特許第6781488号(P6781488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6781488組立式コンクリート充填円形鋼管複合節点
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6781488
(24)【登録日】2020年10月20日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】組立式コンクリート充填円形鋼管複合節点
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20201026BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   E04B1/58 508S
   E04B1/24 L
   E04B1/58 505Q
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-516467(P2019-516467)
(86)(22)【出願日】2018年4月12日
(65)【公表番号】特表2020-514572(P2020-514572A)
(43)【公表日】2020年5月21日
(86)【国際出願番号】CN2018082751
(87)【国際公開番号】WO2019119686
(87)【国際公開日】20190627
【審査請求日】2019年4月8日
(31)【優先権主張番号】201711390229.0
(32)【優先日】2017年12月21日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518229179
【氏名又は名称】青▲島▼理工大学
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO UNIVERSITY OF TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牟犇
(72)【発明者】
【氏名】▲馮▼▲鵬▼
(72)【発明者】
【氏名】李茜
(72)【発明者】
【氏名】管▲暁▼明
【審査官】 富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第107338872(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第106049691(CN,A)
【文献】 特開2016−069902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04B 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形鋼管柱(1)及びH形鋼梁(2)を含み、前記円形鋼管柱(1)内を鉄筋(9)が貫通し、前記円形鋼管柱(1)は上部鋼管柱(3)、中心挿込柱(4)及び下部鋼管柱(5)を含み、前記上部鋼管柱(3)と前記中心挿込柱(4)との間は上部スリーブ連結部材(6)で連結され、前記中心挿込柱(4)と前記下部鋼管柱(5)との間は下部スリーブ連結部材(7)で連結され、
前記上部鋼管柱(3)の上端及び前記下部鋼管柱(5)の下端はどちらにも鉄筋固定板(8)が固定されており、前記鉄筋固定板(8)の中心には貫通孔が設けられており、前記貫通孔の四方には鉄筋用孔が設けられており、前記鉄筋(9)は前記上部鋼管柱(3)上端の鉄筋固定板(8)、前記円形鋼管柱(1)及び前記下部鋼管柱(5)下端の鉄筋固定板(8)の順に通され、
前記上部スリーブ連結部材(6)は円形管(10)、環状連結板(11)及び挿込板(12)を含み、前記円形管(10)の直径は前記円形鋼管柱(1)の直径よりも小さく、前記円形管(10)の中間位置に環状連結板(11)が設けられており、前記環状連結板(11)は少なくとも2枚のエンドプレート(13)を含み、前記挿込板(12)は前記エンドプレート(13)の下方に固定され、前記円形管(10)、前記エンドプレート(13)のどちらとも垂直に連結され、前記下部スリーブ連結部材(7)の構造は前記上部スリーブ連結部材(6)と対称になっており、前記挿込板(12)は前記エンドプレート(13)の上方に固定され、
前記中心挿込柱(4)の上端及び下端はどちらにも前記挿込板(12)とかみ合う凹溝(14)が設けられており、
前記H形鋼梁(2)の前記円形鋼管柱(1)と連結される一端のウェブの中間位置には突出板(15)が設けられており、前記突出板(15)の上縁と前記H形鋼梁(2)の上フランジとの間の距離は前記上部スリーブ連結部材(6)の挿込板(12)の高さよりも小さくなく、前記突出板(15)の下縁と前記H形鋼梁(2)の下フランジとの間の距離は前記下部スリーブ連結部材(7)の挿込板(12)の高さよりも小さくなく、
前記上部スリーブ連結部材(6)の上半部の円形管(10)は前記上部鋼管柱(3)中に挿入され、前記挿込板(12)は前記中心挿込柱(4)上端の凹溝(14)内に挿入され、前記下部スリーブ連結部材(7)の下半部の円形管(10)は前記下部鋼管柱(5)中に挿入され、前記挿込板(12)は前記中心挿込柱(4)下端の凹溝(14)内に挿入され、前記H形鋼梁(2)の突出板(15)は前記上部スリーブ連結部材(6)の挿込板(12)と前記下部スリーブ連結部材(7)の挿込板(12)との間に挿入され、前記挿込板(12)及び前記突出板(15)の両側はウェブ用連結板(16)により重ね接合され、前記H形鋼梁(2)の上フランジと前記上部スリーブ連結部材(6)のエンドプレート(13)、前記H形鋼梁(2)の下フランジと前記下部スリーブ連結部材(7)のエンドプレート(13)は、それぞれフランジ用連結板(17)により重ね接合され、
前記円形鋼管柱(1)の中にコンクリートが充填されていることを特徴とする、組立式コンクリート充填円形鋼管複合節点
【請求項2】
前記円形鋼管柱(1)は4つの前記H形鋼梁(2)と接合され、前記環状連結板(11)は4枚の前記エンドプレート(13)を含み、4枚のエンドプレート(13)は十字形状を呈することを特徴とする、請求項1に記載の組立式コンクリート充填円形鋼管複合節点
【請求項3】
前記円形鋼管柱(1)は3つの前記H形鋼梁(2)と接合され、前記環状連結板(11)は3枚の前記エンドプレート(13)を含み、3枚のエンドプレート(13)はT字形状を呈することを特徴とする、請求項1に記載の組立式コンクリート充填円形鋼管複合節点
【請求項4】
前記円形鋼管柱(1)は2つの前記H形鋼梁(2)と接合され、前記環状連結板(11)は2枚の前記エンドプレート(13)を含み、2枚のエンドプレート(13)は一文字形状を呈するか又は互いに垂直であることを特徴とする、請求項1に記載の組立式コンクリート充填円形鋼管複合節点
【請求項5】
前記上部鋼管柱(3)と前記中心挿込柱(4)との間、前記下部鋼管柱(5)と前記中心挿込柱(4)との間の隙間には、コンクリートの流出を防止するためのゴム材が充填されていることを特徴とする、請求項1に記載の組立式コンクリート充填円形鋼管複合節点
【請求項6】
前記挿込板(12)及び前記H形鋼梁(2)の突出板(15)は、高強度ボルトで前記ウェブ用連結板(16)と連結されることを特徴とする、請求項1に記載の組立式コンクリート充填円形鋼管複合節点
【請求項7】
前記エンドプレート(13)及び前記H形鋼梁(2)の上・下フランジは、高強度ボルトで前記フランジ用連結板(17)と連結されることを特徴とする、請求項1に記載の組立式コンクリート充填円形鋼管複合節点。
【請求項8】
前記上部スリーブ連結部材(6)及び前記下部スリーブ連結部材(7)をそれぞれ前記中心挿込柱(4)内に挿入する第1ステップと、
前記上部鋼管柱(3)を前記上部スリーブ連結部材(6)と連結し、前記下部鋼管柱(5)を前記下部スリーブ連結部材(7)と連結する第2ステップと、
前記H形鋼梁(2)の突出板(15)を前記上部スリーブ連結部材(6)の挿込板(12)と前記下部スリーブ連結部材(7)の挿込板(12)の間に挿入し、前記挿込板(12)及び前記突出板(15)の両側を前記ウェブ用連結板(16)で重ね接合する第3ステップと、
前記H形鋼梁(2)の上フランジと前記上部スリーブ連結部材(6)のエンドプレート(13)、前記H形鋼梁(2)の下フランジと前記下部スリーブ連結部材(7)のエンドプレート(13)をそれぞれ前記フランジ用連結板(17)で重ね接合する第4ステップと、
前記鉄筋(9)を前記上部鋼管柱(3)上端の鉄筋固定板(8)上に事前に設けた鉄筋用孔に挿入し、前記上部鋼管柱(3)、前記中心挿込柱(4)及び前記下部鋼管柱(5)の順に通し、最後に前記下部鋼管柱(5)下端の鉄筋固定板(8)上に事前に設けた鉄筋用孔に通して、前記鉄筋(9)の両端にナットを組み付けて固定連結が完了する第5ステップと、
前記鉄筋固定板(8)上に事前に設けた貫通孔から前記円形鋼管柱(1)内にコンクリートを注入し、前記上部鋼管柱(3)と前記上部スリーブ連結部材(6)、前記上部スリーブ連結部材(6)と前記中心挿込柱(4)、前記中心挿込柱(4)と前記下部スリーブ連結部材(7)、及び前記下部スリーブ連結部材(7)と前記下部鋼管柱(5)の連結部分を咬み合い作用で固定連結させて一体を形成する第6ステップと、を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組立式コンクリート充填円形鋼管複合節点の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築構造部材の技術分野に関し、具体的には、組立式コンクリート充填円形鋼管複合節点に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼構造部材は、節点を接合することでアーキテクチャが構成されるが、節点形式の選択は構造的統合性、信頼性、建設期間及び付属部材の設計・施行に直接的な影響を与える。ラーメン構造における梁と柱の接合は、回転剛性の違いによって剛接合、弾性接合、半剛接合に分類できる。
【0003】
現在では剛接合設計が最も広く応用されており、従来の柱・梁構造における節点の剛接合もまた全溶接節点、ボルト・溶接複合接合及びボルト接合の3種類の形式に分類できる。前の2種類の接合形式は、地震が発生した場合に梁端溶接接合部の品質問題及び有効な保護が得られないことによる脆性破壊が生じてしまうことが研究で分かっており、また従来の節点形式はいずれも破壊後の修復や補強が困難であるという問題が存在するため、必然的に節点の信頼性が保証し難く、或いは材料の浪費という問題を招いてしまう。
【0004】
自己修復機能構造は、新型の制震構造であり、それは地震時に人々の生命・財産の安全を保護できるだけでなく、大地震の後に人々が早く正常な生活に戻れるよう助けることができ、耐震構造設計において理想的かつ新たな方向性となっている。自己修復構造システムには主に、交換可能な構造部材、揺動機構、及び自己復元装置などが含まれる。近年の研究により、構造を揺動させることで地震の作用及び構造本体の延性設計要求が低減され、地震による破壊が減少し、構造の建設コストを節約できることが明らかになっている。構造と基礎との間の拘束、又は部材間の拘束を緩和し、構造と基礎又は部材の接触面部分が受圧力だけを受けて引張力を受けないようにさせることで、地震作用下で構造に揺動が生じ、プレストレスにより構造が復元する自己復元構造が形成される。この新型構造システムは、構造の「最大変形」を効果的に制御できるだけでなく、構造の「残留変形」を低減することもできる。
【0005】
現在では多くの学者が架構構造システムの柱・梁節点中の大梁部分にプレストレスドケーブルを設置することで地震後の構造復元機能を実現させており、小梁部分と柱は工場で緊張させたプレストレスドケーブルにより接合が完成され、施工現場では通常の鉄骨梁と同様の方法により、ボルト接合又はボルト・溶接複合接合だけで中間梁部分の接合・取付を行えばよく、現場でプレストレスドケーブルの緊張を行う必要がないため、施工において便利であり、施工の品質が向上し、且つ取付時間も短くなる。しかし、柱間に高強度鉄筋が採用されたコンクリート充填鋼管複合節点における柱間の自己復元分野については研究開発の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような問題に鑑み、新型の組立式コンクリート充填円形鋼管複合節点を提供することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の組立式コンクリート充填円形鋼管複合節点は、円形鋼管柱及びH形鋼梁を含み、円形鋼管柱内を鉄筋が貫通し、円形鋼管柱は上部鋼管柱、中心挿込柱及び下部鋼管柱を含み、上部鋼管柱と中心挿込柱との間は上部スリーブ連結部材によって連結され、中心挿込柱と下部鋼管柱との間は下部スリーブ連結部材によって連結される。
【0008】
上部鋼管柱上端及び下部鋼管柱下端のどちらにも鉄筋固定板が固定されており、鉄筋固定板の中心には貫通孔が設けられており、貫通孔の四方には鉄筋用孔が設けられており、鉄筋は上部鋼管柱上端の鉄筋固定板、円形鋼管柱及び下部鋼管柱下端の鉄筋固定板の順に通され、鉄筋の両端は固定具によって固定される。
【0009】
上部スリーブ連結部材は円形管、環状連結板及び挿込板を含み、円形管の直径は円形鋼管柱の直径よりも小さく、円形管の中間位置に環状連結板が設けられており、環状連結板は少なくとも2枚のエンドプレートを含み、挿込板はエンドプレートの下方に固定され、円形管、エンドプレートのどちらとも垂直に連結されており、下部スリーブ連結部材の構造は上部スリーブ連結部材と対称になっており、挿込板はエンドプレートの上方に固定される。
【0010】
中心挿込柱上端及び下端のどちらにも挿込板とかみ合う凹溝が設けられている。
【0011】
H形鋼梁の円形鋼管柱と連結される一端のウェブの中間位置には突出板が設けられており、突出板の上縁とH形鋼梁の上フランジとの間の距離は上部スリーブ連結部材の挿込板の高さよりも小さくなく、突出板の下縁とH形鋼梁の下フランジとの間の距離は下部スリーブ連結部材の挿込板の高さよりも小さくない。
【0012】
上部スリーブ連結部材の上半部の円形管は上部鋼管柱中に挿入され、挿込板は中心挿込柱上端の凹溝内に挿入され、下部スリーブ連結部材の下半部の円形管は下部鋼管柱中に挿入され、挿込板は中心挿込柱下端の凹溝内に挿入され、H形鋼梁の突出板は上部スリーブ連結部材の挿込板と下部スリーブ連結部材の挿込板との間に挿入され、挿込板及び突出板の両側はウェブ用連結板により重ね接合され、H形鋼梁の上フランジと上部スリーブ連結部材のエンドプレート、H形鋼梁の下フランジと下部スリーブ連結部材のエンドプレートは、それぞれフランジ用連結板により重ね接合される。
【0013】
さらに、円形鋼管柱は4つのH形鋼梁と接合され、環状連結板は4枚のエンドプレートを含み、4枚のエンドプレートは十字形状を呈する。
【0014】
さらに、円形鋼管柱は3つのH形鋼梁と接合され、環状連結板は3枚のエンドプレートを含み、3枚のエンドプレートはT字形状を呈する。
【0015】
さらに、円形鋼管柱は2つのH形鋼梁と接合され、環状連結板は2枚のエンドプレートを含み、2枚のエンドプレートは一文字形状を呈するか又は互いに垂直である。
【0016】
さらに、上部鋼管柱と中心挿込柱との間、下部鋼管柱と中心挿込柱との間の隙間には、コンクリートの流出を防止するためのゴム材が充填されている。
【0017】
さらに、挿込板及びH形鋼梁の突出板は、高強度ボルトでウェブ用連結板と連結される。
【0018】
さらに、エンドプレート及びH形鋼梁の上・下フランジは、高強度ボルトでフランジ用連結板と連結される。
【0019】
上部鋼管柱、中心挿込柱、下部鋼管柱、上・下スリーブ連結部材及びH形鋼梁は、いずれも事前に工場でプレキャストされ、現場では組み立てるだけでよい。
【0020】
上記の組立式コンクリート充填円形鋼管複合節点の取付方法には、以下のステップが含まれる。
【0021】
第1ステップで、上部スリーブ連結部材及び下部スリーブ連結部材をそれぞれ中心挿込柱内に挿入する。
【0022】
第2ステップで、上部鋼管柱を上部スリーブ連結部材と連結し、下部鋼管柱を下部スリーブ連結部材と連結する。
【0023】
第3ステップで、H形鋼梁の突出板を上部スリーブ連結部材の挿込板と下部スリーブ連結部材の挿込板の間に挿入し、挿込板及び突出板の両側をウェブ用連結板で重ね接合する。
【0024】
第4ステップで、H形鋼梁の上フランジと上部スリーブ連結部材のエンドプレート、H形鋼梁の下フランジと下部スリーブ連結部材のエンドプレートをそれぞれフランジ用連結板で重ね接合する。
【0025】
第5ステップで、高強度鉄筋を上部鋼管柱上端の鉄筋固定板上に事前に設けた鉄筋用孔に挿入し、上部鋼管柱、中心挿込柱及び下部鋼管柱の順に通し、最後に下部鋼管柱下端の鉄筋固定板上に事前に設けた鉄筋用孔に通して、鉄筋の両端にナットを組み付けて固定連結が完了する。
【0026】
第6ステップで、鉄筋固定板上に事前に設けた貫通孔から円形鋼管柱内にコンクリートを注入し、前記上部鋼管柱(3)とと前記上部スリーブ連結部材(6)、前記上部スリーブ連結部材(6)と前記中心挿込柱(4)、前記中心挿込柱(4)と前記下部スリーブ連結部材(7)、及び前記下部スリーブ連結部材(7)と前記下部鋼管柱(5)の連結部分は咬み合い作用で固定連結させて一体を形成する。
【発明の効果】
【0027】
本発明は次の有利な効果を有する。
【0028】
(1)本発明の組立式コンクリート充填円形鋼管複合節点は、工場で全部材の加工が完了し、現場ではボルトで全て連結できるようにして完全な組立化施工を実現しており、現場での溶接によって生じかねない品質問題を回避し、且つ施工の進捗を速め、労働生産率を向上させることができる。
【0029】
(2)本発明は、節点を貫通する鉄筋群やプレストレストコンクリートなどの措置を設けることで、従来のプレキャスト組立式の欠点である構造的統合性・耐震性能の不足を効果的に回避し、コンクリート中にひび割れが過度に早く生じるのを防ぎ、垂直構造部材の連結の信頼性を強化しており、これにより構造的統合性が強化され、節点に良好な耐震性能を具備させて、地震中に節点が部材よりも先に破損してしまう状況を効果的に回避させる。
【0030】
(3)本発明の組立式コンクリート充填円形鋼管複合節点は、小地震作用下では通常の固定接合された柱・梁節点の機能と変わらず、節点の設計により「小地震では損傷しない」という耐震設計目標を達成している。中規模の地震作用下では、柱端に連結された鋳鋼内スリーブ式連結部材が回転剛性を提供し、中心挿込柱及び上・下部鋼管柱が分離する傾向を有する一方で、鋼管柱内のコンクリートは高強度鉄筋群が与えるプレストレスによって過度に早くひび割れることがなく、鋼管柱内の高強度鉄筋の引張は終始弾性状態にあり、地震後に変形が迅速に復元されて機能を発揮し続ける。大地震作用下では、構造に大きな変化が生じる可能性があるが、構造的統合性が強い故に倒壊はせず、地震後に破損した部材はいずれも精確に取外すことができ、迅速な交換を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の構造分解組立図である。
図2】本発明の円形鋼管柱の構造分解組立図である。
図3】本発明のA部分の分解図である。
図4】本発明の組立完了後の構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を図に基づいてさらに説明する。
【0033】
図1、2、3が示す通り、本発明の組立式コンクリート充填円形鋼管複合節点は、円形鋼管柱1及びH形鋼梁2を含み、円形鋼管柱内を鉄筋9が貫通し、円形鋼管柱は上部鋼管柱3、中心挿込柱4及び下部鋼管柱5を含み、上部鋼管柱と中心挿込柱との間は上部スリーブ連結部材6によって連結され、中心挿込柱と下部鋼管柱との間は下部スリーブ連結部材7によって連結される。
【0034】
上部鋼管柱上端及び下部鋼管柱下端のどちらにも鉄筋固定板8が固定されており、鉄筋固定板の中心には貫通孔が設けられており、貫通孔の四方には鉄筋用孔が設けられており、鉄筋は上部鋼管柱上端の鉄筋固定板、円形鋼管柱及び下部鋼管柱下端の鉄筋固定板の順に通され、鉄筋の両端は固定具によって固定される。
【0035】
上部スリーブ連結部材は円形管10、環状連結板11及び挿込板12を含み、円形管の直径は円形鋼管柱の直径よりも小さく、円形管の中間位置に環状連結板が設けられており、環状連結板は少なくとも2枚のエンドプレート13を含み、挿込板はエンドプレートの下方に固定され、円形管、エンドプレートのどちらとも垂直に連結されており、下部スリーブ連結部材の構造は上部スリーブ連結部材と対称になっており、挿込板はエンドプレートの上方に固定される。
【0036】
建築骨組中の節点位置に基づき、円形鋼管柱を4つのH形鋼梁と接合する場合には、環状連結板は4枚のエンドプレートを含み、4枚のエンドプレートは十字形状を呈する。円形鋼管柱を3つのH形鋼梁と接合する場合には、環状連結板は3枚のエンドプレートを含み、3枚のエンドプレートはT字形状を呈する。円形鋼管柱を2つのH形鋼梁と接合する場合には、環状連結板は2枚のエンドプレートを含み、2枚のエンドプレートは一文字形状を呈するか又は互いに垂直である。
【0037】
中心挿込柱上端及び下端のどちらにも挿込板とかみ合う凹溝14が設けられている。
【0038】
H形鋼梁の円形鋼管柱と連結される一端のウェブの中間位置には突出板15が設けられており、突出板の上縁とH形鋼梁の上フランジとの間の距離は上部スリーブ連結部材の挿込板の高さよりも小さくなく、突出板の下縁とH形鋼梁の下フランジとの間の距離は下部スリーブ連結部材の挿込板の高さよりも小さくない。
【0039】
連結時には、上部スリーブ連結部材の上半部の円形管は上部鋼管柱中に挿入され、挿込板は中心挿込柱上端の凹溝内に挿入され、下部スリーブ連結部材の下半部の円形管は下部鋼管柱中に挿入され、挿込板は中心挿込柱下端の凹溝内に挿入される。H形鋼梁の突出板は上部スリーブ連結部材の挿込板と下部スリーブ連結部材の挿込板との間に挿入され、突出版と挿込板の連結は挿込板及び突出板の両側にウェブ用連結板16が追加されて重ね接合され、挿込板、突出板及びウェブ用連結板は高強度ボルトで連結される。H形鋼梁の上フランジと上部スリーブ連結部材のエンドプレート、H形鋼梁の下フランジと下部スリーブ連結部材のエンドプレートの連結は、いずれもフランジ用連結板17が追加されて重ね接合され、上・下フランジとエンドプレートはいずれも高強度ボルトで連結される。連結後の構造概略図は図4が示す通りである。
【0040】
上部鋼管柱、中心挿込柱、下部鋼管柱、上・下スリーブ連結部材及びH形鋼梁は、いずれも事前に工場でプレキャストされ、現場では組み立てるだけでよい。
【0041】
上記の組立式コンクリート充填円形鋼管複合節点の取付方法には、以下のステップが含まれる。
【0042】
第1ステップで、上部スリーブ連結部材及び下部スリーブ連結部材をそれぞれ中心挿込柱内に挿入する。
【0043】
第2ステップで、上部鋼管柱を上部スリーブ連結部材と連結し、下部鋼管柱を下部スリーブ連結部材と連結する。
【0044】
第3ステップで、H形鋼梁の突出板を上部スリーブ連結部材の挿込板と下部スリーブ連結部材の挿込板の間に挿入し、挿込板及び突出板の両側をウェブ用連結板で重ね接合する。
【0045】
第4ステップで、H形鋼梁の上フランジと上部スリーブ連結部材のエンドプレート、H形鋼梁の下フランジと下部スリーブ連結部材のエンドプレートをそれぞれフランジ用連結板で重ね接合する。
【0046】
第5ステップで、高強度鉄筋を上部鋼管柱上端の鉄筋固定板上に事前に設けた鉄筋用孔に挿入し、上部鋼管柱、中心挿込柱及び下部鋼管柱の順に通し、最後に下部鋼管柱下端の鉄筋固定板上に事前に設けた鉄筋用孔に通して、鉄筋の両端にナットを組み付けて固定連結が完了する。
【0047】
第6ステップで、鉄筋固定板上に事前に設けた貫通孔から円形鋼管柱内にコンクリートを注入し、連結部分は咬み合い作用で固定連結させて一体を形成する。コンクリートの流出を防止するため、上部鋼管柱と中心挿込柱との間、下部鋼管柱と中心挿込柱との間の隙間にはゴム材が充填されている。
【0048】
上述は本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、当業者であれば本発明の様々な変更及び改変が可能である。本発明の精神及び原則内において行われる何らかの修正、均等物による置換、改良などはすべて本発明の保護範囲を逸脱しない。
【符号の説明】
【0049】
1 円形鋼管柱
2 H形鋼梁
3 上部鋼管柱
4 中心挿込柱
5 下部鋼管柱
6 上部スリーブ連結部材
7 下部スリーブ連結部材
8 鉄筋固定板
9 鉄筋
10 円形管
11 環状連結板
12 挿込板
13 エンドプレート
14 凹溝
15 突出板
16 ウェブ用連結板
17 フランジ用連結板
図1
図2
図3
図4