【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
遠隔操作によって排水栓を開閉する際の開口量が可変な排水栓装置であって、
前記開閉の操作を行うための操作機構と、
前記操作機構の操作に応じて前記排水栓側の端部が移動する機械要素を介して、前記操作機構の操作を前記排水栓に伝達するための伝達機構と、
前記排水栓の閉時における前記伝達機構に備えられた機械要素の前記操作機構側の端部の位置と、開時における該端部の位置との変位量を変化させるための可変機構と、
前記可変機構を動作させて前記変位量を調整するための調整部とを備える排水栓装置として構成することができる。
【0006】
本発明では、可変機構によって伝達機構の操作機構側の端部の変位量を変化させることができるため、これに応じて排水栓側の変位量も変化させることができ、排水栓の開口量を変化させることができる。
本発明では、可変機構は、操作機構側の端部の変位量を変化させるものであるため、伝達機構の排水栓側ではなく、操作機構側に設けられることになる。そして、結果として、可変機構の変位量を調整するための調整部も、操作機構側に設けられることになる。従って、排水栓装置の利用者は、操作機構に比較的近い場所にある調整部によって、開口量を調整することが可能となる利点もある。
【0007】
操作機構は、利用者が直接操作する押しボタン、押し引き棒、回転ツマミなどの操作部のみで構成してもよいし、操作部の操作を伝達機構に伝えるために介在する何らかの機構を備えるものとしてもよい。また、操作機構は、伝達機構に直接連結されている場合のみならず、両者の間に一定の遊びが設けられているものとしてもよい。
機械要素は、ワイヤ、リンク、排水栓を押し上げる押し上げ棒などとすることができる。
伝達機構は、機械要素の排水栓側の端部が移動する、即ち排水栓を開閉するように移動する機構であるが、この端部と排水栓とは直接連結されていてもよいし、一定の遊びが設けられているものとしてもよい。
【0008】
本発明において、
前記可変機構は、排水栓を開いたときの前記機械要素の前記操作機構側の端部の位置を変化させる機構であるものとしてもよい。
【0009】
機械要素の長さが固定であれば、排水栓を閉じた時の操作機構側の端部の位置は決まることが多いため、上記態様では、排水栓を開いた時の端部の位置を可変とすることにより、開閉に伴う変位量を変化させることができる。
【0010】
また、本発明において、
前記操作機構は、開操作に応じて、前記機械要素の前記操作機構側の端部を前記排水栓の開時の位置に保持する保持機構を備え、
前記可変機構は、前記保持機構の位置を移動させる機構であるものとしてもよい。
【0011】
かかる態様では、保持機構全体の位置を移動させるため、比較的簡易に可変機構を実現することができる利点がある。保持機構は、摩擦を利用して保持する機構や、スラストロック機構など、種々の構成をとることができる。また、利用者が操作部から手を離した状態で自然に保持される機構のみならず、ネジ・ピンなどを用いて手動で留める機構としてもよい。
保持機構が、排水栓の開時の位置、閉時の位置をそれぞれ保持する構成となっている場合には、排水栓の閉時の伝達機構の端部の位置を保持機構の位置に関係なく一定にするための構造をとることが好ましい。かかる構造として、伝達機構の端部と、保持機構との間に一定の遊びを設けることが考えられる。こうすることにより、保持機構の位置に応じて遊びの大きさが変化することによって、排水栓の閉時の伝達機構の端部の位置を一定に保つことが可能となる。
【0012】
保持機構の位置を移動させる可変機構を設ける場合には、
前記保持機構は、
前記操作機構のボタンを押し下げる操作ごとに、前記機械要素の前記操作機構側の端部を前記排水栓の閉時の位置と、開時の位置に交互に保持するスラストロック機構であり、
前記排水栓の閉時における前記操作機構側の端部の位置は、前記スラストロック機構の位置に依存せず固定された規制部によって規制されるものとしてもよい。
【0013】
上記態様は、例えば、排水栓の開時の位置は、スラストロック機構に備えられた回転ギヤとロックギヤによって規制されるように構成し、排水栓の閉時の位置は回転ギヤおよびロックギヤ以外の部分で規制される構造とすることができる。
上記態様によれば、スラストロック機構の位置に依存せず排水栓閉時の端部の位置を一定に保つことが可能となる。
【0014】
また、本発明においては、
前記保持機構は、水平方向に外部に張り出す張出部を有しており、
前記可変機構は、
前記張出部の位置を上下方向に移動させることが可能なカム機構であるものとしてもよい。
より具体的には、一例として、
前記可変機構は、
所定の鉛直軸を中心に回転可能な円筒部材であり、
該円筒部材の内部には、前記張出部によって前記保持機構の上下方向の位置を規制する螺旋状に形成された溝または段差を有しており、
該円筒部材を前記保持機構に対して相対的に回転させることにより、前記溝または段差にはめ込まれた張出部の位置を上下方向に移動させることが可能な機構であるものとしてもよい。
円筒に代えて、円弧状の板部材を用いても良い。また、円筒状、円弧は厳密に真円である必要はなく、回転可能な程度の曲面であればよい。
【0015】
かかる機構によれば、保持機構を上下方向に移動させることにより、開口量を変化させることが可能となる。
また、保持機構の位置は、円筒部材の回転で調整できるため、保持機構の位置によって美観が変化するなどという弊害なく、位置調整のための操作も容易である利点がある。
【0016】
本発明においては、
前記調整部は、前記操作機構の近傍に設けられているものとしてもよい。
【0017】
こうすることにより、開口量の調整と開閉のための操作をほぼ同一箇所で行うことができ、利便性が向上する。また、両者を近傍にまとめることによりすっきりとした美観を実現することもできる。
近傍とは、ユーザが操作機構を操作する際の視線や姿勢をそれほど変えることなく調整部を調整できる程度の位置関係を言う。調整部と操作機構とを近傍に設ける態様は、種々、考えられるが、例えば、操作機構が押しボタンである場合、調整部は、押しボタンの周囲に設けられた回転リングとすることが考えられる。また、押しボタン自体を回転させることによって調整部として機能するようにしてもよい。
【0018】
本発明においては、
前記調整部には、前記変位量が視覚的に認識可能な表示が付されているものとしてもよい。
【0019】
こうすることにより、利用者は比較的容易に開口量を把握することが可能となる。
【0020】
本発明においては、
前記調整部には、節度感が付与されているものとしてもよい。
【0021】
こうすることにより、開口量を段階的に変化させることができ、利便性が向上する。
【0022】
ここで、以上で説明した機構、特に排水栓を開いたときの前記機械要素の前記操作機構側の端部の位置を変化させる機構について、いくつか具体例を示す。
図1は、押しボタンを利用した開閉機構において操作機構側の端部の位置を変化させる機構を示す説明図である。
図1(a)に示す通り、この機構では、利用者が押下げるための押しボタンと、押しボタンに対する操作に従ってレリースワイヤの端部(レリースワイヤがアウタチューブとインナワイヤで構成されている場合は、インナワイヤの端部)を動かすメカボックス(スラストロック機構に限られない)とが備えられており、この押しボタンとメカボックスとが、本明細書における操作機構に該当する。メカボックスは、排水栓を開いた時にレリースワイヤの端部の位置を保持する保持機構としても機能する。レリースワイヤの他端(図示しない側の端部)には、排水栓が取り付けられており、レリースワイヤの端部の位置に応じて、排水栓が上下動して排水口が開閉することになる。そして、メカボックスは、固定された可変機構に上下方向に移動可能に組み付けられている。
図1(a)は、メカボックスが可変機構の上端から若干下がったp1の位置に調整されている状態を示し、
図1(b)は、メカボックスが可変機構の上端の高い位置に調整されている状態を示している。この排水栓装置には、メカボックスの位置を調整するための調整部も設けられているが、ここでは図示を省略した。
【0023】
図1(a)において、排水栓を閉じた状態が左側の状態である。このとき、レリースワイヤの端部は、可変機構の上端からp2の位置にある。この状態で、利用者が押しボタンを押下げると、右側のように、レリースワイヤの端部は、メカボックスの上端からp3の位置まで下がったところで保持される。メカボックス自体が可変機構の上端からp1だけ下がった位置にあるから、レリースワイヤの端部は、可変機構の上端から(p1+p3)の位置で保持されることになる。このとき、レリースワイヤの他端に取り付けられた排水栓は、レリースワイヤの端部の変位量A1(=p1+p3−p2)だけ、持ち上げられることになる。つまり、
図1(a)の開口量は、変位量A1となる。
【0024】
次に、
図1(b)のようにメカボックスを上の方に移動させた場合を考える。かかる場合でも、左側に示すように、排水栓を閉じた時の端部の位置は、可変機構の上端からp2の位置で変わらない。一方、押しボタンを押下げたときは、右側に示すように、端部はメカボックスの上端からp3の位置まで下がったところで保持される。
図1(b)の状態では、メカボックスは可変機構の上端まで移動しているから、押しボタンを押下げたときの端部の位置は、可変機構の上端からp3の位置となる。従って、開閉に伴う端部は、変位量A2(=p3−p2)となり、これが開口量となる。
図からも、上述の変位量A1、A2の式からも明らかな通り、変位量A1>変位量A2である。このように、
図1に示した機構では、保持機構として機能するメカボックスの位置を移動させることにより、開口量を変化させることが可能となる。
【0025】
図2は、押し引き棒を利用した開閉機構において操作機構側の端部の位置を変化させる機構を示す説明図である。中央の図に示すように、この機構では、利用者が押し引き棒を押下げたり、引き上げたりすることにより、排水栓の開閉を行う。押し引き棒は、操作機構に相当する。押し引き棒には、レリースワイヤ(レリースワイヤがアウタチューブとインナワイヤで構成されている場合は、インナワイヤの端部)が連結されている。また、押し引き棒を押下げる限界の位置は、規制部によって規制されている。規制部は、固定の可変機構内で上下方向に移動させることができる。移動させるための調整部は、図示を省略した。押し引き棒を引き上げる限界の位置は、規制部の位置とは無関係に排水栓が閉じることによって決まる。
【0026】
図2の中央は、押し引き棒を引き上げた状態、即ち、排水栓を閉じた状態を表している。左側の図は、規制部が可変機構の上端からPB1という低い位置にある状態を示している。このとき排水栓の開閉に伴うレリースワイヤの端部の変位は、中央の状態から左側の図の状態に至る変位となり、図中の変位量B1で表される。
一方、右側の図は、規制部が可変機構の上端からPB2という比較的高い位置にある状態を示している。このとき排水栓の開閉に伴うレリースワイヤの端部の変位は、中央の状態から左側の図の状態に至る変位となり、図中の変位量B2で表される。
図から分かる通り、変位量B1>変位量B2であり、
図2に示した機構では、規制部を上下に移動させることにより、レリースワイヤの端部の位置を変化することができ、開口量を変化させることが可能となる。
図2のような押し引き棒を利用する機構においても、
図1のメカボックスのような保持機構を適用し、保持機構の位置を変化させる構造を適用することも可能である。
【0027】
図3は、回転ツマミを利用した開閉機構において操作機構側の端部の位置を変化させる機構を示す説明図である。
図3(a)に示すように、この機構では、利用者が排水栓の開閉のために矢印a1のように回転操作する回転ツマミを備えている。回転ツマミには、突起が設けられており、これが規制部に当たるところで回転ツマミの回転は規制される。規制部は、矢印a2に示すように固定の可変機構に沿って移動可能に取り付けられている。
回転ツマミの回転は、回転軸を介して従動板に伝達される。従動板は回転軸に固定された円板である。従動板には、図示するように押し上げ棒が取り付けられており、この押し上げ棒が、排水栓を押し上げることにより、閉じていた排水栓を開くことができるようになっている。
図3の構成では、回転ツマミ、回転軸、および従動板が操作機構に該当し、押し上げ棒が伝達機構に該当する。
図3において、回転軸および従動板を省略した構成とすることも可能である。
【0028】
図3(b)は、従動板の動きと排水栓の開口量との関係を表している。押し上げ棒が破線で示した閉位置のように低い位置にあるとき、排水栓は閉じた状態となっている。回転ツマミを回転させると、回転角度が小さいときは、押し上げ棒が破線pc2の位置となり、排水栓を変位量C2だけ押し上げる。この変位量C2がこの時点の開口量となる。回転角度が大きくなると、押し上げ棒が破線pc1の位置となり、排水栓を変位量C1だけ押し上げる。この変位量C1がこの時点の開口量となる。
このように回転ツマミを設けた場合には、その回転角度を規制部の位置によって規制することによって、伝達機構としての押し上げ棒の変位を変化させることができ、開口量を調整することができる。
【0029】
以上で説明した種々の特徴は、必ずしも全てを備えている必要はなく、本発明は、適宜、その一部を省略したり組み合わせたりして構成することができる。
また、以上の説明で例示した具体例は、それぞれ機構の一例として示したに過ぎず、本発明をこれらの機構に限定する趣旨ではない。
さらに、「排水栓を開いたときの前記機械要素の前記操作機構側の端部の位置を変化させる可変機構」において説明した種々の特徴は、「開閉の操作における操作機構における操作部の変位量に対する前記機械要素の前記操作側の端部の変位量の割合を変化させる可変機構」においても、適用可能である。