特許第6781623号(P6781623)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6781623
(24)【登録日】2020年10月20日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】3D印刷装置およびその3D印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20201026BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20201026BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20201026BHJP
【FI】
   B29C64/393
   B33Y30/00
   B33Y10/00
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-246347(P2016-246347)
(22)【出願日】2016年12月20日
(65)【公開番号】特開2018-58328(P2018-58328A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2018年12月5日
(31)【優先権主張番号】15/281,076
(32)【優先日】2016年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514008930
【氏名又は名称】三緯國際立體列印科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】XYZprinting, Inc.
(73)【特許権者】
【識別番号】511067204
【氏名又は名称】金▲宝▼電子工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】▲ぱん▼博
【審査官】 田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0339741(US,A1)
【文献】 特表2016−515058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/393
B33Y 10/00
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体成形材料を含有し、内底部が階段状の第1部分と第2部分を有し、前記第1部分が前記第2部分よりも高いタンクと、
前記タンク内に移動可能に配置され、前記液体成形材料に浸漬する、または前記液体成形材料の外に移動する作業台と、そのうち、前記タンクおよび前記作業台が、互いに相対して回転され、前記作業台の領域全体が、前記第1部分および前記第2部分に対応し、前記領域全体の特定部分は、前記第1部分または前記第2部分に切り替え可能に対応し、
前記タンクまたは前記作業台の隣に配置され、前記作業台と前記第1部分の間の前記液体成形材料を硬化して固化層を形成し、前記タンクと前記作業台の相対回転により前記固化層を前記第1部分から剥離する硬化装置と、
前記タンクと前記作業台のうちの少なくとも1つおよび前記硬化装置に電気接続され、前記領域全体の前記特定領域が前記第1部分に対応している時、前記硬化装置が前記作業台と前記第1部分の間の前記液体成形材料を硬化して固化層を形成した後、前記タンクと前記作業台を相対的に回転するよう駆動し、前記固化層を前記第1部分から剥離して、前記固化層を前記第2部分に対応する位置に移動させる制御装置と
を含む3D印刷装置。
【請求項2】
前記第1部分の面積が、前記第2部分の面積よりも大きい請求項1に記載の3D印刷装置。
【請求項3】
前記タンクの前記内底部が、円形状の輪郭を有するとともに、中心軸の周りを回転するよう制御され、前記タンクの前記内底部を占有する前記第1部分および前記第2部分の各回転角度が、180度である請求項1に記載の3D印刷装置。
【請求項4】
前記タンクが、平面上で回転するよう制御され、前記作業台が、軸に沿って前記タンクの近くに、またはさらに遠くに移動するよう制御され、前記軸が、前記平面に直交する請求項1に記載の3D印刷装置。
【請求項5】
前記タンクが、前記第1部分の上に配置された塗布層を有し、前記塗布層が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはポリジメチルシロキサン(PDMS)で作られた請求項1に記載の3D印刷装置。
【請求項6】
前記3D印刷装置が、ステレオリソグラフィ(SL)装置またはデジタル光処理(DLP)装置である請求項1に記載の3D印刷装置。
【請求項7】
請求項1に記載の前記3D印刷装置に適用することができ、複数の第1固化層および複数の第2固化層を含む3D物体を前記作業台の上に印刷する3D印刷方法であって、
ステップS1:前記作業台と前記第1部分の間の前記液体成形材料を硬化して、第1固化層(A1)を形成した後、前記タンクを前記作業台に相対して回転させて、前記第1固化層(A1)を前記第1部分から剥離し、前記第1固化層(A1)を前記第2部分に対応する位置に移動させるステップと、
ステップS2:前記作業台および前記タンクを互いから相対的にさらに離れるよう移動させるステップと、
ステップS3:前記作業台と前記第1部分の間の前記液体成形材料を硬化して、第2固化層(B1)を形成した後、前記タンクを前記作業台に相対して回転させて、前記第2固化層(B1)を前記第1部分から剥離し、前記第2固化層(B1)を前記第2部分に対応する位置に移動させるステップと、
ステップS4:前記タンクと前記作業台を互いから相対的にさらに離れるよう移動させるステップと、
ステップS5:前記作業台と前記第1部分の間の前記液体成形材料を硬化して、前記第1固化層(A1)の上に積み重ねられた別の第1固化層(A2)を形成し、前記タンクを前記作業台に相対して回転させて、前記第1固化層(A2)を前記第1部分から剥離し、前記第1固化層(A2)を前記第2部分に対応する位置に移動させるステップと、
ステップS2〜S5を繰り返して、前記第2固化層(B1)の上に複数の第2固化層(B2、…、Bn-1)を積み重ね、前記第1固化層(A1)の上に複数の第1固化層(A2、…、An)を積み重ね、nが正の整数であるステップと、
ステップS6:前記作業台と前記第1部分の間の前記液体成形材料を硬化して、前記第2固化層(Bn-1)の上に積み重ねられた別の第2固化層(Bn)を形成し、前記タンクを前記作業台に相対して回転させて、前記第2固化層(Bn)を前記第1部分から剥離し、第1固化層セットA={A1、…、An-1、An}および第2固化層セットB={B1、…、Bn-1、Bn}が前記3D物体を形成するステップと、
を含む3D印刷方法。
【請求項8】
前記第1固化層(A1)の厚さが、前記第2固化層(Bn)の厚さに等しく、各前記第1固化層(A2…、An)の厚さが、各前記第2固化層(B1…、Bn-1)の厚さに等しい請求項7に記載の3D印刷方法。
【請求項9】
前記第1固化層(A1)の厚さが、各前記第1固化層(A2…、An)の厚さの半分に等しく、また、各前記第2固化層(B1…、Bn-1)の厚さの半分にも等しく、前記第2固化層(Bn)の厚さが、各前記第2固化層(B1…、Bn-1)の厚さの半分に等しく、また、各前記第1固化層(A2…、An)の厚さの半分にも等しい請求項7に記載の3D印刷方法。
【請求項10】
ステップS2およびステップS4において、前記タンクが前記作業台から相対的にさらに離れるよう移動する距離が、各前記第1固化層(A2…、An)の厚さの半分に等しく、また、各前記第2固化層(B2…、Bn-1)の厚さの半分にも等しい請求項7に記載の3D印刷方法。
【請求項11】
前記作業台の外を向いている前記第1固化層(An)の表面と前記作業台の外を向いている前記第2固化層(Bn)の別の表面が、共平面である請求項7に記載の3D印刷方法。
【請求項12】
前記第1固化層(A1…、An-1)および前記第2固化層(B1…、Bn-1)において、前記第1固化層の1つと前記作業台の間の距離が、前記第2固化層の1つと前記作業台の間の距離と異なり、前記第1固化層の前記1つと前記第2固化層の前記1つが、同じ序数を有する請求項7に記載の3D印刷方法。
【請求項13】
ステップS1、ステップS3、およびステップS5において、前記タンクが、中心軸の周りを前記作業台に相対して180度回転する請求項7に記載の3D印刷方法。
【請求項14】
前記第1固化層セットAと前記第2固化層セットBが、前記タンクの前記内底部の中心断面において互いに接続され、前記中心軸が、前記中心断面に位置する請求項13に記載の3D印刷方法。
【請求項15】
前記第1部分の面積が、前記第2部分の面積よりも大きく、前記中心軸が、前記第1部分を通過する請求項13に記載の3D印刷方法。
【請求項16】
前記3D物体が前記第1部分の範囲の外にあるかどうかを判断するステップと、
前記3D物体が前記第1部分の範囲の外にある時、前記作業台を前記第1部分および前記第2部分にそれぞれ切り替え可能に対応する第3部分および第4部分に分割するとともに、前記3D物体を前記第1固化層セットA={A1、…、An-1、An}および前記第2固化層セットB={B1、…、Bn-1、Bn}に分割し、前記第1固化層セットAが、前記第3部分に位置し、前記第2固化層セットBが、前記第4部分に位置する請求項7に記載の3D印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3D(three dimensional)印刷装置およびその3D印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
技術の進歩に伴い、積層造形技術(additive manufacturing technology)により3Dモデルを形成する多くの方法が提案されてきた。一般的に、積層造形技術は、CAD(computer-aided design)等のソフトウェアから得た3Dモデルの設計情報を使用して、連続積層された複数の薄い断面(擬二次元)に変換する技術である。
【0003】
現在、複数の薄い断面を形成する多くの方法が既に開発されている。例えば、液体成形材料の中に自動作業台を配置し、3Dモデルの設計情報のx‐y‐z座標に基づいて光源を駆動する。光源をx‐y座標に沿って駆動して、液体成形材料を照射する。そして、液体成形材料を硬化させて、正確な断面形状にする。次に、自動作業台をz軸に沿って移動させながら、層毎に硬化した硬化材料を3D物体に成形することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、固化層を有効に分離して、印刷効率を上げることのできる3D印刷装置およびその3D印刷方法を提供する。
【0005】
また、印刷精度を上げ、物体の印刷可能範囲を拡大し、印刷した3D物体の構造強度を高めるメリットがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
液体成形材料を含有するタンクと、タンク内に移動可能に配置され、液体成形材料に浸漬する、または液体成形材料の外に移動する作業台と、タンクまたは作業台の隣に配置された硬化装置と、硬化装置およびタンクと作業台のうちの少なくとも1つに電気接続された制御装置とを含む3D印刷装置を提供する。タンクの内底部は、階段状の第1部分と第2部分を有し、第1部分は、第2部分よりも高い。制御装置は、タンクおよび作業台をそれぞれ回転するよう駆動するため、作業台の領域は、第1部分または第2部分に対応する。領域が第1部分に対応している時、硬化装置が作業台と第1部分の間の液体成形材料を硬化させて固化層を形成した後、制御装置がタンクと作業台を互いに相対して回転させて固化層を第1部分から剥離し、固化層を第2部分に対応する位置に移動させる。
【0007】
本発明の3D印刷方法は、3D印刷装置に適用することができる。3D印刷装置は、タンクと、作業台と、硬化装置と、制御装置とを含む。タンクは、液体成形材料を含有し、タンクの内底部は、階段状の第1部分と第2部分を有し、第1部分は、第2部分よりも高い。作業台は、タンク内に移動可能に配置され、液体成形材料に浸漬する、または液体成形材料の外に移動する。硬化装置は、タンクまたは作業台の隣に配置される。制御装置は、硬化装置およびタンクと作業台のうちの少なくとも1つに電気接続される。制御装置は、タンクおよび作業台を互いに相対して回転させて、互いに相対的に近くに、または互いからさらに遠くに移動するよう駆動するため、作業台の領域は、第1部分または第2部分に切り替え可能に対応する。3D印刷方法は、以下のステップを含む。ステップS1:作業台と第1部分の間の液体成形材料を硬化して、第1固化層(A1)を形成した後、タンクを作業台に相対して回転させて、第1固化層(A1)を第1部分から剥離し、第1固化層(A1)を第2部分に対応する位置に移動させる。ステップS2:作業台およびタンクを互いから相対的にさらに離れるよう移動させる。ステップS3:作業台と第1部分の間の液体成形材料を硬化して、第2固化層(B1)を形成した後、タンクを作業台に相対して回転させて、第2固化層(B1)を第1部分から剥離し、第2固化層(B1)を第2部分に対応する位置に移動させる。ステップS4:タンクと作業台を互いから相対的にさらに離れるよう移動させる。ステップS5:作業台と第1部分の間の液体成形材料を硬化して、第1固化層(A1)の上に積み重ねられた別の第1固化層(A2)を形成し、タンクを作業台に相対して回転させて、第1固化層(A2)を第1部分から剥離し、第1固化層(A2)を第2部分に対応する位置に移動させる。ステップS2〜S5を繰り返して、第2固化層(B1)の上に複数の第2固化層(B2、…、Bn-1)を層毎に積み重ね、第1固化層(A1)の上に複数の第1固化層(A2、…、An)を層毎に積み重ねる。nは、正の整数である。最後に、ステップS6:作業台と第1部分の間の液体成形材料を硬化して、第2固化層(Bn-1)の上に積み重ねられた別の第2固化層(Bn)を形成し、タンクを作業台に相対して回転させて、第2固化層(Bn)を第1部分から剥離する。第1固化層セットA={A1、…、An-1、An}および第2固化層セットB={B1、…、Bn-1、Bn}は、3D物体を形成する。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、上述した3D印刷装置の実施形態は、タンクの内底部を階段状の第1部分と第2部分に分割する。第1部分は、第2部分よりも高く、第1部分を固化層の成形領域として使用した後、タンクと作業台の間の相対回転により形成されたせん断力(shear force)が固化層を第1部分から剥離して、後続の固化層の形成を容易にする。
【0009】
さらに、3D印刷装置に基づく印刷方法は、第1および第2部分に相対する3D物体の位置と範囲を決定してから所望のステップを採用する。こうすることによって、3D印刷効果が上がる。所望の3D物体が第1部分と第2部分の両方に対応している時、第1および第2固化層を互いに並べて層毎にラミネートすることにより、構造的にさらに完成した3D物体を形成して、異なる部分の固化層間の継ぎ目を防止し、これにより、印刷サイズと印刷精度が有効に増加し、印刷された3D物体の構造強度も高まる。
【0010】
本発明の上記および他の目的、特徴、および利点をより分かり易くするため、図面と併せた幾つかの実施形態を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の1つの実施形態に係る3D印刷装置の概略図である。
図2】異なる状態の図1の3D印刷装置を示す局部側面図である。
図3】異なる状態の図1の3D印刷装置を示す局部側面図である。
図4】異なる状態の図1の3D印刷装置を示す局部側面図である。
図5】3D物体を印刷した後の図1の3D印刷装置を示す局部概略図である。
図6】本発明の1つの実施形態に係る3D印刷方法のフローチャートである。
図7】本発明の別の実施形態に係る3D印刷装置の状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を例として、本発明の実施形態を詳細に説明する。各図面および関連説明において、同一または類似する構成要素には、同一の参照番号を使用する。
【0013】
図1は、本発明の1つの実施形態に係る3D印刷装置の概略図である。図2図4は、異なる状態の図1の3D印刷装置を示す局部側面図である。図1図4を同時に参照すると、本実施形態において、3D印刷装置100は、タンク110と、作業台120と、硬化装置130と、制御装置140とを含み、タンク110は、液体成形材料200を含有し、作業台120は、タンク110に対して移動可能に配置され、液体成形材料200に浸漬する、または液体成形材料200の外に移動する。硬化装置130は、タンク110または作業台120の隣に配置され、作業台120とタンク110の間の液体成形材料200を硬化して、作業台120の上に少なくとも1つの固化層(例えば、図2および図4に示した固化層A1およびB1)を形成するよう構成される。制御装置140は、タンク110と作業台120のうちの少なくとも1つおよび硬化装置130に電気接続され、これらの構成要素を互いに相対して移動するよう駆動する。
【0014】
また、3D印刷装置100は、例えば、ステレオリソグラフィ(stereo lithography, SL)装置またはデジタル光処理(digital light processing, DLP)装置であり、液体成形材料200は、例えば、感光性樹脂であるため、制御装置140は、硬化光源等の硬化装置130を照射するよう駆動して、液体成形材料200を凝固させ、作業台120の上に形成する。しかしながら、本発明はこれに限定されず、上述した3D物体の形成に適した任意の材料および対応する付加製造技術を適用してもよい。
【0015】
以上のように、本実施形態において、硬化装置130は、液体成形材料200を硬化し、タンク110と作業台120の間の相対運動(回転する、離れる)と併せて作業台120の成形面P1の上に層毎に凝固させて積み重ねることにより、最終的に3D物体を形成する。
【0016】
また、硬化装置130の数およびタンク110に相対する硬化装置130の位置は、本発明において限定されない。本実施形態において、硬化装置130はタンク110の下方に設置されるが、硬化装置130は、成形条件に基づいて配置されるため、硬化装置130は、作業台120のボトムアップ式(bottom-up)の上昇動作に合わせて液体成形材料200を有効に凝固させて作業台120の上に形成し、3D物体を段階的に形成することができる。硬化装置130は、タンク110の隣または作業台120の隣の適切な位置に配置される。
【0017】
さらに詳しく説明すると、図1に示すように、タンク110の内底部は、階段状の第1部分112と第2部分114を有する。第1部分112は、第2部分114よりも高く、第1部分112は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethene, PTFE)やポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane, PDMS)等の抗接着性の材料で作られた塗布層116を有し、タンク110の底部(第1部分112)から硬化層または硬化物体を剥離する。制御装置140は、タンク110を中心軸C1の周りを作業台120に相対して回転するよう駆動し、制御装置140は、さらに、作業台120を中心軸C1の周りを作業台120に相対して回転させて、作業台120をタンク110の近くに、またはタンク110からさらに遠くに移動するよう制御することができる。タンク110が中心軸C1の周りを作業台120に相対して回転した時、作業台120の成形面P1の領域は、タンク110の第1部分112または第2部分114に切り替え可能に対応することができる。「対応する」という用語は、作業台120の特定領域が異なる時間においてタンク110の第1部分112の真上または第2部分114の真上に移動する状況を示すために使用される。この時、制御装置140は、作業台120と第1部分112の間の距離を希望通りに調整するよう制御し、作業台120と第1部分112の間の最小距離は、例えば、1つの固化層の厚さに等しい。つまり、作業台120の特定領域は、第1部分112に対応しており、作業台120の上の第1部分112の正投影は、作業台120の特定領域を完全に覆う。
【0018】
その結果、硬化装置140は、作業台120と第1部分112の間の液体成形材料200を硬化して、作業台120の上に固化層を形成する(例えば、A1)。次に、制御装置140は、タンク110を作業台120に相対して回転するよう駆動し、固化層A1は、作業台120に沿って相対的に回転するため、第1部分112から剥離し、第2部分114に対応する位置に移動する。タンク110の内底部は、階段形状を有するため、固化層は、実際には、第2部分114の上方にぶら下がる。ここで、言及すべきこととして、塗布層116は、固化層と第1部分112の間の接着力、粘性力、および摩擦力を弱める役割を果たす。そのため、固化層は、第1部分112からスムーズに剥離する。したがって、相対回転により生成されたせん断力で固化層を第1部分112から剥離することにより、中心軸C1に沿って強い力が印加されて(第1部分112に垂直の(normal to)方向に力が働いて)固化層がタンク110の内底部から分離するのを防ぎ、処理時間が無駄になるのを防ぐ。
【0019】
再度図1を参照すると、本実施形態において、タンク110の内底部は、円形状の輪郭を有し、中心軸C1の周りを回転するよう制御され、タンク110の内底部を占有する第1部分112および第2部分114の各回転角度は、180度である。そのため、作業台120の特定領域は、タンク110の180度回転により、第1部分112に対応する状態と第2部分114に対応する状態の間で切り替えられる。また、第1部分112の面積は、第2部分114の面積よりも大きく、タンク110が軸にして回転する中心軸C1は、第1部分112を通過する。そのため、図1に示すように、硬化装置140がタンク110の下方から第1部分112に光を照射した時、光は、階段形状の段差構造(stage difference)111の影響を受けず、分散(scatter)しない。
【0020】
以下、3D印刷装置100により3D物体を段階的に形成するプロセスについて説明する。図5は、3D物体を完全に印刷した後の図1の3D印刷装置を示す局部概略図であり、図5は、図2図4に示したプロセスの後に続く。図6は、本発明の1つの実施形態に係る3D印刷方法のフローチャートである。図6のフローチャートを参照し、且つ図2図5を参照すると、本実施形態において、まず、ステップS01において、形成したい3D物体300がタンク110の内底部の第1部分112の範囲の外にあるかどうかを判断する。つまり、形成したい3D物体300の作業台120の上の占有面積がタンク110の内底部の第1部分112および第2部分114の両方に対応しているかどうかを確認する。言い換えると、作業台120の上の第1部分112の正投影が形成したい3D物体300の作業台120の上の占有面積を完全に覆わず、且つ形成したい3D物体300の作業台120の上の占有面積が作業台120の上の第1部分112および第2部分114の正投影によって完全に覆われることを確認する必要がある。Yesの場合、ステップS02を行って、作業台120をタンク110の第1部分112および第2部分114にそれぞれ切り替え可能に対応する第3部分122および第4部分124に分割する。つまり、3D物体300を設置したい作業台120の所定区域を第3部分122および第4部分124に分割し、例えば、図2に示すように、第1部分112は第3部分122に対応し、第2部分114は第4部分124に対応する。同時に、3D物体300を第1固化層セットA={A1、…、An-1、An}および第2固化層セットB={B1、…、Bn-1、Bn}に分割する。第1固化層セットAは、第3部分122に位置し、第2固化層セットBは、第4部分124に位置し、第3部分122の区域R1は、第4部分124の区域よりも小さい。
【0021】
ここで、注意すべきこととして、ステップS01およびS02は、3D物体300を物理的に印刷する前の準備工程である。本実施形態では、3D物体300をCADソフトウェアにより構築して3Dモデルの設計情報を取得し、設計情報をさらに複数の薄い断面(擬二次元)(例えば、第1固化層セットAおよび第2固化層セットB)に変換する。
【0022】
続いて、3D印刷装置100は、3Dモデルの設計情報に基づいて、物体の物理的印刷を開始する。
【0023】
ステップS1において、図2および図3に示すように、作業台120と第1部分112の間の液体成形材料200を硬化して、第1固化層(A1)を形成する。次に、タンク110を作業台120に相対して回転させ、第1固化層(A1)を第1部分112から剥離して、第2部分114に対応する位置に移動させる。この時、タンク110は、中心軸C1の周りを作業台120に相対して180度回転するため、第4部分124は第1部分112に対応し、第3部分122は第2部分114に対応する。そして、せん断力により第1固化層(A1)を第1部分112から剥離する。
【0024】
続いて、図4に示すように、ステップS2において、作業台120とタンク110を互いから相対的にさらに離れるように移動させる。次に、ステップS3において、作業台120と第1部分112の間の液体成形材料200を硬化して、第2固化層(B1)を形成した後、タンク110を作業台120に相対して回転させることにより、第2固化層(B1)を第1部分112から剥離して、第2部分114に対応する位置に移動させる(図4は、硬化された第2固化層(B1)のみを示し、作業台120に相対するタンク110の回転は図2図3に示した回転に類似するため、ここでは繰り返し説明しない)。ステップS4において、作業台120とタンク110を再び互いから相対的にさらに離れるように移動させて、固化層を継続して積み重ねる。
【0025】
次に、ステップS2〜S5を繰り返し、図5に示すように、第2固化層(B1)の上に複数の第2固化層(B2…、Bn-1)を層毎に積み重ね、第1固化層(A1)の上に複数の第1固化層(A2…、An)を層毎に積み重ねる。nは、正の整数である)。層を積み重ねる手順において、第1固化層(A1…、An)および第2固化層(B1…、Bn-1)は、また、中心軸C1が通過する中心断面P2の上に並んで接続される。最後に、ステップS6において、作業台120と第1部分112の間の液体成形材料200を硬化して、第2固化層(Bn)を形成し、タンク110を作業台120に相対して回転させて、第2固化層(Bn)を第1部分112から剥離する。その結果、第1固化層セットA={A1、…、An-1、An}および第2固化層セットB={B1、…、Bn-1、Bn}は、3D物体を完全に形成する。
【0026】
再度図5および図6を参照すると、言及すべきこととして、3D物体は、第1部分112および第2部分114の両方に対応しているため、本実施形態では、異なる厚さで並べて積み重ねる方法を使用する。そのため、第1固化層セットAと第2固化層セットBが互いに接続されて3D物体を形成する。同時に、第1固化層(A1)の厚さは、第2固化層(Bn)の厚さに等しく、各第1固化層(A2…、An)の厚さは、各第2固化層(B1…、Bn-1)の厚さに等しい。つまり、本実施形態において、第1固化層(A1)の厚さは、各第1固化層(A2…、An)の厚さの半分に等しく、また、各第2固化層(B1…、Bn-1)の厚さの半分にも等しい。さらに、第2固化層(Bn)の厚さは、各第2固化層(B1…、Bn-1)の厚さの半分に等しく、また、各第1固化層(A2…、An)の厚さの半分にも等しい。その結果、ステップS2およびステップS4において、タンク110が作業台120から相対的にさらに離れるよう移動する距離は、各第1固化層(A2…、An)の厚さの半分に等しく、また、各第2固化層(B2…、Bn-1)の厚さの半分にも等しい。さらに、図5に示すように、第1固化層(A1…、An-1)および第2固化層(B1…、Bn-1)の形成において、n番目の第1固化層(例えば、A2)と作業台120の間の距離は、n番目の第2固化層(例えば、B2)と作業台120の間の距離と異なる(厚さt1は、厚さt2の半分である)。つまり、第1固化層および第2固化層は、同じ序数(例えば、A2およびB2)を有するが、第1固化層と作業台の間の距離は、第2固化層と作業台の間の距離と異なる。しかしながら、作業台120の外を向いている第1固化層(An)の表面S1と作業台120の外を向いている第2固化層(Bn)の別の表面S2は共平面であるため、図5に示すように、並んで積み重ねる構造を形成する。第1固化層セットAと第2固化層セットBは、タンク110の内底部の中心断面P2において互いに接続され、中心軸C1は、中心断面P2に位置する。また、ステップS1、ステップS3、およびステップS5において、タンク110は、中心軸C1の周りを作業台120に相対して180度回転する。
【0027】
図7は、本発明の別の実施形態に係る3D印刷装置の状態を示す概略図であり、図7は、図6のフローチャートの別のプロセスを示す。図6および図7を同時に参照すると、上述したように、ステップS01において、3D物体300が第1部分112の範囲の外にないと判断された場合(作業台120の上の第1部分112の正投影が形成したい3D物体300の作業台120の上の占有区域を完全に覆うことを意味する)、後続のステップS7を行って、作業台120と第1部分112の間の液体成形材料200を硬化して、固化層(D1)を形成する。次に、ステップS1で説明したように、タンク110を作業台120に相対して回転させることにより、固化層(D1)を第1部分112から剥離して、第2部分114に対応する位置に移動させる。その後、ステップS8において、ステップS2で説明したように、作業台120とタンク110を互いから相対してさらに離れるように移動させる。しかしながら、この時、タンク110が作業台120から相対的にさらに離れるよう移動する距離は、固化層(D1)の厚さに等しい。ステップS9において、タンク110を作業台120に相対して回転させるため、固化層(D1)は、再度第1部分112に対応する。ステップS10において、固化層(D1)と第1部分112の間の液体成形材料200を固化して、固化層(D1)の上に積み重なる別の固化層(D2)を形成する。次に、ステップS7〜S10を3D物体が完全に印刷されるまで繰り返す。つまり、本実施形態の3D物体は、作業台120の上に段階的に積み重ねられた固化層セットD={D1、…、Dn-1、Dn}により形成される。nは、正の整数であり、固化層セットDは、作業台120の同じ領域内に位置する。
【0028】
本実施形態において、固化層は作業台の同じ領域に積み重ねられるため、ステップS8とS9を同時に実行することができる。つまり、タンクを作業台に相対して回転させ、同時に、作業台をタンクに相対して上昇させるため、処理時間が短縮される。
【0029】
上述した本発明の実施形態において、3D印刷装置のタンクの内底部は、階段状の第1部分と第2部分に分割される。第1部分である比較的高い部分は、固化層の成形区域として使用され、タンクと作業台の間の相対回転によって生成されたせん断力を使用して、固化層を第1部分から剥離し、後続の固化層の形成を容易にする。
【0030】
さらに、3D印刷装置に基づく印刷方法は、第1および第2部分に相対する3D物体の位置と範囲を決定してから所望のステップを採用する。こうすることによって、3D印刷効果が上がる。所望の3D物体が第1部分と第2部分の両方に対応している時、異なる厚さで並べて積み重ねる方法で、第1および第2固化層を互いにラミネートすることにより、構造的にさらに完成した3D物体を形成して、固化層間の継ぎ目を防止し、その後、印刷サイズと印刷精度を有効に増やし、印刷された3D物体の構造強度も高める。
【0031】
反対に、所望の3D物体が第1部分の範囲の外にないと判断された時、タンクを作業台に相対して回転させて固化層を剥離し、作業台をタンクに相対して上昇させた後、再度タンクを作業台に相対して回転させるため、固化層も回転して第1部分に対応する位置に戻る。次に、別の固化層を継続して印刷し、前の固化層の上に直接積み重ねる。
【0032】
以上のごとく、この発明を実施形態により開示したが、もとより、この発明を限定するためのものではなく、当業者であれば容易に理解できるように、この発明の技術思想の範囲内において、適当な変更ならびに修正が当然なされうるものであるから、その特許権保護の範囲は、特許請求の範囲および、それと均等な領域を基準として定めなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、3D印刷装置およびその3D印刷方法に関するものであり、タンクの内底部は、階段状の第1部分と第2部分を有し、第1部分は、第2部分よりも高い。固化層を硬化して第1部分と作業台の間に形成した後、タンクと作業台が相対的に回転して、固化層を第1部分から剥離する。そして、固化層を互いに並べて層毎にラミネートすることにより、構造的にさらに完成した3D物体を形成して、異なる部分の固化層間の継ぎ目を防止し、それにより、印刷サイズと印刷精度が有効に増加し、印刷された3D物体の構造強度も高まる。
【符号の説明】
【0034】
100 3D印刷装置
110 タンク
111 段差構造
112 第1部分
114 第2部分
116 塗布層
120 作業台
122 第3部分
124 第4部分
130 硬化装置
140 制御装置
200 形成材料
300 3D物体
C1 中心軸
P1 成形面
A 第1固化層セット
B 第2固化層セット
D 固化層セット
A1、…、An-1、An 第1固化層
B1、…、Bn-1、Bn 第2固化層
D1、D2 固化層
S01、S02、S1〜S10 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7