(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保護部材が、ポッティング部内の一点を基点とする、中空糸膜束の長手方向に対し垂直な方向の点を連続させたときに描かれる、始点と終点とが一致する線Lを想定したとき、それら線Lの中の最長のものを線Lmaxとしたとき、その線Lmaxの全長の20%以上、99.9%未満が被覆されるように、一又は複数の保護部材が配置されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の中空糸膜モジュール。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0011】
本発明の中空糸膜モジュールは、複数の中空糸膜がポッティング部で束ねられた、中空糸膜束と、上記中空糸膜束を収容する、筐体と、上記ポッティング部の外表面に当接し、該外表面を連続的に被覆する、保護部材と、を備えることを必要とする。
【0012】
1.中空糸膜束
本発明の中空糸膜モジュールが備える中空糸膜束では、少なくとも一つのポッティング部により、複数の中空糸膜が束ねられている。
【0013】
中空糸膜束を構成する「中空糸膜」とは、液体又は気体の分離機能を備える、高分子からなる中空の糸状の膜をいう。
【0014】
中空糸膜の材料となる高分子としては、例えば、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、ポリプロピレン若しくはポリ−4−メチルペンテン−1等のオレフィン系ポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体若しくはテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素含有ポリマー、酢酸セルロース等のセルロース系ポリマー、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート又はポリビニルアルコール系ポリマー等が挙げられる。得られる中空糸膜の耐熱性、物理的強度及び化学的耐久性を高めるため、フッ素含有ポリマー、ポリエーテルスルホン又はポリスルホンが好ましい。
【0015】
中空糸膜の厚みは、透過性能と物理的強度とを両立させる観点から、20〜500μmが好ましく、30〜500μmがより好ましく、40〜500μmがさらに好ましい。
【0016】
中空糸膜の外径は、有効膜面積と物理的強度とを両立させる観点から、100〜2000μmが好ましく、200〜1500μmがより好ましく、300〜1000μmがさらに好ましい。
【0017】
また中空糸膜の中空率は、中空部を流れる流体の圧力損失と座屈圧とのバランスの観点から、15〜70%が好ましく、20〜65%がより好ましく、25〜60%がさらに好ましい。中空糸膜の外径や中空率は、例えば、中空糸を製造する紡糸口金の吐出孔の形状、又は、中空糸を製造する際の巻取速度/吐出速度で示されるドラフト比を適宜変更することで調整することができる。
【0018】
中空糸膜の細孔径や細孔の形状は、分離対象によって適宜選択することができる。また中空糸膜には、必要に応じて、有機溶剤による処理、プラズマ放電処理、コロナ放電処理又はオゾン処理等の表面処理が施されていても構わない。また中空糸膜は熱水処理や蒸気滅菌処理により熱収縮する場合があることから、予め予備加熱処理を施した中空糸膜を用いても構わない。
【0019】
複数の中空糸膜を束ねる「ポッティング部」とは、束ねられた中空糸同士の間隙が、いわゆる接着剤である、ポッティング樹脂を主成分とするポッティング剤で充填された部位をいう。
【0020】
ポッティング剤の主成分となるポッティング樹脂としては、中空糸膜との接着性、耐熱性及び化学的耐久性に優れる、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂又はシリコーン樹脂が好ましい。またポッティング剤は、ポッティング樹脂以外に、例えば、シリカ、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、ガラス又はゴム等の添加材を含んでいても構わない。また、硬化剤として、脂肪族環状アミン系硬化剤や脂肪族鎖状アミン系硬化剤を含んでもよい。
【0021】
ポッティング部は、成形が容易であるため、中空糸膜束の端部に形成されることが好ましく、複数の中空糸膜をより強固に結束するため、中空糸膜束の両端部に形成されることがより好ましい。すなわち、中空糸膜束は、その両端がポッティング部で束ねられていることがより好ましい。
【0022】
中空糸膜同士の間隙にポッティング剤を充填する方法としては、例えば、遠心力を利用してポッティング剤を浸透させる遠心ポッティング法、又は、ポッティング剤を自然流動により浸透させる静置ポッティング法が挙げられる。またポッティング樹脂を注型用の型に注入し、中空糸膜同士の間隙に充填させても構わない。この場合、ポッティング部の事後的な変形を抑止するため、ポッティング剤の充填と硬化収縮とを複数回に分けて行い、ポッティング部を成型しても構わない。
【0023】
2.筐体
本発明の中空糸膜モジュールが備える筐体の材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン若しくはペルフルオロアルコキシフッ素樹脂等のフッ素系樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ステンレス又はアルミニウムが挙げられる。
【0024】
3.保護部材
本発明の中空糸膜モジュールが備える保護部材は、ポッティング部の外表面に当接し、該外表面を連続的に被覆する。また保護部材は、上記中空糸膜束の長手方向における、上記保護部材の一端と他端とを連通する、切欠部を有することを必要とする。
【0025】
ここで「保護部材」とは、それが当接し、かつ連続的に被覆する対象となるポッティング部とは、異なる素材で形成された部材をいう。
【0026】
また保護部材がポッティング部の外表面に「当接」するとは、少なくとも保護部材の一部が、直接的に、又は、硬化した接着剤等の他の成分が介在する状態で間接的に、ポッティング部の外表面に接触していることをいう。
【0027】
また保護部材がポッティング部の「外表面を連続的に被覆する」とは、ポッティング部の表面上において、ポッティング部内の一点を基点とする、中空糸膜束の長手方向に対し垂直な方向の点を連続させたときに描かれる、始点と終点とが一致する線Lを想定した場合において、それら線Lの中の最長のものを線L
maxとしたとき、その線L
maxの全長の20%以上が被覆されるように、一又は複数の保護部材が配置されていることをいう。上記の線L
maxは、例えばポッティング部が正円の断面を有する円筒状である場合には、その正円の円周と一致する。線L
maxに対する被覆の度合いは、20%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。また、線L
maxに対する被覆の度合いは、99.9%未満であることが好ましい。
【0028】
保護部材が有する「切欠部」とは、中空糸膜束の長手方向における保護部材の一端部と、その他の端部との間において、ポッティング部の外表面が露出している領域をいう。なお上記の「その他の端部」は、上記の「一端部」を有する、同一の保護部材のその他の端部であっても構わないし、上記の「一端部」を有する保護部材とは別の、他の保護部材の一端部であっても構わない。
【0029】
保護部材が有する切欠部が、中空糸膜束の長手方向における「保護部材の一端と他端とを連通する」とは、保護部材が有する切欠部、すなわちポッティング部の外表面が露出している領域が、中空糸膜束の長手方向における保護部材の一端と、他端との間で、途切れることなくつながっている状態をいう。外表面を連続的に被覆する保護部材が、二以上の切欠部を有する場合には、その「外表面を連続的に被覆する保護部材」は、複数の保護部材から構成されることとなる。
【0030】
切欠部の形状は、中空糸膜束の長手方向に対し垂直な方向から観察した場合において、直線状であっても構わないし、曲線や屈曲部を含む形状であっても構わない。
【0031】
保護部材がこのような切欠部を有することで、ポッティング剤の硬化収縮や中空糸膜モジュールの熱処理の際のポッティング部の収縮又は膨張に保護部材が円滑に追従することが可能となり、ポッティング部と保護部材との当接が維持され、その剥離を抑制することができる。なお保護部材がより円滑にポッティング部の膨張又は収縮に追従できるよう、保護部材は、複数の切欠部を有することが好ましい。中空糸膜束の長手方向に対し垂直な方向における切欠部の幅は、0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましく、3mm以上がさらに好ましい。
【0032】
中空糸膜束の長手方向におけるポッティング部の長さに対する、中空糸膜束の長手方向における保護部材の長さの割合は、保護部材の耐久性を確保するため、10%以上であることが好ましい。
【0033】
保護部材の材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂等のフッ素系樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリ塩化ビニル樹脂又はABS樹脂が挙げられる。
【0034】
保護部材をポッティング部の外表面に当接させるために用いる接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂又はポリウレタン樹脂を主成分として含有する接着剤が挙げられる。また接着剤は、例えば、接着剤以外にシリカ、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、ガラス又はゴム等の添加材を含んでいても構わない。
【0035】
以下に図面を参照しながら、本発明の中空糸膜モジュールのいくつかの態様について、より詳細に説明をする。
【0036】
4.中空糸膜モジュール
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態に係る中空糸膜モジュール100の概略縦断面図である。また
図2は、
図1のA−A線における断面図であり、
図3は、
図1における保護部材と第2ポッティング部との側面図である。
【0037】
中空糸膜モジュール100は、複数の中空糸膜1が第1ポッティング部6及び第2ポッティング部8で円柱状に束ねられた、中空糸膜束2と、上記中空糸膜束2を収容する筐体と、上記第2ポッティング部8の外表面に当接し、該外表面を連続的に被覆する保護部材9とを備えている。
図2及び
図3に示すように、保護部材9は切欠部9Aを有する。
【0038】
中空糸膜1の、第1ポッティング部6側の端部である第1端部は、いずれも開口した状態にある。一方で、中空糸膜1の、第2ポッティング部8側の端部である第2端部は、いずれも第2ポッティング部8によって封止された状態にある。
【0039】
筐体は、中空状の筒状ケース3と、該筒状ケース3の両端部にガスケット16で液密かつ気密に固定された第1キャップ4と第2キャップ5と、で構成されている。第1キャップ4はろ過液出口11を有しており、第2キャップ5は原水流入口10を有している。また筒状ケース3は、その側部の第1キャップ4寄りに原水出口12を有している。
【0040】
筒状ケース3の両端部には、その全周に亘って鍔部3A及び3Bが形成されている。また第1キャップ4の筒状ケース3側の端部には、筒状ケース3と第1キャップ4とが固定されたときに、鍔部3Aと第1キャップ4との間に溝が形成されるよう、段部4Aが全周に亘って形成されている。
【0041】
第1ポッティング部6は、円筒状の整流筒7に収容されている。整流筒7の一方の端部には、その全周に亘って鍔部7Aが形成されている。この鍔部7Aが、上記の鍔部3Aと第1キャップ4との間の溝(固定部)に挿入されることで、第1ポッティング部6は、筒状ケース3の一方の端部に液密かつ気密に固定されている。
【0042】
整流筒7には、原水出口12周辺における偏流を抑止するため、中空糸膜束の長手方向に延びる複数のスリット状の整流孔14が形成されている。なお中空糸膜モジュール100を蒸気滅菌する際のスチームドレンの滞留を防止するため、筒状ケース3と整流筒7との間には、間隙21が設けられている。
【0043】
第1ポッティング部6を固定する整流筒7と筐体との間には、シール部材としてOリング15が配置され、その両側が液密かつ気密に分画されている。
【0044】
第2ポッティング部8には、中空糸膜束の長手方向に貫通した貫通孔13が形成されており、第2ポッティング部8と筐体との間には、間隙20が設けられている。
【0045】
保護部材9は、第2ポッティング部8の外表面に当接し、該外表面を連続的に被覆している。
【0046】
(第二実施形態)
図4は、本発明の第二実施形態に係る中空糸膜モジュール101の概略縦断面図である。また
図6は、
図4のA−A線における断面図である。中空糸膜モジュール101は、第一実施形態の構成に加えて、
図5等に示されるような、切欠を有するリング18を備える。
【0047】
保護部材9の外表面に設けた第2保持溝19と、それに対向するように筐体の内表面に設けられた第1保持溝17と、の間に、保持部材としてリング18が挿入されることで、適度な間隙を維持しながら、保護部材9が筐体に保持されることとなる。このように、第2ポッティング部の外表面に保護部材が当接し、筐体の内表面と保護部材とが保持部材により係止された態様が好ましい。
【0048】
保持部材は上記に例示したリングに限られず、保護部材と筐体との間に、流体が移動可能な間隙を形成可能なものであれば、その態様は特に問われない。
【0049】
5.中空糸膜モジュールによるクロスフローろ過
以下に、本発明の中空糸膜モジュールを使用したろ過操作(水処理)の一例を示す。
被ろ過物である原水は、第2キャップ5が有する原水流入口10から中空糸膜モジュール100又は101の内部に流入し、その一部は中空糸膜1の中空部へ透過し、第1キャップ4が有するろ過液出口11から中空糸膜モジュール100又は101の外部に流出する。中空糸膜1の内部へ透過しなかった残りの原水は、原水出口12から中空糸膜モジュール100又は101の外部に排出される。
【0050】
このように中空糸膜の長手方向に被ろ過物を流してろ過を行う方法をクロスフローろ過といい、原水中の懸濁物質等が中空糸膜の表面に堆積するのを抑制する効果がある。なお、原水出口12を閉止すれば、原水を全てろ過する全量ろ過を行うこともできるし、原水流入口10からエアを供給すれば、エアスクラビングによる中空糸膜1の洗浄を行うこともできる。クロスフローろ過やエアスクラビングでは、原水流入口10から流入した被ろ過物により第2ポッティング部8が移動し中空糸膜1が変形して、中空糸膜1が損傷する可能性があるため、上記の第二の実施形態の中空糸膜モジュールのように、保護部材が筐体に保持されることで、第2ポッティング部8の移動が抑制されることが好ましい。
【0051】
すなわち、本発明の中空糸膜モジュールにおいては、保護部材の外表面に設けられた保持溝と、該保持溝に対向するように筐体の内表面に設けられた保持溝と、の間に、保持部材が挿入されていることが好ましい。
【0052】
6.中空糸膜モジュールの製造方法
本発明の中空糸膜モジュールの製造方法は、(1)ポッティング部の形成により、複数の中空糸膜を束ねて中空糸膜束を得る、ポッティング部形成工程と、(2)上記ポッティング部の外表面に当接し、該外表面を連続的に被覆するように保護部材を接着する、保護部材接着工程と、を備える。
【0053】
本発明の中空糸膜モジュールの製造方法が備えるポッティング部形成工程は、ポッティング部の形成により、複数の中空糸膜を束ねて中空糸膜束を得る工程である。
【0054】
ポッティング部は、中空糸同士の間隙に、いわゆる接着剤である、ポッティング樹脂を主成分とするポッティング剤を充填することで形成される。
【0055】
ポッティング剤は、その内部の気泡等を低減させるため、予め遠心脱泡又は真空脱泡等の脱泡処理をしておくことが好ましい。
【0056】
得られる中空糸膜束の形状としては、結束が容易な、円柱状が好ましい。
【0057】
本発明の中空糸膜モジュールの製造方法が備える保護部材接着工程は、ポッティング部の外表面に当接し、該外表面を連続的に被覆するように保護部材を接着する工程である。
【0058】
エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂又はシリコーン樹脂等のポッティング樹脂を主成分とするポッティング剤は、液体状態から固体状態に変化する際に硬化収縮する。そのため、保護部材が当接した液体状態のポッティング剤が硬化収縮すると、保護部材をポッティング剤側に引っ張る応力が働く一方で、保護部材がそれに追従することができず、ポッティング剤から保護部材が剥離してしまう場合がある。
【0059】
これに対し、上記(1)のポッティング部形成工程で十分にポッティング剤を硬化収縮させた上で、上記(2)の保護部材接着工程で保護部材を接着することで、液体状態のポッティング剤の硬化収縮による、保護部材の剥離を抑制することができる。なお液体状態のポッティング剤の硬化収縮を促進させ、かつ、硬化収縮後のポッティング部の強度を高めるため、上記(1)のポッティング部形成工程の後に、熱処理を行うことが好ましい。
【0060】
保護部材の接着に用いる接着剤の粘度としては、液だれ等を抑止しつつ、適度な塗布性を得るため、500〜30000mPa・sが好ましい。
【0061】
また保護部材のポッティング部の外表面に対する接着性をより高めるため、紙やすり等によりポッティング部の外表面を予め研磨し、微細な凹凸を設けておくことも好ましい。
【実施例】
【0062】
(クロスフローろ過試験)
中空糸膜モジュールの原水流入口から原水を流入させ、ろ過液出口から300L/時間の流量で、また原水出口から20m
3/時間の流量で、それぞれ流出又は排出をさせて(膜面線速度は0.5m/s)、この運転を100時間継続した。その後、中空糸膜モジュールを分解して、中空糸膜の折れ曲がり(座屈)及び第2ポッティング部の傷の有無を目視確認した。
【0063】
(ポッティング部と保護部材との接着性)
中空糸膜モジュールを、125℃の水蒸気で1時間加熱した後に接着界面が見える様に分解して、ポッティング部と保護部材との間の接着剤層の接着面積を目視で観察し、剥離の有無を評価した。
【0064】
(実施例1)
125℃の水蒸気で1時間予備加熱したポリフッ化ビニリデン中空糸膜6000本(厚み225μm、外径1250μm、中空率41%)を円柱状に束ねて、
図1に示す中空糸膜モジュールを作製した。第1ポッティング部及び第2ポッティング部は、予め40℃の恒温器内にて予熱したビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER828;三菱ケミカル社製)、脂肪族環状アミン系硬化剤(4,4−メチレンビス(シクロヘキシルアミン);和光純薬社製)及び脂肪族鎖状アミン系硬化剤(ジエチレントリアミン;和光純薬社製)を用いて、質量比が100:22:12となるように混合したものをポッティング剤として、静置ポッティング法により成型した。第2ポッティング部の一部表面を研磨紙#80で研磨してから、上記のポッティング剤を接着剤として用いて、
図7に示す中空糸膜束の長手方向に対し垂直な方向の部材厚みが6mmの半円状の保護部材(ポリスルホン製)2個を当接させた。2個の保護部材から構成される保護部材は2箇所の切欠部を有し、L
maxに対する被覆の度合いは99%であった。また、中空糸膜束の長手方向に対し垂直な方向における切欠部の幅は、2.5mmだった。
なお筒状ケース(SUS316L製)の内径は159.2mmであり、第2ポッティング部と筐体との間隙は0.5mm以上になるようにした。
この中空糸膜モジュールについて、ポッティング部と保護部材との接着性を評価した結果、125℃の水蒸気での加熱後に剥離は認められなかった。
【0065】
(実施例2)
保護部材を
図8に示す中空糸膜束の長手方向に対し垂直な方向の部材厚みが6mmのもの(ポリスルホン製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、中空糸膜モジュールを製作した。2個の保護部材から構成される保護部材は2箇所の切欠部を有し、L
maxに対する被覆の度合いは50%であった。また、中空糸膜束の長手方向に対し垂直な方向における切欠部の幅は、124.3mmだった。
この中空糸膜モジュールについて、ポッティング部と保護部材との接着性を評価した結果、125℃の水蒸気での加熱後に剥離は認められなかった。
【0066】
(実施例3)
125℃の水蒸気で1時間予備加熱したポリフッ化ビニリデン中空糸膜6000本(厚み225μm、外径1250μm、中空率41%)を円柱状に束ねて、
図4に示す中空糸膜モジュールを作製した。第1ポッティング部及び第2ポッティング部は、予め40℃の恒温器内にて予熱したビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER828;三菱ケミカル社製)、脂肪族環状アミン系硬化剤(4,4−メチレンビス(シクロヘキシルアミン);和光純薬社製)及び脂肪族鎖状アミン系硬化剤(ジエチレントリアミン;和光純薬社製)を質量比が100:22:12となるように混合したものをポッティング剤として、静置ポッティング法により成型した。第2ポッティング部の一部表面を研磨紙#80で研磨してから、上記のポッティング剤を接着剤として用いて、
図9に示す中空糸膜束の長手方向に対し垂直な方向の部材厚みが6mmの半円状の保護部材(ポリスルホン製)2個を当接させた。2個の保護部材から構成される保護部材は2箇所の切欠部を有し、L
maxに対する被覆の度合いは95%であった。また、中空糸膜束の長手方向に対し垂直な方向における切欠部の幅は、12.4mmだった。第2ポッティング部の外表面には
図4に示すような溝を設け、保護部材の凸部を、第2ポッティング部の外表面の溝に当接させた。
保護部材の外表面に設けられた保持溝と、その保持溝に対向するように筐体の内表面に設けられた保持溝と、の間には、切欠を有するリングを挿入した。
なお筒状ケース(SUS316L製)の内径は159.2mmであり、第2ポッティング部と筐体との間隙は0.5mm以上になるようにした。
この中空糸膜モジュールについて、クロスフローろ過試験を実施した結果、第2ポッティング部及び保護部材に傷は観察されず、中空糸膜の座屈も認められなかった。
またこの中空糸膜モジュールについて、ポッティング部と保護部材との接着性を評価した結果、125℃の水蒸気での加熱後に剥離は認められなかった。
【0067】
(実施例4)
2個の保護部材から構成される保護部材は2箇所の切欠部を有し、L
maxに対する被覆の度合いが99.8%であり、中空糸膜束の長手方向に対し垂直な方向における切欠部の幅を0.5mmとした以外は、実施例3と同様の中空糸膜モジュールを製作した。
この中空糸膜モジュールについて、クロスフローろ過試験を実施した結果、第2ポッティング部及び保護部材に傷は観察されず、中空糸膜の座屈も認められなかった。
またこの中空糸膜モジュールについて、ポッティング部と保護部材との接着性を評価した結果、125℃の水蒸気での加熱後に剥離は認められなかった。
【0068】
(実施例5)
2個の保護部材から構成される保護部材は2箇所の切欠部を有し、L
maxに対する被覆の度合いが20.0%であり、中空糸膜束の長手方向に対し垂直な方向における切欠部の幅を200mmとした以外は、実施例4と同様の中空糸膜モジュールを製作した。
この中空糸膜モジュールについて、クロスフローろ過試験を実施した結果、第2ポッティング部及び保護部材に傷は観察されず、中空糸膜の座屈も認められなかった。
またこの中空糸膜モジュールについて、ポッティング部と保護部材との接着性を評価した結果、125℃の水蒸気での加熱後に剥離は認められなかった。
【0069】
(比較例1)
円筒状の中空糸膜束の長手方向に対し垂直な方向の部材厚みが6mmの保護部材をポッティング治具に予め装着して静置ポッティングを行い、L
maxに対する被覆の度合いが100%(切欠部を有しない)になるようにした以外は、実施例1と同様にして、中空糸膜モジュールを製作した。
この中空糸膜モジュールについて、クロスフローろ過試験を実施した結果、保護部材に傷が観察された。また、中空糸膜の座屈による損傷が認められた。
またこの中空糸膜モジュールについて、ポッティング部と保護部材との接着性を評価した結果、125℃の水蒸気での加熱後に剥離が認められた。
【0070】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更及び変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお本出願は、2018年7月27日付で出願された日本特許出願(特願2018−141044)に基づいており、その全体が引用により援用される。