特許第6781573号(P6781573)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6781573
(24)【登録日】2020年10月20日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】筆記具用リフィール
(51)【国際特許分類】
   B43K 7/02 20060101AFI20201026BHJP
   B43K 7/08 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   B43K7/02
   B43K7/08 100
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-112027(P2016-112027)
(22)【出願日】2016年6月3日
(65)【公開番号】特開2017-217771(P2017-217771A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2019年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157185
【弁理士】
【氏名又は名称】吉野 亮平
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐介
【審査官】 藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−000590(JP,U)
【文献】 特開2008−062566(JP,A)
【文献】 特開2002−137589(JP,A)
【文献】 特開2010−089517(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0156887(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00− 3/00
B43K 5/00− 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容するインク収容パイプと、
このインク収容パイプよりも先端側に設けられ筆記部を含む筆記側パイプと、
前記インク収容パイプと前記筆記側パイプとがそれぞれ連結される継手と、を備える筆記具用リフィールであって、
前記インク収容パイプの前記継手に連結されている先端側端と、前記筆記側パイプの前記継手に連結されている後側端とは、当該リフィールの軸線方向において重複し、
前記継手の外周には、インク収容パイプの先端側端に圧入される複数のリブと、前記リブの後端側に設けられ前記インク収容パイプ内のインクが漏れないようにシールする拡径部とが形成されている、筆記具用リフィール。
【請求項2】
インクを収容するインク収容パイプと、
このインク収容パイプよりも先端側に設けられ筆記部を含む筆記側パイプと、
前記インク収容パイプと前記筆記側パイプとがそれぞれ連結される継手と、を備える筆記具用リフィールであって、
前記インク収容パイプの前記継手に連結されている先端側端と、前記筆記側パイプの前記継手に連結されている後側端とは、当該リフィールの軸線方向において重複し、
前記継手は、前記筆記側パイプを受け入れる管状の受け入れ部と、前記受け入れ部の内周に設けられた複数のリブと、前記リブの後方に形成され前記筆記側パイプの外周面が圧入され気密性を保つシール部と、を有している、筆記具用リフィール。
【請求項3】
前記インク収容パイプの先端側端と、前記筆記側パイプの後側端とが軸線方向において重複している位置よりもインク収容パイプ側には、前記筆記側パイプ内のインクが前記インク収容パイプ内に逆流するのを防止する逆流防止部が設けられている、請求項1又は2に記載の筆記具用リフィール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具用リフィールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、筆記具のインクの交換用カートリッジとしての筆記具用リフィールが知られている。一般的な筆記具用リフィールは、未使用のインクを収容するインク収容部と、筆記ボールやインクを染みこませた中綿等の筆記部とを備えている。そして筆記具のインクを使い果たした場合、使用者は筆記具から古い筆記具用リフィールを取り出し、新しい筆記具用リフィールを筆記具にセットする。
【0003】
このような筆記具用リフィールとしては、金属材料を深絞り成形により加工し、インク収容部を構成する管状部分と筆記部を含む筆記側の管状部分とを一体に成形したものが多用されてきた。深絞り成形された筆記具用リフィールは、筆記部とインク収容部とで接合部分が存在しないため、筆記部への曲げ荷重などに強い構造であり、このためインク収容部からのインク漏れが起こりにくいという利点を有していた。
【0004】
しかしながら、インク収容部と筆記側の管状部分とを深絞り成形により一体成形するためには高度な成形技術が要求されるため、近年では、2つの管状部材を別体として成形し両者を継手により連結した筆記具用リフィールが用いられている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したように、深絞り成形を用いた一体成形品が用いられていた理由としては深絞り成形を用いた場合の方がインク漏れを起こし難いという利点があったためであり、やはり特許文献1のように2つの管状部材を別体として成形した場合には継手と2つの管状部材との間の接合強度が弱く、インク漏れを起こす場合があった。
【0007】
そこで本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、2つの管状体を継手により連結した筆記具用リフィールにおいて接合強度を向上させることができる筆記具用リフィールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、インクを収容するインク収容パイプと、このインク収容パイプよりも先端側に設けられ筆記部を含む筆記側パイプと、前記インク収容パイプと前記筆記側パイプとがそれぞれ連結される継手と、を備える筆記具用リフィールであって、前記インク収容パイプの前記継手に連結されている先端側端と、前記筆記側パイプの前記継手に連結されている後側端とは、当該リフィールの径方向において重複している。
【0009】
このように構成された本発明によれば、インク収容パイプの先端側端と、筆記側パイプの後側端とが重複している重複部に径方向からの締り効果による筆記パイプの保持力強度の向上と、曲げ荷重等が加わった場合の応力をインク収容パイプ側へも分散させることができることにより、継手とインク収容パイプ及び継手と筆記側パイプの接合強度を向上させることができる。
【0010】
また、本発明において好ましくは、前記継手の外周には、インク収容パイプの先端側端に圧入される複数のリブが形成されている。
【0011】
このように構成された本発明によれば、複数のリブを継手の外周に形成することにより、継手をインク収容パイプの先端側端内により強固に固定することができる。
【0012】
また、本発明において好ましくは、前記継手は、前記筆記側パイプを受け入れる管状の受け入れ部を備え、前記受け入れ部の内周には複数のリブが形成されている。
【0013】
このように構成された本発明によれば、複数のリブを継手の受け入れ部の内周に形成することにより、筆記側パイプの後側端側を継手の受け入れ部内により強固に固定することができる。
【0014】
また、本発明において好ましくは、前記インク収容パイプの先端側端と、前記筆記側パイプの後側端とが軸線方向において重複している位置よりもインク収容パイプ側には、前記筆記側パイプ内のインクが前記インク収容パイプ内に逆流するのを防止する逆流防止部が設けられている。
【0015】
このように構成された本発明によれば、逆流防止部によって筆記側パイプ内のインクがインク収容パイプ内に逆流するのを防止することができる。そして逆流防止部を、筆記側パイプとインク収容パイプとが重複している位置よりもインク収容パイプ側に設けることにより、継手をインク収容パイプ内に圧入して継手が径方向内側に変形した場合においても、継手の変形によって逆流防止部の機能が妨げられるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明によれば、2つの管状体を継手により連結した筆記具用リフィールにおいて接合強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態による筆記具用リフィールの側面図である。
図2】本発明の実施形態による筆記具用リフィールの側断面図である。
図3】本発明の実施形態による筆記具用リフィールの継手の側面図である。
図4】本発明の実施形態による筆記具用リフィールの継手の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態による筆記具用リフィールについて説明する。図1は、本発明の実施形態による筆記具用リフィールの側面図であり、図2は、筆記具用リフィールの側断面図である。なお、明細書において先端側又は前方とは、筆記具用リフィールの軸線方向において筆記部が設けられている側をいい、後端側又は後方とは、筆記部が設けられていない側をいうものとし、軸線とは長手方向に延びる筆記具用リフィールの軸線をいうものとする。
【0019】
図1及び図2に示すように筆記具用リフィール1は、インクを収容するインク収容パイプ3と、筆記部5を含む筆記側パイプ7と、インク収容パイプ3と筆記側パイプ7とを連結するための継手9とを備えている。
【0020】
インク収容パイプ3は、内部が空洞の管状体によって構成されており、内部に所定量のインクが充填されている。そしてインク収容パイプ3の後端側には、尾栓11が圧入されている。尾栓11の後端には、筆記具用リフィール1が装着される筆記具と係合するカム形状が形成されている。
【0021】
筆記側パイプ7は、インク収容パイプ3よりも径が小さい管状体によって構成されており、その先端には、筆記部5が設けられている。本実施形態では、ボールペン用の筆記具用リフィールを例に挙げているため、筆記部5は筆記ボール13を備えている。なお、本発明は、ボールペン以外にも中綿にインクを染みこませるマーキングペン等についても適用可能である。
【0022】
筆記側パイプ7内には、継手9を介してインク収容パイプ3からインクが供給される。そして筆記側パイプ7内のインクは筆記ボール13に付着し、筆記ボール13を回転させることにより筆記ボール13に付着させたインクを紙面に転写するようになっている。
【0023】
図3は、継手の側面図であり、図4は、継手の側断面図である。図3及び図4に示すように、継手9は略管状形状を有しており、その外周の後端側はインク収容パイプ3内に圧入される。また、継手9の先端側には筆記側パイプ7を受け入れるための受け入れ部15が設けられている。
【0024】
より具体的には、継手9の外周の後端側は、インク収容パイプ3の内径よりも僅かに大きい外径を有している。そして、継手9の外周の軸線方向略中央には、複数のリブ17が設けられている。複数のリブ17は、継手9の周方向に等間隔で配置されている。そして全てのリブ17の頂面は、軸線方向から見たときに当該軸線を中心とする円を形成するように湾曲している。このとき形成される円の径は、インク収容パイプ3の内径よりも僅かに大きい。このように複数のリブ17を形成することにより、継手9をインク収容パイプ3に圧入した際にリブ17の頂面とインク収容パイプ3の内周が接触して両者の間の接合強度が向上する。また、リブ17を設けることによりリブ17の周囲を径方向内側に凹ませることができ、リブ17の周囲において継手9の径方向の厚みを薄くすることができる。これにより、継手9を射出成形した場合に、いわゆる「ひけ」による継手9の変形を抑制することができる。また、継手9とインク収容パイプ3とを複数のリブ17を用いて固定することにより、継手9とインク収容パイプ3との接合強度を保ちながら継手9をインク収容パイプ3に圧入する際の作業性を向上させることができる。
【0025】
継手9の外周におけるリブ17よりも後端側には、拡径部19が設けられている。この拡径部19の径も、インク収容パイプ3の内径よりも僅かに大きい。そして継手9をインク収容パイプ3に圧入したときに、拡径部19は、インク収容パイプ3内のインクが継手9とインク収容パイプ3との間から漏れないようシールを形成する。
【0026】
さらに継手9の外周におけるリブ17よりも先端側には、インク収容パイプ3の内径よりも大きい拡径部21が設けられている。拡径部21の外径は好ましくはインク収容パイプ3の外径と同一であり、拡径部21は継手9をインク収容パイプ3に圧入した際のストッパとして機能する。
【0027】
継手9の受け入れ部15は、筆記側パイプ7の外径よりも僅かに大きい内径を有する管状形状を有している。そして受け入れ部15の内周には、筆記側パイプ7と接触し筆記側パイプ7を保持するための複数のリブ23が設けられている。複数のリブ23は、周方向にわたって等間隔に形成されており、複数のリブ23の頂面は軸線方向から見たときに当該軸線を中心とする円を形成するように湾曲している。このとき形成される円の径は、筆記側パイプ7の外径よりも僅かに小さい。このように複数のリブ23を形成することにより、筆記側パイプ7を継手9に圧入した際にリブ23の頂面と筆記側パイプ7の外周が接触して両者の間の接合強度が向上する。さらにリブ23の後方には筆記側パイプ7の外周面とを圧入し、機密性を保つ、シール部24が形成されている。
【0028】
また受け入れ部15の後側端は、拡径部21よりも後方側に位置している。従って、継手9にインク収容パイプ3と筆記側パイプ7を接合した際に、インク収容パイプ3と筆記側パイプ7は、所定の幅Lにわたって径方向に重複することとなる。このような重複部を設けることにより、継手9とインク収容パイプ3との接合強度、及び継手9と筆記側パイプ7との接合強度を向上させることができる。
【0029】
さらに重複部の後方側であって重複部とインク収容パイプ3の先端側端との間には、逆流防止部25が設けられている。逆流防止部25は、受け入れ部15と、継手9の後方側とを連通する空間内に逆止ボール27を配置して構成されている。逆止ボール27は、逆流防止部25の縮径構造によって所定位置よりも後方側に移動できないようになっている。従って、筆記ボール13が下側に位置するようにボールペンを立てると、逆止ボール27が下側に移動してインク収容パイプ3内のインクが逆流防止部25の空間を通って筆記側パイプ7に流入する。そして筆記側パイプ7内がインクで満たされるとインクの浮力により筆記ボール13が上側に移動し、逆流防止部25のインク収容パイプ3側の開口を塞ぐ。これにより、インクの逆流を防止することができる。
【0030】
そしてこのような継手9の受け入れ部15に筆記側パイプ7を圧入すると、受け入れ部15内のリブ23によって筆記側パイプ7が継手9に接合される。また、継手9の後端側をインク収容パイプ3内に圧入することによりリブ17の頂面がインク収容パイプ3の内周面に接触し継手9とインク収容パイプ3を接合することができる。そして、重複部に対して径方向外側から内側に向けた圧力を加えたり、例えばビス等の圧入具を径方向内側に向けて圧入したりすることにより、筆記側パイプ7と、継手9と、インク収容パイプ3との接合をより強固にすることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 筆記具用リフィール
3 インク収容パイプ
5 筆記部
7 筆記側パイプ
9 継手
図1
図2
図3
図4