特許第6781172号(P6781172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6781172電気化学装置及び電気化学装置用の電気化学ユニットを形成する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6781172
(24)【登録日】2020年10月19日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】電気化学装置及び電気化学装置用の電気化学ユニットを形成する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0276 20160101AFI20201026BHJP
   C25B 9/00 20060101ALI20201026BHJP
   C25B 9/18 20060101ALI20201026BHJP
   C25B 13/02 20060101ALI20201026BHJP
   H01M 8/0247 20160101ALI20201026BHJP
   H01M 8/0273 20160101ALI20201026BHJP
   H01M 8/0286 20160101ALI20201026BHJP
   H01M 8/2465 20160101ALI20201026BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20201026BHJP
【FI】
   H01M8/0276
   C25B9/00 Z
   C25B9/18
   C25B13/02 302
   H01M8/0247
   H01M8/0273
   H01M8/0286
   H01M8/2465
   !H01M8/10 101
【請求項の数】18
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2017-563915(P2017-563915)
(86)(22)【出願日】2016年6月3日
(65)【公表番号】特表2018-523266(P2018-523266A)
(43)【公表日】2018年8月16日
(86)【国際出願番号】EP2016062675
(87)【国際公開番号】WO2016198337
(87)【国際公開日】20161215
【審査請求日】2019年5月9日
(31)【優先権主張番号】102015109393.6
(32)【優先日】2015年6月12日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503103316
【氏名又は名称】エルリンククリンガー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100174942
【弁理士】
【氏名又は名称】平方 伸治
(72)【発明者】
【氏名】ペーター シュタール
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン クラフト
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ゲーツ
【審査官】 藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−319667(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0004542(US,A1)
【文献】 特開2009−151995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0273 − 8/0276
C25B 9/00
C25B 9/18
C25B 13/02
H01M 8/0247
H01M 8/0286
H01M 8/10
H01M 8/2465
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタック方向(104)に互いに連続する複数の電気化学ユニット(106)からなるスタックを有する、電気化学装置であって、前記ユニットがそれぞれ電気化学的にアクティブな膜−電極配置(110)、少なくとも1つのガス拡散層(112、114)及び、少なくとも1つの流動媒体のための少なくとも1つの流れフィールド(124、126)を備えたバイポーラプレート(108)を有する、電気化学装置において、
少なくとも1つのバイポーラプレート(108)が少なくとも1つの端縁ウェブ(132、148)を有し、前記端縁ウェブが前記バイポーラプレート(108)の流れフィールド(124、126)を少なくとも部分的に縁取り、かつ、前記バイポーラプレート(108)に隣接するガス拡散層(112、114)と接触しており、電気化学装置(100)がさらに、少なくとも1つの流れフィールドシール部材(142、150)を有し、前記流れフィールドシール部材が、前記端縁ウェブ(132、148)によって縁取られる前記流れフィールド(124、126)を密閉し、かつ、前記端縁ウェブ(132、148)と接触し、かつ、前記ガス拡散層(112、114)と接触しており、
前記スタック方向(104)に互いに連続する2つのバイポーラプレート(108a、108b)の互いに向き合った側に、それぞれ端縁ウェブ(132、148)が設けられており、前記端縁ウェブがそれぞれ流れフィールドシール部材(142、150)と接触し、前記バイポーラプレート(108a、108b)の前記端縁ウェブ(132、148)と接触する前記流れフィールドシール部材(142、150)が互いに密閉するように接する、ことを特徴とする電気化学装置。
【請求項2】
前記流れフィールドシール部材(142、150)が前記端縁ウェブ(132、148)と材料結合で結合されている、ことを特徴とする請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
前記流れフィールドシール部材(142、150)が前記ガス拡散層(112、114)と材料結合で結合されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気化学装置。
【請求項4】
前記バイポーラプレート(108)がその陽極側に陽極側の端縁ウェブ(148)を、かつ、その陰極側に陰極側の端縁ウェブ(132)を有しており、前記陽極側の端縁ウェブ(148)と前記陰極側の端縁ウェブ(132)が、前記スタック方向(104)に対して垂直に延びる変位方向(170、196)に互いに対して少なくとも部分的に変位されている、ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の電気化学装置。
【請求項5】
前記バイポーラプレート(108)が、前記陽極側の端縁ウェブ(148)と前記陰極側の端縁ウェブ(132)の間に位置する中間領域(172)内に、流動媒体を前記バイポーラプレート(108)を通して、又は、前記バイポーラプレート(108)の内部(186)へ通過させるための少なくとも1つの通過開口部(174、198、218)を有している、ことを特徴とする請求項に記載の電気化学装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの通過開口部(174、198、218)が、媒体通路(160、164、168)と流体的に接続されており、前記媒体通路が前記スタック方向(104)に沿って前記バイポーラプレート(108)を通り抜けて延びている、ことを特徴とする請求項に記載の電気化学装置。
【請求項7】
少なくとも1つの膜−電極配置(110)に端縁補強配置(118)が設けられており、前記端縁補強配置に流れ前記フィールドシール部材(142,150)が密閉するように接する、ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の電気化学装置。
【請求項8】
前記スタック方向(104)に互いに連続する2つのバイポーラプレート(108a、108b)が、互いに実質的に等しく形成されているが、前記スタック方向(104)に対して平行な回転軸を中心に180°の角度だけ互いに回動されて配置されている、ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の電気化学装置。
【請求項9】
流れフィールドシール部材(142、150)と接触する端縁ウェブ(132、148)を有する少なくとも1つのバイポーラプレート(108)が、2つのバイポーラプレート層(134、146)を有しており、前記バイポーラプレート層が接合ライン(188、190、210、212、230、236)に沿って互いに接合されている、ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の電気化学装置。
【請求項10】
前記バイポーラプレート層(134、146)が接合ライン(188、190、210、212、230、236)に沿って溶接により及び/又は接着により互いに接合されている、ことを特徴とする請求項に記載の電気化学装置。
【請求項11】
前記バイポーラプレート(108)に配置された前記流れフィールドシール部材(142、150)が、前記スタック方向(104)に見て、前記接合ライン(188、190、210、212、230、236)と重ならない、ことを特徴とする請求項又は10のいずれか1項に記載の電気化学装置。
【請求項12】
少なくとも1つのバイポーラプレート(108)が2つのバイポーラプレート層(134、146)を有しており、前記バイポーラプレート層が、たとえばエラストマー材料からなる、シールの形成によって、バイポーラプレート層(134、146)の少なくとも1つにおいて周囲に対して密閉されている、ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の電気化学装置。
【請求項13】
第1のバイポーラプレート(108)の前記端縁ウェブ(132)と接触し、かつ、第1のガス拡散層(112)と接触している前記流れフィールドシール部材(142)が、前記第1のバイポーラプレート(108)に対向する第2のバイポーラプレート(108')まで延びている、ことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の電気化学装置。
【請求項14】
第1のバイポーラプレート(108)の前記端縁ウェブ(132)と接触し、かつ、第1のガス拡散層(112)と接触している前記流れフィールドシール部材(142)が、さらなる流れフィールドシール部材(150')に密閉するように接し、前記さらなる流れフィールドシール部材が第2のガス拡散層(114)と接触し、かつ、前記第1のバイポーラプレート(108)に対向する第2のバイポーラプレート(108')に密閉するように接する、ことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の電気化学装置。
【請求項15】
電気化学装置(100)を形成する方法であって、前記電気化学装置内に複数の電気化学ユニット(106)がスタック方向(104)に沿って互いに連続し、
前記電気化学ユニット(106)が電気化学的にアクティブな膜−電極配置(110)、少なくとも1つのガス拡散層(112、114)、及び、少なくとも1つの流動媒体のための少なくとも1つの流れフィールド(124、126)を備えたバイポーラプレート(108)を有している、方法において、
前記ガス拡散層(112、114)を前記バイポーラプレート(108)に又は前記バイポーラプレート(108)のバイポーラプレート層(134、146)に配置することと、
流れフィールドシール部材(142、150)を前記バイポーラプレート(108)に又は前記バイポーラプレート層(134、146)に、かつ、前記ガス拡散層(112、114)に次のように、すなわち前記流れフィールドシール部材(142、150)が前記バイポーラプレート(108)又は前記バイポーラプレート層(134、146)と、さらに前記ガス拡散層(112、114)と、の双方に接触するように、形成することと、
を有しており、
前記スタック方向(104)に互いに連続する2つのバイポーラプレート(108a、108b)の互いに向き合った側に、それぞれ端縁ウェブ(132、148)が設けられており、前記端縁ウェブがそれぞれ流れフィールドシール部材(142、150)と接触し、前記バイポーラプレート(108a、108b)の前記端縁ウェブ(132、148)と接触する前記流れフィールドシール部材(142、150)が互いに密閉するように接する、方法。
【請求項16】
前記バイポーラプレート(108)が少なくとも1つの端縁ウェブ(132、148)を有し、前記端縁ウェブが前記バイポーラプレート(108)の流れフィールド(124、126)を少なくとも部分的に縁取り、
前記流れフィールドシール部材(142、150)を形成する間、前記ガス拡散層(112、114)が前記端縁ウェブ(132、148)と接触している、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記バイポーラプレート(108)の少なくとも1つが、少なくとも1つの端縁ウェブ(132、148)を有し、前記端縁ウェブが、前記バイポーラプレート(108)の流れフィールド(124、126)を少なくとも部分的に縁取り、かつ、前記バイポーラプレート(108)に隣接するガス拡散層(112、114)と接触しており、
前記流れフィールドシール部材(150)が、射出成形によって前記端縁ウェブ(132、148)に及び/又はガス拡散層(112、114)に形成される、
請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記バイポーラプレート(108)の少なくとも1つが、少なくとも1つの端縁ウェブ(132、148)を有し、前記端縁ウェブが、前記バイポーラプレート(108)の流れフィールド(124、126)を少なくとも部分的に縁取り、かつ、前記バイポーラプレート(108)に隣接するガス拡散層(112、114)と接触しており、
前記流れフィールドシール部材(150)が、パターン印刷法によって前記端縁ウェブ(132、148)に及び/又はガス拡散層(112、114)に形成される、
請求項15又は16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学装置に関するものであって、それは以下の特徴を有している:
スタック方向に沿って互いに連続する複数の電気化学ユニットからなるスタックであって、前記ユニットがそれぞれ電気化学的にアクティブな膜−電極配置、少なくとも1つのガス拡散層、及び、少なくとも1つの流動性の媒体のための少なくとも1つの流れフィールドを備えたバイポーラプレートを有している、スタック。
【背景技術】
【0002】
この種の電気化学的装置は、特に燃料セルスタックあるいは電解槽として形成することができる。
【0003】
燃料セルスタック内及び電解槽内では、電気化学ユニットの種々の平面内で、かつ、それぞれデザインに応じて、それらの平面の種々の領域内でも、様々な媒体が案内される。これらの媒体は、特に陽極流体(燃焼ガス)、陰極流体(酸化剤)及び場合によっては流動性の冷却剤とすることもできる。
【0004】
電気化学装置を通して案内されるこれらの媒体は、互いに混合してもならず、電気化学ユニットから流出してもならない。したがって複数の平面内に密閉が必要である。
【0005】
これらの密閉は、たとえばエラストマー材料及び接着に基づいて実現することができる。
【0006】
金属のバイポーラプレートを有する電気化学ユニット内では、密閉は完全に、あるいは部分的に、バイポーラプレート内の条溝によって、あるいはエラストマー材料ベースのシールによって実現することができる。
【0007】
バイポーラプレート(セパレータ又はインターコネクタとも称される)は、1部材で形成することができ、あるいは少なくとも2つの個別相(バイポーラプレート層)を有することができる。
【0008】
多層のバイポーラプレートのバイポーラプレート層は、溶接又は接着のような接合方法によって結合することができる。
【0009】
シールは、別体のコンポーネントとして電気化学ユニットからなるスタック内に挿入し、又は、バイポーラプレート上若しくは電気化学ユニットの他の構成要素上に、たとえばガス拡散層上若しくは膜−電極配置上に、固定することができる。
【0010】
取り扱いと形成における利点により、かつ、シール形成が簡単であることにより、しばしばバイポーラプレート上にシールを固定することが優先される。これは、たとえば、特にエラストマー材料からなるシールをバイポーラプレートの層上に吹き付けることによって、行うことができる。
【0011】
このシール構成において、バイポーラプレートに固定されたシールと、膜−電極配置の端縁領域内で膜−電極配置に(特に触媒コーティングされた膜、CCMに)固定された端縁補強配置との組み合わせが好ましいことが明らかにされており、その場合に端縁補強配置はシールのためのカウンターコンポーネントとして用いられ、膜−電極配置の好ましくない機械的負荷を阻止することを支援し、同時に膜−電極配置の電気化学的にアクティブな領域を膜−電極配置の端縁領域に効果的に結合することを保証する。
【0012】
この種の端縁補強配置は、たとえば欧州特許第1403949(B1)号明細書に開示されている。
【0013】
この種の端縁補強配置は、サブガスケットとも称される。この種の端縁補強配置は、1つ又は複数の層を有することができ、その場合に通常の構造は2つの層を有し、それらは、一周するフレームの形式の膜−電極配置の2つの互いに逆となる側に配置されている。
【0014】
電気化学装置を形成する場合に、各電気化学ユニットのバイポーラプレート、ガス拡散層、膜−電極配置、シール及び場合によっては端縁補強配置(サブガスケット)は、互いに対して位置決めされなければならず、その場合にこれらのコンポーネントは個々に、あるいは少なくとも部分的にすでに互いに結合されているサブアッセンブリとして、組み合わせることができる。
【0015】
シールがガス拡散層に結合される場合に、これは、シールを取り付けるためのガス拡散層の位置決めも、電気化学的ユニットからなるスタックを形成する間、バイポーラプレート上でガス拡散層とそれに形成されたシールからなるユニットの位置決めも、必要とする。
【0016】
シールがバイポーラプレート上に形成される場合に、膜−電極配置とガス拡散層は、個別コンポーネントとして、あるいは前もって組み合わされたユニットとして、位置決めされる。
【0017】
電気化学装置へ供給される媒体(陰極流体、陽極流体、冷却剤)は、電気化学装置のスタック方向に延びる媒体供給通路と媒体導出通路を有する媒体分配構造(マニフォールドとも称される)によって、電気化学装置の種々の平面へ供給され、あるいは電気化学装置の種々の平面から導出され、かつ、電気化学ユニット内で媒体供給通路から該当する媒体の流れフィールド(フローフィルード)へ供給され、かつ流れフィールドから再び媒体導出通路内へ導出されなければならない。その場合に、電気化学装置の外部空間内への漏れ、及び、種々の媒体によって貫流される空間の間の漏れ、の双方を防止するために、媒体供給通路と媒体導出通路及び流れフィールドも、密閉されなければならない。
【0018】
流動性の媒体のための流れフィールドは、通路−ウェブ構造を有しており、それが該当する媒体を電気化学ユニットの平面を介して案内する。各流れフィールドは、側方において、以下においては端縁ウェブと称する流れフィールドの外側端縁をまわって一周する、ウェブによって側方を画成される。
【0019】
既知の電気化学装置においては、流れフィールドを密閉するシールは、端縁ウェブから離隔してバイポーラプレート上に取り付けられ、あるいは組み合わされる。その場合にシールと端縁ウェブの間に間隙が生じ、その間隙は、以下で端縁通路と称する。
【0020】
実験結果は、電気化学装置の駆動において、流れフィールドを取り巻く端縁通路を通る媒体の寄生的な流れ及び/又は水による端縁通路の少なくとも部分的な溢水が行われることがあることを、示している(P. Stahl, J. Biesdorf, P. Boillat, J. Kraft 及びK. A. Friedrichの論文“Water Distribution Analysis in the Outer Perimeter Region of Technical PEFC Based on Neutron Radiography“. Journal of the Electrochemical Society 162(7) F677-F685 (2015)ページに掲載)。それによって端縁通路の領域内で、膜−電極配置に陰極及び/又は陽極流体の定められない供給が生じ、それが膜−電極配置の電気化学的にアクティブな領域内の老化を促進することがあり得る。
【0021】
端縁補強配置の取り付けによって端縁通路の領域内で電気化学的反応が中断される場合も、それにもかかわらず端縁通路を通って流れる媒体は電気化学的反応のために提供されない。さらに、端縁補強配置の取り付けは、製造及び組み合わせの手間の増大と結びついている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】欧州特許第1403949(B1)号明細書
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】P. Stahl, J. Biesdorf, P. Boillat, J. Kraft 及びK. A. Friedrichの論文“Water Distribution Analysis in the Outer Perimeter Region of Technical PEFC Based on Neutron Radiography“. Journal of the Electrochemical Society 162(7) F677-F685 (2015)ページに掲載。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の課題は、少なくとも1つの流れフィールドを簡単かつ確実なやり方で密閉し、かつ寄生的な流れの発生を回避する、冒頭で挙げた種類の電気化学装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この課題は、請求項1の前文の特徴を有する電気化学装置において、本発明によれば、少なくとも1つのバイポーラプレートが少なくとも1つの端縁ウェブを有しており、その端縁ウェブがバイポーラプレートの流れフィールドを少なくとも部分的に縁取り、かつ、バイポーラプレートに隣接するガス拡散層と接触しており、電気化学装置がさらに少なくとも1つの流れフィールドシール部材を有し、その流れフィールドシール部材が、端縁ウェブによって縁取られた流れフィールドを密閉し、かつ、端縁ウェブと接触し、かつ、ガス拡散層と接触することによって、解決される。
【0026】
したがって本発明の視点は、流れフィールドシール部材を直接、流れフィールドを縁取る端縁ウェブにかつ端縁ウェブに接するガス拡散層に結合することである。
【0027】
その場合に好ましくは、端縁ウェブは流れフィールドをぐるっと一周するように形成されており、かつ特に中断、へこみ又は貫流開口部をもたず、それによって端縁ウェブを通して媒体が案内される。
【0028】
好ましくはガス拡散層と流れフィールドシール部材は、唯一のプロセスステップにおいて一緒にバイポーラプレートに又はバイポーラプレートの個別層に結合される。唯一の取り扱い及び位置決めステップによってバイポーラプレート、ガス拡散層及び流れフィールド部材からなるユニットを組み立てることにより、必要なプロセスステップの数と手間及びそのために必要な取り扱い及び位置決めプロセスの数が最小限に抑えられ、それによって可能なエラー源も減少される。
【0029】
本発明の好ましい形態において、流れフィールドシール部材は、端縁ウェブと材料結合で結合されている。
【0030】
好ましくはさらに、流れフィールドシール部材はガス拡散層と材料結合で結合されている。特に、流れフィールドシール部材を形成するエラストマー材料は、流れフィールドシール部材を形成する間に多孔のガス拡散層内へ侵入することができ、それによってガス拡散層は流れフィールドシール部材と材料結合で結合される。
【0031】
流れフィールドシール部材は、特に、端縁ウェブに及び/又はガス拡散層に形成される射出成形部分として形成することができる。
【0032】
その代わりに又はそれに加えて、流れフィールドシール部材はパターン印刷方法によって端縁ウェブに及び/又はガス拡散層に形成することができる。
【0033】
本発明の好ましい形態において、バイポーラプレートはその陽極側に陽極側の端縁ウェブを有し、その陰極側に陰極側の端縁ウェブを有しており、陽極側の端縁ウェブと陰極側の端縁ウェブは、スタック方向に対して垂直に延びる変位方向に少なくとも部分的に互いに対して変位されている。
【0034】
その場合に、バイポーラプレートが、陽極側の端縁ウェブと陰極側の端縁ウェブとの間に位置する中間領域内に、流動媒体をバイポーラプレートを通して、あるいはバイポーラプレートの内部空間内へ通過させるために少なくとも1つの通過開口部を有していると、効果的である。
【0035】
この種の通過開口部は、好ましくは媒体通路と流体接続されており、その媒体通路はバイポーラプレートを通ってスタック方向に沿って延びている。
【0036】
本発明に係る電気化学装置内に、少なくとも1つの膜−電極配置に端縁補強配置(サブガスケット)を設けることができ、その端縁補強配置に流れフィールドシール部材が密閉するように接する。
【0037】
その代わりに、あるいはそれに加えて、電気化学装置のスタック方向に互いに連続する2つのバイポーラプレートが、互いに向き合った側にそれぞれ端縁ウェブを有することもでき、その端縁ウェブがそれぞれ流れフィールドシール部材と接触しており、バイポーラプレートの端縁ウェブと接触する流れフィールドシール部材が、互いに密閉するように接する。
【0038】
その場合に特に、スタック方向に互いに連続する2つのバイポーラプレートは、互いに実質的に等しく形成されているが、スタック方向に対して平行の回転軸を中心に互いに対して180°の角度だけ回動して配置することができる。
【0039】
流れフィールドシール部材と接触する端縁ウェブを有する少なくとも1つのバイポーラプレートは、2つのバイポーラプレート層を有することができ、それらは接合ラインに沿って、好ましくは流体密に、互いに接合されている。
【0040】
その場合に特に、バイポーラプレート層は接合ラインに沿って溶接によって及び/又は接着によって、互いに接合することができる。
【0041】
本発明の特に好ましい形態において、バイポーラプレートに配置された流れフィールドシール部材は、バイポーラプレートのバイポーラプレート層を互いに接合する接合ラインと、−スタック方向に見て−重ならない。
【0042】
特に、流れフィールドシール部材は接合ラインと交差せず、そしてまたスタック方向において接合ラインの1つの上方又は下方でそれに対して平行に延びない。
【0043】
本発明の特別な形態において、第1のバイポーラプレートの端縁ウェブと接触し、かつ第1のガス拡散層と接触している流れフィールドシール部材が、他の流れフィールドシール部材に密閉するように接することができ、その他の流れシールド部材は、第1のバイポーラプレートに対向する第2のバイポーラプレートの端縁ウェブと接触し、かつ第2のガス拡散層と接触している。
【0044】
その代わりに、あるいはそれに加えて、第1のバイポーラプレートの端縁ウェブと接触し、かつ第1のガス拡散層と接触している流れフィールドシール部材が、第1のバイポーラプレートに対向する第2のバイポーラプレートまで延びて、第1のバイポーラプレートに対向する第2のバイポーラプレートに、好ましくは密閉するように接することもできる。
【0045】
その場合に流れフィールドシール部材は、好ましくは、第1のバイポーラプレートの端縁ウェブによって縁取られた、第1のバイポーラプレートの流れフィールドに加えて、第2のバイポーラプレートの流れフィールドも密閉する。
【0046】
その場合に好ましくは、流れフィールドシール部材は第1のバイポーラプレートの陰極側と材料結合で結合されており、かつ第2のバイポーラプレートの陽極側に密閉するように接する。
【0047】
その場合に、流れフィールドシール部材が第2のバイポーラプレートの端縁ウェブと接触し、あるいは第2のバイポーラプレートに接する第2のガス拡散層と接触することは、不要である。
【0048】
電気化学装置のこの種の形態の代わりに、あるいはそれに加えて、第1のバイポーラプレートの端縁ウェブと接触し、かつ第1のガス拡散層と接触する、流れフィールドシール部材が他の流れフィールドシール部材に密閉するように接し、当該他の流れフィールドシール部材が第2のガス拡散層と接触し、かつ第1のバイポーラプレートに対向する第2のバイポーラプレートに密閉するように接することもできる。
【0049】
その場合に特に、第1の流れフィールドシール部材が第1のガス拡散層と材料結合で、そして他の流れフィールドシール部材が第2のガス拡散層と材料結合で結合することができる。
【0050】
その場合に第1の流れフィールドシール部材は、好ましくは第1のバイポーラプレートの陰極側と接触し、第2の流れフィールドシール部材が、第2のバイポーラの陽極側に好ましくは密閉するように接する。
【0051】
本発明は、さらに、電気化学装置のための電気化学ユニットを形成する方法に関するものであり、その電気化学装置内にスタック方向に沿って複数の電気化学ユニットが連続しており、電気化学ユニットが電気化学的にアクティブな膜−電極配置、少なくとも1つのガス拡散層及び、少なくとも1つの流動媒体のための少なくとも1つの流れフィールドを備えたバイポーラプレートを有している。
【0052】
本発明の他の課題は、少ない数のプロセスステップにおいて、かつ、そのために必要な取り扱い及び位置決めプロセスの数をできるだけ少なくして実施することができ、それにもかかわらず流れフィールドの確実な密閉を可能にする、電気化学ユニットを形成するためのこの種の方法を提供することである。
【0053】
この課題は、本発明によれば、以下のことを有する方法によって解決される:
−バイポーラプレートに又はバイポーラプレートのバイポーラプレート層に、ガス拡散層を配置し、
−バイポーラプレートに又はバイポーラプレート層に、かつ、ガス拡散層に、流れフィールドシール部材を、流れフィールドシール部材が、バイポーラプレート又はバイポーラプレート層と、さらにガス拡散層と、の双方と接触するように、形成する。
【0054】
好ましくはその場合に、流れフィールドシール部材はバイポーラプレートに又はバイポーラプレート層に形成され、ガス拡散層はバイポーラプレートに又はバイポーラプレート層に配置されている。
【0055】
本発明に係る方法の好ましい形態において、バイポーラプレートが少なくとも1つの端縁ウェブを有し、その端縁ウェブがバイポーラプレートの流れフィールドを少なくとも部分的に縁取り、ガス拡散層は、流れフィールドシール部材を形成する間、端縁ウェブと接触している。
【0056】
本発明に係る方法の他の好ましい特徴は、すでに、本発明に係る電気化学装置の好ましい実施形態に関連して上で説明されている。
【0057】
本発明によれば、ガス拡散層と流れフィールドシール部材は、唯一のプロセスステップにおいて共通にバイポーラプレートに又はバイポーラプレート層に結合される。
【0058】
電気化学ユニットの電気化学的にアクティブな領域の回りを一周する端縁ウェブは、好ましくはつながって形成される。
【0059】
端縁ウェブは、ガス拡散層のための結合面として用いられる。
【0060】
ガス拡散層は、端縁ウェブを部分的又は完全に覆い及び/又は端縁ウェブを越えて外側へ向かって、したがって流れフィールドの外部へ向かって、張り出す。
【0061】
好ましくは、流れフィールドシール部材は、ガス拡散層の外側の端縁を完全に包囲する。
【0062】
流れフィールドシール部材は、端縁ウェブの外側の側面において及び/又は頂上領域においてその外側に配置することができる。
【0063】
端縁ウェブによって、射出成形方法で流れフィールドシール部材を形成するための、閉成されたキャビティを形成することができる。
【0064】
その代わりに、あるいはそれを補って、端縁ウェブは、たとえばパターン印刷方法、特にスクリーン印刷方法のような、塗布方法において、あるいはCIP(”Cred in place”)方法において、流れフィールドシール部材を形成するための載置面として提供される。
【0065】
好ましくは、バイポーラプレートの−スタック方向に互いに対向する−2つの側に、それぞれ端縁ウェブが設けられている。
【0066】
バイポーラプレートの2つの側の端縁ウェブ(陰極側の端縁ウェブと陽極側の端縁ウェブ)は、好ましくはスタック方向に直交する平面内で、互いに対して部分的に変位して配置されている。
【0067】
それによってバイポーラプレートに中間領域が生じ、その中間領域はスタック方向に対して直交する平面内で2つの端縁ウェブの間に位置する。
【0068】
流動媒体を供給又は導出するための媒体流は、この種の中間領域内で端縁ウェブの下方を通って案内し、かつ、2つの端縁ウェブの間の中間領域内の通過開口部を通してバイポーラプレートの反対側へ案内することができ、そこには該当する流動媒体用の流れフィールドが配置されている。
【0069】
それによって、端縁ウェブをそれぞれつなげて及び/又は中断なしで及び/又は貫流開口部なしで、形成することが可能である。
【0070】
流動媒体、特に冷却剤は、端縁ウェブの体積を通して案内することができ、それによって流れフィールドの幅にわたって分配することができる。
【0071】
膜−電極配置の老化の加速に寄与することのある、膜−電極配置の電気化学的にアクティブな領域の片側への陽極液又は陰極液の供給を回避するために、膜−電極配置の周面に端縁補強配置(サブガスケット)を設けることができ、端縁補強配置は好ましくは、互いに変位された端縁ウェブの領域内に配置される。
【0072】
本発明の特別な形態において、バイポーラプレート、流れフィールドシール部材及びガス拡散層は、膜−電極配置の両側に位置する流れフィールドシール部材の密閉ライン及び、端縁ウェブがそれに沿って延びるラインが、スタック方向に見て互いに実質的に等しく重なり合うように、形成されている。
【0073】
この場合において、膜−電極配置の両側へ流動媒体を供給される電気化学的にアクティブな領域は、等しく重なり合うので、電気化学的にアクティブな領域の片側だけの媒体供給を回避するための端縁補強配置の使用は、不要である。
【0074】
スタック方向に互いに隣接する2つの膜−電極配置の電気化学的にアクティブな領域は、−スタック方向に見て−、媒体供給と媒体導出の領域内で互いに等しく重なり合わない。これらの部分において、流動媒体はバイポーラプレートの、それぞれの膜−電極配置に対向する平面を介し、かつバイポーラプレート内の通過開口部を通してそれぞれの媒体用の流れフィールドへ供給される。
【0075】
スタック方向に互いに連続する2つの膜−電極配置へ媒体を供給又は導出するための、バイポーラプレート内の通過開口部は、この場合において、スタック方向に対して直交する方向に互いに変位して配置されている。
【0076】
電気化学装置のこの実施形態において、2つの互いに隣接する電気化学ユニットのバイポーラプレート、流れフィールドシール部材、ガス拡散層及び膜−電極配置は、互いに同一に形成されているが、スタック方向に対して平行な回転軸を中心に互いに対して180°だけ回動されて、重ねられており、それによって媒体のための供給通路と導出通路の領域における端縁ウェブと流れフィールドシール部材の変位が達成される。
【0077】
これが、同一部品として真に同一に構成されたバイポーラプレートからなるスタックの形成を許す。
【0078】
この実施形態において、2つのバイポーラプレート層の間の中間領域内の冷却剤は、バイポーラプレートの内部空間内へ流入する。その場合にバイポーラプレートの内部空間への冷却剤の供給と、バイポーラプレートの内部空間からの冷却剤の導出は、好ましくは、2つのバイポーラプレートが、流れフィールドシール部材と冷却剤通路の通路シール部材が冷却剤の流れパスと交差する領域内で、互いに離隔していることを介して行われる。
【0079】
少なくとも1つの端縁ウェブは、流動媒体によって、好ましくは冷却剤によって貫流することができ、そのようにして電気化学ユニットの面にわたって流動媒体が分配される。
【0080】
1つより多い媒体を端縁ウェブの体積を通して流れフィールド内へ案内し、かつ分配することができるようにするために、端縁ウェブの体積は充填物によって分割することができる。
【0081】
この種の充填物は、特に流れフィールドシール部材と一体的に形成することができる。
【0082】
バイポーラプレートが2つのバイポーラプレート層から形成されている場合に、バイポーラプレート層は、溶接又は接着のような接合方法により、あるいはまた特にエラストマー材料からなるシールを形成することによって、バイポーラプレート層の少なくとも1つにおいて、周囲に対して密閉することができる。
【0083】
この種のシールは、第1のバイポーラプレート層上、第2のバイポーラプレート層上、あるいは一部は、第1のバイポーラプレート層上に、そして他の部分は第2のバイポーラプレート層上に形成することができる。
【0084】
バイポーラプレートの内部空間を密閉するためのシールは、流れフィールドシール部材を形成するのと共通のプロセスステップにおいて、形成することができる。
【0085】
バイポーラプレート層に凹部を、特に溝の形式で、設けることができ、その溝内にシール材が少なくとも部分的に収容され、それによってシール作用に必要なシール体積を収容することができる。
【0086】
本発明の特に好ましい形態において、バイポーラプレートのバイポーラプレート層がそれに沿って互いに接合される接合ライン、たとえば溶接継目又は接着継目は、バイポーラプレートに設けられているシール部材の密閉ラインと交差又は重畳しない。それによって特にバイポーラプレート層を接合するために溶接方法が使用される場合に、シール設計とプロセス安全性に関する利点が得られる。
【0087】
バイポーラプレート層が接着によって互いに接合されている場合には、バイポーラプレート層の接合ラインが、バイポーラプレート層に設けられているシール部材の密閉ラインと重なり交差することが可能である。それによって特に、バイポーラプレートにおける媒体供給と媒体導出の領域は、著しくコンパクトに形成することができる。さらに、媒体導出と媒体供給のこの領域内で、スタック内で互いに隣接する2つの膜−電極配置の互いに対する変位も、より小さく選択することができる。
【0088】
ガス拡散層、バイポーラプレート又はバイポーラプレート層及び流れフィールドシール部材からなるユニットを形成する場合に、好ましくはガス拡散層の外側の一周する部分が、バイポーラプレートに、あるいはバイポーラプレート層に設けられた端縁ウェブと接触される。
【0089】
好ましくはエラストマー材料からなる、流れフィールドシール部材は、それが、端縁ウェブの領域内でガス拡散層及びバイポーラプレート又はバイポーラプレート層と直接かつ間隙なしで結合されるように、形成される。
【0090】
流れフィールドシール部材の形成が射出成形方法で行われる場合に、射出成形工具の型取りエッジをガス拡散層上に載置することができ、ガス拡散層は弾性的又は可塑的な変形によって射出成形工具の誤差を補償する。
【0091】
本発明に係る電気化学装置及び本発明に係る形成方法において、端縁ウェブと流れフィールドシール部材との間に端縁通路が生じることは、流れフィールドシール部材を端縁ウェブに直接配置することによって防止される。それによって膜−電極配置の電気化学的にアクティブな領域の定められない媒体供給及びそれと結びついた老化効果が回避され、かつ、膜−電極配置の外側の端縁領域における端縁補強配置を省くことが可能である。
【0092】
本発明は、電気化学ユニットの端縁領域とシール領域の極めてコンパクトな構造を可能にする。
【0093】
さらに、バイポーラプレート又はバイポーラプレート層、ガス拡散層及び流れフィールドシール部材からなるユニットは、電気化学装置の組み立てプロセスにおいて、唯一の取り扱い及び位置決めプロセスによって組み立てることができる。
【0094】
膜−電極配置(端縁補強配置あり又はなし)は、ロール製品として設けることができ、スタックを組み立てる前のプロセスステップにおいて裁断して、組み立てることができる。
【0095】
それによって、必要なプロセスステップの数と手間及び必要な取り扱い及び位置決めプロセスの数と手間が著しく減少され、組み立てプロセスは不具合の発生が少なくなる。
【0096】
端縁ウェブは、流れフィールドシール部材を形成する場合に、成形及び/又は支持構造として用いられる。
【0097】
端縁ウェブは、バイポーラプレートの内部空間を周囲に対して密閉するためのシール部材を、少なくとも部分的に収容するためにも、用いられる。
【0098】
端縁ウェブの体積を、種々の媒体によって貫流可能な複数の部分に分割するための充填物は、たとえば、挿入部品、別に形成される部材、又は、共通のプロセスステップにおいて流れフィールドシール部材と共にバイポーラプレート又はバイポーラプレート層上に形成される部材、とすることができる。
【0099】
バイポーラプレートに、あるいはバイポーラプレート層に、流れフィールドシール部材が形成されてしまうまで、バイポーラプレートもしくはバイポーラプレート層にガス拡散層を一時的に固定するために用いられる、部材を設けることができる。
【0100】
この種の固定部材は、バイポーラプレート又はバイポーラプレート層と一体的に形成することができ、あるいはバイポーラプレートもしくはバイポーラプレート層とは別に形成される構成部品とすることができる。
【0101】
バイポーラプレート又はバイポーラプレート層にガス拡散層を固定することは、たとえば形状結合、材料結合又は摩擦結合によってもたらすことができる。
【0102】
流れフィールドシール部材によって密閉するために必要とされる弾性は、エラストマー材料を使用することにより及び/又は条溝構造とそれに配置されたシール材料を使用することにより得ることができる。条溝構造を使用する場合には、第1のプレスプロセスにおける可塑変形によって巨視的な凹凸が、そして条溝構造上に配置される、好ましくはエラストマー材料からなるシールによって微視的な凹凸が、補償される。
【0103】
流れフィールドシール部材は、シール作用に必要なシール力を低下させるために、フラットに、あるいはその、バイポーラプレートとは逆の上側においてプロフィールを有するように形成することができる。
【0104】
バイポーラプレートに複数の流れフィールドシール部材、たとえば陰極側の流れフィールドシール部材と陽極側の流れフィールドシール部材、が存在している場合に、これらの流れフィールドシール部材は同じやり方で構成して、形成することができるが、異なるように構成及び/又は形成することができる。
【0105】
たとえば、バイポーラプレートの一方の側に、凹凸を有する流れフィールドシール部材を、特に射出成形方法で、形成することができ、バイポーラプレートの対向する側には、パターン印刷方法、特にスクリーン印刷方法によって、フラットに形成される流れフィールドシール部材が形成される。
【0106】
流れフィールドシール部材を形成するために射出成形方法を適用する場合に、ガス拡散層は射出成形工具の型取りエッジによって、好ましくは電気化学装置の駆動の間にプレスされるよりも強く、プレスされる。
【0107】
好ましくは端縁ウェブは、充分に大きい載置面積を有しているので、射出成形工具の型取りエッジを介して、エラストマー材料の圧入の間に必要とされるシールを形成することができる。
【0108】
バイポーラプレートが複数のバイポーラプレート層から構成されている場合に、各バイポーラプレート層にガス拡散層を結合することと、流れフィールドシール部材を形成することは、別々に行うことができ、それに続いて他のステップにおいて、バイポーラプレート層を互いに接合することができる。この場合において、流れフィールドシール部材を形成する際に、バイポーラプレート層の、形成すべきシール部材に対向する側から他の射出成形工具によってバイポーラプレート層を支持することが可能である。
【0109】
しかし原則的に、少なくとも1つの流れフィールドシール部材は、複数のバイポーラプレート層からすでに接合されているバイポーラプレートに形成することもできる。
【0110】
その場合にバイポーラプレートの剛性は、発生するプロセス力に耐えるために、充分に高くなければならない。
【0111】
その場合に、バイポーラプレートの互いに対向する2つの側におけるガス拡散層と流れフィールドシール部材は、1つの共通のプロセスステップにおいて、あるいはシーケンシャルに相前後して、設けることもできる。
【0112】
その場合にシーケンシャルな形成は、流れフィールドシール部材がバイポーラプレートの2つの互いに対向する側において同一の工具によって形成することができる場合に、効果的であり得る。
【0113】
好ましくはバイポーラプレートの2つの互いに対向する側に、それぞれガス拡散層が流れフィールドシール部材によって結合される。
【0114】
しかし原則的に、バイポーラプレートの片側に1つのガス拡散層のみを流れフィールドシール部材によって結合することもでき、その場合に、電気化学装置の組み立てプロセスにおいて、第2のガス拡散層は別に、バイポーラプレートの対向する側で挿入される。
【0115】
バイポーラプレートの複数のバイポーラプレート層が溶接方法によって互いに接合される場合に、流れフィールドシール部材が溶接継目と重ならない場合には、バイポーラプレート層は流れフィールドシール部材の形成前又は後に互いに溶接することができる。この場合においては、流れフィールドシール部材の形成後も、まだ、バイポーラプレートの少なくとも一方の側からすべての接合箇所に接近することができる。
【0116】
複数のバイポーラプレート層が接着によって互いに接合される場合に、バイポーラプレート層は好ましくは、個々のバイポーラプレート層に流れフィールドシール部材が形成された後に、互いに接合される。その場合に接合ラインは、−スタック方向に見て−流れフィールドシール部材と、そしてバイポーラプレート層に設けられた通路シール部材と重なることができ、それが、シール部材の領域におけるバイポーラプレートの極めてコンパクトな構造を可能にする。
【0117】
本発明の更なる特徴と利点が、実施例についての以下の説明及び図面表示の対象である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
図1】スタック方向に沿って互いに連続する複数の電気化学ユニットを有する、電気化学装置の電気化学ユニットのバイポーラプレートの陽極側を上から部分的に図式的に示す上面図であって、表示は、媒体供給又は媒体導出の領域とバイポーラプレートの陽極側の流れフィールドの一部を示している。
図2】媒体供給又は媒体導出の同一の領域及び対向する陰極側の流れフィールドの一部を示す、図1のバイポーラプレートの陰極側を部分的に下から図示的に示す上面図である。
図3図1図2に示すバイポーラプレートを有する電気化学装置を陰極流体の導出の領域において、図1の3−3線に沿って示す図式的な縦断面図である。
図4図1図2に示すバイポーラプレートを有する電気化学装置を、陽極流体の供給の領域において、図1の4−4線に沿って図式的に示す縦断面図である。
図5図1図2に示すバイポーラプレートを有する電気化学装置を冷却剤供給の領域において、図1の5−5線に沿って示す図式的な縦断面図である。
図6】スタック方向に沿って互いに連続する複数の電気化学ユニットを有する電気化学装置のバイポーラプレートの第2の実施形態の陰極側を、図式的に示す上面図である。
図7図6に示すバイポーラプレートの陽極側を図式的に示す上面図である。
図8図6図7に示すバイポーラプレートを有する電気化学装置を膜−電極配置の第1のセットへ陰極流体を供給する領域において、図6の8−8線に沿って図式的に示す断面図である。
図9図6図7に示すバイポーラプレートを有する電気化学装置を膜−電極配置の第2のセットへ陰極流体を供給する領域において、図6の9−9線に沿って示す図式的な断面図である。
図10図6図7に示すバイポーラプレートを有する電気化学装置を、膜−電極配置の第2のセットから陽極流体を導出する領域において、図6の10−10線に沿って示す図式的な断面図である。
図11図6図7に示すバイポーラプレートを有する電気化学装置を、膜−電極配置の第1のセットから陽極流体を導出する領域において、図6の11−11線に沿って示す図式的な断面図である。
図12図6図7に示すバイポーラプレートを有する電気化学装置を、冷却剤供給の領域において、図6の12−12線に沿って示す図式的な断面図である。
図13】端縁ウェブを有するバイポーラプレート層、端縁ウェブと接触しているガス拡散層、及び、端縁ウェブとガス拡散層とに接触している流れフィールドシール部材、並びに、流れフィールドシール部材を形成するための射出成形工具の工具部分を、図式的に示す断面図である。
図14】端縁ウェブを有するバイポーラプレート、端縁ウェブと接触しているガス拡散層、及び、端縁ウェブと接触しかつガス拡散層と接触している、1つ又は複数のシールリップを有する流れフィールドシール部材を、図式的に示す断面図である。
図15】端縁ウェブを有するバイポーラプレート、端縁ウェブと接触しているガス拡散層、及び、端縁ウェブと接触しかつガス拡散層と接触している、CIP(”Cured-in-place”)ビードの形式で形成されている、流れフィールドシール部材を、図式的に示す断面図である。
図16】端縁ウェブを有するバイポーラプレート層、端縁ウェブと接触しているガス拡散層、及び、端縁ウェブと接触しかつガス拡散層と接触している、射出成形によって形成されている、流れフィールドシール部材を、図式的に示す断面図である。
図17】バイポーラプレートの第3の実施形態の、陰極側のバイポーラプレート層の冷却剤側の内側を図式的に示す上面図である。
図18】バイポーラプレートの第3の実施形態の、陽極側のバイポーラプレート層の冷却剤側の内側を図式的に示す上面図である。
図19図17図18のバイポーラプレート層を有する電気化学装置を、図17の19−19線に沿って図式的に示す断面図であって、バイポーラプレートの取り付けが済んだ状態において、互いに接合された陰極側と陽極側のバイポーラプレート層がスタック方向に沿って互いに離隔して示されており、それによってバイポーラプレートの内部で冷却剤シール部材がそれぞれバイポーラプレート層の1つのみと材料結合により結合されていることが、明らかにされる。
図20】バイポーラプレートの第4の実施形態を有する電気化学装置を図8と同様に、陰極流体を膜−電極配置の第1のセットへ供給する領域内で図式的に示す断面図であって、陰極側のバイポーラプレート層と陽極側のバイポーラプレート層は溶接によってではなく、接着によって互いに結合されている。
図21】2つの端縁補強層からなる端縁補強配置を有する、膜−電極配置の端縁領域、2つのガス拡散層、及び、従来技術に基づいてガス拡散層から離隔して端縁補強配置に配置されている、2つの流れフィールドシール部材を図式的に示す断面図である。
図22】膜−電極配置の端縁領域、2つのガス拡散層、それぞれ端縁ウェブを有する2つのバイポーラプレート層、及び、本発明にしたがってそれぞれ端縁ウェブ及びそれぞれガス拡散層と接触している2つの流れフィールドシール部材を図式的に示す断面図である。
図23】膜−電極配置の端縁領域、2つのガス拡散層、それぞれ端縁ウェブを有する2つのバイポーラプレート層、及び、流れフィールド部材を図式的に示す断面図であって、その流れフィールド部材は、第1のバイポーラプレートの第1の端縁ウェブと接触し、かつ、第1のガス拡散層と接触しており、かつ、第1のバイポーラプレートから第1のバイポーラプレートに対向する第2のバイポーラプレートまで延びて、第2のバイポーラプレートに密閉するように接している。
図24】膜−電極配置の端縁領域、2つのガス拡散層、それぞれ端縁ウェブを有する2つのバイポーラプレート層、及び、2つの流れフィールドシール部材を図式的に示す断面図であって、第1の流れフィールドシール部材が、第1のバイポーラプレートの第1の端縁ウェブと接触し、かつ、第1のガス拡散層と接触し、かつ、第2の流れフィールドシール部材に密閉するように接し、その流れフィールドシール部材自体は第2のガス拡散層と接触し、かつ、第1のバイポーラプレートに対向する第2のバイポーラプレートに密閉するように接するが、第2のバイポーラプレートの第2の端縁ウェブからは離隔している。
【発明を実施するための形態】
【0119】
すべての図において、同一又は機能的に等価の部材は、同一の参照符号で示されている。
【0120】
図1から図5に示す、全体を符号100で示す電気化学装置、たとえば燃料セルスタック又は電解槽は、スタックを有しており、そのスタックは、スタック方向104に互いに連続する複数の電気化学ユニット106、たとえば燃料セルユニット又は電解質ユニットと、スタック方向104に沿って方向付けされた締めつけ力を電気化学ユニットに供給するための締めつけ装置(図示せず)とを有している。
【0121】
図3から図5からもっともよくわかるように、電気化学装置100の各電気化学ユニット106は、それぞれバイポーラプレート108、膜−電極配置(MEA)110、膜−電極配置110の陰極側に配置されている、陰極側のガス拡散層112、及び、膜−電極配置110の陽極側に配置されている、陽極側のガス拡散層114を有している。
【0122】
図1から図5に示す電気化学装置100の実施形態において、各膜−電極配置110はその外側の端縁領域116に端縁補強配置118を有しており、その端縁補強配置は好ましくは材料結合で、特にホットラミネート及び/又は接着によって、膜−電極配置110に固定されている。
【0123】
端縁補強配置118は、サブガスケットとも称される。
【0124】
この種の端縁補強配置118は、たとえば、特に端縁補強箔の形式の、2つの端縁補強層を有することができ、その場合に陰極側の端縁補強層が膜−電極配置110の陰極側に接し、陽極側の端縁補強層は膜−電極配置110の陽極側に接して、2つの端縁補強層は、膜−電極配置110の外側の端縁120を越えて張り出す張り出し領域122内で、好ましくは材料結合で、特にホットラミネート及び/又は接着によって、互いに固定されている。
【0125】
図3から図5において、端縁補強配置118の端縁補強層は、表示を簡単にするために、ユニットとしてのみ示されており、別に示されてはいない。
【0126】
端縁補強配置118の端縁補強層の各々は、サーモプラスティック、ジュロプラスティック又はエラストマーのポリマーから形成することができ、それは好ましくはポリテトラフルオロエチレン、フッ化ポリビニリデン、ポリエステル、ポリアミド、コポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリイミド、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、シリコン、シリコンゴム及び/又はシリコンベースのエラストマーを有する。
【0127】
膜−電極配置110は、陰極側のガス拡散層112へ向いた陰極、陽極側のガス拡散層114へ向いた陽極、及び、陰極と陽極の間に配置された電解質膜、特にポリマー電解質膜を有している。
【0128】
膜−電極配置110のこの3層の構造は、図面では簡単にするために図示されていない。
【0129】
陰極側のガス拡散層112は、ガスを透過する材料から形成されており、かつ、膜−電極配置110に隣接するバイポーラプレート108aの陰極側の流れフィールド124の通路から、膜−電極配置110の陰極へ、陰極流体、特に酸化剤を通過させるために用いられ、そのバイポーラプレートはスタック方向104において膜−電極配置110aに続き、かつ陰極側のガス拡散層112と接触している。
【0130】
陽極側のガス拡散層114は、同様にガスを透過する材料から形成されており、かつ、
スタック方向104において膜−電極配置110の下方に配置されているバイポーラプレート108bの陽極側の流れフィールド126の通路から膜−電極配置110の陽極へ陽極流体、特に燃焼ガスを通過させるために用いられ、そのバイポーラプレートは陽極側のガス拡散層114と接触している。
【0131】
陽極側のガス拡散層114及び隣接するバイポーラプレート108bは、共通に、電気化学ユニット106の陽極側の流体室128を包囲する。
【0132】
陰極側のガス拡散層112及びそれに隣接するバイポーラプレート108aは、一緒になって、電気化学ユニット106の陰極側の流体室130を包囲する。
【0133】
図2からもっともよくわかるように、各バイポーラプレートの陰極側の流れフィールド124は、陰極側の端縁ウェブ132によって縁取られており、その端縁ウェブは好ましくはつながって形成されており、かつ陰極側の流れフィールド124全体を包囲している。
【0134】
たとえば図3から明らかなように、陰極側の端縁ウェブ132は、たとえば条溝の形式で、バイポーラプレート108の陰極側のバイポーラプレート層134に形成されている。
【0135】
端縁ウェブ132は、特に、流れフィールド124を向いた内側の側面136、流れフィールド124とは逆の外側の側面138、及び、外側の側面138を内側の側面136と結合する頂上領域140を有することができる。
【0136】
バイポーラプレート108は、好ましくは弾性的及び/又は可塑的に変形可能な金属材料から形成されている。
【0137】
陰極側の流れフィールド124と陰極側の流体室130を外側へ向かって流体密に密閉するために、バイポーラプレート108の陰極側に陰極側の流れフィールドシール部材142が配置されており、それは、密閉ライン144に沿って陰極側の端縁ウェブ132と陰極側の流れフィールド124の回りをまわって延びている。
【0138】
流れフィールドシール部材142は、陰極側の端縁ウェブ132と接触し、かつ陰極側のガス拡散層112と接触しており、そのガス拡散層は陰極側の端縁ウェブ132の頂上領域140に接し、かつそれを越えて陰極側の流れフィールドシール部材142まで延びている。
【0139】
好ましくは陰極側の流れフィールドシール部材142は、陰極側の端縁ウェブ132と、好ましくはその外側の側面138と、材料結合で、かつ陰極側のガス拡散層112と材料結合で、結合されている。
【0140】
電気化学装置100を組み立てた状態において、陰極側の流れフィールドシール部材142は端縁補強配置118に流体密に接し、その端縁補強配置は、陰極側のガス拡散層112が接する膜−電極配置110に固定されており、そのガス拡散層と陰極側の流れフィールドシール部材142が接触している。
【0141】
バイポーラプレート108の陽極側の流れフィールド126は、陽極側の端縁ウェブ148によって縁取られており、その端縁ウェブは特に、バイポーラプレート108の陽極側のバイポーラプレート層146に条溝として形成することができ、好ましくは一貫して陽極側の流れフィールド126の回りをまわって延びている。
【0142】
陽極側の端縁ウェブ148は、好ましくは、陰極側の端縁ウェブ132と実質的に同一の横断面をもって形成されており、特に、陽極側の流れフィールド126へ向いた内側の側面136と陽極側の流れフィールド126とは逆の外側の側面138、及び、外側の側面138を内側の側面136と結合する頂上領域140を有することができる。
【0143】
陽極側の流れフィールド126と陽極側の流体室128を外側へ向かって密閉するために、陽極側のバイポーラプレート層146に陽極側の流れフィールドシール部材150が設けられており、それは、陽極側の端縁ウェブ148と陽極側の流れフィールド126の回りにシールライン152に沿って延びている。
【0144】
陽極側の流れフィールドシール部材150は、陽極側の端縁ウェブ148と、特にその外側の側面138と接触し、かつ陽極側のガス拡散層114と接触しており、そのガス拡散層は陽極側の端縁ウェブ148の頂上領域140を越えて陽極側の流れフィールドシール部材150まで延びている。
【0145】
好ましくは陽極側の流れフィールドシール部材150は、陽極側の端縁ウェブ148と、そして陽極側のガス拡散層114と材料結合で結合されている。
【0146】
陽極側の流れフィールドシール部材150は、端縁補強配置118に流体密に接しており、その端縁補強配置は、陽極側のガス拡散層114が接する膜−電極配置110に固定されており、そのガス拡散層114と陽極側の流れフィールドシール部材150が接触している。
【0147】
各バイポーラプレート108の互いに逆となる端縁領域は、複数の媒体貫流開口部154を有しており、それを通してそれぞれ、電気化学装置100へ供給すべき媒体(特に膜−電極配置110の陰極へ供給すべき陰極流体、膜−電極配置110の陽極へ供給すべき陽極流体、又は、冷却剤)がバイポーラプレート108を貫流することができる。
【0148】
スタック内で互いに連続するバイポーラプレート108の媒体貫流開口部154と、スタック方向104において媒体貫流開口部154の間に位置する間隙が一緒になって、それぞれ媒体通路156を形成する。
【0149】
それを通して電気化学装置100に流動媒体を供給することができる、各媒体通路156に、それぞれ少なくとも1つの他の媒体通路が対応づけられており、その媒体通路を通して該当する流動媒体が電気化学装置100から導出可能である。
【0150】
その場合に各媒体通路156は、該当する媒体に対応づけられたバイポーラプレート108の流れフィールド124、126と流体接続されているので、媒体は第1の媒体通路156からスタック方向104に対して横方向に、好ましくは実質的に垂直に、第2の媒体通路へ流れることができる。
【0151】
図1図2から明らかなように、各バイポーラプレート108は、特に、電気化学装置100を貫通する、陰極流体用の導出通路160の構成要素を形成する、陰極流体用の貫流開口部158、電気化学装置100を貫通する、陽極流体用の供給通路164の構成要素を形成する、陽極流体用の貫流開口部162、及び、電気化学装置100を貫通する冷却剤用の供給通路168の構成要素を形成する、冷却剤用の貫流開口部166を有している。
【0152】
図3からもっともよくわかるように、陰極流体用の貫流開口部158の近傍に陽極側の流れフィールドシール部材150を有するバイポーラプレート108の陽極側の端縁ウェブ148は、陰極側の流れフィールドシール部材142を有する陰極側の端縁ウェブ132に対して、スタック方向104に対して垂直に方向付けされた変位方向170に沿って、陰極流体用の貫流開口部158から離れるように変位している。
【0153】
陽極側の流れフィールドシール部材150と陰極側の流れフィールドシール部材142との間に位置するバイポーラプレート108の中間領域172内において、バイポーラプレート108に陰極流体用の通過開口部174が設けられており、それを通して陰極側の流体室130からの陰極流体がバイポーラプレート108の陰極側から、バイポーラプレート108の陽極側へ、そしてそこから陰極流体用の導出通路160内へ達することができる。
【0154】
電気化学ユニット106の陰極側の流体室130から陰極流体用の導出通路160への、及び陰極流体用の導出通路160内部の陰極流体の流れ方向が、図3に矢印176で示されている。
【0155】
したがって陰極流体の流れは、バイポーラプレート108内の陰極流体用の通過開口部174を通り抜けて、バイポーラプレート108の陰極側の端縁ウェブ132を越えて行われる。
【0156】
陰極流体用の導出通路160と、陰極側の流体室130から導出通路160内への陰極流体の流れルートを密閉するために、バイポーラプレート108の陽極側に陽極側の通路シール部材178が設けられており、それは、シールライン180(図1を参照)に沿って陰極流体用の貫流開口部158を回り、かつ陰極流体用の通過開口部174を回って延びている。
【0157】
陽極側の通路シール部材178は、好ましくは材料結合で、バイポーラプレート108に固定されており、かつ、陽極側バイポーラプレート層146に隣接する端縁補強配置118に流体密に密閉するように接する。
【0158】
さらに、陰極流体用の導出通路160を密閉するためにバイポーラプレート108の陰極側に陰極側の通路シール部材182が設けられており、それはシールライン184(図2を参照)に沿って陰極流体用の貫流開口部158をまわって延びている。
【0159】
陰極側の通路シール部材182は、好ましくは材料結合で、陰極側のバイポーラプレート層134に固定されており、かつ、陰極側のバイポーラプレート層134に隣接する端縁補強配置118に流体密に密閉するように接する。
【0160】
電気化学装置100の駆動において冷却剤によって充填される、それぞれのバイポーラプレート108の内部空間186に対して密閉するために、陽極側のバイポーラプレート層146と陰極側のバイポーラプレート層134は、陰極流体用の貫流開口部158を回って延びる接合ライン188と、陰極流体用の通過開口部174を回って延びる(図1図2を参照)接合ライン190に沿って、互いに流体密に接合されている。
【0161】
これらの接合ライン188と190は、図1から図5に示す実施形態において、好ましくは溶接ラインとして、特に抵抗溶接ラインとして又はレーザー溶接ラインとして形成されている。
【0162】
バイポーラプレート108の陽極側を、陰極側の通路シール部材182と陰極側の流れフィールドシール部材142が互いに隣接して延びる領域に対向する箇所において支持するために、バイポーラプレート108の陽極側に1つ又は複数の支持部材192が配置されている。
【0163】
支持部材192は、たとえばそれぞれ、陽極側のバイポーラプレート層146内に形成された隆起部として形成することができる。
【0164】
それに対して代替的に、少なくとも1つのこの種の支持部材192を、バイポーラプレート108とは別に形成された、電気化学装置100を組み立てる場合にバイポーラプレート108と陰極側に隣接する端縁補強配置118との間に配置される部材として形成することも、可能である。
【0165】
支持部材192の間又は支持部材192の内部に、支持部材192からなる配置を通して陰極流体を通過させるための貫流通路が設けられている。
【0166】
同様に図3から明らかなように、バイポーラプレート108はさらにその陰極側の、陽極側の通路シール部材178と陽極側の流れフィールドシール部材150が互いに隣接して延びる領域に対向する箇所に、同様に支持部材194を有しており、その支持部材によってバイポーラプレート108が陰極側のガス拡散層112に、そして、陰極側のガス拡散層112が接する端縁補強配置118に、支持される。
【0167】
これらの支持部材194は、陰極側のバイポーラプレート層134に隆起部として形成することができ、又は、バイポーラプレート108とは別に形成されて、電気化学装置100を組み立てる場合にバイポーラプレート108と陰極側のガス拡散層112との間に配置される部材として形成することができる。
【0168】
図4から明らかなように、電気化学装置100は、陽極流体用の供給通路164から陽極流体を電気化学ユニット106の陽極側の流体室128へ供給する領域内で、図3に示す、陰極側の流体室130から陰極流体を陰極流体用の導出通路160内へ導出する領域におけるのと同様に構成されているが、その場合に陽極流体の供給が電気化学装置100の平面内で行われ、その平面は、陰極流体の導出が行われる平面に対してスタック方向104に変位されている。
【0169】
さらに、陽極流体の供給の領域内で、陽極側の流れフィールドシール部材150を有する陽極側の端縁ウェブ148は、陰極側の流れフィールドシール部材142を有する陰極側の端縁ウェブ132に対して、スタック方向104に対して垂直かつ変位方向170とは逆に向けられた変位方向196において、したがって陽極側の流れフィールド126の中心から離れてバイポーラプレート108の外側の端縁へ向かうように、変位されている。
【0170】
陽極側の端縁ウェブ148と陰極側の端縁ウェブ132の間の中間領域172内で、この領域内に、バイポーラプレート108を貫通する、陽極流体用の通過開口部198が設けられている。
【0171】
陽極流体は、電気化学装置100の駆動において、陽極流体用の供給通路164から陽極側の端縁ウェブ148の下を通過し、かつ陽極流体用の通過開口部198を通って上方へ向かってそれぞれの陽極流体室128内へ流入する。
【0172】
陽極流体用の供給通路164を通り、かつ陽極流体用の通過開口部198を通って陽極の流体室128内へ流れる陽極流体の流れ方向が、図4に矢印200で示されている。
【0173】
バイポーラプレート108の陰極側に、陰極側の通路シール部材202が配置されており、その通路シール部材は、シールライン204に沿って陽極流体用の貫流開口部162を回り、かつ陽極流体用の通過開口部198を回って延びており、かつ隣接する端縁補強配置118に流体密に密閉するように接する。
【0174】
バイポーラプレート108の陽極側に、陽極側の通路シール部材206が配置されており、その通路シール部材は陽極流体用の貫流開口部162を回って延びており、かつ、隣接する端縁補強配置118に流体密に密閉するように接する。
【0175】
陽極側のバイポーラプレート層146と陰極側のバイポーラプレート層134は、陽極流体用の貫流開口部162を回って延びる接合ライン210により、かつ陽極流体用の通過開口部198を回って延びる接合ライン212によって、互いに接合されている。
【0176】
各バイポーラプレート108は、その陰極側において、陽極側の通路シール部材206が陽極側の流れフィールドシール部材150に隣接して延びる領域に対向する箇所に、1つ又は複数の支持部材214を有している。
【0177】
さらに、各バイポーラプレート108はその陽極側において、陰極側の通路シール部材202が陰極側の流れフィールドシール部材142に隣接して延びる領域に対向する箇所に、1つ又は複数の支持部材216を有している。
【0178】
図5から明らかなように、電気化学装置100は、バイポーラプレート108の内部空間186へ冷却剤を供給する領域内で、図3に示す、電気化学ユニット106の陰極側の流体室130から陰極流体を導出する領域におけるのと同様に形成されている。
【0179】
特に、図1から図6に示す電気化学装置100の実施形態において、バイポーラプレート108の内部空間186内への冷却剤の供給は、陰極側の流体室130からの陰極流体の導出と同一の平面内で行われる。
【0180】
さらに、内部空間186内へ冷却剤を供給する領域内で、陽極側の流れフィールドシール部材150を有する陽極側の端縁ウェブ148は、陰極側の流れフィールドシール部材142を有する陰極側の端縁ウェブ132に対して変位方向170に、すなわちバイポーラプレート108の外側の端縁から離れて陽極側の流れフィールド126の中心へ向かって、変位されている。
【0181】
中間領域172内では、各バイポーラプレート108において、陽極側のバイポーラプレート層146に冷却剤用の通過開口部218が設けられており、それを通して冷却剤が冷却剤用の供給通路168からバイポーラプレート108の内部空間186内へ達することができる。
【0182】
したがってこの通過開口部218は、多層のバイポーラプレート108全体を通って延びていない。
【0183】
電気化学装置100の駆動において、冷却剤用の供給通路168から冷却剤が陰極側の端縁ウェブ132を越えて、かつ冷却剤用の通過開口部218を通ってバイポーラプレート108の内部空間186内へ流入する。
【0184】
冷却剤の流れ方向が、図5に矢印220で示されている。
【0185】
陽極側の通路シール部材222はシールライン224に沿って冷却剤用の貫流開口部166を回り、かつ冷却剤用の通過開口部218を回って延びており、かつ隣接する端縁補強配置118に流体密に密閉するように接する。
【0186】
バイポーラプレート108の陰極側において、陰極側の通路シール部材226がシールライン228に沿って冷却剤用の貫流開口部166を回って延びており、かつ隣接する端縁補強配置118に流体密に密閉するように接する。
【0187】
陽極側のバイポーラプレート層146と陰極側のバイポーラプレート層134は、冷却剤用の貫流開口部166を回ってのびる接合ライン230に沿って流体密に互いに接合されている。
【0188】
バイポーラプレート108の陽極側において、陰極側の通路シール部材226が陰極側の流れフィールドシール部材142に隣接して延びる領域に対向する箇所に、1つ又は複数の支持部材232が配置されている。
【0189】
バイポーラプレート108の外側の端縁234の近傍で、各バイポーラプレート108の陽極側のバイポーラプレート層146と陰極側のバイポーラプレート層134が、接合ライン236に沿って互いに流体密に接合されている。
【0190】
接合ライン236は、好ましくは溶接により、特に抵抗溶接又はレーザー溶接によって形成されている。
【0191】
原則的に、バイポーラプレート108の内部空間186内への冷却剤の供給を、電気化学装置100の、陽極側の流体室128内への陽極流体の供給と同一の平面内で行うこともできる。
【0192】
さらに、電気化学装置100へ供給すべき媒体(陰極流体、陽極流体及び冷却剤)の各々に関して、該当する流動媒体を供給する領域と導出する領域は交換することができるので、これらの電気化学装置100を通る媒体の矢印176、200および220によって示される流れ方向は、反転する。
【0193】
その場合に、これらの流動媒体のうちの1つの各流れ方向は、他の媒体の任意の流れ方向と組み合わせることができる。
【0194】
陽極側の通路シール部材178、206及び222は、図3から図5において、それぞれ隣接する陽極側の流れフィールドシール部材150から分離して示されている。しかしそれに対して代替的に、陽極側の通路シール部材178、206及び/又は222は、それぞれ陽極側の流れフィールドシール部材150の隣接部分と一体的に形成することもできる。
【0195】
さらに、図3から図5においては、陰極側の通路シール部材182、202及び226もそれぞれ隣接する陰極側の流れフィールドシール部材142から分離して示されている。しかし原則的に、陰極側の通路シール部材182、202及び/又は226を、それぞれ陰極側の流れフィールドシール部材142の隣接部分と一体的に形成することも可能である。
【0196】
さらに、図1図2においては、陽極側の通路シール部材178、206及び222は、互いに分離して示されている。しかし原則的に、陽極側の通路シール部材178、202及び222の2つ又はそれより多くを互いに一体的に形成することも、可能である。
【0197】
さらに、図2においては、陰極側の通路シール部材182、202及び226は、互いに分離して示されている。しかし原則的に、陰極側の通路シール部材182、202及び226の2つ又はそれより多くを互いに一体的に形成することも、可能である。
【0198】
シール部材142、150、178、182、202、206、222及び226は、好ましくはバイポーラプレート108に次のように、すなわちそれらが陽極側のバイポーラプレート層146と陰極側のバイポーラプレート層134が互いに接合される接合ライン188、190,210、212、230および236と重ならないように、形成されている。特に、好ましくは、シール部材は接合ラインと−スタック方向104に見て−交差せず、かつ接合ラインの上方又は下方においてスタック方向104にそれらに対して平行にも延びない。
【0199】
それによって、上述した、好ましくはエラストマーのシール部材がバイポーラプレート層146もしくは134に形成された後に、陽極側のバイポーラプレート層146と陰極側のバイポーラプレート層134を互いに接合することが、可能である。
【0200】
図13から図16は、どのようにしてバイポーラプレート108を形成する場合にガス拡散層112、114をそれぞれの流れフィールドシール部材142、150と共にそれぞれ対応づけられた端縁ウェブ132、148に結合することができるかという、種々の可能性を示している。
【0201】
図13は、どのようにして流れフィールドシール部材、たとえば陽極側の流れフィールドシール部材150が射出成形プロセスによって形成されて、同時にそれぞれ対応づけられたバイポーラプレート層と、たとえば陽極側のバイポーラプレート層146と、かつそれぞれ対応づけられたガス拡散層と、たとえば陽極側のガス拡散層114と、材料結合で結合することができるか、を示している。
【0202】
バイポーラプレート層146は、好ましくは変形プロセスによって、特に刻印プロセス又は深絞りプロセスによって金属の原材料から、特に金属の薄板材料から形成され、その場合に端縁ウェブ148が生じる。
【0203】
ガス拡散層114はバイポーラプレート層146上に次のように、すなわちそのガス拡散層が端縁ウェブ148の頂上領域140を実質的に完全に覆って、さらに端縁ウェブ148の流れフィールド126とは逆の側に延びるように、載置される。
【0204】
第1の射出成形工具238は、型取りエッジ240と242をもってバイポーラプレート層146上もしくはガス拡散層114上へ、好ましくはエラストマーの、射出成形材料によって充填すべきキャビティ244が形成されるように、載置される。
【0205】
第2の射出成形工具246は、バイポーラプレート層146のキャビティ244とは逆の側においてバイポーラプレート層に接し、それによって第1の射出成形工具238の型取りエッジ240と242の領域内でバイポーラプレート層146とガス拡散層114をプレスするためのカウンターホルダとして用いられる。
【0206】
次に、流れフィールドシール部材150を形成する、硬化すべきエラストマー材料でキャビティ244を充填する場合に、エラストマー材料が多孔のガス拡散層114のキャビティ244へ向いた端縁領域248内へも侵入するので、ガス拡散層114が流れフィールドシール部材150と緊密かつ材料結合で結合される。
【0207】
エラストマー材料が硬化し、かつ射出成形工具238と246を除去した後に、流れフィールドシール部材150、バイポーラプレート層146及びガス拡散層114からなる配置が、図16に示す形態を有し、その場合に流れフィールドシール部材150は、バイポーラプレート層146とも、特に端縁ウェブ148の外側の側面138とも、材料結合で結合されている。
【0208】
流れフィールドシール部材150は、1つ又は複数のシールリップ250を有することができ、そのシールリップによって流れフィールドシール部材150は、電気化学装置100が組み立てられた状態においてそれぞれ隣接する端縁補強配置118に流体密に密閉するように接する。
【0209】
流れフィールドシール部材150をバイポーラプレート層146とガス拡散層114に取り付ける代替的な取り付けが、図14に示されている。
【0210】
この代替的な実施形態において、ガス拡散層114は、端縁ウェブ148の頂上領域140全体を越えて、端縁ウェブ148の流れフィールド126とは逆の側まで延びてはいない;むしろ頂上領域140に接するガス拡散層114は、端縁ウェブ148の頂上領域140の内部で終了している。
【0211】
この実施形態において、流れフィールドシール部材150は、端縁ウェブ148の頂上領域140のガス拡散層114によって覆われない部分にわたり、かつガス拡散層114の端縁領域248にわたって延びており、かつ、好ましくはガス拡散層114の端縁領域248内へも侵入して、それによって流れフィールドシール部材150とガス拡散層114との間に特に緊密な材料による結合が形成される。
【0212】
この実施形態において、好ましくは、流れフィールドシール部材150は、端縁ウェブ148の外側の側面138までは延びていない。
【0213】
この実施形態においても、流れフィールドシール部材150は、1つ又は複数のシールリップ250を有することができる。
【0214】
図14に示す流れフィールドシール部材150も、たとえば射出成形方法によってバイポーラプレート層146とガス拡散層114に形成することができる。
【0215】
図15に示す、流れフィールドシール部材150をバイポーラプレート層146とガス拡散層114に結合するための代替的な可能性は、流れフィールドシール部材150が実質的にプロフィールなしであって、かつ特にシールリップ250を形成されていないことによって、図14に示す実施形態から区別される。
【0216】
この種の流れフィールドシール部材150は、たとえばパターン印刷方法、特にスクリーン印刷方法によって、あるいはアプリケータから硬化すべきエラストマー材料からなるビードをバイポーラプレート層146の端縁ウェブ148上と、ガス拡散層114の端縁領域248上に塗布することによって(いわゆるCIP(cued in place)方法)形成することができる。
【0217】
図1から図5に示す、電気化学装置100の実施形態において、陽極側の流れフィールドシール部材150と陰極側の流れシール部材142は、それぞれ隣接する端縁補強配置118に流体密に密閉するように接する。
【0218】
図6から図12に示す、この種の電気化学装置100の代替的な実施形態は、図1から図5に示す第1の実施形態とは、陽極側の流れフィールドシール部材150が、スタック方向104においてその上に位置するバイポーラプレート108の陰極側の流れフィールドシール部材142に、それぞれ流体密に密閉するように接していることによって、異なっている(図8から12を参照)。
【0219】
これを可能にするために、同一の膜−電極配置110の互いに逆となる側にそれぞれ配置されている、スタック方向104に互いに連続する2つのバイポーラプレート108aと108bの互いに向き合う端縁ウェブ132、148は、−スタック方向104に見て−完全に等しく配置されており、一方で、同じバイポーラプレート108aもしくは108bの端縁ウェブ132と148は、図1から図5に示す第1の実施形態におけるのと同様に、さらに部分的に、スタック方向104に対して垂直に方向付けされた変位方向170又は196に互いに変位して配置されている。
【0220】
好ましくは、これは、スタック方向に互いに直接連続するバイポーラプレート108aと108bは互いに同一に形成されているが、電子化学装置100を組み立てる場合にそれぞれスタック方向104に対して平行な回転軸を中心に180°の角度だけ回動されて、スタック内に組み込まれることによって、得られる。
【0221】
図8から図11から明らかなように、それによって、電気化学ユニット106のそれぞれの流体室128、130へ流体を供給する領域内で、端縁ウェブ132、148は、電気化学装置100の第1の平面内では、それぞれ対応づけられた流れフィールド124、126の中心点へ向かって、かつスタック方向104に隣接する、電気化学装置100の第2の平面内では、それぞれ対応づけられた流れフィールド124、126の中心点から外側へ離れるように、変位されている。
【0222】
その場合にそれぞれ、端縁ウェブ132、148が流れフィールド124、126の中心へ向かって変位されている平面内では、流体供給はそれぞれの流体通路からバイポーラプレート108a、108b内の該当する流体用の、それぞれ対応づけられた通過開口部174、198まで行われ、その場合に該当する流体は端縁ウェブ132、148を越えてそれぞれ隣接する平面内で案内される。
【0223】
その後、それぞれの通過開口部174、198において、バイポーラプレート108a、108bを通る流体は、電気化学装置100のスタック方向104に隣接する平面内のそれぞれ対応づけられた流体室128、130内へ変化する。
【0224】
これについて、図8から図11の断面表示を参照しながら以下の例において詳細に説明する。
【0225】
図8からは、どのようにして電気化学装置100の(上から数えて)第1の平面と第3の平面内で陰極流体用の供給通路252から陰極流体がバイポーラプレート108a内の陰極流体用の通過開口部174へ達し、そしてこの通過開口部を通って膜−電極配置110aの第1のセットの陰極側の陰極側流体室130内へ達するかが、明らかにされる。
【0226】
図9からは、どのようにして、電気化学装置100の第2の平面と第4の平面内で陰極流体用の供給通路252から陰極流体がバイポーラプレート108b内の陰極流体用の通過開口部174へ達するか、が明らかにされ、そのバイポーラプレート108bはバイポーラプレート108aに対して、スタック方向104に対して平行の回転軸を中心に180°の角度だけ回動して配置されている。このバイポーラプレート108bの陰極流体用の通過開口部174から陰極流体は、膜−電極配置110bの第2のセットの陰極側の陰極流体室130内へ達する。
【0227】
図6から明らかなように、図8図9の切断平面の間の陰極側の端縁ウェブ132は、外側へ変位した位置(図8内)から内側へ変位した位置(図9内)へ変化する。同様にバイポーラプレート108のこの領域内で、陽極側の端縁ウェブ148が内側へ変位した位置から外側へ変位した位置に変化する。
【0228】
図10から明らかなように、電気化学装置100の第2の平面内と第4の平面内の陽極流体用の導出通路254へ、バイポーラプレート108a内の陽極流体用の通過開口部198から陽極流体が供給される。
【0229】
陽極流体用のこの通過開口部198は、膜−電極配置110bの第2のセットの陽極側の陽極側流体室128と流体接続されている。
【0230】
図11から明らかなように、電気化学装置100の第1の平面と第3の平面内の陽極流体用の導出通路254に、バイポーラプレート108b内の陽極流体用の通過開口部198から陽極流体が供給される。
【0231】
陽極流体用のこの通過開口部198は、膜−電極配置110aの第1のセットの陽極側の陽極側流体室128と流体接続されている。
【0232】
図6から明らかなように、バイポーラプレート108の陰極側の端縁ウェブ132は、図10図11の切断平面の間でその内側の位置(図10内)からその外側の位置(図11内)へ変化する。
【0233】
同様にこの領域内で、陽極側の端縁ウェブ148はその外側の位置(図10内)からその内側の位置(図11内)へ変化する。
【0234】
図12から明らかなように、この実施形態において冷却剤は、平面交換を行うことなしに、冷却剤用の供給通路168からそれぞれ同一のバイポーラプレート108の陰極側のバイポーラプレート層134と陽極側のバイポーラプレート層146の間の間隙256を通って、直接それぞれのバイポーラプレート108の内部空間186内へ達する。
【0235】
間隙256の各々の中に、1つ又は複数の支持部材258を設けることができ、それらは、冷却剤の貫流を可能にするために、陰極側のバイポーラプレート層134と陽極側のバイポーラプレート層146を互いに離隔して保持する。
【0236】
支持部材258は、好ましくは、流れフィールドシール部材142、150と通路シール部材222、226が−スタック方向104に見て−冷却剤の流れパスと交差する領域内に配置されている。
【0237】
その他において、図6から図12に示す、電気化学装置100の第2の実施形態は、構造、機能及び形成方法に関して、図1から図5に示す第1の実施形態と一致し、その限りにおいて上述したその説明が参照される。
【0238】
図17から図19に示す、電気化学装置の第3の実施形態は、図6から図12に示す第2の実施形態から、陰極側のバイポーラプレート層134及びそれぞれ対応づけられた陽極側のバイポーラプレート層146が、電気化学装置の駆動において冷却剤によって充填される内部空間186を周囲に対して密閉するために、接合ライン188、190、210、212、230及び236に沿って接合によって互いに接合されていないことによって、区別される;むしろ、この実施形態においては、バイポーラプレート108の内部空間186の密閉はシール配置によってもたらされ、そのシール配置がシール部材を有し、そのシール部材はそれぞれ陰極側のバイポーラプレート層134又は陽極側のバイポーラプレート層146の内部空間186へ向いた内側に配置されている。
【0239】
たとえば、図17に示す陰極側のバイポーラプレート層134の内側に、通路シール部材260を設けることができ、その通路シール部材は、陽極流体用の供給通路252を回り、陽極流体用の導出通路254を回り、陰極流体用の導出通路160を回り、もしくは陽極流体用の供給通路164を回って延びている。
【0240】
さらに、陰極側のバイポーラプレート層134の内側に、通過開口部シール部材262を設けることができ、それは、陽極流体用の通過開口部198のそれぞれ1つを回って延びている。
【0241】
図18に示す陽極側のバイポーラプレート層146の内側に、通過開口部シール部材264を設けることができ、それは、陰極流体用の通過開口部174のそれぞれ1つを回って延びている。
【0242】
通過開口部シール部材262と264は、好ましくは該当する通過開口部198もしくは174がガス拡散層112又は114によって覆われない、バイポーラプレート層134もしくは146に固定されている。
【0243】
陰極側のバイポーラプレート層134の内側は、さらに、その外側の端縁276に沿って一周する端縁シール部材274を有することができる。
【0244】
これらのシール部材を収容するための充分な容積を提供するために、これらのシール部材の各々のために、それぞれ対向するバイポーラプレート層134又は146の内側にそれぞれ対応する凹部を設けることができ、電気化学装置100が組み立てられた状態においてその凹部内へ該当するシール部材が嵌入し、かつその凹部内で該当するシール部材がそれぞれ対向するバイポーラプレート層134又は146に流体密に密閉するように接する。
【0245】
すなわち特に、図17に示す陰極側のバイポーラプレート層134は、陽極側のバイポーラプレート層146に設けられた通過開口部シール部材264を収容するための凹部266を有することができる。
【0246】
さらに、陽極側のバイポーラプレート層146は、その内側に、陰極側のバイポーラプレート層134に設けられた通過開口部シール部材262を収容するための凹部268、陰極側のバイポーラプレート層134に設けられた通路シール部材260を収容するための凹部270、及び、陰極側のバイポーラプレート層134に設けられた端縁シール部材274を収容するための凹部272を有することができる。
【0247】
バイポーラプレート108の内部空間186を密閉するためのシール部材の固定は、シール部材を支持するバイポーラプレート層134又は146に設けられた凹部266’、268’、270’又は272’内で行うことができる。
【0248】
陰極側のバイポーラプレート層134及び陽極側のバイポーラプレート層146の内側に設けられた、上述したシール部材は、電気化学装置を組み立てる場合に電気化学装置100の(図示されない)クランプ装置によって、シール部材における充分な密閉力が保証されるように、互いに対して締めつけられる。クランプ装置によって発生されるこの締めつけ力が、図19に矢印Fで図式的に示されている。シール部材をバイポーラプレート層134、146内へ押圧するための締めつけ力を導入することができるようにするために、スタック方向104に互いに連続するバイポーラプレート108の間に付加的な支持部材280が設けられている。
【0249】
さらに、注意すべきことであるが、図19においてそれぞれ互いに対応づけられた陰極側と陽極側のバイポーラプレート層134もしくは146は、スタック方向104に互いに離隔して示されており、それによって、この実施形態においてシール部材のどれがどのバイポーラプレート層134もしくは146に配置されているかが、明らかにされる。
【0250】
しかし原則的に、バイポーラプレート108の内部空間186を密閉するためのシール部材は、任意に陰極側のバイポーラプレート層134に、あるいは陽極側のバイポーラプレート層146に固定することができる。
【0251】
その他において、図17から図19に示す、電気化学装置100の第3の実施形態は、構造、機能及び形成方法に関して、図6から図12に示す第2の実施形態と一致し、その限りにおいてその上述した説明が参照される。
【0252】
図20に示す、電気化学装置100の第4の実施形態は、図6から図12に示す第2の実施形態から、それぞれ互いに対応づけられた陰極側のバイポーラプレート層134と陽極側のバイポーラプレート層146が接合ライン188、190、210、212、230及び/又は236に沿って溶接によってではなく、接着によって互いに接合され、特に材料結合で結合されていることにより、区別される。
【0253】
その場合に好ましくは、バイポーラプレート層134と146は、ガス拡散層112もしくは114の配置後、かつバイポーラプレート層134もしくは146に流れフィールドシール部材142もしくは145が形成された後に、互いに接着される。
【0254】
図6から図12に示す第2の実施形態とは異なり、好ましくは、バイポーラプレート層134と146に形成された流れフィールドシール部材142、150及び/又はバイポーラプレート層134と146に形成された通路シール部材178、182は、バイポーラプレート層134と146が接着によって互いに接合される接合ライン188、190、210、212、230及び/又は236によって重なり、それが、バイポーラプレート108及びそれに伴って電気化学装置100全体の、上述したシール部材の領域におけるよりコンパクトな構造を可能にする。
【0255】
その他において、図20に示す、電気化学装置100の第4の実施形態は、構造、機能及び形成方法に関して、図6から図12に示す第2の実施形態と一致し、その限りにおいてその上述した説明が参照される。
【0256】
図21図22は、従来技術に基づくシール構造(図21)と、図6から図12及び図17から図20に示すような、電気化学装置100の第2から第4の実施形態におけるシール構造(図22)のためのスペース需要の比較を示している。
【0257】
図21に示す、従来技術に基づくシール構造は、膜−電極配置110の外側の端縁領域116を包囲する2つの端縁補強層278からなる端縁補強配置118を有する、膜−電極配置110、陰極側のガス拡散層112、陽極側のガス拡散層114、陰極側の流れフィールドシール部材142’及び陽極側の流れフィールドシール部材150’を有しており、その場合にシール部材142’と150’は、選択的に端縁補強配置118に、あるいは隣接する(図示されない)バイポーラプレート108に、固定することができる。
【0258】
その場合に膜−電極配置110と端縁補強配置118の間の重なり領域は、約2mmから約5mmの幅b1を持たなければならない。シール部材142'及び150’と膜−電極配置110との間には、約3mmから約6mmの間隔b2が維持されなければならない。流れフィールドシール部材142’と150’の幅b3は、それぞれ約4mmから約7mmである。流れフィールドシール部材142’、150’と端縁補強配置の外側の端縁との間には、約1mmから約3mmの間隔b4が維持されなければならない。
【0259】
したがってシール構造の全体幅B(b1+b2+b3+b4に等しい)は、約10mmから約20mmである。
【0260】
図22に示す本発明に係るシール構造は、この実施形態において端縁補強配置118を持たない、膜−電極配置110、陰極側のガス拡散層112、陽極側のガス拡散層114、陰極側の端縁ウェブ132を有する陰極側のバイポーラプレート層134、陽極側の端縁ウェブ148を有する陽極側のバイポーラプレート層146、陰極側の流れフィールドシール部材142及び陽極側の流れフィールドシール部材150を有しており、その場合にこの実施形態において、2つの流れフィールドシール部材142と150は互いに流体密に密閉するように直接接している。
【0261】
このシール構造において、流れフィールドシール部材142と150(それぞれ対応づけられたガス拡散層112もしくは114内へ侵入するエラストマー材料を含めて)の幅d1は、約4mmから約7mmである。流れフィールドシール部材142及び150と、バイポーラプレート層134及び146の外側の端縁276との間には、約1mmから約3mmの間隔d2が維持されなければならない。
【0262】
したがって図22に示すシール構造の全体幅D(d1+d2に等しい)は、約5mmから約10mmであり、したがって図21に示す従来技術に基づくシール構造の幅Bの約半分の大きさしかない。
【0263】
したがって図22に示すシール構造を有する電気化学装置は、図21に示すシール構造を有する電気化学装置100よりもずっと場所をとらずに形成することができる。
【0264】
図23に示すシール構造は、図22に示すシール構造から次のことによって、すなわち第1のバイポーラプレート108の端縁ウェブと、たとえば陰極側の端縁ウェブ132と接触し、かつ第1のガス拡散層、たとえば陰極側のガス拡散層112と接触する、流れフィールドシール部材、たとえば陰極側の流れフィールドシール部材142が、第1のバイポーラプレート108に対向する第2のバイポーラプレート108’まで延びていることによって、区別される。
【0265】
このシール構造においては、第2の流れフィールドシール部材、たとえば陽極側の流れフィールドシール部材150は、省くことができる。
【0266】
流れフィールドシール部材142は、好ましくはエラストマー材料から形成されており、それが特に対応づけられたガス拡散層112内へ侵入するので、流れフィールドシール部材142はガス拡散層112と材料結合で結合されている。
【0267】
さらに、流れフィールドシール部材142は、好ましくは端縁ウェブ132と材料結合で結合されている。
【0268】
第1のバイポーラプレート108が多層で形成されている場合に、流れフィールドシール部材142は、好ましくは第1のバイポーラプレート108の陰極側のバイポーラプレート層134に固定されている。
【0269】
流れフィールドシール部材142は、好ましくはシールリップ282によって第2のバイポーラプレート108’に、特に第2のバイポーラプレート108’の陽極側のバイポーラプレート層146に密閉するように接し、そして好ましくは第2のシールリップ284によって膜−電極配置110に、特に膜−電極配置110の陰極側に、密閉するように接する。
【0270】
それによって流れフィールドシール部材142は、第1のバイポーラプレート108の流れフィールド、好ましくは陰極側の流れフィールド124も、第2のバイポーラプレート108’の流れフィールド、好ましくは陽極側の流れフィールド126も、流体密に密閉する。
【0271】
流れフィールドシール部材142が膜−電極配置110に密閉して接することを可能にするために、この実施形態においては、流れフィールドシール部材142が固定されている、ガス拡散層112の外側の端縁286が、膜−電極配置110の外側の端縁288に対して、スタック方向104に対して垂直の方向に内側へ変位されている。
【0272】
この実施形態において、流れフィールドシール部材142は、第2のバイポーラプレート108’の端縁ウェブ148から、特に陽極側の端縁ウェブ148から、離隔させることができる。
【0273】
図24に示す代替的なシール構造は、図22に示すシール構造から、流れフィールドシール部材、特に陽極側の流れフィールドシール部材150’が、隣接するバイポーラプレート108’に固定されておらず、単に、好ましくは材料結合によって、対応づけられたガス拡散層と、特に陽極側のガス拡散層114と結合されていることによって、区別される。
【0274】
この実施形態において、流れフィールドシール部材150’は、1つ又は複数のシールリップ290によって、第2のバイポーラプレート108’に密閉するように接している。
【0275】
バイポーラプレート108'が多層で形成されている場合に、流れフィールドシール部材150’は、好ましくはバイポーラプレート108’の陽極側のバイポーラプレート層146に接する。
【0276】
さらに、この実施形態において、流れフィールドシール部材150’は、流れフィールドシール部材142に直接流体密に密閉するように接する。
【0277】
流れフィールドシール部材150'は、この実施形態において、バイポーラプレート108’の端縁ウェブと、特に陽極側の端縁ウェブ148と接触する必要はない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図24