(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記試験体の下端部における側面には、下方に向かうにつれて前記試験体の幅方向寸法が小さくなる傾斜面が形成されている請求項1から請求項3までの何れか一項に記載のワイヤロープ探傷装置の出力確認装置。
前記試験体は、前記試験片ガイドから前記切欠きを通って前記パイプの外側まで延びるつまみをさらに有している請求項6に記載のワイヤロープ探傷装置の出力確認装置。
前記磁気遮蔽物は、前記パイプが前記ワイヤロープ設置部に設置された場合に前記スペーサを前記ワイヤロープ探傷装置に向かって押す力付与部材をさらに有している請求項10に記載のワイヤロープ探傷装置の出力確認装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るワイヤロープ探傷装置の出力確認装置が適用されるワイヤロープ探傷装置とこのワイヤロープ探傷装置によって損傷が確認されるワイヤロープとのそれぞれの側面を示す模式図である。ワイヤロープ探傷装置1は、ワイヤロープ2の損傷を検出する。ワイヤロープ2は、エレベータ、工事用クレーンなどに用いられる。ワイヤロープ探傷装置の出力確認装置は、ワイヤロープ探傷装置1の出力を検査し、ワイヤロープ探傷装置1が正常であるか異常であるかを確認するための装置である。
【0010】
ワイヤロープ2が長期間に渡って使用されることによって、ワイヤロープ2には、摩耗、腐食などが生じる。これにより、ワイヤロープ2には、破損、断線などの損傷が生じる。したがって、ワイヤロープ2の交換は、定期的に行われる。ワイヤロープ2の損傷を検出する方法としては、一定の速度で走行するワイヤロープ2の長手方向の一部区間を磁石によって用いて磁化させ、ワイヤロープ2の損傷部から漏洩する磁束を検出する方法がある。ワイヤロープ探傷装置1は、損傷部から漏洩する磁束を検出することによって、ワイヤロープ2の損傷を検出する。
【0011】
ワイヤロープ探傷装置1は、それぞれが互いに離れて設けられた一対の永久磁石11と、磁気センサ12とを備えている。一対の永久磁石11は、ワイヤロープ2の長手方向に互いに離れて配置される。一対の永久磁石11の中の一方を第1永久磁石11aとし、他方を第2永久磁石11bとする。磁気センサ12は、第1永久磁石11aと第2永久磁石11bとの間に配置されている。磁気センサ12は、ワイヤロープ2の損傷部から発生する漏洩磁束を検出する。
【0012】
また、ワイヤロープ探傷装置1は、一対の永久磁石11のそれぞれが固定されたバックヨーク13と、一対の永久磁石11のそれぞれに設けられた一対のポールピース14とをさらに備えている。一対のポールピース14の中の一方を第1ポールピース14aとし、他方を第2ポールピース14bとする。第1ポールピース14aは、第1永久磁石11aに固定されている。第2ポールピース14bは、第2永久磁石11bに固定されている。磁気センサ12は、バックヨーク13に固定されている。
【0013】
バックヨーク13、第1ポールピース14aおよび第2ポールピース14bのそれぞれは、磁性材料から構成されている。
【0014】
第1永久磁石11aおよび第2永久磁石11bは、ワイヤロープ探傷装置1にワイヤロープ2が装着された場合に、ワイヤロープ2を磁化させる。つまり、第1永久磁石11aおよび第2永久磁石11bは、ワイヤロープ2を磁化させる磁化器として機能する。ワイヤロープ2が磁化することによって、第1永久磁石11a、第2永久磁石11b、バックヨーク13、第1ポールピース14a、第2ポールピース14bおよびワイヤロープ2を通る磁気ループ3が形成される。なお、磁化器としては、永久磁石11に限らず、電磁石を用いてもよい。
【0015】
図2は、
図1のワイヤロープ探傷装置1を示す斜視図である。
図3は、
図2のワイヤロープ探傷装置1を示す分解斜視図である。第1永久磁石11aおよび第2永久磁石11bは、ワイヤロープ2を磁化するためのものである。バックヨーク13は、第1永久磁石11aおよび第2永久磁石11bを繋いでいる。第1ポールピース14aおよび第2ポールピース14bのそれぞれは、第1永久磁石11aおよび第2永久磁石11bから発生する磁束を効率的にワイヤロープ2に流し込むためにU字形状に形成されている。第1ポールピース14aおよび第2ポールピース14bの間の中心に、磁気センサ12が配置されている。磁気センサ12は、第1サーチコイル12aおよび第2サーチコイル12bを有している。第1サーチコイル12aおよび第2サーチコイル12bのそれぞれは、楕円形状に巻かれたコイルをU字形状に成形したものである。
【0016】
また、ワイヤロープ探傷装置1は、永久磁石11、磁気センサ12およびポールピース14を覆うカバー15をさらに備えている。カバー15は、永久磁石11、磁気センサ12およびポールピース14がワイヤロープ2に接触することを防止する。これにより、
永久磁石11、磁気センサ12およびポールピース14が保護される。
【0017】
ワイヤロープ探傷装置1におけるワイヤロープ2が移動する部分には、U字形状の溝が形成されている。U字形状の溝は、一対のポールピース14および磁気センサ12に渡って形成されている。ワイヤロープ探傷装置1は、ワイヤロープ2がワイヤロープ探傷装置1に形成されたU字形状の溝に沿うように、設置される。ワイヤロープ探傷装置1におけるワイヤロープ2が移動する部分、すなわち、ワイヤロープ2が設置されるワイヤロープ探傷装置1におけるU字形状の溝が形成された部分をワイヤロープ設置部16とする。
【0018】
次に、ワイヤロープ探傷装置1の動作について説明する。まず、ワイヤロープ設置部16にワイヤロープ2が設置されるように、ワイヤロープ2をワイヤロープ探傷装置1に取り付ける。なお、ワイヤロープ設置部16にワイヤロープ2が設置されるように、ワイヤロープ探傷装置1をワイヤロープ2に取り付けてもよい。その後、ワイヤロープ2の長手方向についてワイヤロープ2をワイヤロープ探傷装置1に対して相対移動させる。ワイヤロープ2をワイヤロープ探傷装置1に対して相対移動させる方法としては、ワイヤロープ2をワイヤロープ探傷装置1に対して移動させてもよく、また、ワイヤロープ探傷装置1をワイヤロープ2に対して移動させてもよい。
【0019】
ワイヤロープ2をワイヤロープ探傷装置1に対して相対移動させる場合であって、ワイヤロープ2における磁気センサ12を通過する部分に損傷部がある場合に、磁気センサ12は、ワイヤロープ2の損傷部から発生する漏洩磁束を検出する。磁気センサ12の検出信号は、ワイヤロープ探傷装置1の出力として、磁気センサ12に接続された図示しない端末装置に入力される。端末装置は、ワイヤロープ探傷装置1の出力に基づいてワイヤロープ2の損傷の有無を判定する判定部と、判定部の判定結果を表示する表示部とを有している。端末装置としては、例えば、パーソナルコンピュータが挙げられる。
【0020】
図4は、
図1のワイヤロープ探傷装置1の出力を確認し、検査するワイヤロープ探傷装置の出力確認装置を示す斜視図である。ワイヤロープ探傷装置の出力確認装置4Aは、パイプ41と、パイプ41の内側に設けられ、パイプ41の長手方向に沿って落下する試験体42とを備えている。試験体42は、落下することによってパイプ41の内側を移動する。また、ワイヤロープ探傷装置の出力確認装置4Aは、パイプ41の周囲に設けられた一対の磁気遮蔽物43と、パイプ41の上部に設けられた移動開始位置調整部44とを備えている。また、ワイヤロープ探傷装置の出力確認装置4Aは、パイプ41の上部に設けられた上枠45と、パイプ41の下部に設けられた下枠46とを備えている。
【0021】
パイプ41は、円筒形状に形成されている。パイプ41は、水平面に対して垂直方向、つまり、鉛直方向に延びるように配置されている。なお、パイプ41は、パイプ41の長手方向が水平面に対して傾斜するように配置されてもよい。ワイヤロープ探傷装置の出力確認装置4Aをワイヤロープ探傷装置1に取り付ける場合、または、ワイヤロープ探傷装置1をワイヤロープ探傷装置の出力確認装置4Aに取り付ける場合に、パイプ41は、ワイヤロープ探傷装置1のワイヤロープ設置部16に設置される。パイプ41の外径寸法は、ワイヤロープ探傷装置1のワイヤロープ設置部16にパイプ41を設置することができる外径寸法となっている。この例では、パイプ41の外径寸法は、ワイヤロープ2の直径寸法と同一となっている。
【0022】
パイプ41は、非磁性材料から構成されている。これにより、パイプ41は、ワイヤロープ探傷装置1に用いられる永久磁石11の磁力の影響を受けない。パイプ41の側壁であってパイプ41における長手方向両端部を除いた部分には、パイプ41の長手方向に延びる切欠き411が形成されている。切欠き411は、パイプ41の側壁を径方向に貫通している。パイプ41の長手方向は、試験体42の移動方向と一致する。パイプ41に形成された切欠き411は、バリが無く、滑らかに形成されている。
【0023】
試験体42は、パイプ41の内部に設けられた試験片ガイド421と、試験片ガイド421の上部に設けられた試験片422と、試験片ガイド421に設けられたつまみ423とを有している。
【0024】
図5は、
図4の試験体42を示す斜視図である。
図6は、
図5の試験体42を示す縦断面図である。試験片ガイド421は、試験体42の落下時の衝撃による変形に耐えることができる程度の剛性を有する材料から構成されている。また、試験片ガイド421は、非磁性材料から構成されている。これにより、試験片ガイド421は、ワイヤロープ探傷装置1に用いられる永久磁石11の磁力の影響を受けない。
【0025】
試験片ガイド421は、円柱形状に形成されている。また、試験片ガイド421の上面には、円盤形状の凹部424が形成されている。試験片ガイド421の外周面は、バリがなく、滑らかに形成されている。試験片ガイド421の外周面は、パイプ41の側壁の内周面に接触する。試験片ガイド421は、試験片422の側面を覆う側面被覆部425を有している。
【0026】
試験片422は、円盤形状に形成されている。試験片422は、試験片ガイド421の凹部424に配置される。試験片422は、磁性材料から構成されている。
【0027】
つまみ423は、試験片ガイド421の外周面に設けられている。また、つまみ423は、試験片ガイド421の径方向について試験片ガイド421の外周面から外側に向かって突出している。また、つまみ423は、試験片ガイド421の外周面から切欠き411を通ってパイプ41の外側まで延びている。つまみ423の全長は、作業者の指につまみ423が引っ掛かり、作業者の指が試験体42を簡単に持ち上げることができる程度の長さに調整されている。
【0028】
図4に示すように、一対の磁気遮蔽物43のそれぞれは、プレート形状に形成されている。一対の磁気遮蔽物43の間には、パイプ41が配置されている。ワイヤロープ探傷装置1のワイヤロープ設置部16にパイプ41が設置された場合に、磁気遮蔽物43は、ワイヤロープ探傷装置1のワイヤロープ設置部16の周囲に配置される。なお、磁気遮蔽物43は、プレート形状に限らず、例えば、中実丸棒の形状または中空丸棒の形状であってもよい。磁気遮蔽物43は、磁性材料から構成されている。
【0029】
移動開始位置調整部44は、パイプ41の上端部が挿入されパイプ41に設けられる支持部であるフランジカラー441と、フランジカラー441に設けられ、試験体42の上面に当てられる移動開始位置調整部本体であるシャフト442とを有している。移動開始位置調整部44は、非磁性材料から構成されている。
【0030】
図7は、
図4の移動開始位置調整部44を示す斜視図である。
図8は、
図7の移動開始位置調整部44を示す縦断面図である。シャフト442は、丸棒形状に形成されている。シャフト442の外周面には、ねじ溝が形成されている。なお、シャフト442は、ボルトであってもよい。
【0031】
フランジカラー441は、鍔付ハット形状に形成されている。言い換えれば、フランジカラー441は、下面に凹部が形成された円柱形状の挿入部443と、挿入部443の長手方向一端部に設けられ、挿入部443よりも径方向外側に突出する鍔部444とを有している。挿入部443に形成された凹部には、パイプ41の上端部が下方から挿入される。挿入部443に形成された凹部の直径寸法は、パイプ41の外径寸法と同程度の大きさとなっている。フランジカラー441に対するパイプ41の嵌め合いは、フランジカラー441に対してパイプ41がパイプ41の軸方向に移動可能となる程度の嵌め合いである。フランジカラー441には、シャフト442が挿入されるねじ孔445が形成されている。ねじ孔445は、挿入部443の長手方向に延びて形成されている。シャフト442を回転させることによって、挿入部443の長手方向について、フランジカラー441に対するシャフト442の位置が変化する。これにより、シャフト442は、フランジカラー441に対して試験体42の移動方向についての位置が変更可能となる。
【0032】
図4に示すように、上枠45は、上プレート451と、上プレート451に設けられた上取手452とを有している。上枠45は、非磁性材料から構成されている。上プレート451には、フランジカラー441が下方から挿入される貫通孔453が形成されている。貫通孔453の直径寸法は、フランジカラー441の挿入部443の外径寸法と同程度の大きさとなっている。上プレート451の貫通孔453に対するフランジカラー441の挿入部443の嵌め合いは、上プレート451の貫通孔453に対してフランジカラー441の挿入部443がパイプ41の軸方向に移動可能となる程度の嵌め合いである。また、上プレート451には、磁気遮蔽物43が下方から取り付けられる図示しない溝または穴が形成されている。上取手452は、上方から視た場合に、ワイヤロープ探傷装置1のバックヨーク13と上取手452との間にワイヤロープ探傷装置1のワイヤロープ設置部16が配置されるように、上プレート451に設けられている。
【0033】
下枠46は、下プレート461と、下プレート461に設けられた下取手462とを有している。下枠46は、非磁性材料から構成されている。下プレート461には、パイプ41の下端部が取り付けられる図示しない溝が形成されている。また、下プレート461には、磁気遮蔽物43が取り付けられる図示しない溝が形成されている。下プレート461におけるパイプ41の下端部が取り付けられる溝の中には、衝撃吸収材が設けられてもよい。下取手462は、上方から視た場合に、ワイヤロープ探傷装置1のバックヨーク13と下取手462との間にワイヤロープ探傷装置1のワイヤロープ設置部16が配置されるように、下プレート461に設けられている。
【0034】
次に、ワイヤロープ探傷装置の出力確認装置4Aを用いてワイヤロープ探傷装置1の出力を検査し、確認する手順について説明する。
図9は、
図4のワイヤロープ探傷装置の出力確認装置4Aにワイヤロープ探傷装置1が取り付けられた状態の側面を示す模式図である。
図10は、
図4のワイヤロープ探傷装置の出力確認装置4Aを用いてワイヤロープ探傷装置1の出力を確認する手順を示すフローチャートである。
図9では、ワイヤロープ探傷装置1の出力が入力される端末装置5と、ワイヤロープ探傷装置1および端末装置5を互いに接続するケーブル6とをさらに示している。
【0035】
まず、ステップS101において、ワイヤロープ探傷装置設置工程を行う。ワイヤロープ探傷装置設置工程では、ワイヤロープ探傷装置1を組み立て、さらに、ワイヤロープ探傷装置1と端末装置5とをケーブル6を用いて電気的に接続する。また、ワイヤロープ探傷装置設置工程では、ワイヤロープ探傷装置1をワイヤロープ探傷装置の出力確認装置4Aに取り付け、または、ワイヤロープ探傷装置の出力確認装置4Aをワイヤロープ探傷装置1に取り付ける。これにより、ワイヤロープ探傷装置1のワイヤロープ設置部16にパイプ41が設置される。このとき、パイプ41が水平面に対して垂直方向に延びるように、ワイヤロープ探傷装置の出力確認装置4Aを配置する。このとき、フランジカラー441を押し下げて、フランジカラー441の下面をワイヤロープ探傷装置1の上面に接触させる。
【0036】
その後、ステップS102において、出力取込準備工程を行う。出力取込準備工程では、端末装置5を操作して、端末装置5にワイヤロープ探傷装置1の出力が取り込められる状態にする。
【0037】
その後、ステップS103において、試験体準備工程を行う。試験体準備工程では、作業者の指が試験体42のつまみ423を持ち上げて、試験体42をパイプ41に対して上方に向かってスライドさせる。また、移動体準備工程では、移動開始位置調整部44のシャフト442の下面に試験体42の上面を接触させる。このとき、フランジカラー441の下面がワイヤロープ探傷装置1の上面に接触していることを確認する。
【0038】
その後、ステップS104において、試験体移動工程を行う。試験体移動工程では、試験体42のつまみ423から作業者の指を離す。これにより、試験体42がパイプ41に沿って落下する。
【0039】
その後、ステップS105において、出力信号取込工程を行う。出力信号取込工程では、試験体42がワイヤロープ探傷装置1の磁気センサ12の横を通過する時の磁気センサ12の検出信号が、ワイヤロープ探傷装置1の出力として端末装置5に取り込まれる。
【0040】
その後、ステップS106において、異常有無判定工程を行う。異常有無判定工程では、端末装置5は、取り込まれたワイヤロープ探傷装置1の出力と、事前に測定された正常なワイヤロープ探傷装置1の出力確認時の出力とを比較して、ワイヤロープ探傷装置1が正常であるか否かを判定する。
【0041】
ステップS106において、ワイヤロープ探傷装置1が正常ではないと判定された場合には、ステップS107において、交換校正工程を行う。交換校正工程では、磁気センサ12の部品の交換または磁気センサ12の校正を行う。その後、ステップS101に戻る。
【0042】
一方、ステップS106において、ワイヤロープ探傷装置1が正常であると判定された場合には、ワイヤロープ探傷装置1の出力を検査し、ワイヤロープ探傷装置1が正常であるか異常であるかを確認する手順が終了する。その後、ワイヤロープ探傷装置1を用いて、ワイヤロープ2を点検する。
【0043】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係るワイヤロープ探傷装置の出力確認装置4Aによれば、試験体42は、非磁性材料から構成された試験片ガイド421と、磁性材料から構成された試験片422とを有している。これにより、ワイヤロープ探傷装置1に使用される永久磁石11から試験体42が受ける吸引力に妨げられることなく、試験体42が落下することができるように、試験体42の重量を調整することができる。例えば、ワイヤロープ探傷装置1に用いられる永久磁石11の磁力が強力であり、試験体42が受ける吸引力が大きい場合には、試験体42が落下するために必要な重量を有する試験片ガイド421に変更する。これにより、試験体42をスムーズに落下させることができる。
【0044】
また、試験片ガイド421は、試験片422の側面に設けられた側面被覆部425を含んでいる。これにより、これにより、試験体42とパイプ41との間の摩擦によって試験片422が摩耗することを防止することができる。その結果、試験片422の劣化によるワイヤロープ探傷装置1の出力の変動を防止することができる。
【0045】
また、パイプ41の側壁には、試験片422の移動方向に延びる切欠き411が形成されている。これにより、試験体42が落下するときに、パイプ41の内部における試験体42よりも下方にある空気が切欠き411から排出される。その結果、試験体42は、空気圧の影響が低減される。これにより、試験体42をスムーズに落下させることができる。
【0046】
また、試験体42は、試験片ガイド421から切欠き411を通ってパイプ41の外側まで延びるつまみ423を有している。これにより、作業者は、試験体42を簡単に持ち上げることができる。
【0047】
また、ワイヤロープ探傷装置1のワイヤロープ設置部16の周囲には、磁性材料から構成された磁気遮蔽物43が設けられている。言い換えれば、磁気遮蔽物43は、ワイヤロープ探傷装置1のワイヤロープ設置部16の外側に配置される。これにより、外部からの磁気がワイヤロープ探傷装置1に達することを抑制することができる。その結果、測定場所によって生じるワイヤロープ探傷装置の出力確認装置4Aの出力のばらつきを抑制することができる。
【0048】
また、パイプ41の内部には、移動開始位置調整部44が設けられている。移動開始位置調整部44のシャフト442の下面と試験体42の上面とが接触した状態で、試験体42が落下する。これにより、試験体42の移動が開始される時の試験体42と磁気センサ12との間の距離についての測定毎のばらつきを抑制することができる。その結果、端末装置5に入力されるワイヤロープ探傷装置1の出力についての測定毎のばらつきを抑制することができる。
【0049】
また、移動開始位置調整部44は、パイプ41が挿入されパイプ41に設けられるフランジカラー441と、フランジカラー441に設けられ、試験体42の上面に当てられるシャフト442とを有している。シャフト442は、フランジカラー441に対する試験体42の移動方向についての位置が変更可能となっている。これにより、試験体42の移動が開始される時の試験体42の位置を自由に設定することができる。
【0050】
また、移動開始位置調整部44のフランジカラー441は、フランジカラー441に対してパイプ41がパイプ41の軸方向について移動可能となっている。これにより、フランジカラー441の下面にワイヤロープ探傷装置1の上面を接触させた状態で、試験体42の移動が開始される時の試験体42の位置を設定することができる。したがって、試験体42の移動開始位置の基準は、ワイヤロープ探傷装置1の上面となる。これにより、ワイヤロープ探傷装置の出力確認装置4Aにワイヤロープ探傷装置1を取り付けた際に生じるパイプ41の軸方向に対するワイヤロープ探傷装置1の取付位置の誤差によらずに、試験体42の移動開始位置を一定にすることができる。その結果、測定毎の測定結果のばらつきを抑制することができる。
【0051】
また、試験体42がパイプ41の内側に配置され、さらに、パイプ41の下端部が下枠46により塞がれている。これにより、試験体42を落下させた場合に、パイプ41よりも下方に試験体42が落下することを防止することができる。したがって、作業者が手を用いて、落下する試験体42を捕る必要がない。その結果、作業者は、片手だけでワイヤロープ探傷装置1の出力確認作業を行うことができる。
【0052】
なお、上記実施の形態1では、1個のパイプ41と、1個の試験体42と、1個の移動開始位置調整部44とを備えたワイヤロープ探傷装置の出力確認装置4Aについて説明した。これに対して、
図11に示すように、複数のパイプ41、複数の試験体42、複数の移動開始位置調整部44を備えたワイヤロープ探傷装置の出力確認装置4Bであってもよい。この場合に、複数のパイプ41のそれぞれは、間隔をおいて互いに平行に配置される。また、この場合に、複数のパイプ41のそれぞれに複数の試験体42が1個ずつ配置される。また、この場合に、磁気遮蔽物43は、互いに隣り合うパイプ41の間にも配置される。これにより、複数のワイヤロープ探傷装置1のそれぞれのワイヤロープ設置部16の周囲は、磁気遮蔽物43によって区切られる。したがって、隣り合うワイヤロープ探傷装置1のワイヤロープ設置部16の互いの影響を抑制することができるとともに、同時にワイヤロープ探傷装置1の出力確認を行うことができる。この場合、特に、エレベータにおける隣接する複数のワイヤロープの損傷を同時に検出するワイヤロープ探傷装置1の出力確認を行う場合に用いることができる。
【0053】
実施の形態2.
図12は、この発明の実施の形態2に係るワイヤロープ探傷装置の出力確認装置における試験体を示す斜視図である。
図13は、
図12の試験体を示す縦断面図である。実施の形態2に係るワイヤロープ探傷装置の出力確認装置4Cは、試験体47の構成において、実施の形態1に係るワイヤロープ探傷装置の出力確認装置4Aと異なる。
【0054】
試験体47は、試験片ガイド下部471と、試験片ガイド下部471の上部に設けられる試験片ガイド上部472と、試験片ガイド下部471の内部に設けられる試験片473とを有している。また、試験体47は、試験片ガイド下部471の内部に設けられる試験片スペーサ474と、試験片ガイド下部471に設けられたつまみ475とを有している。
【0055】
試験片ガイド下部471の下端部は、試験体47の下端部となる。試験片ガイド下部471は、円筒形状に形成されている。また、試験片ガイド下部471の下端部の側面には、下方に向かうにつれて試験体47の幅方向寸法が小さくなる傾斜面476が形成されている。試験片ガイド下部471の上面には、円盤形状の凹部477が形成されている。試験片ガイド下部471は、非磁性材料から構成されている。また、試験片ガイド下部471は、試験体47の落下時の衝撃による変形に耐えることができる程度の剛性を有する材料から構成されている。
【0056】
試験片ガイド上部472は、円盤形状に形成されている。試験片ガイド上部472は、試験片ガイド下部471の凹部477を上方から覆うように配置される。試験片ガイド上部472は、非磁性材料から構成されている。
【0057】
試験片473は、円盤形状に形成されている。試験片473は、試験片ガイド下部471の凹部477に配置される。試験片473は、磁性材料から構成されている。
【0058】
試験片スペーサ474は、円盤形状に形成されている。試験片スペーサ474は、試験片ガイド下部471の凹部477に配置される。試験片スペーサ474は、試験片473に重ねられる。試験片スペーサ474は、非磁性材料から構成されている。
【0059】
つまみ475は、試験片ガイド下部471の外周面に設けられている。つまみ475は、試験片ガイド下部471の径方向について試験片ガイド下部471の外周面から外側に向かって突出している。つまみ475は、試験片ガイド下部471の外周面から切欠き411を通ってパイプ41の外側まで延びている。つまみ475の全長は、作業者の指に引っ掛かり、作業者の指が試験体47を簡単に持ち上げることができる程度の長さに調整されている。
【0060】
試験片ガイド下部471、試験片ガイド上部472、試験片473、試験片スペーサ474のそれぞれには、試験体47の移動方向に延びる貫通孔478が形成されている。言い換えれば、試験体47には、試験体47の移動方向に延びる貫通孔478が形成されている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。また、ワイヤロープ探傷装置の出力確認装置4Cを用いてワイヤロープ探傷装置1の出力を確認する手順は、実施の形態1と同様である。
【0061】
以上説明したように、この発明の実施の形態2に係るワイヤロープ探傷装置の出力確認装置4Cによれば、試験体47には、試験体47の移動方向に延びる貫通孔478が形成されている。これにより、試験体47が移動する場合に貫通孔478に空気が流れる。したがって、試験体47は、滑らかに移動することができる。その結果、ワイヤロープ探傷装置1から出力される検出信号のばらつきを抑制することができる。
【0062】
また、試験片ガイド下部471の下端部の側面には、下方に向かうにつれて試験体47の幅方向寸法が小さくなる傾斜面476が形成されている。これにより、試験体47が移動する場合に試験体47が受ける空気抵抗を低減させることができる。したがって、試験体47は、滑らかに落下することができる。その結果、ワイヤロープ探傷装置1から出力される検出信号のばらつきを抑制することができる。
【0063】
また、試験片473および試験片スペーサ474が互いに重ねられて試験片ガイド下部471の凹部477に配置されている。これにより、試験片473および試験片スペーサ474のそれぞれの厚さ方向の寸法を調整することによって、試験体47の重量を容易に調整することができる。この場合に、試験片473および試験片スペーサ474のそれぞれの厚さ方向の寸法の合計が変化しないようにする。
【0064】
また、試験片ガイド上部472の厚さ方向の寸法を変更することによって、試験体47に作用する移動方向への力を調整することができる。これにより、ワイヤロープ探傷装置1に使用される永久磁石11によって試験体47に作用する吸引力に対して、試験体47が落下するために必要な落下方向への力を簡単に調整することができる。
【0065】
実施の形態3.
図14は、この発明の実施の形態3に係るワイヤロープ探傷装置の出力確認装置を示す斜視図である。実施の形態3に係るワイヤロープ探傷装置の出力確認装置4Dは、配置された複数の磁気遮蔽物43のうち、並べられた方向について最も外側に位置する一対の磁気遮蔽物43の構成において、実施の形態1および実施の形態2と異なる。並べられた方向について最も外側に位置する一対の磁気遮蔽物43のそれぞれを最外磁気遮蔽物48Aとする。
【0066】
図15は、
図14の最外磁気遮蔽物48Aを示す横断面図である。最外磁気遮蔽物48Aは、磁気遮蔽プレート481と、磁気遮蔽プレート481に対向して設けられたスペーサ482とを有している。また、最外磁気遮蔽物48Aは、磁気遮蔽プレート481およびスペーサ482に渡って設けられた段付きボルト483と、磁気遮蔽プレート481およびスペーサ482の間に設けられたばね484とを有している。
【0067】
磁気遮蔽プレート481は、磁性材料から構成されている。磁気遮蔽プレート481は、プレート形状に形成されている。
【0068】
スペーサ482は、非磁性材料から構成されている。スペーサ482は、プレート形状に形成されている。スペーサ482には、座繰り付孔485が形成されている。座繰り付孔485には、段付きボルト483が挿入されている。スペーサ482は、段付きボルト483を用いて、磁気遮蔽プレート481に取り付けられる。スペーサ482は、段付きボルト483の軸方向について、磁気遮蔽プレート481に対して移動可能となっている。スペーサ482は、磁気遮蔽プレート481の上部および下部に設けられる。スペーサ482には、ワイヤロープ探傷装置1の挿入方向について、ワイヤロープ探傷装置1がスムーズに挿入可能となる程度の傾斜面486が形成されている。
【0069】
段付きボルト483は、非磁性材料から構成されている。段付きボルト483は、スペーサ482が移動して、磁気遮蔽プレート481に接触する場合に、段付きボルト483の頭部がスペーサ482における磁気遮蔽プレート481とは反対側の面から突出しないものが選定される。
【0070】
ばね484は、非磁性材料から構成されている。ばね484は、磁気遮蔽プレート481とスペーサ482との間に配置されている。ばね484は、パイプがワイヤロープ設置部16に設置された場合にスペーサ482をワイヤロープ探傷装置1に向かって押す力付与部材となっている。
【0071】
最外磁気遮蔽物48Aは、ワイヤロープ探傷装置の出力確認装置4Dがワイヤロープ探傷装置1に取り付けられた場合に、パイプ41と磁気遮蔽プレート481との間にスペーサ482が配置される。
【0072】
なお、
図16に示す最外磁気遮蔽物48Bのように、ばね484の代わりに、つまみねじ487を有してもよい。つまみねじ487は、段付きボルト483の軸方向に磁気遮蔽プレート481を貫通する。つまみねじ487は、非磁性材料から構成される。
【0073】
図15および
図16において、その他の構成は、実施の形態1または実施の形態2と同様である。また、ワイヤロープ探傷装置の出力確認装置4Dを用いてワイヤロープ探傷装置1の出力を確認する手順は、実施の形態1または実施の形態2と同様である。なお、実施の形態3では、ステップS101において、ワイヤロープ探傷装置1をワイヤロープ探傷装置の出力確認装置4Dに取り付ける場合に、つまみねじ487を締め、ワイヤロープ探傷装置1をスペーサ482によって押す。
【0074】
以上説明したように、この発明の実施の形態3に係るワイヤロープ探傷装置の出力確認装置4Dによれば、パイプ41がワイヤロープ設置部16に設置された場合にパイプ41と磁気遮蔽プレート481との間にスペーサ482が配置される。これにより、ワイヤロープ探傷装置1が磁気遮蔽プレート481に接触することが防止される。その結果、ワイヤロープ探傷装置の出力確認装置4Dの検出信号の精度が低下することを抑制することができる。
【0075】
また、パイプ41がワイヤロープ設置部16に設置された場合にスペーサ482がパイプ41に向かって押される。これにより、ワイヤロープ探傷装置1から最外磁気遮蔽物48Aに向かう方向に働く磁力による吸引力に相対する力をワイヤロープ探傷装置1に与えることができる。したがって、ワイヤロープ探傷装置1の取付位置のばらつきが低減される。その結果、ワイヤロープ探傷装置の出力確認装置4Dの検出信号の出力のばらつきの発生を抑制することができる。