(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸方向において一方側と他方側を有するシャフトと、外輪及び内輪を有し、前記内輪が前記シャフトに嵌合された転がり軸受と、中央に孔を有し、半径方向に幅を有する環状に形成され、前記孔が前記シャフトに嵌合し、前記転がり軸受の前記一方側に配置されたシールキャップとを備える軸受装置の製造方法であって、
前記シールキャップの前記一方側の面に、当該シールキャップと同心円状にレーザー光を照射することによって前記シールキャップを前記一方側に屈曲させる工程
を含む、軸受装置の製造方法。
前記転がり軸受の外輪の周囲に配置されたハウジングの前記一方側の端面と前記シールキャップとが接触するように、前記シールキャップの前記孔を前記シャフトに嵌合させる工程とをさらに含み、
前記シールキャップを屈曲させる工程では、前記シールキャップの前記一方側の面に、当該シールキャップと同心円状にレーザー光を照射して前記シールキャップを前記一方側に屈曲させることによって、前記ハウジングの前記一方側の端面と前記シールキャップとの間に隙間を形成する、
請求項1に記載の軸受装置の製造方法。
前記シールキャップと前記転がり軸受の外輪の前記一方側の端面との間に形成される隙間は、前記軸方向における隙間幅が20〜50μmの範囲内となるように形成される、
請求項1、2、4のいずれか一つに記載の軸受装置の製造方法。
前記シールキャップは、前記孔の径が、当該シールキャップの厚み方向に一面側から他面側に向けて小さくなるように形成されており、前記一面側から前記シャフトに嵌合される、
請求項1〜5のいずれか一つに記載の軸受装置の製造方法。
前記シールキャップは、前記一方側の面に、当該シールキャップと同心円状にレーザー光が照射された跡を有し、当該跡の位置で前記一方側に屈曲して前記転がり軸受の外輪の前記一方側の端面との間に隙間を形成している、
請求項9に記載の軸受装置。
前記シールキャップは、前記一方側の面に、当該シールキャップと同心円状にレーザー光が照射された跡を有し、当該跡の位置で前記一方側に屈曲して前記転がり軸受の外輪の周囲に配置されたハウジングの前記一方側の端面との間に隙間を形成している、
請求項9に記載の軸受装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る軸受装置の製造方法、軸受装置、スイングアーム、及び磁気ディスク駆動装置について詳細に説明する。なお、以下の説明で参照する各図面において、各要素の寸法の関係や比率等は実物と異なる場合がある。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一の役割を果たす構成要素には同一の符号が付されている。
【0010】
図1は、本実施形態に係る軸受装置をピボットアッシー軸受装置として備えた磁気ディスク駆動装置1を示す斜視図である。例えば、
図1に示すように、本実施形態に係るピボットアッシー軸受装置2は、磁気ディスク駆動装置1の筐体11内に収容されており、スイングアーム3に設けられた取り付け孔3aに嵌合されて、スイングアーム3を揺動可能に支持する。ここで、スイングアーム3の先端には磁気ヘッド4が取り付けられており、スイングアーム3の揺動に伴って、回転している磁気ディスク5の上を磁気ヘッド4が移動することによって、磁気ディスク5に情報が記録され、また、磁気ディスク5に記録されている情報が読み出される。
【0011】
図2は、本実施形態に係る軸受装置2の回転軸に沿った断面図である。また、
図3は、本実施形態に係る軸受装置2が備える金属製のシールキャップ23を上側から見た平面図である。
【0012】
例えば、
図2に示すように、軸受装置2は、円筒状のシャフト21と、一対の転がり軸受22と、シールキャップ23と、スペーサ24とを備えている。
【0013】
なお、以下では、説明の便宜上、各図面における方向に合わせて、シャフト21の軸方向における一方側を上側とし、他方側を下側として説明する。しかしながら、本実施形態に係る軸受装置2が配置される態様は、軸方向が上下方向となるものに限られない。
【0014】
シャフト21は、円筒状に形成された部材であり、下側の端面が、磁気ディスク駆動装置1の筐体11の底部に固定されている(
図1を参照)。また、シャフト21の下側には、半径方向に突出するフランジ21aが設けられている。
【0015】
一対の転がり軸受22は、それぞれ、外輪22a及び内輪22bを有し、内輪22bがシャフト21に嵌合している。そして、一対の転がり軸受22は、それぞれの外輪22aの間に円筒状のスペーサ24を挟んで、上側と下側とに離間して配置されている。
【0016】
ここで、各転がり軸受22において、外輪22aと内輪22bとの間には、グリースで潤滑された複数個の転動体22cが保持されている。そして、各転がり軸受22の外輪22aは、外周面が、スイングアーム3に設けられた取り付け孔3a(
図1を参照)の内周面に固定されている。また、各転がり軸受22の内輪22bは、内周面が、シャフト21の外周面に接着固定されている。これにより、スイングアーム3は、シャフト21の軸を中心として揺動可能に支持される。
【0017】
なお、上側に配置された転がり軸受22の内輪22bは、上側の端面から下側に向けて予圧が与えられた状態で、シャフト21の外周面に接着固定されている。一方、下側に配置された転がり軸受22の内輪22bは、下側の端面が、シャフト21のフランジ21aの上側の端面に当接している。これにより、上側に配置された転がり軸受22の内輪22bに与えられた予圧は、上側に配置された転がり軸受22の転動体22c及び外輪22aを介して、スペーサ24に伝わり、さらに、下側に配置された転がり軸受22の外輪22a、転動体22c及び内輪22bを介して、フランジ21aに伝わる。これにより、一対の転がり軸受22は、全体に予圧が与えられた状態で維持されている。
【0018】
シールキャップ23は、中央に孔を有し、半径方向に幅を有する環状に形成されており、孔がシャフト21に嵌合している。そして、シールキャップ23は、上側に配置された転がり軸受22の上側に配置されている。
【0019】
ここで、シールキャップ23は金属製であり、上面に、当該シールキャップ23と同心円状にレーザー光が照射された跡23aを有している。例えば、
図3に示すように、レーザー光が照射された跡23aは、シールキャップ23の半径方向における幅の略中央付近に形成されている。ここで、例えば、レーザー光が照射された跡23aは、シールキャップ23の半径方向において、上側に配置された転がり軸受22の外輪22aの内周面より内側に形成されている。また、例えば、レーザー光が照射された跡23aは、シールキャップ23の半径方向に所定の幅を有する環状の領域として形成されている。このようなレーザー光の被照射領域は、一定半径の円状軌跡に沿って一回または複数回繰り返してレーザー光を照射したり、半径が少しずつ異なる複数の同心円や螺旋状の軌跡に沿ってレーザー光を照射したりすることで形成できる。
【0020】
そして、例えば、
図2に示すように、シールキャップ23は、レーザー光が照射された跡23aの領域で金属が加熱されて上側に屈曲することで、上側に配置された転がり軸受22の外輪22aの上側の端面との間に隙間を形成する。
【0021】
具体的には、シールキャップ23は、下面における内周縁が、シャフト21の軸方向において、上側に配置された転がり軸受22の外輪22aの上側の端面と同じ位置に配置されている。そして、シールキャップ23は、レーザー光が照射された跡23aの領域で、当該跡23aより半径方向における外側の部分が上側に向けて反るように、屈曲している。すなわち、シールキャップ23の下面は、転がり軸受22の外輪22aと対向する部分が当該外輪22aの上側の端面から離間している。これにより、外輪22aの上側の端面と、シールキャップ23との間に、隙間が形成されている。
【0022】
図4〜7は、本実施形態に係る軸受装置2の製造方法を示す図である。具体的には、
図4は、本実施形態に係る軸受装置2の回転軸に沿った断面図である。また、
図5及び6は、本実施形態に係る軸受装置2におけるシールキャップ23及び上側に配置された転がり軸受22の上側の端部付近の拡大図である。
図7は、本実施形態に係る軸受装置2におけるシールキャップ23及び上側に配置された転がり軸受22付近の拡大図である。
【0023】
なお、ここでは、本実施形態に係るピボットアッシー軸受装置2を製造する工程のうち、シールキャップ23の取り付けに係る工程について説明する。
【0024】
例えば、
図4に示すように、まず、上側に配置された転がり軸受22の外輪22aの上側の端面と接する位置にシールキャップ23が配置されるように、シールキャップ23の孔をシャフト21に嵌合させる。なお、シールキャップ23は、シャフト21に嵌合される前は、平板状となっている。ここで、例えば、シールキャップ23は、焼き嵌めによってシャフト21に嵌合される。焼き嵌めによる嵌合方法を用いると、平板状のシールキャップ23を下側に押し込む時に大きな負荷を掛ける必要がないのでシールキャップ23の意図しない変形が避けられて好都合である。
【0025】
具体的には、シールキャップ23は、焼き嵌めのための加熱が行われた後に、孔をシャフト21に嵌合させた状態で、下面が上側に配置された転がり軸受22の外輪22aの上側の端面と接触する位置まで、上側から下側に向けて押し込まれる。これにより、シャフト21の軸方向において、シールキャップ23の下面が、上側に配置された転がり軸受22の外輪22aの上側の端面と同じ位置に配置されることになる。このように、シールキャップ23を、下面が転がり軸受22の外輪22aの上側の端面と接触する位置まで押し込むことによって、シャフト21に対するシールキャップ23の位置決めが容易になる。
【0026】
ここで、前述したように、上側に配置された転がり軸受22の内輪22bは、上側の端面から下側に向けて予圧が与えられた状態で、シャフト21の外周面に接着固定されている。そのため、上側に配置された転がり軸受22において、内輪22bの上側の端面は、外輪22aの上側の端面より下側に配置されている。したがって、シールキャップ23は、下面が外輪22aの上側の端面と接触する位置まで押し込まれても、内輪22bの上側の端面には接触しない。この状態では、外輪22aはシールキャップ23によって上側から押さえられるため、シャフト21に対して回転できない。
【0027】
その後、例えば、
図5に示すように、シールキャップ23の上面に、当該シールキャップ23と同心円状にレーザー光を照射し、レーザー光が照射された位置でシールキャップ23を上側に屈曲させる。
図5に示す破線の矢印Aは、レーザー光が照射される向きを示している。これにより、上側に配置された転がり軸受22の外輪22aの上側の端面と、シールキャップ23との間に隙間が形成される。ここで、例えば、上側に配置された転がり軸受22の外輪22aの上側の端面とシールキャップ23との間に形成される隙間は、シャフト21の軸方向における隙間幅dが20〜50μmの範囲内となるように形成することができる。
【0028】
具体的には、シールキャップ23は、上側の金属面にレーザー光が照射されると、レーザー光が照射された領域の金属が加熱によって膨張した後に冷却して収縮することによって、塑性変形が起こって上側に折り曲げられる。ここで、シールキャップ23の上面に照射されるレーザー光によって、例えば、
図3に示したように、シールキャップ23の上側の金属面に、シールキャップ23と同心円状にレーザー光が照射された跡23aが形成されることになる。なお、このように、レーザー光を照射することによって被照射領域において金属の板を屈曲させる方法は、レーザーフォーミングと呼ばれている。
【0029】
なお、シールキャップ23は、上面にレーザー光が照射された際に、内周面が焼き嵌めによってシャフト21に固定されて転がり軸受22の外輪22aに接触した状態となっている。そのため、シールキャップ23の下面は、シャフト21の軸方向において、上側に配置された転がり軸受22の外輪22aの上側の端面と同じ位置に配置されている。この結果、シールキャップ23は、レーザー光が照射されると、レーザー光の被照射領域より半径方向における外側の部分が上側に向けて反るように、屈曲することになる。これにより、シールキャップ23は、転がり軸受22の外輪22aと接触している下面の部分が外輪22aから離間することになり、外輪22aの上側の端面とシールキャップ23との間に隙間が形成される。この状態になると、転がり軸受22の外輪22aは、シールキャップ23によって拘束されていた状態から解放されるため、シャフト21に対して回転可能になる。
【0030】
なお、例えば、シールキャップ23の板厚が大きい場合には、シールキャップ23におけるレーザー光が照射される位置に、予め溝が形成されてもよい。例えば、
図7に示すように、シールキャップ23におけるレーザー光が照射される領域内に、当該シールキャップ23と同心円状の周溝23bが形成される。例えば、周溝23bは、断面が円弧状、V字形状、又は、U字形状などに形成されてもよい。このように、レーザー光が照射される領域に予め溝を形成しておくことで局所的に加熱しやすくなり、シールキャップ23を屈曲させやすくすることができる。
【0031】
また、例えば、シールキャップ23が打ち抜き加工によって作製される場合には、シールキャップ23の孔の径が、厚み方向に一面側から他面側に向けてわずかに小さくなるように形成されてしまうこともある。その場合には、シールキャップ23が焼き嵌めによってシャフト21に嵌合された際に、シールキャップ23が、孔の径が大きい方の一面側に湾曲することがあり得る。このような場合に、シールキャップ23を孔の径が小さい方の他面側からシャフト21に嵌合させると、シールキャップ23が転がり軸受22の端面から遠ざかる方向に湾曲してしまい、シールキャップ23の下面が、外輪22aに接触する前に、内輪22bに接触してしまうこともあり得る。
【0032】
したがって、シールキャップ23の孔が、厚み方向に一面側から他面側に向けて小さくなるように形成される場合には、シールキャップ23は、孔の径が大きい方の一面側からシャフト21に嵌合されるようにするのが望ましい。これにより、シールキャップ23をより確実に外輪22aに接触させることができるようになる。
【0033】
また、ここでは、シールキャップ23が、焼き嵌めによってシャフト21に嵌合される場合の例を説明したが、嵌め合いの方法はこれに限られない。例えば、シールキャップ23は、隙間嵌めによってシャフト21に嵌合されてもよい。この場合には、シールキャップ23の孔とシャフト21との隙間に接着剤が充填されることで、シールキャップ23がシャフト21に固定される。
【0034】
上述したように、本実施形態では、上側に配置された転がり軸受22の外輪22aの上側の端面と接する位置に金属製のシールキャップ23が固定された後に、レーザーフォーミングによってシールキャップ23を上側に屈曲させることで、転がり軸受22の外輪22aの上側の端面とシールキャップ23との間に隙間が形成される。
【0035】
図8は、本実施形態の比較例に係るピボットアッシー軸受装置102の回転軸に沿った断面図である。
図8では、本実施形態の比較例として、平板状のシールキャップ123を備えたピボットアッシー軸受装置102を示している。
【0036】
ここで、例えば、シールキャップ123が打ち抜き加工によって作製される場合には、前述したように、シールキャップ123の孔の径が、厚み方向に一面側から他面側に向けて小さくなるように形成されることがある。その場合には、シールキャップ123が焼き嵌めによってシャフト21に嵌合された際に、シールキャップ123が、孔の径が大きい方の一面側に湾曲することがあり得る。そのため、仮に、シールキャップ123を一面側からシャフト21に嵌合させてしまうと、シールキャップ123が転がり軸受22の方向に向かって湾曲してしまい、転がり軸受22に接触して、転がり軸受22の回転を妨げることがあり得る。
【0037】
このため、例えば、
図8に示すように、一般的に、シールキャップ123は、湾曲してしまった場合でも転がり軸受22の回転を妨げることがないように、所定のマージンを設けて、転がり軸受22の上側の端面から軸方向に離間して固定される。この結果、シールキャップ123と転がり軸受22との間には、シールキャップ123における径方向の全体にわたって、所定のマージンを含んだ大きさの隙間が形成されることになる。
【0038】
これに対し、本実施形態では、上述したように、上側に配置された転がり軸受22の外輪22aの上側の端面と接する位置にシールキャップ23が配置された後に、レーザー光によってシールキャップ23を上側に屈曲させることで、転がり軸受22の外輪22aの上側の端面とシールキャップ23との間に隙間が形成される。したがって、シールキャップ23と転がり軸受22との間に、比較例のように所定のマージンを含んだ大きさの隙間が形成される場合と比べて、小さい隙間を形成することができる。これにより、転がり軸受22からピボットアッシー軸受装置2の外部に拡散するパーティクルの量を減らすことができる。
【0039】
図9は、本実施形態と比較例とを比較した測定結果の一例を示す図である。
図9に示すグラフは、本実施形態に係る軸受装置2及び比較例に係る軸受装置102それぞれについて、軸受装置の外部に流出したパーティクルの量の経時的な変化を測定した測定結果を示している。
【0040】
具体的には、
図9に示すグラフの横軸は、閉じられた空間内において各軸受装置の揺動を開始してからの時間(h)を示しており、縦軸は、測定されたパーティクルの量(μm
3)を示している。パーティクルの量は、気中パーティクルカウンタ(リオン社製:KC22−A)を用いて測定した粒径ごとのパーティクル個数をパーティクルの総体積に換算して求めた。また、実線の曲線は、本実施形態に係る軸受装置2の測定結果を示しており、一点鎖線の曲線は、比較例に係る軸受装置102の測定結果を示している。
【0041】
例えば、
図9に示すように、本実施形態に係る軸受装置2では、比較例に係る軸受装置102と比べて、装置の外部に流出するパーティクルの量が低減していることが分かる。例えば、
図9に示す測定結果の一例では、24時間が経過した時点で、比較例に係る軸受装置102から流出したパーティクルの量が209.2μm
3となったのに対し、本実施形態に係る軸受装置2から流出したパーティクルの量は、79.1μm
3となった。すなわち、本実施形態に係る軸受装置2では、比較例に係る軸受装置102と比べて、装置の外部に流出するパーティクルの量を62%削減することができた。
【0042】
以上のように、本実施形態によれば、転がり軸受22から発生するパーティクルの拡散を抑制することができる。
【0043】
なお、上述した実施形態では、転がり軸受22の外輪22aとシールキャップ23との間に隙間が形成される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、転がり軸受22の外輪22aの周囲にハウジングが配置される場合に、当該ハウジングとシールキャップとの間に隙間が形成されてもよい。以下では、このような場合の例を変形例として説明する。なお、第1の変形例は、ハウジングが、円筒状のスリーブである場合の例であり、第2の変形例は、ハウジングが、磁気ディスク駆動装置1が備えるスイングアーム3の一部であるEブロックである場合の例である。
【0044】
(第1の変形例)
図10は、第1の変形例に係る軸受装置202の回転軸に沿った断面図である。例えば、
図10に示すように、本変形例に係る軸受装置202は、円筒状のシャフト21と、一対の転がり軸受22と、シールキャップ223と、スペーサ24と、スリーブ225とを備えている。
【0045】
スリーブ225は、円筒状に形成された部材であり、一対の転がり軸受22の周囲を囲むように配置されている。ここで、スリーブ225の上側の端面は、上側に配置された転がり軸受22の外輪22aの上側の端面より上側に位置し、スリーブ225の下側の端面は、シャフト21のフランジ21aの下側の端面より下側に位置している。そして、スリーブ225の内周面に、一対の転がり軸受22それぞれが有する外輪22aの外周面が接着固定されている。なお、
図10に示す例では、スリーブ225は、
図2に示したスペーサ24と一体化されている。
【0046】
ここで、本変形例に係る金属製のシールキャップ223は、半径方向において、スリーブ225の上側まで延在する大きさに形成されており、
図3に示したシールキャップ23と同様に、上面に、当該シールキャップ223と同心円状にレーザー光が照射された跡を有している。例えば、レーザー光が照射された跡は、シールキャップ223の半径方向における幅の略中央付近に形成されている。ここで、例えば、レーザー光が照射された跡は、シールキャップ223の半径方向において、スリーブ225の内周面より内側に形成されている。また、例えば、レーザー光が照射された跡は、シールキャップ223の半径方向に所定の幅を有するように形成されている。
【0047】
そして、例えば、
図10に示すように、シールキャップ223は、レーザー光が照射された跡の領域で金属が加熱されて上側に屈曲することで、一対の転がり軸受22それぞれの外輪22aの周囲に配置されたスリーブ225の上側の端面との間に隙間が形成されている。
【0048】
具体的には、シールキャップ223は、下面における内周縁が、シャフト21の軸方向において、スリーブ225の上側の端面と同じ位置に配置されている。そして、シールキャップ223は、レーザー光が照射された跡の領域で、当該跡より半径方向における外側の部分が上側に向けて反るように、屈曲している。すなわち、シールキャップ223の下面は、スリーブ225と対向する部分が当該スリーブ225の上側の端面から離間している。これにより、スリーブ225の上側の端面と、シールキャップ223との間に、隙間が形成されている。
【0049】
本変形例に係る軸受装置202の製造方法では、まず、スリーブ225の上側の端面と接する位置にシールキャップ223が配置されるように、シールキャップ223の孔をシャフト21に嵌合させる。なお、シールキャップ223は、シャフト21に嵌合される前は、平板状となっている。ここで、例えば、シールキャップ223は、焼き嵌めによってシャフト21に嵌合される。
【0050】
具体的には、シールキャップ223は、焼き嵌めのための加熱が行われた後に、孔をシャフト21に嵌合させた状態で、下面がスリーブ225の上側の端面と接触する位置まで、上側から下側に向けて押し込まれる。これにより、シャフト21の軸方向において、シールキャップ223の下面が、スリーブ225の上側の端面と同じ位置に配置されることになる。このように、シールキャップ223を、下面がスリーブ225の上側の端面と接触する位置まで押し込むことによって、シャフト21に対するシールキャップ223の位置決めが容易になる。
【0051】
その後、シールキャップ223の上面に、当該シールキャップ223と同心円状にレーザー光を照射し、レーザー光が照射された位置でシールキャップ223を上側に屈曲させる。これにより、スリーブ225の上側の端面と、シールキャップ223との間に隙間が形成される。ここで、例えば、スリーブ225の上側の端面とシールキャップ223との間に形成される隙間は、シャフト21の軸方向における隙間幅が20〜50μmの範囲内となるように形成することができる。
【0052】
具体的には、シールキャップ223は、上側の金属面にレーザー光が照射されると、レーザー光が照射された領域の金属が加熱によって膨張した後に冷却して収縮することによって塑性変形が生じ、上側に折り曲げられる。ここで、シールキャップ223の上面に照射されるレーザー光によって、上述したように、シールキャップ223の上側の金属面に、シールキャップ223と同心円状にレーザー光が照射された跡が形成されることになる。
【0053】
なお、シールキャップ223は、上面にレーザー光が照射された際に、内周面が焼き嵌めによってシャフト21に固定されている。そのため、シールキャップ223の下面における内周縁は、シャフト21の軸方向において、スリーブ225の上側の端面と同じ位置に配置されている。この結果、シールキャップ223は、レーザー光が照射されると、レーザー光の被照射領域より半径方向における外側の部分が上側に向けて反るように、屈曲することになる。これにより、シールキャップ223は、スリーブ225と接触している下面がスリーブ225から離間することになり、スリーブ225の上側の端面とシールキャップ223との間に隙間が形成される。
【0054】
なお、本変形例においても、シールキャップ223の板厚が大きい場合には、シールキャップ223におけるレーザー光が照射される位置に、予め溝が形成されてもよい。
【0055】
上述したように、本変形例では、スリーブ225の上側の端面と接する位置に金属製のシールキャップ223が固定された後に、レーザーフォーミングによってシールキャップ223を上側に屈曲させることで、スリーブ225の上側の端面とシールキャップ223との間に隙間が形成される。したがって、シールキャップ223とスリーブ225との間に、小さい隙間を形成することができる。これにより、転がり軸受22から軸受装置202の外部に拡散するパーティクルの量を減らすことができる。したがって、本変形例でも、転がり軸受22から発生するパーティクルの拡散を抑制することができる。
【0056】
(第2の変形例)
図11は、第2の変形例に係るスイングアーム303の回転軸に沿った断面図である。例えば、
図11に示すように、本変形例に係るスイングアーム303には、円筒状のシャフト21と、一対の転がり軸受22と、シールキャップ323と、スペーサ24とを備えた軸受装置302が組み込まれている。
【0057】
本変形例に係るスイングアーム303は、スイングアーム303の根元部であるEブロック325に軸受装置302を収容している。具体的には、Eブロック325には、円筒状に形成された取り付け孔325aが設けられており、取り付け孔325aの内側に、軸受装置302が収容されている。ここで、Eブロック325の上側の端面は、上側に配置された転がり軸受22の外輪22aの上側の端面より上側に位置し、Eブロック325の下側の端面は、シャフト21のフランジ21aの下側の端面より下側に位置している。そして、取り付け孔325aの内周面に、一対の転がり軸受22それぞれが有する外輪22aの外周面が接着固定されている。
【0058】
ここで、本変形例に係る金属製のシールキャップ323は、半径方向において、Eブロック325の上側まで延在する大きさに形成されており、
図3に示したシールキャップ23と同様に、上面に、当該シールキャップ323と同心円状にレーザー光が照射された跡を有している。例えば、レーザー光が照射された跡は、シールキャップ323の半径方向における幅の略中央付近に形成されている。ここで、例えば、レーザー光が照射された跡は、シールキャップ323の半径方向において、Eブロック325の取り付け孔325aの内壁より内側に形成されている。また、例えば、レーザー光が照射された跡は、シールキャップ323の半径方向に所定の幅を有するように形成されている。
【0059】
そして、例えば、
図11に示すように、シールキャップ323は、レーザー光が照射された跡の領域で金属が加熱されて上側に屈曲することで、一対の転がり軸受22それぞれの外輪22aの周囲に配置されたEブロック325の上側の端面との間に隙間が形成されている。
【0060】
具体的には、シールキャップ323は、下面における内周縁が、シャフト21の軸方向において、Eブロック325の上側の端面と同じ位置に配置されている。そして、シールキャップ323は、レーザー光が照射された跡の領域で、当該跡より半径方向における外側の部分が上側に向けて反るように、屈曲している。すなわち、シールキャップ323の下面は、Eブロック325と対向する部分が、当該Eブロック325の上側の端面から離間している。これにより、Eブロック325の上側の端面と、シールキャップ323との間に、隙間が形成されている。
【0061】
本変形例に係る軸受装置302の製造方法では、まず、Eブロック325の上側の端面と接する位置にシールキャップ323が配置されるように、シールキャップ323の孔をシャフト21に嵌合させる。なお、シールキャップ323は、シャフト21に嵌合される前は、平板状となっている。ここで、例えば、シールキャップ323は、焼き嵌めによってシャフト21に嵌合される。
【0062】
具体的には、シールキャップ323は、焼き嵌めのための加熱が行われた後に、孔をシャフト21に嵌合させた状態で、下面がEブロック325の上側の端面と接触する位置まで、上側から下側に向けて押し込まれる。これにより、シャフト21の軸方向において、シールキャップ323の下面が、Eブロック325の上側の端面と同じ位置に配置されることになる。このように、シールキャップ323を、下面がEブロック325の上側の端面と接触する位置まで押し込むことによって、シャフト21に対するシールキャップ323の位置決めが容易になる。
【0063】
その後、シールキャップ323の上面に、当該シールキャップ323と同心円状にレーザー光を照射し、レーザー光が照射された位置でシールキャップ323を上側に屈曲させる。これにより、Eブロック325の上側の端面とシールキャップ323との間に隙間が形成される。ここで、例えば、Eブロック325の上側の端面とシールキャップ323との間に形成される隙間は、シャフト21の軸方向における隙間幅が20〜50μmの範囲内となるように形成することができる。
【0064】
具体的には、シールキャップ323は、上側の金属面にレーザー光が照射されると、レーザー光が照射された領域の金属が加熱によって膨張した後に冷却して収縮することによって塑性変形が生じ、上側に折り曲げられる。ここで、シールキャップ323の上面に照射されるレーザー光によって、上述したように、シールキャップ323の上側の金属面に、シールキャップ323と同心円状にレーザー光が照射された跡が形成されることになる。
【0065】
なお、シールキャップ323は、上面にレーザー光が照射された際に、内周面が焼き嵌めによってシャフト21に固定されている。そのため、シールキャップ323の下面における内周縁は、シャフト21の軸方向において、Eブロック325の上側の端面と同じ位置に配置されている。この結果、シールキャップ323は、レーザー光が照射されると、レーザー光の被照射領域より半径方向における外側の部分が上側に向けて反るように、屈曲することになる。これにより、シールキャップ323は、Eブロック325と接触している下面がEブロック325から離間することになり、Eブロック325の上側の端面とシールキャップ323との間に隙間が形成される。
【0066】
なお、本変形例においても、シールキャップ323の板厚が大きい場合には、シールキャップ323におけるレーザー光が照射される位置に、予め溝が形成されてもよい。
【0067】
上述したように、本変形例では、Eブロック325の上側の端面と接する位置に金属製のシールキャップ323が固定された後に、レーザーフォーミングによってシールキャップ323を上側に屈曲させることで、Eブロック325の上側の端面とシールキャップ323との間に隙間が形成される。したがって、シールキャップ323とEブロック325との間に、微小な隙間を形成することができる。これにより、転がり軸受22から軸受装置302の外部に拡散するパーティクルの量を減らすことができる。したがって、本変形例でも、転がり軸受22から発生するパーティクルの拡散を抑制することができる。
【0068】
以上、実施形態及び実施形態の変形例について説明したが、上記実施形態及び上記変形例により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。