【実施例】
【0030】
図6,
図7は、半導体基板30としてIV族半導体基板であるn−Si基板を用いた端面入射型半導体受光素子1Bを示している。端面入射型半導体受光素子1Bは、半導体基板30の(100)面を主面30aとして、主面30a側に光信号を電気信号に変換する受光部31を有する。
【0031】
半導体基板30の表面30b(主面30a)には、受光部31で変換された電気信号を外部に取り出すための1対の電極32,33を備えている。半導体基板30は、主面30aに対向する裏面30c側がマウント基板34に固定されている。マウント基板34は例えばセラミック基板であり、半導体基板30が固定される表面に鏡面加工されたマウント基板反射部34aを有する。マウント基板反射部34aは、例えば主としてAu膜を含む金属膜を反射面とした反射膜によって形成されている。
【0032】
受光部31は、半導体基板30の表面30b側に、表面30bから所定の深さ範囲に例えばP(リン)等をドープしたn+拡散層35が形成されている。また、n+拡散層35よりも表面30b側のn−Si層36の一部領域に、例えばB(ホウ素)等をドープしたp型拡散領域36aが形成されている。受光部31は、これらn+拡散層35とn−Si層36とp型拡散領域36aによって構成されたフォトダイオードである。また、受光部31のn+拡散層35、p型拡散領域36aに電気的に接続する電極32,33が夫々形成されている。
【0033】
端面入射型半導体受光素子1Bには、表面30bと裏面30c以外の4つの端面のうちの1つの端面30d側の光ファイバケーブルから出射された光が、主面30aに対して平行に入射する。この出射点をPとして、出射点Pに臨む半導体基板30の端面30d(入射側端部)から光の入射方向に沿って、半導体基板30の一部が除去された導光部38が形成されている。
【0034】
導光部38の光の入射方向端部には、主面30aに対して所定の交差角θ2を有する反射部39aが形成されている。反射部39aは、導光部38の形成により露出した半導体基板30の(111)面39に、例えば主としてAu膜を含む金属膜を反射面とした反射膜によって形成されている。露出した半導体基板30の(111)面39は平滑面であり、主面30aに対して所定の交差角θ2=54.7°で交差し、裏面30cに125.3°の鈍角に連なる。それ故、反射部39aは、平滑な反射面により高い反射率を有する共に、主面30aに対して所定の交差角θ2を有する。
【0035】
受光部31のn+拡散層35は、導光部38の形成によって導光部38に露出する。反射部39aは、露出した受光部31とは反対側のマウント基板反射部34aに向けて、入射した光を反射させるように構成されている。そして、受光部31のn+拡散層35に向けて反射された光の大部分が受光部31に到達するように、導光部38に臨むn+拡散層35に入射する際の反射を防ぐための反射防止膜40が、露出したn+拡散層35を覆うように形成されている。反射防止膜40は、例えばSiN膜であり、入射する光の波長の1/4程度の厚さ(例えば850nmの波長の光に対して210nm程度の厚さ)を有する。
【0036】
出射点Pから主面30aに対して平行に出射された光は、矢印付きの折れ線で示すように広がりながら導光部38を通って反射部39aに到達し、反射部39aによって受光部31と反対側のマウント基板反射部34aに向けて反射される。そして、反射部39aで反射された光は、マウント基板反射部34aによって受光部31向けて反射され、受光部31に到達するように構成されている。端面入射型半導体受光素子1Bの受光部31に到達する光路には、光を吸収する半導体基板30がないので、半導体基板30に吸収される波長の光に対しても端面入射型半導体受光素子1Bを利用することができる。
【0037】
次に、導光部38の形成方法について、
図8,
図9に基づいて説明する。
主面30a側に受光部31及び電極32,33が形成され、適切な厚さ(例えば150μm)に加工された半導体基板30の表面30bに、保護層41として例えばフォトレジスト層を形成する(保護層形成工程)。この半導体基板30には、直線L3に対して対称に2つの受光部31が形成されている。
【0038】
また、半導体基板30の裏面30cに、エッチングマスクとして誘電体層42(例えばSiO2膜、SiN膜)を形成し、半導体基板30の裏面30cの所定の領域(2つの受光部31及びこれらの間に対応する領域)を露出させる矩形状の開口部42aを形成する(エッチングマスク形成工程)。ここで、2つの受光部31の並ぶ方向を適切に選択することによって、開口部42aから半導体基板10をエッチングして半導体基板30の(111)面を受光部31と反対側に臨むように形成することができる。
【0039】
エッチング液として例えばKOH水溶液を用いた異方性エッチングによって、線L4で示すように開口部42aから半導体基板30の一部を除去する。これにより受光部31のn+拡散層35と半導体基板30の(111)面39を露出させ、導光部38となる空間を形成する(基板エッチング工程)。エッチングの深さはエッチング時間によって制御できる。
【0040】
導光部38に臨む半導体基板30の(111)面39に反射部39aを形成し(反射部形成工程)、導光部38に露出させたn+拡散層35に反射防止膜40を形成する(反射防止膜形成工程)。例えば、導光部38に露出させたn+拡散層35に保護層を形成した状態で、半導体基板30の(111)面39に誘電体膜(SiO2膜)、金属反射膜(Au膜)の順に成膜して反射部39aを形成する。そして保護層を除去後、導光部38に露出させたn+拡散層35に反射防止膜40(SiN膜)を形成する。尚、反射防止膜40を省略することもできる。
【0041】
最後に、裏面30cの誘電体層42及び表面30bの保護層41を夫々除去した半導体基板30を直線L3に沿って分割し(ダイシング工程)、マウント基板34に夫々固定する(マウント工程)ことにより、
図6,
図7の端面入射型半導体受光素子1Bが得られる。尚、反射部形成工程と反射防止膜形成工程は、ダイシング工程とマウント工程の間であってもよい。
【0042】
端面入射型半導体受光素子1Bに対して出射点Pの位置に図示外の光ファイバケーブルの出射端が固定される。このとき光ファイバケーブルの位置ずれを防止するために、光ファイバケーブルから反射部39aまで、入射光に対して透明な合成樹脂を導光部38に充填するようして固定してもよい。尚、
図10に示すように、半導体基板30の入射側端部全体に導光部38を形成してもよく、図示を省略するが受光部31を入射方向に沿って片側から支持するように半導体基板30の入射側端部の一部を除去して導光部38を形成してもよい。
【0043】
上記端面入射型半導体受光素
子1Bの作用、効果について説明する。
端面入射型半導体受光素
子1Bの入射した光が通る導光
部38は、受光
部31が露出しており半導体基
板30がないので光が吸収されず減衰しない。そして、導光
部38の光の入射方向端部には、受光
部38に光を導くために主
面30aに対して所定の交差
角θ2を有する反射
部39aを有する。従って、入射した光の大部分を反射
部39aで反射させることができるので、光の減衰を抑えて受光
部31に光を導くことができ、吸収される波長の光に対しても端面入射型半導体受光素
子1Bを利用することができる。
【0044】
【0045】
端面入射型半導体受光素子1Bは、IV族半導体基板に吸収される波長の光に対して、反射部39aとマウント基板反射部34aで反射させて受光部31に入射させるまで、導光部38によって光の吸収を防ぐことができる。従って、半導体基板30吸収される波長の光に対しても端面入射型半導体受光素子1Bを利用することができる。
【0046】
反射
部39aは、前記半導体基
板30の(111)
面39に形成されたので、主
面30aに対する反射部
の39aの傾斜角度が自動的に定まると共に、高い反射率を備えた平滑な反射
部39aを形成できる。従って、傾斜角度ずれによる光の入射位置ずれが低減され、反射率が高い反射
部39aを形成できるので、受光感度を向上させることができる。
【0047】
受光
部31は、導光
部38に臨む側に反射防止
膜40を有するので、光が導光
部38を進んで受光
部31に入射する際の反射を反射防止
膜40によって低減することができる。従って、入射した光の大部分を受光
部31に到達させることができ、受光感度を向上させることができる。
【0048】
その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。