(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6781314
(24)【登録日】2020年10月19日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】タービン用ダイヤフラムの点検方法
(51)【国際特許分類】
F01D 25/28 20060101AFI20201026BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
F01D25/28 E
F01D25/00 X
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-161014(P2019-161014)
(22)【出願日】2019年9月4日
(62)【分割の表示】特願2016-5756(P2016-5756)の分割
【原出願日】2016年1月15日
(65)【公開番号】特開2019-206970(P2019-206970A)
(43)【公開日】2019年12月5日
【審査請求日】2019年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】509328928
【氏名又は名称】株式会社日立プラントコンストラクション
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 浄治
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 祐二
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀人
(72)【発明者】
【氏名】久保田 益生
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 正俊
【審査官】
高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−237007(JP,A)
【文献】
特開昭63−230910(JP,A)
【文献】
特開2006−274849(JP,A)
【文献】
特開平09−151706(JP,A)
【文献】
米国特許第5575607(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/00
F01D 25/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンケーシングの上部ケーシングを撤去した後の下部ケーシング上面で内部の高圧ダイヤフラム又は中圧ダイヤフラムの四隅に立設可能な複数の柱と、前記複数の柱の上方を接続する横梁及び上部渡し梁を有し、前記下部ケーシング内の複数の上半又は下半ダイヤフラムを跨ぐように載置可能なフレームと、前記フレームの上部で前記上半又は下半ダイヤフラムの軸線に沿って伸び、前記上部渡し梁よりも長く設定し、一端側であって前記柱間から前記下部ケーシングの外側へ突出した箇所に前記吊下手段が長手方向に沿って移動可能なスライドスペースを有するレールと、前記レールに取り付けて前記フレームの下方から前記高圧ダイヤフラム又は中圧ダイヤフラムの前記上半又は下半ダイヤフラムを個々に吊下げ可能な吊下手段を備えたタービン用ダイヤフラムの吊架台を前記下部ケーシングの上面に配置して、前記タービンケーシング内の前記上半又は下半ダイヤフラムを同数の前記吊下手段で吊り上げる工程と、
吊上げた前記上半又は下半ダイヤフラムを軸線に沿って前記スライドスペースへ移動させて保守作業するための隙間を設けて点検する工程と、
を有することを特徴とするタービン用ダイヤフラムの点検方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたタービン用ダイヤフラムの点検方法であって、
前記吊り上げる工程は、前記1単位の上半又は下半ダイヤフラムの位置及び向きを維持した状態で吊り上げることを特徴とするタービン用ダイヤフラムの点検方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたタービン用ダイヤフラムの点検方法であって、
前記吊り上げる工程は、吊り上げたダイヤフラム同士を仕切る固定治具を前記ダイヤフラム同士の間に挿入することを特徴とするタービン用ダイヤフラムの点検方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1に記載されたタービン用ダイヤフラムの点検方法であって、
前記吊り上げる工程は、前記吊下手段で上半ダイヤフラムの頂点の吊金具と係止することを特徴とするタービン用ダイヤフラムの点検方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1に記載されたタービン用ダイヤフラムの点検方法であって、
前記吊り上げる工程は、前記吊下手段で下半ダイヤフラムの両端の吊金具と係止することを特徴とするタービン用ダイヤフラムの点検方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1に記載されたタービン用ダイヤフラムの点検方法であって、
前記吊架台を天井クレーンで点検作業場所まで移動する工程と有することを特徴とするタービン用ダイヤフラムの点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンの分解点検作業時に使用されるタービン用ダイヤフラムの点検方法に係り、特に上半又は下半ダイヤフラムの点検作業時に好適なタービン用ダイヤフラムの点検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電設備のガスタービン、スチームタービンは、所定時間の運転後、定期的に内部点検が実施されている。
タービンの点検作業に伴う主な分解作業は、主として上部ケーシングの取り外し、上半ダイヤフラムの取り外し、タービンロータの取り外し、下半ダイヤフラムの取り外しの順に行われ、分解した部品ごとにスケール除去を目的としたホーニング、上下分割面の探傷検査などが行われている。
従来このようなタービンの点検時には、ケーシングを分解して内部のダイヤフラムを取り出して点検する受台が利用されている。
【0003】
特許文献1に開示の受台は、複数個の上半ダイヤフラムが縦置き状態で並列される床面と、上半ダイヤフラムを縦方向に貫通させる貫通孔が縦置き状態の上半ダイヤフラムの倒れ防止として機能する作業床と、作業床上を走行可能な移動架台とを備えている。このような受台によれば、上半ダイヤフラムを反転操作することなく、タービン本体から抜き出した姿勢のまま縦置き状態で並列に格納できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4706826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている受台は、タービン用上半ダイヤフラムを対象としており、下半ダイヤフラムに適用することができない。
またダイヤフラムの吊上げ作業は、建屋に設けた天井クレーンを用いている。このため上半ダイヤフラムを受台に吊り込む作業中は、天井クレーンを占有することになり、天井クレーンを使う他の作業に待ち時間が生じるおそれがあった。
【0006】
上記従来技術の問題点に鑑み本発明は、タービン用ダイヤフラムの点検作業を容易かつ短期間で行うことができるタービン用ダイヤフラムの点検方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の手段として、本発明は、
タービンケーシングの上部ケーシングを撤去した後の下部ケーシング上面で内部の高圧ダイヤフラム又は中圧ダイヤフラムの四隅に立設可能な複数の柱と、前記複数の柱の上方を接続する横梁及び上部渡し梁を有し、前記下部ケーシング内の複数の上半又は下半ダイヤフラムを跨ぐように載置可能なフレームと、前記フレームの上部で前記上半又は下半ダイヤフラムの軸線に沿って伸び、前記上部渡し梁よりも長く設定し、一端側であって前記柱間から前記下部ケーシングの外側へ突出した箇所に前記吊下手段が長手方向に沿って移動可能なスライドスペースを有するレールと、前記レールに取り付けて前記フレームの下方から前記高圧ダイヤフラム又は中圧ダイヤフラムの前記上半又は下半ダイヤフラムを個々に吊下げ可能な吊下手段を備えたタービン用ダイヤフラムの吊架台を前記下部ケーシングの上面に配置して、前記タービンケーシング内の前記上半又は下半ダイヤフラムを同数の前記吊下手段で吊り上げる工程と、
吊上げた前記上半又は下半ダイヤフラムを軸線に沿って
前記スライドスペースへ移動させて保守作業するための隙間を設け
て点検する工程と、
を有することを特徴とするタービン用ダイヤフラムの点検方法を提供することにある。
上記第1の手段によれば、吊下手段を用いて下部ケーシング上で複数のダイヤフラムを取り出して吊架台に容易に吊下げることができ、タービン建屋に設けた天井クレーンの使用を最小限にしたダイヤフラムの吊下作業を行うことができる。このため、天井クレーンを頻繁に使用することによって他の作業に待ち時間が生じることなく、作業の短期化を図ることができる。
【0008】
上記課題を解決するための第2の手段として、本発明は、前記第1の手段において、前記隙間を設ける工程は、前記タービンケーシングの下部ケーシングの外側まで前記軸線に沿って移動させることを特徴とするタービン用ダイヤフラムの点検方法を提供することにある。
上記第2の手段によれば、レールの長手方向に沿ってダイヤフラムを下部ケーシングの外側で作業スペースとして使用可能なスライドスペースへ移動させることができ、移動した後にダイヤフラムの間に点検スペースを容易に設けることができ点検作業の効率化が図れる。
【0009】
上記課題を解決するための第3の手段として、本発明は、前記第1又は第2の手段において、前記吊り上げる工程は、前記1単位の上半又は下半ダイヤフラムの位置及び向きを維持した状態で吊り上げることを特徴とするタービン用ダイヤフラムの点検方法を提供することにある。
上記第3の手段によれば、ダイヤフラムのすべてを配置順に従って吊下げることにより、タービン組立状態と同じ順序を維持することができ、ダイヤフラムの位置・向きなどを間違えるミスが生じることがなくなる。
【0010】
上記課題を解決するための第4の手段として、本発明は、前記第1ないし第3のいずれか1の手段において、前記吊り上げる工程は、吊り上げたダイヤフラム同士を仕切る固定治具を前記ダイヤフラム同士の間に挿入することを特徴とするタービン用ダイヤフラムの点検方法を提供することにある。
上記第4の手段によれば、吊架台に吊下げた複数の上半及び下半ダイヤフラムの間を仕切ることができ、吊架台の移動又は吊下手段の移動の際にダイヤフラム同士が接触することにより損傷することを防止できる。
【0011】
上記課題を解決するための第5の手段として、本発明は、第1ないし第4の手段のいずれか1の手段において、前記吊り上げる工程は、前記吊下手段で上半ダイヤフラムの頂点の吊金具と係止することを特徴とするタービン用ダイヤフラムの点検方法を提供することにある。
上記第5の手段によれば、上下二分割したダイヤフラムのうち、上半ダイヤフラムは頂点に取り付ける吊金具を介してセンターレールの吊下手段で吊下げることができ、点検作業の効率化を図ることができる。
【0012】
上記課題を解決するための第6の手段として、本発明は、第1ないし第5の手段のいずれか1の手段において、前記吊り上げる工程は、前記吊下手段で下半ダイヤフラムの両端の吊金具と係止することを特徴とするタービン用ダイヤフラムの点検方法を提供することにある。
上記第6の手段によれば、上下二分割したダイヤフラムのうち、下半ダイヤフラムは両端に取り付ける吊金具を介して2本のサイドレールの吊下手段で吊下げることができ、点検作業の効率化を図ることができる。
【0013】
上記課題を解決するための第7の手段として、本発明は、第1ないし第6の手段のいずれか1の手段において、前記吊り上げる工程は、前記タービンケーシング上に設置した吊架台で行い、
前記吊架台を天井クレーンで点検作業場所まで移動する工程と有することを特徴とするタービン用ダイヤフラムの点検方法を提供することにある。
上記第7の手段によれば、吊下手段を用いて下部ケーシング上で複数のダイヤフラムを取り出して吊架台に容易に吊下げることができ、タービン建屋に設けた天井クレーンの使用を最小限にしたダイヤフラムの吊下作業を行うことができる。このため、天井クレーンを頻繁に使用することによって他の作業に待ち時間が生じることなく、作業の短期化を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、タービン建屋に設けた天井クレーンの使用を最小限にしてダイヤフラムを下部ケーシングから取り外し及び取り付け作業を行うことができる。このため、天井クレーンを頻繁に使用することによって他の作業に待ち時間が生じることなく、作業の短期化を図ることができる。
またケーシングに収納された高圧ダイヤフラム(複数のダイヤフラムで構成)あるいは中圧ダイヤフラム(複数のダイヤフラムで構成)をそれぞれ1単位として、吊架台に吊下げることができ、ダイヤフラムの位置・向きを間違えるミスが生じることがない。
さらに下部ケーシングの外側(スライドスペース)でダイヤフラムを点検検査することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】タービン用上半ダイヤフラムの吊架台の正面図である。
【
図2】タービン用上半ダイヤフラムの吊架台の平面図である。
【
図3】タービン用上半ダイヤフラムの吊架台の側面図である。
【
図5】タービンケーシングの下部ケーシングの平面図である。
【
図6】タービン用下半ダイヤフラムの吊架台の説明図である。
【
図7】タービン用ダイヤフラムの吊架台を用いた点検作業の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のタービン用ダイヤフラムの点検方法の実施形態を添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0017】
図5はタービンケーシングの下部ケーシングの平面図である。なお同図中のタービン用ダイヤフラムの吊架台10は、柱の下端のフランジ23のみ示している。図示のように下部ケーシング1の内部には高圧ダイヤフラム2と、中圧ダイヤフラム3が取り付けられている。高圧ダイヤフラム2と中圧ダイヤフラム3は直径及び重量が異なるため、本発明のタービン用ダイヤフラムの吊架台10は、一例として、高圧ダイヤフラム2、中圧ダイヤフラム3をそれぞれ1単位とし、吊架台一台分の吊下げ対象としている。
本発明のタービン用ダイヤフラムの吊架台は、タービン用ダイヤフラムを上下に分割した上半ダイヤフラム又は下半ダイヤフラムの保守作業等に適用可能な架台である。
【0018】
[タービン用ダイヤフラムの吊架台10]
図1はタービン用上半ダイヤフラムの吊架台の正面図である。
図2はタービン用上半ダイヤフラムの吊架台の平面図である。
図3はタービン用上半ダイヤフラムの吊架台の側面図であり(1)は左側面図、(2)は右側面図である。
図示のようにタービン用ダイヤフラムの吊架台10は、フレーム20と、レール30と、吊下手段40と、固定治具50を含んだ構成としている。
【0019】
[フレーム20]
フレーム20は、柱22と、横梁24と、上部渡し梁25を含んだ構成としている。
柱22は、下部ケーシング1の上面に一端を配置して他端が垂直方向に伸びる4本のH形鋼である。4本の柱22は、下部ケーシングの内部に取り付けたダイヤフラムの1単位(高圧ダイヤフラム、中圧ダイヤフラムなど)を平面視して四隅に配置して、4本の柱22で囲まれた範囲にタービン組立状態の1単位のダイヤフラムが収まるようにしている。
【0020】
また柱22の一端側の端面にフランジ23を形成し、フレーム20と下部ケーシング1の接触面積を確保して、上面に配置したときの安定性を高めるとともに、下部ケーシング1の上面に載置する際に柱22の先端によって上面が損傷することを防止している。フランジ23は、板状の鋼材を柱22の下端に接合したり、ゴムなどの緩衝材を締結ボルトにより柱22の下端に固定している。柱22の全長は、一例として吊下げ前のダイヤフラムの上端と、吊下げた後のダイヤフラムの下端の距離が数百ミリとなるように設定して、吊下げたダイヤフラムを移動させる際に、吊下げる前の他のダイヤフラムと接触することがないようにしている。
【0021】
横梁24は、両端が2本の柱22の上端に接続し、長手方向が下部ケーシング1の長手方向、換言するとダイヤフラムの軸線と直交する方向に沿って配置されるH形鋼である。横梁24の全長は、下部ケーシング1の幅方向(長手方向と直交する方向)に応じて設定され、かつ吊下げるダイヤフラムの直径よりも長くなるように設定している。
【0022】
上部渡し梁25は、両端を2本の柱22に跨るように接続し、長手方向が下部ケーシング1の長手方向に沿って配置されるH形鋼である。上部渡し梁25の全長は、吊下げるダイヤフラムの1単位(高圧ダイヤフラム、中圧ダイヤフラムなど)を納める下部ケーシングの開口面(上部ケーシングとの接合面)に載置する柱22の位置に応じて設定している。
またフレーム20には、4つのブレース28(補強板)を正面および背面の柱22と上部渡し梁25に跨るように取り付け、さらに4つのブレース28を上面の横梁24と上部渡し梁25に跨るように取り付けて剛性を高めている。またフレーム20は上面の四隅に、建屋の天井クレーンのクレーンフックと係合可能な吊り具29を設けている。
【0023】
[下部渡し梁26]
下部渡し梁26は、長手方向が上部渡し梁25の長手方向に沿って2本の柱22に跨るように配置される溝形鋼である。下部渡し梁26は、上部渡し梁25の全長よりも長く設定し、一端側が2本の柱22間から突出している。下部渡し梁26は、柱22の下端からの高さが吊下げる上半又は下半ダイヤフラムと、フレーム20の正面視又は側面視で重なる位置に取り付けている。
前述の柱22、横梁24、上部渡し梁25、下部渡し梁26は、締結ボルト、溶接などの固定手段を用いて互いに接合している。
【0024】
[レール30]
レール30は、上部渡し梁25の長手方向に沿って2本の横梁24に跨るI形鋼であり、いずれか一方のフランジを横梁24の下面に締結ボルト、溶接などの固定手段を用いて接合させている。レール30は、下部渡し梁26と同様に、上部渡し梁25の全長よりも長く設定し、一端側が2本の柱22間から突出している。このレール30の一端側であって柱22間から突出した箇所は、後述する吊下手段40が進退移動可能なスライドスペース34となり、吊下げた複数の上半又は下半ダイヤフラムの間に保守作業に必要な所定幅の隙間を設けることができる。
【0025】
また本実施形態のレール30は、横梁24の中央に取り付けたセンターレール30aと、このセンターレール30aを中心として、所定間隔を開けて対称となるように2本のサイドレール30bを含んだ構成としている。そしてレール30は、レール30の長手方向と直交する方向に伸びるストッパ32を両端に設けている。このストッパ32は、後述する吊下手段40がレール30から脱落することを防止するものである。センターレール30aは、フレーム20の平面視で、上半ダイヤフラム6の頂点の吊金具51とほぼ重なる位置、換言すると吊金具51を通る垂直線上に取り付けている。2本のサイドレール30bは、フレーム20の平面視で、下半ダイヤフラム7の両端の吊り具とほぼ重なる位置、換言すると吊金具51を通る垂直線上に取り付けている。
【0026】
[吊下手段40]
図4は吊下手段の説明図である。図示のように吊下手段40は、プレーントロリ42及びチェーンブロック44を含んだ構成としている。
プレーントロリ42はレール30のフランジを挟むように車体を取り付けて、この車体にフランジ上面に乗せる複数の車輪43aと、チェーンブロック44の上部フック45と係合する取付け穴43bを設けて、レール30の長手方向に沿って走行する移動体である。
【0027】
チェーンブロック44は、プレーントロリ42の取付け穴43bに上部フック45を係止して、下部フック46を上半又は下半ダイヤフラムの吊金具51に係止して上方へ吊り上げてフレーム20にダイヤフラムを吊下げる手段である。
なお吊下手段40は、ダイヤフラムを吊下げることができものであれば、チェーンブロックの他にもホイスト、ウィンチなどを適用することもできる。
このような吊下手段40は、1本のレール30当たり、取り下げるダイヤフラムの1単位(高圧ダイヤフラム、中圧ダイヤフラムなど)と同数取り付けている。そしてチェーンブロック44で吊り下げたダイヤフラムをレール30の長手方向に沿ってプレーントロリ42により移動させることができる。
【0028】
[固定治具50]
固定治具50は、長手方向が下部ケーシング1の幅方向に沿って一対の下部渡し梁26上面に着脱可能に取り付けた部材である。固定治具50の全長は、下部ケーシング1の幅方向に配置した2本の柱22間よりも長く設定している。このような固定治具50は、複数の吊下手段40で吊り下げたダイヤフラム同士の間に挿入して、下部渡し梁26の上面に配置することにより、ダイヤフラム同士を仕切ることができ、吊架台10又はダイヤフラムを移動させる際にダイヤフラム同士が接触して破損することを防止できる。
【0029】
図6はタービン用下半ダイヤフラムの吊架台の説明図であり、(1)は正面図であり、(2)は左側面図であり、(3)は右側面図である。
図6に示す吊架台の構成は、
図1−3に示す構成と概ね同一であるが、下部渡し梁26Aの取り付け箇所が異なっている。下半ダイヤフラムに適用する下部渡し梁26Aは、
図1−3に示す下部渡し梁26の取付け箇所よりも下方に取り付けている。これは、下部ケーシング1内の下半ダイヤフラム7の上端の分割端面が、ケーシング内に納まっており、上半ダイヤフラムと同じ高さまで吊上げなくても、吊下げたダイヤフラムを移動させる際に、吊下げる前の他のダイヤフラムと接触することがないためである。
【0030】
下半ダイヤフラム7を吊り下げる場合は、以下のように行っている。下半ダイヤフラム7は、分割端面が上方側にあり、分割端面の両端に吊金具51を2つ取り付けている。このため、この吊金具51を通る垂直線上に配置された2つのサイドレール30bの吊下手段40を用いている。
【0031】
[作用]
図7はタービン用下半ダイヤフラムの吊架台を用いた点検作業の説明図である。
図7(1)に示すように、タービンケーシングの上部ケーシングを撤去し、タービン建屋の天井クレーン5を用いてタービン用ダイヤフラムの吊架台10を下部ケーシング1の上面に設置する。吊架台10の柱22が1単位のダイヤフラムの四隅に配置されるように下部ケーシング1の上面に取り付け、柱22で囲まれた範囲にタービン組立状態の1単位のダイヤフラムが収まるようにしている。そして上半ダイヤフラム6の頂点を通る垂直線上にセンターレール30aの中心が重なるように配置する。
【0032】
図7(2)に示すように、吊下手段40を用いて上半ダイヤフラム6を吊上げる。吊下手段40は1単位のダイヤフラムと同数レール30aに取り付けている。そこで1単位のダイヤフラムのいずれか一方の端部から、吊下手段40のチェーンブロック44の下部フック46を上半ダイヤフラム6の吊金具51に係止させた後、上半ダイヤフラム6をフレーム20の側面視又は正面視で下部渡し梁26と重なる高さまで吊上げる。
【0033】
図7(3)に示すように、吊架台10に吊下げた上半ダイヤフラム6と次に吊上げる上半ダイヤフラム6の間に固定治具50を差し込み、下部渡し梁26の上面に取り付ける。
以下、吊下手段40の吊上げ作業と、固定治具の仕り作業を繰り返し行い、1単位のダイヤフラムをすべて吊架台10に吊下げる。そして吊架台10の吊り具29にワイヤを通して天井クレーンを用いて点検作業場所まで移動させる。
【0034】
図7(4)に示すように、レール30のスライドスペース34に近い側の上半ダイヤフラム6から個別にスケール除去を目的としたホーニング、上下分割面の探傷検査などの点検作業を行う。点検作業後の上半ダイヤフラム6は、スライドスペース34の先端側へ移動させることにより、次に作業を行う上半ダイヤフラム6と作業後の上半ダイヤフラム6との間に作業スペースを設けることができ、常に吊架台10に吊り下げた状態で点検作業を行うことができる。
上半ダイヤフラムを取り外した後は、新たな吊架台10でサイドレール30bを用いて、下半ダイヤフラムの点検作業を
図7(1)〜(4)に示す工程と同様な手順で行うことができる。
【0035】
このような本発明のタービン用ダイヤフラムの点検方法によれば、タービン建屋に設けた天井クレーンの使用を最小限にしてダイヤフラムを下部ケーシングから取り外し又は下部ケーシングへ取り付け作業を行うことができる。そして吊架台に吊下げた状態で下部ケーシングの外側に作業スペースを確保することができダイヤフラムを個別に点検作業することができる。これにより、従来のようにダイヤフラムを吊り上げ、仮置きする工程がなくなり作業の効率化が図れる。
またダイヤフラム1単位毎、吊架台に吊下げて、吊下げた状態で点検作業を行えるため、ダイヤフラムのタービン組立状態を維持でき、ダイヤフラムの位置・向きを間違えるミスが生じることがない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のタービン用ダイヤフラムの点検方法は、特に上下二分割構造を採用したタービン用ダイヤフラムを吊下げる架台として各種プラント設備などにおいて産業上利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1………下部ケーシング、2………高圧ダイヤフラム、3………中圧ダイヤフラム、5………天井クレーン、10………タービン用ダイヤフラムの吊架台、20………フレーム、22………柱、23………フランジ、24………横梁、25………上部渡し梁、26………下部渡し梁、28………ブレース、29………吊り具、30………レール、30a………センターレール、30b………サイドレール、32………ストッパ、34………スライドスペース、40………吊下手段、42………プレーントロリ、43a………車輪、43b………取付け穴、44………チェーンブロック、45………上部フック、46………下部フック、50………固定治具、51………吊金具。