特許第6781025号(P6781025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6781025冷却庫の制御装置、冷却庫、及び冷却庫の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6781025
(24)【登録日】2020年10月19日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】冷却庫の制御装置、冷却庫、及び冷却庫の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F25D 11/00 20060101AFI20201026BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20201026BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20201026BHJP
   A47F 3/04 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   F25D11/00 101E
   F25B1/00 304T
   F25B49/02 510C
   A47F3/04 Q
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-232463(P2016-232463)
(22)【出願日】2016年11月30日
(65)【公開番号】特開2018-91494(P2018-91494A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】木内 信行
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−004955(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/080275(WO,A1)
【文献】 特開2016−080304(JP,A)
【文献】 特開2016−080306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 11/00
A47F 3/04
F25B 1/00
F25B 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝縮器で凝縮された冷媒を低圧化する膨張弁と、前記冷媒を液体から気体に状態変化させる蒸発器と、該蒸発器の過熱度を検出する過熱度検出手段と、庫内温度を検出する庫内温度検出手段と、を備えた冷却庫において、前記膨張弁の弁開度を制御する冷却庫の制御装置であって、
前記弁開度の制御方法を切り換える切換手段と、
前記蒸発器の目標過熱度を取得する取得手段と、
前記庫内温度が安定状態となったか否かを判断する判断手段と、
を備え、
前記庫内温度検出手段によって検出した庫内温度に基づいて、前記庫内温度が所定の目標温度となるように前記弁開度を制御する庫内温度制御を実施し、
前記庫内温度制御の実施中に、前記庫内温度検出手段によって検出した庫内温度が安定状態となったことを前記判断手段によって判断した後に、当該庫内温度と、前記過熱度検出手段によって検出した過熱度と、の関係に基づいて前記取得手段によって目標過熱度を取得し、その後、
前記切換手段によって、前記過熱度が前記目標過熱度となるように前記弁開度を制御する過熱度制御の実施に切り換えることを特徴とする冷却庫の制御装置。
【請求項2】
前記取得手段は、前記目標過熱度として、前記判断手段によって前記庫内温度が安定状態となったと判断した時点以前の所定の時間範囲における過熱度に基づく庫内温度安定過熱度を取得することを特徴とする請求項に記載の冷却庫の制御装置。
【請求項3】
前記取得手段は、前記目標過熱度として、前記判断手段によって前記庫内温度が安定状態となったと判断した時点の過熱度である庫内温度安定過熱度を取得することを特徴とする請求項に記載の冷却庫の制御装置。
【請求項4】
凝縮器で凝縮された冷媒を低圧化する膨張弁と、前記冷媒を液体から気体に状態変化させる蒸発器と、該蒸発器の過熱度を検出する過熱度検出手段と、庫内温度を検出する庫内温度検出手段と、請求項1〜のいずれか1項に記載された冷却庫の制御装置と、を備えることを特徴とする冷却庫。
【請求項5】
凝縮器で凝縮された冷媒を低圧化する膨張弁と、前記冷媒を液体から気体に状態変化させる蒸発器と、該蒸発器の過熱度を検出する過熱度検出手段と、庫内温度を検出する庫内温度検出手段と、を備えた冷却庫において、前記膨張弁の弁開度を制御する冷却庫の制御方法であって、
前記庫内温度検出手段によって検出した庫内温度に基づいて、前記庫内温度が所定の目標温度となるように前記弁開度を制御する庫内温度制御を実施し、
前記庫内温度制御の実施中に、前記庫内温度検出手段によって検出した庫内温度が安定状態となったか否かを判断するとともに、当該庫内温度が安定状態となったことを判断した後に、当該庫内温度と、前記過熱度検出手段によって検出した過熱度と、の関係に基づいて目標過熱度を取得し、その後、
前記過熱度が前記目標過熱度となるように前記弁開度を制御する過熱度制御の実施に切り換えることを特徴とする冷却庫の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却庫の制御装置、冷却庫、及び冷却庫の制御方法に関する。尚、冷却庫は、例えばショーケース等が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
一般に、冷凍ショーケースや冷蔵ショーケース等の冷却庫は、凝縮器で凝縮された冷媒を低圧化する膨張弁と、冷媒を液体から気体に状態変化させる蒸発器と、を備え、庫内温度が設定温度となるように、膨張弁の弁開度が制御される。
【0003】
このように膨張弁の弁開度を制御する方法として、蒸発器の過熱度および冷却庫の庫内温度を検出するとともに、プルダウン冷却時(除霜後の冷却時や室温からの冷却時)には過熱度に基づいて弁開度を制御し、定温冷却時には庫内温度に基づいて弁開度を制御する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された方法では、プルダウン冷却時には過熱度に基づく制御によって迅速に冷却し、その後、庫内温度に基づく制御によって庫内温度を一定に保つようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−80304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された制御方法では、定温冷却時に過熱度が変動した場合に適切に対応できないことがあった。即ち、過熱度が変化してから庫内温度が変化するまでにはタイムラグがあり、庫内温度に基づいて弁開度を制御していると、過熱度が変化してから庫内温度が変化した場合に、庫内温度に応じて弁開度を調節するまでに過熱度が大きく変化してしまう可能性があった。過熱度が小さすぎる状態では、蒸発器に過剰な冷媒が供給されており、液バックが発生するおそれがある。
【0006】
そこで、液バックを抑制するために、庫内温度一定制御を実施しつつ過熱度を監視し、過熱度が小さくなりすぎた場合には弁開度を小さくすることにより、液バックを抑制する方法が考えられる。しかしながら、このような方法では、液バックを抑制するために弁開度を小さくした際に、庫内温度が一時的に高くなってしまう。
【0007】
本発明の目的は、庫内温度の変化を抑制してより安定して制御しつつ液バックを発生しにくくすることができる冷却庫の制御装置、冷却庫、及び冷却庫の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の冷却庫の制御装置は、凝縮器で凝縮された冷媒を低圧化する膨張弁と、前記冷媒を液体から気体に状態変化させる蒸発器と、該蒸発器の過熱度を検出する過熱度検出手段と、庫内温度を検出する庫内温度検出手段と、を備えた冷却庫において、前記膨張弁の弁開度を制御する冷却庫の制御装置であって、前記弁開度の制御方法を切り換える切換手段と、前記蒸発器の目標過熱度を取得する取得手段と、前記庫内温度が安定状態となったか否かを判断する判断手段と、を備え、前記庫内温度検出手段によって検出した庫内温度に基づいて、前記庫内温度が所定の目標温度となるように前記弁開度を制御する庫内温度制御を実施し、前記庫内温度制御の実施中に、前記庫内温度検出手段によって検出した庫内温度が安定状態となったことを前記判断手段によって判断した後に、当該庫内温度と、前記過熱度検出手段によって検出した過熱度と、の関係に基づいて前記取得手段によって目標過熱度を取得し、その後、前記切換手段によって、前記過熱度が前記目標過熱度となるように前記弁開度を制御する過熱度制御の実施に切り換えることを特徴とする。
【0009】
このような本発明によれば、検出した過熱度に基づく過熱度制御を実施することで、過熱度の変化に迅速に対応することができ、液バックを発生しにくくすることができる。このような過熱度制御において、目標過熱度として、庫内温度制御の実施中に検出した庫内温度と過熱度との関係に基づいて取得した値を用いることで、過熱度に基づく制御であっても、庫内温度を目標温度付近に保ちやすくすることができ、庫内温度の変化を抑制してより安定して制御することができる。尚、目標過熱度は、庫内温度制御における適宜なタイミングで取得すればよい。例えば、後述するように庫内温度が安定状態となった後に目標過熱度を取得してもよいし、庫内温度が安定する前に、庫内温度制御における庫内温度および過熱度の変化パターンに基づき、庫内温度が目標温度付近で安定するような過熱度を推定し、この過熱度を目標過熱度として取得してもよい。
【0010】
この際、本発明の冷却庫の制御装置では、上記のように、前記庫内温度が安定状態となったか否かを判断する判断手段をさらに備え、前記判断手段によって前記庫内温度が安定状態となったことを判断した後に、前記取得手段によって前記目標過熱度を取得する。
【0011】
このような構成によれば、庫内温度が安定状態となったことを判断した後に目標過熱度を取得する。即ち、庫内温度が目標温度付近で安定した後に目標過熱度を取得することで、適切な目標過熱度とすることができる。従って、過熱度制御時に庫内温度を目標温度付近に保ちやすくすることができる。尚、庫内温度が安定状態となったか否かは、例えば所定時間範囲における庫内温度と目標温度との差の最大値が、所定の値よりも小さいか否かに基づいて判定してもよいし、庫内温度制御を開始してからの経過時間に基づいて判定してもよいし、温度差の最大値の評価と経過時間の評価とを組み合わせて判定してもよい。
【0012】
また、本発明の冷却庫の制御装置では、前記取得手段は、前記目標過熱度として、前記判断手段によって前記庫内温度が安定状態となったと判断した時点以前の所定の時間範囲における過熱度に基づく庫内温度安定過熱度を取得することが好ましい。このような構成によれば、所定の時間範囲における過熱度に基づく庫内温度安定過熱度(例えばこの時間範囲における過熱度の平均値)を目標過熱度とすることで、一時点において検出した過熱度を目標過熱度とする構成と比較して、検出誤差の影響を少なくしてより適切な目標過熱度とすることができる。
【0013】
また、本発明の冷却庫の制御装置では、前記取得手段は、前記目標過熱度として、前記判断手段によって前記庫内温度が安定状態となったと判断した時点の過熱度である庫内温度安定過熱度を取得してもよい。このような構成によれば、上記のように所定の時間範囲における過熱度に基づいて目標過熱度を取得する構成と比較して、平均値等を算出する必要がなく、目標過熱度を容易に取得することができる。
【0014】
また、本発明の冷却庫は、凝縮器で凝縮された冷媒を低圧化する膨張弁と、前記冷媒を液体から気体に状態変化させる蒸発器と、該蒸発器の過熱度を検出する過熱度検出手段と、庫内温度を検出する庫内温度検出手段と、上記に記載された冷却庫の制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0015】
このような本発明によれば、上記のように庫内温度の変化を抑制してより安定して制御しつつ液バックを発生しにくくすることができる。
【0016】
また、本発明の冷却庫の制御方法は、凝縮器で凝縮された冷媒を低圧化する膨張弁と、前記冷媒を液体から気体に状態変化させる蒸発器と、該蒸発器の過熱度を検出する過熱度検出手段と、庫内温度を検出する庫内温度検出手段と、を備えた冷却庫において、前記膨張弁の弁開度を制御する冷却庫の制御方法であって、前記庫内温度検出手段によって検出した庫内温度に基づいて、前記庫内温度が所定の目標温度となるように前記弁開度を制御する庫内温度制御を実施し、前記庫内温度制御の実施中に、前記庫内温度検出手段によって検出した庫内温度が安定状態となったか否かを判断するとともに、当該庫内温度が安定状態となったことを判断した後に、当該庫内温度と、前記過熱度検出手段によって検出した過熱度と、の関係に基づいて目標過熱度を取得し、その後、前記過熱度が前記目標過熱度となるように前記弁開度を制御する過熱度制御の実施に切り換えることを特徴とする。
【0017】
このような本発明によれば、上記のように庫内温度の変化を抑制してより安定して制御しつつ液バックを発生しにくくすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の冷却庫の制御装置によれば、庫内温度制御の実施中に検出した庫内温度と過熱度との関係に基づいて目標過熱度を取得した後に、過熱度制御の実施に切り換えることで、庫内温度の変化を抑制してより安定して制御しつつ液バックを発生しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る冷却庫を示す断面図である。
図2】前記冷却庫の制御装置が実行する冷却処理の一例を示すフローチャートである。
図3】前記制御装置が前記冷却処理を実行した際の庫内温度の変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の冷却庫1は、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の店舗に設置されて生鮮食品等の商品を収容しつつ冷蔵又は冷凍するショーケースであって、図1に示すように、ケース本体2と、除霜ヒータ3と、冷凍サイクルの庫内ユニット4と、ファン5と、制御装置6と、過熱度検出手段7と、庫内温度検出手段8と、を備える。
【0021】
ケース本体2は、商品を収容するための収容空間2Aを形成する。ケース本体2は、収容空間2A内に設けられて商品が載置される陳列棚21と、制御装置6を収容する電装ボックス22と、を有する。本実施形態では、電装ボックス22が収容空間2Aの下方側に設けられるものとするが、電装ボックスが収容空間の上方側に設けられてもよい。陳列棚21の下面には、収容空間2Aを照明するための庫内灯が設けられている。
【0022】
庫内ユニット4は、冷媒が流れる配管41と、配管41に設けられる膨張弁42と、蒸発器43と、を有するとともに、屋外の冷凍機に接続される。屋外の冷凍機の凝縮器で凝縮されて液体となった冷媒が、膨張弁42によって低圧化されることで低温となり、このような低温且つ液体の冷媒を、蒸発器43によって気体に状態変化させる。ファン5によって収容空間2Aの空気を蒸発器43に向けて送り込むことにより、この空気が蒸発器43によって冷却される。この空気が再び収容空間2Aに戻ることにより、収容空間2Aが冷却される。蒸発器43を通過した冷媒は、屋外の冷凍機に流れ込み、再び凝縮されて庫内ユニット4に送り込まれる。
【0023】
このような庫内ユニット4において、膨張弁42の弁開度を調節することにより、蒸発器43に流れ込む冷媒の量が増減し、冷却能力が変化する。即ち、弁開度を大きくすることで収容空間2Aがより冷却されて庫内温度が低下し、弁開度を小さくすることで収容空間2Aが冷却されにくくなり庫内温度が上昇する。
【0024】
尚、本実施形態のショーケース1は、冷凍サイクルの圧縮機および凝縮器が外部(屋外等)に設置されたいわゆる別置型ショーケースであるものとしたが、圧縮機および凝縮器が内蔵されたいわゆる内蔵型ショーケースとしてもよい。
【0025】
制御装置6は、過熱度検出手段7および庫内温度検出手段8から信号を受信するとともに、後述するように膨張弁42の弁開度を制御するものであって、取得手段と、切換手段と、判断手段と、を備える。尚、制御装置6は例えばCPU(中央演算処理装置)等の制御部と記憶部とを有し、制御部が取得手段、切換手段、及び判断手段として機能すればよい。また、制御手段6は、膨張弁42だけでなく、例えば除霜ヒータ3やファン5、庫内灯等の他の制御対象も制御するものであってもよい。
【0026】
過熱度検出手段7は、蒸発器43の過熱度を検出するものであって、蒸発器43の入口側における冷媒の温度(蒸発温度)を検出する入口配管温度センサ71と、蒸発器43の出口側における冷媒の温度(戻り配管温度)を検出する出口配管温度センサ72と、によって構成されている。戻り配管温度から蒸発温度を減じることにより、蒸発器43の過熱度が算出される。尚、過熱度検出手段は、冷媒の圧力に基づいて過熱度を検出してもよい。即ち、入口配管温度センサ71に代えて冷媒の圧力を検出する圧力センサを設け、検出した低圧圧力を飽和温度換算した値を蒸発温度として、蒸発器43の過熱度を算出してもよい。過熱度検出手段7は、検出した過熱度を信号として制御装置6に伝える。
【0027】
庫内温度検出手段8は、庫内温度(収容空間2Aの温度)を検出するものであって、ケース本体2における収容空間2Aへの吹き出し口23に設けられて吹き出し温度を検出する吹き出し口温度センサ81と、ケース本体2における収容空間2Aから蒸発器43側への吸い込み口24に設けられて吸い込み温度を検出する吸い込み口温度センサ82と、によって構成される。例えば吹き出し温度と吸い込み温度との平均温度を庫内温度とすればよい。尚、収容空間2Aの形状や大きさに応じて、吹き出し温度と吸い込み温度との一方にオフセットを加えて庫内温度を算出してもよい。また、庫内温度検出手段は、吹き出し口温度センサと吸い込み口温度センサとのいずれか一方のみによって構成されていてもよい。庫内温度検出手段8は、検出した庫内温度を信号として制御装置6に伝える。
【0028】
ここで、制御装置6の制御部によって膨張弁42の弁開度を制御して庫内温度を調節する方法の一例について説明する。尚、以下では制御装置6の制御部が所定のパラメータについてフィードバック制御を行うが、この際、例えばPID制御等の適宜な制御を行えばよい。
【0029】
除霜ヒータ3による除霜後や、庫内温度が室温となっている状態から冷却を開始する場合、制御装置6の制御部は、図2のフローチャートに示すような冷却処理を開始する。冷却処理において、制御装置6の制御部は、まず、所定の時間だけ所定の弁開度で膨張弁42を開放する(ステップS1)。このときの弁開度は、所定値以上であればよく、100%であってもよいし、100%未満であってもよい。所定の時間が経過したら、制御装置6の制御部は、過熱度検出手段7によって検出した過熱度SHに基づいて弁開度を制御する(ステップS2)。即ち、過熱度SHがプルダウン過熱度SH0となるように弁開度を制御する。これにより、蒸発器43を効率よく冷やすようにして庫内温度を急速に低下させる。
【0030】
制御装置6の制御部は、庫内温度検出手段8によって検出した庫内温度Trが目標温度Ts以下となったか否かを判定する(ステップS3)。尚、目標温度Tsは、庫内温度の設定温度であって、予め定められた数値が制御装置6に記憶されていてもよいし、ユーザーが入力してもよい。制御装置6の制御部は、このようなステップS1〜S3においてプルダウン冷却を行う。
【0031】
庫内温度Trが目標温度Ts以下になった場合(ステップS3でY)、制御装置6の制御部は、庫内温度検出手段8によって検出した庫内温度Trに基づいて庫内温度Trが目標温度Tsとなるように弁開度を制御する庫内温度制御を実施する(ステップS4)。一方、庫内温度Trが目標温度Tsよりも高い場合(ステップS3でN)、制御装置6の制御部はステップS2に戻って過熱度に基づく制御を継続し、ステップS3にて再び庫内温度Trについて判定する。
【0032】
制御装置6の制御部は、ステップS4の後、庫内温度Trが安定状態となったか否かを判定する(ステップS5)。即ち、制御装置6の制御部が判断手段として機能する。具体的には、所定時間範囲における庫内温度と目標温度との差の最大値を記憶部に記憶するとともに、この最大値が所定の値よりも小さい場合には庫内温度Trが安定状態となったと判断し、所定の値以下の場合には安定状態となっていないと判断する。尚、庫内温度制御を開始してから所定の時間が経過した場合に庫内温度Trが安定状態となったと判断してもよい。また、所定時間範囲における庫内温度と目標温度との差の最大値が所定の値よりも小さく、且つ、庫内温度制御を開始してから所定の時間が経過した場合に、庫内温度Trが安定状態となったと判断してもよい。
【0033】
庫内温度Trが安定状態となった場合(ステップS5でY)、制御装置6の制御部は、目標過熱度SH1を取得する(ステップS6)。即ち、制御装置6の制御部が取得手段として機能する。このとき、庫内温度Trが安定状態となったと判断した時点以前の所定の時間範囲における過熱度SHの平均値を庫内安定過熱度とし、この庫内安定過熱度を目標過熱度SH1として取得する。尚、庫内温度Trが安定状態となったと判断した時点の過熱度SHを庫内安定過熱度とし、この庫内安定過熱度を目標過熱度SH1として取得してもよい。一方、庫内温度Trが安定状態とならない場合、制御装置6はステップS4に戻って庫内温度制御を継続し、ステップS5にて再び庫内温度Trについて判定する。
【0034】
制御装置6の制御部は、ステップS6の後、過熱度検出手段7によって検出した過熱度SHに基づいて過熱度SHが目標過熱度SH1となるように弁開度を制御する過熱度制御を実施する(ステップS7)。即ち、制御装置6の制御部は弁開度の制御方法を庫内温度制御から過熱度制御に切り換え、切換手段として機能する。
【0035】
制御装置6は、ステップS7の後、目標過熱度SH1の再設定の要否を判定する(ステップS8)。例えば、過熱度制御を開始してから所定の時間が経過した場合や、庫内温度Trと目標温度Tsとの差が所定値以上となった場合に、目標過熱度SH1の再設定が必要であると判定すればよい。目標過熱度SH1の再設定が必要な場合(ステップS8でY)、制御装置6は、ステップS4に戻って庫内温度制御を実施する。一方、目標過熱度SH1の再設定が不要な場合(ステップS8でN)、制御装置6は、ステップS7に戻って過熱度制御を継続し、ステップS8にて再び目標過熱度SH1の再設定について判定する。制御装置6の制御部は、このようなステップS4〜S8において定温冷却を行う。
【0036】
尚、上記の冷却処理では、目標過熱度SH1の再設定のために庫内温度制御を実施するものとしたが、過熱度制御を継続しつつ目標過熱度SH1を補正してもよい。即ち、庫内温度Trが目標温度Tsよりも高い場合には、これらの温度差に応じて目標過熱度SH1を小さくし、庫内温度Trが目標温度Tsよりも低い場合には、これらの温度差に応じて目標過熱度SH1を大きくすればよい。また、庫内温度Trと目標温度Tsとの温度差が第1の閾値よりも大きく、且つ、第2の閾値よりも小さい場合には、過熱度制御を継続しつつ目標過熱度SH1を補正し、庫内温度Trと目標温度Tsとの温度差が第2の閾値よりも大きい場合には、庫内温度制御を実施して目標過熱度SH1を再設定する制御としてもよい。
【0037】
制御装置6が上記のような冷却処理を実行した場合の庫内温度、過熱度および弁開度の時間変化の一例について、図3に基づいて説明する。図3では、本実施形態の制御を実施した場合の各パラメータの変化を実線で示し、従来技術の制御を実施した場合(プルダウン冷却時に過熱度に基づく制御を行った後、庫内温度制御を行った場合)の各パラメータの変化を破線で示す。
【0038】
本実施形態の冷却処理の開始時点(即ちプルダウン冷却開始時)をt0とする。まずは弁開度を100%とし、所定時間が経過したら過熱度制御を開始する。過熱度が下降し始めたら、これに応じて弁開度を小さくしていき、庫内温度Trが目標温度Tsになるまで冷却していく。庫内温度Trが目標温度Tsに等しくなった時点をt1とする。期間t0〜t1がステップS2の制御に対応する。尚、冷却開始時の弁開度は100%でなくてもよく、所定の弁開度以上で弁開させればよい。
【0039】
次に、庫内温度制御を実施し、庫内温度Trが安定状態となるまで待つ。庫内温度Trが安定状態となった時点をt2とする。期間t1〜t2がステップS4の制御に対応する。時点t2以前の所定の時間範囲における過熱度SHの平均値を目標過熱度SH1とする。
【0040】
次に、過熱度制御を実施する。時点t2以降がステップS7に対応する。尚、図3のグラフではステップS8については省略している。
【0041】
本実施形態の制御では、時点t2以降において過熱度制御を実施していることから、何らかの要因によって過熱度SHが変化しようとしても、弁開度を調節することによって過熱度SHが略一定に保たれる。また、目標過熱度SH1は目標温度Tsに対応したものであることから、過熱度SHが目標過熱度SH1となるように弁開度を制御することにより、庫内温度Trが目標温度Ts付近に保たれる。
【0042】
従来技術の制御では、本実施形態の制御と同様に、期間t0〜t1において過熱度SHに基づく制御を実施するとともに、期間t1〜t2において庫内温度制御を実施するが、時点t2以降においては、本実施形態の制御と異なり、庫内温度制御を継続する。
【0043】
このような従来技術の制御において、時点t3から過熱度SHが低下し始めたとする。過熱度SHが低下し始めてから庫内温度Trが低下を始めようとする(時点t4)までにはタイムラグがある。庫内温度制御を実施していることから、庫内温度Trを一定に保つために、時点t4から弁開度を小さくしていく。このように弁開度を小さくしていくと、過熱度SHが上昇していき、目標過熱度SH1に対応した値を超える(時点t5)。時点t5から遅れて庫内温度Trが上昇しようとし、これを防ぐために弁開度を大きくしていくものの、庫内温度Trの上昇を防ぎきれないことがある。
【0044】
過熱度SHの変化に遅れて庫内温度Trが変化するため、庫内温度に基づく制御を実施すると、庫内温度Trが安定するまで弁開度の増減を繰り返す必要がある。また、庫内温度に基づく制御では、庫内温度Trよりも先に変化する過熱度を一定に保つことが困難である。
【0045】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。即ち、過熱度検出手段7によって検出した過熱度SHに基づく過熱度制御を実施することで、過熱度SHの変化に迅速に対応することができ、液バックを発生しにくくすることができる。このような過熱度制御において、庫内温度制御の実施中に検出した庫内温度Trおよび過熱度SHに基づいて取得した目標過熱度SH1を用いることで、過熱度SHに基づく制御であっても、庫内温度Trを目標温度Ts付近に保ちやすくすることができ、庫内温度Trの変化を抑制することができる。
【0046】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0047】
例えば、前記実施形態では、庫内温度Trが安定状態となった後に目標過熱度SH1を取得するものとしたが、目標過熱度SH1は検出した庫内温度Trと過熱度SHとの関係に基づいて取得すればよく、庫内温度Trが安定状態となる前に目標過熱度SH1を取得してもよい。例えば、庫内温度制御の実施中における庫内温度Trおよび過熱度SHの時間変化パターンに基づき、庫内温度Trが目標温度Ts付近で安定するような過熱度SHを推定し、この過熱度SHを目標過熱度SH1として取得してもよい。
【0048】
また、前記実施形態では、目標過熱度SH1の再設定が必要か否かについて、過熱度制御を開始してからの経過時間や、庫内温度Trと目標温度Tsとの差に基づいて判断することを例示したが、冷却庫の設定が変更された場合に目標過熱度SH1を再設定するようにしてもよい。冷却庫は、例えば季節設定やデマンドコントロール、省エネ等の各種の目的に応じて冷媒の低圧圧力の設定値が変更される場合があり、このとき、蒸発温度が変化し、庫内温度Trが安定状態となる過熱度(庫内安定過熱度)が変化する。
【0049】
このような場合、入口配管温度センサ71や圧力センサを用いて蒸発温度を検出することにより、冷却庫の設定が変更されたか否かを判定することができる。過熱度制御を開始してからの経過時間や、庫内温度Trと目標温度Tsとの差に関わらず、冷却庫の設定が変更されたと判断した場合に目標過熱度SH1を再設定すれば、冷却庫の設定の変更に迅速に対応することができ、応答性を向上させることができる。
【0050】
また、冷却庫の設定が変更されて目標過熱度SH1を再設定する際、実際に庫内温度Trが安定状態となるのを待たずに、過去の履歴に基づいて再設定してもよい。即ち、実際に庫内温度Trが安定状態となった際の庫内安定過熱度と、そのときの蒸発温度と、の関係を記憶しておき、冷却庫の設定が変更されて蒸発温度が変化した場合に、変化後の蒸発温度に対応した庫内安定過熱度を読み出してこれを目標過熱度SH1としてもよい。このように、実際に庫内温度Trが安定状態となるのを待たずに目標過熱度SH1を再設定すれば、冷却庫の設定の変更に速やかに対応することができる。
【0051】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、制御方法及び手順、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した制御方法及び手順などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの制御方法及び手順などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
1 ショーケース(冷却庫)
42 膨張弁
43 蒸発器
6 制御装置
7 過熱度検出手段
8 庫内温度検出手段
図1
図2
図3