(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−197592号公報
【0005】
ブラシ下面洗浄の際においては、通常、基板の両面に処理液が供給される。基板下面への処理液供給は、主に、ブラシと基板との間に適度な潤滑作用を生じさせる目的およびブラシ下面洗浄により生じた汚れを基板周縁から洗い流すことを目的として行われる。基板上面への処理液供給は、ブラシ下面洗浄により生じた汚れやパーティクルがデバイス面に付着することを防止する目的として行われる。ブラシ洗浄で用いられる処理液は、主に純水であり、用途に応じて例えばSC1、SC2、FOM、FPM、HF,H2SO4、SPMなどの基板洗浄に用いられる薬液が用いられる。
【0006】
ブラシ下面洗浄により生じた汚れやパーティクルの大半は、回転する基板の遠心力の作用により、下面に供給された処理液とともに基板の外周方向に放出され、基板保持機構の下部にある排出溝などを通じて基板処理装置の外部へと排出される。ブラシ下面洗浄により生じた汚れやパーティクルの一部は、基板外周方向への放出の際生じた飛まつ又はミストに混在して基板の上面に着地する。
【0007】
基板の上面に着地した汚れは、その大半は基板の上面に供給される処理液により基板の外周方向へと洗い流されるものの、一部の汚れやパーティクルが残存する場合がある。
従って、従来工程においては、基板下面から上面へ回り込む汚れやパーティクルがデバイス面に付着することを完全に防ぐことができていない。
【0008】
以下、
図2A〜
図2Dを参照して従来のブラシ下面洗浄工程における問題点を説明する。
【0009】
図2Aでは、基板Wがバキュームチャック2に吸着保持されている。保持された基板Wは図示しない回転駆動機構5により水平面内で回転される。従来工程においては、ブラシBR1による基板Wの下面洗浄に先立ち、基板Wの上面、下面それぞれに処理液が吐出され、ブラシBR1による基板Wの下面洗浄が終了した後に基板Wの上面、下面への処理液吐出が停止する。処理液としては通常、純水が用いられる。
上面ノズル10からは、基板Wの上面に対して基板Wの略中心上方から処理液が吐出される。下面ノズル11からは、基板Wの下面に対して、処理液が吐出される。
ブラシBR1と基板W下面との摩擦により生じた汚れやパーティクルを基板Wから排除することが最優先されるため、通常は下面ノズル11から吐出される処理機の流量が上面ノズル10から吐出される処理液の流量を上回る。また、処理液の吐出流量は、上記工程を通じて変化させることはない。
図2Aの段階では、ブラシBR1は、基板Wの外周から離れた位置にある。
【0010】
次に
図2Bに示すように、ブラシBR1が基板Wの外周に向けて水平方向に接近する。
【0011】
次に
図2Cに示すように、ブラシBR1が上昇し基板Wの下面に接触し、ブラシBR1による基板Wの下面の洗浄が開始される。ブラシBR1は、洗浄開始に先立ち、図示しないブラシ回転機構によりブラシ回転軸27回りに所定の回転数で自転する。
【0012】
ブラシ洗浄終了後、
図2Dに示すように、ブラシBR1が基板Wから離反する。
【0013】
ここで、
図2A〜
図2Cにおいては基板Wの上面及び下面に処理液が吐出されており、基板Wは水平面内で回転するため、処理液は基板Wの外周方向に向けて放出される。この様子を
図3に模式的に示す。
基板Wの上面から放出された処理液には、処理液に働く遠心力に加えて、基板Wの周縁端面において基板Wの下面へと回り込もうとする力と、処理液に働く重力が働く。その結果、基板Wの上面から放出された処理液は、全体として若干仰角下向きに放出される傾向にある。
【0014】
一方で、基板Wの下面から放出された処理液にも同様の働き、つまり処理液に働く遠心力に加えて、基板Wの周縁端面において基板Wの上面へと回り込もうとする力と、処理液に働く重力が働く。基板Wの上面へと回り込もうとする力が重力作用に比べて比較的大きい場合、基板Wの下面から放出された処理液は、若干仰角上向きに放出される場合がある。
基板Wの上面から放出された処理液と、基板Wの下面から放出された処理液は、基板周縁部で衝突し、混じりあいながら基板周縁部から放出されていく。ここで、基板Wの下面から放出された処理液の流量が基板Wの上面から放出された処理液の流量を上回っている場合、こうして合成された処理液の流れは、基板Wの周縁部から実質的に仰角上向きに放出される。
【0015】
こうして仰角上向き方向に放出された処理液は、基板処理装置1の図示しない内壁その他に衝突した結果、飛まつやミストとなって基板Wの上面へと着地する可能性がある。特に、仰角上向き方向に放出された処理液がブラシ回転軸27に衝突した場合、ブラシ回転軸27に付着した処理液はブラシ回転軸27の自転に基づく遠心力によりブラシ回転軸27の周囲に飛び散ってしまう。この結果、ブラシ回転軸27を介して飛まつやミストが基板Wの上面の中心付近近くまで飛ばされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
以上
図2A〜
図2Dおよび
図3を用いて模式的に説明したように、基板の下面をブラシ洗浄する際には、流量条件その他の如何によっては、処理液が基板の周縁部から実質的に仰角上向きへと放出される場合があり、その結果として基板Wの上面のデバイス面が汚染される危険性が高まる。しかしながら、従来工程においては、こうした問題について対処されていない。
【0017】
ここで、基板の外周方向に放出される処理液の挙動は、基板の回転速度、処理液の供給状態などにより規定される。従って、より高度なレベルでデバイス面の汚染を防ぐためには、処理液の供給状態を制御することにより、処理液が基板の周縁部から仰角上向きに飛散することを抑止することが必要である。
【0018】
そこで、本発明の目的の一つは、上面にデバイス面を有する基板の下面をブラシ洗浄する基板処理において、処理液の供給状態を制御することにより、処理液が基板の周縁部から仰角上向きに飛散することを抑止するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、上面にデバイス面を有する基板(W)の下面をブラシ洗浄する基板処理方法であって、前記基板の下面を支持しつつ、水平姿勢で前記基板を保持する基板保持工程と、前記基板を基板の中心に略鉛直な回転軸(AX)を中心として回転させる基板回転工程と、上面ノズル(10)により前記基板の上面に処理液を吐出する上面吐出工程と、前記上面吐出工程と同時または其の後に、下面ノズル(11)により前記基板の下面に処理液を吐出する下面吐出工程と、前記上面吐出工程の後に前記基板の下面にブラシ(BR1)を当接させる下面ブラシ洗浄工程とを含み、前記上面吐出工程の開始後から、少なくとも前記下面ブラシ洗浄工程の終了に至るまで、処理液が前記基板の周縁部から実質的に仰角下向きへと放出されるように前記基板の上面に吐出される処理液と前記基板の下面に吐出される処理液との流量比を制御する。
基板処理方法は、前記基板の上面周縁部のうち、平面視において前記ブラシの近傍に位置する吐出領域に向けて、エッジノズル(12)により処理液を吐出するエッジ吐出工程をさらに含むことを特徴とする。
【0020】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
【0021】
請求項1に記載の発明によれば、基板の上面に吐出される処理液と、基板の下面に吐出される処理液との流量比を制御することにより、処理液が前記基板の周縁部から実質的に仰角下向きへと飛散させることが可能となる。このことにより基板の上面にあるデバイス面の汚染が回避される。
また、ブラシが基板下面に当接すると、基板の周縁部から放出される処理液の方向が変化する。請求項1に記載の発明によれば、エッジノズルによる処理液吐出により、基板の周縁部から放出される処理液の方向を更に仰角下向きへと押さえ込むことができる。このため、ブラシが基板下面に当接した後においても、基板に吐出された処理液が全体として前記基板の周縁部から実質的に仰角下向きへと放出されるようにすることが可能となる。
【0022】
上記の目的を達成するための請求項2記載の発明は、請求項1に記載の基板処理方法であって、前記流量比は1より大きいことを特徴とする。換言すると、基板の上面に吐出される処理液の流量が、基板の下面に吐出される処理液の流量よりも大きいことを特徴とする。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば、基板上面に吐出される流量の方が、基板下面に吐出される流量よりも大きくなる。この結果、基板上面に吐出された処理液の挙動が支配的となり、基板に吐出された処理液は、全体として前記基板の周縁部から実質的に仰角下向きへと放出される。このことにより基板の上面にあるデバイス面の汚染が回避される。
【0026】
上記の目的を達成するための請求項
3記載の発明は、請求項
1または請求項2に記載の基板処理方法であって、平面視において、前記ブラシの中心と前記基板の中心とを結ぶ直線に対して、前記吐出領域の略中心と前記基板の中心とを結ぶ直線とが成す角度θが、前記基板の回転方向を正とした場合に、0<θ<45度となることを特徴とする。
【0027】
基板の下面でブラシと当接した後に基板周縁部から放出される処理液は、前記ブラシの中心と前記基板の中心とを結ぶ直線に対して、基板の回転方向を正とした場合にやや正の角度に傾きをもって放出される傾向にある。従って、基板の表面の吐出領域の略中心と前記基板の中心とを結ぶ直線とが成す角度θを請求項
3の条件とすることにより、基板の下面から放出される処理液を、基板の上面から放出される処理液により好適に押さえ込むことが可能となる。
【0028】
上記の目的を達成するための請求項
4記載の発明は、請求項
3に記載の基板処理方法であって、平面視において、前記ブラシの中心と前記基板の中心とを結ぶ直線に対して、前記吐出
領域の略中心と前記基板の中心とを結ぶ直線とが成す角度θが、前記基板の回転方向を正とした場合に、0度<θ<20度となることを特徴とする。
【0029】
請求項
4の角度条件により、基板の下面から放出される処理液を、基板の上面から放出される処理液により押さえ込む上で、請求項
4の角度条件が特に好適であることが実験等を通じて判明している。従って、請求項
4に記載の発明によれば、基板の下面から放出される処理液を、基板の上面から放出される処理液によって、更に好適に押さえ込むことが可能となる。
【0030】
上記の目的を達成するための請求項
5に記載の発明は、請求項1
から請求項4のいずれか1項に記載の基板処理方法であって、前記下面ブラシ洗浄工程の後にポストリンス工程を更に含み、前記ポストリンス工程においては、前記基板の上面に吐出される処理液と前記基板の下面に吐出される処理液の流量比が1より大きいことを特徴とする。
【0031】
請求項
5に記載の発明の構成により、ポストリンス工程において基板の下面に吐出された処理液が基基板の上面に回り込むことが抑止される。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図面では同様な構成および機能を有する部分に同じ符号が付され、下記説明では重複説明が省略される。また、各図面は模式的に示されたものである。また、図面を援用した実施形態の説明において、紙面の上下方向は基板処理装置1における鉛直方向に対応する。
【0034】
[実施形態について]
<基板処理装置1の構成>
図1は、実施形態に係る基板処理装置1の構成を示す模式的な側面図である。
図1を参照して実施形態にかかる基板処理装置1の構成について説明する。
【0035】
基板処理装置1は、バキュームチャック2と、ブラシ機構20と、処理液供給機構30と、記憶部100と、制御機構110とを備えている。
【0036】
<バキュームチャック2の構成について>
基板処理装置1におけるバキュームチャック2の構成について説明する。
バキュームチャック2は、床に固定された基台6と、基台6の上面に固接された回転駆動機構5と、回転駆動機構5に接続し回転駆動機構5により回転可能なチャック軸3と、チャック軸3の上端に固定された吸着ベース4を備える。吸着ベース4の下方には、図示しない吸引配管が接続されており、これはチャック軸3、回転駆動機器5、基台6の内部を通り基板処理装置1の外部の吸引ポンプへと接続する。
バキュームチャック2は、図示しない搬送機構により基板処理装置1の外部から搬入された基板Wを水平方向に吸着保持した上で、基板Wをチャック軸3の略中心に鉛直な回転軸AX周りに回転させる機能を有する。
【0037】
<ブラシ機構20の構成について>
ブラシ機構20は、床に固定されたブラシ基台21と、基台21の上面に固接された上下駆動機構22と、上下駆動機構22に接続された軸23と、軸23の上端に接続されたブラシアーム駆動機構24と、ブラシアーム駆動機構24にその一端が接続し水平に延伸するブラシアーム25と、ブラシアーム25の他端に接続するブラシ自転機構26と、ブラシ自転機構26にその一端が接続し下方に延伸するブラシ回転軸27と、ブラシ回転軸27の他端に固接されたブラシベース28と、ブラシベース28の上面に、ブラシ回転軸27を囲むようにドーナツ型に形成されたブラシBR1と、を備える。
【0038】
ブラシ基台21は、ブラシ機構20全体の重量を支える土台としての機能を有する。
上下駆動機構22は、軸22を上下させ、ひいてはブラシベース28の上面に形成されたブラシBR1を上下させる。
ブラシアーム駆動機構24は、ブラシアーム25を水平面内で揺動させ、ひいてはブラシBR1を水平面内で揺動させる。
ブラシ自転機構26は、ブラシ回転軸27を自転させ、ひいてはブラシBR1を自転させる。
これらブラシ機構20の動作は、制御機構110からの信号に基づき制御される。
【0039】
<処理液供給機構30の構成について>
処理液供給機構30は、処理液を格納するタンクT1と、タンクT1に接続する共通配管L0、共通配管L0から分岐する配管L1、L2、L3ならびに配管上に介設/接続された各種機器・部材を備える。
共通配管L0は、タンクT1に接続する配管であり、配管L1、L2、L3に分岐する共通流路としての機能を有する。
【0040】
配管L1は、共通配管L0から分岐し、その終端が上面ノズル10に接続する。配管L1には、ポンプP1、流量調整バルブAV1、固定バルブFV1が介接されている。ポンプP1を稼働させることにより、タンクT1内の処理液は、共通配管LOを通過し、配管L1へと流入する。配管L1の流路を開閉可能な固定バルブFV1を開状態とすることにより、当該流入した処理液は配管L1の終端に接続する上面ノズル10に流入し、上面ノズル10の先端から吐出される。上面ノズル10から吐出される処理液の流量は、配管L1の流量の大小を調整可能な流量調整バルブAV1の開閉状態を調整制御することにより調節される。
【0041】
配管L2は、共通配管L0から分岐し、その終端が下面ノズル11に接続する。配管L2には、ポンプP2、流量調整バルブAV2、固定バルブFV2が介接されている。ポンプP2を稼働させることにより、タンクT1内の処理液は、共通配管LOを通過し、配管L2へと流入する。配管L2の流路を開閉可能な固定バルブFV2を開状態とすることにより、当該流入した処理液は配管L2の終端に接続する下面ノズル11に流入し、下面ノズル11の先端から吐出される。下面ノズル11から吐出される処理液の流量は、配管L2の流量の大小を調整可能な流量調整バルブAV2の開閉状態を調整制御することにより調節される。
【0042】
配管L3は、共通配管L0から分岐し、その終端がエッジノズル12に接続する。配管L3には、ポンプP3、流量調整バルブV3、固定バルブFV3が介接されている。ポンプP3を稼働させることにより、タンクT1内の処理液は、共通配管LOを通過し、配管L3へと流入する。配管L3の流路を開閉可能な固定バルブFV3を開状態とすることにより、当該流入した処理液は配管L3の終端に接続する下面ノズル12に流入し、エッジノズル12の先端から吐出される。エッジノズル12から吐出される処理液の流量は、配管L3の流量の大小を調整可能な流量調整バルブAV3の開閉状態を調整制御することにより調節される。
【0043】
配管L1、L2、L3に介接された上記各種機器や部材の動作は、制御機構110からの信号に基づき制御される。
なお、予め実験などにより流量と流量調整バルブAV1、AV2、AV3との関係を把握しておけば、流量調整バルブの開度を調節することによって間接的に配管L1、L2、L3を流れる処理液の流量を制御することができる。
なお、各ノズル10、11、12から吐出する処理液流量を精密に調節するために、配管L1、L2、L3を流れる処理液の流量を測定する流量計を各々の配管に設け、これら流量計による流量測定結果をフィードバックして流量調整を行っても良い。
【0044】
<記憶部100および制御機構110について>
記憶部100は、汎用コンピュータや専用サーバーなどのハードディスクのメモリ領域や、各種コンピュータ機器に脱着可能なメモリデバイス等であり、基板処理装置1による処理に必要な処理工程、処理に必要なパラメータ、各種データ、各種アルゴリズムを格納する。などを予め格納する。また、制御機構110による機器の制御の際に、制御に必要なデータ、を一時的に記憶・格納する機能も有する。
【0045】
制御機構110は、汎用コンピューターや専用サーバーに装着されるための独立した処理ボードであっても良いし、汎用コンピュータ機器や専用サーバーの機能のうち、基板処理装置1を制御するために振り分けられる制御リソースを指すものであっても良い。
制御機構110は、記憶部100に格納された処理手順(レシピ)に基づき、バキュームチャック2による基板Wの吸着保持および基板Wの回転、ブラシ機構20によるブラシBRの自転、基板Wへの接近/離反、処理液供給機構30による基板Wへの処理液供給開始/停止、それぞれのノズル(上面ノズル10、下面ノズル11、エッジノズル12)から吐出される流量の制御、図示しない搬送機構による基板Wの搬送動作の制御などを制御する。
【0046】
<実施形態に係る基板処理装置1の動作>
図6は、実施形態に係る基板処理装置1の処理工程を説明するためのフローチャートである。以下、
図1に加えて、適宜、
図4A〜
図4Dおよび
図5を参照しつつ、実施形態に係る基板処理装置1の動作例について説明する。
【0047】
<STEP1 基板の搬入>
STEP1では、図示しない搬送機構により基板Wが基板処理装置1の処理室内に搬入される。
搬送機構としては、例えば、基板をピックアップするハンド部及びハンド部を3次元移動可能な駆動部を備えた基板搬送用のロボットハンドが用いられる。
【0048】
<STEP2 基板の保持・回転>
STEP2では、基板Wを処理室内に搬入するのと並行して、バキュームチャック2による吸引の準備作業として、バキュームチャック2に連通した図示しない吸引ポンプの駆動が開始される。同時に、処理液供給機構30において、配管L1、L2、L3それぞれに介挿された固定バルブFV1〜FV3、流量調整バルブAV1〜AV3、ポンプP1〜P3が処理開始に備えて準備動作が開始する。準備動作の内容は記憶部100に準備動作ルーティンとして格納されており、制御機構110が当該準備動作ルーティンに対応する信号を各機器へと送信する。
【0049】
次に搬送機構(図示しない)は、基板Wの中心が吸着ベース4の回転軸と略一致する位置へと基板Wを水平移動する。当該位置は、搬送機構へのティーチングなどにより記憶部100にあらかじめ記憶されている。
次に、基板Wの下面と吸着ベース4の上面(吸着面)とが接触するまで、基板Wを下行させ、基板搬送機構から基板Wを開放する。これに先立ち又は並行して吸着ベース4に連通した外部のポンプが作動開始される。これにより吸着ベース4は基板Wの下面を吸着する。
【0050】
こうして、基板Wが搬送機構から吸着ベース4へと受け渡され、かつ吸着保持される。受渡の後、搬送機構は基板処理装置1から退避する。
基板Wが吸着保持された後、回転駆動機構5がチャック軸3を回転させる。回転のタイミング及び回転数は記憶部100に格納されたレシピに規定されている。チャック軸3が回転することにより、チャック軸3に固接された吸着ベース4が基板Wと一体的に回転する。
【0051】
<STEP3 ブラシ自転開始>
STEP1〜2と並行し、STEP3が実行される。
STEP3においては、ブラシ自転機構26がブラシ回転軸27を回転させる。これにより、ブラシ回転軸27の下端に固接されたブラシベース28及びブラシベース28の上面に固接されたブラシBR1がブラシ回転軸27を中心に回転する。
ブラシ洗浄に好適なブラシBR1の回転数は、基板Wの汚れ状態やブラシBR1の素材などによって異なるが、例えば10rpm〜250rpmの値をとる。
【0052】
<STEP4 上面ノズル吐出開始>
STEP2の終了後、STEP3と並行してSTEP4が実行される。
STEP4では、吸着ベース4に吸着保持された基板Wの上面に向けて、当該基板Wの略中心の上方に配置された上面ノズル10から基板Wの略中心に向けて処理液が吐出される。処理液としては、通常、純水が用いられる。
【0053】
STEP4の吐出においては、記憶部100に格納されたレシピに基づき、配管L1に介挿された流量調整バルブAV1の開度が調整される。次に、ポンプP1がレシピに規定された出力で駆動される。ポンプP1の駆動直後に固定バルブFV1が開状態となり、配管L1を通じて上面ノズル10へと所定の流量の処理液が流入し、上面ノズル10の先端から基板Wの上面へと処理液が吐出される。
【0054】
吐出された処理液は、基板Wの回転により生じた遠心力によって基板Wの周縁部から放出される。ここで、基板Wの上面から放出される処理液の流量と、基板Wの下面から放出される処理液の流量との流量比は、1よりも大きくすることが望ましい。換言すると、基板Wの上面に吐出される処理液の流量を、基板Wの下面に吐出される処理液の流量よりも大きくすることが望ましい。この場合、上記流良比は1よりも大きくなる。このことにより、基板の上面および下面から放出される処理液が合流した結果、基板の周縁部から放出される処理液が実質的に仰角下向きへと放出される。なお、基板Wの上面に処理液が吐出されている一方で基板Wの下面への処理液吐出が停止している状態においても、上記流良比は1よりも大きくなる。
こうした流量比条件が充足されている場合、放出された処理液が自転するブラシ回転軸27に当たったとしても、そこから反射した飛まつやミストが基板Wの上面にまで飛ばされる危険性が少なくなる。
なお、ここに説明するSTEP4実行の時点では、未だ基板Wの下面には処理液が吐出されていないため、上記の流量比条件は充足されている。
【0055】
<STEP5 ブラシを基板へと水平方向に接近>
STEP4の終了後、ブラシアーム駆動機構24を駆動させることによりブラシアーム25を揺動させ、ブラシBR1を水平方向において基板Wに接近させるべく移動させる。この状態を、
図4Bに模式的に示す。
【0056】
当該移動終了後、基板Wの下面の下方に配置された下面ノズル11から基板Wの下面に向けて処理液が吐出される。本実施形態の例において、STEP4では基板Wの下面に向けて処理液を吐出せず、STEP5において初めて基板Wの下面に向けて処理液を吐出している理由は、
図4Aのようにブラシ回転軸27が基板Wから離反した状態よりも、
図4Bのようにブラシ回転軸27が基板Wに接近した状態の方が、基板Wとブラシ回転軸27との間が狭いことにより、基板Wの下面から放出された処理液がブラシ回転軸27に反射して基板Wの上面に飛ばされる危険性が低くなるためである。
【0057】
<STEP6 下面ノズル吐出開始>
STEP5の終了後又はこれと併行して、STEP6が実行される。
STEP6では、吸着ベース4に吸着保持された基板Wの下面に向けて、当該基板Wの下方に配置された下面ノズル11から基板Wの下面に向けて処理液が吐出される。処理液としては、通常、純水が用いられる。
【0058】
STEP6の吐出においては、記憶部100に格納されたレシピに基づき、配管L2に介挿された流量調整バルブAV2の開度が調整される。次に、ポンプP2がレシピに規定された出力で駆動される。ポンプP2の駆動直後に固定バルブFV2が開状態となり、配管L2を通じて下面ノズル11へと所定の流量の処理液が流入し、下面ノズル11の先端から基板Wの下面へと処理液が吐出される。
【0059】
吐出された処理液は、基板Wの回転により生じた遠心力によって基板Wの周縁部から放出される。ここで、基板Wの上面から放出される処理液の流量と、基板Wの下面から放出される処理液の流量との流量比は、1よりも大きくすることが望ましい。言い換えると、基板Wの上面に吐出される処理液の流量を、基板Wの下面に吐出される処理液の流量よりも大きくすることが望ましい。このことにより、基板の上面および下面から放出される処理液が合流した結果、基板の周縁部から放出される処理液が実質的に仰角下向きへと放出される。
【0060】
上面ノズル10から吐出される処理液の流量および、下面ノズル11から吐出される処理液の流量のそれぞれは、既に説明したように制御機構110が流量調整バルブAV1、AV2を調節することにより調節される。STEP6においては、すでに上面ノズル10から処理液が吐出されている。従って、下面ノズル11からの処理液がこれを下回る流量となるように流量調整バルブAV1、AV2との関係が調節される。
【0061】
<STEP7 ブラシを基板へと垂直方向接近>
STEP6の実行後、STEP7が実行される。
ブラシ機構20の上下駆動機構22を作動させることにより、ブラシBR1が上方に向けて移動し、ブラシBR1の上面が基板Wの下面に接する高さ近傍で停止する。この停止位置は、洗浄対象物である基板Wの下面の状態や、ブラシBR1の素材、洗浄レシピなどにより異なる。
たとえば、ブラシBR1によるブラシ洗浄を基板Wにダメージを与えないように、ブラシBR1の上面が基板Wの下面よりやや下(例えば0.1mm〜数mm程度)に位置させても良い。この場合には、ブラシBR1は直接には基板Wの下面には接触せず、ブラシBR1と基板Wに介在する処理液の作用により洗浄がなされる。一方で、ブラシBR1を基板Wの下面に若干押し込む形(例えば0.1mm〜数mm程度)としても良い。この場合、基板Wの下面にブラシBR1が強い圧力をもって押し付けられる。
【0062】
<STEP8 エッジノズル吐出開始>
STEP7を実行することにより、ブラシBR1が、ブラシ洗浄可能な位置まで基板Wに接近する。
STEP7を実行すると、基板Wの周縁部から放出される処理液がブラシBR1に衝突し飛散するため、基板Wの下面から放出される処理液の放出方向が変化する。ブラシBR1に衝突した処理液は、比較的広範な立体角方向へと飛散し、飛散した処理液の一部は基板Wの周縁部から仰角上向きへと放出される。
【0063】
このようにブラシBR1に衝突して飛散した処理液は、ブラシBR1の形状や基板Wの回転速度によっては鋭い指向性を有するため、仮に基板Wの上面に吐出される流量と下面に吐出される流量比が1より大きくなるように流量調整されていたとしても、ブラシBR1の近傍領域に限ると当該流量比が1より小さくなっている場合がある。つまり、処理液放出方向を制御するための流量比条件が、局所的に破られている場合がある。
【0064】
こうした流量比条件の局所的な破れを回避すべく、STEP8においては、
図4Cに模式的に示すように、基板Wの上面に配置されたエッジノズル12から処理液を吐出させる。エッジノズル12からの処理液は、平面視においてブラシBR1と近傍の吐出領域に向けて吐出される。このことにより、上述した流量比条件の局所的な破れの発生を抑止することが可能となる。
図4Cは、STEP7が実行された状態を模式的に示したものである。
【0065】
エッジブラシ12からの吐出においては、記憶部100に格納されたレシピに基づき、配管L3に介挿された流量調整バルブAV3の開度が調整される。次に、ポンプP3がレシピに規定された出力で駆動される。ポンプP3の駆動直後に固定バルブFV3が開状態となり、配管L3を通じてエッジノズル12へと所定の流量の処理液が流入し、エッジノズル12の先端から基板Wの上面へと処理液が吐出される。
【0066】
ここで、エッジノズル12により流量比の局所的破れの効果が、エッジノズル12から基板Wの上面に吐出する吐出領域と、基板Wの下面に当接するブラシBR1との配置関係により大きく異なる現象を発明者らは発見している。
【0067】
図5は、ブラシから放出される処理液の方向と、エッジノズル12から吐出され基板から放出される処理液の方向との関係を説明するための模式図である。これを適宜参照し、上記吐出領域とブラシBR1との配置関係について説明する。
【0068】
図5に模式的に示すように、平面視においてブラシBR1の略中心と基板Wの中心とを結ぶ仮想的な直線と、エッジノズル12から吐出される処理液が基板Wに衝突する領域(吐出領域R1〜R3)の略中心と基板Wの中心とを結ぶ仮想的な直線を考える。次に、前者の直線を基準とし、基板Wの回転方向を正として、後者の直線が為す角度θを規定する。
図5のR1〜R3は、各々θ=0、20度、90度の場合についての吐出領域である。
以下、エッジノズル12による吐出の有無やエッジノズル12の配置位置がパーティクル除去性能に及ぼす影響について説明する。
【0069】
図7は、 エッジノズルからの吐出がパーティクル個数に与える影響を示すグラフであり、5つの異なる条件の下で行ったブラシ洗浄後に基板Wに残留したパーティクル個数(30nm以上)の測定結果を示している。
【0070】
<
図7グラフの条件および測定結果について>
条件1〜5では、各ノズル(ノズル10〜11)からの吐出流量を除いて全て同一の条件で処理が実行された。
条件1:
図1の基板処理装置1を用いて基板Wをブラシ洗浄。条件1においては、上面ノズル10からの吐出流量<下面ノズル11からの吐出流量となっている。エッジノズル12からの吐出は無い。
基板Wの処理後に残留しているパーティクル個数(30nm以上。以下同じ)は25個であった。
条件2: 条件2〜条件5においては、上面ノズル10からの吐出流量>下面ノズル11からの吐出流量となっている。条件2においては、エッジノズル12からの吐出は無い。
基板Wの処理後に残留しているパーティクル個数は17個であった。
条件3: 条件3〜条件5については、エッジノズル12から処理液を基板Wの上面へと吐出している。条件3〜条件5の違いは、エッジノズル12から処理液を吐出する吐出領域とブラシBR1との配置関係(θ)である。
条件3ではθ=90度となっている。基板Wの処理後に残留しているパーティクル個数は12個であった。
条件4: 条件4ではθ=45度となっている。基板Wの処理後に残留しているパーティクル個数は7個であった。
条件5: 条件5ではθ=20度となっている。基板Wの処理後に残留しているパーティクル個数は3個であった。
【0071】
条件1と条件2の結果を対照すると、基板Wの上面に吐出する処理液の流量と、基板Wの下面に吐出する処理液との流量との流量比を1より大きくすることにより、残留パーティクル個数が改善されていることが判る。
【0072】
また、条件2の結果に対して、条件3〜5の結果を対照すると、エッジノズル12により基板Wの上面に追加的に処理液を吐出することにより、残留パーティクル個数が改善されていることが判る。
【0073】
更に、条件3〜5それぞれの結果を対照すると、平面視において、エッジノズル12から吐出される処理液の吐出領域がブラシBR1の近傍にあるほど残留パーティクル個数が改善されていることが判る。
【0074】
なお、上記吐出領域は、単にブラシBR1の近傍にあれば良いのではなく、平面視において上記吐出領域がブラシBR1から若干ずれた位置(例えば20≧θ>10)に設定した方が、θ=0の場合よりも残留パーティクル個数が低減する傾向が観測されている。また、θ<0つまり上記吐出領域が基板Wの回転方向と逆側にずれた位置にある場合、残留パーティクル個数が悪化する傾向が観測されている。
これは、ブラシBR1に衝突した処理液が、前記ブラシの中心と前記基板の中心とを結ぶ直線に対して、基板の回転方向を正とした場合にやや正の角度に傾きをもって放出される傾向にあるためと推測される。この推測によれば、ブラシBR1に衝突して飛散した処理液を好適に押さえ込むには、エッジノズル12から吐出する処理液の吐出領域をブラシBR1から若干、正の角度寄りにずらして吐出する必要がある。
【0075】
以上から、STEP8においては、ブラシBR1の位置に対して好適な位置に処理液が吐出されるようにエッジノズル12からの処理液の吐出領域を調整することが望ましい。当該吐出領域の位置関係は、例えば、予め実験などの結果を参酌してエッジノズル12の基板Wに対する配置角度を事前に調整しておく。
【0076】
<STEP9 ブラシを基板から離反>
ブラシBR1による基板Wの下面の物理的洗浄処理が終了した後は、ブラシBR1を基板Wから離反させる。当該離反動作は、いわばSTEP7とSTEP5での動作を逆に行うことで行われる。すなわち、先ずブラシBR1を下方に移動し、次にブラシBR1を基板Wから離れる方向に水平方向に移動させる。
【0077】
<STEP10 ブラシ離反後リンス開始>
ブラシBR1が基板Wから離反した後に、ブラシ洗浄後に行うリンス処理工程(ポストリンス工程)を行っても良い。ポストリンス工程を実行しない場合は、STEP9終了後、STEP11を実行する。
【0078】
ポストリンス工程においては、基板Wの下面は概ね清浄となっており、また基板WとブラシBR1との接触も無い。したがって、STEP4〜STEP9においては、基板Wの上面に吐出される処理液の流量と基板Wの下面に吐出される処理液の流量との流量比が1より大きくなるように流量などを制御していたのに対して、STEP10のポストリンス工程においては、必ずしも流量比を1よりも大きくする必要は無い。
このため、ポストリンス工程においては、流量比が1よりも小さくなるように、上面ノズル10、下面ノズル11それぞれから吐出される処理液の流量を調節する制御を行っても良い。
【0079】
<STEP11 ブラシ離反後リンス停止>
STEP9またはSTEP10の実行終了後、すべてのノズル(上面ノズル10、下面ノズル11、エッジノズル12)からの処理液の吐出を停止する。この状態を
図4Dに模式的に示す。
処理液の吐出が停止した後、回転駆動機構5により基板Wが所定の回転数、例えば1000〜1500rpmで高速回転され、基板Wに残存するリンス液が振り切り乾燥される。
【0080】
<STEP12 基板回転停止・保持開放>
STEP11の実行終了後、回転駆動機構5によるチャック軸3の回転を停止させる。これに伴い、吸着ベース4およびこれに吸着された基板Wが一体的に回転停止する。次に、図示しない吸引ポンプを停止し、吸着ベース4が基板Wに与える吸引作用を停止させる。
【0081】
<STEP13 基板の搬出>
STEP12と併行して基板処理装置1の外部から図示しない搬送機構が進入し、基板Wを吸着ベース4から受け取る。当該搬送機構は基板Wを保持しつつ基板処理装置1の外部へと退出する。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明の実施態様は、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【0083】
例えば、本発明の実施形態の上記説明における各種駆動機構の制御ならびに、ブラシアームやノズルの構造、バキュームチャックの構造などについては、多様な実現形態が公知であり、当業者は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内にて本発明を適用可能である。
【0084】
また、本発明の実施形態の処理液供給機構において、装置の設置現場に既に設置されている処理液供給機構から純水(DIW)などの提供を受ける場合がある。この場合、設置現場からの供給配管に処理液供給機構の配管の一端を接続すれば良く、また設置現場の当該供給配管から供給される処理液には常時一定の噴出圧力がかかっている。したがってこのように現場(工場など)の処理液供給設備からの処理液供給および処理液供給圧力(用力)を活用できる場合、上記実施例で説明したようなタンクやポンプを自前で装備する必要は無いため、
図1の処理液供給機構30からはタンクT1、ポンプP1、P2、P3が無く、処理液供給機構30の配管の一端がタンクT1の代わりに設置現場の供給配管に接続することとなる。
このように設置現場の処理液供給機構および当該機構の供給圧力(いわゆる用力)を活用する変形例においても、処理液供給機構30の流量調整バルブAV1、AV2、AV3を調整することにより本発明を実施することが可能である。
【0085】
その他、特許請求の範囲による限定の範囲内において、願書に添付された明細書、請求の範囲、図面に開示された本発明の開示内容を超えない範囲内において、実施態様の種々の変更が可能である。