジョンの少なくともいずれかと、金属粒子を含む導電性フィラーと、特定の水溶性の高分子化合物とを含む構成を有していることから、空気中に放置しておくだけで硬化・導通するので、従来の銀ナノ粒子を用いたペーストのように焼成等の加熱処理が不要になる。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を挙げて更に具体的に説明する。なお、これらの実施例は例示であり、限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0043】
(実施例1〜4、比較例1〜5)
表1に示す配合割合で各配合物質をそれぞれ添加し、上記「水性導電ペーストの製造方法」の説明に則り、水性導電ペーストを調製した。具体的に、表1に示す配合割合になるように、ウレタン樹脂エマルジョン、導電性フィラー、高分子化合物、及びその他の添加剤のそれぞれを秤量して準備した。次に、ウレタン樹脂エマルジョン、増粘剤、消泡剤、及びイオン交換水を遊星撹拌機に投入し、2分間撹拌した(回転条件:自転500rpm、公転1000rpm)。続いて、ここに、導電性フィラー、及び破泡剤を添加し、上記と同一の回転条件で2分間撹拌した。更に、ここに、高分子化合物、分散剤、フッ素系界面活性剤、又は界面活性剤を添加し、上記と同一の回転条件で2分間撹拌した。これにより、実施例1〜4、及び比較例1〜5に係る水性導電ペーストを得た。
【0044】
【表1】
【0045】
表1において、各配合物質の配合量の単位は「重量部」である。また、配合物質の詳細は下記のとおりである。
(ウレタン樹脂エマルジョン)
・エーテル系ポリウレタンディスパージョン(以下、ポリウレタンディスパージョンを「PUD」と表す。)(樹脂分35〜40%)(製品名「ハイドランWLS−207」、DIC(株)製)
・エーテル系PUD(樹脂分35%)(製品名「ハイドランWLS−201」、DIC(株)製)
・ポリカーボネート系PUD(製品名「ETERNACOLL UW−5034E」、宇部興産(株)製)
・ポリエステル系PUD(製品名「ハイドランHW−940」、DIC(株)製)
(増粘剤)
・製品名「アデカノールUH−541VF」、(株)ADEKA製
(消泡剤)
・製品名「SNデフォーマー777」、サンノプコ(株)製
(破泡剤)
・製品名「DISPER BYK−012」、ビックケミー・ジャパン(株)製
(導電性フィラー)
・製品名「シルコートAgC−B」、福田金属箔粉工業(株)製
・製品名「シルコートAgC−201Z」、福田金属箔粉工業(株)製
(高分子化合物)
・ポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドン K90、(株)日本触媒製)を5wt%になるようイオン交換水に溶解したもの。
(分散剤)
・製品名「DISPER BYK−2012」、ビックケミー・ジャパン(株)製
・製品名「DYNEWET N800」、ビックケミー・ジャパン(株)製
(フッ素系界面活性剤)
・製品名「CAPSTONE FS30」、デュポン製
(界面活性剤)
・サーファクチンナトリウム、(株)カネカ製を5wt%になるようイオン交換水に溶解したもの。
【0046】
(体積抵抗率)
実施例1に係る水性導電ペーストを、厚さ100μmのマスキングテープをスペーサーとし、ガラス板上に70mm×100mmのサイズで塗布し、80℃20分間乾燥させた。その後、室温まで冷却し、乾燥した水性導電ペーストのテストピースを得た。そして、ロレスターMCP−T360(三菱アナリテック製)を用い、このテストピースの体積抵抗率(乾燥直後の体積抵抗率)を測定した。実施例2〜4、及び比較例1〜5に係る水性導電ペーストについても同様の測定をした。
【0047】
(60℃90%RH 500hr後の体積抵抗率)
実施例1に係る水性導電ペーストを用い、上記「体積抵抗率」の説明で作製したテストピースを60℃90%RHに調整した恒温恒湿槽内に静置した。恒温恒湿槽内において500時間経過後にこのテストピースを取り出し、室温で1時間放置した後、上記と同様にして体積抵抗率(500hr経過後の体積抵抗率)を測定した。実施例2〜4、及び比較例1〜5に係る水性導電ペーストについても同様の測定をした。
【0048】
(分離の確認)
実施例1に係る水性導電ペーストを武蔵エンジニアリング(株)製のシリンジPSY−10E(目盛つき)に10ml充填し、プランジャとしてMLP−B−10E、ヘッドキャップとしてHC−10Cを取り付けた。そして、シリンジの先端及び下端をテフロン(登録商標)テープでシールし、シリンジの先端を下にして、試験管立てにセットし、40℃に調整した熱風循環式乾燥機内に4週間、静置した。4週間経過後にこのシリンジを取り出し、分離の状態を観察した。評価基準は以下のとおりである。また、実施例2〜4、及び比較例1〜5に係る水性導電ペーストについても同様の確認をした。
【0049】
(分離の評価基準)
○:分離なし
△:分離が2ml未満
×:分離が2ml以上
【0050】
表1を参照すると分かるように、実施例1〜4に係る水性導電ペーストにおいてはいずれも、調整直後の硬化物の体積抵抗率、60℃90%RH 500hr後の体積抵抗率のいずれも良好であり、40℃4週間放置しても導電性フィラーの分離が実質的に見られなかった。また、体積抵抗率の変化率を、|(500hr後の体積抵抗率)−(乾燥直後の体積抵抗率)|/(乾燥直後の体積抵抗率)×100の式を用いて確認したところ、実施例に係る水性導電ペーストの体積抵抗率の変化率は約40%以下であった。
【0051】
一方、比較例1においては40℃4週間放置後においても導電性フィラーの分離が見られなかったが、体積抵抗率が2ケタ以上も悪化した。また、比較例2及び比較例4においては40℃4週間放置後において導電性フィラーの分離が少なかったものの皆無ではなく、体積抵抗率が悪く、実用性が認められなかった。そして、比較例3及び比較例5においては、40℃4週間放置後において導電性フィラーの分離が確認された。更に、比較例に係る水性導電ペーストの体積抵抗率の変化率はいずれも、70%以上と非常に大きい変化率であった。
【0052】
以上より、実施例に係る水性導電ペーストにおいては、体積抵抗率に優れると共に体積抵抗率の変化が少ないことから耐久性に優れ、かつ、長期保存後においても水性導電ペースト内で導電性フィラーが分離することを抑制できることが示された。
【0053】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、上記に記載した実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点、及び本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能である点に留意すべきである。