(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽光発電設備等の発電設備や電池といった電力供給設備として、現在、単相3線式のものが用いられている。しかし、今後、省エネルギー機器が普及し、構内の電力需要が減少すると、必ずしも単相3線式であることを要さず、例えば、単相3線の片方に相当する単相2線のみに接続される小出力の電力供給設備を設置することが考えられる。
【0005】
そうすると、電力供給設備を、分電盤のサービス遮断器の二次側に接続するだけでなく、単相2線の配線用遮断器の二次側に直接接続することも可能となる。また、この場合に、屋外に既設の屋外コンセントに電力供給設備を接続して既存の構内配線をそのまま活用することで、施工費を削減することもできる。
【0006】
しかし、分電盤内の各配線用遮断器に接続される構内配線には過電流耐量が予め定められており、そのような配線用遮断器の二次側に単純に電力供給設備を接続すると、以下の問題が生じうる。すなわち、配線用遮断器の二次側に位置する構内配線の過電流耐量は、配線用遮断器の遮断容量に基づいて決定されている。したがって、配線用遮断器を介することなく電力供給設備から負荷設備に直接電力が供給されると、構内配線に過電流耐量を上回る電流が流れるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、既設の構内配線に過電流耐量を上回る電流が流れるのを防止することが可能な電力システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、電力系統の電力を、遮断器
と負荷設備とを接続
する構内配線を通じて負荷設備に供給する本発明の電力システムは、構内配線に接続された電力供給設備と、構内配線と電力供給設備との接続点から負荷設備へ流れる電流を測定する電流計と、電流計で測定した電流が構内配線の過電流耐量以下となるように、電力供給設備の出力を制限する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するために、電力系統の電力を、遮断器
と負荷設備とを接続
する構内配線を通じて負荷設備に供給する本発明の他の電力システムは、構内配線に接続された電力供給設備と、遮断器から、構内配線と電力供給設備との接続点へ流れる電流を測定する電流計と、電流計で測定した電流と、電力供給設備で出力された電流との和が構内配線の過電流耐量以下となるように、電力供給設備の出力を制限する制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、既設の構内配線に過電流耐量を上回る電流が流れるのを防止することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
図1は、電力システム100の基本的な接続態様を示した説明図である。電力システム100は、引き込み線12を通じて、電力系統14から電気(商用電力)の供給を受ける。かかる電力システム100は、低圧受電の需要者単位で構成され、その範囲としては、一般用電気工作物であれば、家屋等に限らず、病院、工場、ホテル、レジャー施設、商業施設、マンションといった建物単位や建物内の一部分であってもよい。
【0014】
また、電力システム100は、電力メータ112と、分電盤114と、構内配線116と、コンセント118とを含んで構成される。
【0015】
電力メータ(電力量計)112は、電力系統14に引き込み線12を介して接続され、引き込み線12と電力システム100との間に流れる(消費および売電の)電流値を計測する。
【0016】
分電盤114は、電力メータ112に接続され、契約容量を示すサービス遮断器(サービスブレーカ)114a、漏電の検出に応じて電気の供給を遮断する漏電遮断器(漏電ブレーカ)114b、および、構内配線116に接続され、その構内配線116に流れる電流が遮断容量(例えば20A)を超過すると電気の供給を遮断する配線用遮断器(安全ブレーカ)114cを有する。
【0017】
ここで、需要者は、構内配線116の端部となるコンセント118に負荷設備16を接続し、配線用遮断器114cを通じて電力の供給を受ける。なお、負荷設備16は、実線で示したように、屋内のコンセント118aに接続することも、破線のように、屋外コンセント118bに接続することもできる。かかる構成では、負荷設備16に供給される電力は、全て配線用遮断器114cを介することになるので、配線用遮断器114cの遮断容量は、構内配線116の過電流耐量以下となるように設計されることとなる。
【0018】
上記の電力システム100に電力供給設備120を接続することを検討する。したがって、電力システム100は、電力メータ112、分電盤114、構内配線116、コンセント118に加え、電力供給設備120を含んでいる。ここで、電力供給設備120は、電力系統14より優先して、電気エネルギーを消費する負荷設備16に電力を供給する。かかる電力供給設備120としては、例えば、太陽光発電機、風力発電機、水力発電機、地熱発電機、太陽熱発電機、大気中熱発電機等の再生可能エネルギー発電設備や、燃料電池、内燃力発電、蓄電池等を用いることができる。
【0019】
このような電力供給設備120は、単相3線(200V)に接続して用いるのが一般的である。この場合、配線用遮断器114cに代えて連系遮断器(200V)を設け、その連系遮断器に電力供給設備120を接続したり、また、漏電遮断器114bの1次側から別途の個別遮断器(200V)を介して電力供給設備120を接続しなければならない。
【0020】
ただし、今後は、省エネルギー機器が普及し、電力システム100の電力需要が減少すると、必ずしも単相3線式の電力供給設備を要さない、本実施形態のような、単相3線のN相(中性線)に対するR相(電圧線)、T相(電圧線)のうち、いずれか一方の単相2線(R相とN相、もしくは、T相とN相)のみに接続される小出力の電力供給設備120が設置されることとなる。
【0021】
図2は、電力供給設備120の接続態様を説明するための説明図である。上記のように単相2線で運用できれば、連系遮断器等を介在しなくとも、
図2のように、既存の構内配線116から分岐している屋外コンセント118bに、過電流および漏電を防止する個別遮断器122を通じて電力供給設備120を接続することが可能となり、電力システム100内の配線を簡素化できる。
【0022】
しかし、上述したように、分電盤114内の各配線用遮断器114cの遮断容量や、構内配線116の過電流耐量は、その設置時に定められており(例えば、両方共20A)、
図2のように、配線用遮断器114cの二次側に単に電力供給設備120を接続すると、以下の問題が生じうる。すなわち、配線用遮断器114cでは、遮断容量である20Aまで電流を供給することができる。一方、電力供給設備120も、配線用遮断器114cからの電力と並行して、5Aの電流を供給することができる。この場合、負荷設備16には、その合計である25Aの電流を供給し得ることとなる。そうすると、過電流耐量が20Aとなるように配置された構内配線116に、20Aを上回る電流が流れ得ることとなり、発熱や耐久性劣化の原因となるおそれが生じる。
【0023】
(第1の実施形態)
図3は、第1の実施形態における電力システム100の接続態様を示した説明図である。構内配線116は、通常、需要者設備と共に設置されている。したがって、電力供給設備120の設置、追加、変更に従って、その都度、構内配線116を変更するのは非効率である。そこで、第1の実施形態では、構内配線116を変更することなく、構内配線116の過電流耐量に基づいて、配線用遮断器114cを変更(交換)する。
【0024】
具体的には、まず、配線用遮断器114cの適切な遮断容量を導出する。かかる適切な遮断容量は、例えば、構内配線の過電流耐量(例えば20A)から電力供給設備120の最大容量(例えば5A)を減じて求める。ここでは、適切な遮断容量が20A−5A=15Aとなる。したがって、
図3のように、既設の配線用遮断器114cを、遮断容量が15Aである配線用遮断器114cに交換する。
【0025】
そうすると、
図3のように、交換された配線用遮断器114cでは、遮断容量である15Aまでしか電流を供給できなくなる。そして、電力供給設備120も、配線用遮断器114cからの電力と並行して、5Aの電流を供給することができる。この場合、負荷設備16には、その合計である20Aまでの電流が供給されることとなるが、かかる20Aは、構内配線116の過電流耐量と等しいので、なんら問題が生じない。
【0026】
このように、構内配線116の過電流耐量から電力供給設備120の最大容量を減じた遮断容量の配線用遮断器114cに交換することで、構内配線116に過電流耐量を上回る電流が流れることを防止することが可能となる。
【0027】
また、配線用遮断器114cの適切な遮断容量は、以下の手順でも導出できる。すなわち、無駄な過剰設計を回避すべく、上記のように、配線用遮断器114cの遮断容量と、構内配線116の過電流耐量とは、大凡等しくなるように設計される(ただし、遮断容量≦過電流耐量)。
【0028】
したがって、構内配線116の過電流耐量に代えて、参照容易な配線用遮断器114cの遮断容量を用いることができる。例えば、電力供給設備120が接続される前に構内配線116に接続されていた配線用遮断器114cの遮断容量(例えば20A)から、電力供給設備120の最大容量(例えば5A)を減じて適切な遮断容量15Aを求める。こうして、上記同様、既設の配線用遮断器114cを、遮断容量が15Aである配線用遮断器114cに交換できる。
【0029】
このように、電力供給設備120が接続される前に構内配線116に接続されていた配線用遮断器114cの遮断容量から電力供給設備120の最大容量を減じた遮断容量の配線用遮断器114cに交換することで、構内配線116に過電流耐量を上回る電流が流れることを防止することが可能となる。
【0030】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、構内配線116の過電流耐量に基づいて、配線用遮断器114cを変更(交換)する例を挙げて説明した。第2の実施形態では、配線用遮断器114cも変更することなく、電力供給設備120での処理を工夫することで、構内配線116を保護する。
【0031】
図4は、第2の実施形態における電力システム200の接続態様を示した説明図である。かかる
図4では電力の移動を実線で、情報を含む信号の流れを破線の矢印で示している。電力システム200は、電力メータ112と、分電盤114と、構内配線116と、コンセント118と、電力供給設備220と、電流計224とを含んで構成される。ただし、第1の実施形態における構成要素として既に述べた、電力メータ112と、分電盤114と、構内配線116と、コンセント118とは、実質的に機能が同一なので重複説明を省略し、ここでは、構成が相違する電力供給設備220と、電流計224とを主に説明する。
【0032】
電流計224は、構内配線116と電力供給設備220との接続点Pと、負荷設備16との間に設置され、接続点Pから負荷設備16へ流れる電流を測定する。
【0033】
電力供給設備220は、少なくとも、発電部120aと、制御部120bとを有している。発電部120aは、例えば、燃料電池等で構成され、他のエネルギーを電気エネルギーに変換して電気を生成する。制御部120bは、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路で構成され、発電部120aの出力を制御する。
【0034】
特に、本実施形態において、制御部120bは、電流計224で測定した電流が構内配線116の過電流耐量(例えば20A)以下となるように、電力供給設備220における発電部120aの出力を制限する。
【0035】
例えば、負荷設備16で消費される電流、すなわち、接続点Pから負荷設備16へ流れる電流(a)が5A未満であれば、その電力は電力供給設備220で全て賄われる。したがって、電力供給設備220から接続点Pへ流れる電流(b)が電流(a)と等しくなり、配線用遮断器114cから接続点Pへ流れる電流(c)は0Aとなる。
【0036】
また、電流(a)が5A以上となると、電力供給設備220から接続点Pへ流れる電流(b)はその最大値の5Aとなり、配線用遮断器114cから接続点Pへ流れる電流(c)は、電流(a)と電流(b)との差分(電流(a)−電流(b))を賄うこととなる。
【0037】
そして、電流計224を通じて電流(a)が20Aを上回ったことが測定されると、すなわち、配線用遮断器114cから接続点Pへ流れる電流(c)が15Aを上回ると、制御部120bは、その電流(a)が構内配線116の過電流耐量である20A以下となるように、電力供給設備220における発電部120aの出力を制限して、最終的には出力を0とする。こうして、配線用遮断器114cから接続点Pへ流れる電流(c)と電流(a)とが等しくなる。このとき、負荷設備16へ20Aを上回る電流が流れ続けると、配線用遮断器114cからの電力の供給が遮断され、構内配線116が保護される。
【0038】
かかる発電部120aの出力制限は、発電部120aの出力の解列により実行する。また、配線用遮断器114cでは、例えば22A以下なら20分、24A以下なら10分の有余がある等、超過電流毎にステップ状に動作時限が決まっており、短時間の過電流は許容されるので、その許容される範囲で、発電部120aの出力を徐々に低減して最終的に0にすることでも実現できる。
【0039】
そして、電流計224を通じて電流(a)が20A以下となると、制御部120bは、電流(a)が20A以下となる条件下で、電力供給設備220における発電部120aの出力を徐々に増大する。
【0040】
このように、電力供給設備220において、電流計224で測定した電流が構内配線116の過電流耐量以下となるように、電力供給設備220における発電部120aの出力を制限する構成により、構内配線116に過電流耐量を上回る電流が流れることを防止することが可能となる。
【0041】
また、ここでは、構内配線116と電力供給設備220との接続点Pと負荷設備16との間に電流計224を設置する例を挙げて説明したが、配線用遮断器114cと、構内配線116と電力供給設備220との接続点Pとの間に電流計224を設置する方が容易な場合、かかる位置に電流計224を配置してもよい。
【0042】
図5は、第2の実施形態における他の電力システム300の接続態様を示した説明図である。ここでも、電力の移動を実線で、情報を含む信号の流れを破線の矢印で示している。電力システム300は、電力メータ112と、分電盤114と、構内配線116と、コンセント118と、電力供給設備220と、電流計224とを含んで構成される。電力システム300は、電力システム200と配置が異なるだけで、実質的に機能が同一なので重複説明を省略する。
【0043】
かかる電力システム300において、電流計224は、配線用遮断器114cと、構内配線116と電力供給設備220との接続点Pとの間に設置され、配線用遮断器114cから接続点Pへ流れる電流を測定する。また、制御部120bは、電力供給設備220で出力された電流を検出することができる。そして、制御部120bは、電流計224で測定した電流と、電力供給設備220で出力された電流との和が構内配線116の過電流耐量(例えば20A)以下となるように、電力供給設備220の出力を制限する。
【0044】
例えば、負荷設備16で消費される電流、すなわち、接続点Pから負荷設備16へ流れる電流(a)が5A未満であれば、その電力は電力供給設備220で全て賄われる。したがって、電力供給設備220から接続点Pへ流れる電流(b)が電流(a)と等しくなり、配線用遮断器114cから接続点Pへ流れる電流(c)は0Aとなる。
【0045】
また、電流(a)が5A以上となると、電力供給設備220から接続点Pへ流れる電流(b)はその最大値の5Aとなり、配線用遮断器114cから接続点Pへ流れる電流(c)は、電流(a)と電流(b)との差分を賄うこととなる。
【0046】
そして、電力供給設備220で出力された電流が5Aに達し、かつ、電流計224を通じて測定された電流(c)が15Aを上回ると、すなわち、接続点Pから負荷設備16に流れる電流(a)が20Aを上回ると、制御部120bは、電流(b)と電流(c)との和が構内配線116の過電流耐量である20A以下となるように、すなわち、電流(c)が15A以下となるように、電力供給設備220における発電部120aの出力を制限して、最終的には出力を0とする。こうして、配線用遮断器114cから接続点Pへ流れる電流(c)と電流(a)とが等しくなる。このとき、負荷設備16へ20Aを上回る電流が流れ続けると、配線用遮断器114cからの電力の供給が遮断され、構内配線116が保護される。
【0047】
そして、電流(b)と電流(c)との和が20A以下となると、制御部120bは、電流(b)と電流(c)との和が20A以下となる条件下で、電力供給設備220における発電部120aの出力を徐々に増大する。
【0048】
このように、電力供給設備220において、電流計224で測定した電流と、電力供給設備220で出力された電流との和が構内配線116の過電流耐量以下となるように、電力供給設備220における発電部120aの出力を制限する構成により、構内配線116に過電流耐量を上回る電流が流れることを防止することが可能となる。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0050】
例えば、上述した実施形態においては、屋外コンセント118bに個別遮断器122を通じて電力供給設備120を接続する例を挙げて説明したが、かかる屋外コンセント118bを含むコンセント118については、通常の電気機器が利用可能な100Vのみならず、エアコンが利用可能な200Vにも適用することができる。