(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
図3に示したように、粉粒体運搬車1は、そのタンク2内に小麦粉,グラニュー糖,その他の粉粒体Aを、積込み設備3のサイロ4から、ばら状の散積状態で積込んで運搬し、荷卸し設備5のサイロ6に荷卸しする。
そして、代表的な荷卸し方式である空気圧送式では、圧縮空気Bを、タンク2内に供給し、もって積込まれていた粉粒体Aを、流動化させると共に内外の圧力差を利用して、圧縮空気Bと共に荷卸しする。
【0003】
《従来技術》
図1の(2)図は、従来の粉粒体運搬車1のエアー回路図である。同図にも示したように、従来の空気圧送式の粉粒体運搬車1では、荷卸しに際し、コンプレッサ7にて得られた圧縮空気Bが、そのままタンク2へと供給されていた。
すなわち、コンプレッサ7にて外気Cを圧縮して得られた高圧の圧縮空気Bが、荷卸しに際し、エアー配管8を介し大気圧下のタンク2内に吹きこまれていた。図中9は、外気Cのエアークリーナ、10は、コンプレッサ7のモータである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような従来の粉粒体運搬車1については、次の課題が問題として指摘されていた。
《第1の問題点》
第1に、高温化した圧縮空気Bにより、粉粒体Aの温度が上昇し品質が低下する、という問題が指摘されていた。
すなわち荷卸しに際し、タンク2内に100kPa〜190kPa程度の圧力をかける圧縮空気Bは、圧縮に伴い高温化している。もって、この高温の圧縮空気Bが、タンク2内に積込まれていた常温の粉粒体Aに、混合,接触,晒されることにより、荷卸しされる粉粒体Aの品質が低下する、という指摘があった。
【0006】
《第2の問題点》
第2に、圧縮空気Bに含有されていた水蒸気が凝縮し、凝縮水つまり結露が粉粒体Aに付着し品質が低下する、という問題も指摘されていた。
すなわち荷卸しに際し、タンク2内に供給される圧縮空気Bは、圧縮に伴い、まず容積あたりの絶対湿度(g/m
3)が上昇し、仮に同一温度下であっても相対湿度(%)が高くなっている。
他方、タンク2内に供給される圧縮空気Bは、圧縮に伴い、まずは前述したように温度が上昇し、もって飽和水蒸気量(g/m
3)が増大し、相対湿度は低下している。
しかし、このように高温の圧縮空気Bは、タンク2内に供給されると、積荷の粉粒体Aに接触して温度を奪われ、温度が低下する。もって、飽和水蒸気量が減少して相対湿度が高くなり、飽和水蒸気量を越えることにより、水蒸気が凝縮して結露が生じる。
そして、このような結露が粉粒体Aに付着することにより、荷卸しされる粉粒体Aの品質が低下する、という指摘があった。
【0007】
《本発明について》
本発明の粉粒体運搬車は、このような実情に鑑み、上記従来技術の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、温度上昇による粉粒体の品質低下が抑制され、第2に、結露付着による粉粒体の品質低下も抑制され、第3に、しかもこれらが簡単容易に実現される、粉粒体運搬車を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
《請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、特許請求の範囲の請求項1に記載したように、次のとおりである。
粉粒体をタンクに常温のばら状の散積状態で積込み、運搬して荷卸しする粉粒体運搬車であって、コンプレッサと熱交換器とが車載されている。
該コンプレッサは、常温の外気を圧縮して圧縮空気とする。該熱交換器は、該コンプレッサによる圧縮に伴い高温化した圧縮空気を、外気の温度程度つまり常温程度に冷却すると共に飽和水蒸気量を減少させて、含有していた水蒸気を凝縮,除去させる。
【0009】
もって荷卸しは、空気圧送式よりなり、このように冷却化,乾燥化された常温の圧縮空気を、大気圧下で常温の該タンクに供給して加圧し、もって積込まれた常温の粉粒体を、流動化させると共に内外の圧力差を利用して排出する。
そして該熱交換器は、水分離部が付設されており、該水分離部は、冷却により水蒸気が凝縮した凝縮水を、圧縮空気から流下により分離,排出,除去せしめること、を特徴とする。
【0010】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)粉粒体運搬車は、粉粒体をタンクにばら状の散積状態で積込み、運搬して荷卸しする。
(2)そして荷卸しは、大気圧下で常温のタンク内に圧縮空気を供給して、積込まれた粉粒体を流動化させると共に、内外の圧力差を利用して排出することにより行われる。
(3)このような荷卸し用にコンプレッサが車載されており、外気を圧縮空気とする。
(4)ところで圧縮空気は、圧縮に伴い、まず容積あたりの絶対湿度が上昇しており、相対湿度が高くなっている。
(5)そして圧縮空気は、圧縮に伴い高温化している。そこで、本発明では熱交換器を車載し、圧縮空気を常温程度まで冷却するので、圧縮空気は飽和水蒸気量が減少し、相対湿度が一段と高くなる。
(6)これにより圧縮空気中の水蒸気は、飽和水蒸気量を越えた分が凝縮,結露し、付設された水分離部により、圧縮空気から流下,分離,除去される。
(7)圧縮空気は、このように冷却化,常温化,乾燥化されてから、タンクに供給され、荷卸しに供される。すなわち、結露,水滴,ドレーンは、熱交換器に付設された水分離部にて、圧縮空気中から流下により、分離,排出,除去される
(8)もって荷卸しに際し、常温の粉粒体は、高温ではなく常温の圧縮空気により、荷卸しされる。
(9)これと共に粉粒体は、結露に晒され,付着されることなく、乾燥した圧縮空気により荷卸しされる。
(10)そして、これらは熱交換器等を車載するという、簡単な構造により、実現される。
(11)そこで、本発明に係る粉粒体運搬車は、次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0011】
《第1の効果》
第1に、温度上昇による粉粒体の品質低下が、抑制される。
本発明の粉粒体運搬車は、コンプレッサからの圧縮空気を、熱交換器で冷却すると共に水蒸気を凝縮,除去せしめる。もって、冷却化,常温化,乾燥化された圧縮空気をタンクに供給して、粉粒体を荷卸しするので、荷卸しされる常温の粉粒体が、温度上昇により品質低下することは抑えられる。
前述したこの種従来例のように、高温の圧縮空気が、荷卸しに際し積込まれていた常温の粉粒体に、混合,接触,晒されて、粉粒体の品質が低下する事態は発生しない。
【0012】
《第2の効果》
第2に、結露付着による粉粒体の品質低下も、抑制される。
本発明の粉粒体運搬車は、コンプレッサからの圧縮空気を熱交換器で冷却し、飽和水蒸気量を減少させて、圧縮空気中の水蒸気を凝縮,結露,除去せしめる。
もって、冷却化,乾燥化された圧縮空気をタンクに供給して、粉粒体を荷卸しする。粉粒体は、乾燥化された圧縮空気により荷卸しされるので、結露により品質が低下することは抑えられる。
前述したこの種従来例のように、荷卸しに際し、高温の圧縮空気がタンク内の常温の粉粒体に混合,接触し温度低下して、含有されていた水蒸気が凝縮することは回避される。凝縮水つまり結露が粉粒体に付着して、粉粒体の品質が低下する事態は発生しない。
【0013】
《第3の効果》
第3に、しかもこれらは、簡単容易に実現される。
本発明の粉粒体運搬車は、コンプレッサと共に熱交換器等を、圧縮空気のエアー配管に車載した簡単な構造により、上述した第1,第2の効果が得られる。
そして簡単な構造なので、車輌へ常時搭載しての運用も可能であり、メンテナンス面,スペース面,重量面,コスト面等にも優れている。
このように、この種従来技術に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
《粉粒体運搬車11について》
まず
図3を参照して、粉粒体運搬車11について概説する。粉粒体運搬車11は、車台上に搭載されたタンク12内に、粉粒体Aをばら状の散積状態で積込み、運搬して荷卸しする。
積込まれる積荷の粉粒体Aとしては、小麦粉,グラニュー糖,米,その他の穀物等の食品や、粒状樹脂,その他の化成品や、薬品,カーボン,セメント,砂,その他,等々が考えられる。これらの中から1種類の粉粒体Aが専用的に選択される。
タンク12は、ステンレスその他の金属製の一槽式よりなり、頂面に粉粒体A積込み用のマンホール13が設けられている。
【0016】
そして粉粒体運搬車11は、まず
図3の(1)図に示したように、粉粒体Aが、積込み設備3のサイロ4から導管14を介し、マンホール13からタンク12内にばら状の散積状態で積込まれる。粉粒体Aが積込まれた粉粒体運搬車11は、
図3の(2)図に示したように、目的地へと運搬走行する。
目的地の荷卸し設備5は、
図3の(3)図に示したように、貯蔵用のサイロ6を備えている。荷卸しに際し、粉粒体運搬車11のタンク12内には、圧縮空気Bが吹き込み供給される。
もって、大気圧下のタンク12内が加圧されると共に、積込まれた粉粒体Aが、混合,エアレーション,流動化されると共に、内外の圧力差を利用して圧縮空気Bと共に排出される。すなわち流下した粉粒体Aが、タンク12下部の排出部から、受入管15を経由して、荷卸し設備5のサイロ6へと荷卸しされる。
このように粉粒体Aの荷卸しは、空気圧送式により行われるが、これに加えタンク傾倒式が併用される場合もある。すなわち荷卸し時に、タンク12を水平状態から後方に向けた傾倒状態として、粉粒体Aを後部下から流下荷卸しするタンク傾倒式も、空気圧送式と共に併用可能である。
粉粒体運搬車11は、概略このようになっている。
【0017】
《本発明の概要》
まず、本発明の概要については、次のとおり。
本発明の粉粒体運搬車11は、
図1の(1)図に示したように、コンプレッサ7と熱交換器16とが車載されている。
コンプレッサ7は、外気Cを圧縮して圧縮空気Bとする。熱交換器16は、その圧縮空気Bを冷却すると共に飽和水蒸気量を減少させて、含有していた水蒸気を凝縮,除去させる。
もって荷卸しは、冷却化,乾燥化された圧縮空気Bを、タンク12に吹込み供給する空気圧送式により行われる。
本発明の概要については、以上のとおり。以下、このような本発明の粉粒体運搬車11について、更に詳述する。
【0018】
《コンプレッサ7について》
まずコンプレッサ7について、
図1の(1)を参照して説明する。粉粒体運搬車11には、コンプレッサ7が車載されており、コンプレッサ7は、常温の外気Cを圧縮して圧縮空気Bを生成する。
コンプレッサ7のモータ10は、車載バッテリーを駆動源とするのが代表的であるが、車輌エンジンに付設されたP.T.O.装置にて取出された動力を駆動源とすることも可能である。更に、コンプレッサ7として、常時は車輌エンジンのシリンダーに圧縮空気を供給すべく使用される過給機を、切換えて使用することも考えらえる。
コンプレッサ7については、以上のとおり。
【0019】
《熱交換器16について》
次に、熱交換器16について、
図1の(1)図,
図2を参照して説明する。この粉粒体運搬車11には、コンプレッサ7と共に、熱交換器16が車載されている。コンプレッサ7にて得られた圧縮空気Bは、荷卸しに際し、エアー配管17を介しタンク12に供給されるが、エアー配管17の途中,下流側に、熱交換器16が設置されている。
熱交換器16は、タンク12へと供給される圧縮空気Bを冷却し、飽和水蒸気量を減少させて、含有していた湿気つまり水蒸気を凝縮,除去せしめる。
【0020】
これらについて更に詳述する。まず圧縮空気Bは、コンプレッサ7での圧縮に伴い温度が上昇して、飽和水蒸気量が増大し、相対湿度は低下している。
熱交換器16は、このような高温の圧縮空気Bを、より低温の外気Cと熱交換させて冷却する。100kPa〜190kPa程度の圧力をタンク12内にかけるべく、例えば100℃程度に温度上昇している圧縮空気Bは、熱交換器16にて外気Cの温度程度つまり常温程度に、冷却される。
飽和水蒸気量は、温度低下に伴い減少するので、相対湿度が高くなる。もって圧縮空気B中に含有された水蒸気は、飽和水蒸気量を越えた分が凝縮し、凝縮水つまり結露,水滴,ドレーンとなって除去される。
圧縮空気Bは、このように冷却化,常温化,乾燥化されて、タンク12へと供給されるようになる。
【0021】
《熱交換器16のフィン19,20やファン21について》
ところで、この熱交換器16は外気冷却式よりなる。そして
図2に示したように、圧縮空気Bが流れるパイプ18の内外に、フィン19,20が付設されると共に、
図1の(1)図中に示したように、パイプ18に外気を吹き付けるファン21が付設されている。
すなわち、熱交換器16の圧縮空気Bが通されるパイプ18について、まず、外気Cと接触するその周囲外側に、多数のフィン19が設けられると共に、圧縮空気Bが通されるその内側にも、多数のフィン20が設けられている。
もって伝熱面積の増加により、外気Cとの熱交換効率が効率化し、熱交換器16の容積や質量が低減されるようになる。
更に、圧縮空気Bが通されるパイプ18には、ファン21により外気Cが吹き付けられるので、この面からも伝熱面積が増加し、外気Cとの熱交換効率が効率化し、容積や質量が低減される。
【0022】
《熱交換器16の水分離部22について》
図1の(1)図中に示したように、熱交換器16には、水分離部22が付設されている。この水分離部22は、冷却により水蒸気が凝縮した凝縮水を、圧縮空気Bから流下により分離,排出,除去せしめる。
すなわち、図示した水分離部22は、ドレーンキャッチタンク23とドレーンパイプつまり水抜き配管24と、を備えている。
熱交換器16において、パイプ18内を流れる圧縮空気Bで発生した凝縮水、つまり結露,水滴,ドレーンは、パイプ18内を流れる圧縮空気Bから分離,除去され、付設されたドレーンキャッチタンク23へと流下,排出,貯溜される。ドレーンキャッチタンク23に貯溜された分は、コック付の水抜き配管24から、適宜外部排出される。
【0023】
なお第1に、このような水分離部22は、熱交換器16に付設されるが、熱交換器16のパイプ18内の圧縮空気Bの流れ方向にとらわれず、発生した凝縮水つまり結露,水滴,ドレーンが分離,流下,排出される位置に、設けられる。
すなわち図示例では、圧縮空気Bが熱交換器16のパイプ18を上から下へと流れる設定なので、熱交換器16つまり圧縮空気Bの出口側,下流位置に、設けられているが、圧縮空気Bがパイプ18を下から上へと流れる設定の熱交換器16の場合は、熱交換器16つまり圧縮空気Bの入口側,上流位置に、設けられる。
なお第2に、前述によりコンプレッサ7として過給機が使用される場合は、熱交換器16としてアフタ―クーラが使用される。通常は過給機に付設されており、その圧縮空気Bを冷却するべく使用されるアフタ―クーラが、切換えて使用される。
熱交換器16については、以上のとおり。
【0024】
《作用等》
本発明の粉粒体運搬車11は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)粉粒体運搬車11は、タンク12内に粉粒体Aを、積荷としてばら状の散積状態で積込み、運搬して荷卸しする(
図3を参照)。
【0025】
(2)そして荷卸しは、空気圧送式により行われる。大気圧下で常温のタンク12内に、圧縮空気Bを吹き込み供給し、もって積込まれた粉粒体Aを、流動化させると共に内外の圧力差を利用して、圧縮空気Bと共に排出する。
【0026】
(3)このような荷卸し用に、粉粒体運搬車11にはコンプレッサ7が車載されており、外気Cを圧縮して圧縮空気Bとする(
図1の(1)図を参照)。
【0027】
(4)ところで圧縮空気Bは、荷卸し用にタンク12内に100kPa〜190kPa程度の圧力をかけるべく圧縮されるが、圧縮に伴いまず容積あたりの絶対湿度(g/m
3)が上昇しており、相対湿度(%)が高くなっている。
【0028】
(5)そして圧縮空気Bは、圧縮に伴い高温化している。そこでこの粉粒体運搬車11には、熱交換器16が車載されている(
図1の(1)図を参照)。
もって、コンプレッサ7からの高温の圧縮空気Bを、外気Cとの熱交換により常温程度まで冷却する。そこで圧縮空気Bは、飽和水蒸気量(g/m
3)が減少し、相対湿度が一段と高くなる。
【0029】
(6)これにより圧縮空気B中に含有されていた湿気つまり水蒸気が凝縮,除去せしめられる。飽和水蒸気量を越えた分が、凝縮水つまり結露,水滴,ドレーンとなって、除去される。
なお、結露,水滴,ドレーンは、熱交換器16に付設された水分離部22により、圧縮空気B中から流下されて、分離,排出,除去される(
図1の(1)図を参照)。
【0030】
(7)圧縮空気Bは、このように冷却化,常温化,乾燥化されてから、エアー配管17によりタンク12へと供給され、積込まれた粉粒体Aの荷卸しに供される(
図1の(1)図を参照)。
【0031】
(8)もって荷卸しに際し、タンク12に積込まれていた常温の粉粒体Aが、高温の圧縮空気Bに混合,接触,晒される虞は回避される。常温の圧縮空気Bが、常温の粉粒体Aの荷卸しに使用される。
【0032】
(9)又、荷卸しに際し、タンク12に積込まれていた乾燥した粉粒体Aが、凝縮水つまり結露に晒され,付着せしめられる虞は、回避される。乾燥した圧縮空気Bが、乾燥した粉粒体Aの荷卸しに使用される。
【0033】
(10)しかもこれらは、粉粒体運搬車11の従来よりのコンプレッサ7からのエアー配管17に、熱交換器16等を設けた簡単な構造により実現される。
熱交換器16と水分離部22を、追加車載しただけの構造により実現される(
図1の(1)図を参照)。
作用等については、以上のとおり。