特許第6781044号(P6781044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6781044
(24)【登録日】2020年10月19日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】心臓不整脈を検出するシステム
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/365 20060101AFI20201026BHJP
   A61N 1/37 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   A61N1/365
   A61N1/37
【請求項の数】7
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2016-545776(P2016-545776)
(86)(22)【出願日】2015年1月8日
(65)【公表番号】特表2017-501838(P2017-501838A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(86)【国際出願番号】US2015010680
(87)【国際公開番号】WO2015106015
(87)【国際公開日】20150716
【審査請求日】2016年7月29日
【審判番号】不服2019-13642(P2019-13642/J1)
【審判請求日】2019年10月11日
(31)【優先権主張番号】61/926,051
(32)【優先日】2014年1月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505003528
【氏名又は名称】カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】スターマン、ジェフリー イー.
(72)【発明者】
【氏名】シムズ、ハワード ディ.
(72)【発明者】
【氏名】マイレ、キース アール.
(72)【発明者】
【氏名】ケーン、マイケル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リンダー、ウィリアム ジェイ.
【合議体】
【審判長】 内藤 真徳
【審判官】 宮崎 基樹
【審判官】 莊司 英史
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−540040(JP,A)
【文献】 特開2008−119479(JP,A)
【文献】 特表2001−517504(JP,A)
【文献】 特開平07−148129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00- 1/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の心臓の頻拍性不整脈を特定するためのシステムであって、前記システムは、
心臓活動を感知するための植込み型除細動器と、
前記植込み型除細動器から離間しており、前記患者の身体を含む通信経路を介して前記植込み型除細動器に通信可能に結合されている、心臓活動を感知するための第1リードレス心臓ペースメーカとを備え、
前記植込み型除細動器、前記第1リードレス心臓ペースメーカから前記通信経路を介して心臓情報を受信した後、少なくとも部分的に、前記植込み型除細動器が感知した前記心臓活動および前記第1リードレス心臓ペースメーカが感知した前記心臓活動の両方に基づいて、頻拍性不整脈が発生しているを判断し、かつ少なくとも部分的に前記第1リードレス心臓ペースメーカが感知した前記心臓活動に基づいて前記頻拍性不整脈のタイプを判断するように構成され、
前記第1リードレス心臓ペースメーカから受信した前記心臓情報は、感知される心臓電気信号及び感知される生理的パラメータのすくなくとも1つを含み、
前記頻拍性不整脈が発生していること及び前記頻拍性不整脈の前記タイプの判断に応答して、前記植込み型除細動器及び前記第1リードレス心臓ペースメーカの少なくとも一方が、判断された前記頻拍性不整脈の前記タイプに応じた電気刺激治療を送達する、システム。
【請求項2】
前記植込み型除細動器はマスタ機器であり、前記第1リードレス心臓ペースメーカはスレーブ機器である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1リードレス心臓ペースメーカは、所定のタイプの頻拍性不整脈の発生が判断されると、前記心臓に抗頻拍ペーシング治療を行うように構成されている、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記植込み型除細動器は1つ以上の皮下電極を具備する完全皮下植込み型除細動器である、請求項1〜のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
心臓活動を感知するための第2リードレス心臓ペースメーカをさらに備え、前記第2リードレス心臓ペースメーカは前記患者の前記身体を含む前記通信経路を介して前記植込み型除細動器に通信可能に結合されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記植込み型除細動器は、少なくとも部分的に前記植込み型除細動器が感知した前記心臓活動、前記第1リードレス心臓ペースメーカが感知した前記心臓活動、および前記第2リードレス心臓ペースメーカが感知した前記心臓活動のうちの2つ以上に基づいて、頻拍性不整脈が発生しているを判断するように構成されている、請求項に記載のシステム。
【請求項7】
前記植込み型除細動器は、頻拍性不整脈が発生していると判断された後、少なくとも部分的に前記植込み型除細動器、前記第1リードレス心臓ペースメーカおよび前記第2リードレス心臓ペースメーカのうちの2つ以上が感知した前記心臓活動に基づいて、前記頻拍性不整脈の前記タイプを判断するように構成されている、請求項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に心臓不整脈を検出するためのシステム、機器および方法に関し、より具体的には心臓不整脈を検出し特定するための複数の機器のシステム、方法および機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ペーシング器具は、患者の身体に十分な量の血液を送る心臓機能の低下を生じるおそれのある様々な心臓病にかかっている患者を治療するために使用することができる。これらの心臓病は急速な、不規則な、および非効率な、あるいは急速な、不規則な、または非効率な心収縮を引き起こすことがある。これらの疾患のいくつかの緩和に役立てるために、患者の身体に様々な機器(例、ペースメーカ、除細動器など)を植込むことができる。当該機器は心臓を監視して、心臓に電気刺激を与えて、心臓がより正常に、効率的におよび安全に、あるいはより正常に、効率的にまたは安全に働くのを助けることができる。ある場合には、患者は複数の植込み機器を有する。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、一般に患者内の複数の植込み機器を用いて、異常な心臓活動の検出および治療、あるいは検出または治療を調和させるシステムおよび方法に関する。複数の植込み機器は、例えば、ペースメーカ、除細動器、診断機器、および他の適切な植込み型機器、あるいはペースメーカ、除細動器、診断機器、または他の適切な植込み型機器を所望に応じて含むことができることが想定される。
【0004】
ある実施例においては、頻拍性不整脈の判断および治療、あるいは判断または治療の補助のために、リードレス心臓ペースメーカ(LCP:Leadless Cardiac Pacemaker)を植込むことができる。心臓の心臓活動は、1つ以上のリードレス心臓ペースメーカ(LCP)単独で、または1つ以上の他の機器と組み合わせて使用して感知することができる。リードレス心臓ペースメーカ(LCP)は、心臓内または心臓の上など、心臓に近接して植込むことができる。ある場合には、1つ以上のリードレス心臓ペースメーカ(LCP)による心臓活動の感知は、システムによる心臓不整脈の発生の判断を助けることができる。治療目的では、電気刺激治療、例えば抗頻拍ペーシング(ATP:Anti−Tachyarrhythmia Pacing)治療を植込み機器の少なくとも1つによって行うことができる。当該治療は検出された心臓不整脈の治療を助けることができる。
【0005】
心臓の頻拍性不整脈を特定する例示的な方法は、医療機器によって心臓活動を感知することと、前記医療機器から離間しており、患者の身体を含む通信経路を介して前記医療機器に通信可能に結合されている第1リードレス心臓ペースメーカによって心臓活動を感知することと、少なくとも部分的に、前記医療機器によって感知された心臓活動および前記第1リードレス心臓ペースメーカによって感知された心臓活動の両方に基づいて、頻拍性不整脈が発生するかどうかを判断することとを含むことができる。
【0006】
患者の心臓の頻拍性不整脈を識別する別の例示的な方法は、医療機器によって心臓活動を感知することと、患者の身体を含む通信経路を介して前記医療機器に通信可能に結合されている第1リードレス心臓ペースメーカによって心臓活動を感知することと、前記医療機器および前記第1リードレス心臓ペースメーカのうちの1つ以上によって、少なくとも部分的に、前記医療機器によって感知した心臓活動および前記第1リードレス心臓ペースメーカによって感知した心臓活動、あるいは前記医療機器によって感知した心臓活動または前記第1リードレス心臓ペースメーカによって感知した心臓活動に基づいて、頻拍性不整脈が発生するかどうかを判断することと、頻拍性不整脈が発生すると判断した後、前記医療機器および前記第1リードレス心臓ペースメーカのうちの1つ以上によって、少なくとも部分的に、前記医療機器によって感知した心臓活動および前記第1リードレス心臓ペースメーカによって感知した心臓活動の両方に基づいて、頻拍性不整脈のタイプを判断することとを含むことができる。
【0007】
上記概要は、本開示の各実施形態またはすべての実施態様を説明するものではない。利点および効果は、本開示のより完全な理解とともに、添付の図面と合わせて以下の説明および請求項を参照することにより明らかになり、認識されるであろう。
【0008】
本開示は、添付の図面に関連した様々な例示的実施形態の以下の説明を検討するとより完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の様々な実施例により使用することのできる例示的な医療機器のブロック図を示す。
図2】本開示のある実施例による電極を有する例示的なリードレス心臓ペースメーカ(LCP)を示す。
図3】本開示の互いに通信状態にある複数のリードレス心臓ペースメーカ(LCP)および他の機器、あるいは複数のリードレス心臓ペースメーカ(LCP)または他の機器を含む例示的な医療システムの模式図である。
図4】本開示のさらに別の実施例によるLCPおよび別の医療機器を含むシステムの模式図である。
図5】本開示の別の実施例によるLCPおよび別の医療機器を含むシステムの模式図である。
図6】本開示の別の実施例による複数のリードレス心臓ペースメーカ(LCP)システムを図示する模式図である。
図7】本開示のさらに別の実施例による複数のリードレス心臓ペースメーカ(LCP)システムを図示する模式図である。
図8】本開示のさらに別の実施例により、心臓の単一の心腔内に2つのLCPが植込まれる複数のリードレス心臓ペースメーカ(LCP)システムを図示する模式図である。
図9】本開示の別の実施例により、心臓の心外膜面にLCPのうちの1つが植込まれる複数のリードレス心臓ペースメーカ(LCP)システムを図示する模式図である。
図10】マスタ機器と複数のスレーブ機器を含む例示的な医療システムのブロック図である。
図11図3図10に関して説明する医療機器システムなどの医療機器システムによって実施することのできる様々な例示的な方法のフロー図である。
図12図3図10に関して説明する医療機器システムなどの医療機器システムによって実施することのできる様々な例示的な方法のフロー図である。
図13図3図10に関して説明する医療機器システムなどの医療機器システムによって実施することのできる様々な例示的な方法のフロー図である。
図14図3図10に関して説明する医療機器システムなどの医療機器システムによって実施することのできる様々な例示的な方法のフロー図である。
図15図3図10に関して説明する医療機器システムなどの医療機器システムによって実施することのできる様々な例示的な方法のフロー図である。
図16図3図10に関して説明する医療機器システムなどの医療機器システムによって実施することのできる様々な例示的な方法のフロー図である。
図17図3図10に関して説明する医療機器システムなどの医療機器システムによって実施することのできる様々な例示的な方法のフロー図である。
図18図3図10に関して説明する医療機器システムなどの医療機器システムによって実施することのできる様々な例示的な方法のフロー図である。
図19図3図10に関して説明する医療機器システムなどの医療機器システムによって実施することのできる様々な例示的な方法のフロー図である。
図20図3図10に関して説明する医療機器システムなどの医療機器システムによって実施することのできる様々な例示的な方法のフロー図である。
図21図3図10に関して説明する医療機器システムなどの医療機器システムによって実施することのできる様々な例示的な方法のフロー図である。
図22図3図10に関して説明する医療機器システムなどの医療機器システムによって実施することのできる様々な例示的な方法のフロー図である。
図23図3図10に関して説明する医療機器システムなどの医療機器システムによって実施することのできる様々な例示的な方法のフロー図である。
【0010】
本開示は様々な変型例および代替形態に修正可能であるが、その明細を図面では例として示しており、詳細に説明していく。しかし、その意図は説明される特定の例示的な実施形態に本開示の諸態様を制限するものではないことは理解されるべきである。逆に、その意図は本開示の精神および範囲内にあるすべての変型例、均等物および代替物を網羅することにある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明は、異なる図面において同様な要素は同じ符号を付している図面を参照して読むべきである。本説明および必ずしも縮尺通りではない図面は、例示的な実施形態を表しており、本開示の範囲を制限するものではない。
【0012】
正常で健康な心臓は、心臓全体に心臓自らが発生する電気信号を伝えることによる収縮を含む。これらの内因性信号は心臓の筋肉細胞または組織を収縮させる。この収縮は心臓から血液を強制的に出し入れして、身体の残りの部分全体への血液の循環を提供する。しかし、多くの患者はこの心臓の収縮力に影響する心臓病に罹患している。例えば、ある心臓はもはや内因性電気信号を発生または伝達しない疾患組織になっていることがある。いくつかの例では、疾患心臓組織は電気信号を異なる拍数で伝達し、それによって心臓の収縮が同期せず不効率になる。他の例では、心臓が心拍数が危険なほど低くなるような低い拍数で内因性信号を発生することがある。さらに他の例では、心臓が異常に高い拍数で電気信号を発生することがある。ある場合には、このような異常が細動状態にまで発展する可能性があり、そうなると患者の心臓の収縮はほぼ完全に脱同期して、心臓は血液をほとんどか、全く送りださない。
【0013】
当該異常を経験する患者を補助するために、多くの医療機器システムが開発されてきた。例えば、内因性心臓電気信号を感知し、感知した電気信号に基づいて、患者に1回以上の不整脈が起こっているかどうかを判断するシステムが開発されている。当該システムは、検出した不整脈を治療するために、患者の心臓に電気刺激を送出する能力も含むことができる。ある実施例において、いくつかの医療機器システムは、徐脈と呼ばれる低すぎる拍数で心臓が拍動しているときを特定する能力を含む。当該システムは心臓をより高い安全な拍数で収縮させる電気刺激治療を行うかまたは「ペーシング」パルスを送出することができる。いくつかの医療機器システムは、頻拍と呼ばれる速すぎる拍数で心臓が拍動しているときを判断することができる。当該システムは1つ以上の抗頻拍ペーシング(ATP:Anti−Tachycardia Pacing)治療をさらに含むことができる。ある当該ATP治療は、心臓自らが発生する信号よりも速い拍数で電気刺激パルスを心臓に送出することを含む。これは一時的に心臓の拍動を速めるかもしれないが、このような刺激プロトコルは心臓を、心臓自らが発生する信号ではなく送出されるペーシングパルスに応答して収縮させることができる。さらにATP治療は送出されるペーシングパルスの速度を減速し、それによって心拍数をより低く安全なレベルに低下させることができる。
【0014】
他の医療機器システムは細動状態および非同期性収縮を検出することができる。例えば、感知した信号に基づいて、いくつかのシステムは心臓が細動状態にあるときを判断することができる。当該システムはさらに、電気信号治療で当該細動状態を治療するように構成することもできる。ある当該治療は、心臓自らが発生する信号を圧倒するために、比較的大量の電気エネルギを心臓に与えることを含む(「除細動パルス」)。このような治療は心臓を「リセット」し、電気的な観点からすると、正常な電気プロセスを引き継がせることができる。他の医療システムは、心臓自らが発生する信号が異なる時点で発生すること、または心臓が当該信号を異なる速度で伝えることを感知することができる。これらの異常は心臓の収縮を同期させずに不効率にする。システムは1つ以上の心臓再同期治療(CRT:Cardiac Resynchronization Therapy)を施す能力をさらに含むことができる。ある当該CRTは電気刺激を心臓の上および心臓内、あるいは心臓の上または心臓内の異なる場所に送出することを含む。当該方法は心臓の異なる部位をほぼ同時に、またはシステムが電気刺激を異なる時点で異なる場所に送出する場合には同期して収縮させるのを助けることができる。
【0015】
本開示は、一般に患者内の複数の植込み機器を用いて、異常な心臓活動の検出および治療、あるいは検出または治療を調和させるシステムおよび方法に関する。ある場合には、医療機器システムは、心臓不整脈を検出し、電気刺激治療を行う複数の機器を含む。例えば、例示的なシステムは、完全皮下植込み型除細動器(S−ICD:Subcutaneous Implantable Cardioverter−Defibrillator)、体外除細動器、植込み型心臓ペースメーカ(ICP:Implantable Cardiac Pacemaker)、リードレス心臓ペースメーカ(LCP)、および/または診断専用機器(心臓の電気信号を感知するおよび不整脈を判断する、あるいは心臓の電気信号を感知するかまたは不整脈を判断することができるが、電気刺激治療を行わない機器)などの機器を含むことができる。
図1は、本開示の様々な実施例により使用することのできる例示的な医療機器100(以下、MD100という)のブロック図を示す。ある場合には、MD100は内因性心臓活動を感知し、不整脈の発生を判断し、不整脈の発生の判断に応答して電気刺激を送出するために使用される。ある場合には、MD100は患者の体内のある場所(例、患者の心臓に近接して)植込んで、心臓の心臓活動を感知および調整、あるいは感知または調整することができる。他の実施例では、MD100は患者の体外に配置して、心臓の心臓活動を感知および調整、あるいは感知または調整することもできる。ある実施例では、心臓収縮は一般に、心臓によって心臓自らが発生する電気信号から生じる。これらの電気信号は心臓組織を伝わり、心臓の筋肉細胞を収縮させる。MD100は当該電気信号および/または心臓の他の物理的なパラメータ(例、機械的収縮、心音、血圧、血中酸素濃度など)をMD100に感知させる機能を含むことができる。当該電気信号および物理的特性、あるいは電気信号または物理的特性を「心臓活動」と考えることができる。MD100は感知した心臓活動に基づいて不整脈の発生を判断する能力を含むことができる。いくつかの実施例では、MD100は検出した不整脈を治療するために、心臓に電気刺激を送出することができる。例えば、MD100は、徐脈治療、ATP治療、CRT、除細動または他の電気刺激治療など、1つ以上の治療を実施するために、電気刺激、ペーシングパルス、除細動パルスおよび同様なもの、あるいは電気刺激、ペーシングパルス、除細動パルスまたは同様なものを送出するように構成することができる。
【0016】
図1は、ある実施例の医療機器100の図である。例示的なMD100は、感知モジュール102と、パルス発生器モジュール104と、プロセッシングモジュール106と、遠隔測定モジュール108と、バッテリ110とを含むことができ、すべてハウジング120に収容されている。MD100は、ハウジング120に装着されて、ハウジング120内に収容されているモジュール102、104、106および108のうちの1つ以上と電気通信状態にあるリード線112および電極114をさらに含むことができる。
【0017】
リード線112はMD100のハウジング120に接続されて、そこから遠くに延びることができる。いくつかの実施例では、リード線112は心臓115など、患者の心臓の上または心臓内に植込まれる。リード線112はリード線112の様々な位置に位置付けられて、ハウジング120から離れている1つ以上の電極114を含むことができる。いくつかのリード線112は単一の電極114のみを含むことができるが、他のリード線112は複数の電極114を含むことができる。一般に、電極114は、リード線112が患者内に植込まれたときに、1つ以上の電極114が患者の心臓組織に接触するように、リード線112に位置付けられている。したがって、電極114は心臓自らが発生する電気信号をリード線112に伝えることができる。リード線112は、さらに、受信した電気信号をMD100の1つ以上のモジュール102、104、106および108に伝えることができる。同様に、MD100は電気刺激を発生することができ、リード線112は発生した電気刺激を電極114に伝えることができる。電極114はさらに電気信号を患者の心臓組織に伝えることができる。内因性信号を感知し、電気刺激を送出することを述べる場合、本開示はそのプロセスに当該伝導が内在するものとみなす。
【0018】
感知モジュール102は心臓の心臓電気活動を感知するように構成することができる。例えば、感知モジュール102をリード線112に接続して、リード線112から電極114に接続することができ、感知モジュール102は電極114およびリード線112を通って伝えられる心臓電気信号を受信するように構成することができる。いくつかの実施例では、リード線112は、加速度計、血圧センサ、心音センサ、血中酸素センサ、ならびに心臓および患者、あるいは心臓または患者の生理的パラメータを測定する他のセンサなど、様々なセンサを含むことができる。他の実施例では、当該センサはリード線112ではなく感知モジュール102に直接接続することができる。いずれの場合も、感知モジュール102は感知モジュール102に直接またはリード線112を通して接続されているセンサによって発生する当該信号を受信するように構成することができる。感知モジュール102はさらにプロセッシングモジュール106に接続することができ、当該受信した信号をプロセッシングモジュール106に通信するように構成することができる。
【0019】
パルス発生器モジュール104は電極114に接続することができる。いくつかの実施例では、パルス発生器モジュール104は電気刺激信号を発生して、心臓に電気刺激治療を施すように構成することができる。例えば、パルス発生器モジュール104はMD100内のバッテリ110に蓄積されたエネルギを利用してこのような信号を発生することができる。パルス発生器モジュール104は多数の異なる治療の中から1つまたは多数を施すために、電気刺激信号を発生するように構成することができる。例えば、パルス発生器モジュール104は徐脈治療、頻拍治療、心臓再同期治療および細動治療を施すように電気刺激信号を発生するように構成することができる。徐脈治療は、心拍数を上げることを試みるために、心臓自らが発生する電気信号よりも速い拍数でペーシングパルスを発生して送出することを含むことができる。頻拍治療は本明細書で説明するATP治療を含むことができる。心臓再同期治療は、同じく本明細書で説明するCRT治療を含むことができる。細動治療は心臓の動きを抑えて、細動状態の停止を試みるために、細動パルスを送出することを含むことができる。他の実施例では、パルス発生器104は、本明細書で説明するものとは異なる電気刺激治療を施すために電気刺激信号を発生して、検出された1つ以上の不整脈を治療するように構成することができる。
【0020】
プロセッシングモジュール106はMD100の動作を制御するように構成することができる。例えば、プロセッシングモジュール106は感知モジュール102から電気信号を受信するように構成することができる。受信した信号に基づいて、プロセッシングモジュール106は不整脈の発生を判断することができる。判断した不整脈に基づいて、プロセッシングモジュール106は1つ以上の治療に従って電気信号を発生して、判断した1つ以上の不整脈を治療するようにパルス発生器モジュール104を制御するように構成することができる。プロセッシングモジュール106は遠隔測定モジュール108からも情報を受信することができる。いくつかの実施例では、プロセッシングモジュール106は、当該受信した情報を不整脈が発生しているかどうかを判断するときに利用するか、または情報に応答して特定の措置をとるために利用することができる。プロセッシングモジュール106はさらに情報を他の機器に送信するように遠隔測定モジュール108を制御することができる。
【0021】
いくつかの実施例では、プロセッシングモジュール106は、超大規模集積回路(VLSI:Very−Large−Scale Integration)チップまたは特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)など、予めプログラミングされたチップを含むことができる。当該実施形態では、チップはMD100の動作を制御するために制御ロジックを用いて予めプログラミングされる。予めプログラミングされたチップを使用することにより、プロセッシングモジュール106は基本的な機能を維持できつつ、他のプログラマブル回路よりも消費電力を少なくすることができ、それによりMD100のバッテリ寿命が延びる。他の実施例では、プロセッシングモジュール106はプログラマブルマイクロプロセッサを含むことができる。このようなプログラマブルマイクロプロセッサはユーザがMD100の制御ロジックを調整することを可能にし、それによって予めプログラミングされたチップを使用するときよりもMD100の柔軟性を高めることが可能である。いくつかの実施例では、プロセッシングモジュール106はメモリ回路をさらに含むことができ、プロセッシングモジュール106はメモリ回路に情報を格納し、メモリ回路から情報を読み取ることができる。他の実施例では、MD100はプロセッシングモジュール106と通信状態にある個別のメモリ回路(図示せず)を含むことができ、プロセッシングモジュール106が個別のメモリ回路から情報を読み取り、個別のメモリ回路に情報を書き込むことができるようにする。
【0022】
遠隔測定モジュール108は、センサ、他の医療機器、または同様なものなど、MD100の外部に配置されている機器と通信するように構成することができる。当該機器は患者の身体の外部または内部のいずれに配置してもよい。場所に関係なく、外部機器(つまり、MD100の外部であるが、必ずしも患者の身体の外部ではない)は遠隔測定モジュール108を介してMD100と通信して、1つ以上の所望の機能を果たすことができる。例えば、MD100は感知した電気信号を遠隔測定モジュール108を通して外部医療機器に通信することができる。外部医療機器は不整脈の発生を判断するときに通信された電気信号を利用することができる。MD100はさらに感知した電気信号を外部医療機器から遠隔測定モジュール108を通して受信し、MD100は受信した感知電気信号を不整脈の発生の判断に利用することができる。遠隔測定モジュール108は外部機器との通信に1つ以上の方法を使用するように構成することができる。例えば、遠隔測定モジュール108は高周波(RF:Radiofrequency)信号、誘導結合、光学信号、音響信号、伝導された通信信号、または通信に適した他の信号を介して通信することができる。MD100と外部機器との通信技術は、以下図3を参照してさらに詳細に述べる。
【0023】
バッテリ110はその動作のためにMD100に電源を供給することができる。ある実施例では、バッテリ110は非充電式リチウム系バッテリとすることができる。他の実施例では、非充電式バッテリは当業界で周知の他の適した材料から作ることができる。MD100が植込み型機器の実施例では、MD100へのアクセスが制限されるおそれがあるため、数日、数週間、数ヶ月または数年などの治療期間中に十分な治療を行うのに十分な容量のバッテリを有する必要がある。他の実施例では、バッテリ110はMD100の使用寿命を延長しやすくするために、充電可能なリチウム系バッテリにすることができる。
【0024】
一般に、MD100は多数の既存の医療機器のうちの1つと同様なものにすることができる。例えば、MD100は様々な植込み型医療機器と同様なものにすることができる。当該実施例では、MD100のハウジング120は患者の経胸領域に植込むことができる。ハウジング120は一般に人体への植込みに安全で、植込まれたときに、MD100の様々なコンポーネントを患者の身体の体液および組織から気密シールすることのできる多数の周知の材料のいずれを含んでもよい。
【0025】
いくつかの実施例では、MD100は植込み型心臓ペースメーカ(ICP)とすることができる。このような実施例では、MD100は患者の心臓の上または患者の心臓内に植込まれている1本以上のリード線、例えばリード線112を有することができる。1本以上のリード線112は患者の心臓の心臓組織および血液、あるいは心臓組織または血液に接触する1つ以上の電極114を含むことができる。MD100は心臓自らが発生する心臓電気信号を感知して、例えば、感知した信号の分析に基づいて1つ以上の心臓不整脈を判断するようにも構成することができる。MD100はさらに、CRT、ATP治療、徐脈治療、除細動治療および他の治療のタイプ、あるいはCRT、ATP治療、徐脈治療、除細動治療または他の治療のタイプを心臓内に植込まれたリード線112を介して行うように構成することができる。
【0026】
ある場合には、MD100は完全皮下植込み型除細動器(S−ICD)とすることができる。当該実施例では、リード線112のうちの1本は皮下に植込まれたリード線を含む。ある場合には、MD100は心臓自らが発生する心臓電気信号を感知して、感知した信号の分析に基づいて1つ以上の心臓不整脈を判断するように構成することができる。MD100は不整脈の判断に応答して、1つ以上の除細動パルスを送出するようにさらに構成することができる。他の実施例では、MD100は植込み型除細動器(ICD:Implantable Cardioverter−Defibrillator)とすることができ、リード線112のうちの1本以上を心臓115内に植込むことができる。
【0027】
さらに他の実施例では、MD100はリードレス心臓ペースメーカ(LCP−図2に関してより具体的に説明する)とすることができる。当該実施例では、MD100はハウジング120から離れて延びるリード線112を含まなくてもよい。むしろ、MD100はハウジング120に対して連結される電極114を含んでもよい。これらの実施例では、MD100は患者の心臓の上または患者の心臓内の所望の位置に植込むことができ、CRT、ATP治療、徐脈治療および他の治療のタイプ、あるいはCRT、ATP治療、徐脈治療または他の治療のタイプを電極114を介して行うように構成することができる。
【0028】
ある場合には、MD100は診断専用機器とすることができる。ある場合には、MD100は心臓電気信号、および/もしくは機械的収縮、心音、血圧、血中酸素濃度などの物理的パラメータを感知するか、または受信するように構成することができる。MD100は感知または受信した心臓電気信号および物理的パラメータ、あるいは心臓電気信号もしくは物理的パラメータに基づいて、不整脈の発生を判断するようにさらに構成することができる。ある実施例では、MD100は不整脈の発生の判断に応答して電気刺激を与えるように構成されていないため、MD100はパルス発生モジュール104が除かれる。むしろ、検出した心臓不整脈に応答するために、MD100は医療機器のシステムの一部とすることができる。このようなシステムでは、MD100はシステム内の他の機器に情報を通信し、他の機器のうちの1つ以上が、MD100からの情報の受信に応答して、措置をとり、例えば電気刺激治療を行う。パルス発生器という用語は、ICD、ICP、LCPまたは同様なものなど、心臓に電気刺激治療を行うことができるようなあらゆる機器を記述するために使用する。
【0029】
いくつかの実施例では、MD100は植込み型医療機器でなくてもよい。むしろ、MD100は患者の身体の外部の機器とすることができ、患者の身体に配置される皮膚電極を含むことができる。当該実施例では、MD100は体表面心臓電気信号(例、心臓、または患者の身体内に植込まれた機器から発生し、身体を通して皮膚に伝わる電気信号)を感知することもできる。当該実施例では、MD100はさらに様々なタイプの電気刺激治療を行うように構成することができる。しかし、他の実施例では、MD100は診断専用機器とすることができる。
【0030】
図2は、例示的なリードレス心臓ペースメーカ(LCP)200の図である。図示する実施例では、LCP200は、LCP200がリード線112を含んでいなくてもよいことを除き、MD100のモジュールおよびコンポーネントのすべてを含む。図2で分かるように、LCP200はすべてのコンポーネントがLCP200内に収容されるか、または直にハウジング220上にあるコンパクトな機器とすることができる。図2に図示するように、LCP200は遠隔測定モジュール202、パルス発生器モジュール204、プロセッシングモジュール210およびバッテリ212を含むことができる。当該コンポーネントは図1のMD100に関連して述べた同様の名称のモジュールおよびコンポーネントと同様の機能を有することができる。
【0031】
いくつかの実施例では、LCP200は電気的感知モジュール206および機械的感知モジュール208を含むことができる。電気的感知モジュール206はMD100の感知モジュール102と同様なものにすることができる。例えば、電気的感知モジュール206は心臓によって心臓自らが発生する電気信号を受信するように構成することができる。電気的感知モジュール206は電極214に電気接続状態にすることができ、該電極214は心臓自らが発生した電気信号を電気的感知モジュール206に伝えることができる。機械的感知モジュール208は心臓の1つ以上の生理的パラメータを表す1つ以上の信号を受信するように構成することができる。例えば、機械的感知モジュール208は、加速度計、血圧センサ、心音センサ、血中酸素センサおよび患者の生理的パラメータを測定する他のセンサなど、1つ以上のセンサを含むか、またはこれらと電気通信状態にあることができる。図2に関して個別の感知モジュールとして説明したが、いくつかの実施例では、電気的感知モジュール206および機械的感知モジュール208は単一モジュールにまとめることができる。
【0032】
少なくとも1つの実施例では、図2に図示されるモジュール202、204、206、208および210の各々は、単一の集積回路チップに実装することができる。他の実施例では、図示されるコンポーネントは互いに電気通信状態にある複数の集積回路チップに実装することができる。モジュール202、204、206、208および210ならびにバッテリ212のすべてをハウジング220内に包囲することができる。ハウジング220は一般に人体内への植込みに安全であることが分かっており、LCP200が患者の中に植込まれたときに、モジュール202、204、206、208および210ならびにバッテリ212を体液および組織から気密シールすることのできるいずれの材料を含んでもよい。
【0033】
図2に図示されるように、LCP200は電極214を含むことができ、該電極214はハウジング220に対して固定されることができるが、LCP200を取り囲む組織および血液、あるいは組織または血液に露出することができる。したがって、電極214は一般にLCP200のいずれかの端部に設けられ、モジュール202、204、206、208および210のうちの1つ以上と電気通信状態にすることができる。いくつかの実施例では、電極214は、電極214がハウジング220に対して直接固定されないように、短い接続ワイヤのみでハウジング220に接続することができる。いくつかの実施例では、LCP200はさらに1つ以上の電極214’を含むことができる。電極214’はLCP200の両側に配置して、LCP200が心臓電気活動を感知するおよび電気刺激を送出する、あるいは心臓電気活動を感知するかまたは電気刺激を送出する電極の数を増やすことができる。電極214および214’、あるいは電極214または214’は、人体内への植込みに安全なことが分かっている様々な金属または合金などの1つ以上の生体適合性の導電材料から構成することができる。ある場合には、LCP200に接続される電極214および214’、あるいは電極214または214’は、電極214を隣接する電極、ハウジング220および他の材料から、あるいは電極、ハウジング220または他の材料から電気絶縁する絶縁部を有することができる。
【0034】
患者の体内にLCP200を植込むために、手術者(例、医師、臨床医など)はLCP200を患者の心臓の心臓組織に取り付ける必要がある。取り付けやすくするために、LCP200は1つ以上のアンカ216を含むことができる。アンカ216は多数の取付または繋止メカニズムのいずれでもよい。例えば、アンカ216は1つ以上のピン、ステープル、ねじ山、ねじ、らせん状構造物、叉、および同様なもの、あるいはピン、ステープル、ねじ山、ねじ、らせん状構造物、叉、または同様なものを含むことができる。いくつかの実施例では、図示していないが、アンカ216はアンカ216の少なくとも長さの一部に沿ってその外表面にねじ山を含むことができる。ねじ山は心臓組織とアンカとの間に摩擦を与え、心臓組織内にアンカ216を取り付けるのに役立てることができる。他の実施例では、アンカ216は、かえし、突棘、または同様なものなどの他の構造物を含んで、周囲の心臓組織との係合をしやすくすることができる。
【0035】
図1および図2にそれぞれ示すMD100およびLCP200の設計および寸法は、様々な要因に基づいて選択することができる。例えば、LCPの場合にときどきあるように、医療機器が心内膜組織への植込み用の場合、医療機器は大腿静脈を通して心臓に導入することができる。この場合、医療機器の寸法は、静脈の周囲の組織を損傷させずに、静脈の曲がりくねった経路を滑らかに進むようなものとする。ある実施例によると、大腿静脈の平均直径は幅が約4mmから約8mmにすることができる。大腿静脈を通って心臓に進むためには、医療機器は8mm未満の直径を有することができる。いくつかの実施例では、医療機器は断面が円形の円筒形の形状を有することができる。しかし、医療機器は方形、楕円形など他の適した形状で作ることができることは留意されるべきである。医療機器を皮下に植込むように設計する場合は、凹凸の小さい平坦な方形の医療機器が望ましい。
【0036】
上記図1および図2はMD100の様々な実施例を説明した。いくつかの実施例では、医療機器システムは2つ以上の医療機器を含むことができる。例えば、複数の医療機器100/200を連動して使用し、心臓不整脈および他の心臓異常、あるいは心臓不整脈または他の心臓異常を検出し、治療することができる。いくつかの実施例のシステムを図3図10に関連して以下説明する。当該複数の機器システムにおいては、医療機器を別の医療機器に通信させるか、または少なくとも別の医療機器からの様々な通信信号を受信させることが望ましい。
【0037】
図3は、医療機器システムおよび複数の医療機器が通信することのできる通信経路の実施例を示す。図示する実施例では、医療機器システム300はLCP302および304と、外部医療機器306と、他のセンサ/機器310とを含むことができる。外部機器306はMD100に関して前述した機器のいずれでもよい。他のセンサ/機器310もMD100に関して前述した機器のいずれでもよい。他の実施例では、他のセンサ/機器310は、加速度計もしくは血圧計センサ、または同様なものなどのセンサを含むことができる。さらに他の実施例では、他のセンサ/機器310はシステム300の1つ以上の機器をプログラミングするために使用することのできる外部プログラマ機器を含むことができる。
【0038】
システム300の様々な機器は通信経路308を介して通信することができる。例えば、LCP302および304、あるいはLCP302または304は内因性心臓電気信号を感知することができ、当該信号をシステム300の1つ以上の他の機器302/304、306および310に通信経路308を介して通信することができる。ある実施例では、外部機器306は当該信号を受信し、受信した信号に基づいて、不整脈の発生を判断することができる。ある場合には、外部機器306は当該判断をシステム300の1つ以上の他の機器302/304、306および310に通信することができる。さらに、システム300の1つ以上の他の機器302/304、306および310は通信された不整脈の判断に基づいて、適切な電気刺激を送出するなど、措置を取ることができる。この説明はシステム300の様々な機器間の通信のための多くの理由のうちのほんの一つである。
【0039】
通信経路308は様々な通信方法のうちの1つ以上を代表する。例えば、システム300の機器はRF信号、誘導結合、光学信号、音響信号、または通信に適した他の信号を介して互いに通信することができ、通信経路308は当該信号を代表する。
【0040】
少なくとも1つの実施例において、通信経路308は伝導される通信信号を代表する。したがって、システム300の機器は伝導される通信を可能にするコンポーネントを有することができる。通信経路308が伝導される通信信号を含む実施例では、システム300の機器は別の機器によって患者の身体に送出される電気通信パルスを感知することにより、互いに通信することができる。患者の身体はこれらの電気通信パルスをシステム300の他の機器に伝えることができる。当該実施例では、送出された電気通信パルスは前述した電気刺激治療の電気刺激パルスとは異なる。例えば、システム300の機器は当該電気通信パルスを閾値以下の電圧レベルで与えることができる。すなわち、送出された電気通信パルスの電圧振幅は、心臓を捕捉しないように十分に低くすることができる(例、収縮を生じさせない)。ある状況においては、送出された1つ以上の電気通信パルスが心臓を捕捉するかもしれないが、他の状況では、送出された電気刺激パルスは心臓を捕捉しないかもしれない。ある場合には、送出された電気通信パルスは変調されるか(例、パルス幅変調)、または通信パルスの送出のタイミングを変えて、通信される情報を符号化することができる。これらはほんの数例である。
前述したように、いくつかの実施例のシステムは不整脈の発生を判断するために、および/または1つ以上の不整脈の判断に応答して電気刺激治療を行うために、複数の機器を採用することができる。図3図10は、不整脈の発生を判断し、および電気刺激治療を行うため、あるいは不整脈の発生を判断するか、または電気刺激治療を行うために、複数の機器を使用することができる様々な実施例のシステムを示す。しかし、図3図10は実施例を制限するものと見なしてはならない。例えば、図3図10は様々な複数の機器システムが様々な不整脈を検出するためにいかに調和するかを説明する。しかし、MD100およびLCP200に関して説明したものなどの機器のあらゆる組み合わせを、不整脈検出のための以下に説明する手法と協調して使用することができる。さらに、以下の説明は様々なシステムの機器が不整脈を検出するためにいかに動作するかに重点を置いているが、当該機器はさらに、2014年1月10日に出願された「不整脈を治療するためのシステム及び方法(SYSTEMS AND METHODS FOR TREATING CARDIAC ARRHYTHMIAS)」、および2014年1月10日に出願された「第1植込み可能医療機器から別の植込み可能医療機器への治療活動の通信(COMMUNICATION OF THERAPY ACTIVITY OF A FIRST IMPLANTABLE MEDICAL DEVICE TO ANOTHER IMPLANTABLE MEDICAL DEVICE)」という発明の名称の同時係属中の同一出願人に所有される仮出願に説明されるものなど、1つ以上の技術に従って電気刺激治療を行うために動作することもでき、両出願は参照によりその全部をこれに組み込む。
【0041】
図4は、LCP402およびパルス発生器406を含むある実施例の医療機器システム400を示す。いくつかの実施例では、パルス発生器406は体外除細動器またはICDのいずれでもよい。例えば、パルス発生器406はMD100に関して前述したような機器とすることができる。いくつかの実施例では、パルス発生器406はS−ICDとすることができる。パルス発生器406が体外除細動器である実施例では、電極408a、408b、および408cは患者の身体に常駐する皮膚電極とすることができる。パルス発生器406がS−ICDである実施例では、電極408a、408b、および408cは心臓410に近いが、心臓410の上または心臓410内ではない患者の身体内に植込まれる皮下リード線に装着することができる。
【0042】
図示されるように、LCP402は心臓410内に植込むことができる。LCP402は心臓410の左心室(LV:Left Ventricle)内に植込まれた状態が描かれているが、他の実施例では、LCP402は心臓410の異なる心腔内に植込むことができる。例えば、LCP402は心臓410の左心房(LA:Left Atrium)または心臓410の右心房(RA:Right Atrium)内に植込むことができる。他の実施例では、LCP402は心臓410の右心室(RV:Right Ventricle)内に植込むことができる。
【0043】
いずれの場合であっても、LCP402およびパルス発生器406は協働して、心臓410の心臓不整脈の発生を判断することができる。ある場合には、機器402および406は独立して動作して、心臓410の心臓活動を感知することができる。前述したように、心臓活動は、感知される心臓電気信号および感知される生理的パラメータ、あるいは感知される心臓電気信号または感知される生理的パラメータを含むことができる。当該実施例では、LCP402およびパルス発生器406はそれぞれ、独立して感知した心臓活動に基づいて、互いに独立して不整脈の発生を判断するように動作することができる。LCP402またはパルス発生器406のうちの第1のものが不整脈の第1判断を行う場合、その第1機器は第1の判断を第2機器に通信することができる。システム400の第2機器もそれ自体が感知した心臓活動に基づいて不整脈の判断、例えば、不整脈の第2判断を行う場合、不整脈が確認され、システム400は心臓410に適切な電気刺激治療を行い始めることができる。このように、システム400の両方の機器402および406を使用して不整脈の発生を判断することができる。いくつかの実施例では、機器402または406のうちの一方のみが不整脈の発生を判断し、他方は判断しない場合、システム400はそれでも心臓410に適切な電気刺激治療を行い始めることができる。
【0044】
他の実施例では、機器402および406のうちの一方のみが能動的に心臓活動を感知して、不整脈の発生を判断する。例えば、能動的に感知する機器(例、LCP402)が不整脈の発生を判断する場合、能動的に感知する機器はシステム400の他方の機器(例、パルス発生器406)に判断を通信することができる。その後、システム400は心臓410に適切な電気刺激治療を行い始めることができる。別の実施例では、能動的に心臓活動を感知する機器は感知した心臓活動を他方の機器に通信することができる。その後、受信した心臓活動に基づいて、他方の機器は不整脈の発生を判断することができる。その後、システム400は心臓410に適切な電気刺激治療を行い始めることができる。これらの実施例のうちのいくつかにおいて、他方の機器はさらに能動的に感知する機器に不整脈の判断を通信することができる。
【0045】
さらに他の実施例では、機器402または406のうちの第1のものだけが心臓活動を能動的に連続感知することができる。第1機器(例、パルス発生器406)は、感知した心臓活動に基づいて、不整脈の発生を継続的に判断することができる。当該実施例では、第1機器が不整脈の発生を判断した場合、第1機器は判断を第2機器(例、LCP402)に通信することができる。不整脈の発生の判断を受信すると、第2機器は心臓活動を感知し始めることができる。その感知した心臓活動に基づいて、第2機器も不整脈の発生を判断することができる。当該実施例では、第2機器も不整脈の発生を判断した後にのみ、システム400は心臓410に適切な電気刺激治療を行い始めることができる。
【0046】
いくつかの実施例では、不整脈の発生の判断は不整脈の開始の判断を含むことができ、システム400は電気刺激治療を行い始めるべきときを判断するように構成することができる。いくつかの実施例では、不整脈の発生の判断は不整脈の終了の判断を含むことができる。当該実施例では、システム400は電気刺激治療を行うのを止めるべきときも判断するように構成することができる。
【0047】
システム400が心臓410に適切な電気刺激治療を行うように動作する実施例では、判断した不整脈が細動の場合、パルス発生器406は心臓410に除細動パルスを与えるように動作することができる。判断した不整脈が頻拍である実施例の場合、LCP402は心臓410にATP治療を行うことができる。判断した不整脈が徐脈である実施例の場合、LCP402は心臓410に徐脈治療を行うことができる。判断した不整脈が非同期収縮である実施例の場合、LCP402は心臓410にCRTを行うことができる。
【0048】
図5は、LCP502およびパルス発生器506を含むある実施例の医療機器システム500を示す。この実施例では、パルス発生器506は植込み型心臓ペースメーカ(ICP)とすることができる。例えば、パルス発生器506は、MD100に関して前述したものなどのICPとすることができる。パルス発生器506がICPである実施例では、電極504a、504b、および504cは1本以上のリード線を介して、心臓510の右心室および右心房、あるいは右心室もしくは右心房の上またはこれらの中に植込むことができる。
【0049】
LCP502は心臓510内に植込むことができる。LCP502は心臓510の左心室(LV)内に植込まれた状態が描かれているが、ある場合には、LCP502は心臓510の異なる心腔内に植込むことができる。例えば、LCP502は心臓510の左心房(LA)または心臓510の右心房(RA)内に植込むことができる。他の実施例では、LCP502は心臓510の右心室(RV)内に植込むことができる。
【0050】
いずれの場合であっても、LCP502およびパルス発生器506は協働して、心臓510の心臓不整脈の発生を判断することができる。ある場合には、機器502および506は独立して動作して、心臓510の心臓活動を感知することができる。前述したように、心臓活動は、感知される心臓電気信号および感知される生理的パラメータ、あるいは感知される心臓電気信号または感知される生理的パラメータを含むことができる。ある場合には、LCP502およびパルス発生器506はそれぞれ、独立して感知した心臓活動に基づいて、独立して不整脈の発生を判断するように動作することができる。LCP502またはパルス発生器506のうちの第1のものが不整脈の第1判断を行う場合、その第1機器は第1の判断を第2機器に通信することができる。システム500の第2機器もそれ自体が感知した心臓活動に基づいて不整脈の判断、例えば、不整脈の第2判断を行う場合、システム500は不整脈を確認し、心臓510に適切な電気刺激治療を行い始めることができる。このように、システム500の両方の機器502および506を使用して不整脈の発生を判断することができる。ある場合には、機器502または506のうちの一方のみが不整脈の発生を判断する場合も、システム500は心臓510に適切な電気刺激治療を行い始めることができる。
【0051】
いくつかの実施例では、機器502および506のうちの一方のみが能動的に心臓活動を感知して、不整脈の発生を判断することができる。例えば、能動的に感知する機器(例、パルス発生器506)が不整脈の発生を判断する場合、能動的に感知する機器はシステム500の他方の機器(例、LCP502)に判断を通信することができる。その後、システム500は心臓510に適切な電気刺激治療を行い始めることができる。いくつかの実施例では、能動的に心臓活動を感知する機器は感知した心臓活動を他方の機器に通信することができる。その後、受信した心臓活動に基づいて、他方の機器は不整脈の発生を感知して判断することができる。その後、システム500は心臓510に適切な電気刺激治療を行い始めることができる。ある場合には、他方の機器はさらに能動的に感知する機器に不整脈の判断を通信することができる。
【0052】
さらに他の実施例では、機器502または506のうちの第1のものだけが心臓活動を能動的に連続感知することができる。第1機器はさらに、感知した心臓活動に基づいて、不整脈の発生を継続的に判断することができる。いくつかの実施例では、第1機器が不整脈の発生を判断した場合、第1機器は判断を第2機器に通信することができる。不整脈の発生の判断を受信すると、第2機器は心臓活動を感知し始めることができる。その感知した心臓活動に基づいて、第2機器も不整脈の発生を判断することができる。当該実施例では、第2機器も不整脈の発生を判断した後にのみ、システム500は心臓510に適切な電気刺激治療を行い始めることができる。
【0053】
いくつかの実施例では、不整脈の発生の判断は不整脈の開始の判断を含むことができ、システム500は電気刺激治療を行い始めるべきときを判断するように構成することができる。いくつかの実施例では、不整脈の発生の判断は不整脈の終了の判断を含むことができる。当該実施例では、システム500は電気刺激治療を行うのを止めるべきときを判断するように構成することができる。複数の機器が心臓不整脈の発生を判断するまで、システム500が心臓510に適切な電気刺激治療を行い始めない実施例では、電気刺激治療の施行をトリガしない判断をそれぞれ仮判断という。
【0054】
システム500が心臓510に適切な電気刺激治療を行うように動作する実施例では、判断した不整脈が頻拍の場合、パルス発生器506、LCP502のいずれか、またはその両方が心臓510にATP治療を行うことができる。判断した不整脈が徐脈である実施例では、パルス発生器506、LCP502のいずれか、またはその両方が心臓510に徐脈治療を行うことができる。判断した不整脈が非同期収縮である実施例では、パルス発生器506、LCP502のいずれか、またはその両方が心臓510にCRTを行うことができる。
【0055】
図6は、LCP602およびLCP606を含むある実施例の医療機器システム600を示している。LCP602およびLCP606は心臓610内に植込まれた状態が図示されている。LCP602および606は心臓610の左心室(LV)および心臓610の右心室内にそれぞれ植込まれている状態が描かれているが、他の実施例では、LCP602および606は心臓610の異なる心腔内に植込むことができる。例えば、システム600は心臓610の両心房内に植込まれるLCP602および606を含むことができる。他の実施例では、システム600は心臓610の1つの心房と1つの心室内に植込まれるLCP602および606を含むことができる。それ以外の実施例では、システム600は心室および心房のあらゆる組み合わせ内に植込まれるLCP602および606を含むことができる。さらに他の実施例では、システム600は心臓610の同じ心腔内に植込まれるLCP602および606を含むことができる。
【0056】
いずれの場合であっても、またいくつかの実施例では、LCP602およびLCP606は協働して心臓610の心臓不整脈の発生を判断することができる。例えば、機器602および606は独立して動作して、心臓610の心臓活動を感知することができる。前述したように、心臓活動は、感知される心臓電気信号および感知される生理的パラメータ、あるいは感知される心臓電気信号または感知される生理的パラメータを含むことができる。当該実施例では、LCP602およびLCP606はそれぞれ、独立して感知した心臓活動に基づいて、独立して不整脈の発生を判断するように動作することができる。LCP602またはLCP606のうちの第1のものが不整脈の第1判断を行う場合、その第1機器は第1の判断を第2機器に通信することができる。システム600の第2機器もそれ自体が感知した心臓活動に基づいて不整脈の判断、例えば、不整脈の第2判断を行う場合、システム600は不整脈を確認し、心臓610に適切な電気刺激治療を行い始めることができる。このように、システム600の両方の機器602および606を使用して不整脈の発生を判断することができる。いくつかの実施例では、機器602または606のうちの一方のみが不整脈の発生を判断する場合に、システム600は心臓610に適切な電気刺激治療を行い始めることができる。
【0057】
他の実施例では、機器602および606のうちの一方のみが能動的に心臓活動を感知して、不整脈の発生を判断することができる。これらの実施例のうちのいくつかにおいて、能動的に感知する機器(例、LCP606)が不整脈の発生を判断する場合、能動的に感知する機器はシステム600の他方の機器(例、LCP602)に判断を通信することができる。その後、システム600は心臓610に適切な電気刺激治療を行い始めることができる。ある場合には、能動的に心臓活動を感知する機器は感知した心臓活動を他方の機器に通信することができる。その後、受信した心臓活動に基づいて、他方の機器は不整脈の発生を判断することができる。その後、システム600は心臓610に適切な電気刺激治療を行い始めることができる。これらの実施例のいくつかにおいて、他方の機器はさらに能動的に感知する機器および別の機器、あるいは能動的に感知する機器または別の機器に不整脈の判断を通信することができる。
【0058】
いくつかの実施例では、機器602または606のうちの第1のものだけが心臓活動を能動的に連続感知することができる。第1機器は、感知した心臓活動に基づいて、不整脈の発生を継続的に判断することができる。当該実施例では、第1機器が不整脈の発生を判断した場合、第1機器は判断を第2機器に通信することができる。不整脈の発生の判断を受信すると、第2機器は心臓活動を感知し始めることができる。その感知した心臓活動に基づいて、第2機器も不整脈の発生を判断することができる。当該実施例では、第2機器も不整脈の発生を判断した後にのみ、システム600は心臓610に適切な電気刺激治療を行い始める。
【0059】
いくつかの実施例では、不整脈の発生の判断は不整脈の開始の判断を含むことができ、システム600は電気刺激治療を行い始めるべきときを判断するように構成することができる。いくつかの実施例では、不整脈の発生の判断は不整脈の終了の判断を含むことができる。当該実施例では、システム600は電気刺激治療を行うのを止めるべきときも判断するように構成することができる。複数の機器が心臓不整脈の発生を判断するまで、システム600が心臓610に適切な電気刺激治療を行い始めない実施例では、電気刺激治療の施行をトリガしない判断をそれぞれ仮判断という。
【0060】
システム600が心臓610に適切な電気刺激治療を行うように動作する実施例では、判断した不整脈が頻拍の場合、LCP602、LCP606のいずれか、またはその両方が心臓610にATP治療を行うことができる。判断した不整脈が徐脈である実施例では、LCP602、LCP606のいずれか、またはその両方が心臓610に徐脈治療を行うことができる。判断した不整脈が非同期収縮である実施例では、LCP602、LCP606のいずれか、またはその両方が心臓610にCRTを行うことができる。
【0061】
図4図6に必ずしも描かれていないが、システム400、500、または600の2つの機器のうちの1つは診断専用機器とすることもできるであろう。当該実施例では、機器のうちの1つ以上が不整脈の発生を判断した後も、診断専用機器は電気刺激治療を行わなくてもよい。むしろ、電気刺激治療は、望まれる場合、適切な電気刺激治療を行うことのできるシステムの別の機器によって行うことができる。
【0062】
図7は、LCP702、LCP704およびLCP706を含む3つの個別のLCPを備えるある実施例の医療機器システム700を示している。システム700はLCP702、704、および706がそれぞれLV、RV、およびLA内に植込まれた状態が描かれているが、他の実施例では心臓710の異なる心腔内に植込まれるLCP702、704、および706を含むことができる。例えば、システム700は心臓710の両心房と1つの心室内に植込まれるLCPを含むことができる。他の実施例では、システム700は心臓710の両心室と1つの心房内に植込まれるLCPを含むことができる。より一般的には、システム700はあらゆる組み合わせの心室および心房内に植込まれるLCPを含むことができることが想定される。ある場合には、システム700は心臓710の同じ心腔内に植込まれるLCP702、704、および706の2つ以上を含むことができる。
【0063】
実用上、このようなシステム700は図4図6に関して上記説明した手法のいずれかに従って動作することができる。しかし、ある場合には、システムは、少なくともある程度別々に動作することもできる。例えば、システム700が心臓710に適切な電気刺激治療を行い始める前には、LCP702、704、および706の過半数のみが不整脈の発生を判断するだけでよい。例えば、ある場合には、LCP702、704、および706の全部が心臓活動を感知して、不整脈の発生を独立して判断している。ある場合には、LCP702、704、および706の過半数が不整脈の発生を判断した後でのみ、システム700は心臓710に適切な電気刺激治療を行うことができる。ある場合には、LCPのうちの1つをマスタLCPとして設定し、他のスレーブLCPは不整脈の発生を判断したかどうかをマスタLCPに通信することができる。その後、マスタLCPはLCP702、704、および706のうちの過半数が不整脈の発生を判断したかどうかを判断し、もしそうなら、心臓710への適切な電気刺激治療の施行を指示することができる。ある場合には、マスタLCPは、検出した不整脈のタイプおよび場所、あるいはタイプまたは場所に応じて、LCP702、704、および706のうちの特定のものに、心臓710への電気刺激治療の施行を指示することができる。
【0064】
あるいは、またある場合において、システム700が心臓710に適切な電気刺激治療を行い始める前には、1つのLCPのみが不整脈の発生を判断するだけでよい。さらに他の実施例では、システム700が心臓710に適切な電気刺激治療を行う前には、LCP702、704、および706の3つ全部が不整脈の発生を判断する必要がある。
【0065】
ある場合において、1つのLCP702、704、および706のみが心臓活動を能動的に感知して、不整脈の発生を判断することができる。不整脈の発生を判断した後、能動的に感知する機器は他の機器の1つまたは両方にその判断を通信することができる。ある場合には、他の機器の1つまたは両方は、その後不整脈の発生を感知して判断し始めることができる。ある場合には、他の機器のうちの第1のものが不整脈の発生を判断する場合、システム700は心臓710に適切な電気刺激治療を行い始めることができる。他の場合には、他の機器の両方が不整脈の発生を判断する場合に、システム700は心臓710に適切な電気刺激治療を行い始めることができる。
【0066】
ある場合において、LCP702、704、および706はデイジーチェーン構成で設置することができる。例えば、能動的に感知する機器は他の2つの機器の1つのみに不整脈の判断を送信することができる(あるいは、受信する2つの機器の1つのみが、能動的に感知する機器から受信した判断に基づいて行動することができる)。受信する機器は、その後、不整脈の発生を能動的に感知して判断し始めることができる。不整脈の発生を判断すると、受信する機器は最後の機器にその判断を通信することができる。最後の機器は、その後、不整脈の発生を感知して判断し始めることができる。ある場合には、最後の機器が不整脈の発生を判断した場合にのみ、システム700は心臓710に適切な電気刺激治療を行い始める。
【0067】
システム400、500および700の説明も踏まえて、いくつかの実施例では、不整脈の発生の判断は不整脈の開始の判断を含むことができ、システム700は電気刺激治療を行い始めるべきときを判断するように構成することができる。いくつかの実施例では、不整脈の発生の判断は不整脈の終了の判断を含むことができる。当該実施例では、システム700は電気刺激治療の施行を止めるべきときを判断するように構成することができる。複数のLCP機器が不整脈の発生を判断するまで、システム700が心臓710に適切な電気刺激治療を行い始めない実施例では、電気刺激治療の施行をトリガしない判断をそれぞれ仮判断という。
【0068】
システム700が心臓710に適切な電気刺激治療を行うように動作する実施例では、判断した不整脈が頻拍の場合、LCP702、704、および706のうちの1つ以上が心臓710にATP治療を行うことができる。判断した不整脈が徐脈である実施例では、LCP702、704、および706のうちの1つ以上が心臓710に徐脈治療を行うことができる。判断した不整脈が非同期収縮である実施例では、LCP702、704、および706のうちの1つ以上が心臓710にCRTを行うことができる。LCP702、704、および706の2つ以下が不整脈の検出に応答して電気刺激治療を行えることが想定される。例えば、LCP702、704、および706のうちの1つのみが電気刺激治療を行うことができる。他の実施例では、LCP702、704、および706のうちの2つが電気刺激治療を行うことができる。
【0069】
前述の説明に従い、当該手法がどのように3つよりもさらに多くのLCP機器を有するシステムにも適用できるかが分かる。例えば、4LCP機器のシステムでは、システムが適切な電気刺激治療を行い始める前には、1つ、2つ、3つまたは4つの機器のいずれを使用して不整脈の発生を判断してもよい。いくつかの当該実施例では、LCP機器の全部、数個または1つが当初能動的に不整脈の発生を感知し判断することができる。3つ以下が当初能動的に感知する実施例では、能動的に感知する機器の1つが不整脈の発生を判断し、その判断をシステムの他の機器に通信したら、システムの他の機器のうちの少なくとも1つが能動的に心臓活動を感知し、不整脈の発生を判断し始めることができ、ここでも、前述した手法は、5、6、7または患者の身体内への植込みに実際に実行可能なあらゆる他の数など、任意の数のLCP機器または他の機器を含むシステムにも適用することができる。
【0070】
さらに、3つ以上のLCP機器に関して上記説明したが、同じ手法を図4図5に関して説明するシステムのいずれにも適用することができる。例えば、システム400および500のいずれも、第2LCP機器など、第3の機器をさらに含むことができる。当該システムでは、3つの機器はシステム700の前述の手法のいずれかに従って動作することができ、パルス発生器は不整脈を感知し、および電気刺激治療を行うことができるか、あるいはパルス発生器は不整脈を感知するか、または電気刺激治療を行うことができる。他の実施例では、システム400および500のいずれも複数の追加機器を含むことができる。例えば、システム400および500のいずれも、パルス発生器406および506に加えて、患者への植込みに実際的な3、4、5または任意の数のLCP機器を含むことができる。したがって、当該実施例では、機器は前述した手法のいずれかに従って協働することができる。
【0071】
複数の機器のシステムは、ある場合には、単一機器のシステムよりも効果的な電気刺激治療を行うことが可能である。例えば、電気刺激治療を行い始める前に、例示的なシステムはシステムの機器のうちのどれが最初に心臓の脱分極波を感知するかを判断することができる。当該実施例では、当該システムは最初に脱分極波を感知する機器に電気刺激治療を行うよう指図することができる。これにより、当該システムに不整脈の起源により近い部位で電気刺激治療を行わせることができ、電気刺激治療の効果を高めることができる。
【0072】
システム700の実施例では、システム700の機器のうちの1つは、前述した手法のいずれかに従い、個別に、またはシステム700の他の機器による仮判断に加えて、頻拍性不整脈の発生を判断することができる。システム700の機器のうちの1つ(例、マスタ機器)は心臓710にATP治療を行うように判断するか、またはシステム700の別の機器にATP治療を行う指図をするよう判断することができる。ATP治療を行うか、または別の機器にそのように指図する前に、システム700の機器のうちの1つがシステム700のうちのどの機器が最初に心臓710の内因性心臓脱分極波を感知したかを判断することができる。それから、このような脱分極波を最初に感知した機器がATP治療の施行を開始することができる。
【0073】
上記の説明は、心臓の内因性心臓脱分極波を最初に感知する機器によって電気刺激治療を行うように、システムがどのように動作するかを示すほんの一例である。他の実施例では、不整脈および治療のタイプが異なっていてもよい。さらに、このような特徴は機器の特定の構成または数に関係しないため、本明細書で説明されるシステムのいずれもこのような特徴をさらに含むことができる。システムの唯一の制限は、システムの機器が適切な電気刺激治療を行うことが可能かどうかである。
【0074】
複数の機器のシステムを使用して、心房不整脈と心室不整脈との区別をするのに役立てることができる。例えば、本明細書で説明する実施例のシステムは、不整脈が心房不整脈か心室不整脈かによって、当該不整脈をより効果的に治療するためにそれぞれ異なるように動作することができる。
【0075】
ある例示的な実施例として、システム700の機器のうちの1つは、前述した手法のいずれかに従って、個別に、またはシステム700の他の機器による仮判断に加えて、頻拍性不整脈の発生を判断することができる。さらに、システム700の機器は、頻拍が心房頻拍か心室頻拍かを判断することができる。頻拍が心房頻拍の場合、システム700の機器のうちの1つ以上が電気刺激治療を行わないと判断することができる。頻拍が心室頻拍の場合、システム700の機器のうちの1つ以上はさらに頻拍レートが閾値以上かどうかと、心臓電気信号が多形性信号かどうかを判断することができる。頻拍レートが閾値未満で、心臓電気信号が多形性信号ではない場合、システム700の機器の1つ以上は心臓710にATP治療を行うか、またはシステム700の別の機器にATP治療を行うよう指図することができる。頻拍レートが閾値以上であるか、または心臓電気信号が多形性信号である場合、システム700の機器のうちの1つ以上は心臓710に除細動パルスを送出するか、またはシステム700の別の機器に除細動パルスを送出するよう指図することができる。当該心房不整脈と心室不整脈とを区別すること、および異なるタイプの不整脈に対して別々の応答をすることは、行う電気刺激治療の効果を高めつつ、行う電気刺激治療の悪影響を減らすことができる。上記の説明は、開示するシステムがいかに動作して、様々な不整脈を区別し、判断した異なる不整脈に応答して電気刺激治療を行えるかを示すほんの一例である。
【0076】
図8および図9は、複数の機器の医療システムの他の実施例の植込み場所および構成を示す。例えば、図8の医療機器システム800は3つのLCP機器、LCP802、804、および806を示している。LCP機器のうちの2つ、LCP802および804は心臓810の1つの心腔内に植込まれている状態が示されている。他の実施例では、3つ全部の機器を心臓810の1つの心腔内に植込むことができる。2つのLCP802および804は心臓810のLV内に植込まれた状態が示されているが、他の実施例では、心臓810の心腔のいずれが複数の植込みLCP機器を含んでいてもよい。1つの心腔内に複数の機器を植込むことは、複数の機器が不整脈発生信号の起源である心臓部位の近くで電気刺激治療を行うチャンスを増やせるため、送出する電気刺激の有効性を高めることができる。他のシステムに関して前述したように、システム400および500など、本明細書で説明する他のシステムのいずれも、所望の通りに、心臓の1つの心腔内に植込まれる1つ以上の機器を含むことができる。
【0077】
図9の医療機器システム900は、心臓910の心外膜面に植込まれるLCP902を含む。LCP904および906は心臓910の心内膜面に植込まれた状態が示されている。ある場合には、システム900の1つ以上の追加機器を心外膜面に植込むことができる。ある場合には、心臓の心外膜面に植込まれる機器は内因性心臓電気信号を感知し、および心臓に適切な電気刺激治療を行うことができるか、あるいは内因性心臓電気信号を感知するか、または心臓に適切な電気刺激治療を行うことができる。したがって、本明細書で説明するシステムのいずれも、所望の通りに、心臓の心内膜面に植込まれる1つ以上の機器を含むことができる。
【0078】
前述したように、いくつかの実施形態では、医療システム内の1つの機器がマスタ機器として行為することができ、他の機器がスレーブ機器として行為することができる。図10は、マスタ機器1002と、複数のスレーブ機器1004、1006、および1008とを含む例示的な医療機器システム1000のブロック図である。図示される実施例では、マスタ機器1002はスレーブ機器1004、1006、および1008と患者の身体を通して伝導通信することができる。他の実施例では、マスタ機器およびスレーブ機器は、所望の通り、高周波(RF)信号、誘導結合、光学信号、音響信号、または通信メカニズムに適した他のものによるなど、異なる通信メカニズムを介して通信することができる。
【0079】
ある実施例では、マスタ機器1002はICD機器、例えばICDまたはS−ICDとすることができ、1つ以上のスレーブ機器1004、1006、および1008から心臓情報を受信するよう構成することができる。ある場合には、スレーブ機器はLCPとすることができる。通信される通信情報は、例えば、スレーブ機器1004、1006、および1008が感知する心臓電気信号、スレーブ機器1004、1006、および1008が行う予備判断、またはスレーブ機器1004、1006、および1008が感知もしくは判断する他の情報を含むことができる。いくつかの実施例では、マスタ機器1002は心臓活動も感知することができる。当該実施例では、マスタ機器1002はそれ自体が感知した心臓活動ならびにスレーブ機器1004、1006、および1008から受信した心臓活動、あるいはそれ自体が感知した心臓活動またはスレーブ機器1004、1006、および1008から受信した心臓活動のいずれかに基づいて、不整脈の発生を判断することができる。ある場合には、マスタ機器1002はシステム1000の1つまたは複数の機器からの心臓活動が不整脈の発生を示すことを判断することができる。ある場合には、システム1000の複数の機器がそれぞれ心臓活動を感知しているが、マスタ機器1002などの1つの機器のみが、心臓不整脈が発生していること、および適切な電気刺激治療が望まれることの判断を行うことができる。
【0080】
不整脈の発生の判断に応答して、マスタ機器1002は電気刺激治療を行うよう判断することができる。ある実施例では、マスタ機器1002は不整脈のタイプに基づいて適切な電気刺激治療を判断することができる。さらに、マスタ機器1002はどの機器が電気刺激治療を行うべきかを判断することができる。マスタ機器1002は、マスタ機器自体も含んでもよい機器の1つ以上に、望まれる電気刺激治療を実際に行うよう指図することができる。マスタ機器1002は先に開示した手法のいずれかに従って動作することができる。例えば、マスタ機器1002は、不整脈の実際の発生の判断の前に、不整脈の発生の1つ以上の仮判断を判断することができる。マスタ機器1002はさらに心房不整脈と心室不整脈とを区別し、判断した不整脈のタイプに基づいて行うべき適切な電気刺激治療を判断することができる。いくつかの実施例では、マスタ機器1002はどの機器が心臓サイクルの心臓脱分極波を最初に感知したかに基づいて、どの機器が電気刺激治療を行う必要があるかを判断することができる。
【0081】
ある場合には、システム1000の複数の機器が不整脈の発生を判断することができる。例えば、スレーブ機器1004、1006、および1008はそれぞれが不整脈の発生を判断することができ、当該判断をマスタ機器1002に通信することができる。いくつかの実施例では、当該判断は実際の判断または仮判断と見なされることができる。当該受信した判断に基づいて、マスタ機器1002は先に開示した手法のいずれかに従い不整脈の発生を判断することができる。不整脈の判断に基づいて、マスタ機器1002は、適切な電気刺激治療を行い、ならびにスレーブ機器1004、1006、および1008のうちの1つ以上にそれを行うよう指図することができるか、あるいは適切な電気刺激治療を行うか、またはスレーブ機器1004、1006、および1008のうちの1つ以上にそれを行うよう指図することができる。
【0082】
ある場合には、マスタ機器1002ならびにスレーブ機器1004、1006、および1008の一部が不整脈を能動的に感知することができる。例えば、前述したように、いくつかの実施例では、マスタ機器1002ならびにスレーブ機器1004、1006、および1008のうちの1つのみ、または3つ以下が不整脈を能動的に感知することができる。少なくとも1つの実施例では、能動的に感知する機器は心臓活動をマスタ機器1002に送信することができる。受信した心臓活動に基づいて、マスタ機器1002は不整脈の発生を判断することができる。不整脈の発生を判断した後、マスタ機器1002はシステム1000の第2機器に能動的に心臓活動を感知し始めるよう指図することができる。この第2の機器はさらに感知した心臓活動をマスタ機器1002に通信することができる。ここでも、マスタ機器1002は第2機器から受信した心臓活動に基づいて、不整脈の発生を判断することができる。不整脈の発生の1つ以上の判断を行った後、マスタ機器1002は、適切な電気刺激治療を行うか、またはスレーブ機器1004、1006、および1008のうちの1つ以上にそれを行うよう指図することができる。他の実施例では、感知した心臓データを送信する代わりに、機器は不整脈の発生の判断をマスタ機器1002に送信することができる。ある場合には、マスタ機器1002は心臓活動を感知しなくてもよい。むしろ、マスタ機器1002は、心臓活動を感知するスレーブ機器から受信した心臓活動および判断、あるいは心臓活動または判断に基づいて、心臓不整脈の発生の判断を行うことができる。
【0083】
ある場合には、マスタ機器1002はLCP機器、体外除細動器、ICP、または診断専用機器とすることができる。いくつかの実施形態では、マスタ機器1002およびスレーブ機器1004、1006、および1008は同様なハードウェア構成を有することができる。しかし、異なるソフトウェアをインストールすることもできる。いくつかの実施例では、すべての機器が同じハードウェアおよびソフトウェアの機能を共有しているとしても、スレーブ機器1004、1006、および1008は「スレーブモード」に設定することができるのに対し、マスタ機器1002は「マスターモード」にすることができる。さらに、いくつかの実施例では、システム1000の機器はマスタ機器として構成されるのと、スレーブ機器として構成されるのとを切り換えることができる。例えば、外部プログラマが当該システムの機器のいずれかに接続して、所望の通りに、システムの機器のいずれかのプログラミングを変更することができる。
【0084】
図11図22は、前述した例示的な医療システム、例えば、システム400、500、600、700または本明細書で説明される他の例示的な医療システムによって実装することのできる様々な方法を示すフロー図である。当該例示的なシステムは図1ならびに図2のMD100およびLCP200、あるいはMD100もしくはLCP200のいずれか、または本明細書で説明される他の機器のいずれかを含むことができる。具体的には、図示される方法は患者の不整脈および他の状態、あるいは不整脈または他の状態を特定して治療するのに役立てることができる。
【0085】
図11の例示的な方法1100において、1102で示すように、医療機器システムの機器は心臓の心臓活動を感知することができる。医療機器は、所望の通りに、ICD、S−ICD、LCP、診断専用機器、または他の機器とすることができる。例示的な方法は、1104で示されるように、第1リードレス心臓ペースメーカ(LCP)を使用して心臓の心臓活動を感知することを含むことができ、該第1リードレス心臓ペースメーカは通信経路を介して医療機器に連結されるが、医療機器からは離間させることができる。通信経路は、例えば、図3に関して説明されるもののいずれにしてもよい。少なくともいくつかの実施例では、通信経路は患者の身体の少なくとも一部を通り抜けることができる。1106に示されるように、システムの1つ以上の機器は、少なくとも部分的に、医療機器および第1リードレス心臓ペースメーカによって感知された心臓活動に基づいて、頻拍性不整脈の発生を判断することができる。頻拍の発生の判断は、医療機器もしくは第1リードレス心臓ペースメーカによって感知された個々の心臓活動、または2つの機器の感知した心臓活動の組み合わせのいずれかに基づいて行うことができる。いくつかの実施例では、心臓情報は、感知した心臓電気信号、ならびに加速度計、心音センサ、血圧センサ、血中酸素センサ、および同様なものなどの他の機器からの情報の両方を含むことができる。
【0086】
ある場合において、第1LCPは第1LCPが感知した心臓活動に基づいて、頻拍の発生の仮判断を行うことができる。第1LCPは仮判断を医療機器に送信することができる。医療機器は、医療機器が感知した心臓活動に基づいて、独立して頻拍の発生の仮判断を行うことができる。それから、頻拍の発生の判断は、第1LCPおよび医療機器によって行われた仮判断に基づくことができる。
【0087】
ある場合において、第1LCPは頻拍の発生の仮判断を行わず、むしろ第1LCPが感知した心臓活動を医療機器に送信することができる。それから、医療機器は第1LCPが感知した心臓活動を受信することができ、第1LCPが感知した心臓活動および医療機器が感知した心臓活動に基づいて、頻拍の発生を判断することができる。
【0088】
図12に図示する別の例示的な方法1200では、2つ以上のLCPが頻拍エピソードを自律的に特定して、ATPを行うことができる。具体的には、1202で示されるように、本明細書で説明されるもののいずれかなど、例示的なシステムは第1リードレス心臓ペースメーカ(LCP)を使用して心臓の心臓活動を感知することができ、該第1リードレス心臓ペースメーカは心臓の第1の場所で心イベントを検出して、第1の場所にATP治療を行うように構成されている。さらに、1204で示されるように、第2リードレス心臓ペースメーカ(LCP)は心臓の第2の場所で心イベントを検出して、心臓の第2の場所にATP治療を行うように構成することができる。1206に示されるように、第1および第2のLCPのうちの1つ以上は、少なくとも部分的に、第1リードレス心臓ペースメーカによって検出された心イベントおよび第2リードレス心臓ペースメーカによって検出された心イベント、あるいは第1リードレス心臓ペースメーカによって検出された心イベントまたは第2リードレス心臓ペースメーカによって検出された心イベントに基づいて、頻拍性不整脈の発生を判断するよう構成することができる。1208に示されるように、LCPのうちの1つ以上が頻拍性不整脈の発生を判断したら、第1および第2のリードレス心臓ペースメーカのうちの少なくとも1つが心臓にATP治療を行うことができる。
【0089】
少なくとも1つの実施例では、第1リードレス心臓ペースメーカはマスタとして行為することができ、第2リードレス心臓ペースメーカはスレーブとして行為することができる。当該シナリオでは、第1リードレス心臓ペースメーカは頻拍性不整脈の判断を行い、第1LCP、第2LCP、またはその両方に心臓へのATP治療を行わせることができる。別の実施例では、第1および第2のリードレス心臓ペースメーカはともに頻拍性不整脈の発生を判断することができ、第1および第2のリードレス心臓ペースメーカの両方が心臓にATP治療を行うことができる。
【0090】
図13に図示する別の例示的な方法1300では、システム400、500、600、または本明細書で説明される他の医療機器システムなどの医療機器システムは、植込み型除細動器(ICD)または完全皮下植込み型ICD(S−ICD)などの外部機器(例、LCPの外部の機器)によって、ATP治療の施行をトリガすることのできるリードレス心臓ペースメーカ(LCP)を含むことができる。1302に示されるように、システムは第1リードレス心臓ペースメーカ(LCP)を使用して心臓の心臓活動を感知することを含むことができ、該第1リードレス心臓ペースメーカは心臓の第1の場所で心イベントを検出するように構成することができ、その場所にATP治療を行うようにも構成することができる。1304に示されるように、少なくとも部分的に、第1リードレス心臓ペースメーカによって検出された心イベントに基づいて、システムの1つ以上の機器は頻拍性不整脈の発生を判断することができる。1306に示されるように、機器のうちの1つ以上が頻拍性不整脈の発生を判断したら、システムのICDまたはS−ICDが除細動パルスの充電を開始することができ、また第1リードレス心臓ペースメーカに心臓へのATP治療を行うように指示することができる。第1リードレス心臓ペースメーカは、少なくともICDまたはS−ICDが除細動パルスを充電している間、心臓にATP治療を行うことができる。機器のうちの1つ以上がその後、ATP治療が頻拍性不整脈の停止に成功したと判断する場合、ICDまたはS−ICDはその後除細動パルスを送出せずに、充電したエネルギを放電することができる。そうでない場合、ICDまたはS−ICDは、ICDまたはS−ICDが完全に充電されて、除細動パルスの送出の準備ができたら、除細動パルスを送出することができる。
【0091】
一般に、患者の心室頻拍性不整脈の1つ以上のエピソードの後に、心室細動エピソードが続くことがある。1つ以上のLCPおよびICDを含む医療機器は、重なり合う頻拍性不整脈と細動のエピソードのシナリオを当該両方の機器を含まないシステムよりも効率的に治療するのに有用である。
【0092】
図14に示される例示的な方法1400は、LCP機器および植込み型除細動器機器の両方を含む、本明細書で説明されるいずれのシステムによっても実施することができる。例示的な方法1400は、リードレス心臓ペースメーカと植込み型除細動器との間で同期させることができるATP治療を行うことを含むことができる。この例示的な方法の最初のステップとして、1402で示されるように、心臓の心臓活動を第1リードレス心臓ペースメーカ(LCP)で感知することができ、該第1リードレス心臓ペースメーカは心臓の第1の場所で心イベントを検出するように構成することができ、その第1の場所に(ATP)治療を行うようにさらに構成されている。1404で示されるように、システムの1つ以上の機器は、第1リードレス心臓ペースメーカによって検出した心イベントに部分的にまたは完全に基づいて、頻拍性不整脈の発生をさらに判断することができる。いくつかの実施例では、これは、第1リードレス心臓ペースメーカによって検出した心臓活動を、正常な患者または当の患者の正常な律動の閾値心臓活動と比較することによって行うことができる。頻拍性不整脈の発生を判断した後、システムの1つ以上の機器は第1リードレス心臓ペースメーカに、ICDなどの外部機器で行われるATP治療とときどき同期しながら、ATP治療を行わせることができる(1406)。
【0093】
図15は、LCPおよびICDを含むシステムによって実施することのできる例示的な方法1500を含む。1502で示されるように、当該システムは、心臓活動を感知することができ、ICDに通信可能に結合される第1リードレス心臓ペースメーカ(LCP)を含むことができる。ある場合には、第1リードレス心臓ペースメーカは心臓の第1の場所で心イベントを検出するように構成することができ、その第1の場所にATP治療を行うように構成することができる。1504に示されるように、システムの1つ以上の機器は第1リードレス心臓ペースメーカによって検出された心イベントに基づいて、頻拍性不整脈の発生を判断することができる。1506に示されるように、システムの機器の1つ以上が頻拍性不整脈の発生を判断したら、第1リードレス心臓ペースメーカはATP治療プロトコルに基づいて心臓にATP治療を行うことができる。いくつかの実施例では、特定のATP治療プロトコルをICDから第1リードレス心臓ペースメーカに通信することができる。ある場合においては、ICDは心臓の第1の場所に行うべき電気インパルスを指令することのできるマスタ機器として行為することができる。
【0094】
図16は、LCP機器およびICD機器を含むシステムによって実施することのできる別の例示的な方法1600を開示する。1602に示されるように、当該システムは、心臓機械的情報に部分的または完全に基づいて、1つ以上の心イベントを検出するように構成することのできる第1リードレス心臓ペースメーカ(LCP)を使用して心臓活動を感知することができる。心臓機械的情報は、加速度計、心音センサ、血圧センサ、血中酸素センサ、または心臓の機械的情報を感知することのできる他のセンサの使用によるなど、心筋の収縮または弛緩を含むことができる。第1リードレス心臓ペースメーカは心臓の第1の場所で心イベントを検出するように構成することができ、その第1の場所にATP治療を行うことができる。1604で示されるように、システムの1つ以上の機器はさらに、少なくとも部分的に、第1リードレス心臓ペースメーカが検出した心イベントに基づいて、頻拍性不整脈の発生を判断することができる。1606で示されるように、1つ以上の機器が頻拍性不整脈の発生を判断したら、1つ以上の機器は第1リードレス心臓ペースメーカに心臓へのATP治療を行わせることができる。
【0095】
図17に図示される例示的な方法1700では、1702で示されるように、第1リードレス心臓ペースメーカ(LCP)は心臓活動を感知することができる。第1リードレス心臓ペースメーカは心臓の第1の場所で心イベントを検出するように構成することができ、その第1の場所にATP治療を行うように構成することができる。システムの1つ以上の機器は、少なくとも部分的に、第1リードレス心臓ペースメーカが検出した心イベントに基づいて、頻拍性不整脈の発生を判断することができる(1704)。1706で示されるように、頻拍性不整脈が特定されたら、システムの1つ以上の機器は、頻拍性不整脈がATP治療に感受性があるかどうかを判断することができる。これは、少なくとも部分的に、第1リードレス心臓ペースメーカが検出した心イベントに基づいて判断することができる。例えば、システムの1つ以上の機器は、頻拍性不整脈が心房頻拍性不整脈か心室頻拍性不整脈かを判断することができる。さらに、システムの1つ以上の機器は頻拍レートが閾値以上であるかどうかを判断することができる。いくつかのシステムは、頻拍信号が多形性信号であるかどうかを判断する1つ以上の機器をさらに含むことができる。これらの判断に基づいて、1つ以上の機器は頻拍性不整脈がATP治療に感受性があるかどうかを判断することができる。1708で示されるように、頻拍性不整脈がATP治療に感受性があると判断されたら、1つ以上の機器は第1リードレス心臓ペースメーカに心臓へのATP治療を行わせることができ、ある場合には、植込み型除細動器に少なくともATP治療中に除細動ショック治療の施行を一時停止させることができる。
【0096】
図18は、別の例示的な方法1800を示す。1802で示されるように、システムの第1リードレス心臓ペースメーカは心臓の心臓活動を感知することができる。1804で示されるように、第1リードレス心臓ペースメーカは頻拍性不整脈の発生を判断することができる。1806で示されるように、第1リードレス心臓ペースメーカが頻拍性不整脈の発生を判断したら、第1リードレス心臓ペースメーカは頻拍性不整脈がATP治療に感受性があるかどうかを判断することができる。ステップ1804および1806は、少なくとも部分的に、第1リードレス心臓ペースメーカが検出した心イベントに基づいて完了することができる。さらに、システムの1つ以上の機器(これは第1リードレス心臓ペースメーカとすることができる)は頻拍レートが閾値以上であるかどうかと、頻拍信号が多形性であるかどうかを判断することができる。第1リードレス心臓ペースメーカ以外の機器がこれらのパラメータのうちの1つ以上を判断する場合、ある場合には、その機器は当該パラメータを第1リードレス心臓ペースメーカに通信することができる。1808で示されるように、第1リードレス心臓ペースメーカが頻拍性不整脈がATP治療に感受性があると判断する場合、第1リードレス心臓ペースメーカは心臓にATP治療を行うことができる。したがって、当該システムでは、LCP機器は頻拍性不整脈の発生を自律的に判断し、その判断に基づいて措置を取ることができる。
【0097】
図19は、別の例示的な方法1900を示す。図19では、1902で示されるように、第1リードレス心臓ペースメーカ(LCP)は植込み型除細動器(ICD)に通信可能に結合することができる。第1リードレス心臓ペースメーカは心臓の第1の場所で心イベントを検出するように構成することができ、抗頻拍ペーシング(ATP)治療を行うようにさらに構成することができる。1904で示されるように、システムの1つ以上の機器は、少なくとも部分的に、第1リードレス心臓ペースメーカによって検出される心イベントに基づいて、頻拍性不整脈の発生を判断することができる。1906に示されるように、システムの1つ以上の機器が頻拍性不整脈の発生を判断したら、第1リードレス心臓ペースメーカは第1リードレス心臓ペースメーカによるATP治療の施行に関する状態情報を植込み型除細動器(ICD)に通信するようになされている。例えば、第1リードレス心臓ペースメーカはATP治療を行う意図を植込み型除細動器(ICD)に通信するか、または第1リードレス心臓ペースメーカが現在ATP治療を行っていることを通信することができる。いくつかの実施例では、第1リードレス心臓ペースメーカは第1リードレス心臓ペースメーカがATP治療を行わないことを通信することができる。
【0098】
図20は、別の例示的な方法2000を示す。図20では、第1リードレス心臓ペースメーカ(LCP)は心臓の第1の場所で心イベントを検出するように構成することができる。2004で示されるように、システムの1つ以上の機器は、少なくとも部分的に、第1リードレス心臓ペースメーカが検出した心イベントに基づいて、頻拍性不整脈の発生を判断することができる。次のステップで、2006に示されるように、第1リードレス心臓ペースメーカは植込み型除細動器(ICD)に頻拍性不整脈に関する情報を通信することができる。例えば、第1リードレス心臓ペースメーカは、頻拍レート、頻拍レートが閾値以上かどうか、および頻拍信号が多形性かどうか、あるいは頻拍レート、頻拍レートが閾値以上かどうか、または頻拍信号が多形性かどうかなど、頻拍性不整脈に関する情報を通信することができる。
【0099】
別の例示的な方法2100を図21に示す。2101に示されるように、第1リードレス心臓ペースメーカ(LCP)は心臓の第1の場所で心イベントを検出するように構成することができる。2104に示されるように、検出した心イベントに基づいて、第1リードレス心臓ペースメーカは頻拍性不整脈の発生を判断することができる。2106に示されるように、頻拍性不整脈の発生を判断した後、第1リードレス心臓ペースメーカは頻拍性不整脈に関する情報を第2リードレス心臓ペースメーカに通信することができる。例えば、第1リードレス心臓ペースメーカは頻拍レート、頻拍レートが閾値以上かどうか、および頻拍信号が多形性であるかどうか、あるいは頻拍レート、頻拍レートが閾値以上かどうか、または頻拍信号が多形性であるかどうかなどの情報を通信することができる。
【0100】
図22は別の例示的な方法2200を示す。2202に示されるように、第1リードレス心臓ペースメーカ(LCP)は心臓の第1の場所で心イベントを検出するように構成することができる。2204に示されるように、第1リードレス心臓ペースメーカは、少なくとも部分的に、第1リードレス心臓ペースメーカが検出した心イベントに基づいて、頻拍性不整脈の発生を判断することができる。2206に示されるように、頻拍性不整脈の発生を判断した後、第1リードレス心臓ペースメーカは頻拍性不整脈に関する情報を植込み型除細動器に通信することができる。例えば、第1リードレス心臓ペースメーカは頻拍レート、頻拍レートが閾値以上かどうか、および頻拍信号が多形性であるかどうか、あるいは頻拍レート、頻拍レートが閾値以上かどうか、または頻拍信号が多形性であるかどうかなどの情報を通信することができる。2208に示されるように、植込み型除細動器は、少なくとも部分的に通信された頻拍性不整脈に関する情報に基づいて、治療プロトコルに従って治療を行うかどうかを判断することができる。
【0101】
図23は別の例示的な方法2300を示す。2302に示されるように、心臓活動は医療機器によって感知することができる。2304に示されるように、心臓活動は第1リードレス心臓ペースメーカによっても感知することができ、該第1リードレス心臓ペースメーカは医療機器に、場合によっては患者の身体を含む通信経路を介して通信可能に結合されている。2306に示されるように、医療機器および第1リードレス心臓ペースメーカのうちの1つ以上は、その後、少なくとも部分的に医療機器によって感知した心臓活動および第1リードレス心臓ペースメーカによって感知した心臓活動、あるいは医療機器によって感知した心臓活動または第1リードレス心臓ペースメーカによって感知した心臓活動に基づいて、頻拍性不整脈が発生しているかどうかを判断することができる。2308で示されるように、頻拍性不整脈が発生していると判断した後、医療機器および第1リードレス心臓ペースメーカのうちの1つ以上は、少なくとも部分的に医療機器が感知した心臓活動および第1リードレス心臓ペースメーカが感知した心臓活動の両方に基づいて、頻拍性不整脈のタイプを判断することができる。この実施例の方法では、第1リードレス心臓ペースメーカが感知した心臓活動は不整脈のタイプを区別するのに役立てることができる。この実施例では、方法機器はICD、SICD、別のリードレス心臓ペースメーカ、または他の適した機器を含むことができる。
【0102】
ある場合において、心臓活動は第2リードレス心臓ペースメーカによって感知することもできる。ある場合には、医療機器、第1リードレス心臓ペースメーカ、および第2リードレス心臓ペースメーカのうちの1つ以上が、少なくとも部分的に医療機器によって感知した心臓活動、第1リードレス心臓ペースメーカによって感知した心臓活動、および第1リードレス心臓ペースメーカによって感知した心臓活動、あるいは医療機器によって感知した心臓活動、第1リードレス心臓ペースメーカによって感知した心臓活動、または第1リードレス心臓ペースメーカによって感知した心臓活動に基づいて、頻拍性不整脈が発生しているかどうかを判断することができる。頻拍性不整脈が発生していると判断した後、医療機器、第1リードレス心臓ペースメーカおよび第2リードレス心臓ペースメーカのうちの1つ以上が、少なくとも部分的に医療機器、第1リードレス心臓ペースメーカおよび第2リードレス心臓ペースメーカのうちの2つ以上によって感知した心臓活動に基づいて、頻拍性不整脈のタイプを判断することができる。これは別の実施例である。
【0103】
当業者は、本開示は本明細書で説明され、想定される特定の実施形態以外の多様な形態で実現できることを認識するであろう。一例として、本明細書で説明されるように、様々な実施例は様々な機能を実行するものとして記述されている1つ以上のモジュールを含む。しかし、他の実施例は記述される機能を本明細書に記述されるものより多くのモジュールで分担する追加モジュールを含むことができる。さらに、他の実施例は記述する機能をより少ないモジュールに統合することもできる。したがって、添付の請求項に記述されるように、本開示の範囲および精神を逸脱することなく、形態および明細の逸脱を行うことができる。
追加の実施例
第1実施例において、患者の心臓の頻拍性不整脈を特定する方法は、医療機器で心臓活動を感知することと、前記医療機器から離間しており、患者の身体を含む通信経路を介して前記医療機器に通信可能に結合されている第1リードレス心臓ペースメーカで心臓活動を感知することと、少なくとも部分的に、前記医療機器で感知した心臓活動および前記第1リードレス心臓ペースメーカで感知した心臓活動の両方に基づいて、頻拍性不整脈が発生しているかどうかを判断することとを含む。
【0104】
これに加えてまたはこれに代えて、第2実施例では、第1実施例の医療機器は第2リードレス心臓ペースメーカを具備することができ、前記第2リードレス心臓ペースメーカは心臓の心房に植込むことができ、前記第1リードレス心臓ペースメーカは心臓の心室に植込むことができる。
【0105】
これに加えてまたはこれに代えて、第3実施例では、第1または第2の実施例のいずれかの医療機器は第2リードレス心臓ペースメーカを具備することができ、前記第2リードレス心臓ペースメーカは心臓の左心室に植込むことができ、前記第1リードレス心臓ペースメーカは心臓の右心室に植込むことができる。
【0106】
これに加えてまたはこれに代えて、第4実施例では、第1から第3の実施例のいずれかの医療機器は第2リードレス心臓ペースメーカを具備することができ、前記第2リードレス心臓ペースメーカは心臓の心内膜面に植込むことができ、前記第1リードレス心臓ペースメーカは心臓の心外膜面に植込むことができる。
【0107】
これに加えてまたはこれに代えて、第5実施例では、第1から第4の実施例のいずれかの医療機器および第1リードレス心臓ペースメーカの一方は、前記医療機器および前記第1リードレス心臓ペースメーカの他方から通信経路を介して心臓情報を受信した後、判断ステップを行うことができる。
【0108】
これに加えてまたはこれに代えて、第6実施例では、第1から第5の実施例のいずれかの心臓情報は、前記医療機器および前記第1リードレス心臓ペースメーカの他方が感知した心臓活動を含むことができる。
【0109】
これに加えてまたはこれに代えて、第7実施例では、第1から第6の実施例のいずれかの心臓情報は、前記医療機器および前記第1リードレス心臓ペースメーカの他方が判断した頻拍性不整脈の仮判断を含むことができる。
【0110】
これに加えてまたはこれに代えて、第8実施例では、第1から第7実施例のいずれかの医療機器は、第2リードレス心臓ペースメーカ、植込み型パルス発生器、および診断専用医療機器のうちの1つを具備することができる。
【0111】
これに加えてまたはこれに代えて、第9実施例では、第1から第8の実施例のいずれかの医療機器および第1リードレス心臓ペースメーカの一方はマスタ機器であり、前記医療機器および前記第1リードレス心臓ペースメーカの他方はスレーブ機器である。
【0112】
これに加えてまたはこれに代えて、第10実施例では、第1から第9の実施例のいずれかは、頻拍性不整脈の発生を判断すると、心臓に抗頻拍ペーシング(ATP)治療を行うことができる。
【0113】
第11実施例では、患者の心臓の頻拍性不整脈を特定する医療システムは、心臓の対応する場所で心臓活動を検出するように構成されている複数のリードレス心臓ペースメーカと、患者の身体を含む通信経路を介して前記複数のリードレス心臓ペースメーカのそれぞれに通信可能に結合されている植込み型除細動器(ICD)とを具備し、前記ICDは、少なくとも部分的に、前記複数のリードレス心臓ペースメーカのうちの2つ以上によって検出された心臓活動に基づいて、頻拍性不整脈が発生しているかどうかを判断する。
【0114】
これに加えてまたはこれに代えて、第12実施例では、第11実施例のICDは1つ以上の皮下電極を備える完全皮下ICDとすることができる。
これに加えてまたはこれに代えて、第13実施例では、第11または第12の実施例のいずれかの複数のリードレス心臓ペースメーカのうちの2つ以上によって検出される心臓活動は、心臓の対応する場所で頻拍性不整脈を検出することを含むことができる。
【0115】
これに加えてまたはこれに代えて、第14実施例では、第11から第13の実施例のいずれかのICDは、前記複数のリードレス心臓ペースメーカのうちの2つ以上の過半数が頻拍性不整脈が発生していると判断する場合に、頻拍性不整脈が発生していると判断することができる。
【0116】
これに加えてまたはこれに代えて、第15実施例では、第11から第14の実施例のいずれかの複数のリードレス心臓ペースメーカのうちの2つ以上は、心臓の複数の心室部位に配設することができる。
【0117】
これに加えてまたはこれに代えて、第16実施例では、第11から第15の実施例のいずれかのICDは心臓の心臓活動を検出するように構成することができ、前記ICDは、少なくとも部分的に複数のリードレス心臓ペースメーカの2つ以上が検出した心臓活動およびICDが検出した心臓活動に基づいて、頻拍性不整脈が発生しているかどうかを判断するように構成されている。
【0118】
これに加えてまたはこれに代えて、第17実施例では、第11から第16の実施例のいずれかのICDは、前記ICDが頻拍性不整脈が発生していると判断した場合に、複数のリードレス心臓ペースメーカのうちのどれがATP治療を行うかを判断することができる。
【0119】
第18実施例では、患者の心臓の頻拍性不整脈を特定する方法は、医療機器で心臓活動を感知することと、患者の身体を含む通信経路を介して前記医療機器に通信可能に結合されている第1リードレス心臓ペースメーカで心臓活動を感知することと、少なくとも部分的に前記医療機器が感知した心臓活動および前記第1リードレス心臓ペースメーカが感知した心臓活動、あるいは前記医療機器が感知した心臓活動または前記第1リードレス心臓ペースメーカが感知した心臓活動に基づいて、前記医療機器および前記第1リードレス心臓ペースメーカの1つ以上により、頻拍性不整脈が発生しているかどうかを判断することと、頻拍性不整脈が発生していると判断した後、少なくとも部分的に前記医療機器が感知した心臓活動および前記第1リードレス心臓ペースメーカが感知した心臓活動の両方に基づいて、前記医療機器および前記第1リードレス心臓ペースメーカの1つ以上により、頻拍性不整脈のタイプを判断することとを含む。ある場合には、頻拍性不整脈のタイプは、心室頻拍性不整脈または心房頻拍性不整脈のうちの1つを含む。
【0120】
これに加えてまたはこれに代えて、第19実施例では、第18実施例は、判断した第1のタイプの頻拍性不整脈に基づいて、心臓に第1治療を行うことと、判断した第2のタイプの頻拍性不整脈に基づいて、心臓に第2治療を行うこととを含むことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図23