(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された手法は、調整が難しく、非常に煩雑であった。
【0007】
そこで、本発明は、簡便に軸受の寿命の低下を抑制可能な回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る回転機械は、回転体と、前記回転体の外周面に固定された内輪、該内輪の外側に配置された外輪、及び前記内輪と前記外輪との間に介装された複数の転動体を含む軸受と、前記軸受の外側に配置され、前記外輪が固定された軸受箱と、前記軸受箱の外側に配置され、該軸受箱が固定されたケーシングと、前記外輪の温度と前記内輪の温度との差を小さくする温度差抑制機構と、を備え、前記温度差抑制機構は、前記ケーシングのうち、前記軸受箱の外周面と接触する
内周面から凹むように設けられて、前記軸受箱との間に閉空間としての空隙を形成する凹部である。
【0009】
本発明によれば、外輪の温度と内輪の温度との差を小さくする温度差抑制機構を有することで、内輪と外輪と間の熱膨張の差を小さくすることが可能となる。これにより、運転中の軸受すきまの減少を抑制することが可能となるので、軸受の寿命の低下を抑制することができる。
また、ぬすみの軸方向の長さをクラウニング部の軸方向長さより大きく調整する場合(軸受自体を調整する場合)と比較して、簡便に、軸受の寿命の低下を抑制することができる。
また、上記構成とされた凹部をケーシングに設けることで、ケーシングの内周面と軸受箱の外周面との接触面積が小さくなるため、外輪と接触する軸受箱の熱をケーシングに伝わりにくくすることが可能となる。これにより、外輪の温度低下が抑制され、内輪と外輪と間の熱膨張の差を小さくすることが可能となるので、軸受の寿命の低下を抑制することができる。
【0012】
また、上記本発明の一態様に係る回転機械において、前記温度差抑制機構は、前記ケーシングの外面に設けられた断熱材を含み、前記軸受箱は、前記軸受に潤滑油を噴射する潤滑油噴射部を有してもよい。
【0013】
このように、ケーシングの外面に断熱材を設けることで、ケーシングと外気との接触を抑制可能になるとともに、回転機械の熱を断熱材の内側に保つことが可能となる。これにより、外輪の温度低下が抑制され、内輪と外輪と間の熱膨張の差を小さくすることが可能となるので、軸受の寿命の低下を抑制することができる。
また、軸受に潤滑油を噴射する潤滑油噴射部を有することで、潤滑油を用いて軸受全体を冷却することが可能となる。これにより、軸受全体の温度が大きく上昇することを抑制できる。
【0014】
また、上記本発明の一態様に係る回転機械において、前記温度差抑制機構は、前記軸受箱と前記ケーシングとの間に配置され、前記ケーシングよりも熱電率の低い低熱伝導率部材を含んでもよい。
【0015】
このように、軸受箱とケーシングとの間に、ケーシングよりも熱電率の低い低熱伝導率部材を配置することで、軸受箱とケーシングとの間での熱の伝導を抑制することが可能となる。これにより、外輪の温度低下が抑制され、内輪と外輪と間の熱膨張の差を小さくすることが可能となるので、軸受の寿命の低下を抑制することができる。
【0016】
また、上記本発明の一態様に係る回転機械において、前記温度差抑制機構は、前記軸受箱と前記ケーシングとの間に配置され、前記軸受箱を加熱する発熱体を含み、前記軸受箱は、前記軸受に潤滑油を噴射する潤滑油噴射部を有してもよい。
【0017】
このように、軸受箱とケーシングとの間に、軸受箱を加熱する発熱体を配置することで、内輪と比較して温度が低下しやすい外輪を加熱することが可能となる。これにより、内輪と外輪と間の熱膨張の差を小さくすることが可能となるので、軸受の寿命の低下を抑制することができる。
また、軸受に潤滑油を噴射する潤滑油噴射部を有することで、潤滑油を用いて軸受全体を冷却することが可能となる。これにより、軸受全体の温度が大きく上昇することを抑制できる。
【0018】
また、上記本発明の一態様に係る回転機械において、前記軸受箱の外周面、及び該軸受箱の外周面と接触する前記ケーシングの内周面のうち、少なくとも一方の面が粗面とされており、前記温度差抑制機構は、前記粗面を含んでもよい。
【0019】
このように、軸受箱の外周面、及び軸受箱の外周面と接触するケーシングの内周面のうち、少なくとも一方の面を粗面とし、温度差抑制機構が粗面を含むことで、軸受箱の外周面とケーシングの内周面との間における接触面積が小さくなるため、外輪と接触する軸受箱の熱をケーシングに伝わりにくくすることが可能となる。これにより、外輪の温度低下が抑制され、内輪と外輪と間の熱膨張の差を小さくすることが可能となるので、軸受の寿命の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡便に軸受の寿命の低下を抑制可能な回転機械を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施形態について詳細に説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
図1を参照して、本発明の第1の実施形態の回転機械10について説明する。なお、
図1に示すOは、回転体11の軸線(以下、「軸線O」という)を示している。
図1では、回転機械10の一例として、コンプレッサを例に挙げて図示する。また、
図1では、回転体11の一例として、回転軸を例に挙げて図示する。
【0024】
回転機械10は、回転体11と、軸受箱13,15と、複数の軸受16と、ケーシング18と、温度差抑制機構19と、支持部材21と、シール部材22と、を有する。
【0025】
回転体11は、円柱形状とされており、所定方向(軸線O方向)に延在して配置されている。回転体11は、先端部11Aと、基端部11Bと、軸受支持部11Cと、を有する。
先端部11Aは、ケーシング18の一方の端部から露出されている。基端部11Bは、ケーシング18内に収容されている。基端部11Bは、複数の軸受16により回転可能に支持される部分である。軸受支持部11Cは、先端部11Aと基端部11Bとの間に配置されている。
上記構成とされた回転体11は、外周面11aを有する。
【0026】
軸受箱13は、軸受箱本体27と、潤滑油噴射部28と、を有する。軸受箱本体27は、円筒形状とされた部材である。軸受箱本体27は、軸受支持部11Cの外周面11aとの間に軸受16を配置可能な隙間を介在させた状態で、軸受支持部11Cを収容している。
軸受箱本体27は、外周面27aと、外輪固定面27bと、を有する。外周面27aは、ケーシング18と接触する面である。外周面27aは、軸受箱13の外周面13aに対応する面である。
外輪固定面27bは、内側に軸受16の外輪16Bが固定されるリング状の面である。外輪固定面27bは、軸線O方向に対して所定間隔を空けて複数配置されている。
【0027】
潤滑油噴射部28は、軸受箱本体27の内側に設けられている。潤滑油噴射部28は、軸受箱本体27の内側から軸受支持部11Cに向かう方向に突出している。潤滑油噴射部28は、軸受16間に配置されている。潤滑油噴射部28は、潤滑油供給部(図示せず)と接続されている。潤滑油噴射部28は、軸受16に潤滑油を噴射することで、軸受16全体を冷却する機能を有する。
【0028】
軸受箱15は、軸受箱本体31と、潤滑油噴射部32と、を有する。軸受箱本体31は、一方の端部が閉塞端とされ、他方が開放端とされた円筒部材である。軸受箱本体31は、基端部11Bの外周面11aとの間に軸受16を配置可能な隙間を介在させた状態で、基端部11Bを収容している。
軸受箱本体31は、外周面31aと、外輪固定面31bと、を有する。外周面31aは、ケーシング18と接触する面である。外周面31aは、軸受箱15の外周面15aに対応する面である。
外輪固定面31bは、内側に軸受16の外輪16Bが固定されるリング状の面である。外輪固定面31bは、軸線O方向に対して所定間隔を空けて複数配置されている。
【0029】
潤滑油噴射部32は、軸受箱本体31の内側に設けられている。潤滑油噴射部32は、軸受箱本体31の内側から基端部11Bに向かう方向に突出している。潤滑油噴射部32は、軸受16間に配置されている。潤滑油噴射部32は、潤滑油供給部(図示せず)と接続されている。潤滑油噴射部32は、軸受16に潤滑油を噴射することで、軸受16全体を冷却する機能を有する。
上述した軸受箱13,15は、複数の軸受16の外側に配置されている。
【0030】
軸受16は、軸受支持部11Cと軸受箱本体27との間、及び基端部11Bと軸受箱本体27との間にそれぞれ複数設けられている。
軸受16は、内輪16Aと、外輪16Bと、複数の転動体16Cと、を有する。
内輪16Aは、リング状の部材である。内輪16Aは、外輪固定面27bまたは外輪固定面31bと対向する回転体11の外周面11aに固定されている。
【0031】
外輪16Bは、リング状の部材である。外輪16Bは、外輪固定面27b,31bに固定されている。外輪16Bは、内輪16Aと対向するように、内輪16Aの外側に配置されている。複数の転動体16Cは、内輪16Aと外輪16Bとの間に介装されている。転動体16Cとしては、例えば、玉やころ等を用いることが可能である。
上記構成とされた複数の軸受16は、回転体11を回転可能に支持している。
【0032】
ケーシング18は、筒状とされた部材である。ケーシング18は、先端部11Aを除く回転体11、軸受箱13,15、及び複数の軸受16を収容している。ケーシング18は、内周面18a,18bと、外面18cと、を有する。
内周面18aは、軸受箱13の外周面13aと接触する面である。内周面18bは、軸受箱15の外周面15aと接触する面である。外面18cは、外気と接触する面である。
【0033】
温度差抑制機構19は、複数の凹部35,36で構成されている。複数の凹部35は、ケーシング18のうち、内周面18aを構成する部分に設けられている。凹部35は、例えば、穴でもよいし、スリットやリング状の溝でもよい。
複数の凹部36は、ケーシング18のうち、内周面18bを構成する部分に設けられている。凹部36は、例えば、穴でもよいし、スリットやリング状の溝でもよい。
【0034】
支持部材21は、ケーシング18の一方の端に設けられている。支持部材21は、先端部11Aが挿入される貫通穴21Aを有する。先端部11Aの一部は、支持部材21の外側に突出している。
シール部材22は、リング状とされたシール部材であり、貫通穴21Aに設けられている。
【0035】
第1の実施形態の回転機械10によれば、温度差抑制機構19として、ケーシング18の内側に設けられた複数の凹部36を用いることで、ケーシング18の内周面18a,18bと軸受箱13,15の外周面13a,15aとの接触面積が小さくなるため、外輪16Bと接触する軸受箱13,15の熱をケーシング18に伝わりにくくすることが可能となる。これにより、外輪16Bの温度低下が抑制され、内輪16Aと外輪16Bと間の熱膨張の差を小さくすることが可能となるので、軸受16の寿命の低下を抑制することができる。
また、ぬすみの軸方向の長さをクラウニング部の軸方向長さより大きく調整する場合(軸受自体を調整する場合)と比較して、簡便に、軸受16の寿命の低下を抑制することができる。
【0036】
(第2の実施形態)
図2を参照して、本発明の第2の実施形態の回転機械40について説明する。なお、
図2では、
図1に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0037】
回転機械40は、温度差抑制機構19に替えて、温度差抑制機構41を有すること以外は、第1の実施形態の回転機械10と同様に構成されている。
温度差抑制機構41は、ケーシング18の外面18c、及び支持部材21の外面21aを覆う断熱材42で構成されている。
【0038】
断熱材42としては、例えば、泡ガラス、グラスウール、ロックウール、けい酸カルシウム、パーライト、フォームポリスチレン、押出発泡ポリスチレン、硬質ウレタンフォーム、塩ビフォーム、インシュレーションボード、シージングボード、新聞故紙断熱材等を用いることが可能である。
【0039】
第2の実施形態の回転機械40によれば、ケーシング18の外面18c、及び支持部材21の外面21aを覆う断熱材42を設けることで、ケーシング18の外面18cと外気との接触を抑制可能になるとともに、回転機械40の熱を断熱材42の内側に保つことが可能となる。これにより、外輪16Bの温度低下が抑制され、内輪16Aと外輪16Bと間の熱膨張の差を小さくすることが可能となるので、軸受16の寿命の低下を抑制することができる。
また、軸受16に潤滑油を噴射する潤滑油噴射部28を有することで、潤滑油を用いて軸受16全体を冷却することが可能となるので、軸受16全体の温度が大きく上昇することを抑制できる。
【0040】
なお、第2の実施形態の回転機械40に、第1の実施形態で説明した温度差抑制機構19である複数の凹部36を適用してもよい。このように、第1の実施形態の温度差抑制機構19と、第2の実施形態の温度差抑制機構41と、を組み合わせることで、内輪16Aと外輪16Bと間の熱膨張の差をさらに小さくすることが可能となるので、軸受16の寿命の低下をさらに抑制することができる。
【0041】
(第3の実施形態)
図3を参照して、本発明の第3の実施形態の回転機械50について説明する。なお、
図3では、
図2に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0042】
回転機械50は、温度差抑制機構41に替えて、温度差抑制機構51を有すること以外は、第2の実施形態の回転機械40と同様に構成されている。
温度差抑制機構51は、ケーシング18よりも熱電率の低い低熱伝導率部材52,53で構成されている。
低熱伝導率部材52は、軸受箱13の外周面13aとケーシング18の内周面18aとの間に配置されている。低熱伝導率部材53は、軸受箱15の外周面15aとケーシング18の内周面18bとの間に配置されている。
【0043】
ケーシング18の材料として、例えば、鋳鉄系材料を用いることが可能である。ケーシング18の材料として、例えば、鋳鉄系材料であるFC300(熱伝導率が43W/(m・K))を用いる場合、低熱伝導率部材52,53としては、熱伝導率が43W/(m・K)よりも小さいものを用いる。この場合、低熱伝導率部材52,53としては、例えば、熱伝導率が43W/(m・K)未満のステンレス系材料、ゴム及び樹脂材料等を用いるとよい。
【0044】
具体的なステンレス材料としては、例えば、マルテンサイト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼等を用いることが可能である。
具体的な鋳鉄系材料としては、例えば、ねずみ鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄、白鋳鉄等を用いることが可能である。
具体的なゴム及び樹脂材料としては、例えば、天然ゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、シリコンゴム、ブチルゴム、ポリウレタンゴム、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ベークライト、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等を用いることが可能である。
【0045】
第3の実施形態の回転機械50によれば、軸受箱13,15とケーシング18との間に、ケーシング18よりも熱電率の低い低熱伝導率部材52,53を配置することで、軸受箱13,15とケーシング18との間での熱の伝導を抑制することが可能となる。これにより、外輪16Bの温度低下が抑制され、内輪16Aと外輪16Bと間の熱膨張の差を小さくすることが可能となるので、軸受16の寿命の低下を抑制することができる。
【0046】
なお、第3の実施形態の回転機械50に、第1の実施形態で説明した温度差抑制機構19、及び第2の実施形態で説明した温度差抑制機構41のうち、少なくとも1つの温度差抑制機構を組み合わせてもよい。
このように、第3の実施形態の回転機械50に、第1の実施形態で説明した温度差抑制機構19、及び第2の実施形態で説明した温度差抑制機構41のうち、少なくとも1つの温度差抑制機構を組み合わせることで、内輪16Aと外輪16Bと間の熱膨張の差をさらに小さくすることが可能となるので、軸受16の寿命の低下をさらに抑制することができる。
【0047】
(第4の実施形態)
図4を参照して、本発明の第4の実施形態の回転機械60について説明する。なお、
図4では、
図3に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0048】
回転機械60は、温度差抑制機構51に替えて、温度差抑制機構61を有すること以外は、第3の実施形態の回転機械50と同様に構成されている。
温度差抑制機構61は、発熱体62,63で構成されている。発熱体62は、軸受箱13の外周面13aとケーシング18の内周面18aとの間に配置されている。発熱体62は、発熱することで、軸受箱13を加熱する。
発熱体63は、軸受箱15の外周面15aとケーシング18の内周面18bとの間に配置されている。発熱体63は、発熱することで、軸受箱15を加熱する。
発熱体62,63としては、例えば、ヒーター(例えば、シート状のヒーター)を用いることが可能である。
【0049】
第4の実施形態の回転機械60によれば、軸受箱13,15とケーシング18との間に、軸受箱13,15を加熱する発熱体62,63を配置することで、内輪16Aと比較して温度が低下しやすい外輪16Bを加熱することが可能となる。これにより、内輪16Aと外輪16Bと間の熱膨張の差を小さくすることが可能となるので、軸受16の寿命の低下を抑制することができる。
また、軸受16に潤滑油を噴射する潤滑油噴射部28,32を有することで、潤滑油を用いて軸受16全体を冷却することが可能となる。これにより、軸受16全体の温度が大きく上昇することを抑制できる。
【0050】
なお、第4の実施形態の回転機械60に、第1ないし第3の実施形態で説明した温度差抑制機構19,41,51のうち、少なくとも1つの温度差抑制機構を組み合わせてもよい。
このように、第4の実施形態の回転機械60に、第1ないし第3の実施形態で説明した温度差抑制機構19,41,51のうち、少なくとも1つを組み合わせることで、内輪16Aと外輪16Bと間の熱膨張の差をさらに小さくすることが可能となるので、軸受16の寿命の低下をさらに抑制することができる。
また、第4の実施形態の回転機械60に、第3の実施形態で説明した低熱伝導率部材52,53を適用する場合、発熱体62,63の外側に低熱伝導率部材52,53を配置させるとよい。
【0051】
(第5の実施形態)
図5〜
図7を参照して、本発明の第5の実施形態の回転機械70について説明する。なお、
図5では、
図2に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。また、
図6及び
図7において、
図5に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0052】
回転機械70は、温度差抑制機構41に替えて、温度差抑制機構71,72を有すること以外は、第2の実施形態の回転機械40と同様に構成されている。
温度差抑制機構71は、粗面(粗化された面)とされたケーシング18の内周面18aと、粗面とされた軸受箱13の外周面13aと、で構成されている。このような構成とすることで、内周面18aと外周面13aとの間に隙間が形成されるため、内周面18aと外周面13aとの接触面積を少なくすることが可能となる。
内周面18a及び外周面13aの表面粗さは、同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0053】
温度差抑制機構72は、粗面(粗化された面)とされたケーシング18の内周面18bと、粗面とされた軸受箱15の外周面15aと、で構成されている。このような構成とすることで、内周面18bと外周面15aとの間に隙間が形成されるため、内周面18bと外周面15aとの接触面積を少なくすることが可能となる。
内周面18a及び外周面15aの表面粗さは、同じでもよいし、異なっていてもよい。
また、内周面18a,18b、及び外周面13a,15aの粗化方法としては、例えば、ブラスト法(例えば、サンドブラスト法)を用いることが可能である。
【0054】
第5の実施形態の回転機械70によれば、軸受箱13,15の外周面13a,15a、及び軸受箱13,15の外周面13a,15aと接触するケーシング18の内周面18a,18bを粗面にすることで、軸受箱13,15の外周面13a,15aとケーシング18の内周面18a,18bとの間における接触面積が小さくなるため、外輪16Bと接触する軸受箱13,15の熱をケーシング18に伝わりにくくすることが可能となる。これにより、外輪16Bの温度低下が抑制され、内輪16Aと外輪16Bと間の熱膨張の差を小さくすることが可能となるので、軸受16の寿命の低下を抑制することができる。
【0055】
なお、第5の実施形態では、軸受箱13,15の外周面13a,15a、及びケーシング18の内周面18a,18bの両方が粗面である場合を例に挙げて説明したが、軸受箱13,15の外周面13a,15a、及びケーシング18の内周面18a,18bのうち、少なくとも一方の面が粗面であればよい。この場合、第5の実施形態の回転機械70と同様な効果を得ることができる。
【0056】
また、第5の実施形態の回転機械70に、第1ないし第4の実施形態で説明した温度差抑制機構19,41,51,61のうち、少なくとも1つの温度差抑制機構を組み合わせてもよい。
このように、第5の実施形態の回転機械70に、第1ないし第4の実施形態で説明した温度差抑制機構19,41,51,61のうち、少なくとも1つを組み合わせることで、内輪16Aと外輪16Bと間の熱膨張の差をさらに小さくすることが可能となるので、軸受16の寿命の低下をさらに抑制することができる。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0058】
例えば、
図5に示す回転機械70を構成する軸受箱13,15の外周面13a,15a、及びケーシング18の内周面18a,18bが粗化処理されていない回転機械を準備し、軸受箱13,15とケーシング18との締め付けを少し緩めてもよい。
このような構成とすることで、軸受箱13,15の外周面13a,15aとケーシング18の内周面18a,18bとが接触する圧力(以下、「接触圧力」という)を小さくすることが可能となる。
【0059】
これにより、軸受箱13,15の外周面13a,15aとケーシング18の内周面18a,18bとの間に僅かな隙間が形成されるので、軸受箱13,15の熱をケーシング18に伝わりにくくすることが可能となる。したがって、このような構成とされた回転機械は、先に説明した第5の実施形態の回転機械70と同様な効果を得ることができる。
軸受箱13,15の外周面13a,15aとケーシング18の内周面18a,18bとの接触圧力を低下させる構造は、先に説明した第1ないし第5の実施形態に記載の回転機械10,40,50,60,70に適用してもよい。
【0060】
また、例えば、現行の軸受箱13,15、及びケーシング18のうち、少なくとも一方を現行の材料(軸受箱13,15、ケーシング18、及び軸受箱13,15並びにケーシング18)の熱伝導率よりも熱伝導率が低い材料で構成してもよい。
具体的には、現行の軸受箱13,15及びケーシング18の材料がSS400(50)W/(m・K)の場合、軸受箱13,15及びケーシング18の材料としては、例えば、熱伝導率が16W/(m・K)とされたSUS材を用いることが可能である。
このような構成とされた回転機械では、外輪16Bの温度が低下しにくくなるので、第3の実施形態の回転機械50と同様な効果を得ることができる。
また、このような材料変更は、先に説明した第1ないし第5の実施形態の回転機械10,40,50,60,70に適用してもよい。
【0061】
また、例えば、軸受箱13,15の厚さ、及びケーシング18の厚さのうち、少なくとも一方の厚さを現行の厚さよりも厚くなるように構成してもよい。
このように、軸受箱13,15の厚さ、及びケーシング18の厚さのうち、少なくとも一方の厚さが現行の厚さよりも厚くなるように構成してもよい。
このような構成とすることで、外輪16Bの温度が低下することを抑制可能となるので、先に説明した第1の実施形態の回転機械10と同様な効果を得ることができる。
また、第1ないし第5の実施形態の回転機械10,40,50,60,70に、軸受箱13,15の厚さ、及びケーシング18の厚さのうち、少なくとも一方の厚さを現行の厚さよりも厚くなる構成を適用してもよい。
【0062】
以下、比較例及び実施例について説明する。本発明は、下記実施例に限定されない。
【0063】
(比較例)
比較例では、
図2に示す回転機械40から断熱材42を除いた構成とされた回転機械(以下、「比較例の回転機械」という)を準備した。複数の軸受16に潤滑油を噴射させた状態で、各軸受16(軸線O方向に配置された5つの軸受)を構成する内輪16A及び外輪16Bの温度を計測し、各軸受16を構成する内輪16Aと外輪16Bとの温度差の絶対値を求めた。この結果を
図8に示す。
【0064】
図8では、横軸に5つの軸受16の位置を示す番号(1〜5)を記載し、縦軸を内輪16Aと外輪16Bとの温度差の絶対値(℃)としている。
図8に示す「1」は、5つの軸受16のうち、回転体11の基端(基端部11Bの端)に配置された軸受16を示しており、「2」は「1」に隣接して配置された軸受16を示している。
図8に示す「5」は、5つの軸受16のうち、回転体11の先端に配置された軸受16を示している。
【0065】
図9に、比較例の回転機械を構成する5つの軸受16(
図9に示す「1〜5」は
図8の「1〜5」に対応する軸受16の番号)の内輪16Aの温度及び外輪16Bの温度を示す。
【0066】
(実施例)
実施例では、
図2に示す回転機械40を用いた。実施例では、断熱材42として、ニチアス社製のロックウール製断熱材を用いた。断熱材42の厚さは、1cmとした。
複数の軸受16に潤滑油を噴射させた状態で、各軸受16(軸線O方向に配置された5つの軸受)を構成する内輪16A及び外輪16Bの温度を計測し、各軸受16を構成する内輪16Aと外輪16Bとの温度差の絶対値を求めた。この結果を
図8に示す。
図10に、実施例の回転機械を構成する5つの軸受(1〜5)の内輪16Aの温度及び外輪16Bの温度を示す。
【0067】
(比較例及び実施例の結果のまとめ)
図8〜
図10を参照するに、実施例の内輪16Aと外輪16Bとの温度差の方が、比較例の内輪16Aと外輪16Bとの温度差よりも小さくなることが確認できた。
このことから、実施例の回転機械40を用いることで、簡便に軸受16の寿命の低下を抑制可能であることが確認できた。
【0068】
また、
図9及び
図10に示す結果から、断熱材42を用いた場合でも潤滑油の影響で、内輪及び外輪の温度が高くなることを抑制可能であることが確認できた。