(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記X線検出器の有効視野が変更された場合、前記画像において設定した前記関心領域を変更せず、かつ、変更後の有効視野の大きさに応じた前記関心領域の位置を示す情報を前記X線画像上に表示させる、請求項1に記載のX線診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、実施形態に係るX線診断装置を説明する。なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用される。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置100の構成例を示す図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、高電圧発生器11と、X線管12と、コリメータ13と、天板14と、Cアーム15と、X線検出器16とを備える。また、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、Cアーム回転・移動機構17と、天板移動機構18と、Cアーム・天板機構制御回路19と、絞り制御回路20と、処理回路21と、入力インターフェース22と、ディスプレイ23とを備える。また、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、画像データ生成回路24と、記憶回路25と、画像処理回路26と、補償フィルタ27と、減衰フィルタ28とを備える。そして、X線診断装置100は、
図1に示すように、各回路が相互に接続され、各回路間で種々の電気信号を送受信する。
【0009】
図1に示すX線診断装置100においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路25へ記憶されている。Cアーム・天板機構制御回路19、絞り制御回路20、処理回路21、画像データ生成回路24、及び、画像処理回路26は、記憶回路25からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の各回路は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0010】
なお、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路25に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路25にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
【0011】
高電圧発生器11は、処理回路21による制御の下、高電圧を発生し、発生した高電圧をX線管12に供給する。X線管12は、高電圧発生器11から供給される高電圧を用いて、X線を発生する。
【0012】
コリメータ13は、絞り制御回路20による制御の下、X線管12が発生したX線を、被検体Pの関心領域(ROI:Region of Interest)に対して選択的に照射されるように絞り込む。例えば、コリメータ13は、スライド可能な4枚の絞り羽根を有する。コリメータ13は、絞り制御回路20による制御の下、これらの絞り羽根をスライドさせることで、X線管12が発生したX線を絞り込んで被検体Pに照射させる。天板14は、被検体Pを載せるベッドであり、図示しない寝台の上に配置される。なお、被検体Pは、X線診断装置100に含まれない。
【0013】
補償フィルタ27は、X線管12と被検体Pとの間に設けられ、被曝低減対象の部位に照射されるX線を減衰させる。X線診断装置100において、補償フィルタ27は、独立して移動可能な複数の金属板(単にフィルタとも言う)と、各金属板の回転移動及び水平移動を制御する駆動機構とを有する。各金属板の材質は、例えば、銅板、アルミニウム等である。なお、各金属板の材質は、X線を減衰させることが可能であれば、銅板やアルミニウム以外であってもよい。また、各金属板は、例えば長方形状を有し、絞り制御回路20による制御の下、駆動機構を介して回転移動又は水平移動する。すなわち、補償フィルタ27は、駆動機構による制御の下、各金属板が回転移動又は水平移動することで、X線管12が発生したX線を絞り込んで被検体Pに照射させる。なお、X線診断装置100において設けられる金属板の枚数は、任意に設定可能である。
【0014】
減衰フィルタ28は、X線管12と被検体Pとの間に設けられ、被曝低減対象の部位に照射されるX線を減衰させる。
図2は、第1の実施形態に係る減衰フィルタ28の構成例を示す図である。
図2に示すように、減衰フィルタ28は、一枚板の金属板28aを有する。なお、金属板28aのことを単にフィルタとも言う。金属板28aの材質は、例えば、銅板、アルミニウム等である。なお、金属板28aの材質は、X線を減衰させることが可能であれば、銅板やアルミニウム以外であってもよい。
図2では、金属板28aは、矩形状に形成される場合を示すが、金属板28aの形状は任意に形成されてよい。また、金属板28aは、テーパ状に形成されてもよい。
【0015】
また、
図2に示すように、金属板28aは、X線管12から照射されたX線を通過させる開口部28bを有する。なお、
図2では、開口部28bが矩形状である場合を示すが、開口部28bの形状は円形であっても多角形状であってもよい。
【0016】
また、
図2に示すように、減衰フィルタ28は、第1の駆動機構28cと、第2の駆動機構28dと、第3の駆動機構28eとを有する。また、第1の駆動機構28cと第2の駆動機構28dとが接続され、第2の駆動機構28dと第3の駆動機構28eとが接続され、第3の駆動機構28eと金属板28aとが接続される。ここで、第1の駆動機構28cは、第2の駆動機構28dを支持し、処理回路21による制御の下、第2の駆動機構28dを
図2に示すab方向に水平移動させる。また、第2の駆動機構28dは、第3の駆動機構28eを支持し、処理回路21による制御の下、第3の駆動機構28eを
図2に示すcd方向に水平移動させる。すなわち、金属板28aは、第2の駆動機構28dの水平移動に伴い
図2に示すab方向に水平移動し、第3の駆動機構28eの水平移動に伴い
図2に示すcd方向に水平移動する。
【0017】
また、
図2では、金属板28aは、
図2中の破線で示すX線照射範囲28fから離れた位置にある場合を示す。ここで、金属板28aは、処理回路21による制御の下、
図2に示すd方向に水平移動してX線照射範囲28f内に移動することで、X線管12が発生したX線を絞り込んで被検体Pに照射させる。より具体的には、減衰フィルタ28の金属板28aは、開口部28bではX線管12から照射されたX線を通過させて被検体Pに照射させ、開口部28b周辺ではX線管12から照射されたX線の透過性を下げて被検体Pに照射させる。
【0018】
X線検出器16は、X線を照射するX線管12から照射され、被検体Pを透過したX線を検出して電気信号を生成する。例えば、X線検出器16は、マトリックス状に配列された検出素子を有する。各検出素子は、被検体Pを透過したX線を電気信号に変換して蓄積し、蓄積した電気信号を画像データ生成回路24に送信する。
【0019】
Cアーム15は、X線管12、コリメータ13、補償フィルタ27、減衰フィルタ28及びX線検出器16を保持する。X線管12及びコリメータ13とX線検出器16とは、Cアーム15により被検体Pを挟んで対向するように配置される。なお、
図1では、X線診断装置100がシングルプレーンの場合を例に挙げて説明しているが、実施形態はこれに限定されるものではなく、バイプレーンの場合であってもよい。
【0020】
Cアーム回転・移動機構17は、Cアーム15を回転及び移動させるための機構であり、天板移動機構18は、天板14を移動させるための機構である。Cアーム・天板機構制御回路19は、処理回路21による制御の下、Cアーム回転・移動機構17及び天板移動機構18を制御することで、Cアーム15の回転や移動、天板14の移動を調整する。絞り制御回路20は、処理回路21による制御の下、コリメータ13が有する絞り羽根の開度を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線の照射範囲を制御する。また、絞り制御回路20は、処理回路21による制御の下、補償フィルタ27が有する金属板を回転移動又は水平移動させることで、被検体Pに対して照射されるX線の照射範囲を制御する。また、絞り制御回路20は、処理回路21による制御の下、減衰フィルタ28が有する金属板28aの位置を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線の照射範囲を制御する。
【0021】
画像データ生成回路24は、X線検出器16によってX線から変換された電気信号を用いて画像データ(X線画像)を生成し、生成した画像データを記憶回路25に格納する。例えば、画像データ生成回路24は、X線検出器16から受信した電気信号に対して、電流・電圧変換やA(Analog)/D(Digital)変換、パラレル・シリアル変換を行い、画像データを生成する。一例を挙げると、画像データ生成回路24は、造影剤が注入されていない状態で撮像された画像データ(マスク画像)及び造影剤が注入された状態で撮像された画像データ(コントラスト画像)を生成する。そして、画像データ生成回路24は、生成したマスク画像及びコントラスト画像を記憶回路25に格納する。ここで、画像データ生成回路24は、同一被検体に対して注入する造影剤の濃度を変化させながらそれぞれ撮像された複数のコントラスト画像を生成し、記憶回路25に格納することもできる。
【0022】
記憶回路25は、画像データ生成回路24によって生成された画像データを受け付けて記憶する。例えば、記憶回路25は、造影剤が投与される前後の被検体Pの画像データを記憶する。また、記憶回路25は、
図1に示す各回路によって読み出されて実行される各種機能に対応するプログラムを記憶する。一例を挙げると、記憶回路25は、処理回路21によって読み出されて実行される調整機能211に対応するプログラム及び制御機能212に対応するプログラムを記憶する。
【0023】
画像処理回路26は、記憶回路25が記憶する画像データに対して各種画像処理を行う。例えば、画像処理回路26は、記憶回路25が記憶するマスク画像とコントラスト画像とを読み出し、サブトラクション(Logサブ)することで差分画像を生成する。ここで、画像処理回路26は、異なる濃度の造影剤が注入された状態で撮像された複数のコントラスト画像とマスク画像とをそれぞれサブトラクションすることで複数の差分画像を生成することもできる。
【0024】
入力インターフェース22は、所定の領域(例えば、カテーテルの領域)などの設定などを行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード等によって実現される。入力インターフェース22は、処理回路21に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し処理回路21へと出力する。なお、操作者は例えば医師等の術者である。
【0025】
ディスプレイ23は、操作者の指示を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、画像データ生成回路24によって生成された画像データ、画像処理回路26によって生成された差分画像などを表示する。
【0026】
処理回路21は、X線診断装置100全体の動作を制御する。処理回路21は、装置全体を制御するための各種処理機能に対応するプログラムを記憶回路25から読み出して実行することにより、種々の処理を実行する。例えば、処理回路21は、入力インターフェース22から転送された操作者の指示に従って高電圧発生器11を制御し、X線管12に供給する電圧を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線量やON/OFFを制御する。また、例えば、処理回路21は、操作者の指示に従ってCアーム・天板機構制御回路19を制御し、Cアーム15の回転や移動、天板14の移動を調整する。また、例えば、処理回路21は、操作者の指示に従って絞り制御回路20を制御し、コリメータ13が有する絞り羽根の開度を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線の照射範囲を制御する。
【0027】
また、処理回路21は、操作者の指示に従って、画像データ生成回路24による画像データ生成処理や、画像処理回路26による画像処理、あるいは解析処理などを制御する。また、処理回路21は、操作者の指示を受け付けるためのGUIや記憶回路25が記憶する画像などを、ディスプレイ23に表示するように制御する。
【0028】
また、処理回路21は、調整機能211と、制御機能212とを実行する。ここで、例えば、
図1に示す処理回路21の構成要素である調整機能211と、制御機能212とが実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路25に記録されている。処理回路21は、各プログラムを記憶回路25から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路21は、
図1の処理回路21内に示された各機能を有することとなる。なお、処理回路21が実行する各処理機能について後述する。
【0029】
以上、X線診断装置100の構成の一例について説明した。かかる構成のもと、本実施形態に係るX線診断装置100は、例えば、血栓などにより血管内に生じた狭窄部位に対する血管内インターベンション治療に利用される。
図3は、血管内インターベンション治療時における術者の動作を説明するための図である。
【0030】
図3に示すように、術者は、天板14に載置された被検体Pに対して血管内インターベンション治療を行う際に、ディスプレイ23に表示されるX線画像を参照して治療部位を確認する。ここで、X線診断装置100は、X線画像の輝度値を一定に保つために自動輝度調整(ABC:Automatic Brightness Control)機能を備えている。このABC機能は、入力インターフェース22を介して、操作者からABC機能を有効にする設定を受付けた場合に、処理回路21が調整機能211を実行することにより実現される。
【0031】
より具体的には、調整機能211は、画像データ生成回路24によって生成される画像データに対して所定の関心領域を設定し、設定した関心領域の平均画素値と所定の閾値との比較結果に基づいて、管電圧、管電流及びパルス幅等のX線照射条件を調整することでABC機能を実行する。ここで、調整機能211は、例えば、関心領域内の画像輝度平均値がほぼ一定になるようにX線照射条件を調整する。なお、ABC機能を実行する際に設定される関心領域のことをABC制御ROIとも言う。
【0032】
また、血管内インターベンション治療時には、被検体Pへの被曝量を低減するために、補償フィルタ27や減衰フィルタ28が使用される場合がある。ここでは、視野内に減衰フィルタ28の金属板28aが挿入された場合について説明する。例えば、操作者は、ディスプレイ23上のGUIや入力インターフェース22上のボタン等を操作して、減衰フィルタ28の金属板28aを視野内に移動させる。また、操作者は、入力インターフェース22上のレバーを操作することで、減衰フィルタ28の金属板28aの位置を移動させることが可能である。例えば、操作者は、ABC機能を実行する際に設定した関心領域の位置に、開口部28bが位置するように金属板28aを移動させる。
【0033】
ここで、従来の技術では、操作者は、減衰フィルタ28の金属板28aの位置を移動させる場合、ディスプレイ23に表示されるX線画像における金属板28aの陰影を見ながら視野内における金属板28aの位置関係を確認することになる。このような金属板28aの陰影をみながら金属板28aを移動させる操作は、操作者にとって手間となる。このため、従来の技術では、減衰フィルタ28を使用しながらABC機能を実行する際、操作者にとって関心領域を設定する操作は複雑になる。
【0034】
このようなことから、第1の実施形態に係るX線診断装置100では、処理回路21が制御機能212を実行することにより、被検体Pへの被曝量を低減させつつ関心領域の設定を容易にする。以下では、制御機能212について詳細に説明する。
【0035】
図4は、第1の実施形態に係る制御機能212によるABC制御ROI設定表示処理の処理手順を示すフローチャートである。
図4に示すステップS1からステップS11は、制御機能212に対応するステップである。処理回路21が記憶回路25から制御機能212に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、制御機能212が実現されるステップである。なお、
図4に示す例では、ABC機能を実行する際に、減衰フィルタ28の金属板28aが視野内に挿入された場合について説明する。
【0036】
ステップS1では、制御機能212は、減衰フィルタ28の金属板28aの位置を取得する。例えば、制御機能212は、絞り制御回路20から金属板28aの位置を取得する。より具体的には、制御機能212は、金属板28aの4つの頂点の位置を取得する。或いは、制御機能212は、金属板28aの重心の位置を取得する。
【0037】
そして、ステップS2では、制御機能212は、ステップS1で取得した金属板28aの位置に基づいて、ディスプレイ23上のABC制御ROIの位置及び領域を計算する。例えば、制御機能212は、取得した金属板28aの位置から開口部28bの位置を求める。制御機能212は、金属板28aの位置とディスプレイ23上の位置とを対応付けた情報を保持しており、求めた開口部28bの位置に対応するディスプレイ23上の位置及び領域を、ディスプレイ23上のABC制御ROIの位置及び領域として求める。
【0038】
ステップS3では、制御機能212は、ステップS2で求めたディスプレイ23上のABC制御ROIの位置及び領域に基づいて、ABC制御ROIを設定する。言い換えると、制御機能212は、ステップS2で求めた開口部28bに対応する位置及び領域をABC制御ROIに設定する。ここで、制御機能212は、生成されたX線画像を用いてROIを設定し、ABC制御を行う場合、対象とする画素数が多くなる。このため、制御機能212は、電気信号を用いて生成されたX線画像を圧縮し、圧縮後のX線画像においてABC制御ROIを設定する。例えば、制御機能212は、生成されたX線画像を32ピクセル×32ピクセルのX線画像に圧縮し、圧縮後のX線画像において開口部28bに対応する位置及び領域をABC制御ROIに設定する。
【0039】
また、制御機能212は、開口部28bより開口部28bの中心側にABC制御ROIを設定する。制御機能212は、設定したABC制御ROIを調整機能211に通知する。この結果、調整機能211は、電気信号を用いて生成された画像において開口部28bに対応する関心領域内の輝度値と所定の閾値との比較結果に基づいて、X線照射条件を調整する。かかる場合、調整機能211は、圧縮後のX線画像において開口部28bに対応するABC制御ROI内の輝度値と所定の閾値との比較結果に基づいて、X線照射条件を調整する。
【0040】
ステップS4では、制御機能212は、ステップS3で設定したABC制御ROIをディスプレイ23上に表示させる。言い換えると、制御機能212は、ABC制御ROIの位置を示す情報をディスプレイ23に表示させる。例えば、制御機能212は、ステップS2で求めたディスプレイ23上のABC制御ROIの位置及び領域に基づいて、ディスプレイ23上にABC制御ROIを設定する。ここで、制御機能212は、ディスプレイ23上に表示されるX線画像において、開口部28bより開口部28bの中心側にABC制御ROIを設定する。
【0041】
ステップS5では、制御機能212は、減衰フィルタ28の金属板28aの位置の移動を受付けたか否かを判定する。ここで、制御機能212は、減衰フィルタ28の金属板28aの位置の移動を受付けたと判定した場合(ステップS5、Yes)、ステップS1に移行して、ステップS2からステップS4までの処理を再度実行する。すなわち、制御機能212は、フィルタの移動に伴い開口部28bの位置が移動した場合、移動後の開口部28bに対応するABC制御ROIの位置を示す情報をディスプレイ23に表示させる。
【0042】
一方、制御機能212は、減衰フィルタ28の金属板28aの位置の移動を受付けたと判定しなかった場合(ステップS5、No)、ステップS6に移行する。ところで、操作者は、例えば、治療部位をより見やすくするために、SID(Source to image-receptor distance)やFOV(Field Of View)を変更する場合がある。そこで、ステップS6以降では、SIDやFOVを変更する場合の処理について
図5Aから
図6Dを用いて説明する。なお、
図5Aから
図6Dは、第1の実施形態を説明するための図である。
【0043】
ステップS6では、制御機能212は、SIDの変更を受付けたか否かを判定する。ここで、制御機能212は、SIDの変更を受付けたと判定した場合(ステップS6、Yes)、ステップS7に移行する。例えば、制御機能212は、
図5Aに示すように、X線管12からの距離がaの位置にあるX線検出器16が、X線管12からの距離がbの位置まで移動した場合、SIDの変更を受付けたと判定する。一方、制御機能212は、SIDの変更を受付けたと判定しなかった場合(ステップS6、No)、ステップS9に移行する。
【0044】
ステップS7では、制御機能212は、ABC制御ROIを設定する。例えば、制御機能212は、X線管12とX線検出器16との間の距離が変更された場合、X線検出器16に投影される開口部28bの大きさに応じたABC制御ROIをX線画像に設定する。言い換えると、制御機能212は、SID変更後のX線検出器16に投影される開口部28bに対応するABC制御ROIを設定する。以下では、ステップS7におけるABC制御ROIを設定する処理について説明する。
【0045】
制御機能212は、SIDの変更を受付けたと判定した場合、Cアーム回転・移動機構17から現在のSIDを取得する。
図5Aに示す例では、制御機能212は、変更後のSIDがbであることをCアーム回転・移動機構17から取得する。なお、制御機能212は、前回設定時にSIDを取得しているので、変更前のSIDがaであることを保持している。これにより、制御機能212は、SIDがaからbに変更されたと算出する。また、制御機能212は、変更前後のSID比がb/aであると求める。
【0046】
また、
図5Aでは、開口部28bを通過したX線の照射範囲を破線で示す。かかる破線で示すX線の照射範囲が、X線検出器16に投影される開口部28bに対応する。また、
図5B上図は、SID変更前のX線検出器16に投影される開口部28bを図示し、
図5B下図は、SID変更後のX線検出器16に投影される開口部28bを図示している。ここで、SID変更後のX線検出器16に投影される開口部28bの大きさは、SID変更前のX線検出器16に投影される開口部28bの大きさに対して、変更前後のSID比で表現される。
【0047】
続いて、制御機能212は、変更前後のSID比を用いた内部処理によりX線画像においてABC制御ROIを設定する。ここで、制御機能212は、生成されたX線画像を用いてROIを設定し、ABC制御を行う場合、対象とする画素数が多くなる。このため、制御機能212は、電気信号を用いて生成されたX線画像を圧縮し、圧縮後のX線画像においてABC制御ROIを設定する。
【0048】
例えば、
図5Cに示すように、制御機能212は、生成されたX線画像を32ピクセル×32ピクセルのX線画像に圧縮する。
図5C上図は、圧縮後のX線画像において設定したSID変更前のABC制御ROIを示し、
図5C下図は、圧縮後のX線画像において設定したSID変更後のABC制御ROIを示す。制御機能212は、
図5C上図において設定したABC制御ROIに対して変更前後のSID比を用いることで、
図5C下図に示すABC制御ROIを設定する。すなわち、制御機能212は、
図5C上図に示すABC制御ROIをb/a倍することで
図5C下図に示すABC制御ROIを設定する。また、制御機能212は、SID変更後のABC制御ROIを調整機能211に通知する。この結果、調整機能211は、SID変更後のABC制御ROI内の輝度値と所定の閾値との比較結果に基づいて、X線照射条件を調整する。かかる場合、調整機能211は、圧縮後のX線画像におけるABC制御ROI内の輝度値と所定の閾値との比較結果に基づいて、X線照射条件を調整する。
【0049】
ステップS8では、制御機能212は、設定したABC制御ROIの位置を示す情報をディスプレイ23に表示させる。
図5Dでは、ディスプレイ23上に表示されたABC制御ROIを示す情報の一例を示す。
図5D上図は、SID変更前のABC制御ROIの位置を示す情報を示し、
図5D下図は、SID変更後のABC制御ROIの位置を示す情報を示す。
【0050】
ここで、制御機能212は、ディスプレイ23上に表示されるX線画像において、開口部28bより開口部28bの中心側にABC制御ROIを設定する。一例をあげると、制御機能212は、
図5D上図に示すように、SID変更前のABC制御ROIの位置を示す情報を実線で表示させる。同様に、制御機能212は、
図5D下図に示すように、SID変更後のABC制御ROIの位置を示す情報を実線で表示させる。なお、制御機能212は、ABC制御ROIの位置を示す情報を表示させる場合、ABC制御ROIの外側に、開口部28bに対応する情報をディスプレイ23上に更に表示させてもよい。例えば、制御機能212は、ABC制御ROIとは別の表示形態で開口部28bに対応する情報を表示させる。
【0051】
ステップS9では、制御機能212は、FOVの変更を受付けたか否かを判定する。例えば、制御機能212は、入力インターフェース22を介して、操作者からFOVを変更する指示を受付けたか否かを判定する。ここで、制御機能212は、FOVの変更を受付けたと判定した場合(ステップS9、Yes)、ステップS10に移行する。例えば、制御機能212は、
図6Aに示すように、X線検出器16の有効視野が、FOV−Aで示す範囲からFOV−Bで示す範囲に変更された場合、FOVの変更を受付けたと判定する。一方、制御機能212は、FOVの変更を受付けたと判定しなかった場合(ステップS9、No)、ステップS11に移行する。
【0052】
ステップS10では、制御機能212は、FOVの大きさに応じたABC制御ROIを表示させる。以下では、ステップS10におけるFOVの大きさに応じたABC制御ROIを表示させる処理について説明する。ここで、制御機能212は、X線検出器16の有効視野が変更された場合、X線画像において設定したABC制御ROIの大きさを変更しない。例えば、
図6B上図は、FOV変更前のX線検出器16に投影される開口部28bを図示し、
図6B下図は、FOV変更後のX線検出器16に投影される開口部28bを図示している。ここで、FOV変更後のX線検出器16の有効視野は、
図6B下図の斜線部分が視野から外れるため狭くなるが、FOV変更後のX線検出器16に投影される開口部28bの大きさは、FOV変更前のX線検出器16に投影される開口部28bの大きさと同じである。
【0053】
また、FOV変更前後でX線検出器16に投影される開口部28bの大きさは同じであるので、
図6Cに示すように、圧縮後のX線画像において設定するABC制御ROIもFOV変更前後で同じである。
図6C上図は、圧縮後のX線画像において設定したFOV変更前のABC制御ROIを示し、
図6C下図は、圧縮後のX線画像において設定したFOV変更後のABC制御ROIを示す。
【0054】
また、制御機能212は、ABC制御ROIの位置を示す情報をディスプレイ23に表示させる。
図6Dでは、ディスプレイ23上に表示されたABC制御ROIを示す情報の一例を示す。
図6D上図は、FOV変更前のABC制御ROIの位置を示す情報を示し、
図6D下図は、FOV変更後のABC制御ROIの位置を示す情報を示す。
【0055】
ここで、制御機能212は、ディスプレイ23上に表示されるX線画像において、開口部28bより開口部28bの中心側にABC制御ROIを設定する。一例をあげると、制御機能212は、
図6D上図に示すように、FOV変更前のABC制御ROIの位置を示す情報を実線で表示させる。同様に、制御機能212は、
図6D下図に示すように、FOV変更後のABC制御ROIの位置を示す情報を実線で表示させる。更に、制御機能212は、変更後の有効視野の大きさに応じたABC制御ROIの位置を示す情報をディスプレイ23に表示させる。例えば、制御機能212は、有効視野が狭くなった場合、
図6D下図に示すように、FOV変更後のABC制御ROIの位置を示す情報を拡大して表示させる。なお、制御機能212は、有効視野が広くなった場合、FOV変更後のABC制御ROIの位置を示す情報を縮小して表示させる。なお、制御機能212は、ABC制御ROIの位置を示す情報を表示させる場合、ABC制御ROIの外側に、開口部28bに対応する情報をディスプレイ23上に更に表示させてもよい。例えば、制御機能212は、ABC制御ROIとは別の表示形態で開口部28bに対応する情報を表示させる。
【0056】
ステップS11では、制御機能212は、ABC制御ROI設定表示処理の終了を受付けたか否かを判定する。ここで、制御機能212は、ABC制御ROI設定表示処理の終了を受付けたと判定した場合(ステップS11、Yes)、処理を終了する。一方、制御機能212は、ABC制御ROI設定表示処理の終了を受付けたと判定しなかった場合(ステップS11、No)、ステップS1に移行する。
【0057】
上述したように、第1の実施形態に係る制御機能212は、ABC制御ROIの位置を示す情報をディスプレイ23に表示させ、金属板28aの移動に伴い開口部28bの位置が移動した場合、移動後の開口部28bに対応するABC制御ROIの位置を示す情報をディスプレイ23に表示させる。これにより、第1の実施形態によれば、被検体への被曝量を低減させつつ関心領域の設定を容易にすることができる。
【0058】
また、上述した第1の実施形態では、金属板28aの移動に伴い、ABC制御ROIが追従して設定される。このため、減衰フィルタ28の開口部28bにおけるX線画像の明るさを適切に輝度値に維持することができる。この結果、X線画像の画質を向上させることが可能になる。
【0059】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、ABC機能を実行する際に、減衰フィルタ28が視野内に挿入される場合について説明した。ところで、ABC機能を実行する際に、補償フィルタ27が視野内に挿入される場合がある。また、X線診断装置100が有する補償フィルタ27には、開口部が形成される場合がある。このようなことから、第2の実施形態では、ABC機能を実行する際に、減衰フィルタ28ではなく、開口部を有する補償フィルタ27が視野内に挿入される場合について説明する。
【0060】
なお、第2の実施形態に係るX線診断装置100の全体構成は、補償フィルタ27が有する金属板の構成が異なる点を除いて、
図1に示した構成例と同様である。このため、
図1と同様の構成については説明を省略する。
図7Aから
図7Cは、第2の実施形態を説明するための図である。
【0061】
図7Aでは、補償フィルタ27が2枚の金属板を有する場合について説明する。
図7Aに示すように、補償フィルタ27は、独立して移動可能な、金属板27aと金属板27bとを有する。なお、
図7Aでは図示を省略するが、補償フィルタ27は、各金属板の回転移動及び水平移動を制御する駆動機構を有する。
【0062】
また、第1の実施形態に係る金属板と同様に、金属板27a及び金属板27bの材質は、例えば、銅板、アルミニウム等である。なお、金属板27a及び金属板27bの材質は、X線を減衰させることが可能であれば、銅板やアルミニウム以外であってもよい。また、金属板27a及び金属板27bは、例えば長方形状であり、長方形の一部に切欠きを有する。この金属板27a及び金属板27bは、絞り制御回路20による制御の下、駆動機構を介して回転移動又は水平移動する。
【0063】
そして、操作者が入力インターフェース22を介して金属板27a及び金属板27bを操作すると、絞り制御回路20による制御の下、金属板27a及び金属板27bが移動する。ここで、操作者は、例えば、
図7Bに示すように、金属板27a及び金属板27bが関心領域27cを囲むように操作する。或いは、操作者は、
図7Cに示すように、金属板27a及び金属板27bが関心領域27cを囲むように移動する。
【0064】
関心領域27cを囲むように金属板27a及び金属板27bが移動した後、操作者から関心領域として設定する指示を受付けることで、絞り制御回路20は、金属板27a及び金属板27bの位置関係を保持した状態で、開口部を有する1つの金属板として動かすように制御する。
【0065】
また、第2の実施形態に係る制御機能212は、第1の実施形態に係る制御機能212と同様の機能を実行する。例えば、第2の実施形態に係る制御機能212は、操作者から関心領域として設定する指示を受付けることで、関心領域27cをABC制御ROIとして設定する。ここで、制御機能212は、ディスプレイ23上に表示されるX線画像において、開口部より開口部の中心側にABC制御ROIを設定する。
【0066】
また、制御機能212は、設定したABC制御ROIを調整機能211に通知する。これにより、調整機能211は、設定されたABC制御ROI内の輝度値と所定の閾値との比較結果に基づいて、X線照射条件を調整する。かかる場合、調整機能211は、圧縮後のX線画像におけるABC制御ROI内の輝度値と所定の閾値との比較結果に基づいて、X線照射条件を調整する。
【0067】
また、制御機能212は、ABC制御ROIの位置を示す情報をディスプレイ23に表示させる。そして、第2の実施形態に係る制御機能212は、金属板27a及び27bの移動に伴い開口部の位置が移動した場合、移動後の開口部に対応するABC制御ROIの位置を示す情報をディスプレイ23に表示させる。これにより、第2の実施形態によれば、被検体への被曝量を低減させつつ関心領域の設定を容易にすることができる。
【0068】
なお、制御機能212は、X線管12とX線検出器16との間の距離が変更された場合、X線検出器16に投影される開口部の大きさに応じたABC制御ROIをX線画像に設定する。また、制御機能212は、X線検出器16の有効視野が変更された場合、X線画像において設定したABC制御ROIを変更せず、かつ、変更後の有効視野の大きさに応じたABC制御ROIの位置を示す情報をディスプレイ23に表示させる。
【0069】
また、上述した第2の実施形態では、金属板27a及び27bの移動に伴い、ABC制御ROIが追従して設定される。このため、補償フィルタ27の開口部におけるX線画像の明るさを適切に輝度値に維持することができる。この結果、X線画像の画質を向上させることが可能になる。
【0070】
(その他の実施形態)
実施形態は、上述した実施形態に限られるものではない。
【0071】
上述した実施形態では、補償フィルタ27は、独立して移動可能な金属板を複数有するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、補償フィルタ27が有する金属板は、一枚板で形成されてもよい。また、補償フィルタ27が有する金属板が一枚板で形成される場合、この金属板には開口部が形成されるようにしてもよい。
【0072】
また、上述した実施形態では、減衰フィルタ28が有する金属板28aは、水平移動するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、減衰フィルタ28が有する金属板28aは、回転移動してもよい。
【0073】
図1に示す例では、補償フィルタ27は、コリメータ13と減衰フィルタ28との間に設けられるものとして図示しているが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、補償フィルタ27や減衰フィルタ28が設けられる位置は、X線管12と被検体Pとの間であれば任意に変更可能である。
【0074】
また、上述した実施形態では、X線診断装置100が、補償フィルタ27と減衰フィルタ28とを有するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、X線診断装置100は、第1の実施形態で説明した減衰フィルタ28及び第2の実施形態で説明した補償フィルタ27のいずれか一方を有するようにしてもよい。
【0075】
また、上述した実施形態では、血管内インターベンション治療を行う場合を例に説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、上述した実施形態は、X線診断装置100において、ABC機能を実行する際に、開口部を有する補償フィルタ27や減衰フィルタ28が視野内に挿入される場合に適用可能である。
【0076】
上記の実施形態の説明において、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0077】
また、上記の実施形態で説明した制御方法は、予め用意された制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この制御プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0078】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、被検体への被曝量を低減させつつ関心領域の設定を容易にすることができる。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。