特許第6780977号(P6780977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社プレックスの特許一覧

<>
  • 特許6780977-布類投入機 図000002
  • 特許6780977-布類投入機 図000003
  • 特許6780977-布類投入機 図000004
  • 特許6780977-布類投入機 図000005
  • 特許6780977-布類投入機 図000006
  • 特許6780977-布類投入機 図000007
  • 特許6780977-布類投入機 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6780977
(24)【登録日】2020年10月19日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】布類投入機
(51)【国際特許分類】
   D06F 67/04 20060101AFI20201026BHJP
   D06F 69/04 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   D06F67/04
   D06F69/04
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-147348(P2016-147348)
(22)【出願日】2016年7月27日
(65)【公開番号】特開2018-15201(P2018-15201A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】502407130
【氏名又は名称】株式会社プレックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】特許業務法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出上 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】矢野 誠
(72)【発明者】
【氏名】林田 誉生
【審査官】 東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−154493(JP,A)
【文献】 特開2008−119281(JP,A)
【文献】 特表平10−503394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 67/00 − 69/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布類を把持し吊下げてから別装置に受渡すための投入機であって、
布類の端縁を把持するチャックを備えており、
該チャックは、布類の端縁を挿入する凹所の下面と上面に下突片と上突片が形成され、かつ該凹所内で爪が開閉する構造をもち、
前記下突片には、該下突片よりも幅が広く、かつ前記下突片の先端よりも前方に延出したガイド片を有する
ことを特徴とする布類投入機。
【請求項2】
前記チャックが、
前記爪を常時閉方向に付勢するバネと、
前記爪を開方向に動作させる爪開閉シリンダとを備える
ことを特徴とする請求項1記載の布類投入機。
【請求項3】
前記チャックにおける前記凹所に布片が挿入されたことを検知するセンサと、該センサからの検知信号に基づいて該爪開閉シリンダを縮動作させるセンサを組み込んだ制御回路とを備えている
ことを特徴とする請求項2記載の布類投入機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布類投入機に関する。さらに詳しくは、洗濯済みのシーツや包布(2枚生地の布団カバーなど袋状のもの)、枕カバー、タオル類、テーブルクロス、衣類などの布類を洗濯し、アイロンがけする際は、その布類を四角形に展開し、プレスや折り畳み機などの次工程装置に供給するために布類展開装置が用いられる。そして、この布類展開装置などに、洗濯済みの布類を投入するのは布類投入機が用いられる。本発明は、このような布類投入機に関する。
【背景技術】
【0002】
ホテルや病院などでは大量にシーツが使用され、その使用済みのシーツはランドリー工場で洗濯、アイロンがけされ、再度ホテルや病院などで使用されることが一般的である。
ランドリー工場においては、シーツなどの四角形で比較的大きな寸法を有する布類を、洗濯したあとプレス機でプレスしたり、折り畳み機で折りたたんだりする作業が行なわれる。それらの処理装置に布類を供給するには、布類を予め四角形に展開させる必要がある。
布類を四角形に展開する作業を作業員が行う場合、作業に多大な時間と労力が必要であるため、近年では、この作業を自動で行う展開装置によって行われている。また、この展開装置に洗濯済みの布類をまず投入しなければならないが、その投入も機械化されて投入機が用いられるようになっている。
【0003】
特許文献1に記載された従来の展開装置および投入機の基本構成は、概略つぎのように構成されている。
図5において、80はシーツ等の布類投入機であり、展開装置の左右両端部に設けられている。布類投入機80におけるハンガー81に作業員がシーツYをつかませると、ハンガー81がいったん最上端まで上昇して少し奥側に移動し、再び少し下降した時点で、展開装置の横行チャック20R、20LにシーツYを受け渡す。ついで、布類の一辺を横行チャック20Rまたは20Lでつかんでベルトコンベヤ10上に引きづり込み、そのベルトコンベヤ10を前方に駆動して布類を装置前面に垂れ下がらせ、別の伸展チャック40R,40Lで布類の幅方向両端をつかんで引っ張って吊下げる。このように四角形に展開した状態で布類を装置内に引き込みかつ排出してプレス機等に送り込んでいる。
【0004】
前記ハンガー81には、その両端にチャック82が取付けられている。この従来のチャック82を図6および図7に基づき説明する。
チャック82は、チャック本体83と爪片84を備えている。チャック本体83は横向きに凹んだ凹所を形成するように、下突片85と上突片86を備えている。上突片86には爪片84がピン87で回動自在に支持され、かつ爪片84の上部とチャック本体83との間にはバネ88が張設されている。
【0005】
下突片85と上突片86とは同じ幅と同じ長さを有している。図6に示すように、バネ88で爪片84を引っ張って立てているときは、爪片84の下端部が下突片85の表面に当るので、シーツ等をこの間に挟むことができる。
【0006】
しかるに、上記従来例では、つぎのような問題があった。
図7に示すように、作業員がシーツをチャック82に引っ掛けるとき、斜め上方(約45°)からチャック82を見下すことになるが、この視線に直交する上突片86の先端と下突片85の先端との間の間隔wは狭いので、シーツを下から支える部材となる下突片85は上突片86によってよく見えないまま作業することとなる。この場合、シーツを下突片85の上面にうまく挿入できないという操作ミスも発生しやすい。この問題は、熟練すると回避しやすいが、それでも完璧ではなく、作業能率向上の阻害要因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016−106893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、シーツ等の布類の把持ミスを大きく低減できる布類投入機を提供することを目的とする。また、本発明は、把持操作の高能率化を図れる布類投入機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明の布類投入機は、布類を把持し吊下げてから別装置に受渡すための投入機であって、布類の端縁を把持するチャックを備えており、該チャックは、布類の端縁を挿入する凹所の下面と上面に下突片と上突片が形成され、かつ該凹所内で爪が開閉する構造をもち、前記下突片には、該下突片よりも幅が広く、かつ前記下突片の先端よりも前方に延出したガイド片を有することを特徴とする。
第2発明の布類投入機は、第1発明において、前記チャックが、前記爪を常時閉方向に付勢するバネと、前記爪を開方向に動作させる爪開閉シリンダとを備えることを特徴とする。
第3発明の布類投入機は、第2発明において、前記チャックにおける前記凹所に布片が挿入されたことを検知するセンサと、該センサからの検知信号に基づいて該爪開閉シリンダを縮動作させるセンサを組み込んだ制御回路とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によれば、作業員がチャックの前方に立って斜め上方から見おろしたとき、下突片は上突片に邪魔されて良く視認できないが、下突片よりも大きいガイド片があると、それを目印にして下突片の存在場所に見当をつけることができる。このため、布類を把持させるためチャックに差し込む操作が容易かつ確実にできるので、生産性が向上する。
第2発明によれば、キャッチにおける爪の閉動作がバネで行われることに加え、開動作が爪開閉シリンダによって行われるので、開動作のための人力操作が不要になるので、作業能率が向上する。
第3発明によれば、作業員がキャッチの凹所に挿入すると、それを検知したセンサからの駆動信号によって爪開閉シリンダが動作して爪を閉じさせる。このように爪の閉じ動作が自動で行われるので、布片の把持作業が能率的に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る布類投入装置におけるチャックAの図面であって、(A)は側面図、(B)は平面図、(C)は正面図である。
図2図1に示すチャックAの作用説明図である。
図3】チャックAの把持機構の説明図である。
図4】チャックAの把持動作の説明図である。
図5】従来例および本発明に係る布類展開装置および布類搬入機の正面図である。
図6】従来のキャッチの構造説明図である。
図7】従来技術の問題点の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の投入機が適用される布類展開装置は、洗濯済みの種々の形状、形態の布類Yを展開しアイロナー等の次工程の別装置に供給するための装置である。そして、この展開装置に洗濯したての布類を投入するのが、投入機である。なお、特許請求の範囲にいう「別装置」とは、ここでいうアイロナー等の次工程装置が該当する。
本明細書においては、布類展開装置Aの前後・左右・上下方向を図5から図7に示すように定義する。
【0013】
図5に示す布類展開装置の基本構成は、本発明でも継承されているので、その基本構成を改めて、図5基づき説明する。同図に示す布類展開装置は、布類投入機から投入されたシーツ等の布類Yを受入れて、布類Yの全体を方形状に展開し、展開された布類Yの皺取りを行って、皺取り後の布類Yを次工程装置に受渡すための排出作業を行う装置である。
【0014】
本実施形態における布類展開装置Aの基本構成のうち従来技術と同様のものには、同一部材に同一符号を付しているので、以下にその符号を列記する。
10:積載台
11:積載コンベヤ
20L、20R:横行チャック
【0015】
図5に示すように、積載台10は、布類Yを投入機から取り込んだあと布類Yを前方に移送するための台であり、積載コンベヤ11で構成されている。積載コンベヤ11は、複数本のベルトからなり、これらのベルトで布類Yを前送りすることができる。この積載台10は、処理する布類Yの長辺よりも長尺となっている。
【0016】
本実施形態の展開装置Aでは、図5に示す側方から布類Yが供給される。布類Yの供給は左右両側方からでもよく、左右どちらか一方でもよい。本発明は、この展開装置に取付けた布類投入機を特徴とするものである。
【0017】
つぎに、上記布類投入機の特徴部分を図1図2に基づき説明するが、その特徴部分はハンガー81に取付けられるチャック2にある。
チャック2は、チャック本体3と爪片4を備えている。チャック本体3は前方から奥向きに凹んだ凹所3hが形成された側面視コ形のブロック体であり、基部3aと下突片3bと上突片3cとからなる。上突片3cの先端部にはピン7が通され、このピンに爪片4の略中間部が回動自在に支持されている。また、爪片4の上部とチャック本体3との間にはバネ8が張設されている。
【0018】
図2に示すように、バネ8で爪片4を引っ張って立てているときは、爪片4の下端部が下突片5の表面に当るので、シーツ等の布類Yをこの間に挟むことができる。
【0019】
下突片3bの下面には、ガイド片9が取付けられている。このガイド片9の形状は任意であるが、図示の実施形態では、両側部に立壁が立ち上った断面U字形の形状であって、両側の立壁が下突片3bを挟み込んで取付けられている。また、ガイド片9の下突片3bを含むチャック本体3への取付けは任意であり、ビス止めや接着などの手段をとくに制限なく採用できる。
【0020】
上記ガイド片9は幅が下突片3bより広く、長さも下突片3bより長く前方に突出している。
たとえば、幅は全幅が20〜40mm位で、下突片3bよりも2〜10mm位広い。また、前方へは下突片3bの先端より2〜40mm位突出している。
【0021】
ガイド片9の先端部上面の高さは下突片3bの高さよりも、わずかに高くたとえば1mm程度高くされている。こうすることにより段差を付けておくと、シーツ等の布類Yを差し込んだとき、手の感覚でシーツ等の布類をきちんと奥まで挿入できることを感じとることができる。
【0022】
上記のように、ガイド片9が大きいと、作業員がチャック2の前方に立って、斜め上方から視線をみ降ろしたとき、上突片3aの先端とガイド片9の先端との間の間隔、すなわち、凹所3hの間口Wが広がるので下突片3bの存在場所を容易に認識できる。このため、シーツをチャック2につかませる作業が容易に間違いなく行えるので、作業能率が高くなる。
【0023】
図1に示すチャック2は、バネ8の弾発力で布類Y等をつかむように構成されている。爪片4は通常はバネ8で引っ張られているが、人手によって布類Yを押し込むと爪片4が押し動かされて、布類Yが凹所3hの奥まで入り、その状態で爪片4の底端と下突片3bとの間に布類Yを挟むことができる。
【0024】
つぎに、上記チャック2における爪片4の開閉を自動で行う自動開閉機構を説明する。
図3に示すように、チャック2には爪開閉シリンダ5が取付けられている。この爪開閉シリンダはエアシリンダで構成されており、シリンダ本体51とピストンロッド52と押し金具53とからなる。押金具53はピストンロッド52の先端にボルトを介して取付けられており、押金具53の先端位置を長短に調整できる。このため、爪4の開度量も加減できる。
【0025】
爪開閉シリンダ5の伸縮動作は、センサを用いることにより自動化されている。
たとえば、シーツ等の布類Yをチャック2の凹所13hに挿入したことを非接触センサ(光電センサなど)で検知すると爪開閉シリンダ5を収縮させるようにしておくと、布類Yのチャック2への挿入に連動して爪4を閉じることができる。爪の開放は、チャック2が次工程機構に対し布類Yを受け渡す位置に来たことをリミットスイッチ等で検知して爪開閉シリンダ5を伸長させるように構成するとよい。
【0026】
上記のような自動制御は、爪開閉シリンダ5のエアー回路に組み込んだ方向制御弁のソレノイドを、センサ信号の入力で駆動するような制御回路を用いることで可能である。
【0027】
なお、チャック2は、エアシリンダで構成した回動シリンダ6により、支軸61を中心として前後方向(図中では左右方向)に揺動できるようになっている。これは、チャック2の開口側を作業員に向けて布類Yを差し込みやすくしたり、後ろ向きにして次工程機構へ布類Yを受け渡しやすくするためである。
【0028】
図4の(A)図は、チャック2が開いており、布類Yを挿入しようとする状態を示している。作業者は布類Yを手に持って布類Yの端縁を左右一対のチャック2の開口(凹所3h)に向け挿入する。このとき、ガイド片9が大きいと、作業員の視線を斜め上方から見降ろしても、下突片3bの存在場所を容易に認識できる点は前述のとおりである。
【0029】
図4の(B)図は、チャック2が閉じた状態を示している。チャック2の閉じる動作は既述のとおり、布類Yをチャック2の凹所13hに挿入したことをセンサで検知すると爪開閉シリンダ5が収縮して、布類Yのチャック2への挿入に連動して爪4を閉じることができる。このため、キャッチにおける爪の開動作が爪開閉シリンダによって行われるので、開動作のための人力操作が不要になることにより作業能率が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0030】
上記実施形態は方形状の布類用の布類展開装置に適用されたものを説明したが、本発明の布類投入機はこれに限らず、方形でない衣類(浴衣や病衣など)用の投入装置にも適用することができる。
また、布類展開装置にあっても、図5に示す展開装置だけでなく、これと異なった構成の展開装置用の投入機にも本発明を適用できる。さらに、投入機自体の基本構成も図示のものに限られず、およそチャックを用いるものであれば、本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 ハンガー
2 チャック
3 チャック本体
3a 基部
3b 下突片
3c 上突片
4 爪片
5 爪開閉シリンダ
8 バネ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7