(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された中継器は、建物の天井等に固着する感知器ベースと、当該感知器ベースに取付ける感知器本体と、の間に配設されているので、当該中継器を着脱する際には、感知器ベースから感知器本体を外して、感知器ベースと感知器本体との接続を解除する必要がある。しかしながら、感知器ベースと感知器本体との接続が解除されると、火災感知器の火災監視機能が停止した状態となってしまう。すなわち、上記中継器には、火災監視を中断した状態でないと中継器の着脱を行うことができない、という課題がある。
また、中継器を着脱する度に感知器本体を外さなければならないので、上記中継器には、中継器の着脱に大変手間がかかる、という課題もある。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、建物の天井等に設置された火災感知器の近傍に取り付け可能な情報発信ユニットであって、火災感知器による火災監視を中断することなく容易に着脱することのできる情報発信ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の情報発信ユニットは、取付面に取り付けられている火災感知器に取り付ける情報発信ユニットにおいて、情報発信モジュールが内蔵された筐体と、
前記筐体の表面に押圧可能に設けられ、押圧される度に、前記筐体の表面から所定長さで突出した第1状態と、前記筐体の表面からの突出長が前記第1状態に比べて小さい第2状態と、に状態を交互に変えるボタン部材と、
前記ボタン部材が前記第1状態から前記第2状態に移行するのに伴って前記ボタン部材の先端側へ向かい、前記ボタン部材が前記第2状態から前記第1状態に移行するのに伴って前記ボタン部材の側方側へ向かうように構成された鉤爪と、を備え、
側周面に開口窓が形成された火災感知器に前記ボタン部材の先端を押し付けて当該ボタン部材を
前記第2状態にすることで、
前記鉤爪が
前記開口窓に入り込んで当該開口窓の周囲に係合可能であることを特徴とする
。
【0008】
本発明によれば、情報発信ユニットの筐体を火災感知器の取り付けたい箇所に配置し、当該箇所にボタン部材を押し付けるだけで鉤爪が火災感知器の開口窓に入り込むので、火災感知器へ容易に取り付けることができる。また、ボタン部材を火災感知器側に再度押し付けるだけで鉤爪が開口窓から出るので、火災感知器から容易に取り外すことができる。つまり、
火災感知器の一部または全体を着脱する必要が無いので、着脱の際にも火災感知器による火災の監視状態が継続させることができる。よって、火災感知器による火災監視を中断することなく容易に着脱することができる。
また、火災感知器の表面にある開口窓に係止部を係合させることで取り付けるので、既設の火災感知器にも取り付けが可能である。
また、取り付ける際に、一方の手で筐体を持ち他方の手で可動部を操作するといったことが必要無くなるので、片手で容易に着脱することができる。
【0009】
また、上記発明において、前記筐体には、少なくとも前記筐体の表面において前記ボタン部材よりも広い幅で開口する凹部が形成され、前記ボタン部材の基端は、前記凹部の中に収められ、前記鉤爪は、前記ボタン部材の側面に、前記ボタン部材の移動方向と直交する方向に延びる軸を回転の中心として回動可能となるように軸支された棒状のアームの先端に設けられており、前記ボタン部材が前記第1状態から前記第2状態に移行する途中で、前記アー
ムが前記筐体の表面における前記凹部の縁に当接することで前記アームが回動し、前記鉤爪が前記ボタン部材の先端側へ向かうものとしてもよい。
このようにすれば、ボタン部材の動きを伝達するために歯車等の複雑な部材を用いることなく、鉤爪を動作させることができるので、構造が簡素になって製造コストを下げることができるし、筐体内にモジュールを内蔵するためのスペースをより多く確保することもできる。
【0010】
また、上記発明において、前記ボタン部材は、ハート状カム方式により前記第1状態と前記第2状態とに状態を交互に変えるよう構成されており、前記ボタン部材は、弾性部材によって前記筐体から離れる方向に付勢され、前記第2状態においても、先端部が前記筐体の表面から突出しているものとしてもよい。
このようにすれば、火災感知器に取り付けるときに第2状態のボタン部材が火災感知器に当接可能となるので、鉤爪によって火災感知器に係合しつつ、ボタン部材が火災感知器を押す(本発明が火災感知器から離れるように付勢される)ので、火災感知器に取り付ける際の本発明の安定性を高めることができる。
また、ボタン部材が第2状態においても突出しているので、火災感知器の表面が平坦であっても、火災感知器に取り付けられた状態の本発明を押し付けるだけで容易にボタン部材が押圧され、ボタン部材が第2状態から第1状態へ移行する。このため、本発明を火災感知器から容易に取り外すことができる。
【0011】
また、本発明の情報発信機能付火災感知器は、側周面に開口窓が形成された煙感知器と、上記発明に係る情報発信ユニットと、を備え、前記情報発信ユニットは、前記ボタン部材が前記煙感知器の、取付面へ取り付けた際に下面となる面に当接しているとともに、前記鉤爪が、前記開口窓の窓枠部に係合していることを特徴とする。
火災感知器のうち煙感知器は、主に天井面(取付面)に沿って側方から流れてくる煙を検知することが知られている。そこで、本発明によれば、情報発信ユニットが煙感知器の下方に位置し、側周面の開口窓を遮蔽しないので、天井面に沿って流れてくる煙が遮られることなく煙感知器内の煙検知部に届く。従って、煙感知器の煙感知性能を低下させることなく、煙感知器に情報発信機能を付加することができる。
【0012】
また、本発明の情報発信機能付火災感知器は、複数の開口窓に囲まれるように火災検知部が設けられた火災感知器と、上記発明に係る情報発信ユニットと、を備え、前記情報発信ユニットは、前記筐体が、前記火災感知器の下端よりも、感知器の取付面(前記火災感知器を取り付ける取付面と対向することになる面)側に位置しており、前記ボタン部材が、前記火災感知器の、取付面へ取り付けた際に側面となる面に当接しているとともに、前記鉤爪が、前記開口窓の窓枠部に係合していることを特徴とする。
煙感知器に本発明の情報発信ユニットが取り付けられると、本発明の情報発信ユニットと対向する開口窓が一部遮蔽されてしまう場合があるが、当該開口窓の遮蔽されていない部分と他の開口窓は遮蔽されることが無いので、煙感知性能をほとんど低下させることなく情報発信機能を付加することができる。
また、煙感知器の下方が空くので、例えば、天井が低い場合などに本発明が圧迫感を与える心配が無い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、火災感知器による火災監視を中断することなく容易に着脱することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、天井側を上とし、床側を下とする。
まず、本実施形態に係る情報発信機能付火災感知器100の概略構成について説明する。
図1は、情報発信機能付火災感知器100の分解斜視図である。
本実施形態の情報発信機能付火災感知器100は、天井等に設置される火災感知器本体(以下感知器本体100A)と、感知器本体100Aに外付けされる情報発信ユニット100Bと、を備えている。
本実施形態の感知器本体100Aは、煙感知器であり、感知器ベース110と、回路基板112と、暗箱基台114と、防虫網116と、暗箱118と、感知器カバー120と、蓋体124と、を備えている。
【0016】
感知器ベース110は、感知器本体100Aの基部であり、建物の天井等(取付面)に取り付けられる。感知器本体100Aの電源線と火災報知の信号線は、感知器ベース110を介して天井裏へ引き出される。
回路基板112は、火災検知用の回路および火災報知用の送信回路を搭載している。具体的には、回路基板112には、火災検知用の発光素子、受光素子、火災報知の信号を出力する信号処理回路、並びに、動作状態を表示するための発光素子等が実装される。回路基板112は、例えば感知器ベース110に止着される。
【0017】
暗箱基台114は、暗箱118の上方を覆う部材である。暗箱基台114には、外光の入射を遮って煙を検知室(火災検知部)に進入させるためのラビリンス構造部の構成要素114aが設けられていてもよい。また、暗箱基台114は、貫通孔を介して火災検知用の発光素子および受光素子を回路基板112から検知室へ通す貫通孔等が設けられていてもよい。暗箱基台114は、例えば回路基板112に係止されて固定される。
【0018】
暗箱118は、底面部118aを有し、煙を検出するための検知室を底面部118aと暗箱基台114との間に形成する。暗箱118には、外光の入射を遮って煙を検知室に導くラビリンス構造部118bが設けられている。ラビリンス構造部118bの中央部分が検知室となっている。検知室には、暗箱118の横方からラビリンス構造部118bを介して検知室外の気体を導入することができる。暗箱118は、暗箱基台114に対して予め定められた配置で、上部が暗箱基台114に当接した状態で、暗箱基台114に組み合わされる。暗箱118は、感知器カバー120に保持されて固定される。加えて、暗箱118は暗箱基台114と係合されて固定される構造を有してもよい。
防虫網116は、暗箱118の横方を覆って小さな虫または塵が検知室へ進入するのを抑止する。防虫網116は、例えば暗箱118に固定される。
【0019】
感知器カバー120は、回路基板112と暗箱118との周囲を囲って、これらを保護する。感知器カバー120は、感知器ベース110に係合されて固定される。感知器カバー120には、中央下方に円形状の開口部120aが設けられている。また、感知器カバー120は、側周面(暗箱118の横方に位置する部位)に複数の開口窓120bが水平に(側周面に沿って)並ぶように設けられている。すなわち、感知器本体100Aが天井に取り付けられると、暗箱118内の検知室と開口窓120bとはほぼ同じ高さに位置することになる。感知器カバー120は、暗箱118の底面部118aを開口部120aに露出させた状態で、暗箱118の一部を係止して暗箱118を保持する。
【0020】
感知器カバー120には、リング状の導光散乱部材121が設けられている。導光散乱部材121は、開口部120aの周りを囲うように配置される。導光散乱部材121は、例えば、透明樹脂から構成され、回路基板112の近傍まで延設された導光部を有し、回路基板112の発光素子から入射した光を導き、途中で散乱してリング状の略全周の部分から外部に光を放出する。導光散乱部材121は、蓋体124に支持されるように構成しても良いし、感知器カバー120に係止されて固定されるように構成してもよい。
情報発信ユニット100Bは、感知器本体100Aの感知性能に影響を与えることのない位置に取り付けられている。本実施形態では、情報発信ユニット100Bの取り付け箇所を、蓋体124の下方としている。
【0021】
次に、本実施形態の情報発信ユニット100Bの具体的構成について説明する。
図2は情報発信ユニット100Bの斜視図、
図3は
図2のIII−III断面図、
図4は情報発信ユニット100Bの動作の流れを示した模式図、
図5は情報発信機能付火災感知器の情報発信ユニット100B取り付け前後における側面図である。
本実施形態の情報発信ユニット100Bは、
図2に示したように、筐体130と、筐体130の上部に設けられた係合機構140と、を備えている。
【0022】
筐体130は、中央に凹部131が形成されている。凹部131を形成する壁面の上端部は、
図3に示したように、上方に向かうに従って広がるテーパー面131aとなっている。
筐体130の周縁部は中空になっており、その中には、
図2に示したように、例えばビーコン等の情報発信モジュール132が配置されている。なお、
図2には、筐体130として、上面視形状が円形のものを例示したが、情報発信モジュール132を内蔵可能である限り、その形状は任意である。
【0023】
情報発信モジュール132は、位置検出用に機器固有の識別情報を無線により発信するモジュールである。情報発信モジュール132は、電源133と、回路基板や送信回路部やアンテナ部等を備える情報発信端末134と、を有している。
なお、情報発信端末134に電力を供給する電源133は、1つの電池により構成される電池電源に限定されず、適宜変更可能であり、例えば、複数の電池を並列接続して構成される電池電源であってもよい。
【0024】
また、電源133を構成する電池は、ボタン形電池に限定されず、適宜変更可能であり、例えば、円筒形電池(円筒形リチウム電池)であってもよい。
また、電源133は、電池電源に限定されず、適宜変更可能であり、例えば光発電装置等であってもよい。電源133が光発電装置である場合、当該電源133は、例えば、感知器カバー120の外周側面に配設された光電池(太陽電池等)と、当該光電池からの電力を集電して外部(情報発信端末134)に出力する出力部と、からなる。
【0025】
係合機構140は、筐体130の凹部131に設けられたラッチ機構141と、ラッチ機構141の側面に設けられた複数の係止部材146と、を備えている。
ラッチ機構141は、
図3に示したように、筒状のボタン部材142と、ボタン部材142の中に設けられたプレート143と、筐体130の凹部131の底面131bからボタン部材142の中にかけて設けられたピン144と、筐体130の凹部131の底面131bとボタン部材142との間に設けられた付勢部材145と、を備えている。
【0026】
ボタン部材142は、基端部が、筐体130の凹部131に、凹部131の底面131bと直交する方向に移動可能となるように嵌め込まれている。つまり、ボタン部材142は、本発明における、筐体130に、該筐体130に対して変位可能に設けられた可動部をなす。上述したように、ボタン部材142には筒状であり、凹部131の上端部はテーパー面131aとなっているので、凹部131は、筐体130の表面においてボタン部材142よりも広い幅で開口していることになる。
【0027】
プレート143は、ボタン部材142の中にボタン部材142の移動方向と平行に立設されている。プレート143の一方の表面には、カム溝143a〜143dが形成されている。各カム溝143a〜143dは、
図3に示したように、連続する環状となるように、かつ、全体としてハートに似た形状となるように形成されており、各カム溝143a〜143dの終端部は、隣接するカム溝143b〜143aよりも浅くなっている。すなわち、各カム溝143a〜143dの境界が段差になっている。
【0028】
ピン144は、上端部144aが直角に曲げられた棒状をなしている。ピン144の上端部144aはカム溝143a〜143d内に、カム溝143a〜143dに沿って摺動可能となるように係合している。ピン144の下端部は、筐体130の凹部131の底面131bに、プレート143のカム溝143a〜143dが形成された面と直交するように延びる軸材144bによって軸支されることで、この軸材144bを回転の中心として回動可能となっている。
このピン144により、ボタン部材142は、
図4(a)に示した筐体130上面からの突出長が最も大きい状態(以下第1状態)、
図4(b)に示した筐体130上面からの突出長が最も小さい状態(ボタン部材142の上面が筐体130の上面と面一またはそれよりも落ち窪んだ状態も含む、以下第3状態)、
図4(c)に示した筐体130上面からの突出長が第1状態よりは小さく第3状態よりは大きい状態(以下第2状態)等、複数の状態にて静止することが可能となっている。
【0029】
付勢部材145は、例えばスプリング等であり、
図3に示したように、筐体130の凹部131の底面131bとボタン部材142の下端との間に配置されている。そして、付勢部材145は、ボタン部材142を底面131bから離れる方向に向かうように付勢している。
【0030】
係止部材146は、棒状のアーム部146aと、アーム部146aの先端部に形成された鉤爪部146bと、からなる。アーム部146aは、その基端部が、ボタン部材142の側面に、ボタン部材142の移動方向と直交するように延びる軸材146cによって軸支されることで、この軸材146cを回転の中心として回動可能となっている。鉤爪部146bは略上方を向いている。また、係止部材146は、図示しない弾性部材によって、アーム部146aが上方に向かって傾斜した状態から、
図3に示したボタン部材142の移動方向に直交する状態へと延びる方向、すなわち、複数の鉤爪部146bが互いに遠ざかる方向に回動するよう付勢されている。
【0031】
係止部材146の軸支部(軸材146c)は、
図4(a)に示したように、ボタン部材142が第1状態のときに筐体130の上面よりも上方に位置し、
図4(b)に示したように、ボタン部材142が第3状態のときにテーパー面131aの下端の高さに位置し、
図4(c)に示したように、第2状態のときに筐体130の上面よりも下方に位置するよう配置されている。このため、係止部材146のアーム部146aは、ボタン部材142が第1状態から第2状態へ移行する手前の段階で筐体130の凹部131の縁に当接することになる。
【0032】
係合機構140は、このように構成されることで、ラッチ機構141がオルタネイト動作し、それに伴って係止部材146が回動する(各鉤爪部146bがボタン部材の先端側へ向かったり側方側に向かったり(互いに近づいたり離れたり)する)。つまり、鉤爪部146bは、本発明における、可動部の変位に伴い所定の変位動作が可能な係止部をなす。具体的には、
図4(a)に示したように、ボタン部材142が第1状態のとき、ピン144の上端部144aは第1カム溝143aの下端に係合している。
このとき、係止部材146には、筐体130が当接しておらず、軸支部の図示しない弾性部材による付勢力しか作用しないので、アーム部146aがボタン部材142の移動方向と直交する方向に延びた状態(各鉤爪部146bが離れた状態)となっている。
【0033】
この状態でボタン部材142に下方向の押圧力を作用させると、ボタン部材142が筐体130の中に入り込んでいく。このとき、ピン144の上端部144aは、第1カム溝143aおよび第2カム溝143bにガイドされる。上端部144aが第2カム溝143bの上端に達すると、
図4(b)に示したように、ボタン部材142が第3状態となる。
このとき、係止部材146の軸支部がテーパー面131aの下端に位置するので、アーム部146aがテーパー面131aに沿って傾斜し、各鉤爪部146bがボタン部材142の先端側において最も近づいた状態となる。
【0034】
この状態でボタン部材142に対する押圧力を無くすと、ボタン部材142は付勢部材145の付勢力によって押し戻される。このとき、ピン144の上端部144aは、第1カム溝143aと第2カム溝143bとの間の段差により、第1カム溝143aには戻らず、第2カム溝143bにガイドされる。上端部144aが第3カム溝143cの下端に達すると、
図4(c)に示したように、ボタン部材142が第2状態となる。
このとき、係止部材146の軸支部が筐体130の上面よりも下方に位置するので、アーム部146aが、テーパー面131aの傾斜よりも緩やかな角度で傾斜し、各鉤爪部146bが最も離れた状態よりは近く最も近づいた状態よりは離れた状態となる。
【0035】
この状態でボタン部材142に押圧力を再度作用させると、ボタン部材142が筐体130の中に再度入り込んでいく。このとき、ピン144の上端部144aは、第3カム溝143cおよび第4カム溝143dにガイドされる。上端部144aが第4カム溝143dの上端に達すると、
図4(d)に示したように、ボタン部材142が再び第3状態となる。
このとき、係止部材146は、アーム部146aがテーパー面131aに沿って傾斜した状態となる。
【0036】
この状態でボタン部材142に対する押圧力を無くすと、ボタン部材142は付勢部材145の付勢力によって押し戻される。このとき、ピン144の上端部144aは、第3カム溝143cと第4カム溝143dとの間の段差により、第3カム溝143cには戻らず、第4カム溝143dにガイドされる。上端部144aが第1カム溝143aの下端に達すると、ボタン部材142が
図4(a)に示した第1状態に戻る。
このとき、係止部材146は、アーム部146aがボタン部材142の移動方向と直交する方向に延びた状態となる。
なお、ボタン部材142をオルタネイト動作させる方式は、ここで例示したハート状カム方式に限られず、回転カム方式、ラチェットカム方式等を採用してもよい。
【0037】
このように構成された情報発信ユニット100Bを、天井Cに取り付けられた感知器本体100Aへ取り付けるには、まず、
図5(a)に示したように、情報発信ユニット100Bのボタン部材142を第1状態としておき、ボタン部材142の上面を、感知器本体100Aの下面(蓋体124)に当接させながら、情報発信ユニット100Bを上方へ押し付ける。すると、ボタン部材142が感知器本体100Aに押されて第1状態から第3状態に移行するとともに、係止部材146が筐体130に押されて回動する。すると、
図5(b)に示したように、各係止部材146の鉤爪部146bが、感知器本体100Aの開口窓120bにそれぞれ入り込み、リング状の導光散乱部材121に引っ掛かる。つまり、導光散乱部材121は、本発明における、火災感知器の表面にある係合可能な箇所、或いは、開口窓の窓枠部をなす。
【0038】
ここで手を放すと、ボタン部材142が押し返されて第3状態から第2状態に移行し、係止部材146の各鉤爪部146b同士が僅かに離れるが、情報発信ユニット100Bが感知器本体100Aに係合した状態が保たれる。こうして、感知器本体100Aと情報発信ユニット100Bが一体化し、情報発信機能付火災感知器100となる。なお、このとき、第2状態のボタン部材142が感知器本体100Aの下面に当接するので、鉤爪部146bによって感知器本体100Aに係合しつつ、ボタン部材142が感知器本体100Aの下面を押す(情報発信ユニット100Bが感知器本体100Aから離れるように付勢される)ので、感知器本体100Aに取り付ける際の情報発信ユニット100Bの安定性が高まる。
【0039】
感知器本体100Aから情報発信ユニット100Bを取り外すには、まず、情報発信ユニット100Bを上方へ押し手を放す。すると、ボタン部材142が第2状態から第3状態を経て第1状態へと戻る。このとき、ボタン部材142が第2状態においても突出しているので、感知器本体100Aの下面が平坦であっても、感知器本体100Aに取り付けられた状態の情報発信ユニット100Bを押し付けるだけで容易にボタン部材142が押圧され、ボタン部材142が第2状態から第1状態へ移行する。そして、係止部材146の鉤爪部146bが開口窓120bから抜ける。こうして、情報発信機能付火災感知器100が、感知器本体100Aと情報発信ユニット100Bとに分離される。
【0040】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、ここでは、第1実施形態との相違点についてのみ説明する。
まず、本実施形態に係る情報発信機能付火災感知器200の概略構成について説明する。
図6は、情報発信機能付火災感知器200の情報発信ユニット取り付け前後における下面図である。
本実施形態の情報発信機能付火災感知器200は、感知器本体が煙感知器でも熱感知器でもよい点が第1実施形態と異なっている(
図6には、便宜上第1実施形態と同じ煙感知器を示している)。なお、熱感知器を用いる場合、サーミスタが本発明における火災検知部となる。また、当該サーミスタは、柵状体に囲まれて保護される(すなわち、本発明の熱流入用の開口窓と窓枠部として構成される)。
また、本実施形態の情報発信機能付火災感知器200は、情報発信ユニット200Bが感知器本体100Aの側方に取り付けられている点が第1実施形態と異なっている。
【0041】
次に、情報発信ユニットの具体的構成について説明する。
本実施形態の情報発信ユニット200Bは、筐体230の側面に係合機構240が設けられている。
本実施形態の係合機構240は、第1実施形態と同様に、ラッチ機構241と、係止部材246と、を備えているが、ラッチ機構241のオルタネイト動作が、筐体230の側面と直交する方向に沿って行われる点が第1実施形態と異なっている。
また、本実施形態の係止部材246は、アーム部246aが第1実施形態よりも細く形成されている。
また、本実施形態の筐体230は、係止部材の回転軸に沿う方向(
図6の紙面と直交する方向)の厚さが、第1実施形態よりも短くなっている。具体的には、感知器本体100Aの取り付け時に天井と対向することになる面から暗箱118内の検知室までの距離を超えない程度となっている。
【0042】
このように構成された情報発信ユニット200Bを、天井に取り付けられた感知器本体100Aへ取り付けるには、まず、
図6(a)に示したように、情報発信ユニット200Bのボタン部材242を第1状態としておき、ボタン部材242の上面を天井面に当接させるとともに、側面を感知器本体100Aの側面に当接させながら、情報発信ユニット200Bを感知器本体100Aの方へ押し付けた後に手を放す。すると、
図6(b)に示したように、各係止部材246の鉤爪部246bが、感知器本体100Aの開口窓120bにそれぞれ入り込み、感知器カバー120の、隣接する二つの開口窓120bの間にある部位に引っ掛かる。こうして、感知器本体100Aと情報発信ユニット200Bが一体化し、情報発信機能付火災感知器200となる。つまり、隣接する二つの開口窓120bの間にある部位は、本発明における、火災感知器の表面にある係合可能な箇所、或いは、開口窓の窓枠部をなす。
【0043】
なお、情報発信ユニット200Bは、感知器本体100Aに上述したように係合することで、
図6(b)に示したように、一の開口窓120bと対向することになるが、上述したように、筐体230の厚さは薄いので、情報発信ユニット200Bの下面は、暗箱118内の検出室よりも上(天井と対向する面側)に位置することになる。上述したように、検出室と各開口窓120bはほぼ同じ高さに位置するため、情報発信ユニット200Bと対向する開口窓120bは、遮蔽されるとしてもその範囲はごくわずかにとどまる。また、係止部材246のアーム部246aが細く形成されているので、係止部材246によって開口窓120bが遮蔽される範囲も最小限に留まる。従って、この開口窓120bにも、他の開口窓120bと同様に煙の流入が可能となるので、感知器本体100Aは、側方に情報発信ユニット200Bが取り付けられていても、求められる煙検知性能を十分に満たすことができる。
【0044】
以上説明してきたように、上記実施形態の情報発信ユニット100B,200Bは、ボタン部材142,242の動作に基づいて鉤爪部146b,246bが近づいたり離れたりする複数の係止部材146,246によって、感知器本体100Aに係合するので、感知器本体100Aの下面または側面にボタン部材142,242を押し付けるだけで容易に取り付けることができ、ボタン部材142,242を感知器本体側に再度押し付けるだけで容易に取り外すことができる。つまり、感知器本体100Aの一部または全体を着脱する必要が無いので、着脱の際にも感知器本体100Aによる火災の監視状態が継続させることができる。よって、感知器本体100Aによる火災監視を中断することなく容易に着脱することができる。
【0045】
また、感知器本体の表面にある開口窓120bの周囲に鉤爪部146bを係合させることで取り付けるので、既設の火災感知器にも取り付けが可能である。
また、火災(煙または熱)の感知機能しか有していない既設の感知器本体の付加価値を高めることができるし、筐体130,230の中の部品を取り換えることで、感知器本体100Aに付加する機能を容易に切り替えることができる。
また、取り外しも容易なため、電源交換等のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0046】
また、上記実施形態の情報発信ユニット100B,200Bは、係止部材146のアーム部146aを筐体130に当てて回動させる係合機構140を採用しているので、筐体130にボタン部材142の動きを係止部材146に伝達するために歯車等の複雑な部材を用いる必要がなく、簡素な構成で係止部材を動作させることができるので、製造コストを下げることができるし、筐体内にモジュールを内蔵するためのスペースをより多く確保することもできる。
【0047】
また、第1実施形態では、感知器本体100Aを煙感知器とし、情報発信ユニット100Bを感知器本体100Aの下方に取り付けた。火災時の煙の多くは天井面に沿って感知器本体100Aへと流れることが知られているが、第1実施形態の感知器本体100Aは、側周面の複数の開口窓120bが情報発信ユニット100Bに遮蔽されていないので、流れてくる煙が遮られることなく暗箱118内の煙を検出するための検知室に届く。
また、第2実施形態では、感知器本体を煙感知器または熱感知器とし、情報発信ユニット200Bを感知器本体の側方に取り付けた。このようにすると、情報発信ユニット200Bによって複数の開口窓120bの一部が遮蔽される場合があるが、当該開口窓120bの遮蔽されていない部分と他の多くの開口窓120bは遮蔽されないので、感知器本体が煙感知器であっても、流れてくる煙がほぼ暗箱118内の煙を検出するための検知室に届く。一方、感知器本体が熱感知器である場合、火災時の熱は鉛直上方に向かい易いので、下方から届く熱が遮られることなくサーミスタに届く。
従って、感知器本体の感知性能を低下させることなく、感知器本体に情報発信機能を付加することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、情報発信モジュール132として発信機能を有するものを内蔵した例を示したが、発信機能の他に受信機能を有するものを用いてもよい。
また、上記実施形態では、係止部材146,246を2本としたが、検知性能に影響を及ぼさないよう鉤爪やアームの形状・機構を工夫することで、係止部材を1本、或いは3本以上とすることも可能である。なお、3本以上とすれば、情報発信ユニット100B,200Bの、2本の係止部材146,246の並び方向と直交する方向に対する安定感を高めることができる。
また、上記実施形態では、ラッチ機構の側面に係止部材を設け、ボタン部材が変位する際に係止部材を筐体に当接させることで係止部材を回動させるようにしたが、係止部材をラッチ機構から離して設け、ラッチ機構に合わせて動作するカムや歯車などの伝達機構を介して係止部材を動かすようにしてもよい。