特許第6781524号(P6781524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6781524
(24)【登録日】2020年10月20日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 39/02 20060101AFI20201026BHJP
【FI】
   D06F39/02 Z
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-44766(P2018-44766)
(22)【出願日】2018年3月12日
(65)【公開番号】特開2019-154737(P2019-154737A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2019年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 一成
(72)【発明者】
【氏名】曽我 丈
(72)【発明者】
【氏名】菅原 道太
(72)【発明者】
【氏名】田村 健太
【審査官】 永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−149218(JP,A)
【文献】 実開昭63−012385(JP,U)
【文献】 実開昭55−124287(JP,U)
【文献】 特開2016−159074(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2019/0062983(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104818598(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯物が入れられて洗濯の工程が行われる洗濯槽、
および、
上部に設けられ洗濯水を導く給水口と、
上部の前記給水口から投入された洗剤を保持する洗剤保持部と、
前記洗剤保持部の底部に、水よりも粘性がある液体洗剤は容易に流出しないが、水は流出する大きさである第2隙間と、
前記洗剤保持部に設けられる移動体とを備え、
前記洗剤保持部の前記洗濯槽の中心側に洗剤流出孔を有し、
前記移動体は、前記洗剤流出孔から一部が外方に露出するように付勢されて前記洗剤流出孔を塞ぐように構成され、
前記移動体が前記洗剤流出孔が開放されるように押されることにより、前記移動体と前記洗剤流出孔との間に第1隙間が発生し、前記洗剤が前記第1隙間から流れ出る直塗り装置を具備し、
前記直塗り装置は、
前記洗濯槽の内周面に取り付けられ、前記洗濯槽の深さの半分の位置よりも上方に位置し、かつ、
洗濯水によって前記第2隙間から前記洗剤が流出される
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記移動体は、前記洗剤流出孔と対向する箇所が曲率を有している
ことを特徴とする洗濯機
【請求項3】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記移動体は、球体または円柱体である
ことを特徴とする洗濯機
【請求項4】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記直塗り装置は、前記洗剤流出孔に対向して前記移動体が嵌合される凹部を有する
ことを特徴とする洗濯機
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗濯に際して洗濯物の汚れがひどい場合、利用者は液体洗剤をその洗剤キャップに所容量注ぎ、洗剤キャップから直接洗濯物の汚れ箇所に直接付けている。
現状の洗濯機には、特許文献1に記載のように、洗剤ケースはあるものの、洗濯物の汚れ箇所への洗剤の直塗りの機能は付いていない。
【0003】
そのため、利用者は、洗濯物の汚れ箇所に洗剤の直塗りを行う際、洗剤キャップもしくは何らかの媒体を通じて洗濯物に直接塗布する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-000561号公報(段落0015、0016、図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の直塗りの方法では、洗剤を床面にこぼしたり、垂らす、或いは手についてしまい、厄介な作業となっている。さらに、洗濯物の汚れ箇所に均一に塗れない、洗濯物に塗布するための場所を要する、直塗りと洗濯運転用に洗剤を別のタイミングで入れる等手間がかかるなどの様々な弊害が生じている。
【0006】
本発明は上記実状に鑑み創案されたものであり、容易にかつ均一に洗濯物に直塗りが行える直塗り装置を取り付けた洗濯機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の洗濯機は、洗濯物が入れられて洗濯の工程が行われる洗濯槽、および、上部に設けられ洗濯水を導く給水口と、上部の前記給水口から投入された洗剤を保持する洗剤保持部と、前記洗剤保持部の底部に、水よりも粘性がある液体洗剤は容易に流出しないが、水は流出する大きさである第2隙間と、前記洗剤保持部に設けられる移動体とを備え、前記洗剤保持部の前記洗濯槽の中心側に洗剤流出孔を有し、前記移動体は、前記洗剤流出孔から一部が外方に露出するように付勢されて前記洗剤流出孔を塞ぐように構成され、前記移動体が前記洗剤流出孔が開放されるように押されることにより、前記移動体と前記洗剤流出孔との間に第1隙間が発生し、前記洗剤が前記第1隙間から流れ出る直塗り装置を具備し、前記直塗り装置は、前記洗濯槽の内周面に取り付けられ、前記洗濯槽の深さの半分の位置よりも上方に位置し、かつ、洗濯水によって前記第2隙間から前記洗剤が流出されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、容易にかつ均一に洗濯物に直塗りが行える直塗り装置を取り付けた洗濯機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る洗濯乾燥機の要部側断面図。
図2】洗濯兼脱水槽の内周面に組み付けた直塗り装置を洗濯兼脱水槽の中心側から見た正面図。
図3】洗剤投入口収納ケースから取り外された直塗り装置の斜視図。
図4】直塗り装置の背面斜視図。
図5】直塗り装置の図2のI−I断面図。
図6】直塗り装置から取り外された直塗り用洗剤保持部の図4のII部矢視図。
図7】直塗り装置の使用状態を示す図2のI−I断面図
図8】洗濯乾燥機本体に組み付けた直塗り装置における洗濯水の流れを示す側面断面図。
図9A】他の実施形態の変形例1に係る直塗り装置の斜視図。
図9B】変形例1の円柱体が利用者により洗濯物になすりつけて回動され、直塗りを行っている状態を示す図。
図10】変形例2に係る直塗り装置の斜視図。
図11A】変形例3に係る直塗り装置の斜視図。
図11B】変形例3に係る直塗り装置の斜視図。
図11C】変形例3に係る直塗り装置の斜視図。
図12A】変形例4の直塗り装置の移動体付近を示す図。
図12B】変形例4の直塗り装置の移動体が後退して洗剤の直塗りが行われている状態の側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明は、洗濯物の汚れ箇所(ワイシャツの襟、袖口等)への洗剤の直塗りを可能にする装置およびこれを取り付けた洗濯機に係る。
【0012】
本発明の実施形態に係る洗濯機は、全体構成について説明した後に、本実施形態の直塗り装置について詳細に説明する。
【0013】
<洗濯乾燥機>
図1は、本発明の実施形態に係る洗濯乾燥機1の要部側断面図である。
実施形態の洗濯乾燥機(洗濯機)1は、洗濯兼脱水槽8の回転軸8jが略鉛直方向に配置される縦型式洗濯乾燥機(縦型式洗濯機)である。
【0014】
洗濯乾燥機1は、筐体2が外郭を形成する。
筐体2の上部には上面カバー3が設けられている。上面カバー3には、洗濯物を出し入れする開口部5を開閉する外蓋4が設けられている。
【0015】
外蓋4は、利用者が手前側の把手を把持して後ろ側に開く(図1の矢印α10)ことで、開口部5が開口される。開口部5を開くことで、洗濯物が洗濯兼脱水槽8に出し入れ可能となる。
【0016】
上面カバー3の後側(図1の右側)には、給水ホース接続口6及び吸水ホース接続口(図示せず)が設けられている。
給水ホース接続口6は、水道栓からの給水のための接続口である。吸水ホース接続口は、風呂の残り湯を給水のために吸引する接続口である。
【0017】
洗濯乾燥機1は、筐体2内に、洗濯兼脱水槽8、外槽9、駆動装置10、洗剤投入装置11、給水ユニット7、乾燥ダクト12等を備えている。
洗濯兼脱水槽8は、洗濯物が入れられて洗濯、脱水、乾燥の各工程が行われる内槽である。洗濯兼脱水槽8は、有底円筒形状を呈し、ステンレス鋼板等で形成されている。
【0018】
洗濯兼脱水槽8は、略円筒状の胴板8aと略円板状の底板8sとを有している。胴板8aには、通水及び通風のための多数の貫通孔8a1(一部のみ図示)が形成されている。洗濯兼脱水槽8は、底板8sの上に回転翼8bが回転軸8jに回転自在に支持されている。
【0019】
外槽9は、洗濯兼脱水槽8を満たす洗濯水、すすぎ水を貯留する槽である。また、外槽9は、洗濯兼脱水槽8が高速回転する脱水工程時の脱水液を受け、排水する。そのため、外槽9は、洗濯兼脱水槽8を同軸(回転軸8j)上に内包し、有底円筒形状を呈している。
【0020】
外槽9の上部には、外槽カバー9aを備えている。外槽カバー9aは、略半円形状の投入口9cを有し、外槽9の上端縁部に取り付けられる。投入口9cには、開閉可能に取り付けられた蓋部材9bが設けられている。利用者は、蓋部材9bの前部の把手(図示せず)を把持して、外槽9の投入口9cを開閉する(図1の矢印α11)。
【0021】
洗濯乾燥機1の利用者は、外蓋4および外槽カバー9aの蓋部材9bを開くことにより、開口部5、開口9cを通して洗濯兼脱水槽8内に洗濯物の出し入れを行うことができる。
【0022】
駆動装置10は、洗濯兼脱水槽8または回転翼8bを駆動する。
駆動装置10は、外槽9の底面の外方中央に配置されている。駆動装置10は、モータ10aと、洗濯兼脱水槽8または回転翼8bとの接続を切り換えるクラッチ機構10bとを有している。
【0023】
駆動装置10の回転軸10cは、外槽9を貫通し、洗濯兼脱水槽8および回転翼8bと結合されている。クラッチ機構10bは、モータ10aの回転動力を洗濯兼脱水槽8または回転翼8bに伝達する機能を有する。
【0024】
給水ユニット7は、洗濯兼脱水槽8に給水を行う。
給水ユニット7は、上部の上面カバー3の奥側に設けられている。給水ユニット7は、給水ホース接続口6からの水道水や吸水ホース接続口(図示せず)からの風呂水を、下流の注水ホース13を介して、外槽9と洗濯兼脱水槽8の間から外槽9内に注水する。また、給水ユニット7は、給水ホース接続口6からの水道水を、下流の洗浄ホース14を介して洗濯兼脱水槽8の上部に注水する。
【0025】
外槽9の後側底面に設けられた落込部15は、その下方の下部連通管16と連通している。下部連通管16は、排水弁17を介して、洗濯水排水路18と連通するように接続されている。
洗濯水排水路18には、洗濯乾燥機1の機外に排水を送り出す図示しない排水ホースが接続されている。
【0026】
排水弁17を閉弁することにより、外槽9内に洗濯水やすすぎ水を貯溜する。また、排水弁17を開弁することにより、外槽9内の水(洗濯水やすすぎ水)が、洗濯水排水路18を介して、洗濯乾燥機1の機外に排水される。
【0027】
乾燥工程に用いられる乾燥ダクト12は、外槽9の背面内側に鉛直方向に設置されている。乾燥ダクト12の下部は、蛇腹管19を介して、外槽9の落込部15と接続されている。
【0028】
乾燥ダクト12内には、水冷除湿機構(図示せず)が内蔵されている。給水ユニット7は、該水冷除湿機構に冷却水(例えば給水される水道水)を供給する。冷却水は乾燥ダクト12の壁面(ステンレス製等の金属プレート)を伝わって流下して落込部15に入り、下部連通管16、洗濯水排水路18を通って機外へ排出される。
【0029】
乾燥ダクト12の上部にある出口12oは、ファン20の吸気口20iと接続されている。ファン20の出口20oはヒータ21と接続されている。ヒータ21の出口21oは、送風ダクト22およびゴム製の蛇腹管23を介して、吹出ノズル24と接続されている。
吹出ノズル24は、外槽カバー9aに固定されている。
【0030】
上述の乾燥機能による乾燥工程は下記である。
ファン20が駆動すると、外槽9内の空気が落込部15を介して乾燥ダクト12に流入する。そして、乾燥ダクト12で水冷除湿された空気は、ファン20から吐出されヒータ21に送られる。ヒータ21に送られた空気は、ヒータ21で加熱されて高温低湿の風となり、吹出ノズル24から洗濯兼脱水槽8内に向けて吹き出される。
【0031】
なお、図示していないが、外槽9下部の下部連通管16と排水弁17の間には、洗濯水の温度や、乾燥運転中に洗濯水排水路18から機外に排出される空気の温度を検出する温度センサが設けられている。
【0032】
洗濯兼脱水槽8は、胴板8aの上端縁部に合成樹脂等で形成されたバランスリング(流体バランサともいう)8cを備えている。バランスリング8cは、その内部に比重の大きな流体が封入されて構成されている。洗濯兼脱水槽8の回転時に洗濯物の偏り等によって偏心が生じた際、バランスリング8c内で流体が洗濯物の偏りの反対側に移動して、洗濯兼脱水槽8の回転のバランスをとる働きを有する。
【0033】
また、図示しないが、外槽カバー9aの後側には、蛇腹管23が接続される接続口と、槽洗浄用の洗浄ホース14が接続される接続口とが設けられている。
外槽カバー9aには、水路部材25が複数のねじを用いて外槽カバー9aの下面に固定されている。水路部材25は、略環状形状に形成されており、外槽カバー9aの周縁部に沿って周回するよう配置されている。
【0034】
<洗剤投入装置11及び直塗り装置29A>
図2は、洗濯兼脱水槽8の内周面に組み付けた直塗り装置29Aを洗濯兼脱水槽8の中心側から見た正面図である。図3は、洗剤投入口収納ケース26から取り外された直塗り装置29Aの斜視図である。
【0035】
洗濯乾燥機1は、洗剤投入装置11に直塗り装置29Aを備えている。洗剤投入装置11とは、利用者が洗濯を行うに際して洗剤を洗濯兼脱水槽8の内部に投入する装置である。直塗り装置29Aとは、洗濯物の汚れのひどい箇所、例えば、ワイシャツの襟口、袖口に液体洗剤を直接塗るための装置である。すなわち、直塗り装置29Aは、洗剤投入装置11の一部として構成されている。
【0036】
更に詳しく説明すると、洗濯兼脱水槽8の内周面に、洗剤投入装置11が洗剤投入装置収納ケース26を介して取り付けられている。なお、洗濯兼脱水槽8は、特許請求の範囲にいう「洗濯槽」に相当する。
【0037】
本実施形態での直塗り装置29Aは、樹脂で形成されているが、所定の機械的強度、加工性が得られればこれに限定されることなく、金属等の他の材料で形成することもできる。
【0038】
図3に示すように、洗剤投入装置11の凸部27を洗剤投入装置収納ケース26の凹部28に嵌入することによって、直塗り装置29Aを備える洗剤投入装置11が洗剤投入装置収納ケース26に回動自在に固定される。
【0039】
図4は、直塗り装置29Aの背面斜視図である。図5は、直塗り装置29Aの図2のI−I断面図である。
【0040】
図5に示すように、直塗り装置29Aは、外ケース33と、直塗り用洗剤保持部29と、球体30とを備えている。なお、外ケース33は洗剤投入装置11の一部を成す。
球体30、外ケース33、および直塗り用洗剤保持部29は樹脂成形品である。
【0041】
外ケース33は、鉛直方向に延びる主壁33aと主壁33aの側端から後方に延びる一対の側壁33b、33c(図4参照)とを有している。
主壁33aには、球体30の一部が洗濯兼脱水槽8の中心側に露出するために嵌合される円状の開口33a1が形成されている。そのため、図5に示すように、開口33a1は、球体30の径より小さい径を有している。
【0042】
一対の側壁33b、33cには、直塗り装置29Aを備える洗剤投入装置11を洗剤投入装置収納ケース26に回動自在に支持するための凸部27(図3図4参照)がそれぞれ根元に突設されている。
【0043】
図4に示すように、外ケース33の上部には、主壁33aの奥側に洗濯水を導く給水口31(図5参照)が形成されている。
給水口31は、複数の給水格子31aと給水格子31a間の給水孔31bとを有している。
【0044】
外ケース33の主壁33aの中央左右には直塗り用洗剤保持部29を係止するための被係止部33h(図4参照)が一対後方に延びて形成されている。
【0045】
図6は、直塗り装置29Aから取り外された直塗り用洗剤保持部29の図4のII部矢視図である。
【0046】
図6に示す直塗り用洗剤保持部29は、利用者が洗濯物に洗剤の直塗りを行うに際して、直塗り用の液体洗剤が入れられる部材である。
直塗り用洗剤保持部29は、上方の開口29o1と洗濯兼脱水槽8の中心側の開口29o2とをもつ箱形形状の樹脂成形品である。
【0047】
直塗り用洗剤保持部29は、V字状の底壁29aと、底壁29aの後端部から上方に延びる後壁29bと、底壁29aの側端部から上方に延びる一対の側壁29cとが形成されている。
V字状の底壁29aは、直塗りのための液体洗剤が溜まる場所となる。
【0048】
V字状の底壁29aには、球体30と接する部分にわずかな窪み29a1を設けている。また、後壁29bには、球体30と接する部分にわずかな窪み29b1を設けている。
窪み29a1、29b1は、球体30が嵌合される窪みである。
【0049】
窪み29a1、29b1は球体30を位置決めして嵌合により球体30を半固定し、半固定を安定させる働きがある。また、後壁29bの窪み29b1は、球体30が洗濯兼脱水槽8の内側から外側に押された際にわずかに窪み29b1側へ沈ませる効果がある。
【0050】
図6に示すように、一対の側壁29cには、直塗り用洗剤保持部29を外ケース33に係止するための凹状の被係止凹部29c1がそれぞれ凹設されている。
【0051】
図5に示すように、球体30を外ケース33の開口33a1と直塗り用洗剤保持部29の窪み29a1、29b1に嵌合する。そして、直塗り用洗剤保持部29の一対の側壁29cの被係止凹部29c1(図6参照)を、外ケース33の被係止部33h(図4参照)に係止する。これにより、図4図5に示すように、直塗り用洗剤保持部29が球体30を間に挟んで外ケース33の後方に取り付けられる。
【0052】
ここで、球体30は、背面から(外槽9から洗濯兼脱水槽8に向かう方向)直塗り用洗剤保持部29によって押さえ付けられる(図5の矢印α30)ように半固定されている。球体30の半固定とは、球体30に何らかの外力を加えることで球体30が移動する余地があることをいう。
【0053】
ここで、直塗り用洗剤保持部29と外ケース33との間の下部にはわずかな隙間11b(図5参照)が設けられている。
【0054】
<利用者による洗剤の直塗り>
利用者による洗濯物の汚れのひどい箇所への洗剤の直塗りは以下のように行われる。
利用者は、直塗りを行う際、図1の矢印α12のように、洗剤投入装置11(直塗り装置29A)を下側に開けて(図4の凸部27を中心に回動させ)、直塗り用の液体洗剤を外ケース33と直塗り用洗剤保持部29との間に投入する(図5の矢印α13)。
【0055】
図4から分るように、洗剤投入装置11の直塗り用洗剤保持部29に利用者が直塗りのための液体洗剤を投入することにより、液体洗剤が一定量、つまり利用者が直塗り作業を行う間、直塗り用洗剤保持部29で保持される。保持されなかった分は洗濯工程を通して洗濯兼脱水槽8の槽内へ流出する。
【0056】
図7は、直塗り装置29Aの使用状態を示す図2のI−I断面図である。
利用者が洗濯兼脱水槽8の内部から、図7に示すように、洗濯物yの汚れがひどい箇所y1を球体30にこする、すなわち押し付けつつ移動させる。つまり、球体30を洗濯兼脱水槽8の内側から回転させるように押すことにより、球体30と外ケース33の表面との封止が解け、球体30が回転する(図7の矢印α1)。これにより、球体30が接触する外ケース33の開口33a1との隙間11aから直塗り用洗剤保持部29に溜まっている液体洗剤dが洗濯物yの汚れがひどい箇所y1に流出する。
【0057】
こうして、利用者は、直塗り装置29Aを用いて洗濯物yの汚れがひどい箇所y1に液体洗剤の直塗りを円滑に行うことができる。そのため、図1に示すように、利用者が洗濯兼脱水槽8に手を入れて直塗り装置29Aを使い易いように直塗り装置29Aは洗濯兼脱水槽8の深さ(図1の回転翼8bから洗濯兼脱水槽8の上縁までの距離s1)の半分の位置よりも上方に位置している。
【0058】
その後、利用者は、洗濯物を上面カバー3の開口部5、外槽カバー9aの投入口9cから、洗濯兼脱水槽8の内部に投入する。そして、図5の矢印α14のように、洗剤を外ケース33の洗剤投入装置11の外方に、洗濯物全体を洗うための洗剤を投入する。
【0059】
その後、外槽カバー9aの投入口9cを蓋部材9bで閉じる(図1の矢印α21)とともに、筐体2の上面カバー3の開口部5を外蓋4で閉じる(図1の矢印α20)。
次いで、洗濯乾燥機1のスタート釦(図示せず)を押下して、洗剤溶かし工程に始まる洗濯を行う。
【0060】
図8は、洗濯乾燥機1本体に組み付けた直塗り装置29Aにおける洗濯水の流れを示す側断面図である。
洗濯中、給水された水Wは、図4に示す給水口31から直塗り装置29A内(外ケース33と直塗り用洗剤保持部29との間)に浸入し、図8に示すように、直塗り用洗剤保持部29の内部に降り注ぐ。
【0061】
これにより、利用者により直塗りのために直塗り装置29Aに入れられた液体洗剤は、直塗り用洗剤保持部29と外ケース33との間に設けられたわずかな隙間11b(図5参照)から洗濯工程が終わるまでに流れ切る。つまり、利用者が直塗りで使い切らなかった分の液体洗剤は水Wともに直塗り用洗剤保持部29から流出する。こうして、洗濯工程中の給水にて直塗り装置29Aに入れられた液体洗剤を流し落とせるため、運転終了後の残水や、洗剤残りの懸念もない。
【0062】
なお、隙間11bは、水よりも粘性がある液体洗剤dは容易に流出しないが、水は流出する大きさである。隙間11bは、液体洗剤dの分量が考慮される。
隙間11bは、液体洗剤dが流出するまでの時間または液体洗剤dの粘度で決定できる。例えば、液体洗剤dが流出するまでに5分間と設定する。
【0063】
隙間11bは、例えば0.1mm位の隙間である。なお、0.1mm位は例であり、限定されない。
隙間11bは、一体成型よりも分割した成型で作成することが望ましい。
【0064】
上記構成によれば、洗剤の直塗りを行うに際して、液体洗剤dを洗濯兼脱水槽8に取り付けた直塗り装置29Aに注ぐので、液体洗剤dを床面に垂らしたり、こぼしたりすることが抑制される。また、液体洗剤dが利用者の手に付くことが回避される。直塗りに際して、利用者は洗濯物yの汚れ箇所y1で直塗り装置29Aの球体30をこすると球体30が回転し(図7の矢印α31)、液体洗剤dが隙間11a(図7参照)から洗濯物yの汚れ箇所y1に流出し、均一に塗ることができる。
【0065】
また、図5に示すように、球体30は洗剤投入装置11の開口33a1と対向する箇所が曲率を有しているので、直塗り装置29Aに入れられた液体洗剤が隙間11aから円滑に流出できる。
また、球体30は洗濯物yの汚れ箇所y1で擦られることで、つまり押されつつ移動されることで、球体30が回転して(図7の矢印α31)直塗り装置29Aに入れられた液体洗剤dをスムーズに隙間11aに導くことができる。
【0066】
さらに、直塗り装置29Aは洗濯兼脱水槽8に取り付けられるので、直塗りに際して洗濯物yに塗布するための場所が不要である。加えて、直塗りの洗剤と洗濯運転用の洗剤を連続したタイミングで入れることができる。
以上のことから、容易にかつ均一に洗濯物yの汚れ箇所y1に洗剤の直塗りが行える直塗り装置29A及びこれを取り付けた洗濯乾燥機1を提供できる。
【0067】
<<変形例1>>
実施形態では、図7に示すように、直塗り装置29Bの直塗り部である球体30は球形状の場合を例示した。
しかし、直塗り装置29Bの直塗り部の形状は特に制限はない。例えば、変形例1の図9Aに示すように、円柱体32であってもよい。その他の構成は実施形態と同様である。
【0068】
図9Aは、実施形態の変形例1に係る直塗り装置29Bの斜視図であり、図9Bは、変形例1の円柱体32が利用者により洗濯物yを擦りつけられ、直塗りを行っている状態を示す図である。
【0069】
変形例1の直塗り装置29Bは、円柱体32が、実施形態の球体30に代わって実施形態1と同様な方法で、半固定状態に取付られている。図9Bに示すように、直塗り用洗剤保持部29のV字状の底壁29aには、円柱体32と接する部分にわずかな窪み29a2を設けている。また、後壁29bには、円柱体32と接する部分にわずかな窪み29b2を設けている。
【0070】
直塗り装置29Bの円柱体32は、外ケース33の矩形状の孔41a1から円柱体32の周面の一部32s(図9A参照)が洗濯兼脱水槽8の中心部側に露出している。
直塗りに際して、利用者は、図9Bに示すように、直塗り装置29Bに液体洗剤dを入れる。
【0071】
そして、利用者の洗濯物yの汚れがひどい箇所y1を円柱体32にこする、つまり円柱体32に押し付けて移動させる。
すると、直塗り装置29Bの円柱体32が引っ込んで回転し(図9Bの矢印α32)、孔41a1との隙間11a2から、液体洗剤dが流出して洗濯物yの汚れがひどい箇所y1に直塗りされる。
【0072】
上記構成によれば、円柱体32は洗濯物yの汚れがひどい箇所y1で擦られる(押されつつ移動する)ことで、円柱体32が回転して(図9Bの矢印α32)直塗り装置29Bに入れられた液体洗剤dをスムーズに隙間11a2から汚れがひどい箇所y1に流出できる。
【0073】
<<変形例2>>
図10は、変形例2に係る直塗り装置29Cの斜視図である。
前記実施形態では、直塗り装置29Aを洗剤投入装置11に設ける場合を説明した。
【0074】
しかし、直塗り装置29Aを設ける場所は必ずしも洗剤投入装置11である必要はない。すなわち、直塗り装置29Aは、洗剤投入装置11の高さから洗濯兼脱水槽8内の下部に直塗り用の液体洗剤が流れる場所ならどこでもよい。
【0075】
そこで、図10に示す変形例2では、直塗り装置29Cを洗剤投入装置収納ケース26に設けた場合を表している。
変形例2では、実施形態と同様な構成で、直塗り装置29Cの球体30を洗剤投入装置収納ケース26に半固定状態とする。そのため、変形例2における液体洗剤dの直塗りも、実施形態と同様な方法で行われる。
【0076】
なお、直塗り装置29Cの球体30を変形例1で例示した円柱体32としてもよい。
また、直塗り装置29Cを、洗剤投入装置11や洗剤投入装置収納ケース26以外の場所に設けることも可能である。
【0077】
<<変形例3>>
図11A図11Cは、変形例3に係る直塗り装置29Dの斜視図である。
変形例3の直塗り装置29Dは、移動体40を回転させず進退運動をさせることで、直塗り用の液体洗剤dが漏れ出るように構成したものである。
【0078】
変形例3の直塗り装置29Dは、弾性支持部40sと弾性支持部40sに支持される移動体40とが形成されている。移動体40は、外ケース33の洗剤流出孔33eから洗濯兼脱水槽8の中心部側に一部40aが露出している。
【0079】
移動体40が押される(図11Aの矢印α33)と押圧力で弾性支持部40sが変形して移動体40が凹む構成である。
直塗りに際しては、利用者は、図11Bに示すように、洗剤投入装置11の直塗り装置29Dの直塗り用洗剤保持部29に直塗り用の液体洗剤dを注ぐ。
【0080】
その後、利用者は、図11Cに示すように、洗濯物yの汚れ箇所y1を直塗り装置29Dの移動体40にこする、つまり押し当てつつ(図11Cの矢印α33)移動させる。すると、移動体40が後退して、移動体40と洗剤流出孔33eとの隙間11a3から液体洗剤dが流出して、洗濯物yの汚れ箇所y1に直塗りされる。
【0081】
<<変形例4>>
図12Aは、変形例4の直塗り装置29Eの移動体43付近を示す図であり、図12Bは、変形例4の直塗り装置29Eの移動体43が後退して洗剤の直塗りが行われている状態のIII−III断面図である。
【0082】
実施形態、変形例1〜3では、直塗り装置29A〜29Dの移動体である球体30、円柱体32、移動体40等が外ケース33(洗剤投入装置11)の開口33a1(41a1、33e)に対向する部分を曲率をもつ場合を説明した。しかし、外ケース33の開口33a1(41a1、33e)に対向する部分が曲率をもたなくともよい。
【0083】
そこで、変形例4の直塗り装置29Eの移動体43は、外ケース33(洗剤投入装置11)の開口51a1に対向する部分を角ばって構成したものである。
【0084】
図12Aに示すように、移動体43は先端部43aは滑らかな形状を有するとともに、開口51a1に対向する部分43bが角錐状に角ばった形状を有している。移動体43は、直塗り用洗剤保持部29側に押されて半固定されている。
直塗りに際しては、利用者は、直塗り用洗剤保持部29に直塗り用の液体洗剤dを入れる。そして、洗濯物yの汚れ箇所y1で移動体43の先端部43aをこする、つまり移動体43の先端部43aを押しつつ(図12Bの矢印α34)移動させる。すると、移動体43が後退し、移動体43と開口51a1との隙間11a4から液体洗剤dが流出して、洗濯物yの汚れ箇所y1に直塗りされる。
【0085】
<<その他の実施形態>>
1.実施形態、変形例1〜4では、直塗り装置29A〜29Eの球体30、円柱体32、移動体40、43が単数の場合を例示して説明したが、複数の構成としてもよい。
【0086】
2.実施形態、変形例1〜4では、直塗り装置29A〜29Eの球体30、円柱体32、移動体40の外ケース33の開口33a1(41a1、33e)との対向箇所を曲率を有する形状として構成し、直塗り装置29Eの移動体43の外ケース33の開口51a1との対向箇所を角ばった形状として構成した場合を例示したが、当該対向箇所を一部に曲率を有する形状としてもよい。
【0087】
3.実施形態、変形例1〜4では、直塗り装置29A〜29Eの球体30、円柱体32、移動体40、43を押すことにより移動して液体洗剤が流出する場合を説明したが、球体30、円柱体32、移動体40、43に貫通孔があり、押した場合に球体30、円柱体32、移動体40、43の貫通孔から、液体洗剤が染み出す構成としてもよい。
【0088】
4.本発明は、特許請求の範囲に記載した範囲内で様々な変形形態、具体的形態が可能であり、説明した実施形態、実施例に限定されない。
【符号の説明】
【0089】
1 洗濯乾燥機(洗濯機)
8 洗濯兼脱水槽(洗濯槽)
11 洗剤投入装置(洗剤保持部)
11a 隙間(第1隙間)
11b 隙間(第2隙間)
29 直塗り用洗剤保持部(洗剤保持部)
29A、29B、29C、29D、29E 直塗り装置(洗剤保持部)
29b1 窪み(凹部)
30 球体(移動体)
31 給水口
32 円柱体(移動体)
33 外ケース(洗剤保持部)
40、43 移動体
33a1、33e、41a1、51a1 開口(洗剤流出孔)
d 液体洗剤(洗剤)
s1 洗濯兼脱水槽の深さ(洗濯槽の深さ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B