特許第6781346号(P6781346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6781346マルチモード通信を備えたリードレス心臓ペースメーカ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6781346
(24)【登録日】2020年10月19日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】マルチモード通信を備えたリードレス心臓ペースメーカ
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/362 20060101AFI20201026BHJP
   A61N 1/372 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   A61N1/362
   A61N1/372
【請求項の数】4
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2019-527234(P2019-527234)
(86)(22)【出願日】2017年11月20日
(65)【公表番号】特表2019-534113(P2019-534113A)
(43)【公表日】2019年11月28日
(86)【国際出願番号】US2017062594
(87)【国際公開番号】WO2018094344
(87)【国際公開日】20180524
【審査請求日】2019年5月30日
(31)【優先権主張番号】62/424,947
(32)【優先日】2016年11月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505003528
【氏名又は名称】カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】マイレ、キース アール.
(72)【発明者】
【氏名】リンダー、ウィリアム ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ルートヴィヒ、ジェイコブ エム.
【審査官】 白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−528009(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0018728(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0271406(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0057721(US,A1)
【文献】 特表2008−508981(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/106117(WO,A1)
【文献】 特表2010−536532(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/089756(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00−1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の心臓をペーシングするように構成されたリードレス心臓ペースメーカ(LCP)であって、LCPは患者の心臓の腔内に配置可能であり、
ハウジング、
ハウジングに対して固定された複数の電極、
ハウジングに対して固定された2つ以上の誘導コイルであって、2つ以上の誘導コイルのそれぞれが中心軸の周りに延びる複数の巻線を含み、2つ以上の誘導コイルのうちの1つの中心軸は、2つ以上の誘導コイルのうちの他の1つの中心軸と平行ではない、2つ以上の誘導コイル、及び
ハウジング内に配置され、複数の電極及び2つ以上の誘導コイルに動作可能に結合された制御装置であって、2つ以上の電極を介して患者の心臓の電気的活動を検知し、2つ以上の電極を介してペーシングパルスを生成及び送達するように構成された制御装置
を含み、制御装置は、
2つ以上の電極を介した伝導通信、及び
2つ以上の誘導コイルのうちの1つ以上を介した誘導通信
を使用して、1つ以上の遠隔に配置された装置と通信するように構成されており、制御装置はさらに、
誘導通信を無効にし、
伝導通信を使用して1つ以上の遠隔に配置された装置と通信し、
所定の状況を検出し、所定の状況の検出に応答して、誘導通信を有効にし、誘導通信を使用して1つ以上の遠隔に配置された装置と通信するように構成されている、LCP。
【請求項2】
制御装置は、誘導通信のために2つ以上の誘導コイルのうちの特定の1つを選択し、2つ以上の誘導コイルのうちの選択された1つの誘導コイルを介した誘導通信を使用して、かつ誘導通信のために2つ以上の誘導コイルのうちから選択されなかったものを使用しないで、1つ以上の遠隔に配置された装置と通信するように構成されている、請求項1に記載のLCP。
【請求項3】
制御装置は、誘導通信のために2つ以上の誘導コイルを選択し、選択された2つ以上の誘導コイルを介した誘導通信を使用して1つ以上の遠隔装置と通信するように構成されている、請求項1に記載のLCP。
【請求項4】
制御装置は、ユーザが伝導通信及び誘導通信を同時に無効にすることを防止するフェイルセーフを有するようにさらに構成されている、請求項1〜のいずれか一項に記載のLCP。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は医療装置に関し、より詳細には他の装置と通信することができるリードレス心臓ペースメーカなどの植込み型医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植込み型医療装置は、患者の生理学的又は他のパラメータを監視するため、及び/又は患者に治療を送達するために、今日一般的に使用されている。例えば、心臓関連症状を有する患者を助けるために、様々な医療装置(例えば、ペースメーカ、除細動器など)を患者の体内に植え込むことができる。そのような装置は、心臓がより正常で効率的かつ/又は安全な態様で動作するのを助けるために心臓を監視し、場合によっては心臓への電気刺激(例えば、ペーシング、除細動など)を提供することができる。別の例では、神経刺激装置を用いて患者の組織を刺激し、痛み及び/又は他の症状を緩和するのを助けることができる。さらに別の例では、植込み型医療装置は、単に患者の1つ以上の生理学的パラメータ又は他のパラメータを監視し、検知されたパラメータを別の植込み型医療装置又は外部装置などの別の装置に通信する植込み型モニタであり得る。場合によっては、2つ以上の装置が協働して監視及び/又は治療を提供する。これらの例の多くにおいて、そのような装置に必要なときに他の装置と通信させることが望まれる。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、リードレス心臓ペースメーカ(LCP)、神経刺激装置(NS)、及び/又は植込み型モニタ(IM)などの、ただしこれらに限定されない植込み型医療装置(IMD)であって、複数の通信モードを使用して通信するように構成された植込み型医療装置を記載する。例えば、植込み型医療装置は、いくつかの状況では伝導通信(conducted communication)を介して通信し、他の状況では誘導通信を介して通信するように構成されてもよい。場合によっては、植込み型医療装置は、通信モード間で切り替わるように構成されてもよく、これは、装置間の通信信頼性及び/又は通信速度を改善するのに役立ち得る。
【0004】
一例では、リードレス心臓ペースメーカ(LCP)は、患者の心臓の腔内から患者の心臓をペーシングするように構成される。LCPは、ハウジングと、ハウジングに対して固定された複数の電極とを含むことができる。2つ以上の誘導コイルがハウジングに対して固定されてもよく、それぞれが中心軸の周りに延びる複数の巻線を含むことができ、2つ以上の誘導コイルのうちの1つの中心軸は、他の1つの中心軸と平行ではない。制御装置がハウジング内に配置されてもよく、複数の電極及び2つ以上の誘導コイルに動作可能に結合されてもよい。制御装置は、2つ以上の電極を介して患者の心臓の電気的活動を検知し、2つ以上の電極を介してペーシングパルスを生成及び送達するように構成されてもよい。場合によっては、制御装置は、2つ以上の電極を介した伝導通信と、2つ以上の誘導コイルのうちの1つ以上を介した誘導通信とを使用して、1つ以上の遠隔装置と通信するように構成され得る。
【0005】
上記実施形態のいずれかに代えて又はそれに加えて、制御装置は、誘導通信用に2つ以上の誘導コイルのうちの特定の1つを選択し、選択された1つの誘導コイルを介した誘導通信を使用し、かつ誘導通信のために2つ以上の誘導コイルのうちから選択されなかったものを使用しないで、1つ以上の遠隔装置と通信するように構成され得る。
【0006】
上記実施形態のいずれかに代えて又はそれに加えて、制御装置は、誘導通信用に2つ以上の誘導コイルを選択し、選択された2つ以上の誘導コイルを介した誘導通信を使用して1つ以上の遠隔装置と通信するように構成され得る。
【0007】
上記の実施形態のいずれかに代えて又はそれに加えて、2つ以上の誘導コイルのうちの少なくとも1つがハウジング内に配置されてもよい。
上記の実施形態のいずれかに代えて又はそれに加えて、制御装置は、電力を節約するために誘導通信を無効にし、伝導通信を使用して1つ以上の遠隔に配置された装置と通信するように構成され得る。制御装置は、所定の状況を検出し、所定の状況の検出に応答して、誘導通信を有効にし、誘導通信を使用して1つ以上の遠隔に配置された装置と通信するように構成され得る。
【0008】
上記の実施形態のうちのいずれかに代えて又はそれに加えて、制御装置はタイムクロックを含むことができ、所定の状況は所定の時刻を含み得る。
上記の実施形態のいずれかに代えて又はそれに加えて、LCPは、患者の姿勢を検出するための姿勢センサをさらに含み、所定の状況は、患者の所定の姿勢の検出を含み得る。
【0009】
上記の実施形態のうちのいずれかに代えて又はそれに加えて、所定の状況は、1つ以上の遠隔に配置された装置との伝導通信におけるエラーを含み得る。
上記の実施形態のいずれかに代えて又はそれに加えて、制御装置は、ユーザが伝導通信及び誘導通信を同時に無効にすることを防止するフェイルセーフを有するようにさらに構成され得る。
【0010】
別の例では、リードレス心臓ペースメーカ(LCP)は、患者の心臓の腔内から患者の心臓をペーシングするように構成される。LCPは、長さ寸法及び幅寸法を有する長尺のハウジングを含み、長さ寸法は幅寸法よりも長い。複数の電極を長尺のハウジングに対して固定することができ、複数の内部構成要素を長尺のハウジング内に配置することができる。複数の内部構成要素は、長尺のハウジング内に配置され、長尺のハウジングの長さ寸法の方向と平行な中央開口部の周りに延びる複数の巻線を含む誘導コイルを含み得る。複数の内部構成要素は、回路基板であって、複数の電極に動作可能に結合され、2つ以上の電極を介して患者の心臓の電気的活動を検知し、2つ以上の電極を介してペーシングパルスを生成及び送達するように構成された回路を含む回路基板を含み得る。場合によっては、回路は、2つ以上の電極を介した伝導通信を使用し、及び誘導コイルを介した誘導通信を使用して、1つ以上の遠隔に配置された装置と通信するようにさらに構成され得る。バッテリを長尺のハウジング内に配置してもよく、回路に動作可能に結合してもよい。LCPの1つ又は複数の内部構成要素の少なくとも一部は、誘導コイルの中央開口部の中に延在して少なくともその一部を占めることができる。
【0011】
上記の実施形態のいずれかに代えて又はそれに加えて、誘導コイルは、長尺のハウジングの長さ寸法に沿って延びる長さ、及びその長さに直交する幅を有し、誘導コイルの幅に対する長さの比は1未満である。
【0012】
上記の実施形態のいずれかに代えて又はそれに加えて、長尺のハウジング内の複数の内部構成要素は、バッテリの端子と回路基板の回路との間に延在するバッテリピンを含んでもよく、バッテリピンは誘導コイルの中央開口部の中に延在して少なくともその一部を占める。
【0013】
上記の実施形態のいずれかに代えて又はそれに加えて、長尺のハウジング内の複数の内部構成要素は、回路基板の回路と複数の電極のうちの1つとの間に延びるフィードスルーピンを含んでもよく、フィードスルーピンは誘導コイルの中央開口部の中に延在して少なくともその一部を占める。
【0014】
上記の実施形態のいずれかに代えて又はそれに加えて、LCPは、長尺のハウジング内に配置され、中央開口部の周りに延びる複数の巻線を含む第2の誘導コイルをさらに含んでもよく、第2の誘導コイルの中央開口部は長尺のハウジングの幅寸法の方向に延びる。
【0015】
上記の実施形態のいずれかに代えて又はそれに加えて、第2の誘導コイルの中央開口部は、回路基板と平行に又は回路基板に対して垂直に延びることができる。
上記の実施形態のいずれかに代えて又はそれに加えて、第2の誘導コイルは、長尺のハウジングの幅寸法の方向に延びる長さと、その長さに直交する幅とを有してもよく、誘導コイルの幅に対する長さの比は3よりも大きく、第2の誘導コイルは第2の誘導コイルの中央開口部にフェライトコアを含む。
【0016】
別の例では、リードレス心臓ペースメーカ(LCP)は、患者の心臓の腔内から患者の心臓をペーシングするように構成される。LCPは、長さ寸法及び幅寸法を有し、長さ寸法が幅寸法よりも長い長尺のハウジングと、長尺のハウジングに対して固定された複数の電極とを含むことができる。回路基板アセンブリは、フレキシブル相互接続を介して互いに動作可能に結合された2つ以上の積層回路基板を含み、2つ以上の積層回路基板の各々が長尺のハウジングの長さ寸法に直交するように長尺のハウジング内に配置され得る。回路基板アセンブリは、複数の電極に動作可能に結合された回路であって、2つ以上の電極を介して患者の心臓の電気的活動を検知し、2つ以上の電極を介してペーシングパルスを生成及び送達するように構成された回路を含み得る。誘導コイルは、誘導コイルが複数の回路基板のうちの第1の回路基板と第2の回路基板との間に延びるように長尺のハウジング内に配置されてもよい。回路は、2つ以上の電極を介した伝導通信及び誘導コイルを介した誘導通信を使用して、1つ以上の遠隔に配置された装置と通信するように構成されてもよい。
【0017】
上記の実施形態のいずれかに代えて又はそれに加えて、LCPは、第2の誘導コイルが複数の回路基板のうちの2つの複数の回路基板の間に延びるように長尺のハウジング内に配置された第2の誘導コイルをさらに含み得る。
【0018】
上記の実施形態のいずれかに代えて又はそれに加えて、LCPは、長尺のハウジング内に配置され、誘導コイルに直交して配置されている第2の誘導コイルをさらに含むことができる。
【0019】
上記の実施形態のいずれかに代えて又はそれに加えて、LCPは、長尺のハウジング内に配置され、誘導コイルと第2の誘導コイルの両方に直交して配置されている第3の誘導コイルをさらに含み得る。
【0020】
いくつかの例示的な実施形態の上記概要は、個々の開示された実施形態や本開示のあらゆる実施を説明することを意図していない。以下の図面及び詳細な説明は、これらの実施形態のいくつかをより具体的に例示するものである。
【0021】
本開示は、添付の図面と関連して以下の詳細な説明を考慮することによってより完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示の一例による例示的システムの非常に概略的な図である。
図2】本開示の一例による例示的なリードレス心臓ペースメーカ(LCP)の概略ブロック図である。
図3】本開示の一例による例示的なリードレス心臓ペースメーカ(LCP)の概略ブロック図である。
図4図3のLCPの一部の概略図である。
図5A図1図3のLCPで使用可能な誘導コイルの側面図である。
図5B図5Aの誘導コイルの断面図である。
図6】本開示の一例による例示的なリードレス心臓ペースメーカ(LCP)の概略ブロック図である。
図7A図1図3のLCPで使用可能な誘導コイルの側面図である。
図7B図7Bの誘導コイルの断面図である。
図8】本開示の一例による例示的なLCPの概略ブロック図である。
図9図8のLCPと併せて使用することができる他の例示的な医療装置の概略ブロック図である。
図10】本開示の一例による誘導コイルを組み込んだ例示的な電気回路の例示的な図である。
図11】本開示の一例による誘導コイルを組み込んだ例示的な電気回路の例示的な図である。
図12】本開示の一例による誘導コイルを組み込んだ例示的な電気回路の例示的な図である。
図13】本開示の一例による誘導コイルを組み込んだ例示的な電気回路の例示的な図である。
図14】本開示の一例による、1つ又は複数の誘導コイルを含む例示的な医療装置の概略図である。
図15】互いに通信する複数のLCP及び/又は他の装置を含む例示的な医療システムの概略図である。
図16】本開示の一例による、LCP及び他の医療装置を含むシステムの概略図である。
図17】例示的な植込み型リードレス心臓装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は様々な変更形態及び代替形態に適しており、その詳細は例として図面に示されており、詳細に説明される。しかしながら、本開示を記載された特定の実施形態に限定することを意図するものではないことが理解されるべきである。反対に、本開示の趣旨及び範囲内に含まれる全ての変更形態、等価形態、及び代替形態を包含することが意図されている。
【0024】
以下の定義された用語に関して、異なる定義が特許請求の範囲又は本明細書の他の場所に与えられていない限り、これらの定義が適用されるものとする。
本明細書において全ての数値は、明示的に指定されているか否かにかかわらず、用語「約」によって修飾されていると見なされる。「約」という用語は、一般に、当業者にとって列挙された値と等価であると考えられる(すなわち、同じ機能又は結果を有する)数の範囲を指す。多くの場合、用語「約」は最も近い有効数字に丸められる数字を含み得る。
【0025】
端点による数値範囲の列挙は、その範囲内の全ての数を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「1つ」及び「その」、「前記」は、その内容が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されているように、「又は」という用語は、その内容が明らかにそうでないことを指示しない限り、一般に「及び/又は」を含む意味で使用される。
【0026】
本明細書における「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「他の実施形態」などへの言及は、説明された実施形態が1つ又は複数の特定の特徴、構造、及び/又は特性を含み得ることを示す。しかしながら、そのような列挙は、必ずしも全ての実施形態がその特定の特徴、構造、及び/又は特性を含むことを意味しない。さらに、特定の特徴、構造、及び/又は特性が一実施形態に関連して説明されるとき、そのような特徴、構造、及び/又は特徴はまた、明らかにそうでないことが述べられていない限り、明示的に記載されているか否かにかかわらず、他の実施形態にも関連して用いられ得ると理解されるべきである。
【0027】
以下の説明は図面を参照しながら読まれるべきであり、図面において、異なる図面における同様の構造には同じ番号が付されている。図面は必ずしも一定の縮尺で描かれておらず、例示的な実施形態を示しており、本開示の範囲を限定することを意図していない。本開示は任意の適切な植込み型医療装置(IMD)に適用可能であるが、以下の説明は特定の例としてペースメーカ、より具体的にはリードレス心臓ペースメーカ(LCP)を使用する。
【0028】
図1は、心臓Hを検知及び/又はペーシングするために使用され得る例示的なシステム10を示す概略図である。場合によっては、システム10は心臓Hにショックを与えるように構成されてもよい。心臓Hは右心房RA及び右心室RVを含む。心臓Hはまた、左心房LA及び左心室LVを含む。場合によっては、システム10は、心臓Hに抗不整脈治療を提供する医療装置を含み得る。
【0029】
場合によっては、システム10は、第1の医療装置12及び第2の医療装置14を含み得る。第1の医療装置12は、リードレス心臓ペースメーカ(LCP)、植込み型除細動器(ICD)、植込み型神経刺激装置(NS)、植込み型モニタ(IM)、外部プログラマ、及び/又は他の任意の適切な医療装置などの任意の適切な医療装置とすることができる。同様に、第2の医療装置14は、リードレス心臓ペースメーカ(LCP)、植込み型除細動器(ICD)、植込み型神経刺激装置(NS)、植込み型モニタ(IM)、外部プログラマ、及び/又は他の任意の適切な医療装置などの任意の適切な医療装置とすることができる。
【0030】
いくつかの例では、第1の医療装置12は、患者の体内のうち心臓Hの近く、あるいは心臓Hの中にも植え込むことができる。いくつかの例では、第2の医療装置14は患者の体内であるが心臓Hの外部の位置に植え込むことができる。例えば、場合によっては、第2の医療装置14を患者の胸部内の皮下位置に植え込むことができる。場合によっては、システム10は遠隔装置16を含んでもよい。遠隔装置16は、例えば、モニタ又はプログラマとすることができる。
【0031】
場合によっては、第1の医療装置12は、心臓Hの電気的活動を検知し、心臓Hに治療用電気パルスを提供するように構成されてもよい。場合によっては、第2の医療装置14は、心臓Hの電気的活動を検知し、心臓Hに治療用電気パルスを提供するように構成されてもよい。場合によっては、第1の医療装置12は、リードレス心臓ペースメーカ(LCP)であり得、心臓Hにペーシングパルスを提供するように構成され得る。第2の医療装置14は第2のLCPであり得る。場合によっては、第2の医療装置14は、皮下植込み型除細動器(SICD)とすることができ、心臓Hにショックパルスを提供するように構成することができる。
【0032】
場合によっては、第1の医療装置12を植え込む前に第2の医療装置14が植え込まれる場合、第2の医療装置14は、例えばQRS幅、形態、HRV、加速度センサ信号などを監視することによって、第1の医療装置12の最適配置を導くために使用され得る。場合によっては、第2の医療装置14は、第1の医療装置12の固定又は係留解除の前に、提案された第1の医療装置12の位置のフィードバックを提供してもよい。例えば、そのような最適部位を得るために、QRS幅、HRV及び/又は特定の形態学的パラメータを最小化することが、臨床医にとって考えられる目標となるであろう。場合によっては、第2の医療装置14はまた、インピーダンス及び/又は心音を監視して、肥大又は拡張型心筋症によって示されるような心筋機能の改善を検出することができる可能性がある。
【0033】
場合によっては、第1の医療装置12と第2の医療装置14とは同時に植え込まれてもよい。場合によっては、特定の患者の心臓の欠陥に応じて、患者が心臓再同期療法を受けるための兆候を示し、かつ/又は心臓Hをペーシングすることが必要になった場合には、第1の医療装置12及び第2の医療装置14のうちの一方が最初に植え込まれ、第1の医療装置12及び第2の医療装置14のうちの他方が後日植え込まれ得る。場合によっては、心臓Hを検知しペーシングするために、1つ又は複数のLCPを最初に植え込むことが考えられる。可能な除細動の必要性が明らかになったときに、後からSICDを植え込むことができる。
【0034】
植え込みの順序にかかわらず、第1の医療装置12及び第2の医療装置14は、伝導通信、誘導通信、音響通信、RF通信、光通信、及び/又は任意の他の適切な通信方式などの任意の所望の通信方式を使用して、遠隔装置16と同様に互いに通信し得ることが理解されよう。場合によっては、第1の医療装置12及び/又は第2の医療装置14などの医療装置は、2つ以上の異なる通信モードを使用して通信するように構成され得る。当然のことながら、異なる通信モードは、異なる電力要求、有効通信範囲などを有し得る。場合によっては、医療装置は、例えば、第1の通信モードが有効であるときに比較的低い電力要求を有する第1の通信モードで通信し、第1の通信モードが有効性を失うときに比較的高い電力要求を有する第2の通信モードに切り替えてもよい。
【0035】
場合によっては、医療装置は、別の装置の識別情報及び/又は位置に基づいて特定の通信モードを選択することができる。例えば、第1の医療装置12及び第2の医療装置14が両方とも患者に植え込まれる場合、第1の医療装置12及び第2の医療装置14は、第1の医療装置12と第2の医療装置14との間に機能する通信ベクトルがあることを前提として、伝導通信を介して互いに通信し得る。第1の医療装置12(又は第2の医療装置14)が遠隔装置16と通信しようとしている場合など、場合によっては、伝導通信の使用を可能にするには、患者に配置された2つ以上の皮膚電極と(例えば、皮膚パッチ電極を介して)遠隔装置16が動作可能に結合されることが必要となり得る。あるいは、第1の医療装置12(又は第2の医療装置14)は伝導通信を終了させ、誘導通信を介して遠隔装置16との通信を試みることができ、それは皮膚電極の使用を必要としない。
【0036】
図2は、患者の心臓Hの腔内に配置可能であり、患者の心臓のペーシングを行うように構成され得る、例示的なリードレス心臓ペースメーカ(LCP)20の概略ブロック図である。例示的なLCP20は、ハウジング22と、ハウジング22に対して固定された複数の電極とを含むことができる。図示されたように、LCP20は第1の電極24及び第2の電極26を含むが、場合によってはLCP20は追加の電極も含むことができる。場合によっては、LCP20は、1つ、2つ、又はそれ以上の誘導コイルを含み得る。場合によっては、必要に応じて、LCP20はRFアンテナを含むことができる。
【0037】
図示されたように、LCP20は第1の誘導コイル28及び第2の誘導コイル30を含み、それらの各々は対応する中心軸の周りに延びる複数の巻線(図4B及び5Bに示されるような)を含む。第1の誘導コイル28は中心軸28aを有するものとして示され、第2の誘導コイル30は中心軸30aを有するものとして示されている。場合によっては、第1の誘導コイル28の中心軸28aは、第2の誘導コイル30の中心軸30aと平行ではない。場合によっては、示されているように、中心軸28aは中心軸30aと直交していてもよい。場合によっては、第1の誘導コイル28及び第2の誘導コイル30のうちの少なくとも一方をハウジング22内に配置することができる。場合によっては、第1の誘導コイル28又は第2の誘導コイル30のうちの少なくとも一方、又は任意選択で追加のコイルは、LCP20のハウジングの湾曲した内面の周りで湾曲している可撓性基板上に配置された巻線を含み得る。
【0038】
場合によっては、LCP20は、第3の誘導コイル(図示略)を含み得る。第3の誘導コイルが含まれる場合、それは第1の誘導コイル28及び第2の誘導コイル30の一方と直交し、第1の誘導コイル28及び第2の誘導コイル30の他方と平行であり得る。場合によっては、第3の誘導コイルが存在する場合、それは第1の誘導コイル28及び第2の誘導コイル30の両方と直交していてもよい。例えば、1つの誘導コイルはx軸と平行な中心軸を有し、別の誘導コイルはy軸と平行な中心軸を有し、第3の誘導コイルはz軸と平行な中心軸を有する。これは単なる例である。
【0039】
LCP20は、ハウジング22内に配置された制御装置32であって、限定するものではないが第1の電極24及び第2の電極26などの複数の電極、及び限定するものではないが第1の誘導コイル28及び第2の誘導コイル30などの2つ以上の誘導コイルに動作可能に結合され得る制御装置32を含み得る。電源34は、制御装置32に動作可能に結合されてもよく、制御装置32の動作ならびにLCP20の他の機能のために電力を提供してもよい。場合によっては、制御装置32は、第1の電極24及び第2の電極26(及び任意選択で他の電極)を介して患者の心臓Hの電気的活動を検知し、第1の電極24及び第2の電極26を介してペーシングパルスを生成及び送達するように構成され得る。
【0040】
場合によっては、制御装置32は、第1の電極24及び第2の電極26を介した伝導通信を使用して、及び、第1の誘導コイル28及び第2の誘導コイル30の少なくとも一方を介した誘導通信を使用して、1つ以上の遠隔に配置された装置(限定するものではないが、図1に示す遠隔装置16など)と通信するように構成される。場合によっては、制御装置32は、誘導通信のために2つ以上の誘導コイル(第1の誘導コイル28又は第2の誘導コイル30など)のうちの特定の1つを選択し、2つ以上の誘導コイルのうちの選択された1つを介した誘導通信を使用するとともに、誘導通信のために2つ以上の誘導コイルのうちから選択されなかったものを使用せずに、1つ以上の遠隔に配置された装置と通信するように構成され得る。場合によっては、制御装置32は、誘導通信のために2つ以上の誘導コイルを選択し、選択された2つ以上の誘導コイルを介した誘導通信を使用して、1つ以上の遠隔に配置された装置と通信するように構成され得る。
【0041】
場合によっては、制御装置32は、電力を節約するために誘導通信を無効にし、代わりに伝導通信を使用して(遠隔装置16などの)1つ以上の遠隔に配置された装置と通信するように構成され得る。所定の状況が検出された場合、制御装置32はそれに応答して誘導通信を有効にし、実行可能な通信経路を確保するのを助けるために、誘導通信を使用して1つ以上の遠隔に配置された装置と通信し得る。場合によっては、制御装置32はタイムクロックの機能を含むことができ、所定の状況は、例えば、所定の時刻とすることができる。例えば、遠隔装置16はベッドサイドモニタとすることができ、所定の時刻を患者の就寝時刻に対応させることができる。患者が就寝中であると予想される時間(例えば、真夜中)に、LCP20が遠隔装置16と通信することができるように、誘導通信を起動することができる。場合によっては、LCP20は、姿勢センサなどであるがこれに限定されないセンサ36を含むことができる。そのように提供される場合、所定の状況は患者の所定の姿勢であってもよい。例えば、患者が寝ていることをセンサ36が検出した場合、制御装置32は、ベッドサイドモニタと通信するために誘導通信を起動することができる。場合によっては、制御装置32に誘導通信を起動させる所定の状況は、1つ以上の遠隔に配置された装置との伝導通信中に検出されたエラーに対応し得る。これには、一時的な通信エラー、又は長期にわたる通信断が含まれ得る。これはまた、実施された通信が一部の情報を通信することができるが、データの許容できない損失を伴うことを含み得る。これらは単なる例である。
【0042】
場合によっては、制御装置32は、ユーザが伝導通信と誘導通信とを同時に無効にすることを防止するフェイルセーフを有するように構成されてもよい。これは、ユーザが誤って又は無意識のうちに、伝導通信を停止するだけでなく誘導通信も停止するように制御装置32に指示してしまう(そうなると、LCP20と通信するための有効な手段がユーザに残されなくなってしまう)状況を防ぐのに役立ち得る。
【0043】
場合によっては、制御装置32は、第1の誘導コイル28及び第2の誘導コイル30(又は別のコイル)のうちの1つ又は複数を介して別の装置から近傍界エネルギを受け取り、受け取った近傍界エネルギを用いて電源34を充電するように構成されてもよい。制御装置32は近傍界エネルギを受け取って、対応する誘導コイルが通信に使用されていないときに電源43を再充電することができる。
【0044】
図3は、患者の心臓Hの腔内に配置可能であり、患者の心臓をペーシングするように構成され得る、例示的なリードレス心臓ペースメーカ(LCP)40の概略ブロック図である。LCP40は、Lで示される長さ寸法及びWで示される幅寸法を有する長尺のハウジング42を含むことができる。場合によっては、長さ寸法Lは幅寸法Wより長くてもよい。長尺のハウジング42に対し複数の電極が固定され得る。図示されるように、LCP40は第1の電極44及び第2の電極46を含むが、場合によってはLCP40は追加の電極も含むことができる。場合によっては、LCP40は、長尺のハウジング42内に複数の内部構成要素48を含み得る。
【0045】
場合によっては、複数の内部構成要素48は、長尺のハウジング42内に配置された誘導コイル50であって、(図5A及び図6Aに示されるように)中心軸50aに対応しかつ長尺のハウジング42の長さ寸法Lの方向と平行な中央開口部50bの周りに延びる複数の巻線を含む誘導コイル50を含み得る。場合によっては、複数の内部構成要素48は、第1の電極44及び第2の電極46(及び任意選択で1つ又は複数の追加の電極)などの複数の電極に動作可能に結合された回路54であって、電極44、46のうちの2つ以上を介して患者の心臓Hの電気的活動を検知し、電極44、46のうちの2つ以上を介してペーシングパルスを生成及び送達するように構成された回路54を含む回路基板52を含み得る。場合によっては、LCP40は、中心軸50aに対応しかつ長尺のハウジング42の長さ寸法Lと平行な中央開口部50bの周りに延びる複数の巻線を有する第1の誘導コイル50をさらに含み得る。場合によっては、LCP40は、中心軸56aに対応しかつ長尺のハウジング42の長さ寸法Lと直交する中央開口部56bの周りに延びる複数の巻線を有する第2の誘導コイル56をさらに含み得る。場合によっては、回路54は、2つ以上の電極を介した伝導通信、及び/又は、第1の誘導コイル50及び/又は第2の誘導コイル56を介した誘導通信を使用して、1つ以上の遠隔に配置された装置(図1の遠隔装置16など)と通信するように構成され得る。バッテリ58は、長尺のハウジング42内に配置されてもよく、回路54に動作可能に結合されてもよい。
【0046】
場合によっては、1つ又は複数の内部構成要素48の少なくとも一部は、誘導コイル50の中央開口部50b及び/又は誘導コイル56の中央開口部56bの中に少なくとも部分的に延在し、それらの少なくとも一部を占めてもよい。これは、誘導コイル62の中央開口部60内に延びる複数の内部構成要素48の一部を示す図4に概略的に見ることができる。図示されるように、誘導コイル62は、(図示の向きで)垂直に延びる複数の巻線64を含むことが分かる。場合によっては、1つ又は複数の内部構成要素48が少なくとも部分的に中央開口部60内に延びることがある。場合によっては、回路基板52(図3)の全部又は一部、バッテリ58の一部、端子ピン又はコネクタ、加速度センサ、ジャイロスコープ、圧力センサ、及び/又は温度センサなどのセンサ、及び/又は他の任意の適切な内部構成要素が、誘導コイル62の中央開口部60内に延びてもよい。場合によっては、1つ又は複数の内部構成要素が中央開口部60を完全に通り抜けて延在してもよい。これらは単なる例である。
【0047】
本明細書で参照される誘導コイルは任意の適切な形態をとり得る。図5Aは例示的な誘導コイル70の概略図であり、図5Bは誘導コイル70の断面図である。見て分かるように、誘導コイル70は、Lで示される長さ及びWで示される幅を有するものと見なすことができる。場合によっては、幅Wは、長さを測定するのに使用される方向と直交する方向に測定されるものと見なすことができる。長さLは誘導コイル70の巻線に対して垂直又は実質的に垂直に延びるものとすることができ、幅Wは誘導コイル70の巻線に対して平行又は実質的に平行に延びるものとすることができる。
【0048】
例示の誘導コイル70は、誘導コイル70の巻線を通って延びる長手方向軸72を有するものと見なすことができる。長さLは、例えば、長手方向軸72と平行な方向に測定することができる。場合によっては、誘導コイル70は、L/Wとして示される長さ対幅の比が1より大きくてもよく、すなわち、誘導コイル70は、幅方向Wよりも長さ方向Lにおいて長い。場合によっては、誘導コイル70は2以上のL/W比を有することができる。場合によっては、誘導コイル70は3以上のL/W比を有することができる。場合によっては、誘導コイル70は、4より大きい、5より大きい、又はそれよりも大きいL/W比を有することができる。
【0049】
場合によっては、誘導コイル70はコア74を有することができる。場合によっては、コア74は、複数の巻線76を巻きつける構造を単に提供してもよく、場合によっては空隙(例えば空気)を表すこともある。場合によっては、特に誘導コイル70が3以上のL/W比を有する場合、コア74はフェライトなどの磁気的に活性な材料のコアであり得る。フェライトなどの磁気的に活性な材料の使用は、誘導コイル70に性能上の利点を提供し得る。場合によっては、磁気的に活性なコアは、中実でも中空でも、誘導コイル70の巻線76を通る磁束を集中させるのを助けることができる。誘導コイル70の全体寸法は、コア74の寸法及び巻線76の数と相関することが理解されよう。誘導コイル70によって生成される電圧は、誘導コイル70を通過する磁界磁束と巻線76の数とに比例し得る。誘導コイル70の全体寸法は、誘導コイル70が使用される医療装置の寸法、ならびに誘導コイル70を医療装置内の他の構成要素と共に収めることができるという要件によって制限され得る。
【0050】
誘導コイルは、信号が全く得られないか事実上全く得られないことがある空間的及び/又は時間的ゼロ点を有し得ることが理解されよう。場合によっては、これらのゼロ点は、受け取った磁界に対する誘導コイルの配向に少なくとも部分的に相関する。したがって、場合によっては、互いに対し角度をなして配置された2つ以上の誘導コイルを使用することが有利となり得る。図6は、図5A及び図5Bに示される誘導コイル70などの1つ以上の誘導コイルを含み得るリードレス心臓ペースメーカ(LCP)80の概略図である。例示のLCP80は、長さL及び幅Wを有するハウジング82を含み、長さLは長手方向軸84に平行に測定され、幅Wは長手方向軸84に直交して測定される。図示のように、LCP80は、第1の誘導コイル86、第2の誘導コイル88、及び第3の誘導コイル90を含む。ここで、第1、第2及び第3は単に異なるコイルを示すために使用され、個々のコイルの相対的重要性、それらが使用され得る順序などを含意することを意図しない。
【0051】
第1の誘導コイル86は中心軸86aを有するように示され、第2の誘導コイル88は中心軸88aを有するように示され、第3の誘導コイル90は、ここでは点として示される中心軸90a(紙面の内外に延びる)を有するように示されている。場合によっては、第1の誘導コイル86は、その中心軸86aがy方向と平行な状態でハウジング82内に配置されてもよい。第2の誘導コイル88は、その中心軸88aがx方向と平行な状態でハウジング82内に配置されてもよい。第3の誘導コイル90は、その中心軸90aがz方向と平行な状態でハウジング82内に配置されてもよい。場合によっては、誘導コイル86、88、及び90の全てが互いに直交していなくてもよく、互いに対して90度未満の鋭角で配置されてもよい。場合によっては、第1の誘導コイル86は、その中心軸86aがハウジング82の幅Wと平行になるようにハウジング82内に配置されていると見なすことができる。第2の誘導コイル88は、例えば、その中心軸88aがハウジング82の長さLと平行になるようにハウジング82内に配置されていると見なすことができる。場合によっては、LCP80は、3つの誘導コイル86、88、90の全てを含まなくてもよい。
【0052】
図7Aは誘導コイル92の他の例の概略図であり、図7Bは誘導コイル92の断面図である。見て分かるように、誘導コイル92は、Lで示される長さ及びWで示される幅を有すると見なすことができる。場合によっては、幅Wは、長さを測定するのに使用される方向と直交する方向に測定されると見なすことができる。長さLは誘導コイル70の巻線に対して垂直又はほぼ垂直に延びることができ、幅Wは誘導コイル70の巻線に対して平行又はほぼ平行に延びることができる。
【0053】
場合によっては、誘導コイル92は、L/Wとして示される長さ対幅の比が1以下であってもよく、すなわち、誘導コイル70は、長さ方向Lよりも幅方向Wにおいて長い。場合によっては、誘導コイル92は、0.75以下のL/W比を有してもよい。いくつかの例では、誘導コイル92は、0.5以下のL/W比を有してもよい。場合によっては、誘導コイル92は、0.25未満のL/W比を有してもよい。
【0054】
場合によっては、誘導コイル92は支持構造96を有してもよい(図7B参照)。場合によっては、支持構造96は、複数の巻線98を巻きつけるための構造を単に提供するものでもよく、場合によっては、任意の適切な材料から形成された中空管とすることができる。誘導コイル92の全体寸法は、支持構造96の寸法及び巻線98の数と相関することが理解されよう。誘導コイル92によって生成される電圧は、誘導コイル92を通過する磁場磁束と巻線98の数とに比例し得る。誘導コイル92の全体寸法は、誘導コイル92が使用される医療装置の寸法、ならびに誘導コイル92を医療装置内の他の構成要素と共に収めることができるという要件によって制限され得る。図8は、誘導コイル70及び92などの誘導コイルを使用することができる例示的な医療装置に関するさらなる詳細を提供する。
【0055】
図8は、患者に植え込むことができ、抗頻脈ペーシング(ATP)療法、心臓再同期療法(CRT)、徐脈などの適切な療法を心臓に送達するように動作させることができる例示的なリードレス心臓ペースメーカ(LCP)を示す。図8に示されるLCPは、複数の通信モード間で切り替えを行うための本明細書に記載された特徴を含み得る。図8に見られるように、LCP100は、全ての構成要素がハウジング120内に収容されるか、又は直接ハウジング120上に収容されるコンパクトな装置であり得る。場合によっては、LCP100はLCP20(図2)、LCP40(図3)、又はLCP80(図6)の一例と見なすことができる。図8に示す例では、LCP100は、通信モジュール102と、パルス発生器モジュール104と、電気的検知モジュール106と、機械的検知モジュール108と、処理モジュール110と、バッテリ112と、電極配列114とを含み得る。用途に応じて、LCP100はこれよりも多い又は少ないモジュールを含むことができる。
【0056】
通信モジュール102は、LCP100の外部に配置されているセンサなどの装置、SICDなどの他の医療装置などと通信するように構成され得る。そのような装置は、患者の体の外部又は内部のいずれに配置されてもよい。場所に関係なく、外部装置(すなわち、LCP100の外部にあるが必ずしも患者の体の外部にある必要はない)は、1つ以上の所望の機能を達成するために通信モジュール102を介してLCP100と通信することができる。例えば、LCP100は、検知された電気信号、データ、命令、メッセージ、R波検出マーカーなどの情報を、通信モジュール102を介して外部医療装置(例えば、SICD及び/又はプログラマ)に伝達することができる。外部医療装置は、伝達された信号、データ、命令、メッセージ、R波検出マーカーなどを使用して、不整脈の発生の判定、電気刺激療法の提供、受信データの格納、及び/又はその他の適切な機能の実行などの様々な機能を実行し得る。LCP100は、通信モジュール102を介して外部医療装置から信号、データ、命令、及び/又はメッセージなどの情報をさらに受信することができ、LCP100は受信した信号、データ、命令、及び/又はメッセージを使用して、例えば、不整脈の発生の判定、電気刺激療法の提供、受信データの格納、及び/又はその他の適切な機能の実行などの様々な機能を実行することができる。通信モジュール102は、外部装置と通信するための1つ以上のモードを用いるように構成され得る。例えば、通信モジュール102は、無線周波数(RF)信号、誘導結合、光信号、音響信号、伝導通信信号、及び/又は通信に適した他の任意の信号を介して通信することができる。
【0057】
説明したように、場合によっては、通信モジュール102は、2つ以上の異なる通信モードを使用して、いくつかの場合にはシリアルで、他の場合にはパラレルで通信するように構成され得る。場合によっては、例えば、通信モジュール102は、LCP100の電極114及び/又は114’を使用して通信信号を送信及び/又は受信することにより、伝導通信を使用して通信するように構成され得る。場合によっては、通信モジュール102は、LCP100の近傍及び/又は内部に配置され得る1つ又は複数の誘導コイルを介して通信信号を送信及び/又は受信することにより、誘導通信を使用して通信するように構成され得る。場合によっては、通信モジュール102は、LCP100の近傍及び/又は内部に配置され得る1つ又は複数のRFアンテナを介して通信信号を送信及び/又は受信することにより、無線周波数(RF)通信を使用して通信するように構成され得る。場合によっては、通信モジュール102は、LCP100の近傍及び/又は内部に配置され得る1つ又は複数の光トランシーバを介して通信信号を送信及び/又は受信することにより、光通信を使用して通信するように構成され得る。場合によっては、通信モジュール102は、LCP100の近傍及び/又は内部に配置され得る1つ又は複数の音響トランシーバを介して通信信号を送信及び/又は受信することにより、音響通信を使用して通信するように構成され得る。これらは単なる例である。
【0058】
場合によっては、通信モジュール102は、命令されたとき、ある特定の時刻に、ある姿勢が検出されたとき、動作中の通信モードの信号対雑音比(SNR)が閾値レベルを下回ったとき、動作中の通信モードの通信エラーが閾値レベルを上回ったとき、呼吸周期の特定の期間中、心臓周期の特定の期間中、特定の検出活動レベルの間、及び/又は他の適切な時点又は他の適切な検出された状況で、通信モードを切り替えるように構成され得る。
【0059】
図8に示す例では、パルス発生器モジュール104は電極114に電気的に接続することができる。いくつかの例では、LCP100はさらに電極114’を含み得る。そのような例では、パルス発生器104はまた電極114’に電気的に接続されてもよい。パルス発生器モジュール104は、電気刺激信号を発生するように構成されてもよい。例えば、パルス発生器モジュール104は、LCP100内のバッテリ112に蓄積されたエネルギを使用することによって電気刺激信号を生成して送出し、生成した電気刺激信号を電極114及び/又は114’を介して送出することができる。それに代えて、又はそれに加えて、パルス発生器104は1つ以上のコンデンサを含むことができ、パルス発生器104はバッテリ112からエネルギを引き出すことによって、その1つ以上のコンデンサを充電することができる。次いで、パルス発生器104は、その1つ以上のコンデンサのエネルギを使用して、発生した電気刺激信号を電極114及び/又は114’を介して送達することができる。少なくともいくつかの例では、LCP100のパルス発生器104は、パルス発生器104が電気刺激療法を送達する電極114/114’(及び/又は他の電極)を選択するために、電極114及び/又は114’のうちの1つ以上をパルス発生器104に選択的に接続するスイッチング回路を含み得る。パルス発生器モジュール104は、様々な異なる刺激療法のうちの1つ又は複数を提供するために、特定の特徴又は特定のシーケンスを有する電気刺激信号を生成し送達することができる。例えば、パルス発生器モジュール104は、徐脈、頻脈、心臓同期、徐脈性不整脈、頻脈性不整脈、細動性不整脈、心臓同期不整脈に対処するための電気刺激療法を提供するため、及び/又は任意の他の適切な電気刺激療法をもたらすための電気刺激信号を生成するように構成され得る。いくつかのより一般的な電気刺激療法としては、抗頻脈ペーシング(ATP)療法、心臓再同期療法(CRT)、及びカルディオバージョン/除細動療法が挙げられる。場合によっては、パルス発生器104は制御可能なパルスエネルギを提供することができる。いくつかの場合では、パルス発生器104は、制御装置にパルス電圧、パルス幅、パルス形状又は形態、及び/又は任意の他の適切なパルス特性を制御させてもよい。
【0060】
いくつかの例では、LCP100は、電気的検知モジュール106を、そしていくつかの場合では、機械的検知モジュール108を含み得る。電気的検知モジュール106は、心臓の電気的活動を検知するように構成され得る。例えば、電気的検知モジュール106は電極114/114’に接続されてもよく、電気的検知モジュール106は電極114/114’を介して伝導される心臓電気信号を受信するように構成されてもよい。心臓電気信号は、LCP100が植え込まれている腔からの局所情報を表し得る。例えば、LCP100が心臓の心室内(例えば、RV、LV)に植え込まれる場合、電極114/114’を通じてLCP100によって検知された心臓電気信号は、心室心臓電気信号を表すことができる。場合によっては、LCP100は、心房からのP波などの他の腔(例えば遠方界)からの心臓電気信号を検出するように構成されてもよい。
【0061】
機械的検知モジュール108は、加速度センサ、圧力センサ、心音センサ、血中酸素センサ、化学センサ、温度センサ、流量センサ、及び/又は、患者の1つ以上の機械的/化学的パラメータを測定するように構成された任意の他の適切なセンサなどの1つ又は複数のセンサを含み得る。電気的検知モジュール106と機械的検知モジュール108の両方は、検知された機械的パラメータを表す信号を提供することができる処理モジュール110に接続することができる。図8では別々の検知モジュールとして説明されているが、場合によっては、電気的検知モジュール206及び機械的検知モジュール208は、所望に応じて単一の検知モジュールに組み合わされてもよい。
【0062】
電極114/114’は、ハウジング120に対して固定されてもよいが、LCP100を取り囲む組織及び/又は血液に曝され得る。いくつかの場合において、電極114は、一般に、LCP100のいずれかの端部に配置され得、そしてモジュール102、104、106、108、及び110のうちの1つ以上と電気的に通信し得る。いくつかの例では、電極114/114’はハウジング120によって支持されてもよいが、電極114/114’がハウジング120に対して直接固定されないように短い接続ワイヤを介してハウジング120に接続されてもよい。LCP100が1つ以上の電極114’を含む例では、電極114’をLCP100の側面に配置することができ、それによって、LCP100が心臓の電気的活動を検知し、電気刺激を送達し、及び/又は外部医療装置と通信することができる電極の数を増やすことができる。電極114/114’は、人体内への植え込みに対して安全であることが知られている種々の金属や合金などの1つ又は複数の生体適合性導電材料から構成することができる。場合によっては、LCP100に接続された電極114/114’は、隣接する電極、ハウジング120、及び/又はLCP100の他の部分から電極114/114’を電気的に絶縁する絶縁部分を有することができる。場合によっては、1つ又は複数の電極114/114’を、ハウジング120から離れる方向に延びるテール(図示略)上に設けることができる。
【0063】
処理モジュール110は、LCP100の動作を制御するように構成することができる。例えば、処理モジュール110は、電気的検知モジュール106及び/又は機械的検知モジュール108から電気信号を受信するように構成されてもよい。受信した信号に基づいて、処理モジュール110は、例えば、心臓Hの動作における異常を判定することができる。判定された任意の異常に基づいて、処理モジュール110は、パルス発生器モジュール104を制御して、判定された異常を治療するための1つ又は複数の治療法に従って電気刺激を生成し送達することができる。処理モジュール110はさらに通信モジュール102から情報を受信することができる。いくつかの例では、処理モジュール110は、そのような受信した情報を使用して、異常が発生しているか否かを判断すること、異常の種類を判断すること、及び/又はその情報に応じて特定の動作を行うことを助ける。処理モジュール110は、通信モジュール102をさらに制御して、他の装置との間で情報を送受信することができる。
【0064】
いくつかの例では、処理モジュール110は、超大規模集積(VLSI)チップ及び/又は特定用途向け集積回路(ASIC)などの予めプログラムされたチップを含むことができる。そのような実施形態では、LCP100の動作を制御するために、チップに制御ロジックを予めプログラムすることができる。予めプログラムされたチップを使用することによって、処理モジュール110は他のプログラマブル回路(例えば汎用プログラマブルマイクロプロセッサ)よりも少ない電力を使用しながら、依然として基本機能を維持することができ、それによってLCP100のバッテリ寿命を延ばすことができる。他の例では、処理モジュール110はプログラマブルマイクロプロセッサを含み得る。そのようなプログラマブルマイクロプロセッサは、植え込み後でもユーザがLCP100の制御ロジックを調整することを可能にし、それによって予めプログラムされたASICを使用する場合よりもLCP100の柔軟性を高めることができる。いくつかの例では、処理モジュール110はメモリをさらに含むことができ、処理モジュール110はメモリに情報を記憶し、そこから情報を読み取ることができる。他の例では、LCP100は、処理モジュール110が別のメモリに対し情報を読み書きできるように、処理モジュール110と通信する別のメモリ(図示略)を含むことができる。
【0065】
バッテリ112は、その動作のためにLCP100に電力を供給することができる。いくつかの例では、バッテリ112は、非充電式リチウム系バッテリであり得る。他の例では、非充電式バッテリは、必要に応じて他の適切な材料から作られてもよい。LCP100は植込み型装置であるので、LCP100へのアクセスは植込み後に制限される場合がある。したがって、数日、数週間、数ヶ月、数年、さらには数十年といった治療期間にわたって治療を施すのに十分な電池容量を有することが望ましい。いくつかの例では、バッテリ112は充電式バッテリとすることができ、これはLCP100の使用可能寿命を延ばすのに役立ち得る。さらに他の例では、バッテリ112は、必要に応じて、スーパーキャパシタなどの他の種類の電源とすることができる。
【0066】
LCP100を患者の体内に植え込むために、操作者(例えば、医師、臨床医など)は、LCP100を患者の心臓組織に固定することができる。固定を容易にするために、LCP100は1つ以上のアンカー116を含み得る。アンカー116は、いくつかの固着機構又は固定機構のうちの任意の1つを含み得る。例えば、アンカー116は、1つ又は複数のピン、ステープル、糸、スクリュー、螺旋部、櫛歯部などを含み得る。いくつかの例では、図示されていないが、アンカー116は、その外面に、アンカー116の少なくとも部分的な長さに沿って延びることができるねじ山を含むことができる。ねじ山は、心臓組織とアンカーとの間に摩擦を与えて、心臓組織内にアンカー116を固定するのを助けることができる。他の例では、アンカー116は、周囲の心臓組織との係合を容易にするために、棘、スパイクなどの他の構造を含み得る。
【0067】
図9は、心臓の異常を検出及び/又は治療するためにLCP100(図8)と共に使用され得る別の又は第2の医療装置(MD)200の一例を示す。場合によっては、MD200は、LCP20(図2)、LCP40(図3)又はLCP80(図6)の一例と見なすことができる。図示の例では、MD200は、通信モジュール202、パルス発生器モジュール204、電気的検知モジュール206、機械的検知モジュール208、処理モジュール210、及びバッテリ218を含むことができる。これらのモジュールのそれぞれは、LCP100のモジュール102、104、106、108、及び110と同様であり得る。さらに、バッテリ218は、LCP100のバッテリ112と同様であり得る。しかしながら、いくつかの例では、MD200はハウジング220内により大きな容積を有してもよい。そのような例では、MD200は、より大きなバッテリ及び/又はLCP100の処理モジュール110よりも複雑な動作を処理できる、より大きな処理モジュール210を含むことができる。
【0068】
MD200は、図8に示すような別のリードレス装置であってもよいと考えられるが、場合によっては、MD200はリード212のようなリードを含んでもよい。リード212は、電極214とハウジング220内に配置された1つ又は複数のモジュールとの間で電気信号を伝達する電線を含むことができる。場合によっては、リード212は、MD200のハウジング220に接続され、そこから離れて延びることができる。いくつかの例では、リード212は患者の心臓上に、心臓内に、又は心臓に隣接して植え込まれ得る。リード212は、リード212上の様々な場所に、場合によってはハウジング220から様々な距離に配置された1つ又は複数の電極214を含むことができる。いくつかのリード212は単一の電極214のみを含み、他のリード212は複数の電極214を含み得る。一般に、電極214は、リード212が患者内に植え込まれたときに1つ又は複数の電極214が所望の機能を果たすように配置されるようにリード212上に配置される。場合によっては、1つ又は複数の電極214が患者の心臓組織と接触していてもよい。場合によっては、1つ又は複数の電極214は、皮下にかつ患者の心臓の外側に配置されてもよい。場合によっては、電極214は、内発的に生成された電気信号、例えば内発的な心臓の電気的活動を表す信号をリード212に伝達することができる。リード212は、受信した電気信号をMD200のモジュール202、204、206、及び208のうちの1つ又は複数に伝えることができる。場合によっては、MD200は電気刺激信号を生成してもよく、リード212は生成された電気刺激信号を電極214に伝達してもよい。電極214は続いて電気刺激信号を伝え、患者の心臓組織に電気刺激信号を(直接又は間接的に)送達してもよい。
【0069】
機械的検知モジュール208は、機械的検知モジュール108と同様に、加速度センサ、音響センサ、血圧センサ、心音センサ、血中酸素センサ、及び/又は、心臓及び/又は患者の1つ又は複数の機械的/化学的パラメータを測定するように構成された他のセンサなどの1つ又は複数のセンサを含むか又はそれに電気的に接続され得る。いくつかの例では、1つ又は複数のセンサをリード212上に配置することができるが、これは必須ではない。いくつかの例では、1つ又は複数のセンサをハウジング220内に配置することができる。
【0070】
必須ではないが、いくつかの例では、MD200は植込み型医療装置であり得る。そのような例では、MD200のハウジング220は、例えば患者の経胸腔領域に植え込むことができる。ハウジング220は、一般に、人体への植込みに安全な多数の公知の材料のうちの任意のものであって、植え込まれると、患者の体の体液及び組織からMD200の様々な構成要素を気密封止することができる材料を含み得る。
【0071】
場合によっては、MD200は植込み型心臓ペースメーカ(ICP)であり得る。この例では、MD200は、患者の心臓上又は心臓内に植え込まれた1つ又は複数のリード線、例えばリード線212を有することができる。1つ以上のリード212は、心臓組織及び/又は患者の心臓の血液と接触する1つ以上の電極214を含み得る。MD200は、内発的に生成された心臓電気信号を検知し、例えば、検知された信号の分析に基づいて1つ又は複数の心不整脈を決定するように構成され得る。MD200は、心臓内に植え込まれたリード212を介してCRT、ATP療法、徐脈療法、及び/又は他の種類の療法を送達するように構成されてもよい。いくつかの例では、MD200は、除細動治療を提供するようにさらに構成され得る。
【0072】
場合によっては、MD200は植込み型除細動器(ICD)であってもよい。そのような例では、MD200は、患者の心臓内に植え込まれる1つ以上のリードを含み得る。MD200はまた、心臓電気信号を検知し、検知された信号に基づいて頻脈性不整脈の発生を判定し、頻脈性不整脈の発生を判定することに応じて除細動治療を送達するように構成されてもよい。他の例では、MD200は皮下植込み型除細動器(S−ICD)であり得る。MD200がS−ICDである例では、リード212のうちの1つは皮下に植え込まれるリードであり得る。MD200がS−ICDである少なくともいくつかの例では、MD200は皮下に植え込まれる単一のリードのみを含み得るが、これは必須ではない。場合によっては、リードは、皮下にかつ胸腔の外側に配置された1つ又は複数の電極を有することができる。他の例では、リードは、胸骨のちょうど内側であるが心臓Hの外側などの、胸腔の内側に配置される1つ又は複数の電極を有することができる。
【0073】
いくつかの例では、MD200は植込み型医療装置ではない場合がある。むしろ、MD200は患者の体の外部にある装置であり得、そして患者の身体上に配置される皮膚電極を含み得る。そのような例では、MD200は、表面電気信号(例えば、心臓によって生成される心臓電気信号、又は患者の体内に植え込まれた装置によって生成され、体を通って皮膚に伝達される電気信号)を検知することができる。そのような例では、MD200は、例えば除細動治療を含む様々な種類の電気刺激療法を送達するように構成することができる。
【0074】
場合によっては、本明細書に記載されるような植込み型医療装置は、回路基板(図3に示される回路基板52などだがこれに限定されない)を含み得る。回路基板は平面状でもよい。他の場合では、回路基板は、中間リボン部を介して電気的及び機械的に互いに接続された2つ以上の別個の回路基板、又はアイランド部として形成することができる。場合によっては、例えば、積層型回路基板は、医療装置ハウジング内に配置されると、互いに平行な、又は少なくとも実質的に互いに平行な2つ以上の別個のアイランド部を提供することができる。明らかなように、積み重ねられたアイランド部は、1つ以上の誘導コイルを配置するための適切な位置を提供し得る。図10から図14は、1つ又は複数の誘導コイルの配置を容易にする積層回路基板構成の例示的であるが非限定的な例を提供する。これらの積層回路基板の構成及び構造に関するさらなる詳細は、米国特許出願公開第2016/0151621号に見出すことができ、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
図10では、電気回路300は、リボン部306を介して互いに接続されたアイランド部302及びアイランド部304を含む。処理モジュール310はアイランド部304に固定されているように示されており、回路要素308A及び308Bはアイランド部302に固定されているように示されている。一例では、処理モジュール310ならびに回路要素308A及び308Bは、通信モジュール102、パルス発生器モジュール104、電気的検知モジュール106、機械的検知モジュール108、及び/又は処理モジュール110の機能を実行する回路要素を表すことができる。処理モジュール210は、予めプログラムされたロジックチップ又はプログラマブルマイクロプロセッサなどの任意の回路要素又はコンポーネントを含み得る。回路要素308A及び308Bは、コンデンサ、レジスタ、ダイオード、又は他の回路要素を表してもよい。
【0076】
いくつかの場合において、誘導コイル340は、アイランド部302とアイランド部304との間に配置されてもよく、アイランド部302及びアイランド部304に対して少なくとも実質的に平行に延びることができる。図示のように、誘導コイル340は、アイランド部302及び/又はアイランド部304と平行に、紙面の内外に延在すると見なすことができ、そのため誘導コイル340は装置ハウジング内に、装置ハウジングの長手方向軸に対して少なくとも実質的に直交する向きで配置され得る(図14参照)。実質的に直交するとは、例えば、直交すること、又は直交状態から少なくとも15度以内にあることと定義することができる。誘導コイル340は、図5A及び図5Bに示される、幅Wよりも大きい長さLを有する誘導コイル70の一例と見なすことができる。場合によっては、図示されていないが、アイランド部302と304との間に残されているスペース内に電気的に不活性なフィラー材料が配置されてもよい。少なくともいくつかの例では、フィラー材料は乾燥剤であり得る。いくつかの例示的なフィラー材料は、シリコーン又は他の不活性化合物を含む。
【0077】
いくつかの例では、各アイランド部302、304は円形の形状であり得るが、これは必須ではない。各アイランド部302、304は、植込み型医療装置ハウジング(例えばLCP100)の断面の内径よりわずかに小さい直径を有し得る。これにより、アイランド部302、304が積み重ねられたときに装置内に収まるようになる(図14参照)。いくつかの例示的な直径として、3.80ミリメートルから12.7ミリメートルが挙げられる。しかしながら、他の例では、アイランド302、304は、三角形、正方形、卵形、又は他の任意の適切な形状であり得る。少なくともいくつかの例では、アイランド部302、304の特定の形状は、植込み型医療装置ハウジングの断面形状と概して一致し得る。リボン部306の長さの範囲のいくつかの例としては、3.80ミリメートルから12.7ミリメートルが挙げられる。
【0078】
アイランド部302、304は、リジッドプリント回路基板(PCB)を含み得る。そのような場合、アイランド部302、304は、各アイランド部302、304上のコンポーネントのそれぞれを電気的に接続する金属又は他のトレースを含み得る。一方、リボン部306は、可撓性基板、例えばポリアミドを含むポリマー又は他の任意の適切な可撓性基板を含み得る。トレース322は、リボン部306のポリマー内に埋め込まれてもよく、電気回路300の外部の環境から電気的に絶縁されてもよい。一般に、リボン部306は、アイランド部302、304よりも比較的可撓性であり得る。したがって、LCP100などの植込み型医療装置内に配置されたとき、リボン部306は、アイランド部分302、304をかなりの程度まで曲げることなく、アイランド部分302、304を互いに対して積み重ねることができるように折り畳まれ又は曲げられ得る(例えば、アイランド部の対応する縁部における各アイランド部の上面の接線である2つの接線間で15度未満の歪み)。
【0079】
図11は、アイランド302、304の別の構成例を示す。図11の例では、第2の主対向面312B、314Bは互いに対面している。処理モジュール310及び回路要素308A〜308Cが図11に示されるような構成にある場合、これは処理モジュール310及び回路要素308A〜308Cが積層回路の外側に配置されることを意味する。場合によっては、この配置は、誘導コイル350をアイランド部302とアイランド部304との間に配置するための追加のスペースを提供することができ、アイランド部302及びアイランド部304と少なくとも実質的に平行に延びることができる。図示のように、誘導コイル350は、アイランド部302及び/又はアイランド部304と平行に、紙面左右方向の長手方向に延在すると見なすことができ、そのようにして誘導コイル350を、装置ハウジングの長手方向軸に対して少なくとも実質的に直交し、かつ図10に示される誘導コイル340に対して少なくとも実質的に直交する向きで、装置ハウジング内に配置することができる。誘導コイル350は、図5A及び図5Bに示される、幅Wよりも大きい長さLを有する誘導コイル70の別の例と見なすことができる。場合によっては、図示されていないが、アイランド部302と304との間に残されているスペース内に電気的に不活性なフィラー材料が配置されてもよい。少なくともいくつかの例では、フィラー材料は乾燥剤であり得る。いくつかの例示的なフィラー材料は、シリコーン又は他の不活性化合物を含む。
【0080】
図12及び図13は、LCP100などの植込み型医療装置内に配置することができる電気回路400の構成例、ならびに1つ又は複数の誘導コイルを電気回路400内及び/又はその周りにどのように収めることができるかを示す。図12において、アイランド部401、403、及び405は、アイランド部401、403の第1の主対向面412A、414Aを互いに対面させ、アイランド部401の第2の主対向面と、第1の主対向面416Aとを互いに対面させて積層されている。
【0081】
いくつかの場合において、誘導コイル440は、アイランド部401とアイランド部405との間に配置されてもよく、アイランド部401及びアイランド部405に対して少なくとも実質的に平行に延びることができる。図示のように、誘導コイル440は、アイランド部401及び/又はアイランド部405と平行に、紙面の内外に延在すると見なすことができ、そのようにして誘導コイル440を、装置ハウジングの長手方向軸に対して少なくとも実質的に直交する向き(図14参照)で、装置ハウジング内に配置することができる。誘導コイル440は、図5A及び図5Bに示される、幅Wよりも大きい長さLを有する誘導コイル70の別の例と見なすことができる。場合によっては、図示されていないが、アイランド部401と405との間、及びアイランド部401と403との間に残されているスペース内に電気的に不活性なフィラー材料が配置されてもよい。少なくともいくつかの例では、フィラー材料は乾燥剤であり得る。いくつかの例示的なフィラー材料は、シリコーン又は他の不活性化合物を含む。
【0082】
図13では、アイランド部401、403、及び405は、アイランド部401、405のそれぞれ第1の主対向面412A及び第2の主対向面416Bを互いに対面させ、アイランド部403、405の第1の主対向面416A、412Aを互いに対面させて積層されている。この構成では、第1のリボン部406は第2のリボン部407より長くてもよい。
【0083】
場合によっては、誘導コイル450は、アイランド部401とアイランド部405との間に配置されてもよく、アイランド部401及びアイランド部405に対し少なくとも実質的に平行に延びてもよい。図示のように、誘導コイル450は、アイランド部401及び/又はアイランド部405と平行に、紙面左右方向の長手方向に延在すると見なすことができ、そのようにして誘導コイル450を、装置ハウジングの長手方向軸に対して少なくとも実質的に直交する向きで、装置ハウジング内に配置することができる。誘導コイル450は、図5A及び図5Bに示される、幅Wよりも大きい長さLを有する誘導コイル70の別の例と見なすことができる。場合によっては、図示されていないが、アイランド部401と405との間、及びアイランド部401と403との間に残されているスペース内に電気的に不活性なフィラー材料が配置されてもよい。少なくともいくつかの例では、フィラー材料は乾燥剤であり得る。いくつかの例示的なフィラー材料は、シリコーン又は他の不活性化合物を含む。
【0084】
もちろん、これらはアイランド部401、403、及び405がとり得る積層構成のほんの数例にすぎない。他の例では、アイランド部403は、アイランド部401を上に、アイランド部405を下にして、積層体の中央にあってもよい。さらに別の例では、処理モジュール410及び回路要素408A〜Hの位置は異なっていてもよいし、アイランド部は追加の又は異なる構成要素、例えば、加速度センサ、姿勢センサ、心音センサなどの様々な機械的/生理学的/生物学的センサを含んでいてもよい。したがって、これらの異なる例の積層構成は、図12及び図13に示すものとは異なって見えてもよいし、積層構成の寸法を様々な異なる構成要素に適応するように異ならせてもよい。1つ以上の誘導コイルの相対位置は、特定の積層構成及び特定の医療装置の必要性に適応するように変更され得る。
【0085】
図14は、植込み型医療装置内に配置された図12の構成の例示的な回路400を有する例示的な植込み型医療装置の例示的な断面図である。例示的な植込み型医療装置500は、エネルギ貯蔵装置502と共に回路400を含み得る。回路400及びエネルギ貯蔵装置502は、両方ともハウジング501内に気密封止されてもよい。いくつかの例では、回路400は一般に、図14に示すように、エネルギ貯蔵装置502の上に積み重ねることができる。植込み型医療装置500はまた、相互接続部506A、506B及び508A、508Bを含み得る。相互接続部506A、506Bは、一般に、フィードスルー418及び419の中に又はそれらを通って延在することができる。相互接続部506A、506Bは、ハウジング501の外部の電極に、及び/又はハウジング501に直接接続されてもよく、それによって電極及び/又はハウジング501を回路400に電気的に接続する。相互接続部508A、508Bは、電極、ハウジング501、及び/又はエネルギ貯蔵装置502に接続されてもよく、それによって電極、ハウジング501、及び/又はエネルギ貯蔵装置502を回路400に電気的に接続する。いくつかの例では、植込み型医療装置500は、エネルギ貯蔵装置502をハウジング501から、そしていくつかの例では、植込み型医療装置500の他の内部構成要素から電気的に絶縁するために、ハウジング501を裏打ちする絶縁材504をさらに含み得る。
【0086】
場合によっては、フィードスルー418及び419は、誘導コイル520が配置され得る場所を提供することができる。場合によっては、誘導コイル520は、図7A及び図7Bに示される、1未満の長さ対幅の比を有する誘導コイル92の一例と見なすことができる。場合によっては、誘導コイル520はさらに、図4に示される誘導コイル62の一例と見なすことができ、フィードスルー418及び419は、誘導コイル62の中に少なくとも部分的に延在する内部構成要素48の別の例と見なすことができる。
【0087】
同様に、フィードスルー417及び420は、誘導コイル530が配置され得る場所を提供することができる。場合によっては、誘導コイル530は、図7A及び図7Bに示される、1未満の長さ対幅の比を有する誘導コイル92の別の例と見なすことができる。場合によっては、誘導コイル530はさらに、図4に示される誘導コイル62の他の例と見なすことができ、フィードスルー417及び420は、誘導コイル62の中に少なくとも部分的に延在する内部構成要素48の別の例と見なすことができる。
【0088】
場合によっては、例えばリードレス心臓ペースメーカ(LCP)であり得る植込み型医療装置500は、誘導コイル520又は誘導コイル530、もしくはそれらの両方を含み得ることが理解されよう。場合によっては、植込み型医療装置500は、誘導コイル520及び誘導コイル530の1つ以上と組み合わせて、図10から図13に示されるような1つ以上の誘導コイル340、350、440、及び450を含み得る。場合によっては、異なる相対配向で配置された複数の誘導コイルの使用は、任意の1つの誘導コイルが有し得る空間的及び/又は時間的ゼロ点の影響を最小限に抑えるのに有用となり得る。
【0089】
植込み型医療装置500は、一般に、図14に示すように長さ514を有することができる。この長さ寸法に沿って測定するとき、エネルギ貯蔵装置502は長さ510にわたって延びてもよく、回路400は長さ512にわたって延びてもよい。長さ510のいくつかの例示的な値は、5ミリメートルから25ミリメートルの範囲であり得、いくつかの例では、長さ510は14ミリメートルであり得る。長さ512のいくつかの例示的な値は、1ミリメートルから5ミリメートルの範囲であり得、いくつかの例では、長さ512は2ミリメートルであり得る。百分率は、回路400及びエネルギ貯蔵装置502が占める植込み型医療装置500の相対部分を説明するための別の方法であり得る。
【0090】
例えば、エネルギ貯蔵装置502が植込み型医療装置500内に延在する長さは、植込み型医療装置500の全長すなわち長さ514の50パーセントから95パーセントの間であり得る。いくつかの例では、エネルギ貯蔵装置502は、長さ512の80パーセントにわたって植込み型医療装置500内に延在し得る。さらに、回路400が植込み型医療装置500内に延在することができる長さは、長さ514の5パーセントから50パーセントの間であり得る。いくつかの追加の例では、回路400は、長さ514の20パーセントにわたって植込み型医療装置500内に延びてもよい。図14では、回路400が誘導コイル520、530と共に植込み型医療装置500内に配置されたものが描かれているが、他の例では、植込み型医療装置500は、ハウジング501内に配置され、エネルギ貯蔵装置502の上に積み重ねられた回路300を含んでもよい。
【0091】
図15は、複数の医療装置602、604、606、及び/又は610が通信することができる医療装置システム及び通信経路の例を示す。図示の例では、医療装置システム600は、LCP602及び604、外部医療装置606、ならびに他のセンサ/装置610を含み得る。外部装置606は任意の適切な装置であり得る。場合によっては、外部装置606は外部プログラマ装置を含むことができる。他のセンサ/装置610もまた、任意の適切な装置であり得る。場合によっては、他のセンサ/装置610は、加速度センサ、音響センサ、血圧センサなどのセンサを含み得る。場合によっては、他のセンサ/装置610は、システム600の1つ又は複数の装置をプログラムするために使用され得る外部プログラマ装置を含み得る。
【0092】
システム600の様々な装置は、通信経路608を介して通信することができる。例えば、LCP602及び/又は604は、内発性心臓電気信号を検知し得、そのような信号を通信経路608を介してシステム600の1つ又は複数の他の装置602/604、606、及び610に通信し得る。一例では、装置602/604のうちの1つ又は複数はそのような信号を受信し、受信した信号に基づいて不整脈の発生を判定することができる。場合によっては、1つ又は複数の装置602/604は、そのような決定をシステム600の1つ又は複数の他の装置606及び610に通信することができる。場合によっては、システム600の装置602/604、606、及び610のうちの1つ又は複数は、患者の心臓に適切な電気刺激を送達することなどによって、伝達された不整脈の決定に基づいた動作を行うことができる。通信経路608は、伝導通信、誘導通信、RF通信、光通信、音響通信、又は任意の他の適切な通信モードを使用して通信し得ることが企図される。場合によっては、通信経路608は、状況に応じて通信モードを切り替えることができる。
【0093】
場合によっては、通信経路608は伝導通信を含むことができる。したがって、システム600の装置は、そのような伝導通信を可能にする構成要素を有し得る。例えば、システム600の装置は、送信装置の1つ以上の電極を介して患者の体内に伝導通信信号(例えば、電流及び/又は電圧パルス)を送信するように構成され得、受信装置の1つ以上の電極を介して伝導通信信号(例えばパルス)を受信し得る。患者の身体は、システム600内の送信装置の1つ又は複数の電極から受信装置の電極への伝導通信信号(例えばパルス)を「伝導」し得る。そのような例では、伝達された伝導通信信号(例えばパルス)は、ペーシング又は他の治療信号とは異なり得る。例えば、システム600の装置は、心臓に捕捉閾値を下回る振幅/パルス幅で電気通信パルスを送達してもよい。場合によっては、送達される電気通信パルスの振幅/パルス幅は心臓の捕捉閾値を超えてもよいが、心臓のブランキング期間(例えば不応期)の間に送達され、かつ/又は、必要に応じてペーシングパルスに組み込まれるか又はペーシングパルスに変調され得る。
【0094】
送達された電気通信パルスは、通信された情報をエンコードするために任意の適切な方法で変調されてもよい。場合によっては、通信パルスはパルス幅変調又は振幅変調されてもよい。それに代えて、又はそれに加えて、パルス間の時間は、所望の情報をエンコードするために変調され得る。場合によっては、伝導通信パルスは、電圧パルス、電流パルス、二相電圧パルス、二相電流パルス、又は所望の任意の他の適切な電気パルスであり得る。
【0095】
図16は例示的な医療装置システムを示す。図16では、LCP702が心臓710の左心室の内部に固定されて示されており、パルス発生器706が1つ又は複数の電極708a〜708cを有するリード712に結合されて示されている。場合によっては、パルス発生器706は皮下植込み型除細動器(S−ICD)の一部とすることができ、1つ又は複数の電極708a〜708cは皮下に配置することができる。いくつかの場合において、1つ又は複数の電極708a〜708cは、胸骨のちょうど内側などの、胸腔の内側であるが心臓の外側に配置され得る。
【0096】
場合によっては、LCP702は、皮下植込み型除細動器(S−ICD)と通信することができる。場合によっては、リード712及び/又はパルス発生器706は、例えば、心音を示し得る振動を検知するように構成され得る加速度センサ714を含み得る。
【0097】
場合によっては、LCP702は所望に応じて心臓の右心室、右心房、左心室又は左心房にあってもよい。場合によっては、複数のLCP702を植え込むことができる。例えば、1つのLCPを右心室に植え込み、別のLCPを右心房に植え込むことができる。別の例では、1つのLCPが右心室に植え込まれ、別のLCPが左心室に植え込まれてもよい。さらに別の例では、心臓の各腔に1つのLCPを植え込むことができる。LCP702及びパルス発生器706は、伝導通信及び誘導通信などの2つ以上の異なる通信モードを使用して通信するように構成され得る。場合によっては、LCP702及びパルス発生器706を状況に応じて通信モードの種類が切り替わるように構成することができる。
【0098】
図17は、例示的な植込み型リードレス心臓ペースメーカ(LCP)810の側面図である。場合によっては、これまでの図に関して説明したように、誘導通信を容易にするために、LCP810に1つ又は複数の誘導コイルを組み込むことができる。LCP810は、上述のLCP100と形式及び機能が類似していてもよい。LCP810は、上述のLCP100に関して上述したモジュール及び/又は構造的特徴のいずれかを含み得る。LCP810は、近位端814及び遠位端816を有するシェル又はハウジング812を含み得る。例示のLCP810は、ハウジング812に対して固定され、ハウジング812の遠位端816に隣接して配置された第1の電極820と、ハウジング812に対して固定され、ハウジング812の近位端814に隣接して配置された第2の電極822とを含む。場合によっては、ハウジング812は導電性材料を含んでもよく、その長さの一部に沿って絶縁されてもよい。近位端814に沿った部分は絶縁されずに、第2の電極822を画定してもよい。電極820、822は、電気療法及び/又は検知能力を提供するための検知及び/又はペーシング電極であり得る。第1の電極820は、心臓の心臓組織に対して位置決めすることができ、又は他の態様で心臓組織と接触させることができ、第2の電極822は第1の電極820から離間させることができる。第1及び/又は第2の電極820、822は、ハウジング812の外側の環境に(例えば、血液及び/又は組織に)曝されてもよい。
【0099】
場合によっては、LCP810は、ペーシング/検知電極820、822を制御するための電気信号を電極820、822に提供するために、ハウジング812内にパルス発生器(例えば、電気回路)及び電源(例えば、バッテリ)を含み得る。明示的には示されていないが、LCP810はまた、上述したモジュール102、106、108、110と形態及び機能が類似する通信モジュール、電気的検知モジュール、機械的検知モジュール、及び/又は処理モジュール、及び関連する回路を含み得る。様々なモジュール及び電気回路がハウジング812内に配置されてもよい。パルス発生器と電極820、822との間の電気接続は、心臓組織への電気刺激を可能にし、かつ/又は生理学的状態の検知を可能にする。
【0100】
図示の例では、LCP810は、ハウジング812の遠位端816に近接した固定機構824を含む。固定機構824は、LCP810を心臓Hの壁に取り付けるか、又は他の態様でLCP810を患者の解剖学的構造に固定するように構成される。いくつかの例では、固定機構824は、LCP810を組織壁に取り付けるために心臓Hの心臓組織内に固定される1つ又は複数のフック又は櫛歯826を含むことができる。他の例では、固定機構824は、心臓Hの腔内の小柱と絡み合うように構成された1つ又は複数の受動的な櫛歯、及び/又はLCP810を心臓Hに固定するために組織壁にねじ込まれるように構成されたらせん状固定アンカーを含み得る。これらは単なる例である。
【0101】
LCP810は、ハウジング812の近位端814の近くにドッキング部材830をさらに含み得る。ドッキング部材830は、LCP810の送達及び/又は回収を容易にするように構成され得る。例えば、ドッキング部材830は、ハウジング812の近位端814からハウジング812の長手方向軸に沿って延びることができる。ドッキング部材830は、ヘッド部832及びハウジング部812とヘッド部832との間に延びるネック部834を含み得る。ヘッド部832は、ネック部834に対して拡張された部分であり得る。例えば、ヘッド部832は、LCP810の長手方向軸からのネック部834の半径方向寸法よりも大きい、LCP810の長手方向軸からの半径方向寸法を有することができる。場合によっては、ドッキング部材630は、ヘッド部832から延在するか又はヘッド部832内に嵌め込まれたテザー保持構造836をさらに含み得る。テザー保持構造836は、それを通してテザー又は他の固定機構を受容するように構成された開口部838を画定し得る。保持構造836は概して「U字形」の構成を有するように示されているが、保持構造836は、テザーが固定可能かつ解放可能に開口部838を通る(例えばループになる)ことができるように、開口部838を取り囲む閉じられた周縁部を提供する任意の形状であり得る。場合によっては、保持構造836は、ネック部834に沿ってヘッド部832の中を通り、ハウジング812の近位端814まで、又はその中にまで延びることができる。ドッキング部材830は、LCP810の心臓内部位への送達及び/又はLCP810の心臓内部位からの回収を容易にするように構成されてもよい。これはドッキング部材830の一例の説明であるが、ドッキング部材830が提供される場合、これは任意の適切な構成を有することができると考えられる。
【0102】
LCP810は、心臓内の血圧を測定するために圧力センサがハウジング812の外側の環境に曝されるように、ハウジング812に結合されるか又はハウジング812内に形成された1つ又は複数の圧力センサ840を含み得ると考えられる。例えば、LCP810が左心室内に配置されている場合、圧力センサ840は左心室内の圧力を測定することができる。LCP810が心臓の別の部分(心房の一方又は右心室など)に配置されている場合、圧力センサは心臓のその部分内の圧力を測定することができる。圧力センサ840は、圧力ダイヤフラムとダイヤフラム上のピエゾ抵抗器とを有するMEMSデバイスなどのMEMSデバイス、圧電センサ、静電型マイクロマシン超音波トランスデューサ(cMUT)、コンデンサ、微圧計(micro−monometer)、又は心圧を測定するのに適した他の適切なセンサを含むことができる。圧力センサ840は、本明細書に記載の機械的検知モジュールの一部とすることができる。圧力センサ840から得られた圧力測定値を使用して、心周期にわたる圧力曲線を生成することができると考えられる。圧力測定値は、インピーダンス測定値(例えば、電極820と822の間のインピーダンス)と組み合わせて取得され、1つ以上の心周期のための圧力−インピーダンスループを生成し得る。インピーダンスは心腔容積の代わりとなることがあり、したがって圧力−インピーダンスループは心臓Hの圧力−容積ループを表すことがある。
【0103】
いくつかの実施形態において、LCP810は、電極820、822間のインピーダンスを測定するように構成されてもよい。より一般的には、インピーダンスは、上述の追加の電極114’などの他の電極対の間で測定されてもよい。場合によっては、インピーダンスは、心臓Hの同じ腔(例えばLV)内に植え込まれた2つのLCP’、又は心臓Hの異なる腔(例えばRVとLV)に植え込まれた2つのLCP’などの、2つの離間したLCPの間で測定されてもよい。LCP810及び/又は外部支持装置の処理モジュールは、電極820、822(又は他の電極)間で行われた心臓内インピーダンス測定値から心臓容積の測定値を導き出すことができる。主に心臓Hの血液の抵抗率と心臓組織の抵抗率との差に起因して、インピーダンス測定値は、LCPを取り囲む血液の容積(つまりは腔の容積)が変化するにつれて、心周期中に変化し得る。いくつかの場合において、心臓容積の測定値は、実際の測定値ではなく相対的な測定値であり得る。いくつかの場合では、心臓内インピーダンスは、時にはLCPの植え込み中に実行される較正プロセスを介して心臓容積の実際の測定値と相関させることができる。較正プロセス中に、実際の心臓容積は蛍光透視法などを使用して決定され得、測定されたインピーダンスが実際の心臓容積に相関され得る。
【0104】
場合によっては、LCP810は、第1の電極820と第2の電極822との間に電流を流すように第1の電極820及び第2の電極822に動作可能に結合されて、2つの電極820、822(又は他の電極対)の間のインピーダンスを決定するためのエネルギ伝達回路を備えてもよい。エネルギ伝達回路はまた、第1及び/又は第2の電極820、822を介してペーシングパルスを送達するように構成されてもよいと考えられる。LCP810は、第1の電極820と第2の電極822との間で受信された電気信号を検出するために、第1の電極820及び第2の電極822に動作可能に結合された検出回路をさらに含み得る。場合によっては、検出回路は、第1の電極820と第2の電極822との間で受信された心臓信号を検出するように構成されてもよい。
【0105】
エネルギ伝達回路が第1の電極820と第2の電極822との間に電流を送達するとき、検出回路は、第1の電極820と第2の電極822との間(又は第1の電極820及び第2の電極822から離れた、図示しない第3の電極と第4の電極との間)に生じる電圧を測定し、インピーダンスを決定し得る。エネルギ伝達回路が第1の電極820と第2の電極822との間に電圧を送達すると、検出回路は、第1の電極820と第2の電極822との間(又は第1の電極820及び第2の電極822から離れた第3の電極と第4の電極との間)に生じる電流を測定し、インピーダンスを決定し得る。
【0106】
この開示は、多くの点で、例示に過ぎないことを理解されたい。本開示の範囲を超えることなく、細部、特に形状、サイズ、及びステップの順序に関して変更を加えることができる。これは、適切である限りにおいて、他の実施形態において使用されている1つの例示的実施形態の特徴のうちの任意のものを使用することを含み得る。開示の範囲は、もちろん、添付の特許請求の範囲で表現されている文言で定義される。
図1
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図5A
図5B
図6
図7A
図7B
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