(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持部材(31)は、前記凹部(41)の1つの側面または底面を形成する面に、前記支持部材(31)の径方向外方から径方向内方に向かう窪み部(45)が形成されている、請求項1または2に記載の差動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2〜4では、差動装置の外部から潤滑油を取り込むことによるピニオンギヤの潤滑性能の向上については言及されていない。また、特許文献1では、サイドギヤを覆うカバー側から差動装置の外部の潤滑油を取り込むことはできても、支持部材の径方向外方から差動装置の外部の潤滑油を取り込むことは困難であった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、差動装置の外部にある潤滑油を支持部材側から差動装置内に取り込むことによるピニオンギヤ(差動ギヤ)の潤滑性能を向上させることができる差動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一つの形態に係る差動装置は、複数の差動ギヤと、前記複数の差動ギヤの各々を支持する複数の差動ギヤ支持部材と、前記複数の差動ギヤと各々噛み合う1対の出力ギヤと、各々の前記差動ギヤ支持部材の両端部を支持する両端支持部を複数有するとともに、
前記両端支持部より径方向内方の中央部に空間が形成される支持部材と、一方の前記出力ギヤの背面側に配置されて前記支持部材と結合可能な第1カバー部材と、他方の前記出力ギヤの背面側に配置されて前記支持部材と結合可能な第2カバー部材と、を備え、前記支持部材の隣り合う2つの前記両端支持部の間には、前記支持部材の径方向外方から径方向内方に向かって
前記空間まで貫通する凹部が形成されており、前記複数の両端支持部の各々は
、前記差動ギヤ支持部材の
内側の端部を支持する
内端側支持部を有し、前記
内端側支持部には、前記
内端側支持部を貫通する貫通孔が形成されている。
【0007】
好適には、前記支持部材は、前記両端支持部を各々備える複数の壁部を有し、少なくとも1つの前記壁部には、前記壁部の外側と内側とを貫く開口部が形成されている。
【0008】
好適には、前記支持部材は、前記凹部の1つの側面または底面を形成する面に、前記支持部材の径方向外方から径方向内方に向かう窪み部が形成されている。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の他の一つの形態に係る差動装置は、複数の差動ギヤと、前記複数の差動ギヤの各々を支持する複数の差動ギヤ支持部材と、前記複数の差動ギヤと各々噛み合う1対の出力ギヤと、各々の前記差動ギヤ支持部材の両端部を支持する複数の両端支持部と,隣り合う2つの前記両端支持部を連結する複数の連結部と,を有するとともに、中央部に空間が形成される支持部材と、一方の前記出力ギヤの背面側に配置されて前記支持部材と結合可能な第1カバー部材と、他方の前記出力ギヤの背面側に配置されて前記支持部材と結合可能な第2カバー部材と、を備え、前記支持部材の隣り合う2つの前記両端支持部の間には、前記支持部材の径方向内方側に前記連結部が、前記支持部材の径方向外方側に凹部が形成されており、前記連結部は、前記第1カバー部材および前記第2カバー部材の各々との間に前記支持部材の径方向に向かって延びる径方向空間が形成されており、前記複数の両端支持部の各々は、少なくとも前記差動ギヤ支持部材の一方端部を支持する一方の支持部を有し、前記一方の支持部には、前記一方の支持部を貫通する貫通孔が形成されている。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の他の一つの形態に係る差動装置は、複数の差動ギヤと、前記複数の差動ギヤの各々を支持する複数の差動ギヤ支持部材と、前記複数の差動ギヤと各々噛み合う1対の出力ギヤと、各々の前記差動ギヤ支持部材の両端部を支持する両端支持部を備える複数の壁部を有する支持部材と、一方の前記出力ギヤの背面側に配置されて前記支持部材と結合可能な第1カバー部材と、他方の前記出力ギヤの背面側に配置されて前記支持部材と結合可能な第2カバー部材と、を備え、隣り合う2つの前記壁部の各々は、複数の連結部で、または、直接に、接続されており、隣り合う2つの前記壁部の間には、前記支持部材の径方向外方から径方向内方に向かって凹む凹部が形成されており、
各々の前記壁部の前記両端支持部は、前記差動ギヤ支持部材の内側の端部を支持する内端側支持部と、前記差動ギヤ支持部材の外端側を支持する外端側支持部とを備え、少なくとも1つの前記壁部には、
前記内端側支持部より径方向外方側で前記凹部と前記内端側支持部と前記外端側支持部の間の空間とを貫く開口部が形成されて
おり、前記内端側支持部は、前記差動ギヤの径方向内方端の外径より前記差動ギヤの径方向外方へ張り出している。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の他の一つの形態に係る差動装置は、複数の差動ギヤと、前記複数の差動ギヤの各々を支持する複数の差動ギヤ支持部材と、前記複数の差動ギヤと各々噛み合う1対の出力ギヤと、各々の前記差動ギヤ支持部材の両端部を支持する両端支持部と,前記両端支持部を接続する側壁部と,を有する複数の壁部と,隣り合う2つの前記壁部を連結する複数の連結部と,を有する支持部材と、一方の前記出力ギヤの背面側に配置されて前記支持部材と結合可能な第1カバー部材と、他方の前記出力ギヤの背面側に配置されて前記支持部材と結合可能な第2カバー部材と、を備え、前記支持部材の隣り合う2つの前記壁部の間には、前記支持部材の径方向内方側に前記連結部が、前記支持部材の径方向外方側に凹部が、形成されており、前記側壁部は、前記第1カバー部材および前記第2カバー部材の各々との間に前記支持部材の周方向に向かって延びる周方向空間が形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、差動装置外の潤滑油を支持部材側から差動装置内に取り込むことによって差動ギヤの潤滑性能を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0015】
図1は本発明の第1実施形態に係る差動装置11の全体構成を模式的に示している。自動車は、例えば、自動車に搭載される動力源としてのエンジン(図示しない)の横に配置されて、トランスミッション(図示しない)や差動装置11を収容するミッションケース12を備える。ミッションケース12には、例えば、車軸にそれぞれ連なる左右1対の出力軸13a,13bが中心軸CL回りで回転自在に支持される。2つの出力軸13a,13bは、相互に同軸に配置され、ミッションケース12内で差動装置11に結合される一端をそれぞれ有する。
【0016】
差動装置11は、例えば、中心軸CL回りで回転自在にミッションケース12に支持されるデフケース14と、中心軸CL回りで回転する第1サイドギヤ25と、第1サイドギヤ25と対向する、中心軸CL回りで第1サイドギヤ25に対して相対回転する第2サイドギヤ26と、第1サイドギヤ25および第2サイドギヤ26の間に配置されて、各々が一対のサイドギヤ25,26と噛み合う複数のピニオンギヤ27と、各々のピニオンギヤ27を支持するピニオンシャフト28と、を備える。
【0017】
また、デフケース14の支持にあたってデフケース14には軸受け15が配置される。また、デフケース(入力部材)14には例えば減速歯車機構16の出力部材17が結合される。また、減速歯車機構16にはトランスミッションからエンジンの動力が伝達される。また、減速歯車機構16は例えば遊星歯車機構として構成される。すなわち、減速歯車機構16は、例えば、キャリア21と、中心軸CL周りで外周に外向きのギヤ歯を有し、トランスミッションの出力軸に連動して中心軸CL回りで回転するサンギヤ18と、サンギヤ18に同心にサンギヤ18を囲んでミッションケース12の内壁に固定され、サンギヤ18のギヤ歯に向き合う内向きのギヤ歯を有するリングギヤ19と、サンギヤ18およびリングギヤ19の間に配置されてサンギヤ18のギヤ歯およびリングギヤ19のギヤ歯に噛み合い、中心軸CLに平行であって中心軸CLから等距離に位置する回転軸RT回りで回転自在にキャリア21に支持されるプラネタリーギヤ22と、を備える。
【0018】
また、キャリア21は中心軸CL回りで相対回転不能にデフケース14に結合される。言い換えると、キャリア21はデフケース14とともに回転する。また、キャリア21は減速歯車機構16の出力部材17として機能する。また、デフケース14は差動装置11の入力部材として機能する。尚、減速歯車機構16は、遊星歯車機構に代えて、複数の平歯車の歯車列で構成されてもよい。
【0019】
また、ミッションケース12と個々の出力軸13a,13bとの間には、例えば環状のシール部材24が配置される。
図1では一方のシール部材24のみが図示されている。シール部材24は、ミッションケース12と回転する出力軸13a,13bとの間を液密に塞ぐ。本実施形態では、ミッションケース12の底部に、ミッションケース12の内部空間に臨んで所定量の潤滑油を貯留するオイルパン(図示しない)が形成される。貯留された潤滑油はミッションケース12の内部空間で減速歯車機構16の可動要素やデフケース14の回転によって周辺に掻き上げられて飛散する。このようにして、飛散された潤滑油でデフケース14の内外に存在する機械運動部分は潤滑される。
【0020】
第1サイドギヤ(サイドギヤ,第1出力ギヤ,出力ギヤ)25は、例えば出力軸13aの内端部とスプライン結合される円筒状の第1軸部25aと、第1軸部25aからサイドギヤ25,26の径方向外方に離れた位置に在って複数のピニオンギヤ27に噛合する第1ギヤ歯25bを有する円環状の第1歯部25cと、第1軸部25aのサイドギヤ25,26の軸方向における内端部から第1歯部25cのサイドギヤ25,26の径方向における内周端部に向かってサイドギヤ25,26の径方向外方に延びる第1中間壁部25dと、を備えている。そのため、出力軸13aと第1サイドギヤ25との間では中心軸CL回りでの相対回転は阻止される。また、第1中間壁部25dにより、第1軸部25aと第1歯部25cの内周端部との間が一体に接続される。
【0021】
また、第2サイドギヤ(サイドギヤ,第2出力ギヤ,出力ギヤ)26は、例えば、第1軸部25aと向き合うとともに、出力軸13aと向き合う出力軸13bの内端部とスプライン結合される円筒状の第2軸部26aと、第1歯部25cと向き合うとともに、第2軸部26aからサイドギヤ25,26の径方向外方に離れた位置に在って複数のピニオンギヤ27に噛合する第2ギヤ歯26bを有する円環状の第2歯部26cと、第2軸部26aのサイドギヤ25,26の軸方向における内端部から第2歯部26cのサイドギヤ25,26の径方向における内周端部に向かってサイドギヤ25,26の径方向外方に延びる第2中間壁部26dと、を備えている。そのため、出力軸13bと第2サイドギヤ26との間では中心軸CL回りでの相対回転は阻止される。また、第2中間壁部26dにより、第2軸部26aと第2歯部26cの内周端部との間が一体に接続される。
【0022】
また、複数のピニオンギヤ(差動ギヤ)27は、各々中心軸CLから放射状に延びる回転軸線RL回りで回転自在に配置される。また、個々のピニオンギヤ27には、第1ギヤ歯25bおよび第2ギヤ歯26bと噛み合うギヤ歯27aが形成されている。また、複数のピニオンギヤ27は、デフケース14に収容されてデフケース14に対して自転可能であるとともに、デフケース14の回転に伴い中心軸CL回りに公転可能である。
【0023】
また、個々のピニオンシャフト(シャフト,差動ギヤ支持部材)28は、中心軸CLから放射状に延びる回転軸線RLに同軸に配置される。また、個々のピニオンシャフト28は、例えば、回転軸線RL上でピニオンギヤ27のサイドギヤ25,26における径方向の内方および外方に突出している。また、各々のピニオンシャフト28には、後述する抜け止めとなるピン36を挿入可能な貫通する孔が形成されている。尚、このようなピニオンギヤ27ごとのピニオンシャフト28に代えて、例えば中心軸CL回りで中心角180度に配置される2つの(複数の)ピニオンギヤに共通に中心軸CLに交差する1本のピニオンシャフトが用いられてもよい。
【0024】
また、デフケース14は、例えば、支持部材31と、第1カバー部材32と、第2カバー部材33と、を有する。
【0025】
第1カバー部材32は、例えば第1サイドギヤ25の背後に配置されて支持部材31の一方の側面に連結可能である(接続可能である)とともに、支持部材31と対向する面とは反対側となる面の中心部に円筒状のボス部を有している。また、第2カバー部材33は、例えば、第1カバー部材32と対向するとともに、第2サイドギヤ26の背後に配置されて支持部材31の他方の側面に連結可能である(接続可能である)。さらに、第2カバー部材33は、例えば、支持部材31と対向する面とは反対側となる面の中心部に円筒状のボス部を有している。そして、第2カバー部材33のボス部に軸受け15が取り付けられる。また、支持部材31は、例えば、第1カバー部材32と第2カバー部材33との間に配置される。また、支持部材31は例えば環状部材であって中央部が空洞46となっている。つまり、支持部材31は中央部に空洞(空間)46が形成されている。
【0026】
また、支持部材31は、例えば、中心軸CLの放射状に中心軸CL回りで回転可能である個々に1つのピニオンギヤ27を囲む複数の囲み壁34と、隣り合う2つの囲み壁34を連結する(接続する)複数の連結板(連結部)43と、を有する。本実施形態では、
図3に示されるように、中心軸CLの放射状に4つの囲み壁34が形成されている。また、各々の囲み壁34は例えば中心軸CLの周方向に等間隔で配置される。
【0027】
また、各々の囲み壁(壁部)34は、例えば、個々にピニオンシャフト28の両端部(一方端部および他方端部)を支持する両端支持部35と、両端支持部35を接続する複数の側面部50と、を有している。また、各々の囲み壁34の内壁、つまり、両端支持部35の内端側支持部(一方の支持部,他方の支持部)35aには、内端側支持部35aを貫通する軸孔48が形成されている。すなわち、各々の内端側支持部35aの軸孔(貫通孔)48は、支持部材31の中央部の空洞46まで開口する(内端側支持部35aの内端面で開口している)。また、各々の囲み壁34の外壁、つまり、両端支持部35の外端側支持部(他方の支持部,一方の支持部)35bには、外端側支持部35bを貫通する軸孔42が形成されている。すなわち、各々の外端側支持部35bの軸孔42は外端側支持部35bの外周面で開口している。
【0028】
また、各々の内端側支持部35aの軸孔48に各々のピニオンシャフト28の内端部(一方端部)が挿入される。また、各々の外端側支持部35bの軸孔42にピニオンシャフト28の外端部(他方端部)が挿入される。また、各々の外端側支持部35bの外周面は、支持部材31の外周面を成している。また、各々の外端側支持部35bには、中心軸CLに平行な軸心を有する、抜け止めとなるピン36を挿入可能な孔が形成されている。そのため、各々の外端側支持部35bおよびピニオンシャフト28に、ピン36が差し込まれることによって、ピニオンシャフト28は、支持部材31から抜け落ちることなく、支持部材31に支持される。
【0029】
また、隣り合う2つの両端支持部35の間には、例えば支持部材31の外周側から内周側に向かって凹む凹部41が形成されている。凹部41は、第1カバー部材32および第2カバー部材33の間で第1サイドギヤ25および第2サイドギヤ26の少なくとも一方を露出する空間を区画する。また、凹部(凹孔)41は、例えば空洞46と繋がっている。つまり、凹部41は支持部材31の径方向内方に開口している。すなわち、凹部41は支持部材31の径方向外方と径方向内方とを貫通している。そのため、差動装置11は、凹部41を介して、ミッションケース12から滴下された潤滑油を、支持部材31の径方向外方から差動装置11の中心側に送ることができる。
【0030】
また、複数の連結板43は、複数の連結板43の各々が隣り合う2つの囲
み壁34と接続することで、複数の囲み壁34を連結している(接続している)。また、連結板43の支持部材31の径方向における外周面は、支持部材31の外周面を成している。また、連結板43は例えば支持部材31の径方向における外周面の一部に窪み部45が形成される。また、窪み部45は連結板43の支持部材31の径方向における外周面から支持部材31の径方向における内周面に向かって(支持部材31の径方向外方から内方に向かって)窪んでいる。また、本実施形態では、中心軸CLに平行な母線を有する湾曲面で窪み部45(より具体的には窪み部45の面)が形成されている。
【0031】
また、例えば、凹部41の側面となる囲み壁34の一側面部50a(50)の一部および両端支持部35の内端支持部35aの周方向一端部35aa、並びに、凹部41の側面となる囲
み壁34の他側面部50b(50)の一部および両端支持部35の内端支持部35aの周方向他端部35abには囲み壁34の外側と内側とを貫く開口部(壁開口部)47が形成される。開口部47は、凹部41の空間と繋がっている。そのため、ミッションケース12から滴下された潤滑油を、支持部材31の径方向外方から凹部41および開口部47を介して囲み壁34内に送ることができる。
【0032】
つまり、ミッションケース12から滴下された潤滑油は、支持部材31の径方向外方から凹部41および開口部47を介してピニオンギヤ27に、または、支持部材31の径方向外方から凹部41、開口部47およびワッシャー70を介してピニオンシャフト28の外周に送られることができる。
【0033】
また、本実施形態では、囲
み壁34の両方の側面部50(50a,50b)に開口部47が形成されているが、本発明はこれに限らない。本発明では、例えば、開口部47は、囲み壁34の両方の側面部50(50a,50b)のいずれか一方(好適には囲み壁34のデフケース14の前進回転方向の側面部50)に形成されているだけでもよい。
また、本実施形態では、全ての囲い壁34の側面部50に開口部47が形成されているが、本発明はこれに限らない。本発明では、例えば、開口部47は、囲
み壁34のいずれか1つに、または、全ての囲み壁34ではない複数の囲み壁34に形成されているだけでもよい。この場合、隣り合う2つの両端支持部35の間に形成される凹部41についても、開口部47が形成される囲み壁34の数だけ凹部41が形成されるように構成してもよい。
【0034】
次に、本実施形態の作用について説明する。本実施形態の差動装置11は、エンジンから減速歯車機構16を介してデフケース14に回転力を受けた場合に、複数のピニオンギヤ27が回転軸線RL回りに自転しないで、デフケース14と共にデフケース14の中心軸(回転軸線)CL回りに公転する。このとき、デフケース14から複数のピニオンギヤ27を介して左右のサイドギヤ25
,26が同速度で回転駆動されて、サイドギヤ25
,26の駆動力が均等に左右の出力軸13a,13bに伝達される。また、自動車の旋回走行等により左右の出力軸13a,13bに回転速度差が生じるときは、複数のピニオンギヤ27が自転しつつデフケース14の中心軸(回転軸線)CL回りに公転することで、ピニオンギヤ27から左右のサイドギヤ25
,26に対して差動回転を許容しつつ回転駆動力が伝達される。以上は、従来周知の差動装置の作動と同様である。
【0035】
ところで本実施形態の差動装置11におけるピニオンギヤ27およびピニオンシャフト28の外周への潤滑は、例えば、以下のように行われる。
【0036】
ミッションケース12から滴下された潤滑油の一部は、差動装置11の支持部材31の径方向外方から凹部41を介して空洞46へ導かれる。また、空洞46へ導かれた潤滑油は、空洞46よりも重力方向で下方に位置する囲み壁34(より具体的には、両端支持部35の内端支持部35a)の軸孔48を介して囲み壁34の内部に導かれる。そして、軸孔48を介して囲み壁34の内部に導かれた潤滑油は、軸孔48に挿入されているピニオンシャフト28の外周(ピニオンシャフト28のピニオンギヤ27との摺動面)、または、ピニオンギヤ27の端面(より具体的には、ピニオンギヤ27の軸方向における内端面)を伝ってピニオンギヤ27のギヤ歯27aを潤滑する。尚、デフケース14が回転している時、つまり、支持部材31が回転している時には、空洞46から潤滑油が導かれる囲み壁34はその都度変わることになる。
【0037】
また、ミッションケース12から滴下された潤滑油の他の一部は、差動装置11の支持部材31の径方向外方から凹部41及び開口部47を介して、直接ピニオンギヤ27に、または、さらにワッシャー70を介してピニオンシャフト28の外周に導かれる。また、直接ピニオンギヤ27に導かれた潤滑油の一部は直接ギヤ歯27aを潤滑する。また、直接ピニオンギヤ27に導かれた潤滑油の他の一部は、さらにピニオンギヤ27の端面(より具体的には、ピニオンギヤ27の軸方向における内端面または外端面)を伝ってピニオンシャフト28の外周に導かれ、ピニオンシャフト28の外周(ピニオンシャフト28のピニオンギヤ27との摺動面)を潤滑する。また、凹部41、開口部47およびワッシャー70を介してピニオンシャフト28の外周に導かれた潤滑油は、ピニオンシャフト28の外周(ピニオンシャフト28のピニオンギヤ27との摺動面)を潤滑する。
【0038】
また、ミッションケース12から滴下された潤滑油の他の一部は、差動装置11の支持部材31の各々の外端側支持部35bの軸孔42から差動装置11内に導かれる。また、軸孔42から差動装置11内に導かれた潤滑油は、軸孔42に挿入されているピニオンシャフト28の外周(ピニオンシャフト28のピニオンギヤ27との摺動面)、または、ピニオンシャフト28の外周およびピニオンギヤ27の端面(より具体的には、ピニオンギヤ27の軸方向における外端面)またはワッシャー70を伝ってピニオンギヤ27のギヤ歯27aを潤滑する。
【0039】
本実施形態によれば、差動装置11は、ミッションケース12から滴下された潤滑油を支持部材31の径方向外方から中心軸CLに向かって、つまり支持部材31の中央部にできる空洞46に向かって、案内することができるとともに、空洞46に案内された潤滑油を支持部材31の両端支持部35の軸孔48を介してピニオンシャフト28の外周(ピニオンシャフト28のピニオンギヤ27との摺動面)およびピニオンギヤ27に送ることができる。これにより、差動装置11は、ミッションケース12から滴下された潤滑油でピニオンシャフト28の外周およびピニオンギヤ27を潤滑することができる。そのため、ピニオンギヤ27の潤滑性能を向上させることができる。これにより、ピニオンギヤ27の耐焼き付き性能の向上を図ることができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、差動装置11では、少なくともいずれか1つの囲
み壁34の側面部50には、囲み壁34の外側と内側とを貫く開口部47が形成されている。そのため、開口部47に案内された潤滑油は開口部47からピニオンギヤ27、またはワッシャー70を介してピニオンシャフト28の外周に導入される。これにより、ミッションケース12から滴下された潤滑油で、支持部材31の中心軸CL側に送ることなく、ピニオンギヤ27またはピニオンシャフト28の外周を潤滑することもできる。そのため、ピニオンギヤ27の潤滑性能を向上させることができる。これにより、ピニオンギヤ27の耐焼き付き性能の向上を図ることができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、連結板43の支持部材31の径方向における外周面の一部に窪み部45が形成される。それにより、支持部材31の肉抜きが実現され、支持部材31の軽量化を図ることができる。ひいては、差動装置11全体の軽量化を図ることができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、差動装置11は、支持部材31の各々の外端側支持部35bの軸孔42が外端側支持部35bの外周面で開口していることで、ミッションケース12から滴下された潤滑油を支持部材31の両端支持部35の軸孔42を介してピニオンシャフト28の外周(ピニオンシャフト28のピニオンギヤ27との摺動面)およびピニオンギヤ27に送ることができる。これにより、差動装置11は、ミッションケース12から滴下された潤滑油でピニオンシャフト28の外周およびピニオンギヤ27を潤滑することができる。そのため、ピニオンギヤ27の潤滑性能を向上させることができる。これにより、ピニオンギヤ27の耐焼き付き性能の向上を図ることができる。
【0043】
尚、第1実施形態では、変形例として、隣り合う2つの囲み壁34の両端支持部35の内端側支持部35aを各々連結することで、連結板43を備えない囲み壁34のみの支持部材31も構成することができる。この場合には、隣り合う2つの内端側支持部35aの連結部分において、少なくとも一方の内端側支持部35aの支持部材31における軸方向の一部、すなわち、内端支持部35aの周方向一端部35aaおよび周方向他端部35abのうちの少なくとも一方の支持部材31の軸方向における一部に切欠きが設けられる。これにより、隣り合う2つの囲み壁34の間に形成される凹部41が支持部材31の径方向外方と径方向内方とを貫通することができる。そのため、第1実施形態の変形例においても、第1実施形態の効果が得られることとなる。
【0044】
次に、本発明の第2実施形態を
図4を用いて説明する。第2実施形態は主に支持部材の構成が第1実施形態と異なる。そのため、第2の実施形態では、第1実施形態と違う構成について説明し、第1実施形態と同様の構成については同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0045】
図4は本発明の第2実施形態に係る支持部材51の構成を模式的に示している。第2実施形態の支持部材51は、例えば、個々にピニオンシャフト28の両端部(一方端部および他方端部)を支持する両端支持部135を備える複数の囲み壁(壁部)134と、隣り合う2つの囲み壁134を連結する連結板(連結部)53と、を有する。また、第2実施形態の連結板(連結部)53は、第1実施形態の連結板(連結部)43とは異なり、支持部材51の径方向内方側(つまり、両端支持部135の内端支持部135a側)にしか形成されないものとなっている。言い換えると、隣り合う2つの囲み壁134(つまり、隣り合う2つの両端支持部135)の間は、支持部材51の径方向内方側(両端支持部135の内端支持部135a側)に形成される連結板53で連結される。
【0046】
また、隣り合う2つの囲み壁134(つまり、隣り合う2つの両端支持部135)の間の支持部材51の径方向外方側(両端支持部135の外端側支持部35b側)には、支持部材51の外周側から内周側に向かって凹みのように形成される凹空間(凹部)52が形成されている。凹空間52は、第1カバー部材32および第2カバー部材33の間で第1サイドギヤ25および第2サイドギヤ26を露出する空間を区画する。
【0047】
また、第2実施形態の支持部材51は、例えば、第1カバー部材32および第2カバー部材33と連結する(接続する)囲み壁134の外周壁(両端支持部135の外端側支持部35b)以外の構成、つまり、連結板53,両端支持部135の内端側支持部135aおよび囲み壁134の側面部150は、囲み壁134の外周壁よりも支持部材51の軸方向における厚さが薄く形成されている。そのため、連結板53,両端支持部135の内端側支持部(一方の支持部,他方の支持部)135aおよび囲み壁134の側壁部150は第1カバー部材32および第2カバー部材33の各々との間で空間(第2の空間)を形成する。
【0048】
ここで、連結板53,両端支持部135の内端側支持部135aおよび囲み壁134の側壁部150と第1カバー部材32および第2カバー部材33の各々との間で形成される空間(第2の空間)において、支持部材51の径方向(つまり、サイドギヤ25,26の径方向)に向かって延びる空間を径方向空間、支持部材51の周方向(つまり、サイドギヤ25,26の周方向)に向かって延びる空間を周方向空間と呼ぶことがある。
【0049】
このため、第2の実施形態の差動装置110におけるピニオンギヤ27およびピニオンシャフト28の外周への潤滑は、例えば、以下のように行われる。
【0050】
ミッションケース12から滴下された潤滑油の一部は、差動装置110の支持部材51の径方向外方から、凹空間52、および、連結板53と第1カバー部材32との間の空間(より具体的には、径方向空間)または連結板53と第2カバー部材33との間の空間(より具体的には、径方向空間)を介して空洞(第1の空間,空間)46へ導かれる。また、空洞46へ導かれた潤滑油は、空洞46よりも重力方向で下方に位置する囲み壁134(より具体的には、両端支持部135の内端支持部135a)の軸孔48を介して囲み壁134の内部に導かれる。
【0051】
そして、軸孔48を介して囲み壁134の内部に導かれた潤滑油は、軸孔48に挿入されているピニオンシャフト28の外周(ピニオンシャフト28のピニオンギヤ27との摺動面)、または、ピニオンギヤ27の端面(より具体的には、ピニオンギヤ27の軸方向における内端面)を伝ってピニオンギヤ27のギヤ歯27aを潤滑する。尚、デフケース140が回転している時、つまり、支持部材51が回転している時には、空洞46から潤滑油が導かれる囲み壁134はその都度変わることになる。
【0052】
また、ミッションケース12から滴下された潤滑油の他の一部は、差動装置110の支持部材51の径方向外方から、凹空間52、および、囲み壁134の側壁部150と第1カバー部材32との間の空間(より具体的には、周方向空間)または囲み壁134の側壁部150と第2カバー部材33との間の空間(より具体的には、周方向空間)を介して直接ピニオンギヤ27に導かれる。
【0053】
また、直接ピニオンギヤ27に導かれた潤滑油の一部は直接ギヤ歯27aを潤滑する。また、直接ピニオンギヤ27に導かれた潤滑油の他の一部は、さらにピニオンギヤ27の端面(より具体的には、ピニオンギヤ27の軸方向における内端面または外端面)を伝ってピニオンシャフト28の外周に導かれ、ピニオンシャフト28の外周(ピニオンシャフト28のピニオンギヤ27との摺動面)を潤滑する。
【0054】
したがって、第2実施形態によれば、差動装置110は、ミッションケース12から滴下された潤滑油を支持部材51の径方向外方から凹空間52を介して空洞46に向かって案内することができるとともに、空洞46に案内された潤滑油を支持部材51の両端支持部135の軸孔48を介してピニオンシャフト28の外周(ピニオンシャフト28のピニオンギヤ27との摺動面)およびピニオンギヤ27に送ることができる。これにより、
第1実施形態と同様に、ピニオンギヤ27またはピニオンシャフト28の外周を潤滑することができる。そのため、ピニオンギヤ27の潤滑性能を向上させることができる。これにより、ピニオンギヤ27の耐焼き付き性能の向上を図ることができる。
【0055】
また、第2実施形態によれば、連結板53は、支持部材51の径方向内方側(つまり、両端支持部135の内端支持部135a側)にしか形成されないものとなっているため、囲み壁
134に必要な剛性を低下させることなく、支持部材51の軽量化を図ることができる。ひいては、差動装置110全体の軽量化を図ることができる。
【0056】
また、第2実施形態によれば、凹空間52は第1カバー部材32および第2カバー部材33の間で第1サイドギヤ25および第2サイドギヤ26を露出する空間である。また、囲み壁134の側面部150は囲み壁134の外周壁(より具体的には、両端支持部135の外端側支持部35b)よりも支持部材51の軸方向における厚さが薄く形成されている。そのため、ミッションケース12から滴下された潤滑油を、凹空間52を介して、ピニオンギヤ27またはワッシャー70を介してピニオンシャフト28の外周に導入することができる。
【0057】
よって、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、ミッションケース12から滴下された潤滑油を、支持部材51の中心軸CL側に送ることなく、ピニオンギヤ27またはワッシャー70を介してピニオンシャフト28の外周に送ることができる。これによりピニオンギヤ27またはピニオンシャフト28の外周を潤滑することができる。したがって、第2実施形態においても、ピニオンギヤ27の潤滑性能を向上させることができる。これにより、第2実施形態においても、ピニオンギヤ27の耐焼き付き性能の向上を図ることができる。
【0058】
また、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、支持部材51の各々の外端側支持部35bの軸孔42が外端側支持部35bの外周面で開口しているので、ミッションケース12から滴下された潤滑油を支持部材51の両端支持部35の軸孔42を介してピニオンシャフト28の外周(ピニオンシャフト28のピニオンギヤ27との摺動面)およびピニオンギヤ27に送ることができる。これにより、差動装置11は、ミッションケース12から滴下された潤滑油でピニオンシャフト28の外周およびピニオンギヤ27を潤滑することができる。そのため、ピニオンギヤ27の潤滑性能を向上させることができる。これにより、ピニオンギヤ27の耐焼き付き性能の向上を図ることができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【0060】
また、第1実施形態および第2実施形態では、差動装置11,110と減速歯車機構16は別体で構成されたが、本発明はこれに限らない。本発明では、例えば、差動装置11,110の第1カバー部材32および第2カバー部材33のいずれか一方を減速歯車機構16のキャリアと一体に構成してもよい。これにより、差動装置11,110と減速歯車機構16を結合した時の中心軸CL方向の厚みを小さくすることができる。その結果、差動装置11,110および減速歯車機構16の幅狭化に寄与することができる。また、差動装置11,110と減速歯車機構16の全体での軽量化を図ることができる。
【0061】
また、第1実施形態および第2実施形態では、支持部材31,51の中央部に空洞46を設けたが、本発明はこれに限らない。本発明では、例えば、支持部材31,51は中央部に空洞46が設けられていなくてもよい。この場合には、本発明での空洞46を利用することで得られる効果については効果が得られなくなるものの、本発明での空洞46を利用しないで得られる効果については効果が得られる。