(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の圧力制御部は、前記圧力指令値を速度指令に変換する第1の変換部と、前記第1の変換部にて変換された速度指令を増幅して前記第1の速度指令を出力する第1の増幅部とを有し、
前記第2の圧力制御部は、前記圧力指令値と前記測定圧力値との偏差である偏差圧力値を算出する算出部と、前記偏差圧力値を速度指令に変換する第2の変換部と、前記第2の変換部にて変換された速度指令を増幅して前記第2の速度指令を出力する第2の増幅部とを有し、
前記切替制御部は、前記第2の増幅部の増幅率βを「1」として前記第2の圧力制御部を有効とし、前記増幅率βを「0」として前記第2の圧力制御部を無効とし、前記第2の圧力制御部を無効としたときに前記第1の増幅部の増幅率αを1とし、前記第2の圧力制御部を有効としたときに前記第1の増幅部の増幅率αを1>α>0の範囲の値とすること、を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の流体制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の流体の圧力は、短時間で変更することが求められる。しかしながら、ファンを惰性で動かすものでは、圧力の低下に時間がかかる。また、ブレーキングするものでは、ブレーキのために装置の大型化を招く虞がある。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、大型化を抑制し、流体の圧力の制御性のよい流体制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する流体制御装置は、陽性気道圧のために用いられる流体制御装置であって、ファンと、前記ファンを回転駆動する駆動部と、前記ファンを収容し、前記ファンの回転駆動によって流体を流入する流入口と、前記ファンの回転駆動によって前記流体を吐出する吐出口とを有する筐体と、前記吐出口を鼻腔又は口腔と連通させる連通路と、前記連通路又は前記筐体に配置され、前記流体の流速又は流量を検知可能な検知部と、前記連通路又は前記筐体に配置され、前記連通路内又は前記筐体内の圧力を測定した測定圧力値を出力する圧力測定部と、予め定められた所定の圧力指令値に基づいて前記ファンの回転速度に係る第1の速度指令を生成する第1の圧力制御部と、前記圧力指令値と前記測定圧力値との偏差に基づいて前記ファンの回転速度に係る第2の速度指令を生成する第2の圧力制御部と、前記第1の速度指令と前記第2の速度指令とに基づいて前記駆動部に対する駆動指令を生成する駆動指令生成部と、前記駆動指令値に基づいて前記駆動部に駆動電流を供給する電流供給部と、前記検知部が所定の値より低い前記流体の流量又は流速を検知した場合に前記第2の圧力制御部を無効とする切替制御部と、
前記ファンの回転速度を測定する速度測定部と、を有し、前記切替制御部は、前記検知部が前記所定の値より低い前記流体の流量又は流速を検知した後、前記ファンの回転速度が前記駆動指令によるファンの回転速度と等しいときに呼気時の圧力に達したと判定し、前記第2の圧力制御部を有効とする。
【0008】
この構成によれば、第1の圧力制御部は、圧力指令値に基づいて第1の速度指令を生成する。第2の圧力制御部は、圧力指令値と測定圧力値との偏差に基づいて第2の速度指令を生成する。第1の速度指令と第2の速度指令に基づいて駆動されるファンによる圧力の流体が吐出される。従って、第1の圧力制御部は、圧力指令値によるフィードフォワードにより圧力制御を行い、第2の圧力制御部は、圧力指令値に対して流体の圧力をフィードバックした圧力制御を行う。このため、所定の値より低い流体の流量又は流速を検知した場合に第2の圧力制御部を無効とすることにより、フィードバックによる遅れの影響がなくなり、第1の圧力制御部による圧力フィードフォワード制御のみにより流体の圧力が短時間で変更され、流体の圧力の制御性がよい。そして、ファンの回転速度の変更にブレーキ等の機構を必要としないため、装置の大型化が抑制される。
また、第1の圧力制御部のみにより、測定したファンの回転速度が駆動指令によるファンの回転速度と一致するまで短時間でファンの回転速度が変更され、そのファンによる流体の圧力が変更される。そして、測定したファンの回転速度が駆動指令によるファンの回転速度と等しくなった場合に吸気時の圧力に達したと判定して第2の圧力制御部を有効とすることにより圧力フィードバック制御が働き、安定した圧力の流体が吐出される。
【0011】
上記の流体制御装置において、前記検知部は、前記所定の値より低い前記流体の流量又は流速を検知した場合に前記圧力指令値を基準圧力指令値より低い値とすることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、第1の圧力制御部による圧力フィードフォワード制御のみにより駆動指令が生成され、流体の圧力が短時間で変更される。そして、呼吸状態に応じた圧力の流体が吐出される。
【0013】
上記課題を解決する流体制御装置は、陽性気道圧のために用いられる流体制御装置であって、ファンと、前記ファンを回転駆動する駆動部と、前記ファンを収容し、前記ファンの回転駆動によって流体を流入する流入口と、前記ファンの回転駆動によって前記流体を吐出する吐出口とを有する筐体と、前記吐出口を鼻腔又は口腔と連通させる連通路と、前記連通路又は前記筐体に配置され、前記流体の流量又は流速が所定の値より高い若しくは低いかを検知可能な検知部と、前記連通路又は前記筐体に配置され、前記流体の圧力を測定した測定圧力値を出力する圧力測定部と、予め定められた所定の圧力指令値に基づいて前記ファンの回転速度に係る第1の速度指令を生成する第1の圧力制御部と、前記圧力指令値と前記測定圧力値との偏差に基づいて前記ファンの回転速度に係る第2の速度指令を生成する第2の圧力制御部と、前記第1の速度指令と前記第2の速度指令とに基づいて前記駆動部に対する駆動指令を生成する駆動指令生成部と、前記駆動指令値に基づいて前記駆動部に駆動電流を供給する電流供給部と、前記検知部が前記所定の値より高い前記流体の流量又は流速を検知した場合に前記第2の圧力制御部を無効とする切替制御部と、
前記ファンの回転速度を測定する速度測定部とを有し、前記切替制御部は、前記検知部が前記所定の値より高い前記流体の流量又は流速を検知した後、前記ファンの回転速度が前記駆動指令によるファンの回転速度と等しいときに吸気時の圧力に達したと判定し、前記第2の圧力制御部を有効とする
。
【0014】
この構成によれば、第1の圧力制御部は、圧力指令値に基づいて第1の速度指令を生成する。従って、この第1の圧力制御部は、圧力指令値による速度制御を行う。第2の圧力制御部は、圧力指令値と測定圧力値との偏差に基づいて第2の速度指令を生成する。従って、この第2の圧力制御部は、流体の圧力をフィードバックした速度制御を行う。このため、所定の値より高い流体の流量又は流速を検知した場合に第2の圧力制御部を無効とすることにより、フィードバックによる遅れの影響がなくなり、第1の圧力制御部による圧力フィードフォワード制御によって流体の圧力が短時間で変更され、流体の圧力の制御性がよい。そして、ファンの回転速度の変更にブレーキ等の機構を必要としないため、装置の大型化が抑制される。
また、第1の圧力制御部により、測定したファンの回転速度が駆動指令によるファンの回転速度と一致するまで短時間でファンの回転速度が変更され、そのファンによる流体の圧力が変更される。そして、測定したファンの回転速度が駆動指令によるファンの回転速度と等しくなった後は第2の圧力制御部が有効とされてその第2の圧力制御部による圧力フィードバック制御と第1の圧力制御部による圧力フィードフォワード制御とにより流体の圧力が目標値としての圧力指令値にて安定となる。
【0017】
上記の流体制御装置において、前記検知部が前記所定の値より高い前記流体の流量又は流速を検知した場合に前記圧力指令値を吸気時の圧力である基準圧力指令値とすることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、第1の圧力制御部による圧力フィードフォワード制御のみによって駆動指令が生成され、流体の圧力が短時間で変更される。そして、吸気において基準圧力値の流体が吐出される。
【0019】
上記の流体制御装置において、前記検知部が前記所定の値より高い前記流体の流量又は流速を検知することが、呼気から吸気への切り替わりを検知していることが好ましい。
この構成によれば、連通路内又は筐体内の流体の流量又は流速と所定の値とに基づいて、呼気から吸気への切り替わりを検知することができる。
【0020】
上記の流体制御装置において、前記第1の圧力制御部は、前記圧力指令値を速度指令に変換する第1の変換部と、前記第1の変換部にて変換された速度指令を増幅して前記第1の速度指令を出力する第1の増幅部とを有し、前記第2の圧力制御部は、前記圧力指令値と前記測定圧力との偏差である偏差圧力値を算出する算出部と、前記偏差圧力値を速度指令に変換する第2の変換部と、前記第2の変換部にて変換された速度指令を増幅して前記第2の速度指令を出力する第2の増幅部とを有し、前記切替制御部は、前記第2の増幅部の増幅率βを「1」として前記第2の圧力制御部を有効とし、前記増幅率βを「0」として前記第2の圧力制御部を無効とし、前記第2の圧力制御部を無効としたときに前記第1の増幅部の増幅率αを1とし、前記第2の圧力制御部を有効としたときに前記第1の増幅部の増幅率αを1>α>0の範囲の値とすることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、第2の圧力制御部に含まれる第2の増幅部の増幅率βを変更することにより、第2の圧力制御部の有効と無効が容易に設定される。そして、第2の圧力制御部を有効としたときに第1の圧力制御部に含まれる第1の増幅部の増幅率αを1>α>0の範囲とする。増幅率αが大きいほど第1の圧力制御部による圧力フィードフォワード制御の割合が大きくなり、圧力制御の応答性がよくなるが、外乱の影響を受けやすくなる。このため、増幅率αは、応答性と外乱による影響を考慮した値に設定することで、応答性が良く外乱による影響を受け難い圧力制御を行うことを可能とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の流体制御装置によれば、大型化を抑制し、流体の圧力を短時間で制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、各形態を説明する。
なお、添付図面は、理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、または別の図面中のものと異なる場合がある。また、断面図では、理解を容易にするために、一部の構成要素のハッチングを省略している場合がある。
【0025】
図2に示すように、流体制御装置10は、例えば陽性気道圧(PAP:Positive Airway Pressure)装置として用いられる。流体制御装置10は、チューブ61を介してマスク62に接続される。マスク62は、患者63の顔に装着される。流体制御装置10は、チューブ61とマスク62を介して患者63に所望の圧力の気体(例えば空気)を供給する。また、流体制御装置10は、患者63の状態(例えば呼気時)を判定し、患者の状態に応じて患者63に供給する気体の圧力を制御する。
【0026】
流体制御装置10は、筐体11と、筐体11の上面に配置された表示部12と操作部13とを備えている。流体制御装置10は、設定値を含む各種情報を表示部12に表示する。また、流体制御装置10は、操作部13の操作に基づいて、設定値を含む各種情報を設定する。
【0027】
流体制御装置10は、マスク62が装着された患者63の呼気タイミングを推定する。そして、推定した呼気タイミングにて、供給する気体の圧力値を制御する。例えば、流体制御装置10は、基準圧力値にて気体を供給する。基準圧力値は、例えば医師により指定された吸気時の圧力値であり、例えば1000[Pa]である。そして、流体制御装置10は、推定した呼気タイミングにて、供給する気体の圧力を呼気時圧力値に変更する。呼気時圧力値は、例えば700[Pa]である。つまり、流体制御装置10は、患者63の状態(呼気、吸気)に応じて供給する気体の圧力を、基準圧力値と呼気時圧力値とに交互に制御する。患者63が呼気状態であるときに、供給する気体の圧力を低下させることで、患者63における息苦しさを低減する。
【0028】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、流体制御装置10は、筐体11と、筐体11に内設されたファンユニット20及び制御ユニット30を有している。筐体11は、気体を吸入するための流入口14と、吸入した気体を吐出するための吐出口15とを有している。吐出口15には、
図2に示すチューブ61が連結される。筐体11の内部は、立設された区画壁16によって区画された送風室17と制御室18とを有している。
【0029】
図1(b)に示すように、送風室17にはファンユニット20が配設されている。ファンユニット20は、ファンケース21と、ファンケース21に収容されたファン22と、ファン22を駆動する駆動源としてのモータ23とを有している。
【0030】
ファンケース21は、下方に開口する吸入口21aと、側面に突出する排出路21bとを有している。ファンケース21の排出路21bは、筐体11の吐出口15に挿通されている。モータ23はファンケース21の上面に取着され、そのモータ23の回転軸23aはファンケース21内に挿入されている。ファン22は、モータ23の回転軸23aに取着されている。
【0031】
ファン22は例えば遠心ファンである。モータ23によってファン22が回転駆動されると、
図1(a)に矢印にて示すように気体が流入口14から送風室17の内部へと取り込まれる。更に、矢印にて示すように、気体は、送風室17内から吸入口21aを介してファンケース21の内部へと吸入される。そして、ファンケース21内部の気体は、排出路21bから吐出される。その吐出される気体は、筐体11の吐出口15から、
図2に示すチューブ61及びマスク62を介して患者63へと送られる。
【0032】
制御室18には制御ユニット30が配設されている。制御ユニット30は、例えば、回路基板と、回路基板に実装された複数の電子部品とを含む。制御ユニット30は、後述する各種センサによる検出結果に基づいてファン22を回転駆動する。また、制御ユニット30は、各種センサによる検出結果に基づいて、患者63の状態(例えば呼気タイミング)を推定する。そして、制御ユニット30は、推定した患者63の状態に基づいて、排出路21bから患者63に供給する気体の圧力を制御する。
【0033】
図3は、流体制御装置10の電気的構成を示す。
図3に示すように、流体制御装置10は、表示部12、操作部13、モータ23、制御ユニット30、圧力センサ31、流量センサ32、モータアンプ33、ホールセンサ34を有している。
【0034】
圧力センサ31は、
図1(a)に示す排出路21b等に設けられ、ファンケース21の内部の圧力を検出し、圧力検出信号を出力する。
流量センサ32は、例えば、
図1に示す排出路21b等に設けられる。流量センサ32は、その流量センサ32に流れる(流量センサ32を通過する)流体の流量を測定する。
【0035】
ホールセンサ34は、モータ23の回転速度(実回転数)を測定するために設けられる。ホールセンサ34は、モータ23に設けられ、モータ23の回転に応じた信号を出力する。モータアンプ33は、ホールセンサ34の出力信号を制御ユニット30に伝え、制御ユニット30は、モータ23の回転速度の情報を得る。つまり、制御ユニット30とモータアンプ33とホールセンサ34とは、モータ23の回転速度を測定する速度測定部として機能する。そして、制御ユニット30は、所望の圧力にて気体を排出するように、モータ23の回転速度、つまりファン22の回転速度を制御する。
【0036】
制御ユニット30には、各種設定値が記憶されている。設定値は、基準圧力値、減圧量、流量判定値、を含む。
制御ユニット30は、圧力センサ31により検出された実圧力値と、設定値に含まれる基準圧力指令に基づいて、モータ23の回転数を決定する。そのモータ23の回転により、流体制御装置10から気体が吐出される。制御ユニット30は、基準圧力指令と減圧量とに基づいて圧力指令値を算出する。制御ユニット30は、圧力指令値と実際の圧力値の差に基づいて、流体制御装置10が吐出する気体の圧力を制御する。
【0037】
制御ユニット30は、流量センサ32の測定結果(気体の流量)に基づいて患者63の呼吸状態(呼気、吸気)を検出する。例えば、患者63が吸気状態のとき、
図2に示すチューブ61及びマスク62を介して流体制御装置10から患者63へ気体が供給される。このとき、本実施形態の流量センサ32は、例えば正の測定値を出力するように構成される。一方、患者63が呼気状態のとき、
図2に示すマスク62及びチューブ61を介して流体制御装置10に向かって気体が流れる。このとき、本実施形態の流量センサ32は、例えば負の測定値を出力するように構成される。また、制御ユニット30には、測定した流量を使用して流体制御装置10から吐出される気体の圧力を制御する機能を別途付け加えておいてもよい。
【0038】
図5に示すように、流量センサ32の測定結果、つまり、チューブ61における気体の流量は、正の値と負の値とを交互に繰り返す。したがって、流量センサ32の測定結果(流量値)が正の場合に患者63は吸気状態にあり、測定結果(流量値)が負の場合に患者63は呼気状態にあると判定することができる。
【0039】
制御ユニット30は、患者63の呼吸状態に基づいて、上述の減圧量を変更する。つまり、制御ユニット30は、患者63の呼吸状態に基づいて圧力指令値を変更する。例えば、制御ユニット30は、患者63が呼気状態にあるとき、基準圧力指令に減圧量を加味した値を圧力指令値とする。この場合の減圧量は、患者63に応じて設定される。これにより、患者63に供給される気体の圧力が低くなる。また、制御ユニット30は、患者が吸気状態にあるときに、圧力指令値を基準圧力指令と等しくする、つまり減圧量を「0」とする。これにより、患者63に基準圧力の気体が供給される。
【0040】
図4は、制御ユニット30の一部ブロック図を示し、モータ23(図中「M」と表記)ひいてはファン22の駆動に係る制御ブロックを示す。
制御ユニット30は、第1の圧力制御部41、第2の圧力制御部42、演算部43、ローパスフィルタ(図中「LPF」と表記)44、演算部45、モータアンプ(図中「AMP」と表記)33、切替制御部47を有している。
【0041】
演算部43には、指令値(設定値)として基準圧力指令値P0が供給される。また、演算部43には、切替制御部47の判定結果に応じた減圧量Pcが供給される。演算部43は、基準圧力指令値P0から減圧量Pcを減算する、つまり基準圧力指令値P0と減圧量Pcの偏差を算出し、その算出結果を圧力指令値P1として出力する。圧力指令値P1は、第1の圧力制御部41と第2の圧力制御部42とに供給される。
【0042】
第1の圧力制御部41は、変換部41aと増幅部41bとを有している。圧力指令値P1は、変換部41aに供給される。変換部41aは、圧力指令値P1に対応する速度指令S1を増幅部41bに出力する。速度指令S1は、モータ23を駆動する速度指令であり、モータ23の回転数指令である。そして、この速度指令S1は、モータ23によって回転駆動されるファン22の速度指令(回転数指令)である。
【0043】
増幅部41bには、増幅率αが設定されている。増幅率αの値は、切替制御部47により制御される。増幅部41bは、速度指令S1に増幅率αを乗算した結果(=S1×α)を第1の速度指令B1として出力する。例えば、増幅率αが「1」に設定されているとき、この増幅部41bは、入力指令、つまり速度指令S1と等しい値の第1の速度指令B1を出力する。増幅部41bから出力される第1の速度指令B1は、演算部45に供給される。
【0044】
なお、増幅率αは1>α>0の範囲で設定される。増幅率αがおおきいほど、第1の圧力制御部41による圧力フィードフォワード制御の割合が大きくなり、圧力制御の応答性が良くなる一方、外乱の影響を受けやすくなる。このため、増幅率αは、応答性と外乱による影響を考慮した値に設定することが好ましい。このように考慮した値を増幅率αに設定することで、応答性が良く外乱の影響を受け難い圧力制御を可能とすることができる。
【0045】
第2の圧力制御部42は、演算部42aと変換部42bと増幅部42cとを有している。上述の圧力指令値P1は、演算部42aに供給される。演算部42aには、ローパスフィルタ44から出力される測定圧力値Pfが供給される。このローパスフィルタ44には、圧力センサ31により検出された圧力検出値Prが供給される。ローパスフィルタ44は、所定の時定数(例えば2s)のローパスフィルタである。このローパスフィルタ44により、圧力検出値Prの高周波ノイズを除去し、フィードバックループを安定化する。
【0046】
演算部42aは、圧力指令値P1から測定圧力値Pfを減算する、つまり圧力指令値P1と測定圧力値Pfの偏差を算出し、その算出結果を圧力偏差値P2として変換部42bに出力する。
【0047】
変換部42bは、圧力偏差値P2に対応する速度指令S2を増幅部42cに出力する。変換部42bには、例えばPI制御器を用いることができる。速度指令S2は、モータ23を駆動する速度指令であり、モータ23の回転数指令である。そして、この速度指令S2は、モータ23によって回転駆動されるファン22の速度指令(回転数指令)である。なお、この速度指令S2は、圧力偏差値P2に対応する、つまり、圧力指令値P1と測定圧力値Pfの偏差に対応する。
【0048】
増幅部42cには、増幅率βが設定されている。増幅率βの値は、切替制御部47により制御される。増幅部42cは、速度指令S2に増幅率βを乗算した結果(=S2×β)を第2の速度指令B2として出力する。例えば増幅率βが「1」に設定されているとき、この増幅部42cは、入力指令、つまり速度指令S2と等しい第2の速度指令B2を出力する。また、増幅率βが「0」に設定されているとき、この増幅部42cは、値が「0」の第2の速度指令B2を出力する。つまり、第2の速度指令B2が無効となる。増幅部42cから出力される第2の速度指令B2は、演算部45に供給される。
【0049】
演算部45は、速度指令S1に速度指令S2を加算し、加算結果を駆動指令Vmとしてモータアンプ33に出力する。この駆動指令Vmは、モータ23によって回転駆動されるファン22の速度指令(回転数指令)である。
【0050】
モータアンプ33は、駆動指令Vmに応じた駆動電流をモータ23に供給する。モータ23は、供給される駆動電流に応じて回転する。従って、モータ23は、駆動指令Vmに対応する回転数にて回転する。
【0051】
即ち、第1の圧力制御部41は、圧力指令値P1に応じた第1の速度指令B1を生成する。その第1の速度指令B1に応じてモータ23が駆動される。つまり、この第1の圧力制御部41は、圧力指令値P1に応じた速度指令によりモータ23を駆動するフィードフォワード制御を行う。
【0052】
第2の圧力制御部42は、圧力指令値P1と測定圧力値Pfとの偏差を算出し、その算出した圧力偏差値P2に基づいて第2の速度指令B2を生成する。その第2の速度指令B2に応じてモータ23が駆動される。測定圧力値Pfは、モータ23の駆動に応じた値となる。つまり、この第2の圧力制御部42は、測定圧力値Pfに基づいて、この測定圧力値Pfを圧力指令値P1と等しくするように第2の速度指令B2を生成してモータ23を駆動するフィードバック制御を行う。
【0053】
切替制御部47は、流量センサ32の測定結果である測定流量値Frを入力する。切替制御部47は、測定流量値Frに基づいて、患者63の呼吸状態を判定する。また、切替制御部47は、駆動指令Vmと
図3に示すホールセンサ34の出力信号に応じた回転速度Vrとを入力する。
図4の例では、駆動指令Vmと回転速度Vrとが切替制御部47に入力されるが、駆動指令Vmと回転速度Vrとの偏差が切替制御部47に入力されてもよい。そして、切替制御部47は、判定した患者63の呼吸状態と駆動指令Vmと回転速度Vrとに基づいて、減圧量Pc、増幅部41b,42cの増幅率α,βを設定する。
【0054】
例えば、吸気状態(測定流量値Frが正の値)のとき、減圧量Pcを減圧しない値(例えば「0」)に設定する。一方、呼気状態(測定流量値Frが負の値)のとき、減圧量Pcを減圧する値(例えば「300」)に設定する。また、回転速度Vrと駆動指令Vmとの偏差が所定の範囲内のとき、増幅部41bの増幅率αを「0.9」とし、増幅部42cの増幅率βを「1」とする。一方、回転速度Vrと駆動指令Vmとの偏差が所定の範囲を超えるとき、増幅部41bの増幅率αを「1」とし、増幅部42cの増幅率βを「0」とする。
【0055】
次に、上記の流体制御装置10の作用を説明する。
図6は、測定圧力値Pfの変化を示す。
図6において、横軸は時刻である。
例えば、
図2に示す患者63は吸気状態にある。このとき、
図4に示す流量センサ32は、正の測定流量値Frを出力する。このため、切替制御部47は、減圧量Pcを減圧しない値(例えば「0」)に設定するとともに、増幅部41bの増幅率αを「0.9」とし、増幅部42cの増幅率βを「1」とする。
【0056】
すると、制御ユニット30の第1の圧力制御部41は、基準圧力指令値P0と等しい圧力指令値P1に応じた速度指令S1に増幅率α(=0.9)を乗算した値の第1の速度指令B1を生成する。第2の圧力制御部42は、基準圧力指令値P0と等しい圧力指令値P1と測定圧力値Pfとの偏差(圧力偏差値P2)に応じた速度指令S2に、増幅率β(=1)を乗算した値の第2の速度指令B2を生成する。これら第1の速度指令B1と第2の速度指令B2とを合計した速度指令(駆動指令Vm)を生成し、その駆動指令Vmと回転速度Vrの偏差に応じてモータアンプ33を介してモータ23を駆動する。これにより、
図6に示すように、流体の圧力、つまり測定圧力値Pfは、レベルLC(基準圧力指令値P0のレベル)にて安定する。
【0057】
なお、第1の圧力制御部41において、増幅率αを「0.9」とすることにより、第1の圧力制御部41では、圧力指令値P1に応じた速度指令よりも小さな値、つまり遅い第1の速度指令B1を生成する。そして、この第1の速度指令B1に対して、圧力をフィードバックした、つまり測定圧力値Pf(実圧力値Pr)と圧力指令値P1との偏差(圧力偏差値P2)により生成した第2の速度指令B2を加えてモータ23に対する駆動指令Vmとする。これにより、流体の圧力を速やかに目標値である圧力指令値P1に追従させかつ安定化させることができる。
【0058】
次に、
図2に示す患者63が呼気状態となる。このとき、
図4に示す流量センサ32は、吸気から呼気への切り替わりに応じた値の測定流量値Fr(負の値の測定流量値Fr)を出力する。切替制御部47は、その測定流量値Frに基づいて、減圧量Pcを減圧する値(例えば「300」)に設定する。また、切替制御部47は、増幅部41bの増幅率αを「1」とし、増幅部42cの増幅率βを「0」とする。
【0059】
すると、制御ユニット30の第2の圧力制御部42は、増幅率βが「0」であるため、第2の速度指令B2が「0」、つまり無効となる。第1の圧力制御部41は、圧力指令値P1に応じた速度指令S1と等しい第1の速度指令B1を生成する。更に、この第1の速度指令B1と等しい値の駆動指令Vmが生成され、この駆動指令Vmに応じてモータ23が駆動される。そして、ファン22の回転速度は、駆動指令Vmに応じた速度まで速やかに低下する。この結果、
図6に示すように、流体の圧力、つまり測定圧力値Pfは、短時間で減圧したレベルLEまで低下する。
【0060】
ファン22の回転速度が低下して駆動指令Vm(第1の速度指令B1)と等しくなると、切替制御部47は、増幅部41bの増幅率αを「0.9」とし、増幅部42cの増幅率βを「1」とする。これにより、第2の圧力制御部42が有効となる。そして、上述したように、第1の圧力制御部41と第2の圧力制御部42とにより、測定圧力値Pfを圧力指令値P1と等しくするように、モータ23を制御する。この結果、
図6に示すように、流体の圧力、つまり測定圧力値Pfは、レベルLEで安定して維持される。
【0061】
次に、
図2に示す患者63が吸気状態となる。このとき、
図4に示す流量センサ32は、呼気から吸気への切り替わりに応じた値の測定流量値Fr(正の値の測定流量値Fr)を出力する。切替制御部47は、その測定流量値Frに基づいて、減圧量Pcを減圧しない値(=0)に設定する。また、切替制御部47は、増幅部41bの増幅率αを「1」とし、増幅部42cの増幅率βを「0」とする。
【0062】
すると、制御ユニット30の第2の圧力制御部42は、増幅率βが「0」であるため、第2の速度指令B2が「0」、つまり無効となる。第1の圧力制御部41は、圧力指令値P1に応じた速度指令S1と等しい第1の速度指令B1を生成する。更に、この第1の速度指令B1と等しい値の駆動指令Vmが生成され、この駆動指令Vmに応じてモータ23が駆動される。そして、ファン22の回転速度は、駆動指令Vmに応じた速度まで速やかに上昇する。この結果、
図6に示すように、流体の圧力、つまり測定圧力値Pfは、短時間で所定のレベルLCまで上昇する。
【0063】
ファン22の回転速度が上昇して駆動指令Vm(第1の速度指令B1)と等しくなると、切替制御部47は、増幅部41bの増幅率αを「0.9」とし、増幅部42cの増幅率βを「1」とする。これにより、第2の圧力制御部42が有効となる。そして、上述したように、第1の圧力制御部41と第2の圧力制御部42とにより、測定圧力値Pfを圧力指令値P1と等しくするように、モータ23を制御する。この結果、
図6に示すように、流体の圧力、つまり測定圧力値Pfは、レベルLCで安定して維持される。
【0064】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)流体制御装置10は、ファン22と、ファン22を駆動する駆動部としてのモータ23と、モータ23を制御する制御ユニット30とを有している。また、流体制御装置10は、流体を流入する流入口14と、ファン22の回転駆動によって流体を吐出する吐出口15(排出路21b)とを有している。制御ユニット30は、第1の圧力制御部41と第2の圧力制御部42とを有している。第1の圧力制御部41は、圧力指令値P1に基づいて第1の速度指令B1を生成する。従って、この第1の圧力制御部41は、圧力指令値P1による速度制御を行う。第2の圧力制御部42は、圧力指令値P1と測定圧力値Pfとの偏差に基づいて第2の速度指令B2を生成する。従って、この第2の圧力制御部42は、流体の圧力をフィードバックした速度制御を行う。
【0065】
このため、吸気から呼気への切り替わりを検知した場合に第2の圧力制御部42を無効とすることにより、フィードバックによる遅れの影響がなくなり、第1の圧力制御部41によって圧力指令値P1まで流体の圧力が短時間で変更される。同様に、呼気から吸気への切り替わりを検知した場合に第2の圧力制御部42を無効とすることにより、フィードバックによる遅れの影響がなくなり、第1の圧力制御部によって圧力指令値まで流体の圧力が短時間で変更される。つまり、この流体制御装置10は、流体の圧力の制御性がよい。そして、本実施形態の流体制御装置10は、ファン22の回転速度の変更(低下)のためにブレーキ等の機構を必要としないため、装置の大型化を抑制することができる。
【0066】
(2)切替制御部47は、回転速度Vrが駆動指令Vmと等しくなると、増幅部41bの増幅率αを「0.9」とし、増幅部42cの増幅率βを「1」とする。増幅率β(=1)により、第2の圧力制御部42が有効となる。そして、第1の圧力制御部41と第2の圧力制御部42とにより、測定圧力値Pfを圧力指令値P1と等しくするように、モータ23を制御する。この結果、流体の圧力、つまり測定圧力値Pfを減圧したレベルLEで安定して維持することができる。
【0067】
(3)第2の圧力制御部42は、圧力指令値P1を速度指令S2に変換する変換部42bと、速度指令S2を増幅して第2の速度指令B2を出力する増幅部42cを有している。切替制御部47は、増幅部42cの増幅率βを変更する。増幅率βを「0」とすることにより、第2の速度指令B2が「0」となる。このように、増幅率βによって第2の圧力制御部42の有効と無効を容易に制御することができる。
【0068】
(4)第2の圧力制御部42を有効としたとき、第1の圧力制御部41における増幅率αを「0.9」とした。これにより、第1の圧力制御部41では、圧力指令値P1に応じた速度指令よりも小さな値、つまり遅い第1の速度指令B1を生成する。そして、この第1の速度指令B1に対して、圧力をフィードバックした、つまり測定圧力値Pf(実圧力値Pr)と圧力指令値P1との偏差(圧力偏差値P2)により生成した第2の速度指令B2を加えてモータ23に対する駆動指令Vmとする。これにより、流体の圧力を速やかに目標値である圧力指令値P1に追従させかつ安定化させることができる。
【0069】
尚、上記各実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・上記実施形態では、測定流量値Frが正か負かによって吸気か呼気かを検出し、吸気から呼気への切り替わり、呼気から吸気への切り替わりを検出するようにした。これに対し、検出のためのしきい値を適宜設定してもよい。
【0070】
図7に示すように、しきい値T1,T2を設定し、それらのしきい値T1,T2に基づいて検出するようにしてもよい。例えば、測定流量値Frが「0」より大きなしきい値T1より低下したときに、吸気から呼気への切り替わりを検出するようにしてもよい。また、測定流量値Frが「0」より小さなしきい値T2より上昇したときに、呼気から吸気への切り替わりを検出するようにしてもよい。
【0071】
・上記実施形態に対し、第2の圧力制御部42の有効,無効を適宜変更してもよい。
図8に示すように、測定圧力値Pfが基準圧力指令値P0に応じたレベルLCになるまでの間、無効とするようにしてもよい。
【0072】
・上記実施形態では、流量センサ32の測定結果に基づいて患者63の呼吸状態を判定したが、その他の方法により判定してもよい。
例えば、圧力センサ31の測定結果に基づいて呼吸状態を判定してもよい。
【0073】
また、
図3に示すモータ23に流れる電流を電流センサにより測定し、その測定結果により判定してもよい。患者63における呼吸状態は、モータ23に対する負荷の変化として現れる。例えば、患者63が吸気状態にあるとき、モータ23に対する負荷は小さくなり、患者63が呼気状態にあるとき、モータ23に対する負荷は大きくなる。この負荷に応じてモータ23における電流量が変化する。このように、モータ23に流れる電流により呼吸状態を判定する。
【0074】
・上記実施形態では、増幅率βを「0」として第2の圧力制御部42を無効としたが、その他の方法により無効としてもよい。例えば、変換部42bの変換結果を「0」とするようにしてもよい。また、演算部45において、第2の速度指令B2を無効とする、つまり第2の速度指令B2を加算しないようにしてもよい。
【0075】
・上記実施形態では、流体として気体(例えば空気)を供給する場合について説明したが、他にも霧状の液体を含む気体−液体混合物を供給する場合に用いられてもよい。また、上記実施形態では、流体制御装置10はチューブ61とマスク62を介して患者63と接続しているが、当該マスク62に替えてカニューレが用いられてもよい。