(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の孔部は、前記構造体の重心位置より前記回動軸側の領域の少なくとも一部を含むように配置され、前記第2の孔部は、前記重心位置より前記回動軸側とは反対側の領域の少なくとも一部を含むように配置される請求項1、4及び5のいずれか1項に記載の鍵盤装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の一実施形態における鍵盤装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す実施形態は本開示の実施形態の一例であって、本開示はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。なお、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号(数字の後にA、B等を付しただけの符号)を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率(各構成間の比率、縦横高さ方向の比率等)は説明の都合上実際の比率とは異なったり、構成の一部が図面から省略されたりする場合がある。
【0018】
[鍵盤装置の構成]
図1は、一実施形態における鍵盤装置の構成を示す図である。鍵盤装置1は、この例では、電子ピアノなどユーザ(演奏者)の押鍵に応じて発音する電子鍵盤楽器である。なお、鍵盤装置1は、外部の音源装置を制御するための制御データ(例えば、MIDI)を、押鍵に応じて出力する鍵盤型のコントローラであってもよい。この場合には、鍵盤装置1は、音源装置を有していなくてもよい。
【0019】
鍵盤装置1は、鍵盤アセンブリ10を備える。鍵盤アセンブリ10は、白鍵100wおよび黒鍵100bを含む。複数の白鍵100wと黒鍵100bとが並んで配列されている。鍵100の数は、N個であり、この例では88個であるが、この数に限られない。鍵100が配列された方向をスケール方向という。白鍵100wおよび黒鍵100bを特に区別せずに説明できる場合には、鍵100という場合がある。以下の説明においても、符号の最後に「w」を付した場合には、白鍵に対応する構成であることを意味している。また、符号の最後に「b」を付した場合には、黒鍵に対応する構成であることを意味している。
【0020】
ここで以下の説明で用いる方向(スケール方向D1および回動方向D2)について定義する。スケール方向D1は、鍵100が配列される方向である。回動方向D2は、ハンマアセンブリ200の延びる方向(演奏者から見た手前から奥側方向、D3逆方向)を軸として回動する方向に対応する。なお、ハンマアセンブリ200の回動方向D2は、鍵100の回動方向と略同一である。
【0021】
鍵盤アセンブリ10の一部は、筐体90の内部に存在している。鍵盤装置1を上方から見た場合において、鍵盤アセンブリ10のうち筐体90に覆われている部分を非外観部NVといい、筐体90から露出してユーザから視認できる部分を外観部PVという。すなわち、外観部PVは、鍵100の一部であって、ユーザによって演奏操作が可能な領域を示す。以下、鍵100のうち外観部PVによって露出されている部分を鍵本体部という場合がある。
【0022】
筐体90内部には、音源装置70およびスピーカ80が配置されている。音源装置70は、鍵100の押下に伴って音波形信号を生成する。スピーカ80は、音源装置70において生成された音波形信号を外部の空間に出力する。なお、鍵盤装置1は、音量をコントロールするためのスライダ、音色を切り替えるためのスイッチ、様々な情報を表示するディスプレイなどが備えられていてもよい。
【0023】
なお、本明細書における説明において、上、下、左、右、手前および奥などの方向は、演奏するときの演奏者から鍵盤装置1を見た場合の方向を示している。そのため、例えば、非外観部NVは、外観部PVよりも奥側に位置している、と表現することができる。また、鍵前端側(鍵前方側)、鍵後端側(鍵後方側)のように、鍵100を基準として方向を示す場合もある。この場合、鍵前端側は鍵100に対して演奏者から見た手前側を示す。鍵後端側は鍵100に対して演奏者から見た奥側を示す。この定義によれば、黒鍵100bのうち、黒鍵100bの鍵本体部の前端から後端までが、白鍵100wよりも上方に突出した部分である、と表現することができる。
【0024】
図2は、一実施形態における音源装置の構成を示すブロック図である。音源装置70は、信号変換部710、音源部730および出力部750を備える。センサ300は、各鍵100に対応して設けられ、鍵の操作を検出し、検出した内容に応じた信号を出力する。この例では、センサ300は、3段階の押鍵量に応じて信号を出力する。この信号の間隔に応じて押鍵速度が検出可能である。
【0025】
信号変換部710は、センサ300(88の鍵100に対応したセンサ300−1、300−2、・・・、300−88)の出力信号を取得し、各鍵100における操作状態に応じた操作信号を生成して出力する。この例では、操作信号はMIDI形式の信号である。そのため、押鍵操作に応じて、信号変換部710はノートオンを出力する。このとき、88個の鍵100のいずれが操作されたかを示すキーナンバ、および押鍵速度に対応するベロシティについてもノートオンに対応付けて出力される。一方、離鍵操作に応じて、信号変換部710はキーナンバとノートオフとを対応付けて出力する。信号変換部710には、ペダル等の他の操作に応じた信号が入力され、操作信号に反映されてもよい。
【0026】
音源部730は、信号変換部710から出力された操作信号に基づいて、音波形信号を生成する。出力部750は、音源部730によって生成された音波形信号を出力する。この音波形信号は、例えば、スピーカ80または音波形信号出力端子などに出力される。
【0027】
[鍵盤アセンブリの構成]
図3は、一実施形態における筐体内部の構成をスケール方向に見た場合の説明図である。
図3に示すように、筐体90の内部において、鍵盤アセンブリ10およびスピーカ80が配置されている。すなわち、筐体90は、少なくとも、鍵盤アセンブリ10の一部(接続部180およびフレーム500)およびスピーカ80を覆っている。スピーカ80は、鍵盤アセンブリ10の奥側に配置されている。このスピーカ80は、押鍵に応じた音を筐体90の上方および下方に向けて出力するように配置されている。下方に出力される音は、筐体90の下面側から外部に進む。一方、上方に出力される音は筐体90の内部から鍵盤アセンブリ10の内部の空間を通過して、外観部PVにおける鍵100の隣接間の隙間または鍵100と筐体90との隙間から外部に進む。なお、スピーカ80からの音の経路は、経路SRとして例示されている。このように、スピーカ80からの音は、鍵盤アセンブリ10の内部の空間、すなわち鍵100(鍵本体部)の下方側の空間に到達する。
【0028】
鍵盤アセンブリ10の構成について、
図3を用いて説明する。鍵盤アセンブリ10は、上述した鍵100の他にも、接続部180、ハンマアセンブリ200(複数の回動部材の一例)およびフレーム500を含む。なお
図3においては、鍵盤アセンブリ10の鍵100は白鍵(実線)に関して説明するが、黒鍵(破線)も同様な構成である。鍵盤アセンブリ10は、ほとんどの構成が射出成形などによって製造された樹脂製の構造体である。フレーム500は、筐体90に固定されている。接続部180は、フレーム500に対して回動可能に鍵100を接続する。接続部180は、板状可撓性部材181、鍵側支持部183および棒状可撓性部材185を備える。板状可撓性部材181は、鍵100の後端から延在している。鍵側支持部183は、板状可撓性部材181の後端から延在している。
【0029】
棒状可撓性部材185は、鍵側支持部183およびフレーム500のフレーム側支持部585によって支持されている。鍵100は棒状可撓性部材185を中心にフレーム500に対して回動することができる。棒状可撓性部材185は、鍵側支持部183とフレーム側支持部585とに対して、着脱可能に構成されている。棒状可撓性部材185を着脱可能に構成することで、製造の容易性が向上(金型の設計の容易化、組立作業の容易化、修理作業の容易化など)したり、それぞれの材料の組み合わせなどによるタッチ感および強度が向上したりする。なお、棒状可撓性部材185は、鍵側支持部183とフレーム側支持部585と一体となって、または接着等により、着脱できない構成であってもよい。
【0030】
鍵100は、前端鍵ガイド151および側面鍵ガイド153を備える。前端鍵ガイド151は、フレーム500の前端フレームガイド511を覆った状態で摺動可能に接触している。前端鍵ガイド151は、その上部と下部のスケール方向の両側において、前端フレームガイド511と接触している。側面鍵ガイド153は、スケール方向の両側において側面フレームガイド513と摺動可能に接触している。この例では、側面鍵ガイド153は、鍵100の側面のうち非外観部NVに対応する領域に配置され、接続部180(板状可撓性部材181)よりも鍵前端側に存在するが、外観部PVに対応する領域に配置されてもよい。
【0031】
また、鍵100は、外観部PVの下方においてハンマ支持部120が接続されている。ハンマ支持部は、鍵100が回動するときに、ハンマアセンブリ200を回動させるように、ハンマアセンブリ200に接続される。
【0032】
ハンマアセンブリ200は、各鍵100の下方側の空間に配置され、フレーム500に対して回動可能に取り付けられている。このとき各ハンマアセンブリ200が取り付けられるフレーム500の回動軸520は、スケール方向に同心軸上に位置する。すなわち各ハンマアセンブリ200は、各鍵100に対応してスケール方向に並んで配置されている。ハンマアセンブリ200は、錘部230(構造体の一例)およびハンマ本体部205(支持部材の一例)を備える。ハンマ本体部205には、軸受部220が配置されている。軸受部220とフレーム500の回動軸520とは少なくとも3点で摺動可能に接触する。すなわち、各ハンマアセンブリ200は、フレーム500の回動軸520を回動中心として回動することができる。一方で、ハンマアセンブリ200の前端部210は、ハンマ支持部120の内部空間において概ね前後方向に摺動可能に鍵100と接続する。この摺動部分、すなわち前端部210とハンマ支持部120とが接触する負荷発生部は、外観部PV(鍵本体部の後端よりも前方)における鍵100の下方に位置する。なお、負荷発生部の構造については後述する。
【0033】
錘部230は、本実施形態では金属製の錘単体で構成する。ただし、複数の部材で錘部を構成してもよい。錘部230は、ハンマ本体部205の後端部(回動中心よりも奥側)に接続されている。通常時(押鍵していないとき)には、錘部230が下側ストッパ410に載置された状態であり、ハンマアセンブリ200の前端部210が、鍵100を押し上げている。押鍵されると、錘部230が上方に移動し、上側ストッパ430に衝突する。これによって鍵100の最大押鍵量となるエンド位置が規定される。ハンマアセンブリ200は、この錘部230によって、押鍵に対して負荷を与える。下側ストッパ410および上側ストッパ430は、緩衝材等(不織布、弾性体等)で形成されている。なお、ハンマアセンブリ200の詳細の構成については後で詳しく説明する。
【0034】
ハンマ支持部120および前端部210の下方には、フレーム500にセンサ300が取り付けられている。押鍵により前端部210の下面側でセンサ300が押されると、センサ300は検出信号を出力する。センサ300は、上述したように、各鍵100に対応して設けられている。
【0035】
[負荷発生部の概要]
図4は、負荷発生部(ハンマ支持部および前端部)の説明図である。ハンマアセンブリ200の前端部210は、力点部211および押圧部215を備える。これらの各構成はいずれも、ハンマ本体部205に接続されている。ハンマ本体部205は、この例では板状であり、略円柱形状の力点部211は、ハンマ本体部205に対して概ね垂直方向に突出している。力点部211は、フレーム500の回動軸520と平行(スケール方向)に、ハンマ支持部120の内部空間SPに配置される。すなわち、板状のハンマ本体部205は、回動軸520の方向を法線に持つ回動面に対して平行ではなく、わずかに傾いて配置される。押圧部215は、前端部210の下方に設けられ、板形状に厚みを持たせるよう回動方向に対して面を有する。押圧部215は、押鍵動作により前端部210の下面側でセンサ300と接触する。
【0036】
ハンマ支持部120は、摺動面形成部121を含む。この例では、摺動面形成部121は、内部に力点部211が移動可能な空間SPを形成する。空間SPの上方において摺動面FSが形成され、空間SPの下方においてガイド面GSが形成される。ガイド面GSには、ハンマ本体部205を通過させるためのスリットが形成されている。少なくとも摺動面FSが形成される領域は、ゴム等の弾性体で形成されている。この例では、摺動面形成部121の全体が弾性体で形成されている。
【0037】
図4においては、鍵100がレスト位置にある場合の力点部211の位置を示している。押鍵されると、力点部211は、摺動面FSと接触しつつ、空間SPを矢印E1の方向(以下、進行方向E1という場合がある)に移動する。すなわち、力点部211は摺動面FSと摺動する。この例では、摺動面FSのうち、鍵100がレスト位置からエンド位置に回動することによって力点部211が移動する範囲に、段差部1231が配置されている。すなわち、段差部1231は、初期位置(鍵100がレスト位置にあるときの力点部211の位置)から移動する力点部211によって乗り越えられる。また、ガイド面GSのうち段差部1231に対向する部分には、凹部1233が形成されている。凹部1233の存在により、力点部211が段差部1231を乗り越えて移動しやすくなる。
【0038】
押鍵のときには、摺動面FSから力点部211に対して力が加えられる。力点部211に伝達された力は、錘部230を上方に移動させるようにハンマアセンブリ200を回動させる。このとき、力点部211は摺動面FSに押しつけられる。一方、離鍵のときには、錘部230が落下することによりハンマアセンブリ200が回動し、その結果、力点部211から摺動面FSに対して力が加えられる。ここで、力点部211は、摺動面FSを形成する弾性体と比べて弾性変形しにくい部材(例えば、剛性の高い樹脂等)で形成されている。そのため、摺動面FSは、力点部211が押しつけられることで弾性変形する。この結果、力点部211は、押しつけられる力に応じて移動に対する様々な抵抗力を受ける。
【0039】
[ハンマアセンブリの構成]
図5は、一実施形態における白鍵に対応するハンマアセンブリの説明図である。
図5(A)は、ハンマアセンブリをスケール方向(回動軸が延びる方向、
図3D1方向)に見た図である。
図5(B)は、ハンマアセンブリを回動方向(
図3D2方向)に下面側から見た図である。
図5(C)は、ハンマアセンブリの延びる方向(
図3D3方向)に奥側(鍵後端側)から見た図である。なお、ハンマアセンブリ200が回動軸回りに回動するときの、ハンマアセンブリの回動方向は、回動軸が延びる方向を法線とする面(回動面であり、回動軸に垂直な面ということもできる)に含まれる方向(回動面に平行な方向)と考えることができる。このように回動方向を定義した場合は、回動方向の一例が回動方向D2となる。
【0040】
なおここでは、白鍵に対応するハンマアセンブリ200wに関して説明するが、黒鍵に対応するハンマアセンブリ200bに関しても同様な構成である。ハンマアセンブリ(回動部材)200wは、ハンマ本体部(支持部材)205wと錘部(構造体)230wとを備える。ハンマ本体部205wは、力点部211および押圧部215を有する前端部210、後端部212、および一端で前端部210と他端で後端部212を接続する接続部240を有する。接続部240はリブRにより所定の厚さTを有して、その一部に軸受部220を有する。後端部212は、少なくとも錘取り付け部201に平面状の板状領域と、その板状の領域の回動方向(
図3D2方向)上面側において接続部240から連なる第1錘支持壁201X1と、第1錘支持壁201X1に対向する第2錘支持壁201X2を有する。第2錘支持壁201X2は、接続部240から離れた後端側の位置において回動部材の回動方向(
図3D2方向)下面側に形成される。錘取り付け部201は、後端部212に配置されている。錘部230は、第1錘支持壁201X1と第2錘支持壁201X2の間に挟まれるように支持される。第2錘支持壁201X2と接続部240は離間している。このため、第2錘支持壁201X2と接続部240の間からは、錘部230が露出して回動方向(
図3D2方向)下面側から見えるように形成される。すなわち、錘部230wは、回動中心(回動軸)から離れた後端側に組み付けられる。しかしながらこれに限定されず、錘部230wは適用される鍵盤構造に応じて適宜配置されればよく、回動中心(回動軸)よりも自由端側に配置されればよい。
【0041】
ハンマ本体部205wと錘部230wとは、この例では、複数のネジで固定されている。錘取り付け部201と錘部230とは、回動中心に近い第1ネジ271および回動中心から遠い第2ネジ273によって固定されている。ここで、ネジは2つに限らず、さらに多くてもよいし、1つでもよい。なお、これらのネジは締結部材の一例であって、例えば、リベット等であってもよい。
【0042】
錘部230wは、少なくとも1つの平面状の接続面231を有し、ハンマ本体部205wの錘取り付け部201に取り付けられる。すなわち、錘部230wの接続面231とハンマ本体部205wの錘取り付け部201とは対向して、第1錘支持壁201X1と沿うように第2錘支持壁201X2の間に挟まれる形で接続される。換言すると、錘部230wの接続面231は、ハンマ本体部205wの平面状の板状領域に沿って、ハンマ本体部205wのスケール方向(回動軸方向、
図3D1方向。以降、ハンマ本体部205に対する錘部230の組付け方向と言うこともある)に配置される。なお、錘部230の詳しい構成に関しては後で詳しく説明する。
【0043】
本実施形態において、ハンマ本体部205wと錘部230wとは異なる材質を有する。ハンマ本体部205wは射出成形などによって製造された合成樹脂製であり、錘部230wはダイカストなどによって製造された金属製である。しかしながら、素材や製造方法等はこれに限定されず、錘部230wは、ハンマ本体部205wよりも大きい比重を有すればよい。
【0044】
[ハンマ本体部の構成]
図6は、一実施形態におけるハンマ本体部の説明図である。
図6(A)は、白鍵に対応するハンマ本体部205wをスケール方向(回動軸が延びる方向、
図3D1方向)に見た図である。
図6(B)は、黒鍵に対応するハンマ本体部205bをスケール方向(回動軸が延びる方向、
図3D1方向)に見た図である。
図6に示すように、ハンマ本体部205は、白鍵に対応するハンマ本体部205wと、黒鍵に対応するハンマ本体部205bとの少なくとも2種類に分類可能である。白鍵に対応するハンマ本体部205wの軸受部220から後端部212の距離Lhw1と、黒鍵に対応するハンマ本体部205bの軸受部220から後端部212の距離Lhb1とは同じである。一方で、白鍵に対応するハンマ本体部205wの力点部211から軸受部220の距離Lhw2より、黒鍵に対応するハンマ本体部205bの力点部211から軸受部220の距離Lhb2は大きく調整されている。すなわち、白鍵に対応するハンマ本体部205wの力点部211から後端部212の距離(Lhw1+Lhw2)より、黒鍵に対応するハンマ本体部205bの力点部211から後端部212の距離(Lhb1+Lhb2)は大きく調整されている。各錘部230は、各ハンマ本体部205の後端部212に合わせて固定される。このため、白鍵に対応するハンマアセンブリ200の力点部211から錘部230の後端部212側の距離より、黒鍵に対応するハンマアセンブリ200の力点部211から錘部230の後端部212側の距離は大きく調整されている。本実施形態において、白鍵に対応するハンマ本体部205wは52個、黒鍵に対応するハンマ本体部205bは36個であるが、この数に限られない。また、白鍵1種類と黒鍵1種類のハンマ本体部205としたが、この種類数に限られず、1種類で構成してもよいし、さらに種類数を増やしてもよい。
【0045】
白鍵に対応するハンマ本体部205wと、黒鍵に対応するハンマ本体部205bとが異なることから、錘部230を接続するときに取り違えないよう、ハンマ本体部205wとハンマ本体部205bとでは、第1ネジ271に対応する第1ネジ受け275と第2ネジ273に対応する第2ネジ受け277の間の距離がそれぞれ異なる。この例では、白鍵に対応するハンマ本体部205wの第1ネジ受け275から第2ネジ受け277の距離Lhw3より、黒鍵に対応するハンマ本体部205bの第1ネジ受け275から第2ネジ受け277の距離Lhb3は短く調整されている。また、後述する錘部230のネジ穴も同様の位置関係を有する。しかしながらこれに限定されず、第1ネジ受け275から第2ネジ受け277の距離は、白鍵に対応するハンマ本体部205wと黒鍵に対応するハンマ本体部205bとで逆転してもよい。また、白鍵に対応するハンマ本体部205wと黒鍵に対応するハンマ本体部205bとで異なる数のネジ受けを有してもよい。各ハンマ本体部205に対応する各錘部230が、ネジ受けの距離および/または数に対応するネジ穴を有すればよい。ハンマ本体部205および錘部230が、各組み合わせに対応するネジ受けおよびネジ穴を有することで、ハンマ本体部205と錘部230とを接続するときに取り違えを防ぐことができ、生産性向上することができる。
【0046】
また、白鍵に対応するハンマ本体部205wと、黒鍵に対応するハンマ本体部205bとを容易に識別するために、ハンマ用識別子213を付してもよい。この例では、黒鍵に対応するハンマ本体部205bの回動方向上面側に、凸形状のハンマ用識別子213が配置されている。ハンマ用識別子213は、回動方向上面側に突出するリブ形状であるが、この形状に限定されない。ハンマアセンブリ200bの回動動作を抑制しない限り、どのような形状であってもよい。ハンマ用識別子213を有することで、白鍵に対応するハンマ本体部205wと、黒鍵に対応するハンマ本体部205bとを容易に識別することができる。このため、2種類のハンマ本体部の誤認を防止することができ、生産性向上することができる。
【0047】
[錘部の構成]
図7および
図8を用いて、錘部の詳しい構成に関して説明する。
図7および
図8は、一実施形態における錘部の説明図である。
図7(A)は、低音白鍵に対応する錘部230wl1をスケール方向(回動軸が延びる方向、
図3D1方向)に見た図である。
図7(B)は、錘部230wl1をハンマアセンブリの回動方向(
図3D2方向)に下面側から見た図である。
図7(C)は、錘部230wl1をハンマアセンブリの延びる方向(ハンマアセンブリが鍵盤装置に組み付けられた状態においては演奏者から見た手前から奥側方向、
図3D3逆方向)に見た図である。
図7(D)は、低音側1番目の白鍵に対応する錘部230wlをハンマアセンブリ200の延びる方向(ハンマアセンブリが鍵盤装置に組み込まれた状態においては演奏者から見た奥側から手前方向、
図3D3方向)に見たA−A’断面図である。
【0048】
図8(A)は、低音白鍵に対応する錘部230wlをスケール方向(回動軸方向、
図3D1方向)に見た図である。
図8(B)は、高音白鍵に対応する錘部230whをスケール方向(回動軸が延びる方向、
図3D1方向)に見た図である。
図8(C)は、黒鍵に対応する錘部230bをスケール方向(回動軸が延びる方向、
図3D1方向)に見た図である。
図8に示すように、錘部230の外寸(外形)は、低音白鍵に対応する錘部230wlと、高音白鍵に対応する錘部230whと、黒鍵に対応する錘部230bとで異なり、少なくとも3種類に分類可能である。
【0049】
ハンマアセンブリの後端部212側(ハンマアセンブリが鍵盤装置に組み付けられた状態においては演奏者から見た奥側方向、
図3D3逆方向)における低音白鍵に対応する錘部230wlの回動方向D2の最小距離Lwwl4と、高音白鍵に対応する錘部230whの回動方向D2の最小距離Lwwh4と、黒鍵に対応する錘部230bの回動方向D2の最小距離Lwb4とは略同一である。すなわち、ハンマ本体部205の第1錘支持壁201X1と第2錘支持壁201X2の間に挟まれる錘部230の後端部側における外寸(外形)は略同一である。
【0050】
一方で、ハンマアセンブリの回動軸側(ハンマアセンブリが鍵盤装置に組み付けられた状態においては演奏者から見た手前方向、
図3D3方向)における低音白鍵に対応する錘部230wlの回動方向D2の最大距離Lwwl1と、高音白鍵に対応する錘部230whの回動方向D2の最大距離Lwwh1と、黒鍵に対応する錘部230bの回動方向D2の最大距離Lwb1とはそれぞれ異なる。Lwwh1よりLwb1は大きく、Lwb1よりLwwl1は大きく調整されている。低音白鍵に対応する錘部230wlのハンマアセンブリの延びる方向D3の最大距離Lwwl2と、高音白鍵に対応する錘部230whのハンマアセンブリの延びる方向D3の最大距離Lwwh2と、黒鍵に対応する錘部230bのハンマアセンブリの延びる方向D3の最大距離Lwb2ともそれぞれ異なる。Lwwh2よりLwb2は大きく、Lwb2よりLwwl2は大きく調整されている。
【0051】
さらに、錘部230は、ハンマ本体部205の第2錘支持壁201X2と接続部240の間から錘部230が露出して、回動方向(
図3D2逆方向)下面側に突出している。低音白鍵に対応する錘部230wlの回動方向D2の突出距離Lwwl5および黒鍵に対応する錘部230bの回動方向D2の突出距離Lwb5とは略同一である。低音白鍵に対応する錘部230wlの回動方向D2の突出距離Lwwl5および黒鍵に対応する錘部230bの回動方向D2の突出距離Lwb5と、高音白鍵に対応する錘部230whの回動方向D2の突出距離Lwwh5とは異なる。Lwwl5およびLwb5は、Lwwh5より回動方向(
図3D2逆方向)下面側に突出している。
【0052】
図8には示さなかったが、低音白鍵に対応する錘部230wlと、高音白鍵に対応する錘部230whと、黒鍵に対応する錘部230bとのハンマアセンブリの後端部212側におけるスケール方向D1の距離はすべて同一である。
図7(B)に示すように、錘部230wlの厚さ方向D1の距離は、ハンマアセンブリの延びる方向(ハンマアセンブリが鍵盤装置に組み付けられた状態においては演奏者から見た奥側から手前方向、
図3D3方向)に大きくなるよう勾配している。錘部230whと錘部230bの厚さ方向D1の距離も、錘部230wlの厚さ方向D1の距離と同様の勾配を有する。錘部230wlと、錘部230whと、錘部230bのハンマアセンブリの延びる方向D3の最大距離がそれぞれ異なることから、錘部230wlと、錘部230whと、錘部230bのスケール方向D1の最大距離もそれぞれ異なる。錘部230wlと、錘部230whと、錘部230bのハンマアセンブリの回動中心側(演奏者から見た手前側)におけるスケール方向D1の距離は、錘部230whより錘部230bは大きく、錘部230bより錘部230wlは大きく調整されている。
【0053】
上述したように、低音白鍵に対応する錘部230wlと、高音白鍵に対応する錘部230whと、黒鍵に対応する錘部230bとの外寸(外形)はそれぞれ異なる。後述する凹部を含まない低音側から1番目の白鍵に対応する錘部230wlの質量は、低音側から1番目の黒鍵に対応する錘部230bの質量より重く、低音側から1番目の黒鍵に対応する錘部230bの質量は、低音側から25番目の高音白鍵に対応する錘部230whの質量より重い。
【0054】
低音白鍵に対応する錘部230wlは25個、高音白鍵に対応する錘部230whは27個、黒鍵に対応する錘部230bは36個であるが、この数に限られない。また、白鍵2種類と黒鍵1種類の外寸(外形)を有する錘部230としたが、この種類数に限られず、白鍵1種類と黒鍵1種類の2種類で構成してもよいし、さらに種類数を増やしてもよい。
【0055】
図9は、一実施形態における各鍵に対応する音高と錘部の質量との関係を示す図である。
図9に示すように、各鍵に対応する錘部230はそれぞれ異なる質量を有し、低音部から高音部に向かうに従って、音高順に軽くなっている。音高に対する錘部230の質量は、低音部から高音部に向かうに従って常に一定の変化率で直線的に変化する。しかしながらこれに限定されず、音高に対する錘部230の質量は、非線形的に変化してもよい。本実施形態において、白鍵に対応するハンマ本体部205wの力点部211から軸受部220の距離Lhw2と、黒鍵に対応するハンマ本体部205bの力点部211から軸受部220の距離Lhb2とが異なることから、低音白鍵に対応する錘部230wlおよび高音白鍵に対応する錘部230whの音高と錘部の質量との関係と、黒鍵に対応する錘部230bとの音高と錘部の質量との関係とは独立している。ハンマ本体部205の力点部211から軸受部220の距離と、錘部230の質量および重心を調整することで、後述する白鍵および黒鍵を通して低音部から高音部に向かうに従って段階的な静荷重および動荷重を設定することができる。なお、ハンマ本体部205の質量は、錘部230に比べて十分小さいので、ハンマアセンブリ200の質量および重心は、錘部230の質量および重心と略同一である。
【0056】
図10は、一実施形態における錘部の説明図である。
図10(A)は、最低音白鍵に対応する錘部230wl1をハンマ本体部205に対する錘部230の組付け方向(回動軸が延びる方向、
図3D1方向)に見た図である。
図10(B)は、低音側2番目の白鍵に対応する錘部230wl2をハンマ本体部205に対する錘部230の組付け方向(回動軸が延びる方向、
図3D1方向)に見た図である。
図10(C)は、低音側17番目の白鍵に対応する錘部230wl17をハンマ本体部205に対する錘部230の組付け方向(回動軸が延びる方向、
図3D1方向)に見た図である。
図10(D)は、低音側25番目の白鍵に対応する錘部230wl25をハンマ本体部205に対する錘部230の組付け方向(回動軸が延びる方向、
図3D1方向)に見た図である。
図10(E)は、低音側25番目の白鍵に対応する錘部230wl25のB−B’断面図である。
図10(C)乃至
図10(E)に示すように、外形寸法が同じ種類の各錘部230wlをそれぞれ異なる質量に形成するため、錘部230wlは、ハンマ本体部205との接続面231以外の表面に凹部236を有する。なおここでは、低音白鍵に対応する錘部230wlに関して説明するが、高音白鍵に対応する錘部230whと、黒鍵に対応する錘部230bとに関しても同様の構成を適用することができる。なお、
図10(A)の錘部230wl1(第3の構造体の一例)には、後述の第1の凹部236aが形成されておらず、且つ後述の第2の凹部236bが形成されていない。また、凹部236は、
図10(E)に示すように、本実施形態においては、錘部230を厚さ方向に貫通しない凹部であるが、凹部を、錘部230を厚さ方向に貫通する形状としても良い。
【0057】
図10では例えば、4個の低音白鍵に対応する錘部230wlを示したが、25個の低音白鍵に対応する錘部230wlの外寸(外形)は、すべて同じである。低音側白鍵25個に、低音側から1番目から25番目まで番号をふったとき、最低音白鍵に対応する錘部230wl1はもっとも重く、低音側25番目の白鍵に対応する錘部230wl25はもっとも軽い。すなわち、25個の低音白鍵に対応する錘部230wlの質量はそれぞれ異なり、質量勾配を形成する。この質量勾配を形成するため、各錘部230wlは、ハンマ本体部205との接続面231と対向する面233にそれぞれ異なる形状の凹部236を有する。換言すると、各錘部230wlが異なる形状の凹部236を有することで、同一の外寸(外形)であっても異なる質量に形成することができる。なお、錘部230wl17及び230wl25には、第1の凹部236a及び第2の凹部236bの2つの凹部236が形成されているが、錘部230wl17及び錘部230wl25は、いずれも白鍵100wにそれぞれ対応する錘部230wlであるが、黒鍵100bに対応する錘部230wlに、2つの凹部236a及び236bを形成しても良い。
【0058】
なお、低音側から25番目の低音白鍵に対応する錘部230wl25は、低音側から26番目の高音白鍵に対応する錘部230wh1よりも重く調整されている。
図9に示すように、25個の低音白鍵に対応する錘部230wlおよび27個の高音白鍵に対応する錘部230whは、連続した音高と白鍵の錘部の質量との関係を示す。凹部236を配置することで、外寸が同じ、または異なる各錘部230であっても、各鍵に対応する錘部230は、低音部から高音部に向かうに従って音高順に段階的に軽くなるように調整することができる。
【0059】
凹部236は、1つの錘部230wl内に複数あってもよい(複数の凹部を区別しないときには、凹部236という)。第1の凹部(第1の孔部の一例)236aは、ハンマ本体部205に組み付けられた状態では、錘の長手方向(図中D3方向)における軸受部220(回動中心側)に近い位置に配置される。また、第1の凹部236aは、錘部230wlにおいて、錘部230wlの重心位置Cより回動軸側(C1方向)の領域(重心位置Cよりも回動軸に近い領域)の少なくとも一部を含むように配置される。すなわち、第1の凹部236aが配置される領域は、錘部230wlの重心位置Cより回動軸側(C1方向)の領域の少なくとも一部を含めば、さらに錘部230wlの重心位置を含んでもよく、さらに錘部230wlの重心位置Cより回動軸とは反対側(C2方向)の領域の少なくとも一部を含んでもよい。また、第1の凹部236aの少なくとも一部は、後述の第1ネジ穴272及び第2ネジ穴274よりも回動軸に近い位置に配置されている。各錘部230wlはこのように回動軸から近い位置に異なる大きさの第1の凹部236aを有することで、異なる特性で重力がハンマアセンブリ200に与える回動中心周りのモーメントが有効に働くように形成することができる。つまり、錘部230wl2(第1の構造体の一例)の第1の凹部236a2の形状又は大きさ(回転軸が延びる方向に見たときの、第1の凹部236a2の凹部の面積(開口面積))は、錘部230wl17(第2の構造体の一例)の第1の凹部236a17の形状又は大きさと異なっており、錘部230wl17の第1の凹部236a2の形状又は大きさは、錘部230wl25(第1の構造体の一例)の第1の凹部236a25の形状又は大きさと異なっている。重力がハンマアセンブリ200に与える回動中心周りのモーメントは、後述する鍵盤装置の静荷重を決定する。
【0060】
図10(E)は、低音側25番目の白鍵に対応する錘部230wl25をハンマアセンブリ200の延びる方向(演奏者から見た奥側から手前方向、
図3D3方向)に見たB−B’断面図である。
図10(E)に示すように、錘部230wl25は、凹部236内部の領域における厚さ方向(回動軸が延びる方向、
図3D1方向)の距離T2が、それ以外の領域における厚さ方向の距離T1より小さく調整されている。錘部230wlの凹部236の領域内部における厚さ方向の距離T2は略同一である。
図10(B)〜(D)に示すように、各錘部230wlが有する凹部236は、ハンマ本体部205に対する錘部230の組付け方向(回動軸が延びる方向、
図3D1方向)に見たときに異なる大きさ(第1の凹部236aの面積(開口面積))を有する。各錘部230wlは、錘部230wlが有する凹部236のハンマ本体部205に対する錘部230の組付け方向(回動軸方向、
図3D1方向)に見た大きさに反比例して、質量が軽くなっている。外寸(外形)が同一である各錘部230において、音高に対する凹部236のハンマ本体部205に対する錘部230の組付け方向(回動軸が延びる方向、
図3D1方向)に見た大きさは、低音部から高音部に向かうに従って音高順に大きくなっている。このような凹部236を有することで、各鍵に対応する錘部230は、低音部から高音部に向かうに従って音高順に軽くなっている。
【0061】
各錘部230の第1の凹部236aは、接続面231と対向する面233において、回動中心側(演奏者から見た手前側)に配置されている。各錘部230の第1の凹部236aは、凹部236のハンマ本体部205に対する錘部230の組付け方向(回動軸方向、
図3D1方向)に見た大きさが大きくなるに従って、ハンマアセンブリ200の延びる方向(鍵盤装置に組み込まれた状態においては演奏者から見た手前から奥側方向)に広がっていく。しかしながらこれに限定されず、例えば
図10(C)および(D)に示すように、凹部236は複数であってもよく、ハンマアセンブリ200の重心位置Cより回動中心(回動軸)とは反対側(C2方向)である後端部212側に配置されてもよいし、複数の第1の凹部236aが、重心位置Cよりも回動軸に近い位置に配置されても良い。ハンマアセンブリ200の後端部212側に配置される第2の凹部(第2の孔部)236bは、回動中心(回動軸)に対して第1の凹部236aより遠い位置に配置される。つまり、回動軸と第2の凹部236bの間の距離(第2の距離の一例)は、回動軸と第1の凹部236aの間の距離(第1の距離の一例)よりも大きくなる。また、第2の凹部236bは、錘部230wlの重心位置Cより回動軸とは反対側(C2方向)の領域の少なくとも一部を含むように配置される。そして、第2の凹部236bは、第1の凹部236aと重ならない限りにおいて、錘部230wlの重心位置Cより回動軸側(C2方向)とは反対側の領域の少なくとも一部を含むように配置される。すなわち、第2の凹部236bが配置される領域は、錘部230wlの重心位置Cより回動軸側(C2方向)とは反対側の領域の少なくとも一部を含めば、さらに錘部230wlの重心位置を含んでもよく、さらに錘部230wlの重心位置Cより回動軸(C1方向)の領域を含んでもよい。上述の説明で第1の凹部236aと第2の凹部236bとは、重ならない限りにおいてとしたが、質量と重心位置を希望のものに調整できる限りにおいて、浅い溝や細い溝等で互いに繋がる構成であっても本発明の趣旨を逸脱するものではない。なお、第1の凹部236bの少なくとも一部は、後述の第1ネジ穴272及び第2ネジ穴274よりも回動軸から遠い位置に配置されている。
【0062】
図10(C)および(D)に示す第2の凹部(第2の孔部)236bも、ハンマアセンブリ200の回動中心側に配置される第1の凹部236aと同様に、凹部236内部の領域における厚さ方向(回動軸方向、
図3D1方向)の距離T2が、それ以外の領域における厚さ方向の距離T1より小さく調整されている。錘部230wlの複数の凹部236(第1の凹部236aおよび第2の凹部236b)の領域内部における厚さ方向の距離T2は略同一である。各錘部230wlの厚さ方向D1の距離は、ハンマアセンブリの延びる方向(ハンマアセンブリが鍵盤装置に組み付けられた状態においては演奏者から見た手前から奥側方向、
図3D3逆方向)に小さくなるよう勾配している。このため、凹部236の深さ(T1−T2)も、ハンマアセンブリの延びる方向(ハンマアセンブリが鍵盤装置に組み付けられた状態においては演奏者から見た手前から奥側方向、
図3D3逆方向)に小さくなる。しかしながらこれに限定されず、複数の凹部236の領域内部における厚さ方向の距離T2はそれぞれ異なってもよく、それ以外の領域における厚さ方向の距離T1より小さければよい。すなわち、凹部236の領域内部における厚さ方向の距離T2は0であってもよく、換言すると、凹部236は貫通孔であってもよい(凹部および貫通孔を区別しないときには孔部ともいう)。凹部236は、深さと大きさ(面積)によって調整することができるため、微妙な従量調整が可能となる。
【0063】
なお本実施形態において凹部236は、周囲が厚さ方向の距離T1の領域で囲われた構造を有する。しかしながらこれに限定されず、凹部236は、錘部230の外形が変わらない限り、錘部230の端部に配置してもよい。この場合、凹部236が位置する錘部230の端部の厚さ方向の距離は、凹部236の領域内部における厚さ方向の距離T2と同一となる。
【0064】
各錘部230wlのハンマアセンブリ200の後端部212側に配置される第2の凹部236bも、ハンマアセンブリ200の回動中心側に配置される第1の凹部236aと同様に、ハンマ本体部205に対する錘部230の組付け方向(回動軸方向、
図3D1方向)に見たときに異なる大きさ(面積)を有する。つまり、錘部230wl17の第2の凹部236b17の大きさ(回転軸が延びる方向に見たときの、第2の凹部236b17の凹部の面積(開口面積))は、錘部230wl25の第2の凹部236b25の大きさと異なっている。各錘部230が異なる形状(数、大きさ、深さなど)の凹部236を異なる位置に有することで、各錘部230は異なる質量と重心を有する。すなわち、各錘部230が異なる形状の凹部236を異なる位置に有することで、ハンマアセンブリ200の質量と重心位置Cを制御することができる。なお、本実施形態においては、第1の凹部236a2、236a17、236a25を異なる形状とし、第2の凹部236b17、236b25を異なる形状としたが、本開示はこれに限られることは無い。例えば、錘部230wlに形成されたすべての第1の凹部236aを互いに異なる形状とした上で、錘部230wlに形成されたすべての第2の凹部236bを互いに異なる形状としても良い。また、少なくとも2つの錘部230wlに形成された第1の凹部236aを互いに異なる形状とし、少なくとも2つの錘部230wlに形成された第2の凹部236bを互いに異なる形状としても良い。また、少なくとも2つの錘部230wlに形成された第1の凹部236aを同じ形状とした上で、当該2つの錘部230wlに形成された少なくとも2つの第2の凹部236bを互いに異なる形状としても良いし、少なくとも2つの錘部230wlに形成された第2の凹部236bを同じ形状とした上で、当該2つの錘部230wlに形成された2つの第1の凹部236aを互いに異なる形状としても良い。つまり、複数の錘部230wlのうちの2つの錘部230wlにおいては、第1の凹部236a及び2つの第2の凹部236bのうちの少なくとも一方の凹部236の形状が互いに異なっていれば、当該2つの錘部230wlの重さを互いに異なるものとすることができるのである。また、
図10においては、複数の錘部230wlのうち、少なくとも2つの錘部230wl17及び230wl25に第2の凹部236bが形成されているが、複数の230wlのすべての錘部230wlに第2の凹部236bが形成されず、複数の錘部230wlのうちの少なくとも2つに第1の凹部236aが形成され、これらの形状が互いに異なることとしても良い。すなわち、複数の錘部230wl間の重さを、第1の凹部236aの大きさによって調整しても良い。同様に、複数の錘部230wlのすべての錘部230wlに第1の凹部236aが形成されず、複数の錘部230wlのうちの少なくとも2つに第2の凹部236bが形成され、これらの形状が互いに異なることとしても良い。この場合は、複数の錘部230wlの重さは、第2の凹部236bの大きさによって調整されることになる。また、
図10(A)から10(D)に示す錘部230wlは、白鍵100wに対応するものであるが、これらの錘部230wlを黒鍵100bに対応する錘部230に置き換えても良い。また、このように置き換えた場合に、黒鍵100bに対応する錘部230には、第1の凹部236aと第2の凹部236bの両方が形成された錘部が含まれないこととしても良い。つまり、黒鍵100bに対応する複数の錘部230には、1つの凹部236(例えば第1の凹部230a)が形成された少なくとも1つの錘が含まれるが、2つの凹部236(第1の凹部230a及び第2の凹部230b)が形成された錘が含まれないこととしても良い。また、黒鍵100bに対応する複数の錘部230には、
図10(A)に示すような、凹部236が1つも形成されない錘部230が含まれることとしても良い。
【0065】
各錘部230wlは、ハンマアセンブリの延びる方向(
図3D3方向)の両端付近に分散して凹部236を設けることで、錘部230wlの重さの分布を錘部230wlの中心付近に集中することができる。錘部230wlの重さの分布が分散していると、同じ静荷重と動荷重であっても大きな質量が必要となる。錘部230wlの重さの分布を錘部230wlの中心付近に集中することで、所定の範囲の質量のなかで、静荷重と動荷重を独立に調整することができる。各錘部230wlはこのように異なる位置に異なる形状の凹部236を有することで、錘部230wlの質量がハンマアセンブリ200の慣性モーメントにより有効に働くように形成することができる。ハンマアセンブリ200の慣性モーメントは、後述する鍵盤装置の動荷重を決定する。
【0066】
図11は、一実施形態における各鍵に対応する音高と、錘部の静荷重および動荷重の関係を示す図である。
図11に示すように、各鍵に対応する錘部230はそれぞれ異なる静荷重を有し、低音部から高音部に向かうに従って、音高順に小さくなっている。音高に対する錘部230の静荷重は、低音部から高音部に向かうに従って常に一定の変化率で直線的に変化する。しかしながらこれに限定されず、音高に対する錘部230の静荷重は、一定であってもよく、また非線形的に変化してもよい。各鍵に対応する錘部230はそれぞれ異なる動荷重を有し、低音部から高音部に向かうに従って、音高順に小さくなっている。音高に対する錘部230の動荷重は、低音部から高音部に向かうに従って常に一定の変化率で直線的に変化する。しかしながらこれに限定されず、音高に対する錘部230の動荷重は、非線形的に変化してもよいし、一定であってもよい。
【0067】
以上のように、本実施形態に係る回動部材によると、ハンマ本体部205への錘部230の取り付け位置と、錘部230における凹部236の形状と位置を調整することで、重力がハンマアセンブリ200に与える回動中心周りのモーメントおよび慣性モーメントを制御することができ、白鍵および黒鍵を通して低音部から高音部に向かうに従って段階的な静荷重および動荷重を設計することができる。
【0068】
図8に示すように、錘部230をハンマ本体部205に接続するときに取り違えないよう、錘部230wlおよび錘部230whと、錘部230bとでは、第1ネジ271に対応する第1ネジ穴(締結部材取り付け部)272と第2ネジ273に対応する第2ネジ穴(締結部材取り付け部)274の間の距離がそれぞれ異なる。この例では、白鍵に対応する錘部230wlおよび230whの第1ネジ穴272から第2ネジ穴274の距離Lwwl3およびLwwh3より、黒鍵に対応する錘部230bの第1ネジ穴272から第2ネジ穴274の距離Lwb3は短く調整されている。低音白鍵に対応する錘部230wlと高音白鍵に対応する錘部230whの、第1ネジ穴272と第2ネジ穴274の間の距離Lwwl3およびLwwh3は同一である。同じ色の鍵同士、すなわち白鍵同士または黒鍵同士の錘部230の、第1ネジ穴272と第2ネジ穴274の間の距離は同一である。しかしながらこれに限定されず、第1ネジ穴272から第2ネジ穴274の距離は、白鍵に対応する錘部230wlおよび錘部230whと黒鍵に対応する錘部230bとで逆転してもよい。また、白鍵に対応する錘部230wlおよび錘部230whと黒鍵に対応する錘部230bとで異なる数のネジ穴を有してもよい。各錘部230に対応する各ハンマ本体部205が、ネジ穴の距離および/または数に対応するネジ受けを有すればよい。錘部230およびハンマ本体部205が、各組み合わせに対応するネジ穴およびネジ受けを有することで、錘部230とハンマ本体部205とを接続するときに取り違えを防ぐことができ、生産性向上することができる。また、
図10(C)および(D)に示すように、第1ネジ穴272は、凹部236内部の領域に配置してもよい。同様に、第2ネジ穴274も、凹部236内部の領域に配置してもよい。
【0069】
[錘部の製造方法]
図12を用いて、錘部の製造方法について説明する。
図12は、本発明の一実施形態における錘部230を成形するための金型と、錘部230の模式図である。
図12(A)は、最低音白鍵に対応する錘部230wl1を成形するための金型と、錘部230wl1の断面模式図である。
図12(B)は、低音側5番目の白鍵に対応する錘部230w5を成形するための金型と、錘部230wl5の断面模式図である。
図12(C)は、低音側25番目の白鍵に対応する錘部230w25を成形するための金型と、錘部230wl25の断面模式図である。
【0070】
錘部230を形成する金型は第1金型800および第2金型810を有する。第1金型800は、錘部230の外寸の型となる。第2金型810は、錘部230の接続面231と対向する面233の型となる。すなわち、第1金型800は錘部230の接続面231と接続面231と隣接する面を、第2金型810は錘部230の面233と面238を形成する。本実施形態において、錘部230の外寸は3種類に分類することができる。このため、低音白鍵に対応する錘部230wlと、高音白鍵に対応する錘部230whと、黒鍵に対応する錘部230b用の3種類の第1金型800が必要となる。一方で、錘部230の接続面231と対向する面233には、各錘部230に対応した凹部236が形成される。このため、88種類の錘部230用の88種類の第2金型810が必要となる。このように88種類の錘部230を製造するのに3個の第1金型800を兼用することで、各音高に応じて第1金型800および第2金型810を作って製造するよりも、金型の製造コストを下げるとともに、錘部230の製造工程を簡略化することができる。
【0071】
錘部230を形成する第1金型800および第2金型810は、変形なく金型より錘部230を離型させるために抜き勾配を有する。このため錘部230も、抜き勾配を有する。この例では、錘部230は、接続面231の外寸より、接続面231と対向する面233の外寸のほうが大きい。換言すると、錘部230の接続面231の外周より、接続面231と対向する面233の外周のほうが大きい。
【0072】
しかしながら錘部230を形成する第1金型800および第2金型810の構成はこれに限定されず、例えば、第1金型800が外寸および接続面231と対向する面233の型であってもよい。この場合、第1金型800は、外寸を決定する凹部の底部に各錘部230の凹部236に対応する第1凸部812と、面238に対応する第2凸部814とをさらに有するため、88種類必要となる。一方で、88種類の錘部230を製造するのに、1個の第2金型810を兼用することができる。製造される錘部230は、第1金型800の抜き勾配のため、接続面231の外寸より、接続面231と対向する面233の外寸のほうが小さくなる。このように構成することで、88種類の錘部230を製造するのに、1個の第2金型810を兼用することができ、錘部230の製造工程をさらに簡略化することができる。
【0073】
[鍵盤アセンブリの動作]
図13は、一実施形態における鍵(白鍵)を押下したときの鍵アセンブリの動作を説明する図である。
図13(A)は、鍵100がレスト位置(押鍵していない状態)にある場合の図である。
図13(B)は、鍵100がエンド位置(最後まで押鍵した状態)にある場合の図である。鍵100が押下されると、棒状可撓性部材185は回動中心となって曲げ変形を生じる。このとき鍵100は、前端鍵ガイド151および側面鍵ガイド153による前後方向の移動の規制によって、上下方向(回動方向)に移動する。これに伴い、ハンマ支持部120が前端部210を押し下げることで、ハンマアセンブリ200が回動軸520を中心に回動する。錘部230が上側ストッパ430に衝突することによって、ハンマアセンブリ200の回動が止まり、鍵100がエンド位置に達する。また、センサ300が前端部210によって押されると、センサ300は、押された量(押鍵量)に応じた複数の段階で、検出信号を出力する。
【0074】
一方、離鍵すると、錘部230は重力に伴い下方に移動して、ハンマアセンブリ200が回動する。これに伴い、前端部210がハンマ支持部120を押し上げることで、鍵100が上方に回動する。錘部230が下側ストッパ410に接触することで、ハンマアセンブリ200の回動が止まり、鍵100がレスト位置に戻る。
【0075】
上述した実施形態では、ハンマアセンブリを適用した鍵盤装置の例として電子ピアノを示した。一方、上記実施形態の回動部材は、これに限定されず、鍵の操作に応じて弦や音板等の発音体をハンマが打撃して発音するアコースティック楽器の鍵盤機構のハンマアセンブリに用いてもよい。あるいは、鍵盤装置におけるアクション機構を構成する部品において、音高に応じて異なる構造を持つものであれば、それに適用可能である。例えば、鍵盤楽器のアクション機構におけるジャックやサポートにおいて、回動部材と当該回動部材を回動自在に軸支する支持部とを有する回動機構に上記実施形態の錘部を適用することができる。
【0076】
なお、上述の実施形態では、ハンマ本体部と錘部をそれぞれ単一部材で構成するものとしたが、それぞれ複数の部材で構成されるものであってもよい。例えば、ハンマ本体部の軸受けは、別部品としてもよい。また、その場合、軸受け部品を複数種類用意し、軸受けを除くハンマ本体部の部分は共通として、軸受部を組み付けたハンマ本体部が複数種類構成するようにしてもよい。また、上述の実施形態では、錘部における第1の孔部と第2の孔部は、対応する鍵の音高に応じて、ともに異なる形状を図示して説明したが、少なくとも一方が異なるものであればよい。
【0077】
なお、本発明は上記の実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述の実施形態では、鍵で駆動される構成としたが、これに限定されない。例えば、他のアクション部材(例えば、アコースティックピアノのアクション機構を構成するジャックやサポートなど)によって駆動されるものでもよい。また、ハンマアセンブリの構成として、回動軸支部、他の部材から力を受ける部分、センサ駆動部分、錘の配置は、実施例に限定されず、鍵盤構造に合わせて適宜設計すればよい。また、鍵がセンサを駆動する場合、センサ駆動部分は省略できるなど、本実施形態のハンマアセンブリが備える機能全てを必ずしも有する必要はなく、その構成も適宜設計すればよい。また、ハンマアセンブリを回動部材として、上述の実施形態ではハンマ本体部と錘部を別構成としたが、ハンマ単体として形成してもよい。