(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、学力検査テストの結果を利用して個々の試験者に最適化した個別振り返り学習シートを提供し、効果の高いタイミングでの弱点分野の見直しを促して学力向上に寄与することのできる学力向上のための振り返り補強システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.
(1)出題範囲がN個の学習領域に分けられ、各学習領域に付き、想定正答率50%未満である標準問題が1問以上、想定正答率50%以上である基礎問題が1問以上であり、2問以上の小問を有する学力検査テストを複数
の試験者に実施
した試験結果を統計処理し、各学習領域の平均達成率(a
n:nは1〜Nの整数)と、
各学習領域における試験者の達成率(p
n:nは1〜Nの整数)とから、各学習領域における
個別の試験者の偏差(p
n−a
n:nは1〜Nの整数)を求め、
個別の試験者に対して、前記N個の学習領域から、前記偏差が小さい順に選択した
n1個(
n1≦N)の学習領域における学力補強問題を、偏差が正または0の学習領域は
前記標準問題のいずれかに関連する標準振り返り問題、偏差が負の学習領域は
前記基礎問題のいずれかに関連する基礎振り返り問題となるように選択して
出力し、選択された学力補強問題が記載された前記
個別の試験者のための個別振り返りシートを
印刷する工程、
(2)M個の項目について生活・学習習慣調査を前記複数の試験者に実施した結果を統計処理し、前記学力検査テストの全体平均得点(A0)と、前記生活・学習習慣調査において前記個別の試験者と同一回答をした同一グループに含まれる複数者の前記学力検査テストの平均得点(Sm:mは1〜Mの整数)とから、生活・学習習慣偏差(Dm=Sm−A0:mは1〜Mの整数)を求め、
個別の試験者に対して、前記生活・学習習慣調査における調査項目から、前記生活・学習習慣偏差が小さい順にm1個(m1≦M)の項目について選択し、
選択したm1個の項目について、前記個別の試験者の回答毎の生活・学習習慣偏差を、前記個別の試験者と異なる回答をしたグループそれぞれの生活・学習習慣偏差とともに出力し、前記個別の試験者のための生活・学習改善シートを印刷する工程
を
実施し、
前記学力検査テストの試験結果とともに、前記個別振り返りシートと前記生活・学習改善シートを、個別の試験者に提供することを特徴とする学力向上のための振り返り補強システム。
2.前記
個別の試験者のための個別振り返りシートに印刷される学力補強問題が、穴埋め式問題、択一式問題のいずれか、または両方であることを特徴とする1.に記載する学力向上のための振り返り補強システム。
【発明の効果】
【0007】
本発明の学力向上のための振り返り補強システムは、試験者毎に内容の異なる個別振り返りシートを提供する。個別振り返りシートは、個々の試験者が強化すべき学習領域を抑えた振り返り問題が記載されており、この振り返り問題を用いて復習することにより、複数の学習領域における学力の底上げが期待できる。振り返り問題は、各学習領域に対して標準振り返り問題と基礎振り返り問題が準備されており、その学習領域における試験者の達成率が平均達成率以上であれば標準振り返り問題、平均達成率未満であれば基礎振り返り問題が提供される。理解度の高い試験者に基礎問題を、または、理解度の低い試験者に応用・発展問題を出題した場合、学習効果がほとんど望めないが、個々の試験者の学力に応じて適切な難易度の振り返り問題を提供することにより、非常に高い学習効果を発揮することができる。
個別振り返りシートに記載される振り返り問題が、穴埋め問題、択一式問題のいずれか、または両方であると、短い時間で振り返り問題を解くことができる。テスト結果の返却後に、一斉に振り返り問題を解く時間を設けても必要な時間が短く、授業の進展に与える影響が少ない。また、全員で解く時間を設けることができなくても、やる気を失うことなく自主的に振り返り問題に取り掛かることが期待できる。
【0008】
生活・学習習慣と学力とには、相関関係が認められるものも数多く存在する。生活・学習改善シートにより、重点的に改善すべき生活・学習習慣を把握することができる。生活・学習改善シートには、その生活・学習習慣を有するグループの平均点と、全体の平均点との差が記載されており、生活・学習習慣の違いによる学力の差を一目で理解することができるため、自らの生活習慣、学習習慣、意識の改革を促すことができ、長期的に大きな学力向上が期待できる。
【0009】
学力検査テストの試験後に自己診断見直しシートを配布することにより、試験者の記憶が強く残っているうちに第一回目の復習を行うことができる。復習は、学習してから時間をあけず、繰り返して行うほど効果が高いため、テスト直後に第一回目の復習を行い、テスト結果返却後に個別振り返りシートを用いて第二回目の復習を行うことにより、非常に高い学習効果をもたらすことができる。
【0010】
本発明の学力向上のための振り返り補強システムは、複数年に亘って実施することにより、各個人の長期的な学力の推移を把握することができる。平均に対する自分の学力、苦手分野、生活・学習習慣等を定期的に確認し、試験直前等に見返すことにより、短い期間で得点をアップすることのできる対時間効果に優れた学習強化ポイントを把握することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、学力検査テストの試験結果を利用して、効果的に見直しを行うことによる学力向上のための振り返り補強システムに関する。
図1に、本発明の学力向上のための振り返り補強システムのフロー図を示す。
本発明の学力向上振り返り補強システムは、(1A)学力検査テストの問題を作成する工程、(1B)学力補強問題を作成する工程、(2)学力検査テストを実施する工程、(3)個別振り返りシートを作成する工程、を有する。
また、(4A)生活・学習習慣調査を実施する工程、(4B)生活・学習改善シートを作成する工程、(2B)自己診断見直しシートを配布する工程を有することもできる。
以下、本発明の学力向上のための振り返り補強システムの一構成例を、その工程に沿って説明する。
【0013】
(1A)学力検査テスト問題作成
学力検査テストの問題を、学習指導要領に準拠し、平均正答率が50%以上65%以下となることを目安に作成する。学力検査テストは、多くの者が受けるテストであるが、想定する平均正答率を50%以上65%以下の範囲内とすることにより、試験者の学力差がが大きくても、各試験者の実力を正確に把握することができる。
【0014】
出題範囲は、N個の学習領域に分ける。学習領域は、4個以上10個以下となるように分けることが好ましい。学習領域が3個以下では、これまでに学習した分野の学力を的確に把握することができず、学習領域が11個以上では、試験中に徐々に集中力が低下して試験後半の学習領域において正確な学力が把握できない場合がある。
【0015】
N個に分けた学習領域の各々について、2問以上の小問を作成する。小問には想定正答率を設定し、想定正答率が50%未満である標準問題が1問以上、想定正答率50%以上である基礎問題が1問以上となるように小問を作成し、各学習領域における領域平均正答率が45%以上70%以下となるよう作成する。また、領域平均正答率は、想定した全体の平均正答率に対して、±10%の範囲内であることが好ましい。小問は、想定正答率に応じて、3段階以上5段階以下の難易度に区分し、全ての小問の中に、各難易度の小問が2個以上含まれることが好ましい。また、小問は、難易度を調整して、全体としての平均正答率が上記した50%以上65%以下となるように作問する。
【0016】
(1B)学力補強問題作成
(1A)で作成した学力検査テストは、各学習領域が1以上の標準問題と1以上の基礎問題を有する。各学習領域について、学力補強問題として、標準問題のいずれかに関連する標準振り返り問題と、基礎問題のいずれかに関連する基礎振り返り問題とを作成する。この際、小問集合のような、学習領域として括れない分野については、学力補強問題を作成しない。ただし、小問集合を構成する小問が、いずれかの学習領域に関連付けられるのであれば、その学習領域を構成する小問と見なし、この小問に関連する学力補強問題を作成することもできる。
学力補強問題の形式は、特に制限されないが、問題に取り組みやすくするため、穴埋め式問題、択一式問題のいずれか、または両方であることが好ましい。
【0017】
(2)学力検査テスト実施
(1)で作成した学力検査テストを、学校、市町村、都道府県等の単位で実施する。実施するタイミングは特に制限されないが、4〜6月に実施することが学年が変わって新たなクラスにおける各試験者の学力を把握することができるため好ましい。
【0018】
(2B)自己診断見直しシート配布
本発明の学力向上のための振り返り補強システムにおいて、(2)で実施した学力検査テストの試験後に自己診断見直しシートを配布することができる。
自己診断見直しシートには、各小問について、正答と難易度とが記載されている。難易度は、上記(1A)における学力検査テスト問題作成の想定正答率に基づいて区分した難易度を記載することができる。この自己診断見直しシートを用いて、試験直後に自己採点し、各小問の正解/不正解と、難易度とを知ることにより、試験者は、現在の学力、得意分野、苦手分野等を把握することができる。また、学力検査テストの試験直後であって、各問題が頭に残り、試験の出来/不出来の印象が鮮明なうちに自己診断見直しシートを用いて見直しを行うことより、高い学習効果を発揮することができる。
【0019】
(3)個別振り返りシート作成
学力検査テストの試験結果を統計処理し、各学習領域における平均達成率(a
n:nは1〜Nの整数)と各学習領域における試験者の達成率(p
n:nは1〜Nの整数)とを求め、各学習領域における試験者の偏差(p
n−a
n:nは1〜Nの整数)を算出する。偏差は、正の値、ゼロ、負の値のいずれかとなる。偏差が正の値が平均達成率より上位、負の値が平均達成率より下位を意味する。なお、達成率とは、配点合計に対する得点の割合を意味し、例えば、ある学習領域において、配点合計が15点、得点が9点であれば、達成率は60%(=9/15)となる。
【0020】
N個の学習領域のうち、偏差が小さい順に
n1個(
n1≦N)の学習領域を選択する。上記したように、偏差は負の値となる場合もあるため、偏差が負の値である学習領域からは絶対値が大きい順に、偏差が正の値である学習領域からは絶対値の小さい順に選択する。選択する学習領域の数は特に制限されないが、2個以上6個以下が好ましい。1個では、復習する範囲が狭すぎ、7個以上では、復習する問題が多くなりすぎて、やる気を失い、振り返り問題に取り組まない者が増えてしまう場合がある。
偏差の値が小さい学習領域ほど、平均と比較して試験者が相対的に苦手とする学習領域、すなわち弱点となっている学習領域であることを意味する。個々の試験者には、それぞれ得意・不得意が存在し、それぞれが強化すべき学習領域は異なるが、偏差が小さい学習領域から順に選択することにより、試験者それぞれの弱点である学習領域を抑えた振り返り問題を提供することができる。
【0021】
ここで、ある学習領域における試験者の平均達成率が、20%以下または80%以上のように、著しく低い、または高い場合、他の学習領域と比較して偏差が異常値となるため、偏差が小さい順に並べても苦手とする学習領域を正確に把握することができない。本発明の学力向上のための振り返り補強システムは、各学習領域における領域想定正答率が45%以上70%以下となるように作問されているため、学習領域毎に平均達成率と相対化した学力を正確に把握することができる。
【0022】
選択された
n1個の学習領域のうち、偏差が正または0の学習領域からは標準振り返り問題、偏差が負の学習領域からは基礎振り返り問題を選択して、試験者毎に個別振り返りシートを作成する。すなわち、平均達成率以上の学力を有する学習領域は標準振り返り問題、平均達成率未満の学力を有する学習領域は基礎振り返り問題が選択される。平均達成率以上である優秀な試験者に基礎的な問題を提供しても、簡単すぎて学習効果がほとんどなく、平均達成率未満であった学力不振な試験者に応用的な問題、発展的な問題を提供しても、難しすぎて学習効果は期待できない。本発明の個別振り返りシートは、試験者それぞれのレベルに応じた適切な難易度の学力補強問題を提供するため、それぞれの試験者が相対的に苦手とする学習領域における学力底上げに寄与し、極めて高い学習効果を有する。
【0023】
本発明の個別振り返りシートには、学力補強問題が記載されているが、試験者が学力補強問題を解かない限りは学習効果はない。そのため、学力補強問題、特に、基礎振り返り問題は、穴埋め式問題、択一式問題のいずれか、または両方であることが好ましい。穴埋め式問題、択一式問題のいずれか、または両方であれば、短い時間で問題を解くことができるため、試験者の多くが振り返り問題に取り組むことが期待できる。また、試験結果と個別振り返りシートを返却した後に、全員で一斉に学力補強問題に取り組んでも、記載されている学力補強問題を解くのに必要な時間が短いため、授業時間を確保することができる。
個別振り返りシートは、得点、平均点、順位等が記載された試験結果とともに、試験者に返却することが好ましい。試験結果を確認して、勉強を頑張ろうと奮起したタイミングで個別振り返りシートを返却することにより、自発的に学力補強問題に取り組むことが期待できる。
【0024】
通常、試験結果と個別振り返りシートは、試験後2週間程度で返却される。上記した(2B)自己診断見直しシートを用いた試験直後の見直しと、個別振り返りシートを用いた試験約2週間後の見直しとを行うことにより、脳に適度な間隔を開けて強い情報刺激を与えることができるため、記憶の定着を促し、極めて高い学習効果をもたらすことができる。
【0025】
本発明の学力向上のための振り返り補強システムは、生活・学習習慣調査と組み合わせることもできる。
(4A)生活・学習習慣調査実施
生活・学習習慣調査は、生活や学習に対する意識や考え方を含むM個の項目について、多肢選択式で、各問について4〜6個程度の選択肢を示して行う。調査項目は、40個以上60個以下が、多様な観点からの調査を行うために好ましい。調査項目は、「生活習慣」、「学習意識」といった、より少数の上位カテゴリーに分類することもできる。また、生活・学習習慣調査は、マークシート式で行うことが、集計、統計処理を迅速に行うことができるため好ましい。
生活・学習習慣調査を実施するタイミングは特に制限されないが、(2)で実施する学力検査テストの結果との相関関係を的確に把握するために、学力検査テスト実施日の前後1週間以内に行うことが好ましく、前後3日以内に行うことがより好ましく、同日に行うことが最も好ましい。
【0026】
(4B)生活・学習改善シート作成
(2)で実施した学力検査テストの全体平均得点(A
0)と、(4A)で実施した生活・学習習慣調査において試験者と同一回答をした同一グループに含まれる複数者の前記学力検査テストの平均得点(S
m:mは1〜Mの整数。)とから、生活・学習習慣偏差(D
m=S
m−A
0:mは1〜Mの整数)を求める。すなわち、生活・学習習慣偏差は、ある試験者について生活・学習習慣調査の項目数と同じ数だけ存在する。生活・学習習慣偏差は、各項目毎に同一回答を選択したグループの平均得点(S
m)と試験者全体の全体平均得点(A
0)との差を示すものであり、生活・学習習慣偏差が正であると平均得点より上位、生活・学習習慣偏差が負であると平均得点より下位のグループであることを意味する。
【0027】
試験者について、生活・学習習慣偏差が小さい順に選択した
m1個(
m1≦M)の項目の生活・学習習慣を選択して、この試験者のための生活・学習改善シートを作成する。生活・学習習慣調査の調査項目が、上位カテゴリーに分類されている場合、各カテゴリーに属する項目の中で生活・学習習慣偏差が負である項目を優先的に選択することもできる。生活・学習改善シートに記載する生活・学習習慣は、5個以上10個以下が好ましい。選択された生活・学習習慣は、調査項目毎に試験者が属するグループにおける平均得点が低いものである。そのため、試験者は、自分の生活・学習習慣のうち、学力に悪影響を及ぼす生活・学習習慣を把握することができる。
【0028】
生活・学習改善シートには、選択された生活・学習習慣について、異なる選択肢を選んだグループそれぞれの生活・学習習慣偏差が記載されている。そのため、試験者は、ある生活・学習習慣について、自分の属するグループと他のグループとの学力差を理解することができ、生活・学習習慣を改善して他のグループに移ることによる学力向上をイメージしやすく、自発的な生活・学習習慣の改善を促すことができる。
【0029】
本発明の学力向上のための振り返り補強システムは、年に1回、または2回の頻度で、連続する複数年に亘って実施することが好ましい。本発明の学力向上のための振り返り補強システムは、学力検査テストの結果を利用して、学力向上を図るものであり、長期的な学力の推移を把握するために、連続する複数年に亘って実施することが好ましい。また、学力の向上は、短期的に現れるものでなく、長期的に実現するものである。複数年に亘って実施することにより、試験者は、以前の自分と現在の自分との差を定期的に確認することができる。
【0030】
「実施例」
以下に、中学校3年生の理科を例として、本発明の学力向上のための振り返り補強システムを具体的に説明する。本例では、(2B)自己診断見直しシート配布、(4A)生活・学習習慣調査実施、(4B)生活・学習改善シート作成のいずれも行っている。
【0031】
(1A)学力検査テスト問題作成
図2に、学力検査テストの小問の構成例を示す。
中学校3年生の学力検査テストは、中学校1、2年生で学んだ内容の理解度を確認するものであり、出題範囲は、中学校1、2年生で学習した全範囲とする。この出題範囲から、「小問集合」「植物のはたらき」、「水溶液の性質」、「光の性質」、「火山と地震」、「地球と宇宙」、「刺激と反応」、「運動とエネルギー」の8個の大問を作成する。この8個の大問のうち、小問集合を除く7個が学習領域である。各大問(小問集合と7個の学習領域)について2問以上の小問を作成する。
【0032】
学力検査テストの平均正答率を55%、学習領域それぞれの領域平均正答率を45〜65%と想定し、Zレベル(想定正答率0%以上25%未満)、Aレベル(想定正答率25%以上50%未満)、Bレベル(想定正答率50%以上75%未満)、Cレベル(想定正答率75%以上100%以下)の難易度に区分した小問を、各学習領域が、想定正答率50%未満であるZ、またはAレベルである標準問題を1問以上、想定正答率が50%以上であるB、またはCレベルである基礎問題を1問以上含むように作成する。また、全体としてZ〜Cの各難易度の小問が2問以上となるように作成する。なお、小問集合については、想定正答率が50%以上である基礎問題のみから構成することもできる。
【0033】
(1B)学力補強問題作成
7個の学習領域のそれぞれにおいて、標準問題のいずれかに関連した標準振り返り問題と、基礎問題のいずれかに関連した基礎振り返り問題とからなる学力補強問題を作成する。小問集合は、様々な学習領域から出題され、一つの学習領域として把握できないため、学力補強問題を作成しない。ただし、小問集合を構成する小問が、いずれかの学習領域に関連付けられるのであれば、その学習領域を構成する小問と見なすこともできる。
【0034】
(2)学力検査テスト実施
(1A)で作成した学力検査テストを、学校、市町村、都道府県等の範囲で実施し、複数者の試験結果を得る。学力検査テストの問題用紙は回収しないことが、余白に書き込んだ解答を用いて自己採点できるため好ましい。
【0035】
(2B)自己診断見直しシート配布
(2)で実施した学力検査テストの試験後に、各小問の正答と(1A)で区分した難易度とが記載されている自己診断見直しシートを配布する。自己診断見直しシートの例を
図3に示す。
自己診断見直しシートを利用して、試験直後に自己採点を行い、各小問の難易度と、正解/不正解とを知ることにより、試験者は現在の実力、得意分野、苦手分野等を把握することができる。
【0036】
(3)個別振り返りシート作成
(2)で実施した学力検査テストの結果から、各学習領域における試験者の偏差を求め、試験者毎に個別振り返りシートを作成する。
図4に、Aさん、Bさん、Cさんそれぞれの試験結果と各学習領域毎に選択される学力補強問題の例を示す。
【0037】
Aさんの得点は20点であり、学力不振な生徒である。Aさんの各学習領域における平均達成率と全体の平均達成率との差である偏差は、低い方から順に、−63.9(光の性質)、−55.6(刺激と反応)、−47.5(植物のはたらき)、−41.7(運動とエネルギー)、−37.1(火山と地震)、−1.6(地球と宇宙)、19.8(水溶液の性質)であった。この学習領域の中から、偏差が小さい順に選択した4個の学習領域について、学力補強問題を作成する。Aさんは、選択された4個の学習領域における偏差がいずれも負の値であったため、学力補強問題として全て基礎振り返り問題を選択して、Aさん用の個別振り返りシートを作成する。
【0038】
Bさんの得点は60点であり、平均的な生徒である。Bさんの各学習領域における偏差は、低い方から順に、−37.1(火山と地震)、−22.5(植物のはたらき)、6.7(地球と宇宙)、9.8(水溶液の性質)、14.6(運動とエネルギー)、36.1(光の性質)、44.4(刺激と反応)であった。この学習領域の中から、偏差が小さい順に選択した4個の学習領域について、学力補強問題を作成する。Bさんは、選択された4個の学習領域のうち、2個の学習領域(火山と地震、植物のはたらき)における偏差が負の値、2個の学習領域(水溶液の性質、地球と宇宙)における偏差が正の値であった。そのため、学力補強問題として、偏差が負の値であった2個の学習領域からは基礎振り返り問題、偏差が正の値であった2個の学習領域からは標準振り返り問題を選択して、Bさん用の個別振り返りシートを作成する。
【0039】
Cさんの得点は80点であり、優秀な生徒である。Cさんの各学習領域における偏差は、低い方から順に、−20.2(水溶液の性質)、19.1(植物のはたらき)、22.9(火山と地震)、27.1(運動とエネルギー)、36.1(光の性質)、40.1(地球と宇宙)、44.4(刺激と反応)であった。この学習領域の中から、偏差が小さい順に選択した4個の学習領域について、学力補強問題を作成する。Cさんは、選択された偏差が小さい4個の学習領域のうち、1個の学習領域(水溶液の性質)における偏差が負の値、3個の学習領域(植物のはたらき、火山と地震、運動とエネルギー)における偏差が正の値であった。そのため、学力補強問題として、偏差が負の値であった1個の学習領域からは基礎振り返り問題、偏差が正の値であった3個の学習領域からは標準振り返り問題を選択して、Cさん用の個別振り返りシートを作成する。
【0040】
図5に、Bさんの個別振り返りシートの例を示す。
Bさんの個別振り返りシートには、上記したように、偏差が小さい順に選択した4個の学習領域(火山と地震、植物の分類、水溶液の性質、地球と宇宙)が記載されている。4個の学習領域のうち、偏差が負であった2個の学習領域(火山と地震、植物のはたらき)については、学力補強問題として基礎振り返り問題が選択され、偏差が正であった2個の学習領域(水溶液の性質、地球と宇宙)については、学力補強問題として標準振り返り問題が選択されている。また、学力補強問題は、いずれも穴埋め式問題である。
【0041】
本発明の学力向上のための振り返りシステムにより、各個人に対して、偏差が小さい学習領域から順に選択された学力補強問題が記載された個別振り返りシートを提供することができる。学力補強問題は、試験者それぞれが苦手とする学習領域から出題されているため、本発明の学力向上のための振り返りシステムにより、弱点分野の見直しを重点的に行うことができる。また、本発明の学力向上のための振り返りシステムは、学習領域における各個人の達成率に応じて、平均達成率未満の試験者には基本振り返り問題、平均達成率以上の試験者には標準振り返り問題と、学力に応じて適切な難易度の学力補強問題を提供するため、極めて高い学習効果を奏する。
【0042】
(4A)生活・学習習慣調査実施
上記(2)の学力検査テストと同日に、生活・学習習慣調査を実施する。
この例において実施する生活・学習習慣調査は、「日常生活」、「意識と行動」、「家庭学習」、「能力の自己評価」、「学校生活・人間関係」の5カテゴリーについて、それぞれ10問ずつ計50問で構成されている。生活・学習習慣調査は、マークシート式であり、例えば、日常生活における1日当たりのテレビ等の視聴時間を、「4時間以上」、「3時間以上4時間未満」、「2時間以上3時間未満」、「1時間以上2時間未満」、「1時間未満」、「全く見たり、聞いたりしない」の6個の選択肢の中からいずれかを選択させる。
【0043】
(4B)生活・学習改善シート作成
(2)で実施した学力検査テストと、(4A)で実施した生活・学習習慣調査とから、試験者毎に生活・学習改善シートを作成する。
図6に、Aさんの生活・学習改善シートの例を示す。
Aさんの生活・学習改善シートには、(4A)で実施した生活・学習習慣調査の全問(50問)から、Aさんと同一の選択肢を選択したグループとして生活・学習習慣偏差が低かった5項目について記載されている。例えば、Aさんは、学力不振な生徒であるが、「1日当たりのテレビ・ビデオ・DVDの時間」が「4時間以上」であるグループに属し、このグループの生活・学習習慣偏差は−35.8である。Aさんの生活・学習改善シートに記載されている生活習慣は、Aさんが属する同一生活習慣を有する50個のグループの中で、グループとしての平均学力が低いものである。そのため、生活・学習改善シートに記載されている生活・学習習慣が、学力に悪影響を及ぼしていることを理解することができる。
【0044】
また、生活・学習改善シートには、記載されている項目について、他の選択肢を選んだグループの生活・学習習慣偏差が記載されている。例えば、「1日当たりのテレビ・ビデオ・DVDの時間」が、「3時間以上4時間未満」であるグループの生活・学習習慣偏差は−19.2である。生活・学習改善シートにより、記載されている生活・学習習慣について、自分の属するグループと他のグループとの平均学力の違いを一目で把握することができるため、生活・学習習慣を改めることによる学力向上効果をイメージすることができる。
【0045】
生活・学習改善シートは、学力テストの試験結果、および個別振り返りシートと同時に配布することが好ましい。生活・学習習慣を改めることは容易でなく、生活・学習習慣の改善による学力へ影響は長期的に期待できるものであり、短期で実感することが難しい。試験結果、および個別振り返りシートと同時に配布することにより、試験者のやる気の高いタイミングでの生活・学習習慣の改善を促し、また、個別振り返りシートによる学力向上を生活・学習習慣の改善開始頃に感じることにより、改善した生活・学習習慣の継続が期待できる。