特許第6781043号(P6781043)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6781043
(24)【登録日】2020年10月19日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】複合磁路インダクタ
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/24 20060101AFI20201026BHJP
【FI】
   H01F27/24 J
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-535568(P2016-535568)
(86)(22)【出願日】2014年7月22日
(86)【国際出願番号】JP2014069375
(87)【国際公開番号】WO2016013062
(87)【国際公開日】20160128
【審査請求日】2017年6月15日
【審判番号】不服2019-4672(P2019-4672/J1)
【審判請求日】2019年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】512010122
【氏名又は名称】田村(中国)企業管理有限公司
【氏名又は名称原語表記】TAMURA CORPORATION OF CHINA LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】邵 革良
【合議体】
【審判長】 國分 直樹
【審判官】 石川 亮
【審判官】 山澤 宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−143454(JP,A)
【文献】 特開2003−68535(JP,A)
【文献】 特開平2−194506(JP,A)
【文献】 特開2009−33051(JP,A)
【文献】 特開2002−57039(JP,A)
【文献】 特開2006−32560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/24-27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁心及びコイルを含み、
前記磁心は、環状の第1の磁心と、当該第1の磁心内に位置する棒状の第2の磁心とを有し、
前記第2の磁心の両端面が、前記第1の磁心の内側壁の対応する位置の接続面にそれぞれ接続され、
前記第2の磁心周辺に前記コイルが巻かれる複合磁路インダクタにおいて、
前記第2の磁心の透磁率は、前記第1の磁心の透磁率よりも大きく、かつ前記第2の磁心の透磁率は、50H/m以上であり、
前記第1の磁心の前記第2の磁心に略平行な方向の幅と、前記第1の磁心の前記第2の磁心に垂直な方向の長さとの比L/W1.8以上であり、
前記第1の磁心が金属軟磁性粉末からなる磁心であり、前記第2の磁心がフェライトからなる磁心であることを特徴とする複合磁路インダクタ。
【請求項2】
磁心及びコイルを含み、
前記磁心は、環状の第1の磁心と、当該第1の磁心内に位置する棒状の第2の磁心とを有し、
前記第2の磁心の両端面が、前記第1の磁心の内側壁の対応する位置の接続面にそれぞれ接続され、
前記第2の磁心周辺に前記コイルが巻かれる複合磁路インダクタにおいて、
前記第2の磁心の透磁率は、前記第1の磁心の透磁率よりも大きく、かつ前記第2の磁心の透磁率は、50H/m以上であり、
前記第1の磁心の前記第2の磁心に略平行な方向の幅と、前記第1の磁心の前記第2の磁心に垂直な方向の長さとの比L/W1.8以上であり、
前記第1の磁心および前記第2の磁心が金属軟磁性粉末からなる磁心であることを特徴とする複合磁路インダクタ。
【請求項3】
前記第1の磁心の透磁率は、40〜100H/mであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の複合磁路インダクタ。
【請求項4】
前記第1の磁心の接続面が、前記第1の磁心の内側壁と同一平面となっていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の複合磁路インダクタ。
【請求項5】
前記第1の磁心の接続面が、前記第1の磁心の内側壁から突き出ていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の複合磁路インダクタ。
【請求項6】
前記第1の磁心の接続面が、前記第1の磁心の内側壁から内に凹んでいることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の複合磁路インダクタ。
【請求項7】
前記第2の磁心の少なくとも一端面と前記第1の磁心の前記接続面との間に、幅が0.5mm以下のギャップを有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の複合磁路インダクタ。
【請求項8】
前記第2の磁心がギャップを備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の複合磁路インダクタ。
【請求項9】
前記ギャップが接着剤により形成されることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の複合磁路インダクタ。
【請求項10】
前記ギャップが絶縁材により形成されることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の複合磁路インダクタ。
【請求項11】
前記金属軟磁性粉末が、Fe粉、FeSiAl粉、FeSi混合粉又は鉄基アモルファス粉のいずれかであることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の複合磁路インダクタ。
【請求項12】
前記コイルが銅線、銅被覆アルミニウム線又はアルミニウム線で巻かれてなることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の複合磁路インダクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタ、特に複合磁路インダクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インダクタは、回路中の基本素子の一つである。通常のインダクタは、コイルを巻いてなるものであるが、インダクタンス量を増加し、コイルの品質要素を向上させるため、コイルは磁心上に巻かれ、磁心の材料がインダクタの性能に重要な影響を及ぼしている。数多くの材料のうち、磁心材によく用いられるのはフェライト材で、フェライト材は高い透磁率を有することから、大きなインダクタンスを作るのに有効である。しかしながら、フェライト材は、磁気飽和しやすいという望ましくない特性をも有しているので、この欠点を解消するために、より大きなサイズの磁心を使用することが解決方法の一つとされていたが、これではインダクタのコストが増大し、回路基板上にインダクタを取り付ける上でも支障があった。もう一つの解決方法は、フェライト材にエアギャップを開けることであるが、磁心の飽和を防止するために、ギャップ寸法を大きくする必要があるが、手作業でギャップを設けるとギャップ寸法にバラつきがあり、インダクタの損失等の性能指標も低下していた。
【0003】
例えば特許文献1に示す技術では、磁心の材料すべてにフェライト材を用いていた。この場合、大きな磁心を製作するには適しているが、形状が大型化してしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1:特開2014−132602
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、複合磁路インダクタを提供するもので、選別された磁心材を導入することで、単にフェライト材を使用することから引き起こされる課題を解消するものである。
【発明を解決するための手段】
【0006】
本発明が上記の技術的課題を解決するために採用する技術的解決手段とは、磁心及びコイルを含む複合磁路インダクタを作ることである。前記磁心は、環状の第1の磁心と、当該第1の磁心内に位置する棒状の第2の磁心とを有し、前記第2の磁心の両端面は、前記第1の磁心の内側壁の対応する位置の接続面にそれぞれ接続され、前記第2の磁心周辺にコイルが巻かれる。前記第2の磁心周辺にコイルが巻かれる複合磁路インダクタにおいて、前記第2の磁心の透磁率は、前記第1の磁心の透磁率よりも大きく、かつ前記第2の磁心の透磁率は、50H/m以上であり、前記第1の磁心の前記第2の磁心に略平行な方向の幅と、前記第1の磁心の前記第2の磁心に垂直な方向の長さとの比L/W1.8以上であり、前記第1の磁心が金属軟磁性粉末からなる磁心であり、前記第2の磁心がフェライトまたは金属軟磁性粉末のいずれか一方からなる磁心である。
【0007】
本発明の一実施例において、前記第1の磁心の透磁率は、40〜100H/mである。
【0009】
本発明の一実施例において、前記第1の磁心の前記接続面が、前記第1の磁心の内側壁と同一平面となっている。
【0010】
本発明の一実施例において、前記第1の磁心の前記接続面は、前記第1の磁心の内側壁から突き出ている。
【0011】
本発明の一実施例において、前記第1の磁心の前記接続面は、前記第1の磁心の内側壁から内に凹んでいる。
【0012】
本発明の一実施例において、前記第2の磁心の少なくとも一端面と前記第1の磁心の前記接続面との間に幅が0.5mm以下のギャップを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の一実施例において、前記第2の磁心はギャップを備える。
【0014】
本発明の一実施例において、前記ギャップは接着剤により形成される。
【0015】
本発明の一実施例において、前記ギャップは絶縁材により形成される。
【0018】
本発明の一実施例において、前記金属軟磁性粉末が、Fe粉、FeSiAl粉、FeSi混合粉又は鉄基アモルファス粉のいずれかである。
【0019】
本発明の一実施例において、前記コイルは、銅線、銅被覆アルミニウム線又はアルミニウム線で巻かれてなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の複合磁路インダクタは、フェライト磁心と金属軟磁性粉末磁心とを同時に備える。フェライト磁心と比べて、金属軟磁性粉末からなる磁心の内部には多くの微小なエアギャップを有するため、磁心がより飽和しにくくなっている。このように、金属軟磁性粉末磁心であれば、フェライト磁心のように大きな体積を有することも必要でなくなり、また、大きすぎるギャップによって性能が低下することもない。そのため、本発明のインダクタは、サイズ及びコストを抑えられるとともに性能も保障される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の上記の目的、特徴及び利点をより明らかにして分かりやすくするため、以下、図面と関連させつつ本発明の具体的な実施態様について詳細に説明する。
図1】本発明の第1の実施例における複合磁路インダクタの構造略図である。
図2図1に示す実施例における複合磁路インダクタの磁路を示すものである。
図3】本発明の第2の実施例における複合磁路インダクタの構造略図である。
図4】本発明の第3の実施例における複合磁路インダクタの構造略図である。
図5】本発明の第4の実施例における複合磁路インダクタの構造略図である。
図6】第1の実施形態において、DCバイアス電流を流した場合のインダクタンスの値を示すグラフである。
図7】第1の実施形態において、比L/Wを変化させた場合におけるDCバイアス電流を流した場合のインダクタンスの値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[構成]
図1は、本発明の第1の実施例における複合磁路インダクタの構造略図である。図1の示すところを参照すれば、本実施例におけるインダクタ10は、「O」や「口」の字型構造をしている。インダクタ10の磁心は、外側にある環状の第1の磁心11と、その内部にある棒状の第2の磁心12とを有する。第2の磁心12の長さは、丁度、第1の磁心11の内部幅とすることができる。このようにして、第2の磁心12の両端面12aと第1の磁心11の内側壁の対応する位置の接続面11aとが接触している。本実施例において、第1の磁心11の接続面11aと前記第1の磁心11の内側壁とは同一平面になっている。また第1の磁心11は、分割された磁心を組合わせた磁心ではなく、一体成形された磁心であるとよい。一体成形された磁心を用いることで、磁路における磁心と磁心の間の微小ギャップが形成されることがなくなり、ギャップで発生する漏れ磁束による損失を抑制することができる。
【0023】
上記では、第2の磁心は、フェライト磁心を用いたが、第2の磁心に、第1の磁心と透磁率が異なる金属軟磁性粉末を用いることもできる。その場合、第2の磁心は、第1の磁心よりも透磁率が高い材料を用いるとよい。例えば、第1の磁心に、透磁率が40〜100H/mとなる磁心を用い、第2の磁心に、透磁率が50H/m以上かつ第1の磁心よりも透磁率が高い磁心を用いることができる。この場合、第1の磁心に、2種類のFeSi粉を混合した混合粉やFeSiAl粉を用い、第2の磁心にFeSiAl粉を用いることもできる。例えば、第1の磁心に透磁率が約100H/mのFeSi粉からなる磁心を使用し、第2の磁心に透磁率が約1600H/mのフェライトを用いてもよい。また、第1の磁心に透磁率が約100H/mのFeSi粉からなる磁心を使用し、第2の磁心に透磁率が約150H/mのFeSiAl粉からなる磁心を用いてインダクタを構成してもよい。なお、第1の磁心の透磁率は、40〜100H/mが好ましいが、500H/m以下までの透磁率の磁心を用いても同様の効果が得られると考えられる。なお、本発明における透磁率は、初透磁率のことを示している。
【0024】
第2の磁心12は、第1の磁心11の中央に丁度位置していてもよく、いくらか外れていてもよい。第2の磁心12の周辺にコイル13が巻かれる。
【0025】
第2の磁心12と第1の磁心11との間は、例えば、少量の接着剤のような様々な固定方法により接続することができる。接着剤はギャップを生じ得るが、これはインダクタの性能に影響を及ぼさない。応用に応じて、ギャップは望ましいものともなり得る。
【0026】
本実施例において、インダクタ11における、第2の磁心12に平行な方向(図中での平行方向)を幅Wと、第1の磁心11を設けた第2の磁心12に垂直な方向(図中での垂直方向)を長さLとすれば、L/Wは1.2以上であると良い。
【0027】
本発明の実施例において、金属軟磁性粉末は、Fe粉、FeSiAl粉、FeSi混合粉又は鉄基アモルファス粉とすることができる。プレスする方法により金属軟磁性粉末で第1の磁心11を形成する。
【0028】
図2は、図1に示す実施例における複合磁路インダクタの磁路を示すものである。図2の示すところを参照すると、棒状の第2の磁心12は、その周辺に巻かれるコイル13に図中の破線で示すような集中した磁路を提供しており、これと環状の第1の磁心11とで2つの複合型磁束回路を形成して並列を実現する。
【0029】
フェライト磁心と比べて、金属軟磁性粉末からなる磁心の内部には多くの微小なエアギャップを有するため、磁心がより飽和しにくくなっている。このように、金属軟磁性粉末磁心を本実施例における第1の磁心11とすれば、フェライト磁心のように大きな体積を有することも必要でなくなり、また、大きすぎるギャップによって性能が低下することもない。そのため、本実施例におけるインダクタは、サイズ及びコストを抑えられるとともに性能も保障される。
【0030】
図3は、本発明の第2の実施例における複合磁路インダクタの構造略図である。第1の実施例と比べて、本実施例におけるインダクタ20にも、同様に第1の磁心21と、第2の磁心22と、図に示されていないコイルとが含まれる。第1の磁心21の接続面21aは、第1の磁心の内側壁から突き出ている。また、第2の磁心22の長さが第1の磁心21の内部幅よりやや短くなっていることによって、第2の磁心22の両端面22aと対応する接続面21aとの間にギャップ24が形成される。このギャップは、接着剤又はその他の絶縁材により形成することができる。一実施例において、各ギャップの幅は0.5mm以下である。該ギャップは、エアギャップで構成してもよいし、シート状の絶縁材などで構成してもよい。
【0031】
ギャップを導入することのメリットは、フェライト材の第2の磁心22の飽和を防止できることである。
【0032】
図4は、本発明の第3の実施例における複合磁路インダクタの構造略図である。第1の実施例と比べて、本実施例におけるインダクタ30にも、同様に第1の磁心31と、第2の磁心32と、図に示されていないコイルとが含まれる。異なるのは、第1の磁心31の接続面31aが第1の磁心の内側壁から内に凹んでいる点である。また、第2の磁心32の長さが第1の磁心31の内部幅よりやや短くなっていることによって、第2の磁心32の両端面32aと対応する接続面31aとの間にギャップ34が形成される。このギャップは、接着剤又はその他の絶縁材により形成することができる。一実施例において、各ギャップの幅は0.5mm未満である。該ギャップは、エアギャップで構成してもよいし、シート状の絶縁材などで構成してもよい。
【0033】
上記の第2及び第3の実施例において、ギャップの数はいずれも2つとなっていて、すなわち、第2の磁心の両端面と対応する接続面との間にはいずれもギャップがあるようになっているが、ギャップは、第2の磁心のうち一方の端面と対応する接続面との間にのみあればよいことも理解することができる。この場合のギャップの幅は1mm未満であればよい。該ギャップは、エアギャップで構成してもよいし、シート状の絶縁材などで構成してもよい。
【0034】
図5は、本発明の第4の実施例における複合磁路インダクタの構造略図である。第1の実施例と比べて、本実施例におけるインダクタ40も同様に第1の磁心41と、第2の磁心42と、図に示されていないコイルとを有する。異なるのは、第2の磁心42が2つのギャップ42a、42bを備える点である。このギャップは、接着剤又はその他の絶縁材により形成することができる。ただ、第2の磁心に備えるギャップは、2つに限らず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。該ギャップは、エアギャップで構成してもよいし、シート状の絶縁材などで構成してもよい。
【0035】
図6は、第1の実施例における複合磁路インダクタに、直流バイアス電流を流した場合において得られる直流重畳特性を示す図である。電流の周波数は20kHzとし、1Vの電圧を印加した。図6から明らかなように、フェライトだけで構成したインダクタと比較して、第1の磁心に金属軟磁性粉末からなる磁心を使用し、第2の磁心に、第1の磁心よりも透磁率が高い金属軟磁性粉末またはフェライトを使用したインダクタは、電流値が高い場合でも、高い直流重畳特性を得ることができ、高磁界において直流重畳特性を向上させることができると考えられる。また、第2の磁心にフェライトを使用した場合と比べて、第2の磁心に金属軟磁性粉末から成る磁心を使用した場合の方が、高電流値での直流重畳特性が良いことが確認できた。
【0036】
図7は、第1の実施例における複合磁路インダクタにおいて、比L/Wを変更させて、直流バイアス電流を流した場合において得られる直流重畳特性を示す図である。周波数と電圧は図6と同様である。図7から明らかなように、第1の磁心に金属軟磁性粉末を使用し、第2の磁心にフェライトを使用したインダクタにおいて、L/Wが1.0の時よりも、1.2の方が、高電流値において、高い直流重畳特性を得られることが確認できた。またL/Wを1.8とした場合には、さらに高い直流重畳特性を得られることが確認できた。
【0037】
本発明の上記の各実施例において、コイルは、銅線、銅被覆アルミニウム線又はアルミニウム線で巻かれてなることができる。そのうち、アルミニウム線は価格が低廉で、さらに、本発明において使用してもなおインダクタの性能上の要求を満たしている。そのため、アルミニウム線を使用すればさらに一層コストを低減することができる。
【0038】
[効果]
本発明において、第2の磁心に第1の磁心よりも透磁率が高い磁心を使用することによって、磁束を第2の磁心に巻き回されたコイル内部に集中しやすくさせることができ、より直流重畳特性を向上させることができる。また、インダクタの磁心を構成する磁路長を極力短くすることによって、より大きな直流重畳特性を得ることができる。また、第2の磁心に、第1の磁心よりも透磁率が高い磁心を使用したインダクタにおいて、透磁率が高い第2の磁心の長さを短くすることで幅Wを小さくし、比L/Wを大きくすることで、直流重畳特性を向上させることができると考えられる。
【0039】
ギャップ寸法は、大きければ大きくなるほど、漏れ磁束により特性が悪化することが考えられる。漏れ磁束を極力無くすために、第1の磁心と第2の磁心間のギャップも、極力無い方が好ましい。そのようにすることで、特性を向上させることができる。第1の磁心と第2の磁心との間にギャップを設ける場合は、極力微小な寸法とすることが好ましい。ただギャップ寸法が小さすぎると、磁心の製造上の交差により、磁心の組立が困難になる可能性が考えられる。そのため、ギャップ寸法は、0.5mm以下とすることが好ましい。
【0040】
本発明については、以上の具体的な実施例を参照して記載しているが、当技術分野における通常の技術者にとって、以上の実施例は本発明を説明するためのものであるにすぎず、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて様々な同等の変更又は置換をすることができることも認識されるべきものである。従って、本発明の実質的な趣旨の範囲内で上記の実施例についてなされる変更、変形であれば、すべて本願の特許請求の範囲に含まれるものである。
【他の実施形態】
【0041】
第2の磁心は、1つに限らず、2つ以上であってもよい。また第2の磁心は、断面が正方形や長方形などの形状に限らず、多角形、正円、楕円などの形状であってもよい。第2の磁芯の断面を、多角形や円とすることで、コイルをより磁心の外周に沿った形で巻き回すことができる。また形状は棒状に限らず、円形や円形の中心に開口を有する形状の磁心を用いてもよい。
【0042】
第1の磁心は、1つに限らず、2つ以上であってもよい。環状の磁心を、複数張り合わせた形状であってもよい。このようにすることで、磁心を仕様に合わせて決められた形状になるように張り合わせることで、その形状に見合った金型をわざわざ生産する必要がなくなる。
【符号の説明】
【0043】
10、20、30、40・・・インダクタ、
11、21、31、41・・・第1の磁心
12、22、32、42・・・第2の磁心
13・・・コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7