(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6781607
(24)【登録日】2020年10月20日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】射出成形装置、射出成形品の取り出し方法、及び射出成形品
(51)【国際特許分類】
B29C 33/44 20060101AFI20201026BHJP
B29C 45/42 20060101ALI20201026BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
B29C33/44
B29C45/42
B29C45/26
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-213993(P2016-213993)
(22)【出願日】2016年11月1日
(65)【公開番号】特開2018-69640(P2018-69640A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】特許業務法人大貫小竹国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立野 秀治
(72)【発明者】
【氏名】本木 弘
【審査官】
正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/113391(WO,A1)
【文献】
特開2009−291946(JP,A)
【文献】
特開平11−306543(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/146871(WO,A1)
【文献】
特開2012−131093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品部と非製品部とからなる射出成形品が固化後も弾性を有する樹脂材料で形作られ、前記非製品部に把持用突起が一体に形成され、金型の型開き後に、前記把持用突起が取り出し装置のアームの把持部で把持されることにより、前記射出成形品が前記取り出し装置の前記アームによって前記金型から取り出されるようになっている射出成形装置において、
前記金型は、前記非製品部の前記把持用突起を形作る把持用突起形成キャビティ部分が形成され、
前記把持用突起形成キャビティ部分の内部には、センターピンが突出し、
前記把持用突起は、前記把持用突起形成キャビティ部分の内壁面と前記センターピンとの隙間に充填された前記樹脂材料で筒状に形作られ、前記射出成形品と前記センターピンとが前記センターピンの軸心に沿った方向に相対移動させられることにより、前記センターピンが相対移動してずれた分の空間が内部に形成され、
前記アームの前記把持部は、前記把持用突起の前記空間が形成された部分を把持する、
ことを特徴とする射出成形装置。
【請求項2】
前記把持用突起が複数形成され、そのうちの少なくとも一つの前記把持用突起の前記空間が形成された部分を前記アームの前記把持部で把持する、
ことを特徴とする請求項1に記載の射出成形装置。
【請求項3】
前記把持用突起形成キャビティ部分は、スプルーブッシュのスプルー孔であり、
前記把持用突起は、前記スプルー孔の内壁面と前記センターピンとの隙間に充填された前記樹脂材料で筒状に形作られたスプルー部である、
ことを特徴とする請求項1に記載の射出成形装置。
【請求項4】
前記把持用突起が複数形成され、前記アームの前記把持部が前記把持用突起のそれぞれに対応して前記把持用突起と同数設けられ、全ての前記把持用突起の前記空間が形成された部分を前記把持用突起に対応して設けられた前記アームの前記把持部で把持する、
ことを特徴とする請求項1に記載の射出成形装置。
【請求項5】
前記センターピンは、先端の外周面よりも内側に凹んだアンダーカット凹所が前記先端から前記軸心に沿った方向にずらして形成された、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の射出成形装置。
【請求項6】
前記アンダーカット凹所は、前記センターピンの周方向に沿って形成された環状溝である、
ことを特徴とする請求項5に記載の射出成形装置。
【請求項7】
製品部と非製品部とからなる射出成形品が固化後も弾性を有する樹脂材料で形作られ、前記非製品部に把持用突起が一体に形成され、金型の型開き後に、前記把持用突起が取り出し装置のアームの把持部で把持されることにより、前記射出成形品が前記取り出し装置の前記アームによって前記金型から取り出される射出成形品の取り出し方法において、
前記把持用突起は、前記金型に形成された把持用突起形成キャビティ部分の内壁面と前記把持用突起形成キャビティ部分の内部に突出するセンターピンとの隙間に充填された前記樹脂材料で筒状に形作られた後、前記射出成形品と前記センターピンとが前記センターピンの軸心に沿った方向に相対移動させられることにより、前記センターピンが相対移動してずれた分の空間が内部に形成され、
前記アームの前記把持部は、前記把持用突起の前記空間が形成された部分を把持する、
ことを特徴とする射出成形品の取り出し方法。
【請求項8】
製品部と非製品部とが固化後も弾性を有する樹脂材料で一体に成形された射出成形品において、
前記非製品部の表面側に把持用突起が一体に形成され、
前記把持用突起は、その内部が空間の筒状体であり、
前記非製品部の前記表面側に対して反対側に位置する面側を裏面側とすると、前記非製品部の前記裏面側で且つ前記把持用突起の前記裏面側の少なくとも一部と前記製品部の裏面側の少なくとも一部とが同一の仮想平面上に位置する、
ことを特徴とする射出成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、射出成形品を製造するために使用される射出成形装置、射出成形品の取り出し方法、及び射出成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られている射出成形装置は、溶融樹脂を金型に形成したスプルー及びランナを介してキャビティ内に射出し、キャビティ内に充填した溶融樹脂を保圧した状態で固化させ、キャビティの形状と同一形状の製品を射出成形するようになっている。そして、射出成形装置は、金型内で固化した射出成形品を取り出し装置によって把持してキャビティ外に取り出すようになっている。
【0003】
(第1従来例)
図21は、このような射出成形装置100の一部を簡略化して示す図である。この
図21に示す射出成形装置100の金型101は、固定側金型102と可動側金型103とが型締めされた状態を示しており、固定側金型102と可動側金型103の突き合わせ面104側に、キャビティ105及びランナ106が形成されている。そして、固定側金型102には、スプルー孔107が形成されたスプルーブッシュ108が取り付けられ、このスプルーブッシュ108の開口端に射出装置のノズル110が押し当てられている。また、金型101は、ランナ106の一部に、把持用突起形成キャビティ部分111が形成されている。そして、金型101の可動側金型103には、スプルー孔107に対向する位置に第1のアンダーカット形成部112が形成されると共に、把持用突起形成キャビティ部分111に対向する位置に第2のアンダーカット形成部113が形成されている。
【0004】
図21及び
図22に示すように、このような射出成形装置100の金型101は、ノズル110からスプルー孔107内に溶融樹脂114が射出されると、その溶融樹脂114がスプルー孔107からランナ106を流動し、把持用突起形成キャビティ部分111及びキャビティ105内に充填される。そして、この金型101は、ノズル110から射出された溶融樹脂114が固化すると、内部空間(キャビティ等)に射出成形品115が成形される。この射出成形品115は、キャビティ105の形状が転写された製品部116と、ランナ106の形状が転写されたランナ部117と、スプルー孔107の形状が転写されたスプルー部118と、把持用突起形成キャビティ部分111が転写された把持用突起120と、第1のアンダーカット形成部(樹脂溜まり)112が転写された第1のアンダーカット部121と、第2のアンダーカット形成部113が転写された第2のアンダーカット部122と、を一体に有している。なお、この射出成形品115は、ランナ部117、スプルー部118、把持用突起120、第1のアンダーカット部121、及び第2のアンダーカット部122が非製品部を構成する。
【0005】
図23に示すように、金型101は、射出成形品115が金型101内で固化すると、可動側金型103が固定側金型102から分離される(型開きされる)。この際、射出成形品115は、第1のアンダーカット部121及び第2のアンダーカット部122が可動側金型103に保持されるため、可動側金型103と共に移動し、固定側金型102から分離され、ノズル110から切り離される。
【0006】
その後、
図24に示すように、射出成形装置100は、固定側金型102と可動側金型103との間に取り出し装置123のアーム124を挿入し、アーム124の先端に取り付けられた第1の把持部125及び第2の把持部126,126と射出成形品115のスプルー部118及び把持用突起120,120とを位置合わせした後、射出成形品115を第1のエジェクタピン127及び第2のエジェクタピン128,128で可動側金型103内から押し出し、射出成形品115のスプルー部118を第1の把持部125で把持すると共に、射出成形品115の把持用突起120を第2の把持部126で把持し、射出成形品115を取り出し装置123のアーム124によって金型101の外部に取り出すようになっている。なお、射出成形品115のスプルー部118及び把持用突起120,120は、固定側金型102からの離型を容易にするため、先細のテーパー形状(固定側金型102からの抜き勾配を設けた形状)になっている。
【0007】
しかしながら、第1従来例に係る射出成形装置100は、射出成形品115を金型101から取り出す際に、射出成形品115のスプルー部118及び把持用突起120,120が取り出し装置123のアーム124の第1の把持部125及び第2の把持部126,126によって把持されるが、スプルー部118及び把持用突起120,120が先細のテーパー形状であるため、アーム124の第1の把持部125及び第2の把持部126,126とスプルー部118及び把持用突起120,120とが滑りを生じやすくなっていた。その結果、第1従来例に係る射出成形装置100は、射出成形品115を取り出し装置123のアーム124によって金型101から取り出す際に、射出成形品115がアーム124の第1の把持部125及び/又は第2の把持部126,126から脱落し、射出成形品115がアーム124によって所定の収容位置まで搬送されないという問題を生じることがあった。
【0008】
(第2従来例)
図25及び
図26は、このような第1従来例に係る射出成形装置100の問題点を解消するために案出された射出成形装置200を示す図である。
【0009】
図25(a)に示すように、第2従来例に係る射出成形装置200は、キャビティ201内の製品部202の温度が樹脂材料のガラス転移点温度よりも低い温度になり、スプルー孔203内のスプルー部204の温度がガラス転移点以上の温度である状態で成形完了とし、可動側金型205を固定側金型206から分離する。この可動側金型205を固定側金型206から分離(離型)した際、射出成形品207は可動側金型205と一体となって固定側金型206から分離する。その後、
図25(b)に示すように、固定側金型(図示せず)と可動側金型205との間には、取り出し装置208のアーム210が挿入される。そして、可動側金型205に保持された射出成形品207のスプルー部204は、アーム210の先端に設置された一対のチャック部材(把持部)211,211間に収容される。
【0010】
その後、
図26(a)に示すように、可動側金型205に保持された射出成形品207のスプルー部204は、一対のチャック部材211,211で把持される。この際、射出成形品207のスプルー部204は、ガラス転移点以上の高い温度になっているので、一対のチャック部材211,211の内側面211a,211aによってスプルー部204に追加的な成形が行われ、スプルー部204の表面に一対のチャック部211,211の内側面211a,211aの形状が転写される。この一対のチャック部材211,211によって追加的成形が行われるスプルー部204は、一対のチャック部材211,211に内蔵された冷却装置212,212によってガラス転移点よりも低温に冷却された一対のチャック部材211,211の表面によって成形されると共に固化される。その結果、
図26(b)に示すように、射出成形品207のスプルー部204は、可動側金型205からの取り出し時に、取り出し装置208のアーム210の先端に取り付けられた一対のチャック部材211,211によって確実に把持されるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2013/146871号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、
図25及び
図26に示す第2従来例に係る射出成形装置200は、取り出し装置208の一対のチャック部材211,211が冷却装置212,212を内蔵する構成になっており、各チャック部材211の構造が複雑で大型化するという不具合を有している。
【0013】
そこで、本発明は、取り出し装置を大型化することなく、射出成形品を確実に把持できる射出成形装置、射出成形品の取り出し方法、及び射出成形品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、製品部27と非製品部34とからなる射出成形品26が固化後も弾性を有する樹脂材料で形作られ、前記非製品部34に把持用突起30,31が一体に形成され、金型3の型開き後に、前記把持用突起30,31が取り出し装置35のアーム36の把持部38,40で把持されることにより、前記射出成形品26が前記取り出し装置35の前記アーム36によって前記金型3から取り出されるようになっている射出成形装置1,52,53に関するものである。本発明において、前記金型3は、前記非製品部34の前記把持用突起30,31を形作る把持用突起形成キャビティ部分11,14が形成されている。また、前記把持用突起形成キャビティ部分11,14の内部には、センターピン20,21が突出している。また、前記把持用突起30,31は、前記把持用突起形成キャビティ部分11,14の内壁面と前記センターピン20,21との隙間22,23に充填された前記樹脂材料で筒状に形作られ、前記射出成形品26と前記センターピン20,21とが前記センターピン20,21の軸心に沿った方向に相対移動させられることにより、前記センターピン20,21が相対移動してずれた分の空間41,42が内部に形成される。そして、前記アーム36の前記把持部38,40は、前記把持用突起30,31の前記空間41,42が形成された部分を把持するようになっている。
【0015】
また、本発明は、製品部27と非製品部34とからなる射出成形品26が固化後も弾性を有する樹脂材料で形作られ、前記非製品部34に把持用突起30,31が一体に形成され、金型3の型開き後に、前記把持用突起30,31が取り出し装置35のアーム36の把持部38,40で把持されることにより、前記射出成形品26が前記取り出し装置35の前記アーム36によって前記金型3から取り出される射出成形品26の取り出し方法に関するものである。本発明において、前記把持用突起30,31は、前記金型3に形成された把持用突起形成キャビティ部分11,14の内壁面と前記把持用突起形成キャビティ部分11,14の内部に突出するセンターピン20,21との隙間22,23に充填された前記樹脂材料で筒状に形作られた後、前記射出成形品26と前記センターピン20,21とが前記センターピン20,21の軸心に沿った方向に相対移動させられることにより、前記センターピン20,21が相対移動してずれた分の空間41,42が内部に形成される。そして、前記アーム36の前記把持部38,40は、前記把持用突起30,31の前記空間41,42が形成された部分を把持するようになっている。
【0016】
また、本発明は、製品部27と非製品部34とが固化後も弾性を有する樹脂材料で一体に成形された射出成形品26に関するものである。本発明において、前記非製品部34の表面側には、把持用突起30,31が一体に形成されている。また、前記把持用突起30,31は、その内部が空間の筒状体である。そして、前記非製品部34の前記表面側に対して反対側に位置する面側を裏面32a,33a側とすると、前記非製品部34の前記裏面32a,33a側で且つ前記把持用突起30,31の前記裏面32a,33a側の少なくとも一部と前記製品部27の裏面27a側の少なくとも一部とが同一の仮想平面51上に位置するようになっている。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、射出成形品の把持用突起が固化後も弾性を有する樹脂材料で筒状に形成され、把持用突起の空間が形成された部分を取り出し装置のアームの把持部で弾性変形させた状態で確実に把持することができるため、取り出し装置のアームの把持部を補強等で大型化することなく、射出成形品を取り出し装置によって金型から確実に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る射出成形装置の一部を簡略化して示す図であり、
図1(a)は射出成形装置を構成する固定側金型の平面図、
図1(b)は射出成形装置の一部を簡略化して示す断面図(金型を型締めした状態の断面図であり、
図1(a)のA1−A1線に沿って金型を断面した図)、
図1(c)は射出成形装置を構成する可動側金型4の平面図である。
【
図2】金型内の空間に溶融樹脂が射出された後の状態を示す射出成形装置の一部断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る射出成形装置の第1作動状態図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る射出成形装置の第2作動状態図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る射出成形装置の第3作動状態図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る射出成形装置の第4作動状態図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る射出成形装置の第5作動状態図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係る射出成形装置の第6作動状態図である。
【
図9】加熱処理装置を簡略化して示す図であり、本発明に係る射出成形品の成形後加熱処理の状態を示す図である。
【
図10】本発明に係る射出成形品の断面図であり、
図2において示した射出成形品の拡大断面図である。
【
図11】従来の射出成形品の成形後加熱処理前の状態を加熱処理装置と共に示す図である。
【
図12】従来の射出成形品の成形後加熱処理後の状態を加熱処理装置と共に示す図である。
【
図13】本発明の第2実施形態に係る射出成形装置の一部を簡略化して示す図であり、
図5に対応する図ある。
【
図14】本発明の第2実施形態に係る射出成形装置の一部を簡略化して示す図であり、
図6に対応する図ある。
【
図15】本発明の第2実施形態に係る射出成形装置の一部を簡略化して示す図であり、
図7に対応する図ある。
【
図16】本発明の第2実施形態に係る射出成形装置の一部を簡略化して示す図であり、
図8に対応する図ある。
【
図17】本発明の第3実施形態に係る射出成形装置の一部を簡略化して示す図であり、
図13に対応する図である。
【
図18】本発明の第3実施形態に係る射出成形装置の一部を簡略化して示す図であり、
図14に対応する図である。
【
図19】本発明の第3実施形態に係る射出成形装置の一部を簡略化して示す図であり、
図15に対応する図である。
【
図20】本発明の第3実施形態に係る射出成形装置の一部を簡略化して示す図であり、
図16に対応する図である。
【
図21】第1従来例に係る射出成形装置の一部を簡略化して示す図であり、固定側金型と可動側金型を型合わせ(型締め)した状態を示す図である。
【
図22】第1従来例に係る射出成形装置の一部を簡略化して示す図であり、金型の空間内に溶融樹脂を射出した状態を示す図である。
【
図23】第1従来例に係る射出成形装置の一部を簡略化して示す図であり、可動側金型を固定側金型から分離した状態を示す図である。
【
図24】第1従来例に係る射出成形装置の一部を簡略化して示す図であり、取り出し装置が射出成形品を可動側金型から取り出す状態を示す図である。
【
図25】第2従来例に係る射出成形装置の一部を簡略化して示す図であり、
図25(a)は射出成形装置の第1の作動状態を示す図、
図25(b)は射出成形装置の第2の作動状態を示す図である。
【
図26】第2従来例に係る射出成形装置の一部を簡略化して示す図であり、
図26(a)は射出成形装置の第3の作動状態を示す図、
図26(b)は射出成形装置の第4の作動状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳述する。
【0020】
[第1実施形態]
図1及び
図2は、本発明の第1実施形態に係る射出成形装置1の一部を簡略化して示す図である。なお、
図1(a)は、射出成形装置1を構成する固定側金型2の平面図である。また、
図1(b)は、射出成形装置1の一部を簡略化して示す断面図(金型3を型締めした状態の断面図であり、
図1(a)のA1−A1線に沿って金型3を断面した図)である。また、
図1(c)は、射出成形装置1を構成する可動側金型4の平面図である。また、
図2は、金型3内の空間5に溶融樹脂6が射出された後の状態を示す射出成形装置1の一部断面図である。
【0021】
図1及び
図2に示す射出成形装置1の金型3は、固定側金型2と可動側金型4とが型締めされた状態を示しており、固定側金型2と可動側金型4の突き合わせ面7側に、キャビティ8及びランナ10が形成されている。そして、固定側金型2には、スプルー孔11(第1の把持用突起形成キャビティ部分)が形成されたスプルーブッシュ12が取り付けられ、このスプルーブッシュ12の開口端に射出装置のノズル13が押し当てられている。また、固定側金型2は、ランナ10の一部に、第2の把持用突起形成キャビティ部分14が形成されている。そして、固定側金型2及び可動側金型4は、スプルー孔11に対向する位置に第1の湯溜まり空間15が形成され、第2の把持用突起形成キャビティ部分14に対向する位置に第2の湯溜まり空間16が形成されている。なお、本実施形態に係る射出成形装置1の金型3において、スプルー孔11は、後述するように、取り出し装置35のアーム36の先端に取り付けた第1の把持部38で把持されるスプルー部30(第1の把持用突起)を形作る部分であり、第1の把持用突起形成キャビティ部分として機能する。
【0022】
この
図1及び
図2に示すように、射出成形装置1の金型3は、中央にスプルー孔11が配置され、スプルー孔11の周囲に複数のキャビティ8が配置されている。また、射出成形装置1の金型3は、第2の把持用突起形成キャビティ部分14がスプルー孔11の周囲に複数配置されている。なお、本実施形態における金型3は、
図1(a)に示すように、キャビティ8がスプルー孔11を中心としてマトリックス状に複数配置され、複数のキャビティ8のうちのいくつかを第2の把持用突起形成キャビティ部分14に置き換えたような配置になっている。そして、複数のキャビティ8及び複数の第2の把持用突起形成キャビティ部分14は、スプルー孔11の中心を通るX軸と平行な中心線17に対して線対称となるように位置し、スプルー孔の中心を通るY軸と平行な中心線18に対して線対称となるように位置している。なお、キャビティ8及び第2の把持用突起形成キャビティ部分14は、
図1に示す配置に限定されず、射出成形条件等に応じた最適な位置に配置される。
【0023】
また、
図1(b)及び
図2に示すように、金型3は、スプルー孔11内に突出する第1のセンターピン20が可動側金型4に固定されていると共に、第2の把持用突起形成キャビティ部分14内に突出する第2のセンターピン21が可動側金型4に固定されている。
【0024】
第1のセンターピン20は、スプルー孔11の内壁面との間に環状の隙間22を形成する丸棒状体である。この第1のセンターピン20は、先端部20aが先細のテーパー形状に形成され、この先端部20aに隣接する位置(先端から軸心に沿ってずれた位置)に先端部20aよりも内側に凹んだアンダーカット凹所20bが形成されている。このアンダーカット凹所20bは、第1のセンターピン20の先端部20aと基端部20cとの間に位置し、先端部20aと基端部20cとを滑らかに接続する凹曲面の環状溝であり、最小径が先端部20aとの境界部分の外径寸法よりも小さく、且つ、最小径が基端部20cとの境界部分の外径寸法よりも小さく形成されている。なお、この第1のセンターピン20は、先端部20a、アンダーカット凹所20b、及び基端部20cの一部(アンダーカット凹所20b寄りの一部)がスプルー孔11内に突出している。
【0025】
第2のセンターピン21は、第2の把持用突起形成キャビティ部分14の内壁面との間に環状の隙間23を形成する丸棒状体である。この第2のセンターピン21は、第1のセンターピン20と同様に、先細のテーパー形状の先端部21aと、この先端部21aに隣接するアンダーカット凹所21bと、このアンダーカット凹所21bに隣接する基端部21cと、を有している。そして、第2のセンターピン21のアンダーカット凹所21bは、先端部21aと基端部21cとを滑らかに接続する凹曲面の環状溝であり、最小径が先端部21aとの境界部分の外径寸法よりも小さく、且つ、最小径が基端部21cとの境界部分の外径寸法よりも小さく形成されている。なお、この第2のセンターピン21は、先端部21a、アンダーカット凹所21b、及び基端部21cの一部(アンダーカット凹所21b寄りの一部)が第2の把持用突起形成キャビティ部分14内に突出している。そして、第2のセンターピン21は、基端部21cのアンダーカット凹所21bに接続される部分側が先細のテーパー形状に形成されている。
【0026】
また、可動側金型4は、エジェクタピン24が第1のセンターピン20の周囲に等間隔に複数設置されている。また、可動側金型4は、第2のセンターピン21の周囲にエジェクタスリーブ25が配置されている。これらエジェクタピン24及びエジェクタスリーブ25は、金型3内で固化した射出成形品26を型開き後に可動側金型4から押し出す。
【0027】
図2に示すように、このような射出成形装置1の金型3は、溶融樹脂6がノズル13からスプルー孔11内に射出されると、溶融樹脂6がスプルー孔11からランナ10を流動した後、その溶融樹脂6が第2の把持用突起形成キャビティ部分14及びキャビティ8内に充填される。そして、この金型3は、ノズル13から射出された溶融樹脂6が固化すると、射出成形品が内部空間(キャビティ8等)を転写したように成形される。この射出成形品26は、
図10に詳細を示すように、キャビティ8の形状が転写された製品部27と、ランナ10の形状が転写されたランナ部28と、スプルー孔11の内壁面と第1のセンターピン20との隙間22の形状が転写された筒状のスプルー部30と、第2の把持用突起形成キャビティ部分14の内壁面と第2のセンターピン21との隙間23の形状が転写された筒状の第2の把持用突起31と、第1の湯溜まり空間15が転写された第1の湯溜まり部32と、第2の湯溜まり空間16が転写された第2の湯溜まり部33と、を一体に有している。なお、この射出成形品26は、ランナ部28、スプルー部30、第2の把持用突起31、第1の湯溜まり部32、及び第2の湯溜まり部33が非製品部34を構成する。また、ノズル13からスプルー孔11内に射出される溶融樹脂6は、固化後も弾性を有する樹脂材料(シリコーン樹脂(熱硬化性樹脂)、ナイロン(熱可塑性樹脂)等)である。
【0028】
次に、
図3に示すように、射出成形装置1の金型3は、射出成形品26が金型3内で固化すると、可動側金型4が固定側金型2から分離される(型開きされる)。この際、射出成形品26は、スプルー部30が第1のセンターピン20のアンダーカット凹所20bに凹凸係合して保持されると共に、第2の把持用突起31が第2のセンターピン21のアンダーカット凹所21bに凹凸係合して保持されるため、可動側金型4と共に移動し、固定側金型2から分離され、ノズル13から切り離される。
【0029】
次に、
図4に示すように、射出成形装置1は、取り出し装置35のアーム36の先端側を型開きされた固定側金型2と可動側金型4との間に挿入する。取り出し装置35のアーム36の先端側には、スプルー部(第1の把持用突起)30を把持する第1の把持部38と、第2の把持用突起31,31を把持する第2の把持部40,40と、が取り付けられている。なお、第1の把持部38の一対の爪38a,38aと第2の把持部40,40の一対の爪40a,40aは、図示しないアクチュエータ(エアシリンダ等)で開閉操作されるようになっている。
【0030】
次に、
図5に示すように、射出成形装置1は、取り出し装置35のアーム36の第1の把持部38及び第2の把持部40,40と可動側金型4に保持された射出成形品26のスプルー部(第1の把持用突起)30及び第2の把持用突起31とを位置合わせする。
【0031】
次に、
図6に示すように、射出成形装置1は、エジェクタピン24及びエジェクタスリーブ25をスライド移動させ、第1のセンターピン20及び第2のセンターピン21で可動側金型4に保持された射出成形品26をエジェクタピン24及びエジェクタスリーブ25で可動側金型4から押し離す(押し出す)方向へ移動させる。その結果、射出成形品26のスプルー部30は、第1のセンターピン20のアンダーカット凹所20bに凹凸係合している部分が拡径方向へ弾性変形させられて、可動側金型4に固定された第1のセンターピン20の軸心に沿った方向に移動させられ、第1のセンターピン20からずれ動いた分だけ、内部に空間41が形成される。また、射出成形品26の第2の把持用突起31は、第2のセンターピン21のアンダーカット凹所21bに凹凸係合している部分が拡径方向へ弾性変形させられて、可動側金型4に固定された第2のセンターピン21の軸心に沿った方向に移動させられ、第2のセンターピン21からずれ動いた分だけ、内部に空間42が形成される。そして、スプルー部30の空間41が形成された部分は、第1の把持部38の一対の爪38a,38aの間に位置している。また、第2の把持用突起31の空間42が形成された部分は、第2の把持部40の一対の爪40a,40aの間に位置している。
【0032】
次に、
図7に示すように、射出成形装置1は、第1の把持部38の一対の爪38a,38aが開いた状態から閉じた状態に移動させられることにより、スプルー部30の空間41が形成された部分を第1の把持部38で押し潰す方向へ弾性変形させて把持する。また、射出成形装置1は、第2の把持部40の一対の爪40a,40aが開いた状態から閉じた状態に移動させられることにより、第2の把持用突起31の空間42が形成された部分を第2の把持部40で押し潰す方向へ弾性変形させて把持する。この際、射出成形品26は、スプルー部30のうちの第1の把持部38で把持された部分(押し潰す方向へ弾性変形させられた部分)よりも先端側の部分(押し潰されていない部分)が閉じた状態の一対の爪38a,38a間のスペースよりも大きく、また、第2の把持用突起31のうちの第2の把持部40で把持された部分(押し潰す方向へ弾性変形させられた部分)よりも先端側の部分(押し潰されていない部分)が一対の爪40a,40a間のスペースよりも大きいため、取り出し装置35の第1の把持部38及び第2の把持部40の把持力と相俟って、第1の把持部38及び第2の把持部40から脱落することが確実に防止される。
【0033】
次に、
図8に示すように、射出成形装置1は、取り出し装置35が第1の把持部38で射出成形品26のスプルー部30を把持すると共に第2の把持部40で射出成形品26の第2の把持用突起31を把持した状態で、射出成形品26を可動側金型4から引き離し、射出成形品26を取り出し装置35で金型3の外部の所定位置(例えば、
図9に示す加熱処理装置43のベルトコンベア44上の位置)に搬送する。
【0034】
図9は、加熱処理装置43を簡略化して示す図である。この加熱処理装置43は、射出成形後の射出成形品26を加熱処理するものであり、射出成形品26が熱硬化性樹脂で形成された場合にアフターキュアと呼ばれる処理を行うものであり、射出成形品26が熱可塑性樹脂で形成された場合にアニールと呼ばれる処理を行うものである。そして、この加熱処理装置43は、加熱炉45内を移動するベルトコンベア44のベルト46上の射出成形品26をベルトコンベア44の上方のヒータ47とベルトコンベア44内のヒータ47とで表裏両面から加熱できるようになっている。なお、加熱処理装置43のベルトコンベア44は、駆動ローラ48が矢印R方向に回転するようになっており、駆動ローラ48と従動ローラ50とに無端状のベルト46が掛け渡されている。そして、加熱処理装置43は、駆動ローラ48と従動ローラ50に掛け渡されたベルト46の平らな部分で射出成形品26の成形後加熱処理が行われるようになっている。
【0035】
図10は、本実施形態に係る射出成形装置1によって成形された射出成形品26の拡大断面図であり、
図9に示したベルトコンベア44上の射出形成品26を拡大して示す図である。この
図10に示すように、射出成形品26は、第1の湯溜まり部32の裏面32a、第2の湯溜まり部33の裏面33a、及び製品部27の裏面側の一部(4箇所の支持突起の裏面27a)が同一の仮想平面51上に位置するように射出成形される。このように形成された射出成形品26は、加熱処理装置43のベルト46上に乗せられた際に、第1の湯溜まり部32の裏面32a、第2の湯溜まり部33の裏面33a、及び製品部27の支持突起の裏面27aが平らなベルト46上に位置するため、成形後加熱処理によって歪みを生じることがない。このような本実施形態に係る射出成形装置1によって成形された射出成形品26は、成形後加熱処理によって歪みを生じることがないため、歪みを嫌う光学部品等に使用することができる。
【0036】
図11は、従来の射出成形品を加熱処理装置43で成形後加熱処理を行う状態を示す図である。この
図11に示すように、従来の射出成形品115は、第1のアンダーカット部121の裏面121a、第2のアンダーカット部122の裏面122a、及び製品部116の裏面116aが同一の仮想平面51上に位置するようになっていないため、加熱処理装置43で成形後加熱処理を行うと、第1のアンダーカット部121の裏面121a、第2のアンダーカット部122の裏面122a、及び製品部116の裏面116a(又はその近傍)が平らなベルト46に接するまで、全体が湾曲変形した状態で成形後加熱処理が終了する(
図12参照)。その結果、従来の射出成形品115は、製品部116が変形した状態で成形後加熱処理が終了し、製品部116に成形後加熱処理によって歪みが生じる。
【0037】
以上のように本実施形態に係る射出成形装置1は、固化後も弾性を有する樹脂材料で射出成形品26を形成することにより、射出成形品26のスプルー部30及び第2の把持用突起31を固化後も弾性を有する樹脂材料で筒状に形成することができ、スプルー部30の空間41が形成された部分を取り出し装置35の第1の把持部38によって押し潰す方向へ弾性変形させた状態で確実に把持でき、第2の把持用突起31の空間42が形成された部分を取り出し装置35の第2の把持部40によって押し潰す方向へ弾性変形させた状態で確実に把持できるため、取り出し装置35の第1の把持部38及び第2の把持部40を補強等で大型化することなく、射出成形品26を取り出し装置35で金型3から確実に取り出すことができる。その結果、本実施形態に係る射出成形装置1は、射出成形品26にスプルー部30及び複数の第2の把持用突起31を形成すると共に、スプルー部30及び複数の第2の把持用突起31に対応する第1の把持部38及び複数の第2の把持部40を取り出し装置35に複数設置し、第1の把持部38及び複数の第2の把持部40によってスプルー部30及び複数の第2の把持用突起31を確実に把持し、射出成形品26を安定した姿勢で金型3から所定位置に搬出することが可能になる。このような本実施形態に係る射出成形装置26に対し、
図25及び
図26に示した従来の射出成形装置200は、把持部を構成する一対のチャック部材211,211が冷却装置212,212を内蔵して大型化するため、射出成形品207に形成する把持用突起の個数が一対のチャック部材211,211によって制限され、射出成形品207を取り出し装置208で可動側金型205から取り出す作業が不安定になる場合がある。
【0038】
また、本実施形態に係る射出成形装置1は、スプルー部30がスプルー孔11の内壁面と第1のセンターピン20との間の隙間22で筒状に形成され、第2の把持用突起31が第2の把持用突起形成キャビティ部分14の内壁面と第2のセンターピン21との間の隙間23で筒状に形成されるようになっており、射出成形品26の非製品部34の肉厚の均一化を図ることができるため、金型3内の溶融樹脂6の固化時間の短縮化が可能になり、射出成形品26の成形に必要とされる樹脂量を削減できると共に、未硬化樹脂部分の発生を防止できる。
【0039】
また、本実施形態に係る射出成形装置1は、溶融樹脂6が熱硬化性樹脂の場合、スプルー部30がスプルー孔11の内壁面及び第1のセンターピン20から熱を加えられ、第2の把持用突起31が第2の把持用突起形成キャビティ部分14の内壁面及び第2のセンターピン21から熱を加えられるように構成できるため、金型3内の溶融樹脂6の固化時間の短縮化を図ることができる。また、本実施形態に係る射出成形装置1は、溶融樹脂6が熱可塑性樹脂の場合、スプルー部30がスプルー孔11の内壁面及び第1のセンターピン20から熱を奪われ、第2の把持用突起31が第2の把持用突起形成キャビティ部分14の内壁面及び第2のセンターピン21から熱を奪われるように構成できるため、金型3内の溶融樹脂6の固化時間の短縮化を図ることができる。
【0040】
なお、本実施形態に係る射出成形装置1は、複数の把持用突起(スプルー部30及び第2の把持用突起31)のうちの少なくとも一つの把持用突起(30又は31)の空間(41又は42)が形成された部分を取り出し装置35の把持部(38又は40)で把持するようにしてもよい。
【0041】
また、本実施形態に係る射出成形装置1は、把持用突起としてスプルー部30のみを射出成形品26に形成し、スプルー部30の空間41が形成された部分を取り出し装置35の把持部38で把持するようにしてもよい。
【0042】
また、本実施形態に係る射出成形装置1は、スプルー部30及び複数の第2の把持用突起31を射出成形品26に形成し、少なくともスプルー部30の空間41が形成された部分を取り出し装置25の把持部38で把持するようにしてもよい。
【0043】
また、本実施形態に係る射出成形装置1は、複数の把持用突起(スプルー部30及び複数の第2の把持用突起31)を射出成形品26に形成し、把持部38,40を取り出し装置35に把持用突起(30,31)と同数設置し、全ての把持用突起(30,31)の空間(41,42)が形成された部分を取り出し装置35の把持部(38,40)で把持するようにしてもよい。
【0044】
[第2実施形態]
図13乃至
図16は、本発明の第2実施形態に係る射出成形装置52の一部を簡略化して示す図であり、第1実施形態に係る射出成形装置1の構成を一部変更した射出成形装置52を示す図ある。すなわち、本実施形態に係る射出成形装置52は、第1実施形態に係る射出成形装置1のエジェクタピン24及びエジェクタスリーブ25を省略し、第1のセンターピン20及び第2のセンターピン21を可動側金型4に対してスライド移動させるように構成されている。なお、
図13乃至
図16は、第1実施形態の
図5乃至
図8に対応する図である。
【0045】
図13に示すように、射出成形装置52は、可動側金型4を射出成形品26と共に固定側金型2から分離した(型開きした)状態において、取り出し装置35のアーム36の先端側を固定側金型2と可動側金型4との間に挿入し、アーム36の第1の把持部38と第2の把持部40とを射出成形品26のスプルー部(第1の把持用突起)30と第2の把持用突起31とに位置合わせして、第1の把持部38の一対の爪38a,38aをスプルー部30の所定位置まで係合させ、第2の把持部40の一対の爪40a,40aを第2の把持用突起31の所定位置まで係合させる。
【0046】
次に、
図14に示すように、射出成形装置52は、第1のセンターピン20及び第2のセンターピン21が可動側金型4及び射出成形品26に対して軸心に沿った方向にスライド移動させられ、第1のセンターピン20及び第2のセンターピン21が可動側金型4内に所定寸法(予め設定された寸法)だけ引っ込められる。その結果、射出成形装置52は、第1のセンターピン20が筒状のスプルー部30内をずれ動き、第1のセンターピン20がスライド移動した(ずれ動いた)分だけスプルー部30の内部に空間41を生じさせる。また、射出成形装置52は、第2のセンターピン21が筒状の第2の把持用突起31内をずれ動き、第2のセンターピン21がスライド移動した(ずれ動いた)分だけ第2の把持用突起31の内部に空間42を生じさせる。
【0047】
次に、
図15に示すように、射出成形装置52は、第1の把持部38の一対の爪38a,38aが開いた状態から閉じた状態に移動させられることにより、スプルー部30の空間41が形成された部分を第1の把持部38で押し潰す方向へ弾性変形させて把持する。また、射出成形装置52は、第2の把持部40の一対の爪40a,40aが開いた状態から閉じた状態に移動させられることにより、第2の把持用突起31の空間42が形成された部分を第2の把持部40で押し潰す方向へ弾性変形させて把持する。この際、射出成形品26は、スプルー部30のうちの第1の把持部38で把持された部分(押し潰す方向へ弾性変形させられた部分)よりも先端側の部分(押し潰されていない部分)が閉じた状態の一対の爪38a,38a間のスペースよりも大きく、また、第2の把持用突起31のうちの第2の把持部40で把持された部分(押し潰す方向へ弾性変形させられた部分)よりも先端側の部分(押し潰されていない部分)が一対の爪40a,40a間のスペースよりも大きいため、取り出し装置35の第1の把持部38及び第2の把持部40の把持力と相俟って、第1の把持部38及び第2の把持部40から脱落することが確実に防止される。
【0048】
次に、
図16に示すように、射出成形装置52は、取り出し装置35が第1の把持部38で射出成形品26のスプルー部30を把持すると共に第2の把持部40で射出成形品26の第2の把持用突起31を把持した状態で、射出成形品26を可動側金型4から引き離し、射出成形品26を取り出し装置35で金型3の外部の所定位置(例えば、
図9に示した加熱処理装置43のベルトコンベア44上の位置)に搬送する。
【0049】
このような本実施形態に係る射出成形装置52は、第1実施形態に係る射出成形装置1と同様の効果を得ることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る射出成形装置52は、第1実施形態に係る射出成形装置1のエジェクタピン24及びエジェクタスリーブ25を省略した構成であるため、エジェクタピン24の周囲の隙間に溶融樹脂が入り込むことによって生じる問題(バリの発生とエジェクタピン24の作動不良)、及びエジェクタスリーブ25の周囲の隙間に溶融樹脂が入り込むことによって生じる問題(バリの発生とエジェクタスリーブ25の作動不良)への対策が不要になった。
【0051】
[第3実施形態]
図17乃至
図20は、本発明の第3実施形態に係る射出成形装置53の一部を簡略化して示す図であり、第2実施形態に係る射出成形装置52の構成を一部変更した射出成形装置53を示す図ある。すなわち、本実施形態に係る射出成形装置53は、第1のセンターピン20及び第2のセンターピン21を可動側金型4に対してスライド移動させるように構成されている第2実施形態に係る射出成形装置52と異なり、第1のセンターピン20及び第2のセンターピン21を固定した第1可動側金型4Aに対し、射出成形品26を形作るための空間が形成された第2可動側金型4Bを分離できるように(固定側金型2側へ移動できるように)構成されている。また、本実施形態に係る射出成形装置53は、第2実施形態に係る射出成形装置52と同様に、第1実施形態に係る射出成形装置1のエジェクタピン24及びエジェクタスリーブ25を省略している。なお、
図17乃至
図20は、第2実施形態の
図13乃至
図16に対応する図である。
【0052】
図17に示すように、射出成形装置53は、可動側金型4A,4Bを射出成形品26と共に固定側金型2から分離した(型開きした)状態において、取り出し装置35のアーム36の先端側を可動側金型4A,4Bと固定側金型2との間に挿入し、アーム36の第1の把持部38と第2の把持部40を射出成形品26のスプルー部(第1の把持用突起)30と第2の把持用突起31に位置合わせする。
【0053】
次に、
図18に示すように、射出成形装置53は、第2可動側金型4Bを第1可動側金型4Aから分離して第1の把持部38側及び第2の把持部41側へ向けて所定距離だけ移動させる。この際、射出成形品26は、第2可動側金型4Bと共に移動する。その結果、射出成形品26のスプルー部30は、第1のセンターピン20のアンダーカット凹所20bに凹凸係合している部分が拡径方向へ弾性変形させられて、第1可動側金型4Aに固定された第1のセンターピン20の軸心に沿った方向に移動させられ、第1のセンターピン20からずれ動いた分だけ、内部に空間41が形成される。また、射出成形品26の第2の把持用突起31は、第2のセンターピン21のアンダーカット凹所21bに凹凸係合している部分が拡径方向へ弾性変形させられて、第1可動側金型4Aに固定された第2のセンターピン21の軸心に沿った方向に移動させられ、第2のセンターピン21からずれ動いた分だけ、内部に空間42が形成される。そして、スプルー部30の空間41が形成された部分は、第1の把持部38の一対の爪38a,38aの間に位置している。また、第2の把持用突起31の空間42が形成された部分は、第2の把持部40の一対の爪40a,40aの間に位置している。
【0054】
次に、
図19に示すように、射出成形装置53は、第1の把持部38の一対の爪38a,38aが開いた状態から閉じた状態に移動させられることにより、スプルー部30の空間41が形成された部分を第1の把持部38で押し潰す方向へ弾性変形させて把持する。また、射出成形装置53は、第2の把持部40の一対の爪40a,40aが開いた状態から閉じた状態に移動させられることにより、第2の把持用突起31の空間42が形成された部分を第2の把持部40で押し潰す方向へ弾性変形させて把持する。この際、射出成形品26は、スプルー部30のうちの第1の把持部38で把持された部分(押し潰す方向へ弾性変形させられた部分)よりも先端側の部分(押し潰されていない部分)が閉じた状態の一対の爪38a,38a間のスペースよりも大きく、また、第2の把持用突起31のうちの第2の把持部40で把持された部分(押し潰す方向へ弾性変形させられた部分)よりも先端側の部分(押し潰されていない部分)が一対の爪40a,40a間のスペースよりも大きいため、取り出し装置35の第1の把持部38及び第2の把持部40の把持力と相俟って、第1の把持部38及び第2の把持部40から脱落することが確実に防止される。
【0055】
次に、
図20に示すように、射出成形装置53は、取り出し装置35が第1の把持部38で射出成形品26のスプルー部30を把持すると共に第2の把持部40で射出成形品26の第2の把持用突起31を把持した状態で、射出成形品26を第2可動側金型4Bから引き離し、射出成形品26を取り出し装置35で金型3の外部の所定位置(例えば、
図9に示した加熱処理装置43のベルトコンベア44上の位置)に搬送する。
【0056】
このような本実施形態に係る射出成形装置53は、第1実施形態に係る射出成形装置1と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0057】
1,52,53……射出成形装置、11……スプルー孔(第1の把持用突起形成キャビティ部分)、14……第2の把持用突起形成キャビティ部分、20……第1のセンターピン、21……第2のセンターピン、22,23……隙間、26……射出成形品、27……製品部、27a……裏面、30……スプルー部(第1の把持用突起)、31……第2の把持用突起、32a,33a……裏面、34……非製品部、35……取り出し装置、36……アーム、38……第1の把持部(把持部)、40……第2の把持部(把持部)、41,42……空間、51……仮想平面