(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
走行体、前記走行体の上部に旋回自在に設けられた旋回体、前記旋回体の前部に上下に回動自在に連結されたブーム、前記ブームの先端に前後に回動自在に連結された伸縮アーム、前記伸縮アームの先端に取り付けられたクラムシェルバケット、前記ブーム及び前記伸縮アームに両端が連結されたアームシリンダ、前記クラムシェルバケットを開閉させるバケット開閉シリンダ、圧油を吐出する少なくとも1つの油圧ポンプ、パイロットポンプ、前記バケット開閉シリンダへの圧油の流れを制御するバケット開閉用のコントロール弁、前記パイロットポンプの吐出油の圧力を元圧として前記コントロール弁のバケット閉じ動作側の受圧部にパイロット圧を出力するパイロット弁を有するバケット開閉用操作装置、前記アームシリンダのボトム側の油室のリリーフ圧を第1設定圧力から第2設定圧力に低下させる可変リリーフ弁、及び前記伸縮アームが設定長さ以上に伸長したことを検出する伸長センサを備えた作業機械において、
前記伸長センサにより検出された信号及び前記バケット開閉用操作装置から出力された前記パイロット圧に基づき、前記伸縮アームが前記設定長さ以上に伸長して前記クラムシェルバケットが閉じ操作された場合に、前記可変リリーフ弁による前記アームシリンダのボトム側の油室のリリーフ圧を前記第1設定圧力からそれより低い前記第2設定圧力に切り換えるように構成したことを特徴とする伸縮アームを備えた作業機械。
請求項1に記載の伸縮アームを備えた作業機械において、前記第2設定圧力は、前記伸縮アームが前記設定長さ以上に伸長し鉛直に対して設定角度で傾斜した状態でアームシリンダのボトム側の油室に前記伸縮アーム及び前記クラムシェルバケットの自重により作用する圧力よりも低く設定してあることを特徴とする伸縮アームを備えた作業機械。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
<第1実施形態>
−作業機械
図1は本発明に係る作業機械の全体構成を表す側面図である。これ以降、
図1中の左右を前後とする。同図に示した作業機械は油圧ショベルの本体をベースにしており、車体10及び作業機(フロント作業機)20を備えている。車体10は、走行体11及び旋回体12を備えている。
【0013】
走行体11は、本実施形態では無限軌道履帯を有する左右のクローラ13を備えており、左右の走行駆動装置14により左右のクローラ13をそれぞれ駆動することで走行する。走行駆動装置14には例えば油圧モータと減速機が用いられる。
【0014】
旋回体12は、走行体11上に旋回装置(不図示)を介して旋回可能に設けられている。旋回体12の前部(本実施形態では前部左側)には、操作者が搭乗する運転室15が設けられている。
図1では堅穴Hの中が俯瞰し易いように前方に移動可能な可動式運転室を運転室15として例示しているが、運転室15は固定式の運転室であっても良い。旋回体12における運転室15の最後部には作業機20との重量バランスをとるカウンタウェイト16が備えられている。旋回体12における運転室15の後側(運転室15とるカウンタウェイト16との間)には原動機Eを含む油圧システム(
図4)等を収容した動力室17が備えられている。原動機Eはエンジン(内燃機関)又は電動機である。作業機械に搭載された油圧シリンダや油圧モータ等の油圧アクチュエータは油圧システムに含まれる油圧ポンプ(
図4の油圧ポンプ31,32等)から吐出される圧油によって駆動される。旋回体12と走行体11との間に介在する旋回装置には旋回モータが含まれており、旋回モータによって走行体11に対して旋回体12が鉛直軸周りに旋回駆動される。本実施形態における旋回モータは油圧モータであるが、電動モータを用いることもあれば、油圧モータ及び電動モータの双方を用いることもある。
【0015】
作業機20は、ブーム21、伸縮アーム22、クラムシェル(クラムシェルバケット)23、ブームシリンダ24及びアームシリンダ25等を含む多関節型のフロント作業装置である。本実施形態では一般にアームに対してバケットを回動させるバケットシリンダに相当するシリンダは備わっていない。ブーム21は旋回体12における前部(本実施形態では前部右側)に左右に延びる軸を介して上下に回動可能に連結されている。伸縮アーム22はブーム21の先端に左右に延びる軸を介して前後に回動可能に連結されている(伸縮アーム22の構成については後述する)。ブームシリンダ24は旋回体12及びブーム21に、アームシリンダ25はブーム21及び伸縮アーム22に、それぞれ両端が連結されている。ブームシリンダ24及びアームシリンダ25はいずれも油圧シリンダである。ブームシリンダ24の伸縮に伴って旋回体12に対してブーム21が上下に回動する。アームシリンダ25の伸縮に伴ってブーム21に対して伸縮アーム22が前後に回動する。
【0016】
伸縮アーム22の先端(下端)には、吊り具28を介してクラムシェル23が取り付けられている。このクラムシェル23はバケット開閉シリンダ26及び一対のバケット27等で構成されている。一対のバケット27は互いの積荷の収容部を向い合せて対向している。本実施形態ではバケット開閉シリンダ26に両ロッド式の油圧シリンダを採用している。バケット開閉シリンダ26のシリンダロッドの一端(上端)は吊り具28に、他端(下端)は一対のバケット27の開閉中心にそれぞれ回動自在に連結されている。バケット開閉シリンダ26のシリンダチューブは一対のバケット27とそれぞれリンク29によって連結されている。バケット開閉シリンダ26が収縮するとバケット27が閉じ(互いに近付く方向に回動し)、バケット開閉シリンダ26が伸長するとバケット27が開く(互いに離れる方向に回動する)構成である。
【0017】
−伸縮アーム−
図2は
図1に示した作業機械に備えられた伸縮アームのII部の断面図であり、前後に延びる鉛直面(ブーム21の動作平面)で切断した断面を表している。
図3は
図2中のIII−III線による矢視断面図である。
図1と合わせてこれら
図2及び
図3を参照して分かるように、伸縮アーム22は多段式の箱型構造(テレスコピック構造)で複数の筒状部材22a〜22cを含んで構成されており、自己の軸方向(長手方向)に伸縮可能である。具体的には、基端側の筒状部材22aに中央の筒状部材22bが、筒状部材22bに先端側の筒状部材22cが、それぞれ出入り可能に収納されている。基端側の筒状部材22aがブーム21及びブームシリンダ24と連結され、筒状部材22cが吊り具28を介してクラムシェル23と連結されている。筒状部材22a〜22cの内部には伸縮アーム22を伸縮させる少なくとも1つのアーム伸縮シリンダ(不図示)が設置されている。アーム伸縮シリンダには例えば片ロッド式の油圧シリンダを用いることができる。アーム伸縮シリンダには滑車(不図示)が取り付けられ、滑車に掛けられたワイヤ(不図示)によってアーム伸縮シリンダと筒状部材22a〜22cが適宜連結されている。アーム伸縮シリンダの伸縮と動滑車機構との協働により伸縮アーム22が大きく伸縮する構成である。
【0018】
伸縮アーム22には、この伸縮アーム22が設定長さLs以上に伸長したことを検出する伸長センサSが備えられている。本実施形態の伸長センサSはリミットスイッチである。最も基部側の筒状部材22aの下端付近に、筒状部材22bの外壁面に対向する開口22xが貫通して設けられている。伸長センサSは筒状部材22aの外壁面に固定されたブラケット22yに取り付けられ、開口22xに臨み開口22xを介して筒状部材22bの外壁面に対向する姿勢で筒状部材22aに設置されている。ブラケット22yは筒状部材22aに対してボルトBで固定されている(
図3)。伸長センサSに対向する筒状部材22bの外壁面には検出体Dが設けられている。この検出体Dは筒状部材22bの上端付近に設置されており、伸縮アーム22が設定長さLs以上に伸びた場合にのみ(伸縮アーム22が設定長さLs以上に伸びた状態では常に)伸長センサSに対向するように構成されている。本実施形態では伸長アーム22が3本の筒状部材22a〜22cで構成されていて2箇所の摺動部を有するため、伸長アーム22の最大長さをLmaxとすると、検出体Dの長さLdは(Lmax−Ls)/2程度である。検出体Dの長さLdの設定により設定長さLsを任意に調節できる。
【0019】
なお、本実施形態では伸長センサSとしてリミットスイッチを採用した場合を例示しているが、近接センサで代替することもできる。また、伸縮アーム22の伸縮機構に用いられた上記滑車の回転角度を検出し、伸縮アーム22が設定長さLs以上か未満かで入り切りが切り換わる回転計を伸長センサSとして用いることもできる。伸縮アーム22の伸縮に伴って距離が変化する2点(例えば筒状部材22a,22bの先端)の距離を計測し、伸縮アーム22が設定長さLs以上か未満かで入り切りが切り換わる距離計を伸長センサSとして用いることもできる。
【0020】
−油圧システム−
図4は
図1の作業機械に備えられた油圧システムの要部の油圧回路図である。
図1では油圧システムの全体からアームシリンダ25及びバケット開閉シリンダ26の動作に関する部分を抜き出して表してある。同図に示した油圧システムは、油圧ポンプ31,32、パイロットポンプ33、コントロール弁34,35及び操作装置36,37等を含んでいる。
【0021】
油圧ポンプ31はアームシリンダ25を駆動する圧油、油圧ポンプ32はバケット開閉シリンダ26を駆動する圧油を吐出する例えば可変容量型のポンプであり、いずれも原動機Eにより駆動される。油圧ポンプ31,32から吐出された圧油は吐出配管31a,32aを流れ、コントロール弁34,35を経由してそれぞれアームシリンダ25及びバケット開閉シリンダ26に供給される。アームシリンダ25及びバケット開閉シリンダ26からの戻り油は、それぞれコントロール弁34,35を経由してタンク管路Taに流れ込みタンクTに戻る。吐出配管31a,32aには、これら吐出配管31a,32aの最高圧力を規制するリリーフ弁38が設けられている。なお、本実施形態ではアームシリンダ25及びバケット開閉シリンダ26に対して異なる油圧ポンプ31,32から圧油が供給される例を示しているが、共通の油圧ポンプで圧油を供給する構成とすることもある。
【0022】
コントロール弁34,35は油圧ポンプ31,32から対応するアクチュエータに供給される作動油の流れ(方向及び流量)を制御する油圧駆動式の方向切換弁であり、受圧部に入力されるパイロット圧により駆動される。コントロール弁34はアームシリンダ25の駆動制御用、コントロール弁35はバケット開閉シリンダ26の駆動制御用である。コントロール弁34,35の受圧部は対応する操作装置36,37に接続されている。コントロール弁34,35は受圧部にパイロット圧が入力されるとスプールが移動して図中の上側又は下側の切換位置に切り換わり、パイロット圧の入力が停止されるとバネ(不図示)の力で中立位置に復帰する構成である。コントロール弁34,35の各中立位置は吐出配管31a,32aをタンク管路Taに接続して、アームシリンダ25及びバケット開閉シリンダ26に対する作動油の給排を停止し、アームシリンダ25及びバケット開閉シリンダ26の伸縮動作を停止させる。例えばアームシリンダ25に対応するコントロール弁34の下側の受圧部にパイロット圧p1が入力されると、
図4においてコントロール弁34のスプールがパイロット圧p1の大きさに応じた距離だけ上側に移動する。これにより、パイロット圧p1に応じた流量の圧油がアームシリンダ25のボトム側油室に供給され、パイロット圧p1の大きさに応じた速度でアームシリンダ25が伸長し伸縮アーム22がクラウド側に回動する。また、例えばバケット開閉シリンダ26用のコントロール弁35の下側の受圧部にパイロット圧p2が入力されると、
図4においてコントロール弁35のスプールがパイロット圧p2の大きさに応じた距離だけ上側に移動する。これにより、パイロット圧p2に応じた流量の圧油がバケット開閉シリンダ26のロッド側油室に供給され、パイロット圧p2の大きさに応じた速度でバケット開閉シリンダ26が収縮しクラムシェル23が閉じる。
【0023】
パイロットポンプ33はコントロール弁34,35等の制御弁を駆動するパイロット圧の元圧となる作動油を吐出する固定容量型ポンプであり、油圧ポンプ31,32と同じく原動機Eにより駆動される。原動機Eとは別の動力源でパイロットポンプ33を駆動する構成とすることもできる。パイロットポンプ33の吐出配管33aは分岐して操作装置36,37に接続している。この吐出管路33aを介して、パイロットポンプ33から吐出された作動油が操作装置36,37のパイロット弁(減圧弁)に供給される。吐出管路33aには、この吐出管路33aの最高圧力を規制するリリーフ弁39が設けられている。
【0024】
操作装置36,37は、それぞれ対応するコントロール弁34,35を駆動するパイロット圧を操作に応じて生成し出力する油圧式のレバー操作装置であり、運転室15(
図1)に備えられている。操作装置36はアームシリンダ25の操作用、操作装置37はバケット開閉シリンダ26の操作用である。
図4では図示した4つの操作装置のうち右から2番目のものを操作装置36とした場合を例示しているが、図中最も左側の操作装置37を除く3つの操作装置のどれかを操作装置36とすることができる。
【0025】
アーム操作用の操作装置36は、アームクラウド指令用のパイロット弁36a及びアームダンプ指令用のパイロット弁36bを備えている。パイロット弁36a,36bの一次ポートには吐出管路33aが接続している。アームクラウド指令用のパイロット弁36aの二次ポートはコントロール弁34の下側の受圧部に接続している。アームダンプ指令用のパイロット弁36bの二次ポートはコントロール弁34の上側の受圧部に接続している。例えば操作装置36の操作レバーをアームクラウド指令側に倒すとパイロット弁36aが操作量に応じた開度で開く。これによりパイロットポンプ33の吐出油の圧力がパイロット弁36aで操作量に応じて減圧され、コントロール弁34の下側の受圧部に対するパイロット圧p1として出力される。
【0026】
同様に、バケット開閉操作用の操作装置37は、バケット閉指令用のパイロット弁37a及びバケット開指令用のパイロット弁37bを備えている。パイロット弁37a,37bの一次ポートは吐出管路33aに接続している。バケット開閉操作用のパイロット弁37aの二次ポートはコントロール弁35の下側の受圧部に接続している。バケット開指令用のパイロット弁37bの二次ポートはコントロール弁35の上側の受圧部に接続している。例えば操作装置37の操作レバーをバケット閉指令側に倒すとパイロット弁37aが操作量に応じた開度で開く。これによりパイロットポンプ33の吐出油の圧力がパイロット弁37aで操作量に応じて減圧され、コントロール弁35の下側の受圧部に対するパイロット圧p2として出力される。
【0027】
また、吐出管路33aには、ゲートロックバルブ33bが設けられている。ゲートロックバルブ33bはゲートロックレバー(不図示)のポジションに応じて吐出管路33aを開閉する開閉弁であり、この例ではノーマルクローズ型の電磁弁を例示している。ゲートロックレバーは、寝かせた倒伏姿勢でオペレータの降車を妨げるように運転席の乗降側(本例では左側)に設置されたレバー状のゲートである。このゲートロックレバーを引き上げて運転席に対する乗降部を開放しなければ、オペレータは降車できないようになっている。具体的には、ゲートロックレバーが寝かせたロック解除位置にあるとき、例えばゲートロックレバーのポジションを検知するポテンショメータから出力される電気信号によりゲートロックバルブ33bのソレノイドが励磁される。これによりゲートロックバルブ33bが図中右側のポジションに切り換わり、吐出管路33aが開通して操作装置36,37にパイロットポンプ33の作動油が供給される。反対にゲートロックレバーが起立したロック位置でポテンショメータからの信号出力が停止した場合、ゲートロックバルブ33bのソレノイドが消磁される。これによりゲートロックバルブ33bが図中左側のポジションに切り換わり、吐出管路33aが遮断されて操作装置36,37へのパイロットポンプ33の吐出油の供給が遮断される。これによりコントロール弁34,35が強制的に中立位置に切り換わり、アームシリンダ25やバケット開閉シリンダ26が動作不能になる。
【0028】
−可変リリーフ機構−
本実施形態の作業機械には、伸縮アーム22が設定長さLs以上に伸長してクラムシェルバケット23の閉じ操作がされると、アームシリンダ25のボトム側(伸長動作側)の油室のリリーフ圧を通常時よりも低下させる可変リリーフ機構が備わっている。この可変リリーフ機構は、伸長センサSから出力される信号及びバケット開閉用の操作装置37から出力されたパイロット圧p2に基づいて作動する。この可変リリーフ機構は、可変リリーフ弁(パイロットリリーフ弁)1、開閉弁2、電磁弁3、リレースイッチ4等で構成されている。
【0029】
可変リリーフ弁1は、アームシリンダ25のボトム側の油室とコントロール弁34とを接続する油圧管路から分岐してタンク管路Taに接続するリリーフ管路1aに設けられている。可変リリーフ弁1の受圧部にパイロット圧p3が加わると、
図5のようにアームシリンダ25のボトム側の油室のリリーフ圧Prが第1設定圧力Pr1(ばねのみで規定される圧力)から第2設定圧力Pr2(ばねとパイロット圧p3で規定される圧力)に低下する。第1設定圧力Pr1はリリーフ弁38による設定圧力よりも低く、第2設定圧力Pr2は第1設定圧力Pr1よりも更に低く設定されている。特に、第2設定圧力Pr2は、伸縮アーム22が設定長さLs以上に伸長し鉛直に対して設定角度θ1だけ傾斜した状態で伸縮アーム22及びクラムシェル23の自重によりアームシリンダ25のボトム側の油室に作用する圧力よりも低く設定されている。θ1は鉛直に対する伸縮アーム22の傾斜角度θ(
図8)についての設定角度であり、設定角度θ1は任意に設定できるが、少なくとも45°よりは小さく、例えば10°程度である。
【0030】
開閉弁2は、パイロットポンプ33の吐出管路33aと可変リリーフ弁1の受圧部とを接続するリリーフ圧切換用のパイロットライン2aに設けられており、パイロット圧p2が受圧部に作用するとパイロットライン2aを開閉する。受圧部にパイロット圧p2が作用して開閉弁2が開く(図中の右側の切換位置に切り換わる)とパイロットライン2aが開通し、パイロットポンプ33の吐出油の圧力を元圧とするパイロット圧p3が可変リリーフ弁1の受圧部に作用する。受圧部へのパイロット圧p2の作用が停止すると開閉弁2は閉じ(図中の左側の切換位置に切り換わり)、パイロットライン2aを遮断すると共に可変リリーフ弁1の受圧部をタンクTに接続する。
【0031】
ところで、運転室15で操作装置37によりバケット閉じ操作を行うと、
図6のようにレバー操作量tに応じてパイロット弁37aからパイロット圧p2が出力される。操作装置37には不感帯があり、レバー操作量tが0からtaまでの間は出力されるパイロット圧p2は0である。レバー操作量tがta(>0)に達するとパイロット弁37aから出力されるパイロット圧p2がpa(>0)まで立ち上がる。レバー操作量tがtaからtb(>ta)まで増加する間はパイロット圧p2がtに比例してpaから最高値pmax(>pa)まで上昇する。tb以上のレバー操作量tではパイロット圧p2は最高値pmaxで一定である。バケット開閉用のコントロール弁35の受圧部にはパイロット弁37aで生成されるパイロット圧p2が操作装置37のレバー操作量tがtaに至った時点から作用し始める。しかし、応答遅延を伴うため、コントロール弁35のスプールが動き始めるのはパイロット圧p2がpaまで立ち上がって以降である。コントロール弁35が駆動してバケット開閉シリンダ26が動作し始めるのは時間的には更に後である。
【0032】
それに対し、開閉弁2はパイロット弁37aから出力されるパイロット圧p2がpaよりも低いpxまで立ち上がった時点で駆動するようにばね力が設定してある。つまり可変リリーフ機構は、コントロール弁34のばね力よりも開閉弁2のばね力が低めに設定してあり、バケット開閉シリンダ26や同様の回路構成のアームシリンダ25よりも応答良く作動するように構成されている。
【0033】
電磁弁3は、バケット開閉用のパイロットライン3aに設けられており、パイロットライン3aを開閉する。パイロットライン3aは、バケット閉じ操作用のパイロット弁37aとコントロール弁35のバケット閉じ動作側の受圧部とを接続するパイロットライン37aaから分岐して開閉弁2の受圧部に接続する油路である。電磁弁3はソレノイドが励磁されると図中の左側の切換位置に切り換わり、パイロットライン3aを開通させる。この状態でパイロット弁37aからパイロット圧p2が出力されると、そのパイロット圧p2が開閉弁2の受圧部にも作用する。電磁弁3はソレノイドが消磁されると図中の右側の切換位置に切り換わり、パイロットライン3aを遮断すると共に開閉弁2の受圧部をタンクTに接続する。
【0034】
リレースイッチ4は、伸長センサSに給電する電源(例えばバッテリ)5と電磁弁3のソレノイドとを接続する信号線5aに設けられており、伸長センサSから出力される信号に応じて作動する。伸長センサSが入り状態になってリレーが励磁されるとリレースイッチ4の接点が閉じ、電磁弁3のソレノイドが電源5に繋がる。これにより電磁弁3が作動して図中左側の切換位置に切り換わる。伸長センサSが切り状態になってリレーが消磁されるとリレースイッチ4の接点が開き、電磁弁3のソレノイドと電源5との接続が遮断される。これにより電磁弁3が図中右側の切換位置に戻る。
【0035】
なお、本実施形態ではリレースイッチ4を用いて可変リリーフ機構が作動する構成を例示したが、例えばコントローラ(コンピュータ)により開閉弁2を開閉制御する構成としても良い。この場合、例えば開閉弁2を電磁駆動式に変更すると共に、操作装置37のレバー操作に応じて電気信号を出力するポテンショメータを設ける。伸長センサSとポテンショメータの信号を基にコントローラで作動条件を判定し、条件が満たされた場合にコントローラの出力信号により開閉弁2のソレノイドを励磁(不満足の場合は消磁)して可変リリーフ弁1にパイロット圧p3を付加する構成である。操作装置37は電気レバーにしても良く、その場合電磁弁3は不要である。また、可変リリーフ弁1に電磁駆動式リリーフ弁を用い、コントローラからの信号により可変リリーフ弁1によるリリーフ圧が直接切り換えられる構成とすることも考えられる。
【0036】
−動作−
・掘削作業
作業機械による掘削作業について説明する。例えば堅穴掘削作業を行う場合、まず走行体11を駆動して
図1のように堅穴Hの近くまで作業機械を移動させる。次にブーム21及び伸縮アーム22を駆動して堅穴Hにクラムシェル23を入れ、アーム伸縮シリンダを伸長させて伸縮アーム22を伸ばし、クラムシェル23を下ろして穴底に押し付ける。その間、クラムシェル23のバケット開閉シリンダ26を伸長させ、バケット27は開いた状態にしておく。クラムシェル23が穴底に到達したらバケット開閉シリンダ26を収縮させ、クラムシェル23を閉じてバケット27の内部に土砂を掻き込む。バケット27に土砂を収容したらアーム伸縮シリンダを収縮させ、伸縮アーム22を縮めてクラムシェル23を地上に引き上げる。伸縮アーム22を最収縮させたら、旋回体12を旋回させつつブームシリンダ24及びアームシリンダ25を適宜駆動して、
図7に示したようにダンプトラック等の運搬車両Vの荷台の上方にクラムシェル23を移動させる。そしてバケット開閉シリンダ26伸長させてバケット27を開くことにより、運搬車両Vの荷台に土砂を排出することができる。堅穴Hの掘削作業が完了するまで以上の作業を繰り返す。
【0037】
・可変リリーフ機構の動作
伸縮アーム22が設定長さLs以上に伸びていること、バケット閉じ操作が行われていることの2つの条件が同時に満たされた場合にのみ可変リリーフ機構が作動する。
図1に示したように伸縮アーム22が設定長さLs以上に伸びると、
図2に示したように伸長センサSの対向位置に検出体Dが移動してきて伸長センサSが入り状態(ON)になる。伸長センサSが入り状態になると、
図4において伸長センサSから出力される信号によりリレースイッチ4のリレーが励磁され、リレースイッチ4の接点が閉じる。その結果、電磁弁3のソレノイドが電源5に接続し、ソレノイドが励磁されて電磁弁3が開位置(左側の切換位置)に切り換わり、開閉弁2の受圧部がバケット閉じ操作用のパイロット弁37aの二次ポートに接続する。この状態で操作装置37によりバケット閉じ操作が行われると、パイロット弁37aからバケット開閉用のコントロール弁35に出力されるパイロット圧p2が電磁弁3を介して開閉弁2の受圧部にも作用し、開閉弁2が開位置(右側の切換位置)に切り換わる。開閉弁2が開くとパイロットポンプ33の吐出圧を元圧とするパイロット圧p3が開閉弁2を介して可変リリーフ弁1の受圧部に作用する。これにより可変リリーフ弁1によるアームシリンダ25のボトム側の油室のリリーフ圧Prが第1設定圧力Pr1から第2設定圧力Pr2に低下する。つまり操作装置36によりアームクラウド操作がされた際のアームシリンダ25の伸長動作の駆動圧力の最高値が低下する。
【0038】
伸縮アーム22が設定長さLs未満に収縮している場合、電磁弁3が閉じ位置であるためバケット閉じ操作の有無に関わらず可変リリーフ機構は作動しない。また伸縮アーム22が設定長さLs以上に伸長した状態でも、バケット閉じ操作が行われなければ開閉弁2が閉じ位置であるため可変リリーフ機構は作動しない。例えば
図7のような放土作業をする場合には、堅穴Hからクラムシェル23を引き上げる際に伸縮アーム22の長さが設定長さLs未満に収縮するのでアームダンプ動作が可能となる。またバケット閉じ操作を行わなければ伸縮アーム22の長さによらず可変リリーフ機構は作動しないので、バケット閉じ操作をせずに伸縮アーム22を傾斜させつつ伸縮アーム22を伸ばしていくことで、堅穴Hの穴底の隅にクラムシェル23を下ろすこともできる。この場合でも掘削時(バケット閉じ操作時)には可変リリーフ機構が作動するので、仮にアームクラウド操作が行われてもクラムシェル23が強く穴底に押し付けられることはない。
【0039】
−効果−
(1)伸縮アーム22が設定長さLs以上に伸びると電磁弁3が開き、その状態でバケット閉じ操作が行われると開閉弁2が開き、パイロットポンプ33の吐出油の圧力を元圧として開閉弁2から出力されるパイロット圧p3が可変リリーフ弁1の受圧部に作用する。これによりアームシリンダ25のボトム側の油室のリリーフ圧が通常時の第1設定圧力Pr1から第2設定圧力Pr2に低下する。例えば堅穴Hの穴底の掘削時にアームクラウド操作が行われたとしても、アームシリンダ25の駆動圧力が抑えられ、クラムシェル23が穴底に過度な力で押し付けられることがない。従って
図8のように伸縮アーム22が鉛直に対して傾斜した姿勢で穴底の掘削動作が行われている場合にアームクラウド操作が行われても、伸縮アーム22に作用する応力を抑制し、伸縮アーム22を保護することができる。
【0040】
(2)前述した通り第2設定圧力Pr2は設定長さLs以上に伸びた伸縮アーム22を設定角度θ1以上で傾斜した姿勢で保持不能な低い値に設定されている。またクラムシェル23を下ろしながらバケット閉じ操作をする場合のように、伸縮アーム22が設定長さLsまで伸びた時点でクラムシェル23の開動作が行われていれば、クラムシェル23が穴底に到達していなくても可変リリーフ機構が作動する。この場合、伸縮アーム22が設定角度θ1以上で傾斜していれば、クラムシェル23が穴底に向かう過程で伸縮アーム22が自重で鉛直姿勢に近付いていく。これにより伸縮アーム22が必要以上に傾斜した状態で掘削作業が行われること自体を抑制できる。
【0041】
<第2実施形態>
図9は本発明の第2実施形態に係る作業機械に備えられた油圧システムの要部の油圧回路図である。
図9は
図4に対応する図である。本実施形態が特徴とする点は、アームシリンダ25の油室の最高圧力(アームシリンダ25の駆動圧の最高値)を規定するオーバーロードリリーフ弁41,42を備えている点である。オーバーロードリリーフ弁41は、アームシリンダ25のボトム側(ボトム側)の油室とコントロール弁34とを接続する管路に可変リリーフ弁1と共に設けられている。オーバーロードリリーフ弁42は、アームシリンダ25の収縮動作側(ロッド側)の油室とコントロール弁34とを接続する管路に設けられている。アームシリンダ25以外の油圧シリンダ(バケット開閉シリンダ26等)にも同様に対応するコントロール弁と油室とを接続する管路にオーバーロードリリーフ弁が設けられている。本実施形態においては、可変リリーフ弁1の第1設定圧力Pr1は、アームシリンダ25のボトム側の油室のオーバーロードリリーフ弁42による設定リリーフ圧(最高圧力)よりも高く設定されている。また第2設定圧力Pr2は、オーバーロードリリーフ弁42による設定リリーフ圧よりも低く設定されている。オーバーロードリリーフ弁41,42によるリリーフ圧は、所定の長さ以上に伸びた状態の伸縮アーム22を傾斜角度θによらず保持できる値である。その他の点については、本実施形態は第1実施形態と同様である。
【0042】
本実施形態においては、可変リリーフ弁1による第1設定圧力Pr1がオーバーロードリリーフ弁41によるリリーフ圧よりも高いので、可変リリーフ弁1によってダンプ作業時等にオーバーロードリリーフ弁41の機能が妨げられることはない。第2設定圧力Pr2はオーバーロードリリーフ弁41によるリリーフ圧より低いので、可変リリーフ機構の作動条件が満たされた状態で伸縮アーム22にクラウド側への力が加わった場合には、オーバーロードリリーフ弁41に優先して可変リリーフ弁1が作動する。よって、オーバーロードリリーフ弁41を備えた本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
<第3実施形態>
図10は本発明の第3実施形態に係る作業機械に備えられた伸縮アームの断面図、
図11は本発明の第3実施形態に係る作業機械に備えられた油圧システムの要部の油圧回路図である。
図10は
図2に、
図11は
図4に対応する図である。本実施形態が第1実施形態と相違する点は、リレースイッチ4の接点が励磁状態で開き消磁状態で閉じ、伸長センサSが切り状態の場合にのみ電磁弁3が作動する(
図11中の左側の切換位置に切り換わる)点である。そのため、本実施形態では、
図1に示したように検出体Dが筒状部材22bの上端(筒状部材22aに対する筒状部材22bのストロークの上端)から長さLdの領域を除く、それよりも下側の領域に設置されている。これにより伸長センサSの入り切りの場面が第1実施形態と逆転している。その他の点は、可変リリーフ機構の作動条件を含めて第1実施形態と同様である。
【0044】
本実施形態において伸縮アーム22が設定長さLsに満たない状態では伸長センサSが常に入り状態となり、
図11のようにリレースイッチ4の接点が開いた状態である。この状態では電磁弁3のソレノイドは励磁されないので、開閉弁2の受圧部にパイロット圧p2が作用することもなく、可変リリーフ弁1によるリリーフ圧Prの切り換え(低下)も行われない。伸縮アーム22が設定長さLs以上に伸びると、伸長センサSが切り状態になってリレースイッチ4の接点が閉じ、電磁弁3のソレノイドが励磁され電磁弁3が
図11中の左側の切換位置に切り換わる。その後は第1実施形態と同様である。つまりバケット閉じ操作が行われると開閉弁2が右側の切換位置に切り換わり、可変リリーフ弁1にパイロット圧p3が作用して、アームシリンダ25のボトム側の油室のリリーフ圧Prが第1設定圧力Pr1から第2設定圧力Pr2に低下する。本実施形態においても第1実施形態と同様の効果が得られる。また本実施形態の第1実施形態との構成的相違点は第2実施形態にも適用できることは言うまでもない。