(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6780981
(24)【登録日】2020年10月19日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】超音波プローブ
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20201026BHJP
【FI】
A61B8/00
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-157935(P2016-157935)
(22)【出願日】2016年8月10日
(65)【公開番号】特開2018-23635(P2018-23635A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2019年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】小林 祐介
(72)【発明者】
【氏名】尾名 康裕
(72)【発明者】
【氏名】武内 俊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友広
【審査官】
永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−087556(JP,A)
【文献】
特開2008−302098(JP,A)
【文献】
特表2014−508022(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0238880(US,A1)
【文献】
特開2014−057136(JP,A)
【文献】
特開2017−018390(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2017/0135673(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される駆動信号に基づいて超音波を発生し、受信した超音波に基づいて電気信号を発生する複数の超音波振動子と、
前記複数の超音波振動子と電気的に接続され、前記駆動信号に関する制御及び前記電気信号に関する処理の少なくとも一方を実行する複数の電子回路と、
前記複数の電子回路に積層された絶縁性熱伝導スペーサーと、
第1の面において前記絶縁性熱伝導スペーサーと接触する接触領域と前記絶縁性熱伝導スペーサーを所定の厚さに維持する支持構造を有し、少なくとも前記複数の電子回路が発生する熱を前記接触領域から拡散させる伝熱支持体と、
を具備し、
前記絶縁性熱伝導スペーサーは、前記伝熱支持体の押圧により変形することを特徴とする超音波プローブ。
【請求項2】
供給される駆動信号に基づいて超音波を発生し、受信した超音波に基づいて電気信号を発生する複数の超音波振動子と、
前記複数の超音波振動子と電気的に接続され、前記駆動信号に関する制御及び前記電気信号に関する処理の少なくとも一方を実行する複数の電子回路と、
前記複数の電子回路に積層された絶縁性熱伝導スペーサーと、
積層方向に垂直な第1の面において前記絶縁性熱伝導スペーサーと接触する接触領域と前記絶縁性熱伝導スペーサーを所定の厚さに維持する支持構造を有し、少なくとも前記複数の電子回路が発生する熱を前記接触領域から拡散させる伝熱支持体と、
を具備することを特徴とする超音波プローブ。
【請求項3】
前記複数の超音波振動子は、二次元マトリクス状に配列されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記複数の超音波振動子は複数の群に分類され、
前記各電子回路は、対応付けられた群に含まれる前記超音波振動子についての前記駆動信号に関する制御及び前記電気信号に関する制御の少なくとも一方を実行することを特徴とする請求項3記載の超音波プローブ。
【請求項5】
前記支持構造は、前記第1の面上の少なくとも三箇所において、支柱及び壁のうちのいずれか一方を有することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記第1の面は矩形であり、
前記支持構造は、前記第1の面の四隅に設けられた支柱を有することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の超音波プローブ。
【請求項7】
供給される駆動信号に基づいて超音波を発生し、受信した超音波に基づいて電気信号を発生する複数の超音波振動子と、
前記複数の超音波振動子と電気的に接続され、前記駆動信号に関する制御及び前記電気信号に関する処理の少なくとも一方を実行する複数の電子回路と、
前記複数の電子回路に積層された絶縁性熱伝導スペーサーと、
第1の面において前記絶縁性熱伝導スペーサーと接触する接触領域と前記絶縁性熱伝導スペーサーを所定の厚さに維持する支持構造を有し、少なくとも前記複数の電子回路が発生する熱を前記接触領域から拡散させる伝熱支持体と、
を具備し、
前記第1の面は矩形であり、
前記支持構造は、前記第1の面の四隅に設けられた支柱を有することを特徴とする超音波プローブ。
【請求項8】
前記電子回路と接続され、前記四隅に設けられた支柱の間より引き出されたフレキシブルプリント基板をさらに具備することを特徴とする請求項7記載の超音波プローブ。
【請求項9】
前記第1の面は矩形であり、
前記支持構造は、前記第1の面の四辺上に設けられた壁を有することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の超音波プローブ。
【請求項10】
供給される駆動信号に基づいて超音波を発生し、受信した超音波に基づいて電気信号を発生する複数の超音波振動子と、
前記複数の超音波振動子と電気的に接続され、前記駆動信号に関する制御及び前記電気信号に関する処理の少なくとも一方を実行する複数の電子回路と、
前記複数の電子回路に積層された絶縁性熱伝導スペーサーと、
第1の面において前記絶縁性熱伝導スペーサーと接触する接触領域と前記絶縁性熱伝導スペーサーを所定の厚さに維持する支持構造を有し、少なくとも前記複数の電子回路が発生する熱を前記接触領域から拡散させる伝熱支持体と、
を具備し、
前記第1の面は矩形であり、
前記支持構造は、前記第1の面の四辺上に設けられた壁を有することを特徴とする超音波プローブ。
【請求項11】
前記複数の超音波振動子は、二次元マトリクス状に配列されていることを特徴とする請求項7,8,10のうちいずれか一項記載の超音波プローブ。
【請求項12】
前記複数の超音波振動子は複数の群に分類され、
前記各電子回路は、対応付けられた群に含まれる前記超音波振動子についての前記駆動信号に関する制御及び前記電気信号に関する制御の少なくとも一方を実行することを特徴とする請求項7,8,10,11のうちいずれか一項記載の超音波プローブ。
【請求項13】
前記複数の超音波振動子と前記複数の電子回路と前記絶縁性熱伝導スペーサーとを有する第1の構造体と、前記伝熱支持体とを積層する前の工程においては、前記電子回路の積層方向の高さと前記絶縁性熱伝導スペーサーの前記積層方向の高さの合計値は、前記支持構造の前記積層方向に関する高さよりも大きく、
前記複数の超音波振動子と前記複数の電子回路と前記絶縁性熱伝導スペーサーとを有する第1の構造体と、前記伝熱支持体とを積層した後においては、前記合計値は、実質的に前記支持構造の前記積層方向に関する高さと同じであること、
を特徴とする請求項1乃至12のうちいずれか一項記載の超音波プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置等において利用される超音波プローブに、複数の超音波振動子を配列して構成されるアレイ型超音波プローブがある。近年では、特に複数の超音波振動子を二次元状に配列して構成される二次元アレイプローブが登場し、被検体の診断対象部位に対する三次元走査を可能としている。
【0003】
この様な二次元アレイプローブに代表される、超音波振動子の数(すなわちチャネル数)の数が膨大な超音波プローブでは、送受信に要する超音波プローブと超音波診断装置本体との間の配線数も大規模になりがちである。その結果、超音波プローブの大型化、ケーブル操作性の低下を招く可能性がある。
【0004】
これを防止するため、例えば、超音波送受信を行うための電子回路の少なくとも一部を、超音波診断装置本体ではなく超音波プローブ内にASIC(Application Specific Integrated Circuit)として設け、超音波プローブ内において、駆動信号を発生したり或いは受信信号を所定の信号数にした後超音波診断装置本体に送り出す等の工夫がなされている。この場合、超音波プローブを小型化するために、ASICはベアチップとして設けられる場合がある(一般に、ASICはプラスチックなどのパッケージに封入されており、また、このパッケージごと基板に実装される。「ベアチップとしてのASIC」とは、この様なパッケージがない状態のASICを意味する。ASICをベアチップとして基板に実装することで、例えばパッケージ分の小型化を実現することができる。)。
【0005】
一方、超音波プローブ内にASICを設けた場合、当該ASICが発生する熱量を拡散させる必要がある。プローブ内に設けられるASICがベアチップである場合、ASICが発生する熱量の拡散は、さらに大きな技術的課題である。従来の超音波プローブでは、この様なASICが発生する熱量、各超音波振動子が発生する熱量を効率的に拡散させるために、冷媒等を用いて積極的な熱の冷却を行う方式(アクティブクーリング方式)、冷媒等を用いずに熱源に熱伝導部材を接触させることで熱を拡散させる方式(パッシブクーリング方式)等を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−516686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、超音波プローブ内にベアチップでASICを設けた場合、ASICと他の部材や部品との電気的な絶縁性を担保する必要がある。しかしながら、絶縁体は、一般的に金属に比較して熱伝導率が低いため、安易な絶縁保護はプローブヘッド発熱抑制を阻害してしまう。さらに、熱拡散、電気的絶縁性に加え、部材精度の製造性を担保する必要がある。従来の超音波プローブでは、これらを十分に担保することはできない。
【0008】
内部に設けられるASICと他の部品や部材との電気的絶縁性を実現しつつ、プローブ内の熱を効率よく拡散する、高い部材精度を要求しない製造性を有する超音波プローブを提供することを目的とする。
【0009】
本実施形態に係る超音波プローブは、複数の超音波振動子と、複数の電子回路と、絶縁性熱伝導スペーサーと、伝熱支持体と、を具備する。複数の超音波振動子は、供給される駆動信号に基づいて超音波を発生し、受信した超音波に基づいて電気信号を発生する。複数の電子回路は、複数の超音波振動子と電気的に接続され、駆動信号に関する制御及び電気信号に関する処理の少なくとも一方を実行する。絶縁性熱伝導スペーサーは、複数の電子回路に積層される。伝熱支持体は、第1の面において絶縁性熱伝導スペーサーと接触する接触領域と絶縁性熱伝導スペーサーを所定の厚さに維持する支持構造を有し、少なくとも前記複数の電子回路が発生する熱を接触領域から拡散させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る超音波プローブPの外観図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した超音波プローブPの内部構造を示した斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示した超音波プローブPをエレベーション方向に沿って見た場合の側面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示した超音波プローブPをアジマス方向に沿って見た場合の側面図である。
【
図6】
図6は、超音波プローブPの組み立て工程について説明するための図である。
【
図7】
図7は、超音波プローブPの組み立て工程について説明するための図である。
【
図8】
図8は、超音波プローブPの組み立て工程について説明するための図である。
【
図9】
図9は、超音波プローブPの組み立て工程について説明するための図である。
【
図10】
図10は、本超音波プローブPの変形例1を説明するための図である。
【
図11】
図11は、本超音波プローブPの変形例1を説明するための図である。
【
図12】
図12は、本超音波プローブPの変形例2を説明するための図である。
【
図13】
図13は、本超音波プローブPの変形例2を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0012】
なお、本実施形態においては、説明を具体的にするため、複数の超音波振動子がマトリックス状に配列された二次元アレイプローブである場合を例とする。しかしながら、当該二次元アレイプローブの例に拘泥されず、本実施形態に係るプローブ内の熱拡散及び電気的絶縁のための構成は、一次元アレイプローブ、1.5次元アレイプローブについても適用可能である。
【0013】
図1は、本実施形態に係る超音波プローブPの外観図である。
図2は、
図1に示した超音波プローブPの内部構造を示した斜視図である。
図3は、
図2に示した超音波プローブPをエレベーション方向に沿って見た場合の側面図である。
図4は、
図2に示した超音波プローブPをアジマス方向に沿って見た場合の側面図である。
【0014】
本超音波プローブPは、超音波振動子層1、音響整合層2、IP基板3、複数のASIC4、絶縁性熱伝導スペーサー5、伝熱支持体6、支持部材7、フレキシブルプリント基板(FPC基板)8を具備している。なお、伝熱支持体6、支持部材7等は、当該超音波プローブPのメインフレームを構成する。
【0015】
超音波振動子層1は、アジマス方向及びエレベーション方向に配列された複数の超音波振動子を有する。超音波振動子は、圧電体と電極とを有し、例えばASIC4からの駆動信号に基づきスキャン領域内の所望の方向に超音波を送信し、当該被検体からの反射波を電気信号に変換する。なお、図示していないが、超音波振動子層1の超音波送信方向と反対側には、背面材が設けられている。また、超音波振動子層1の複数の超音波振動子は、複数の群(サブアレイ)に分類されており、当該サブアレイを基準とした超音波送信に関する制御、及び超音波受信に関する制御及び信号処理が実行される。
【0016】
音響整合層2は、超音波振動子層1の超音波送信方向側に設けられ、超音波振動子と生体との間において超音波エネルギーを効率良く伝播させる。なお、音響整合層2は、一層に限定されず複数層形成される場合もある。
【0017】
IP基板3は、超音波振動子層1における各超音波振動子とASIC4との間の電気的接続を中継する機能を有し、ガラエポ多層基板やセラミック多層基板など、ある程度の剛性をもった基板から成る。IP基板3は、超音波送信方向側の面において、各超音波振動子の信号電極の位置に対応するように設けられた複数の第1電極パッド(図示せず)を有する。各超音波振動子の信号電極は、上面の第1電極パッドと、ACF接着、導電接着剤、Auバンプなどの手法を用いて電気的に接続される。さらに、IP基板3は、超音波送信方向と反対側の面(背面)において、ASIC3の電極とAuバンプなどの手法を用いて電気的に接続される複数の第2電極パット(図示せず)と、第1電極パッドと第2電極パッドとを電気的に接続する複数の配線31とを有する(凸部30には、第1電極パッドと第2電極パッドとを電気的に接続する配線31は存在しない)。このIP基板3により、ASIC3の電極ピッチと超音波振動子層1に配列された複数の超音波振動子の電極ピッチとが異なる場合であっても、各超音波振動子を独立したチャネルとして対応するASIC4に接続することができる。
【0018】
ASIC4は、集積回路であって、IP基板3の背面に所定の間隔で複数個実装される。各ASIC4は、超音波振動子のサブアレイに対応付けられ、各サブアレイを構成する複数の超音波振動子についての送信に関する制御(例えば、駆動信号に関する制御等)、及び受信に関する制御や処理(例えば、反射波に基づく電気信号の増幅や遅延加算等)を実行する。
【0019】
絶縁性熱伝導スペーサー5は、例えば、シリコン材を用いて製造された、高い電気的絶縁性(耐電圧性)、高い熱伝導性、弾性及び可塑性を有するスペーサーである。絶縁性熱伝導スペーサー5は、ASIC4と他の部品、部材とを電気的に絶縁すると共に、ASIC4において発生した熱を超音波送信方向と反対方向(背面方向)に拡散させる。
【0020】
伝熱支持体6は、音響整合層2、超音波振動子層1、IP基板3を有する構造体に積層され(或いは積層し)、当該構造体を支持すると共に、絶縁性熱伝導スペーサー5を介して拡散された熱を、さらに背面方向に拡散させる。また、伝熱支持体6は、絶縁性熱伝導スペーサー5を所定の厚さ、形状に維持するための支持構造を有する。当該支持構造については、後で詳しく説明する。
【0021】
支持部材7は、伝熱支持体6を支持すると共に、伝熱支持体6を介して拡散された熱を、さらに背面方向に拡散させる。
【0022】
フレキシブルプリント基板(FPC基板)8は、当該超音波プローブPが接続される超音波診断装置本体と当該超音波プローブPとの間において電気信号を送受信するための所定の配線パターン、複数の超音波振動子の各電極、ASIC4の各電極と電気的に接続される複数の電極と有する。このFPC基板8は、さらに、伝熱支持体6上面の支柱61の間から引き出され、ケーブル側へと誘導される。
【0023】
(絶縁性熱伝導スペーサーを所定の厚さに維持するための支持構造)
次に、本超音波プローブPが具備する、絶縁性熱伝導スペーサーを所定の厚さに維持するための支持構造について説明する。
【0024】
図5は、
図2、
図3、
図4に示した伝熱支持体6の拡大斜視図である。同図に示す様に、伝熱支持体6は、伝熱支持体本体60と、支柱61とによって構成される。
【0025】
伝熱支持体本体60は、例えば略直方体形状をしており、アルミニウム等の熱伝導性及び剛性が高い素材によって形成される。
【0026】
支柱61は、例えば伝熱支持体本体60の矩形状の上面(
図2、
図3、
図4に示した伝熱支持体6の超音波送信方向側の面)の四隅に設けられ、所定の高さを有している。なお、本実施形態においては、
図5に示したように、支柱61と伝熱支持体本体60とを一体形成した伝熱支持体6を例示している。しかしながら、当該例に拘泥されず、支柱61と伝熱支持体本体60とを別体とし、伝熱支持体本体60に支柱61を固定する構成としてもよい。このとき、支柱61の素材は、伝熱支持体本体60と同じく高い熱伝導性及び剛性を有するものであることが好ましい。
【0027】
なお、支柱61とASIC4との間には絶縁層としての空隙(空気層)もしくはそれに相当する絶縁層が存在する。このため、支柱61とASIC4との間の絶縁性は担保される。しかしながら、より高い絶縁性を実現するため、支柱61を絶縁体にて構成するようにしてもよい。
【0028】
伝熱支持体本体60の上面において四つの支柱61によって囲まれたスペースは、ASIC・スペーサー配置領域62を形成する。当該ASIC・スペーサー配置領域62からは、後述する組み立て工程を経て、IP基板3の背面に積層されたASIC4と絶縁性熱伝導スペーサー5とが配置される。
【0029】
伝熱支持体本体60の上面の短辺において支柱61に挟まれたスペースは、FPC基板引き出し領域63を形成する。当該FPC基板引き出し領域63からは、後述する組み立て工程を経て、FPC基板8が超音波プローブPの背面方向に引き出される。
【0030】
各支柱61が所定の高さを持つことにより、ASIC・スペーサー配置領域62に配置されたASIC4と伝熱支持体本体60とは、常に一定距離以上離間されて配置され、両者は電気的に絶縁される。同じく、各支柱61が所定の高さを持つことにより、ASIC・スペーサー配置領域62に配置された絶縁性熱伝導スペーサー5は、所定の厚さを維持した状態で伝熱支持体本体60の上面と常に最大面積を持って接触し、伝熱支持体本体60にASIC4からの熱を伝える。この様な機能を担保するため、各支柱61の高さは、ASIC4の厚さ、十分な絶縁性を担保するための絶縁性熱伝導スペーサー5の厚さ、熱伝導性を担保できる程度の厚さ(薄さ)、絶縁性熱伝導スペーサー5の弾性率に応じて決定される。
【0031】
(超音波プローブPの組み立て工程)
次に、
図6、
図7、
図8、
図9を参照しながら、超音波プローブPの組み立て工程について説明する。
【0032】
図6、
図7は、それぞれ伝熱支持体6のASIC・スペーサー配置領域62を絶縁性熱伝導スペーサー5に押し当てて圧力を加える前(すなわち、絶縁性熱伝導スペーサー5が変形する前)の側面図、上面図である。
図6に示す様に、伝熱支持体6のASIC・スペーサー配置領域62を押し当てて圧力を加える前においては、IP基板3の超音波送信方向と反対側の面に積層されたASIC4の厚さ(高さ)及び絶縁性熱伝導スペーサー5の厚さ(高さ)の合計は、支柱61の高さよりも大きい(すなわち、ASIC4の厚さ+絶縁性熱伝導スペーサー5の厚さ > 支柱61の高さ)。また、
図7に示す様に、伝熱支持体6のASIC・スペーサー配置領域62を押し当てて圧力を加える前においては、絶縁性熱伝導スペーサー5の面積は、ASIC4の配置面積よりも少し大きい程度となっている。
【0033】
図8、
図9は、それぞれ伝熱支持体6のASIC・スペーサー配置領域62を絶縁性熱伝導スペーサー5に押し当てて圧力を加えた後(すなわち、絶縁性熱伝導スペーサー5が変形した後)の側面図、上面図である。
図8に示す様に、絶縁性熱伝導スペーサー5に一定の圧力を加えると、四隅の支柱61がIP基板3の背面に当たるまで、絶縁性熱伝導スペーサー5はその弾性により変形する(押しつぶされて、面が広がる方向に逃げる)。その結果、
図8、
図9に示すように、絶縁性熱伝導スペーサー5は、圧力を加える前より広い接触面積を確保しながらASIC・スペーサー配置領域62と密着することになる(このとき、ASIC4の厚さと絶縁性熱伝導スペーサー5の厚さの合計は、支柱61の高さと実質的に等しい。)。支柱61の高さは、絶縁性熱伝導スペーサー5が絶縁性を維持できる程度の薄さ(熱的には、極力薄いほうがよい)になるよう調整されている。従って、絶縁性熱伝導スペーサー5は、絶縁性を維持しながら、超音波プローブP内の熱を良好に背面側に拡散させることができる。
【0034】
四隅の支柱61をIP基板3の背面に接触させた後、
図8に示した超音波振動子層1、IP基板3、ASIC4、絶縁性熱伝導スペーサー5、伝熱支持体6の構造体は、モールド固定される。伝熱支持体6の背面には、さらに熱をハンドルケースやケーブルへ誘導するための熱拡散部品(ヒートスプレッダ)が、取り付けられる(図示せず)。さらに、FPC基板8が、伝熱支持体本体60上面の両側の短辺の支柱61間に位置するFPC基板引き出し領域63から引き出され、伝熱支持体本体60背面側のケーブルへと誘導される(
図4参照)。こうしてASIC4を他の部品・部材と絶縁保護しつつ、熱的に接続された伝熱支持体6により、発熱源の熱を拡散-均熱化することが可能になる。
【0035】
(変形例1)
図10、
図11は、本超音波プローブPの変形例1を説明するための図であり、超音波振動子層1、IP基板3、ASIC4、絶縁性熱伝導スペーサー5、伝熱支持体6の構造体について、
図10は側面図を、
図11は上面図をそれぞれ示している。
【0036】
図10、
図11に示す様に、本変形例1に示す超音波プローブPの伝熱支持体6は、超音波送信方向側の上面の各長辺、各短辺において、壁64を有する構成となっている。当該構成は、例えばFPC基板8を伝熱支持体本体60の短辺側や長辺側において引き出さない構成等において、採用することができる。本変形例1に係る支持構造によっても、ASIC4を他の部品・部材と絶縁保護しつつ、熱的に接続された伝熱支持体6により、発熱源の熱を拡散-均熱化することが可能である。
【0037】
(変形例2)
図12、
図13は、本超音波プローブPの変形例2を説明するための図であり、超音波振動子層1、IP基板3、ASIC4、絶縁性熱伝導スペーサー5、伝熱支持体6の構造体について、
図12は側面図を、
図13は上面図をそれぞれ示している。
【0038】
図12、
図13に示す様に、本変形例1に示す超音波プローブPの伝熱支持体6は、超音波送信方向側の上面の各長辺、各短辺、及び四隅のそれぞれにおいて、支柱61又は壁64を有する構成となっている。当該構成は、例えばFPC基板8を伝熱支持体本体60の短辺側において引き出し、且つ
図5の構成よりも高い強度を実現したい場合等に採用することができる。本変形例2に係る支持構造によっても、ASIC4を他の部品・部材と絶縁保護しつつ、熱的に接続された伝熱支持体6により、発熱源の熱を拡散-均熱化することが可能になる。
(変形例3)
上記実施形態、及び各変形例において、幾つかの伝熱支持体6を例示した。しかしながら、上記各例に拘泥されず、伝熱支持体6の支持構造の位置や形状は、種々変形可能である。例えば、ASIC4との絶縁が確保されていれば、支柱や壁の数は何本であってもよい。強度の観点から言えば、伝熱支持体6上面の最低3か所において支柱又は壁を設けることで、IP基板3及び伝熱支持体6の位置を安定させることができる。また、上記各例においては、伝熱支持体6の超音波送信方向側の上面の各長辺、各短辺、四隅など、伝熱支持体6の上面の周縁部において支柱又は壁を設ける構成を例示した。しかしながら、当該例に拘泥されず、伝熱支持体6の支持構造を、ASIC4との絶縁を例えば絶縁性熱伝導スペーサー5や空気層もしくはそれに相当する絶縁層によって確保しつつ、各ASIC4間の隙間が広がるようIP基板3内の配線を構成することで、例えば伝熱支持体6の上面の中央や、ASIC・スペーサー配置領域62において配列されるASIC4の間等に設ける構成であってもよい。
【0039】
(変形例4)
上記実施形態、及び変形例1、3においては、FPC基板8を伝熱支持体6の短辺の支柱61間をFPC基板引き出し領域とする場合を例示した。しかしながら、当該例に拘泥されず、例えば伝熱支持体本体60上面の両側の長辺の支柱61間をFPC基板引き出し領域として構成し、当該領域からFPC基板8を引き出すようにしてもよい。
【0040】
(変形例5)
上記実施形態、及び各変形例においては、ASIC4をベアチップとして実装する超音波プローブPを例として説明した。しかしながら、当該例に拘泥されず、必要に応じてパッケージされたASICを実装する超音波プローブについても、適用可能である。
【0041】
本実施形態に係る超音波プローブによれば、絶縁性熱伝導スペーサーは、ASIC及び伝熱支持体本体に接触しながらも、支持構造及び自らの弾性によって常に一定の厚さ(すなわち、絶縁性と熱伝導性を担保できる程度の厚さ)を維持することができる。従って、絶縁性熱伝導スペーサーは、ASICと他の部品、部材とを電気的に絶縁しつつ、ASIC等が発生する熱を効率的に伝熱支持体本体に伝導させ超音波プローブの背面側に拡散させることができる。また、ASIC、絶縁性熱伝導スペーサー、伝熱支持体を積層する組み立て工程においては、ASICに積層された絶縁性熱伝導スペーサーを伝熱支持体本体のASIC・スペーサー配置領域に接触させ、積層方向に圧力を加えるだけで、ASIC・スペーサー配置領域の近傍に設けられた支柱構造の高さにより、絶縁性熱伝導スペーサーを、ASIC及び伝熱支持体本体に接触させつつ、常に一定の厚さに形成することができる。従って、ASICとメインフレームとの電気的絶縁性、ASIC等からメインフレームへの熱伝導性を有する超音波プローブを、高い部材精度を要求せずに製造することができる。これらの効果は、例えばASICをベアチップのままで内部に実装する超音波プローブにおいて、大きな実益である。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0043】
P…超音波プローブ、1…超音波振動子層、2…音響整合層、3…IP基板、4…ASIC、5…絶縁性熱伝導スペーサー、6…伝熱支持体、7…支持部材、8…フレキシブルプリント基板(FPC基板)、31…配線、60…伝熱支持体本体、61…支柱、62…ASIC・スペーサー配置領域、63…FPC基板引き出し領域、64…壁。