特許第6780778号(P6780778)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6780778
(24)【登録日】2020年10月19日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】多段過給機
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20201026BHJP
   F02B 37/00 20060101ALI20201026BHJP
   F02B 37/18 20060101ALI20201026BHJP
   F02B 37/013 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   F02B39/00 D
   F02B37/00 500B
   F02B37/00 301G
   F02B37/18 A
   F02B37/18 E
   F02B39/00 G
   F02B37/013
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-525120(P2019-525120)
(86)(22)【出願日】2018年4月3日
(86)【国際出願番号】JP2018014282
(87)【国際公開番号】WO2018230108
(87)【国際公開日】20181220
【審査請求日】2019年10月21日
(31)【優先権主張番号】特願2017-115831(P2017-115831)
(32)【優先日】2017年6月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】市川 清道
(72)【発明者】
【氏名】松山 良満
(72)【発明者】
【氏名】吉田 宗弘
【審査官】 家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−255565(JP,A)
【文献】 特表2003−531996(JP,A)
【文献】 特開2010−261362(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0020108(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/122668(WO,A1)
【文献】 特開2004−092646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/00
F02B 37/00
F01D 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1タービンインペラ収容室を有する第1サブハウジング、及び、前記第1タービンインペラ収容室と直列に配列する第2タービンインペラ収容室を有する第2サブハウジングを含むタービンハウジングと、
前記タービンハウジングに第1ベアリングハウジングを介して連結する第1コンプレッサハウジングと、
前記タービンハウジングに第2ベアリングハウジングを介して連結する第2コンプレッサハウジングと
を備え、
前記第1サブハウジングと前記第2サブハウジングは一体形成されており、
前記タービンハウジングは、
前記第1タービンインペラ収容室に連通する第1吸気路及び第1排気路と、
前記第2タービンインペラ収容室に連通する第2吸気路及び第2排気路と
を有し、
前記第1吸気路、前記第2吸気路及び前記第2排気路は略同一方向に向けて開口し、
前記第1サブハウジング及び前記第2サブハウジングは、前記第2吸気路を介して互いに接続していると共に、互いに離隔し、
前記第1排気路は、第1サブハウジングの内部で前記第2吸気路に連通している
多段過給機。
【請求項2】
前記第2吸気路の断面積は、前記第2吸気路の開口を有するフランジから前記第2吸気路が接続する前記第2サブハウジングのスクロール流路に向かうに連れて漸次減少する請求項1に記載の多段過給機。
【請求項3】
前記第2吸気路は、前記第2タービンインペラ収容室のスクロール流路が延伸する面に対して傾斜している
請求項2に記載の多段過給機。
【請求項4】
前記第1コンプレッサハウジング及び前記第2コンプレッサハウジングは個別に形成されている、
請求項1〜3の何れか一項に記載の多段過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直列に配列した複数の過給機を備える多段過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
多段過給機は複数の過給機を備えた過給装置であり、過給機を1台だけを備えた過給装置と比べ、より広い作動範囲を確保できることが知られている。種々の多段過給機のうち、排気ガスの流れ方向に2台の過給機が直列に配列したものは、直列型多段過給機やシリーズシーケンシャルツインターボなどと呼ばれている。直列型多段過給機では、エンジンの低速回転域において高圧側の(初段の)過給機が作動し、エンジンの高速回転域において低圧側の(次段の)過給機が作動する。このような作動によって作動範囲が拡大される。
【0003】
特許文献1は上述の直列型多段過給機を開示している。特許文献1の多段過給機は、各過給機のコンプレッサケーシング(コンプレッサハウジング)に形成されたバイパス流路を有している。多段過給機に吸引された空気はバイパス流路を流れ、コンプレッサインペラをバイパスする。このような構造の導入によって、コンプレッサケーシングとは別にバイパス流路を用意する必要がなくなり、且つ、エンジン周りの配管が複雑化することが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−85043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1がエンジン周りの配管の複雑化を憂慮しているように、エンジンルーム内の部品点数の増加は、車両の軽量化や燃費の向上を阻み、組立時や修理時の作業性を低下させる恒久的な課題である。これは多段過給機に対しても同様である。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであり、作動範囲の拡大を確保しつつ、小型化が可能な直列型多段過給機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は多段過給機であって、第1タービンインペラ収容室を有する第1サブハウジング、及び、前記第1タービンインペラ収容室と直列に配列する第2タービンインペラ収容室を有する第2サブハウジングを含むタービンハウジングと、前記タービンハウジングに第1ベアリングハウジングを介して連結する第1コンプレッサハウジングと、前記タービンハウジングに第2ベアリングハウジングを介して連結する第2コンプレッサハウジングとを備え、前記第1サブハウジングと前記第2サブハウジングは一体形成されており、前記タービンハウジングは、第1タービンインペラ収容室に連通する第1吸気路及び第1排気路と、第2タービンインペラ収容室に連通する第2吸気路及び第2排気路とを有し、前記第1吸気路、前記第2吸気路及び前記第2排気路は略同一方向に向けて開口し、前記第1サブハウジング及び記第2サブハウジングは、前記第2吸気路を介して互いに接続していると共に、互いに離隔し、前記第1排気路は、第1サブハウジングの内部で前記第2吸気路に連通していることを要旨とする。
【0009】
前記第2吸気路の断面積は、前記第2吸気路の開口を有するフランジから前記第2吸気路が接続する前記第2サブハウジングのスクロール流路に向かうに連れて漸次減少していてもよい。
【0010】
前記第2吸気路は、前記第2タービンインペラ収容室のスクロール流路が延伸する面に対して傾斜していてもよい。
【0011】
前記第1コンプレッサハウジング及び前記第2コンプレッサハウジングは個別に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、作動範囲の拡大を確保しつつ、小型化が可能な直列型多段過給機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る多段過給機を備える過給システムの概略構成図である。
図2図2は、本実施形態に係る多段過給機のハウジングを示す平面図(上面図)である。
図3図3は、本実施形態に係るタービンハウジングを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態に係る多段過給機について添付図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図1は、本実施形態に係る多段過給機を備える過給システムの概略構成図である。
【0015】
本実施形態の過給システム10は、例えば、図1に示すエンジンシステム100に適用される。従って、まず、エンジンシステム100について説明する。エンジンシステム100は、過給システム10と、エンジン101と、インタークーラ102と、浄化装置103と、ECU(Engine Control Unit)104とを備えている。エンジンシステム100は例えば車両に搭載される。
【0016】
エンジン101は、エンジンシステム100を搭載した車両の動力源である。エンジン101は内燃機関であり、過給システム10によって圧縮された空気と、燃料との混合気を燃焼して動力を生成する。また、エンジン101は混合気を燃焼し、燃焼によって発生した排気ガスを過給システム10に供給する。
【0017】
インタークーラ102は、過給システム10からエンジン101に供給される圧縮空気を冷却する。インタークーラ102の入口側は後述する過給システム10の第1コンプレッサ(後述)21及び第2コンプレッサ(後述)41に接続し、インタークーラ102の出口側は、エンジン101の吸気マニホールド105を介して過給システム10とに接続している。
【0018】
浄化装置103は、過給システム10から排出された排気ガスを浄化する。浄化装置103は、例えば、粒子状物質を捕集するフィルタや、有害成分の酸化反応あるいは還元反応を促進する触媒などで構成される。
【0019】
ECU104は、エンジンシステム100の全体を制御する。例えば、ECU105は、エンジン101の出力(例えば、回転数や、回転数から見込まれる排気ガスの流量)に応じて、過給システム10内の吸気切換え弁(後述)60、排気切換え弁(後述)61及びウェイストゲートバルブ(後述)62の開閉や、その開度を制御する。
【0020】
次に過給システム10について説明する。
過給システム10は、エンジン101の排気ガスを利用して空気を圧縮し、その圧縮空気をエンジン101に供給する。図1に示すように、過給システム10は、第1過給機(プライマリ過給機、高圧段過給機)20と、第2過給機(セカンダリ過給機、低圧段過給機)40と、吸気切換え弁60と、排気切換え弁61と、ウェイストゲートバルブ62とを備えている。第1過給機20と第2過給機40は、排気ガスの流れ方向に直列に配列している。即ち、本実施形態の過給システム10は直列型多段過給機を採用している。
【0021】
第1過給機20は、排気ガスの流れ方向において第2過給機40よりも上流側に配置されている。第1過給機20は、第1コンプレッサ(高圧段コンプレッサ)21と、第1タービン(高圧段タービン)22とを備えている。なお、第1過給機20は、第1タービン22に向かう排気ガスの噴出速度を調整する可変ノズルユニット(図示せず)を備えてもよい。
【0022】
第1コンプレッサ21は、第1コンプレッサインペラ23と、第1コンプレッサインペラ23を回転可能に収容する第1コンプレッサハウジング24とを備えている。第1タービン22は、第1タービンインペラ25と、第1タービンインペラ25を回転可能に収容する第1タービンハウジング(第1サブハウジング)26とを備えている。第1シャフト27は、第1コンプレッサインペラ23と第1タービンインペラ25とを連結し、このベアリング(図示せず)によって回転可能に支持される。ベアリング(図示せず)は、第1ベアリングハウジング28に取り付けられている。第1タービンインペラ25が排気ガスの流通によって回転すると第1コンプレッサインペラ23も回転する。この第1コンプレッサインペラ23の回転によって、圧縮空気が生成される。
【0023】
第2過給機40は、排気ガスの流れ方向において第1過給機20よりも下流側に配置されており、第1過給機20よりも大きい容量を有する。第2過給機40は、第2コンプレッサ(低圧段コンプレッサ)41と、第2タービン(低圧段タービン)42とを備えている。なお、第2過給機40は、第2タービン42に向かう排気ガスの噴出速度を調整する可変ノズルユニット(図示せず)を備えてもよい。
【0024】
第2コンプレッサ41は、第2コンプレッサインペラ43と、第2コンプレッサインペラ43を回転可能に収容する第2コンプレッサハウジング44とを備えている。第2タービン42は、第2タービンインペラ45と、第2タービンインペラ45を回転可能に収容する第2タービンハウジング(第2サブハウジング)46とを備えている。第2シャフト47は、第2コンプレッサインペラ43と第2タービンインペラ45とを連結し、このベアリング(図示せず)によって回転可能に支持される。ベアリング(図示せず)は、第2ベアリングハウジング48に取り付けられている。第2タービンインペラ45が排気ガスの流通によって回転すると第2コンプレッサインペラ43も回転する。この第2コンプレッサインペラ43の回転によって、圧縮空気が生成される。
【0025】
なお、第1タービン22の第1タービンハウジング26と、第2タービン42の第2タービンハウジング46は、単一のタービンハウジングTHとして一体形成されている(図2参照)。即ち、第1タービンハウジング26と第2タービンハウジング46は、フランジなどの接続部材を介さずに互いに接続している。
【0026】
吸気切換え弁60は、第1コンプレッサ21を迂回しながら、第1コンプレッサ21の吸気側と排出側を連通するバイパス流路63に設けられ、バイパス流路63を開閉する。吸気切換え弁60は、第1コンプレッサ21が駆動されている場合に閉じる。この場合、第2コンプレッサ41から排出された圧縮空気は、第1コンプレッサ21に流入して圧縮され、吸気マニホールド105を介してエンジン101の吸気側に供給される。
【0027】
一方、吸気切換え弁60は、第1コンプレッサ21が駆動されていない場合に開く。この場合、第2コンプレッサ41から排出された圧縮空気は、第1コンプレッサ21をバイパスしながら、吸気マニホールド105を介してエンジン101の吸気側に供給される。即ち、吸気切換え弁60は、バイパス流路63を経由した第2コンプレッサ41からエンジン101への圧縮空気の流れを許容する。なお、吸気切換え弁60は、エンジン101から第2コンプレッサ41への圧縮空気の逆流を防止するように構成されている。つまり、吸気切換え弁60は所謂逆止弁としても機能する。
【0028】
排気切換え弁61は、第1タービン22を迂回しながら、第1タービン22の吸気側と排出側を連通するバイパス流路64に設けられ、バイパス流路64を開閉する。排気切換え弁61が閉じている間、エンジン101から排出される排気ガスは、第1過給機20の第1タービンインペラ25を通過し、その後、第1過給機20から排出される。その結果、第1タービンインペラ25は回転し、この回転によって第1コンプレッサ21は空気の圧縮を実行する。
【0029】
一方、排気切換え弁61が開いている間、エンジン101から排出される排気ガスは、バイパス流路64を通過し、第1過給機20から排出され、その後、第2過給機40に供給される。換言すれば、排気ガスは、第1タービンインペラ25をバイパスして第1過給機20から排出され、第2過給機40に供給される。つまり、排気切換え弁61は、バイパス流路64を開くことによって、第1コンプレッサ21が実行する空気の圧縮を停止する。
【0030】
ウェイストゲートバルブ62は、第2タービン42を迂回しながら、第2タービン42の吸気側と排出側を連通するバイパス流路65に設けられ、バイパス流路65を開閉する。ウェイストゲートバルブ62が開いている間、上記排気ガスの一部は、バイパス流路65を通過し、第2過給機40から排出され、その後、浄化装置103に流入する。換言すれば、上記排気ガスの一部は、第2タービンインペラ45をバイパスして第2過給機40から排出され、その後、浄化装置103に流入する。なお、ウェイストゲートバルブ62の開度は、ECU105または第2コンプレッサ41の過給圧によって調節される。
【0031】
一方、ウェイストゲートバルブ62が閉じている間、第1過給機20から排出された或いはバイパス流路64を介して排出された排気ガスは、第2過給機40の第2タービンインペラ45を通過し、その後、第2過給機40から排出される。その結果、第2タービンインペラ45は回転し、この回転によって第2コンプレッサ41は空気の圧縮を実行する。
【0032】
なお、ウェイストゲートバルブ62の開度は、エンジン101が要求する過給圧等に応じて変化する。即ち、ウェイストゲートバルブ62の開度は、全開から全閉まで変化する。これにより、第2タービンインペラ45に流入する排気ガスの量(即ち、第2タービンインペラ45及び第2コンプレッサインペラ43の回転数)を調整できる。
【0033】
次に、本実施形態に係る多段過給機のハウジングについて説明する。図2は、本実施形態に係る多段過給機のハウジングを示す平面図(上面図)である。図3は、本実施形態に係るタービンハウジングを示す正面図である。
【0034】
図2に示すように、第1過給機20のハウジングは、第1タービンハウジング26と、第1コンプレッサハウジング24と、第1ベアリングハウジング28とによって構成される。第1ベアリングハウジング28の一端には第1タービンハウジング26が接続し、第1ベアリングハウジング28の他端には第1コンプレッサハウジングが接続する。換言すれば、第1コンプレッサハウジング24は、第1ベアリングハウジング28を介して第1タービンハウジング26に連結している。
【0035】
同様に、第2過給機40のハウジングは、第2タービンハウジング46と、第2コンプレッサハウジング44と、第2ベアリングハウジング48とによって構成される。第2ベアリングハウジング48の一端には第2タービンハウジング46が接続し、第2ベアリングハウジング48の他端には第1コンプレッサハウジングが接続する。換言すれば、第2コンプレッサハウジング44は、第2ベアリングハウジング48を介して第2タービンハウジング46に連結している。
【0036】
なお、第1過給機20及び第2過給機40の各ハウジングは、例えば鋳造によって形成される。
【0037】
上述の通り、第1タービンハウジング26及び第2タービンハウジング46は、単一のタービンハウジングTHとして一体形成されている。即ち、第1タービンハウジング26と第2タービンハウジング46は、フランジなどの接続部材を介さずに互いに接続し、単一構造体としてのタービンハウジングTHを構成する。
【0038】
図3に示すように、第1タービンハウジング26は、第1タービンインペラ収容室29を有する。第1タービンインペラ収容室29は第1タービンインペラ25の形状に合わせた軸対称な形状を含み、第1タービンインペラ25を収容する。第1タービンインペラ収容室29は、第1タービンインペラ25の挿入口30を有する。挿入口30は、第1ベアリングハウジング28に面したフランジ(リブ)31に開口している。
【0039】
第1タービンハウジング26は、第1スクロール流路32と、第1吸気路33と、第1排気路34とを有する。第1スクロール流路32は、第1タービンインペラ収容室29の外周に設けられ、第1スクロール流路32に連通している。第1スクロール流路32は、第1タービンインペラ収容室29の対称軸(換言すれば、第1タービンインペラの回転中心軸)を基準として、第1タービンインペラ25の周方向に渦巻き状に延伸する。また、第1スクロール流路32の断面積は、その巻き始め側から排気ガスの流れ方向に沿って漸次減少する。
【0040】
第1吸気路33は、第1スクロール流路32の巻き始め側の端部(即ち、断面積が最大となる部分)に接続している。また、第1吸気路33は、第1タービンハウジング26のフランジ(リブ)35に開口し、エンジン101の排気マニホールド106と接続する。なお、フランジ35は、第1タービンインペラ収容室29を挟んで、フランジ31と反対側に位置する。
【0041】
第1排気路34(第1排気路34の一端側)は、第1タービンインペラ25の後縁(トレーリングエッジ)に向けて開口するように、第1タービンインペラ収容室29に連通している。また、第1排気路34(第1排気路34の他端側)は、第1タービンハウジング26の内部で、第2過給機40の第2吸気路53に連通している。
【0042】
第2タービンハウジング46は、第2タービンインペラ収容室49を有する。第2タービンインペラ収容室49は第2タービンインペラ45の形状に合わせた軸対称な形状を含み、第2タービンインペラ45を収容する。第2タービンインペラ収容室49は、第2タービンインペラ45の挿入口50を有する。挿入口50は、第2ベアリングハウジング48に面したフランジ(リブ)51に開口している。
【0043】
上述の通り、本実施形態の過給システム10は直列型多段過給機を採用している。従って、第1タービンハウジング26の第1タービンインペラ収容室29と、第2タービンハウジング46の第2タービンインペラ収容室49は、タービンハウジングTHにおいて排気ガスの流れ方向に直列に配列している。
【0044】
第2タービンハウジング46は、第2スクロール流路52と、第2吸気路53と、第2排気路54とを有する。第2スクロール流路52は、第2タービンインペラ収容室49の外周に設けられ、第2スクロール流路52に連通している。第2スクロール流路52は、第2タービンインペラ収容室49の対称軸(換言すれば、第2タービンインペラの回転中心軸)を基準として、第2タービンインペラ45の周方向に渦巻き状に延伸する。また、第2スクロール流路52の断面積は、その巻き始め側から排気ガスの流れ方向に沿って漸次減少する。
【0045】
第2吸気路53は、第2スクロール流路52の巻き始め側の端部(即ち、断面積が最大となる部分)に接続している。第2吸気路53は、第2スクロール流路52から第1タービンハウジング26のフランジ35まで延伸し、フランジ35にて開口している。つまり、第1吸気路33と第2吸気路53は、同一のフランジ35に開口している。第2吸気路53は、排気切換え弁61を介してエンジン101の排気マニホールド106と接続する。
【0046】
第2吸気路53は筒状に形成され、その断面積(開口面積)は、第2スクロール流路52からフランジ35に向かうに連れて漸次増加する。第2吸気路53は、第2スクロール流路52からフランジ35までの間で構造的に分断されていない。つまり、第2吸気路53は、第1タービンハウジング26と第2タービンハウジング46を接続するための継手構造(例えばフランジ)を持たない。
【0047】
第2排気路54(第2排気路54の一端側)は、第2タービンインペラ45の後縁(トレーリングエッジ)に向けて開口するように、第2タービンインペラ収容室49に連通している。また、第2排気路54(第2排気路54の他端側)は、第2タービンハウジング46のフランジ(リブ)55に開口している。フランジ55は、第2タービンインペラ収容室49を挟んで、フランジ51と反対側に位置する。
【0048】
ウェイストゲートバルブ62は、第2タービンハウジング46に設置される。バイパス流路65は、第2吸気路53の内壁53aに形成され、第2排気路54に連通する。ウェイストゲートバルブ62は、第2排気路54の第2吸気路53側を開閉する。
【0049】
本実施形態では、第1タービンハウジング(第1サブハウジング)26と第2タービンハウジング(第2サブハウジング)46が、単一のタービンハウジングTHとして一体形成されている。つまり、各ハウジングを接続するための継手構造(例えばフランジ)が不要になる。従って、作動範囲の拡大を確保しつつ、多段過給機を小型化することができる。
【0050】
なお、図2及び図3に示すように、第2吸気路53を構成する配管は、第1タービンハウジング26と第2タービンハウジング46とを連結している。換言すれば、第2過給機40の第2吸気路53の入口側が、第1過給機20の第1タービンハウジング26と一体化されている。このように、第1タービンハウジング26と第2タービンハウジング46は、第2吸気路53を介して互いに接続され、互いに離隔していてもよい。換言すれば、第1タービンハウジング26と第2タービンハウジング46は、第2吸気路53を除き、空隙を介して設けられていてもよい。この場合、第2吸気路53は弾性体として機能し、排気ガスの流通に伴う、第1タービンハウジング26の熱変形と、第2タービンハウジング46の熱変形の互いの影響(例えば応力の混合)を極力抑制(絶縁)する。また、第1タービンハウジング26と第2タービンハウジング46の間の互いの熱流動が抑制されるので、このような熱流動による熱損失も抑制できる。
【0051】
また、第2吸気路53を構成する配管の厚みは、第1タービンハウジング26と第2タービンハウジング46の連結や排気ガスの漏洩防止を維持できる限り、極力小さな値に設定されてもよい。配管の厚みが小さいほど配管の熱容量が減少するため、少なくとも第2吸気路53を流れる排気ガスの熱損失を抑制できる。
【0052】
図2及び図3に示すように、フランジ35とフランジ55は互いに平行に位置していてもよい。即ち、第1吸気路33、第2吸気路53及び第2排気路54は同一方向に向けて開口していてもよい。ただし、ここで言う「同一」とは「略同一」、換言すれば「実質的に同一」という意味であり、これらが厳密に同一方向に開口することを要求しない。この場合、各流路が開口する方向にこれらの関連部材が位置する割合が増えるため、作業性が向上する。
【0053】
図2に示すように、第2吸気路53は、第2スクロール流路52が延伸する面Rに対して傾斜していてもよい。ここで、面Rは、例えば、第2タービンインペラ収容室49の対称軸に直交する平面である。第2吸気路53を経由して第2スクロール流路52に流れる排気ガスの流れ方向が急激に偏向されることを回避できるため、タービン効率の低減を抑制できる。
【0054】
図2に示すように、第1コンプレッサハウジング24及び第2コンプレッサハウジング44は個別に形成されていてもよい。この場合、第1コンプレッサハウジング24と第2コンプレッサハウジング44を接続する配管は、可撓性を与える構造を有するものが望ましい。上述の通り、排気ガスの流通に伴って、第1タービンハウジング26及び第2タービンハウジング46は熱変形する。第1コンプレッサハウジング24及び第2コンプレッサハウジング44を個別に形成することで、程度の異なる各タービンハウジングの変形に起因した新たな応力の発生を抑制できる。
【0055】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含む。
図1
図2
図3