(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ドアガラスの縁部に沿って延びるように形成されたドアフレーム部に取り付けられ、上記ドアガラスと上記ドアフレーム部との間をシールする弾性材からなる車両用ドアのグラスランにおいて、
上記グラスランは、上記ドアフレーム部に取り付けられるグラスラン本体部と、該グラスラン本体部の車室内側から上記ドアガラスの車室内面に向けて延び、先端側が該ドアガラスの車室内面に接触するように形成された車室内側シールリップ部とを備え、
上記車室内側シールリップ部の基端側は上記ドアガラスの車室内面から車室内側へ離れるように形成され、上記車室内側シールリップ部の基端側と上記ドアガラスの車室内面との間には、空間が形成され、
上記車室内側シールリップ部における上記ドアガラスの車室内面と対向する対向面には、上記ドアガラスを透過して車室内に入った騒音を吸音する吸音部が形成されていることを特徴とする車両用ドアのグラスラン。
ドアガラスの縁部に沿って延びるように形成されたドアフレーム部に取り付けられ、上記ドアガラスと上記ドアフレーム部との間をシールする弾性材からなる車両用ドアのグラスランにおいて、
上記グラスランは、上記ドアフレーム部に取り付けられるグラスラン本体部と、該グラスラン本体部の車室内側から上記ドアガラスの車室内面に向けて延び、先端側が該ドアガラスの車室内面に接触するように形成された車室内側シールリップ部とを備え、
上記グラスランにおける車室内側壁部の少なくとも端部或いは端部近傍には、遮音壁が設けられ、
上記遮音壁における車室に臨む部分には、上記ドアガラスを透過して車室内に入った騒音を吸音する吸音部が設けられていることを特徴とする車両用ドアのグラスラン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車室外の騒音はドアガラスを透過して車室内に入ってくる。近年、例えばエンジンや駆動系の騒音低減及び内装材による遮音性の向上等により、ドアガラスを透過して車室内に入る騒音が問題になるケースが多くなってきた。そして、殆どの車両で乗員の頭がドアガラスの車室内面に近いところに位置しているとともに、耳がドアガラスの車室内面に向いているので、ドアガラスを透過して入ってきた騒音が乗員の耳に届きやすい状況にあり、上述した問題は顕著に現れている。
【0005】
また、グラスランの車室内側シールリップ部の先端側がドアガラスの車室内面に接触した状態では、車室内側シールリップ部の基端側はドアガラスの車室内面から離れた状態となっており、車室内側シールリップ部の基端側とドアガラスの車室内面との間には、狭い空間が形成されることになる。この空間には、ドアガラスを透過した騒音が入ることになる。このとき、入ってくるのは様々な方向から向かってくる「騒音」であることから、ドアガラスへの音の入射方向は様々な方向であり、そのうち、ドアガラスを透過した騒音が車室内側シールリップ部の基端側の面に向かう方向となる場合がある。車室内側シールリップ部の基端側の面に向かう方向に進んだ音は、該基端側の面で反射してドアガラスの車室内面に向かって進み、一部はドアガラスを透過して再び車室外へ出て行き、その他はドアガラスの車室内面で反射した後、さらに車室内側シールリップ部の基端側の面で反射する。このような反射の繰り返しにより、上記空間内で騒音が増幅(反射増幅)されて乗員の耳に届きやすくなる懸念があることが、本願発明者の研究によって見出された。
【0006】
この騒音の問題を解決するためには、例えばドアガラスを2重構造にしたり、遮音性の高いフィルムをドアガラスに挟み込んで騒音の透過を根本的に低減する方法があるが、このような方法では重量増やコスト増を招く結果となり、好ましくない。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、重量増やコスト増を抑制しながら、ドアガラスを透過した騒音が乗員の耳に届きにくくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の発明は、
ドアガラスの縁部に沿って延びるように形成されたドアフレーム部に取り付けられ、上記ドアガラスと上記ドアフレーム部との間をシールする弾性材からなる車両用ドアのグラスランにおいて、
上記グラスランは、上記ドアフレーム部に取り付けられるグラスラン本体部と、該グラスラン本体部の車室内側から上記ドアガラスの車室内面に向けて延び、先端側が該ドアガラスの車室内面に接触するように形成された車室内側シールリップ部とを備え、
上記車室内側シールリップ部の基端側は上記ドアガラスの車室内面から車室内側へ離れるように形成され、上記車室内側シールリップ部の基端側と上記ドアガラスの車室内面との間には、空間が形成され、
上記車室内側シールリップ部における上記ドアガラスの車室内面と対向する対向面には、上記ドアガラスを透過して車室内に入った騒音を吸音する吸音部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、グラスランの車室内側シールリップ部の先端側がドアガラスの車室内面に接触することによってドアガラスとドアフレーム部との間がシールされる。このシール状態では、車室内側シールリップ部の基端側がドアガラスの車室内面から車室内側へ離れており、車室内側シールリップ部の基端側とドアガラスの車室内面との間に空間が形成されることになる。ドアガラスを透過して車室内に入ってきた騒音は、上記空間を通って車室内側シールリップ部におけるドアガラスの車室内面と対向する対向面に達する成分を含んでいる。この対向面には吸音部が形成されているので、対向面に達した騒音は吸音部によって吸音される。これにより、騒音が上記空間内で反射増幅されにくくなる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、
上記車室内側シールリップ部の上記対向面と、上記ドアガラスの車室内面とのなす角度が35度以上65度以下に設定されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、車室内側シールリップ部の基端側におけるドアガラスの車室内面と対向する対向面と、ドアガラスの車室内面とのなす角度が35度以上であることから、ドアガラスを透過して上記空間に入った騒音は、該空間内で反射する回数が減ることで増幅されにくくなる。また、ドアガラスの車室内面と対向する対向面と、ドアガラスの車室内面とのなす角度が65度以下であることから、車室内側シールリップ部の基端側で反射され、ドアガラスを透過して再び車室外へ出て行く音の減少を抑えることができる。つまり、上述した角度設定と吸音部の形成との相乗的な騒音低減効果によって乗員の耳に届く騒音の音圧がより一層小さくなる。
【0012】
加えて、ドアガラスの車室内面と対向する対向面と、ドアガラスの車室内面とのなす角度が35度以上であることから、ドアガラスを斜めに透過して該対向面に入射する音成分そのものが減るため、いわゆるコインシデンス効果によってドアガラスの透過損失が高くなり、このことによっても乗員の耳に届く騒音の音圧が小さくなる。
【0013】
第3の発明は、第1の発明において、
上記車室内側シールリップ部の上記対向面は、上記ドアガラスの車室内面へ向けて湾曲する湾曲面で構成され、
上記車室内側シールリップ部をその先端側から基端側に亘って切断した切断面に現れる上記湾曲面を示す曲線を構成している各点における当該曲線の接線をそれぞれ引き、これら接線と上記ドアガラスの車室内面とのなす角度を求めて角度範囲を得たとき、該角度範囲の中央値となる角度が35度以上65度以下に設定されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、車室内側シールリップ部の基端側におけるドアガラスの車室内面と対向する対向面が湾曲面である場合に、第2の発明と同様に吸音部との相乗的な作用効果が得られる。
【0015】
第4の発明は、第1から3のいずれか1つの発明において、
上記車室内側シールリップ部は、昇降時の上記ドアガラスに摺接するガラス接触面を有し、
上記吸音部の形成範囲は、上記ガラス接触面を含まないように設定されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、吸音部が車室内側シールリップ部のガラス接触面には形成されないので、吸音部にドアガラスが摺接することによる吸音部の損傷や摩耗が回避される。従って、吸音部による吸音効果が長期間に亘って高く維持される。
【0017】
また、吸音部を凹凸面や植毛部によって形成することが考えられるが、この発明では凹凸面や植毛部にドアガラスが摺接しないので、異音の発生が抑制される。
【0018】
第5の発明は、ドアガラスの縁部に沿って延びるように形成されたドアフレーム部に取り付けられ、上記ドアガラスと上記ドアフレーム部との間をシールする弾性材からなる車両用ドアのグラスランにおいて、
上記グラスランは、上記ドアフレーム部に取り付けられるグラスラン本体部と、該グラスラン本体部の車室内側から上記ドアガラスの車室内面に向けて延び、先端側が該ドアガラスの車室内面に接触するように形成された車室内側シールリップ部とを備え、
上記グラスランにおける車室内側壁部の少なくとも端部或いは端部近傍には、遮音壁が設けられ、
上記遮音壁における車室に臨む部分には、上記ドアガラスを透過して車室内に入った騒音を吸音する吸音部が設けられていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、グラスランの車室内側シールリップ部の先端側がドアガラスの車室内面に接触することによってドアガラスとドアフレーム部との間がシールされる。このシール状態では、遮音壁が設けられているので、ドアガラスを透過し車室内側シールリップ部の基端側とドアガラスの車室内面との間の狭い空間内で反射増幅されて車内側へ放出される騒音が遮蔽されて乗員へ届きにくくなる。
【0020】
また、ドアガラスを透過して車室内に入ってきた騒音は、遮音壁における車室に臨む部分に達する成分を含んでいる。この遮音壁における車室に臨む部分には吸音部が形成されているので、遮音壁に達した騒音は吸音部によって吸音される。
【0021】
第6の発明は、第5の発明において、
上記遮音壁と上記ドアガラスの車室内面との間には、隙間が設けられていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、遮音壁とドアガラスの車室内面との間に隙間があることで、遮音壁の吸音部がドアガラスの車室内面に接触することはない。これにより、吸音部にドアガラスが摺接することによる吸音部の損傷や摩耗が回避される。従って、吸音部による吸音効果が長期間に亘って高く維持される。また、遮音壁がドアガラスに接触している場合には、その遮音壁の接触部位によってドアガラスの振動状態が変わり、このことが透過音の音圧レベルに影響を与え、ある周波数帯で透過音の音圧レベルが大きくなってしまうことが考えられるが、本発明ではそのようなことを防ぐことができる。
【0023】
更に、吸音部を凹凸面や植毛部によって形成することが考えられるが、この発明では凹凸面や植毛部にドアガラスが摺接しないので、異音の発生が抑制される。
【発明の効果】
【0024】
第1の発明によれば、車室内側シールリップ部におけるドアガラスの車室内面と対向する対向面に吸音部を形成したので、ドアガラスを透過して車室内に入ってきた騒音のうち、上記対向面に達した騒音を吸音部によって吸音することができる。これにより、騒音が上記空間内で反射増幅されにくくなる。したがって、グラスランの車室内側シールリップ部に吸音部を形成するという簡単な構成で、重量増やコスト増を抑制しながら、乗員の耳に届く騒音の音圧を小さくすることができる。
【0025】
第2の発明によれば、車室内側シールリップ部の対向面と、ドアガラスの車室内面とのなす角度を35度以上65度以下に設定することで、対向面への吸音部の形成との相乗的な騒音低減効果によって乗員の耳に届く騒音の音圧をより一層小さくすることができ、車室の静粛性を高めることができる。
【0026】
第3の発明によれば、車室内側シールリップ部の対向面がドアガラスの車室内面へ向けて湾曲する湾曲面で構成されている場合に、乗員の耳に届く騒音の音圧をより一層小さくすることができ、車室の静粛性を高めることができる。
【0027】
第4の発明によれば、車室内側シールリップ部におけるガラス接触面に吸音部を形成しないので、吸音部の損傷や摩耗を回避することができ、吸音部による吸音効果を長期間に亘って高く維持することができる。また、吸音部を凹凸面や植毛部によって形成する場合に異音の発生を抑制できる。
【0028】
第5の発明によれば、グラスランにおける車室内側壁部の少なくとも端部或いは端部近傍に設けた遮音壁によって、車室内側シールリップ部の基端側とドアガラスの車室内面との間の狭い空間内で反射増幅されて車内側へ放出される騒音が遮蔽され、更に遮音壁における車室に臨む部分に吸音部を形成したので、簡単な構成で、重量増やコスト増を抑制しながら、乗員の耳に届く騒音の音圧を小さくすることができる。
【0029】
第6の発明によれば、遮音壁の吸音部がドアガラスに摺接しないので、吸音部の損傷や摩耗を回避することができ、吸音部による吸音効果を長期間に亘って高く維持することができる。また、吸音部を凹凸面や植毛部によって形成する場合に異音の発生を抑制できる。更に、遮音壁がドアガラスに接触している場合には、その遮音壁の接触部位によってドアガラスの振動状態が変わり、このことが透過音の音圧レベルに影響を与え、ある周波数帯で透過音の音圧レベルが大きくなってしまうことが考えられるが、本発明ではそのようなことを防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0032】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態に係るグラスラン23、33を備えた自動車1の左側面図である。この自動車1は、側部にフロントドア2とリヤドア3とを備えているが、本発明は、リヤドア3の無い自動車にも適用することができる。また、本発明は、自動車以外にも車室外の騒音が車室内に入ってくる可能性のある各種車両に適用することができるが、特に乗用自動車に適用するのが好ましい。尚、この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」というものとする。
【0033】
(フロントドア及びリヤドアの構成)
フロントドア2は、該フロントドア2の略下半部を構成するドア本体部20と、該フロントドア2の略上半部を構成するドアフレーム部21と、フロントドアガラス22と、フロントドア用グラスラン23(
図2にも示す)とを備えている。ドア本体部20は、アウタパネル20aとインナパネル(図示せず)とによって中空状に形成されており、その前端部が図示しないヒンジを介して自動車1のAピラー(前ピラー)5に取り付けられている。
【0034】
このドア本体部20には、図示しないがウインドレギュレータが配設されており、ウインドレギュレータによってフロントドアガラス22が昇降可能になっている。下降位置にあるフロントドアガラス22はドア本体部20の中空部に収容される一方、上昇位置にあるフロントドアガラス22は、その縁部がフロントドア用グラスラン23を介してドアフレーム部21に支持される。ドアフレーム部21は、ドア本体部20の上部から上方へ突出するように設けられ、フロントドアガラス22の縁部に沿って延びるように形成されており、フレーム上辺部21aと、フレーム縦辺部21bとを有している。フレーム上辺部21aは、フロントドアガラス22の上縁部に沿って後側へ行くほど上に位置するように全体として湾曲形成されている。このフレーム上辺部21aは、側面視で自動車のルーフ4の前半部に沿うように延びている。また、フレーム縦辺部21bは、フロントドアガラス22の後縁部に沿って上下方向に延びている。
【0035】
リヤドア3は、基本的な構造がフロントドア2と同様であり、アウタパネル30aとインナパネル(図示せず)とによって構成されたドア本体部30と、ドアフレーム部31と、昇降可能なリヤドアガラス32と、リヤドア用グラスラン33(
図3にも示す)とを備えている。ドア本体部30が図示しないヒンジを介して自動車1のBピラー(中央ピラー)6に取り付けられている。上昇位置にあるリヤドアガラス32は、その縁部がリヤドア用グラスラン33を介してドアフレーム部31に支持される。ドアフレーム部31は、リヤドアガラス32の縁部に沿って延びるように形成されており、前側フレーム縦辺部31a、フレーム上辺部31bと、後側フレーム縦辺部31cとを有している。前側フレーム縦辺部31aは、リヤドアガラス32の前縁部に沿って延びている。フレーム上辺部31bは、リヤドアガラス32の上縁部に沿って延びている。このフレーム上辺部31bは、側面視で自動車のルーフ4の後半部に沿うように延びている。また、後側フレーム縦辺部31cは、リヤドアガラス32の後縁部に沿って延びている。
【0036】
フロントドア2やリヤドア3は、車両前後方向にスライドするスライドドアであってもよい。
【0037】
(ドアフレーム部の構成)
フロントドア2のドアフレーム部21と、リヤドア3のドアフレーム部31とは、外観形状は異なっているが、基本的な構造は同じであるため、以下、フロントドア2のドアフレーム部21について詳細に説明する。
【0038】
図4に示すように、ドアフレーム部21は金属製の板材を成型してなるものであり、例えば1枚の板材をロール成型することによって得ることや、複数のプレス成型された板材を組み合わせて得ることができ、いずれの方法で構成されたものであってもよい。ドアフレーム部21のフレーム上辺部21aは、全体として下方に開放する略コ字状に近い断面形状を有しており、底板部24と、底板部24の車室内側の端部から下方へ延びる車室内側板部25と、底板部24の車室外側の端部から下方へ延びる車室外側板部26とを有している。車室内側板部25における底板部24側の端部には、車室内側へ窪むように形成された窪み部25aが形成されている。また、車室内側板部25における窪み部25aよりも下側には、車室内側へ膨出する膨出部25bが形成されている。膨出部25bの方が窪み部25aよりも大きく形成されている。また、車室外側板部26の先端部には、車室内側へ突出する凸部26aが形成されている。
【0039】
図示しないが、ドアフレーム部21のフレーム縦辺部21bは、前方に開放する略コ字状に近い断面形状を有しており、フレーム上辺部21aと同様に、底板部、車室内側板部及び車室外側板部を備えている。
【0040】
(グラスランの構成)
図1及び
図2に示すように、フロントドア用グラスラン23は、ドアフレーム部21のフレーム上辺部21aに沿うように、即ち、自動車1のルーフ4の前半部に沿って前後方向に延びる上部グラスラン23Aと、自動車のAピラー5に沿って上下方向に延びる前側縦方向グラスラン23Bと、自動車のBピラー6に沿って上下方向に延びる後側縦方向グラスラン23Cと、上部グラスラン23Aと前側縦方向グラスラン23Bとの境界部分において屈曲した前側コーナー部グラスラン23Dと、上部グラスラン23Aと後側縦方向グラスラン23Cとの境界部分において屈曲した後側コーナー部グラスラン23Eとを有している。すなわち、境界線L1よりも下側部分が前側縦方向グラスラン23Bである。境界線L1と境界線L3との間の部分が前側コーナー部グラスラン23Dである。境界線L3と境界線L4との間の部分が上部グラスラン23Aである。境界線L4と境界線L6との間の部分が後側コーナー部グラスラン23Eである。境界線L6よりも下側部分が後側縦方向グラスラン23Cである。
【0041】
上部グラスラン23A、前側縦方向グラスラン23B、後側縦方向グラスラン23C、前側コーナー部グラスラン23D及び後側コーナー部グラスラン23Eは、例えばスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等の熱可塑性エラストマーや、各種ゴム等のように、ドアガラス22とドアフレーム部21との間をシールすることができる弾性材からなり、弾性材を一体成形することによって得られたものである。尚、弾性材は、発泡材であってもよいし、非発泡のソリッド材あるいは微発泡ソリッド材であってもよいが、後述するように、変形を抑制したい部分のみソリッド材或いは微発泡ソリッド材とするのが好ましい。
【0042】
図4に示すように、上部グラスラン23Aは、ドアフレーム部21のフレーム上辺部21aの内部に挿入された状態で取り付けられるグラスラン本体部40と、車室内側シールリップ部41と、車室外側シールリップ部45とを有している。車室外側シールリップ部45は、フロントドアガラス22の車室外面22aに接触するようになっている。
【0043】
グラスラン本体部40は、底壁部42と、車室内側壁部43と、車室外側壁部44とを有しており、下方に開放する略コ字状に近い断面形状となっている。底壁部42の上面には、上方へ突出する凸部42a、42aが車幅方向に互いに間隔をあけて形成されている。凸部42a、42aは、フレーム上辺部21aの底板部24に当接するようになっている。
【0044】
車室外側壁部44には、車室外側シールリップ部45が設けられている。車室外側シールリップ部45は、車室外側壁部44の端部から上方へ延びるように形成されている。また、車室外側壁部44には、ドアフレーム部21のフレーム上辺部21aの車室外側板部26を下方から覆うように形成されたカバー部47が設けられている。
【0045】
車室内側壁部43の車室内側の面には、その上端部に車室内側へ突出する小片43aが形成されている。この小片43aは、車室内側板部25の窪み部25aに入り込んでおり、該窪み部25aの内面に当接して係合するようになっている。
【0046】
車室内側壁部43の車室内側の面には、小片43aの形成箇所よりも下側に、車室内側へ突出する突出部43bが形成されている。この突出部43bは、車室内側板部25の膨出部25bに入り込んでおり、該膨出部25bの内面に当接して係合するようになっている。
【0047】
車室内側壁部43の下端部に、車室内側シールリップ部41が一体成形されている。車室内側シールリップ部41は、車室内側壁部43の下端部からフロントドアガラス22の車室内面22bに向けて延び、先端側がフロントドアガラス22の車室内面22bに接触するように形成されている。すなわち、フロントドアガラス22が下降している状態では、
図4に仮想線で一部を示すように、車室内側シールリップ部41は、車室内側壁部43の下端部から斜め上方へ向けて突出するようになっている。そして、車室内側シールリップ部41の突出方向中間部には、車室内側シールリップ部41の屈曲変形を容易にするために凹状部41aが形成されている。この凹状部41aの形成部位は他の部位に比べて薄肉部となり、凹状部41aの形成部位を境界とし、凹状部41aの形成部位よりも車室内側シールリップ部41の基端側が基端側部41bとされ、先端側が先端側部41cとされる。
【0048】
フロントドアガラス22が上昇位置にある状態(全閉状態)では、車室内側シールリップ部41の先端側部41cの車室外面がフロントドアガラス22の車室内面22bに接触する。つまり、車室内側シールリップ部41の先端側部41cの車室外面は、昇降時のフロントドアガラス22に摺接するガラス接触面41eである。ガラス接触面41eは、昇降時のフロントドアガラス22との摩擦抵抗を減らすために比較的硬質な表面処理が行われた面であり、しかも凹凸のない平滑な面で構成されているので、音が反射し易くなっている。
【0049】
また、フロントドアガラス22が上昇位置にある状態では、車室内側シールリップ部41の基端側部41bの車室外面は、フロントドアガラス22の車室内面22bに対向するように位置する対向面41dとなっている。この車室内側シールリップ部41の基端側部41bの対向面41dは、フロントドアガラス22を透過して車室内に入ってきた騒音(透過音)が入射する面であり、フロントドアガラス22の車室内面22bから所定寸法だけ離れている。これにより、車室内側シールリップ部41の基端側部41bとフロントドアガラス22の車室内面22bとの間には空間Rが形成されている。対向面41dは、下側へ行くほどフロントドアガラス22の車室内面22bからの離間距離が長くなるように全体として傾斜しており、従って、空間Rの車室内外方向の寸法は下側へ行くほど長くなる。
【0050】
この実施形態では、車室内側シールリップ部41の基端側部41bの対向面41dと、フロントドアガラス22の車室内面22bとのなす角度αは、35度以上65度以下に設定されている。角度αは、車室内側シールリップ部41の基端側部41bを押出成形する口金、或いは型成形する金型の形状設定によって容易に変更することが可能であり、角度αの設定に要するコストは僅かなものであるとともに、重量の増加も殆どない。
【0051】
対向面41dは、厳密に平坦である必要はなく、例えば極めて緩い曲率で湾曲していても平坦に近似できる形状であればよい。
【0052】
対向面41dには、フロントドアガラス22を透過して車室内に入った騒音を吸音する吸音部41hが形成されている。
図4中、細かい波線部が吸音部41hの形成範囲を示している。吸音部41hは、ガラス接触面41eに比べて騒音の反射度合いが少なく、ガラス接触面41eよりも騒音の吸音度合いが大きい部分であり、騒音を減衰させることができる部分となっている。
【0053】
具体的には、吸音部41hは、例えば
図7に拡大して示すように、対向面41dから突出する複数の凸部41h、41h、…で構成することができる。凸部41hは、突出方向先端側へ向かって尖った形状とされている。また、隣合う凸部41h、41hの間には隙間を形成するのが好ましく、
図7に示す形態では奥行き方向に隣合う凸部41h、41hの基端部の間には隙間が形成されているが、左右方向に隣合う凸部41h、41hの基端部の間には隙間が形成されていない。尚、
図7における左右方向と奥行き方向は説明の便宜を図るために付したものであり、車両の各方向とは関係していない。
【0054】
凸部41hの形状は
図7に示す形状に限られるものではなく、例えば、柱状や角錐状、円錐状、板状、ピン状等であってもよい。単位面積当たりの凸部41hの数(密度)は任意に設定することができる。つまり、車室に入った騒音の吸音効果が高くなるように、凸部41hの形状及び密度を設定すればよい。また、凸部41hの形状及び密度を変更することで、乗員が感じ取り易い周波数帯の騒音を積極的に吸収させることもできる。また、凸部41hの形状は、対向面41dの部位によって変えることもできる。さらに、凸部41hの密度も対向面41dの部位によって変えることができる。例えば、対向面41dの下側に形成する凸部41hの密度を上側よりも高くしたり、対向面41dの下側に形成する凸部41hの高さを上側よりも高くすることができる。
【0055】
また、図示しないが、吸音部41hは、例えば凹部で構成することもできる。凹部は、例えばディンプル状や溝状にすることができる。また、吸音部41hは、シボで構成することもできる。シボとする場合には、深さを均一にしてもよいし、不均一にしてもよい。
【0056】
対向面41dに対して切削加工することで凸部41hや凹部を形成してもよいし、対向面41dに対してレーザー光を照射して一部を焼くことで凸部41hや凹部を形成してもよい。対向面41dにレーザー光を照射する場合には、レーザー光の走査速度や出力を調整することで凸部41hの高さや凹部の深さを自由に変更することができるとともに、凸部41hや凹部の形成パターンも変更できる。
【0057】
また、吸音部41hの構成としては、例えば
図9に示すような凹凸面であってもよい。この例では、車室内側シールリップ部41の基端側部41bを発泡材で構成しており、発泡材に含まれる気泡の形状が表面(対向面)に現れるようにすることで、凹凸面からなる吸音部41hを得ている。気泡の大きさ及び気泡の密度は、発泡剤の選定や発泡条件の変更等、周知の方法によって調整することが可能であり、気泡の大きさ及び気泡の密度を調整することで凹部の深さ及び凸部の高さを自由に設定できる。
【0058】
また、図示しないが、車室内側シールリップ部41の基端側部41bを発泡材で構成するものにおいて、発泡材に含まれる気泡を対向面41dに開口させ、この気泡を吸音部41hとしてもよい。
【0059】
また、吸音部41hは、多数の毛を植え込むことによって構成された植毛部であってもよい。植毛部は、多数の毛が植え込まれた植毛テープであってもよい。また、吸音部41hは、例えば布等の繊維からなるものであってもよい。
【0060】
さらに、吸音部41hは、上述した凸部、凹部、凹凸面、植毛部、繊維、気泡のうち、任意の2種以上を組み合わせて構成したものであってもよい。このような吸音部41hを形成するにあたり重量の増加は殆どない。
【0061】
この実施形態では、
図4に波線部で示すように吸音部41hの形成範囲は対向面41dのみとしており、車室内側シールリップ部41の先端側部41cのガラス接触面41eを含まないように設定されている。これにより、ガラス接触面41eには吸音部41hが形成されないので、フロントドアガラス22の車室内面22bには吸音部41hが接触しなくなる。尚、吸音部41hの形成範囲はガラス接触面41eを含むように設定してもよいが、フロントドアガラス22との摩擦抵抗を低減するためにガラス接触面41eは平滑面が好ましい。
【0062】
また、車室内側壁部43の車室内側シールリップ部41よりも下側には、ドアフレーム部21のフレーム上辺部21aの車室内側板部25に当接する当接部43cが形成されている。従って、車室内側壁部43は、少なくとも突出部43bと当接部43cの2箇所が車室内側板部25に当接して支持されることになるので、フレーム上辺部21aへの取り付け状態で安定する。特に、突出部43bと当接部43cの間の部分を安定させることができ、この安定した部分に車室内側シールリップ部41の基端側部41bが設けられているので、この基端側部41bも安定させることができ、ひいては、外力が作用した際に上記角度αの変動幅を小さくすることができる。
【0063】
また、車室内側シールリップ部41の基端側部41bには厚肉部41fが設けられており、厚肉部41fが車室内側壁部43と一体化している。これにより、車室内側シールリップ部41の先端側部41cの変形量を大きく確保しながら、基端側部41bの変形を抑制することができるので、外力が作用した際に上記角度αの変動幅を小さくすることができる。
【0064】
尚、車室内側シールリップ部41の基端側部41b及び厚肉部41fについては、吸音部41hを気泡で構成する場合はそれ以外の部位を、気泡の無いソリッド材、或いは微発泡ソリッド材で構成することが好ましい。また、車室内側壁部43における厚肉部41fよりも下側については、吸音部41hを気泡で構成する場合はそれ以外の部位を、ソリッド材、或いは微発泡ソリッド材で構成することが好ましい。これにより、外力が作用した際に上記角度αの変動幅を小さくすることができる。他の部分は発泡材で構成するのが好ましく、これにより、軽量化を図ることができる。
【0065】
車室内側シールリップ部41の基端側部41bの対向面41dと、フロントドアガラス22の車室内面22bとのなす角度αを上記のように設定しているのは、上部グラスラン23Aだけとして、前側縦方向グラスラン23B、後側縦方向グラスラン23C、前側コーナー部グラスラン23D及び後側コーナー部グラスラン23Eについては角度αを上記範囲外の角度としてもよい。また、
図2に示すように、前側コーナー部グラスラン23D及び後側コーナー部グラスラン23Eの上部側において、上部グラスラン23Aとの境界部分から車室内側シールリップ部41の屈曲が開始する部分、即ち境界線L2と境界線L3との間の部分及び、境界線L4と境界線L5との間の部分をそれぞれ符号23F、符号23Gで示した時、車室内側シールリップ部41の基端側部41bの対向面41dと、フロントドアガラス22の車室内面22bとのなす角度αを上記のように設定しているのは、上部グラスラン23A、前側コーナー部グラスラン上部23F及び後側コーナー部グラスラン上部23Gだけとし、前側縦方向グラスラン23B及び後側縦方向グラスラン23C、更には前側コーナー部グラスラン23D及び後側コーナー部グラスラン23Eの上記符号23F及び23Gで示す部分以外の部分については角度αを上記範囲外の角度としてもよい。
【0066】
また、
図5に示す変形例のように、車室内側シールリップ部41の基端側部41bにおけるフロントドアガラス22の車室内面22aと対向する対向面が該車室内面22aへ向けて湾曲する湾曲面41gで構成されていてもよい。この湾曲面41gの曲率は大きく設定されており、湾曲面41gは平面に近い形状となっている。湾曲面41gには、上記吸音部41hが形成されている。
【0067】
変形例では、車室内側シールリップ部41をその先端側から基端側に亘って切断した切断面(
図5の切断面)を見たとき、
図5の下部に拡大して示すように、湾曲面41gを示す曲線が現れることになる。この曲線を構成している各点(A、B、C、…)における当該曲線の接線(a、b、c、…)を同図に示すように引く。図には便宜上、3本しか引いていないが、点の間隔を狭めることによって多数引くことができる。そして、接線cとフロントドアガラス22の車室内面22aとのなす角度をβ1、接線bとフロントドアガラス22の車室内面22aとのなす角度をβ2、接線aとフロントドアガラス22の車室内面22aとのなす角度をβ3とし、β1、β2、β3が含まれる範囲(角度範囲)を得る。この角度範囲の中央値となる角度が35度以上65度以下に設定されている。吸音部41hの形成範囲は、細かい波線部で示す範囲としているが、ガラス接触面41eを含むように設定してもよい。
【0068】
図3に示すように、リヤドア用グラスラン33もフロントドア用グラスラン23と同様に構成されている。境界線L1よりも下側部分が前側縦方向グラスラン33Bである。境界線L1と境界線L3との間の部分が前側コーナー部グラスラン33Dである。境界線L3と境界線L4との間の部分が上部グラスラン33Aである。境界線L4と境界線L6との間の部分が後側コーナー部グラスラン33Eである。境界線L6よりも下側部分が後側縦方向グラスラン33Cである。前側コーナー部グラスラン上部を符号33Fで示し、後側コーナー部グラスラン上部を符号33Gで示す。
【0069】
(実施形態の作用効果)
次に、実施形態1の作用効果について説明する。作用効果を実証するための試験を行い、その試験結果を
図6及び
図8に示す。試験は、図示しないが自動車1の車室外に全方位スピーカーを設置し、フロントドアガラス22及びリヤドアガラス32を全閉にした状態で、該スピーカーから音を発生させ、車室内に設置したマイクを使用して音圧を測定した。マイクは、乗員の頭部に相当する所に設置した。
【0070】
測定結果を
図6にグラフで示す。
図6の横軸は測定周波数であり、縦軸は音圧レベルであり、縦軸の上側へ行くほど音圧が高いことを示す。構造例1は、上部グラスラン23A、後側コーナー部グラスラン23E及び後側縦方向グラスラン23Cにおいて、車室内側シールリップ部41の基端側部41bの対向面41dと、フロントドアガラス22の車室内面22bとのなす角度αを45度に設定した場合である。構造例2は、角度αを25度に設定した場合である。構造例1及び構造例2では、対向面41dに吸音部41hを形成しておらず、対向面41dをガラス接触面41eと同様な滑らかな面で構成している。
【0071】
図6に示す測定結果から明らかなように、角度αを45度に設定した構造例1では、角度αを25度に設定した構造例2に比べて2000Hz近傍及び3000Hzを超えて5000Hzに至る広範囲の音圧が2dB〜3dB程度低下しており、顕著な音圧低減効果が得られている。
【0072】
本願発明者が角度αを15度から90度まで細かく変更しながら上記試験を行ったところ、角度αが35度未満の場合、及び角度αが65度よりも大きい場合には、角度αが35度以上65度以下の場合に比べて音圧が高くなることが顕著に現れた。従って、角度αを35度以上65度以下にするのが好ましい。特に好ましいのは、角度αが40度以上50度以下であった。
【0073】
すなわち、角度αが35度以上となっていることで、フロントドアガラス22を透過して、車室内側シールリップ部41の基端側部41bの対向面41dとフロントドアガラス22の車室内面22bとの間の空間Rに入った騒音は、該空間R内で反射する回数が減ることで増幅されにくくなる。また、ドアガラス22の車室内面とのなす角度αが65度以下であることから、車室内側シールリップ部41の基端側で反射され、ドアガラス22を透過して再び車室外へ出て行く音の減少を抑えることができる。これにより、乗員の耳に届く騒音の音圧が小さくなることが試験結果からも明らかである。
【0074】
さらに、角度αを35度以上に設定することで、車室外側からフロントドアガラス22を透過して対向面41dに向けて入射する音の入射角度θ(
図4に示す)が、角度αを例えば25度に設定した場合に比べて小さくなる。これにより、対向面41dに対して斜めに入射する音成分そのものが減るため、いわゆるコインシデンス効果によってフロントドアガラス22の透過損失が高くなり、このことによっても乗員の耳に届く騒音の音圧が小さくなる。尚、音の入射角度θは、フロントドアガラス22の車室外面22aに向かう音の進入方向と、該車室外面22aとのなす角度である。
【0075】
尚、車両構造上の観点からいうと、ドアガラス22が上昇する際にドア2の建付けばらつきによっては、ドアガラス22の先端が基端側部41bの対向面41dへ衝突することがある。この際、上記角度αが45度以内であると、衝突の際のエネルギーを逃がすことができるので、ドア2の破損を回避でき好ましい。
【0076】
また、
図5に示す変形例の場合も空間Rの形状は上記実施例のものと略同様であることから構造例1と同様な作用効果を奏することができる。また、リヤドア用グラスラン33による作用効果もフロントドア用グラスラン23による作用効果と同様である。
【0077】
図8のグラフは、本発明の実施例と構造例1との音圧の差を示しており、横軸は測定周波数であり、縦軸は音圧レベルである。実施例は、角度αを45度に設定している構造例1の対向面41dに吸音部41hを形成したものである(
図4参照)。
図8に示す測定結果から明らかなように、実施例は、吸音部41hを形成していない構造例1に比べて2000Hz近傍から3500Hz近傍までの広範囲の音圧が1dB程度低下しており、また、5000Hz以上の領域の音圧も1dB程度低下している。これにより聴感上の静粛性が向上する。角度αが35度以上65度以下の範囲にある場合に、対向面41dに吸音部41hを形成するのが好ましい。より好ましくは、角度αが40度以上50度以下の範囲にある場合に、対向面41dに吸音部41hを形成することである。
【0078】
以上説明したように、この実施形態1によれば、フロントドア用グラスラン23の車室内側シールリップ部41の先端側部41cがフロントドアガラス22の車室内面22bに接触することによってフロントドアガラス22とドアフレーム部21との間がシールされる。このシール状態では、車室内側シールリップ部41の基端側部41bとフロントドアガラス22の車室内面22bとの間に空間Rが形成される。そして、フロントドアガラス22を透過して車室内に入ってきた騒音は、空間Rを通って車室内側シールリップ部41におけるフロントドアガラス22の車室内面22bと対向する対向面41dに達する成分を含んでいる。この対向面41dには吸音部41hが形成されているので、対向面41dに達した騒音は吸音部41hによって吸音される。これにより、騒音が空間R内で反射増幅されにくくなる。
【0079】
また、車室内側シールリップ部41の対向面41dと、フロントドアガラス22の車室内面22bとのなす角度が35度以上であることから、
図6に示すようにフロントドアガラス22を透過して空間Rに入った騒音は、該空間R内で反射する回数が減ることで増幅されにくくなる。さらに、対向面41dと、フロントドアガラス22の車室内面22bとのなす角度が65度以下であることから、車室内側シールリップ部41の基端側部41bで反射されてフロントドアガラス22を透過して再び車室外へ出て行く音の減少を抑えることができる。つまり、上述した角度αの設定と、吸音部41hの形成との相乗的な騒音低減効果によって乗員の耳に届く騒音の音圧がより一層小さくなる。
【0080】
加えて、対向面41dと、フロントドアガラス22の車室内面22bとのなす角度が35度以上であることから、フロントドアガラス22を斜めに透過して該対向面41dに入射する音成分そのものが減るため、いわゆるコインシデンス効果によってフロントドアガラス22の透過損失が高くなり、このことによっても乗員の耳に届く騒音の音圧が小さくなる。したがって、簡単な構成で、重量増やコスト増を抑制しながら、乗員の耳に届く騒音の音圧を小さくすることができる。
【0081】
また、
図5に示す車室内側シールリップ部41に湾曲面41gを形成する場合も同様に吸音部41hとの相乗的な作用効果が得られる。
【0082】
また、車室内側シールリップ部41の吸音部41hが該車室内側シールリップ部41のガラス接触面41eには形成されないので、吸音部41hにフロントドアガラス22が摺接することによる吸音部41hの損傷や摩耗が回避される。従って、吸音部41hによる吸音効果が長期間に亘って高く維持される。また、吸音部41hを凹凸面や植毛部によって形成した場合に、フロントドアガラス22が凹凸面や植毛部に摺接しないので、異音の発生が抑制される。
【0083】
また、上部グラスラン23A及びコーナー部グラスランの一部23F、23Gは乗員の耳に近いところに位置することになり、これら上部グラスラン23A及びコーナー部グラスラン23D、23Eにおける騒音低減の寄与率は大きなものになる。従って、上部グラスラン23A及びコーナー部グラスランの一部23F、23Gにおける車室内側シールリップ部41の基端側部41bの対向面41dと、フロントドアガラス22の車室内面22bとのなす角度αを上記のように設定することで、騒音低減の効果がより顕著になる。
【0084】
尚、リヤドア3においてもフロントドア2と同様な作用効果を奏することができるので、後席の静粛性も高めることができる。
【0085】
(実施形態2)
図10は、本発明の実施形態2に係るドアフレーム部21及びフロントドア用グラスラン23の構造を示すものである。実施形態2では、ドアフレーム部21の断面形状及びフロントドア用グラスラン23の構造が実施形態1とは異なっているが、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と同じ部分には実施形態1と同じ符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0086】
ドアフレーム部21のフレーム上辺部21aは、底板部24と車室内側板部25と車室外側板部26とを有している。また、上部グラスラン23Aは、グラスラン本体部40と、車室内側シールリップ部41と、車室外側シールリップ部45と、意匠リップ46と、遮音壁48とを有している。グラスラン本体部40は、底壁部42と車室内側壁部43と車室外側壁部44とを有している。
【0087】
車室外側壁部44の端部には車室外側シールリップ部45が設けられている。車室外側シールリップ部45は、車室外側壁部44の端部から上方及び下方へそれぞれ分岐して延びるように形成されているが、上方へのみ延びる形状であってもよい。
【0088】
車室内側壁部43の中間部には、車室内側シールリップ部41が一体成形されている。車室内側シールリップ部41は、フロントドアガラス22の車室内面22bに向けて延び、先端側部41cがフロントドアガラス22の車室内面22bに接触するように形成されている。車室内側シールリップ部41の基端側部41bとフロントドアガラス22の車室内面22bとの間には、空間Rが形成されている。
【0089】
意匠リップ46は、車室内側壁部43の端部に一体成形されている。意匠リップ46は、フレーム上辺部21aの車室内側板部25の車室内側を覆うためのものである。
【0090】
遮音壁48は、グラスラン本体部40における車室内側である車室内側壁部43の端部に設けられており、該車室内側壁部43からフロントドアガラス22の車室内面22bへ向けて突出している。この遮音壁48により空間Rが覆われる。遮音壁48と、車室内側シールリップ部41の基端側部41bとが対向するように配置される。遮音壁48の車室外側の端面48aと、フロントドアガラス22の車室内面22bとの間には所定の隙間が設けられており、フロントドアガラス22が昇降するときに遮音壁48がフロントドアガラス22の車室内面22bに接触しないようになっている。上記隙間は1mm以下に設定することができる。
【0091】
遮音壁48は、車室に臨む部分である外面部48bと、空間Rに臨む部分である内面部48dとを有している。遮音壁48における外面部48bには、実施形態1の吸音部41hと同様な吸音部48c(細かい波線部で示す)が形成されている。また、内面部48dにも同様な吸音部48cが形成されているが、この内面部48dの吸音部48cは省略してもよい。この実施形態では、吸音部48cの形成範囲を遮音壁48の外面部48b及び内面部48dとしているが、これに限らず、図示しないが、遮音壁48の端面48aに形成してもよい。また、図示しないが、吸音部を車室内側シールリップ部41の基端側部41bに形成してもよい。更には、図示しないが、吸音部を遮音壁48の内面部48dと車室内側シールリップ部41の基端側部41bとの間(
図10に符号43cで示す)に形成してもよい。
【0092】
この実施形態2によれば、車室内側シールリップ部41の基端側部41bとフロントドアガラス22の車室内面22bとの間の空間Rを遮音壁48で覆うことができるので、フロントドアガラス22を透過して空間R内に入ってきた騒音が乗員へ届きにくくなる。また、空間R内に入ってきた騒音は、遮音壁48の内面部48dに形成されている吸音部48cによって吸音される。
【0093】
また、フロントドアガラス22を透過して車室内に入ってきた騒音は、遮音壁48における外面部48bに達する成分を含んでいる。この外面部48bには吸音部48cが形成されているので、遮音壁48に達した騒音は吸音部48cによって吸音される。したがって、簡単な構成で、重量増やコスト増を抑制しながら、乗員の耳に届く騒音の音圧を小さくすることができる。
【0094】
また、
図11に示す実施形態2の変形例1のように、遮音壁48の厚みを厚くしてもよい。この変形例1では、遮音壁48の内面部48dが車室内側シールリップ部41の基端側部41bの基端側部41bに接近しており、これにより空間Rを狭くすることができるので、空間R内に入ってきた騒音の反射増幅を更に抑制することができる。内面部48dの吸音部48cは省略してもよい。
【0095】
また、
図12に示す実施形態2の変形例2のように、遮音壁48における車室内側壁部43からの突出寸法を短くしてもよい。この変形例2では、遮音壁48の端面48aにも吸音部48cを形成しているが、これは省略することが可能である。さらに、車室内側シールリップ部41の基端側部41b、更に遮音壁48の内面部48dと車室内側シールリップ部41の基端側部41bとの間(
図12に符号43cで示す)にも実施形態1の吸音部41hが形成されている。この変形例2では、車室内側シールリップ部41の基端側部41b、遮音壁48の内面部48dと車室内側シールリップ部41の基端側部41bとの間の部分43cにも吸音部41hを形成しているので、乗員の耳に届く騒音の音圧をより一層小さくすることができる。吸音部41hは省略することも可能である。
【0096】
また、
図13に示す実施形態2の変形例3のように、遮音壁48を車室内側シールリップ部41の基端側部41bと一体化してもよい。この変形例3では、遮音壁48を厚くして車室内側シールリップ部41の基端側部41bと一体化したので、車室内側シールリップ部41の基端側部41bとフロントドアガラス22の車室内面22bとの間の空間を無くすことができる。この変形例3では遮音壁48の端面48aに吸音部48cを形成しているが、これを省略することもできる。
また、遮音壁48を車室内側シールリップ部41の基端側部41bと一体化することで、遮音壁48と車室内側シールリップ部41の基端側部41bの間にゴミ等が溜まることを防止することができ、フロントドアガラス22の車室外面22aから車内側を見たときに遮音壁48の稜線が見えて見栄えが悪いといった問題を解決することができる。 また、
図14に示す実施形態2の変形例4のように、遮音壁48を中空状に形成してもよい。遮音壁48の外面部48bには吸音部48cが形成されている。また、遮音壁48の端面部48aや内面部48dに吸音部を形成してもよい。遮音壁48を中空状にすることで軽量化を図ることができる。
【0097】
また、遮音壁48が厚肉でない
図10の状態では、ドアガラス22の組付け時やドアガラス22の閉時に遮音壁48が撓んで反転する恐れがある。このように遮音壁48が反転すると遮音壁48の先端部とドアガラス22との間に新たな空間が発生して反響音により音圧レベルが大きくなってしまう可能性があるが、
図14のように中空にすることで、これを防ぐことができる。
【0098】
(実施形態3)
図15は、本発明の実施形態3に係るドアフレーム部21及びフロントドア用グラスラン23の構造を示すものである。実施形態3では、ドアフレーム部21の断面形状及びフロントドア用グラスラン23の構造が実施形態1とは異なっているが、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と同じ部分には実施形態1と同じ符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0099】
上部グラスラン23Aは、グラスラン本体部40と、車室内側シールリップ部41と、車室外側シールリップ部45と、意匠リップ46と、遮音壁48とを有している。グラスラン本体部40は、底壁部42と車室内側壁部43と車室外側壁部44とを有している。
【0100】
車室外側壁部44の端部には車室外側シールリップ部45が設けられている。車室外側シールリップ部45は、車室外側壁部44の端部から上方及び下方へそれぞれ延びるように形成されている。
【0101】
車室内側壁部43の中間部には、車室内側シールリップ部41が一体成形されている。車室内側シールリップ部41は、上方へ延びた後、下方へ屈曲して延び、フロントドアガラス22の車室内面22bに接触するように形成されている。
【0102】
意匠リップ46は、車室内側壁部43の端部に一体成形されている。意匠リップ46は、フレーム上辺部21aの車室内側板部25の車室内側を覆うためのものである。
【0103】
遮音壁48は、グラスラン本体部40における車室内側である車室内側壁部43の端部からフロントドアガラス22の車室内面22bへ向けて延びた後、上方へ向けて延びており、遮音壁48の上端部は、車室内側シールリップ部41の端部と連続している。この遮音壁48と、車室内側シールリップ部41と、車室内側壁部43とにより、閉断面状の中空部Kが形成される。
【0104】
遮音壁48の車室外側の端面48aと、フロントドアガラス22の車室内面22bとの間には所定の隙間が設けられており、フロントドアガラス22が昇降するときに遮音壁48がフロントドアガラス22の車室内面22bに接触しないようになっている。
【0105】
遮音壁48は、車室に臨む部分である外面部48bを有している。遮音壁48における外面部48bには、実施形態1の吸音部41hと同様な吸音部48cが形成されている。この実施形態では、吸音部48cの形成範囲を遮音壁48の外面部48bとしているが、これに限らず、図示しないが、遮音壁48の端面48aに形成してもよい。また、図示しないが、吸音部を車室内側シールリップ部41に形成してもよい。この実施形態では、遮音壁48を発泡材で構成している。尚、遮音壁48はソリッド材で構成してもよい。
【0106】
この実施形態3によれば、車室に入ってきた騒音を遮音壁48の吸音部48cによって吸音することができるので、簡単な構成で、重量増やコスト増を抑制しながら、乗員の耳に届く騒音の音圧を小さくすることができる。
【0107】
また、
図16に示す実施形態3の変形例1のように、車室内側シールリップ部41がグラスラン本体部40の底壁部42から延びるものであってもよい。この変形例1では、車室内側シールリップ部41が底壁部42から下方へ延びており、車室内側シールリップ部41の端部に遮音壁48の端部が連続している。
【0108】
また、
図17に示す実施形態3の変形例2のように、車室内側シールリップ部41がグラスラン本体部40の車室外側壁部44から延びるものであってもよい。この変形例2では、車室内側シールリップ部41が車室外側壁部44の上部から車室内側へ延びた後、下方へ延びており、車室内側シールリップ部41の端部に遮音壁48の端部が連続している。
【0109】
また、
図18に示す実施形態3の変形例3のように、車室内側シールリップ部41がグラスラン本体部40の車室外側シールリップ部45から延びるものであってもよい。この変形例3では、車室内側シールリップ部41が車室外側壁シールリップ部45の上部から上方へ延び、車室内側へ延びた後、更に下方へ延びており、車室内側シールリップ部41の端部に遮音壁48の端部が連続している。
【0110】
(実施形態4)
図19は、本発明の実施形態4に係るドアフレーム部21及びフロントドア用グラスラン23の構造を示すものである。この実施形態4では、ドアフレーム部21に、車室外側へ向けて突出するフランジ21cが設けられており、このフランジ21cを車室外側から覆うようにフロントドア用グラスラン23が取り付けられるようになっている。以下、実施形態1と同じ部分には実施形態1と同じ符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0111】
フロントドア用グラスラン23のグラスラン本体部40は、ドアフレーム部21のフランジ21cの上側に位置する上側壁部40aと、ドアフレーム部21のフランジ21cの下側に位置する下側壁部40bと、上側壁部40aの車室外側の端部から下側壁部40bの車室外側の端部まで延びる外側壁部40cとを有しており、車室内側に開放されている。このグラスラン本体部40における車室内側への開放部分にドアフレーム部21のフランジ21cが差し込まれて、グラスラン本体部40がドアフレーム部21に組み付けられるようになっている。グラスラン本体部40の上側壁部40a、下側壁部40b及び外側壁部40cには、硬質樹脂材や金属材からなる芯材49が埋設されている。
【0112】
グラスラン本体部40の下側壁部40bにおける車室内側の端部には、車室内側壁部43の上端部に連続している。車室内側壁部43は、下側壁部40bにおける車室内側の端部から下方へ延びている。車室内側壁部43の下端部には、上方へ屈曲する屈曲部43dが形成されている。屈曲部43dは、ドアフレーム部21の下端部を覆うように形成されている。
【0113】
車室内側壁部43の下端部には、フロントドアガラス22の車室内面22bに接触する車室内側シールリップ部41が設けられている。この車室内側シールリップ部41から屈曲部43dにかけて吸音部41hが設けられている。また、車室内側壁部43の上下方向中間部には、フロントドアガラス22の車室内面22bに接触する中間シールリップ部50が設けられている。図示しないが、中間シールリップ部50に吸音部を設けてもよい。
【0114】
グラスラン本体部40の外側壁部40cの下端部は、下側壁部40bよりも下方へ延びている。この外側壁部40cの下端部には、フロントドアガラス22の車室外面22aに接触する車室外側シールリップ部52が設けられている。
【0115】
この実施形態4によれば、実施形態1と同様に、フロントドアガラス22を透過して車室内に入ってきた騒音は、空間Rを通って車室内側シールリップ部41におけるフロントドアガラス22の車室内面22bと対向する対向面41dから屈曲部43dの範囲に達し、この騒音は吸音部41hによって吸音される。これにより、騒音が空間R内で反射増幅されにくくなる。また、乗員の耳に届く騒音の音圧がより一層小さくなる。
【0116】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。