(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0019】
まず、
図1を参照して、本発明の実施形態に係る電磁式減圧弁40,50を備える流体圧制御装置100の構成について説明する。
【0020】
流体圧制御装置100は、図示しないアクチュエータ等の作動を制御するものであり、例えば、油圧ショベルやフォークリフト等の作業機に用いられる油圧アクチュエータの伸縮を制御するものである。
【0021】
流体圧制御装置100は、作動流体としての作動油が貯留されるタンク21と、作動油を加圧して吐出する作動流体供給源としてのポンプ20と、外部に設けられるアクチュエータ等に対して給排される作動油の流れを制御する制御弁30と、ポンプ20と制御弁30とを接続する供給通路22と、制御弁30とタンク21とを接続する排出通路23と、供給通路22に設けられ所定の開弁圧で開弁する背圧弁24と、背圧弁24の上流側における供給通路22から分岐する入口通路としてのパイロット通路26,27と、パイロット通路26,27を通じて供給された作動油の圧力を減圧する比例ソレノイド式の電磁式減圧弁40,50と、を備える。
【0022】
ポンプ20は、図示しないエンジンや電動モータによって駆動され、タンク21内に貯留された作動油を所定の圧力に加圧し吐出する。ポンプ20から吐出された作動油は、供給通路22及び制御弁30を通じて外部に設けられるアクチュエータ等に供給される。
【0023】
制御弁30は、油圧パイロット式の方向切換弁であり、図示しない複数のポートと、これらのポート同士の連通を許容または遮断するスプール31と、スプール31の両端に臨む一対のパイロット圧室35,36と、スプール31の両端に設けられる一対のセンタリングスプリング33,34と、を有する。
【0024】
制御弁30のポートの数は特に限定されず、制御対象となるアクチュエータ等の構成に応じて適宜設定される。スプール31は、図示しない複数のランド部やランド部の間に形成される図示しない環状溝を有する円柱状部材である。
【0025】
一対のパイロット圧室35,36には、電磁式減圧弁40,50により減圧された作動油がそれぞれ導かれる。スプール31の位置は、パイロット圧室35,36に導かれた作動油の圧力であるパイロット圧に応じて切り換えられる。
【0026】
なお、制御弁30の形式は、3位置切換弁であってもよいし、2位置切換弁であってもよい。例えば、制御弁30は、3ポート3位置切換弁であって、アクチュエータ等に対する作動油の給排を遮断しアクチュエータ等の作動を停止させる中立位置と、アクチュエータ等に作動油を供給してアクチュエータ等を一方の方向へ作動させる供給位置と、アクチュエータ等から作動油を排出させてアクチュエータ等を他方の方向へ作動させる排出位置と、を有するものであってもよい。
【0027】
続いて、
図2を参照して、本発明の実施形態に係る電磁式減圧弁40,50について説明する。
図1に示される二つの電磁式減圧弁40,50は、構成が同じであるため、以下では、一方の電磁式減圧弁40について説明する。
【0028】
電磁式減圧弁40は、制御弁30のハウジング32に組み付けられており、ハウジング32に形成された摺動孔38に収容される弁体としてのスプール弁42と、供給される電流の大きさに応じた推力をスプール弁42に付与するソレノイド41と、スプール弁42をソレノイド41に向けて付勢するスプリング48と、を備える。
【0029】
摺動孔38は、底面38eを有する非貫通孔であり、ソレノイド41が組み付けられる開口端に設けられる第1摺動部38aと、第1摺動部38aに連続して形成され、第1摺動部38aよりも内径が大きい第1拡径部38bと、第1拡径部38bに連続して形成され、第1摺動部38aよりも内径が小さい第2摺動部38cと、第2摺動部38cに連続して形成され、第2摺動部38cよりも内径が大きく第2摺動部38cと底面38eとの間に設けられる第2拡径部38dと、を有する。
【0030】
第1摺動部38aには、パイロット通路26の一端が開口しており、第1拡径部38bには、摺動孔38内とパイロット圧室35内とを連通する出口通路としてのパイロット圧供給通路28の一端が開口している。
【0031】
スプール弁42は、円柱状部材であり、最もソレノイド41側に設けられ第1摺動部38aに摺接する閉塞ランド部43と、閉塞ランド部43から軸方向に所定の間隔をあけて設けられ第1摺動部38aに摺接する第1ランド部44と、第2摺動部38cに摺接する第2ランド部45と、閉塞ランド部43と第1ランド部44との間に形成され、パイロット通路26の開口端に対向して設けられる第1環状溝46と、第1ランド部44と第2ランド部45との間に形成される第2環状溝47と、第2ランド部45の外周面に軸方向に沿って溝状に形成されるノッチ45aと、を有する。
【0032】
また、スプール弁42の内部には、第2ランド部45側の第1端面42aと第2拡径部38dと底面38eとにより画定されるドレーン室としての第1空間39aと、閉塞ランド部43側の第2端面42bとソレノイド41と第1摺動部38aとにより画定される第2空間39bと、を連通する連通孔42cが設けられる。第2空間39bには、図示しない流路を通じて排出通路23に連通するドレーン通路29が開口している。つまり、第1空間39a及び第2空間39b内の圧力は、タンク21の圧力、すなわち大気圧にほぼ等しい圧力となっている。
【0033】
閉塞ランド部43は、パイロット通路26を通じて供給される高圧の作動油が第2空間39bに漏れることを防止しつつ、スプール弁42が変位する全範囲にわたってパイロット通路26を閉塞しないように設けられる。
【0034】
第1ランド部44は、スプール弁42が
図2に矢印Aで示される方向に変位すると、パイロット通路26とパイロット圧供給通路28との連通を許容し、スプール弁42が
図2に矢印Bで示される方向に変位すると、パイロット通路26とパイロット圧供給通路28との連通を遮断するように設けられる。パイロット通路26とパイロット圧供給通路28とを連通させる開口部の面積は、スプール弁42が矢印Aの方向に変位するにつれて大きくなる。
【0035】
ノッチ45aは、スプール弁42が矢印Bの方向に変位すると、パイロット圧供給通路28と第1空間39aとの連通を許容し、スプール弁42が矢印Aの方向に変位すると、パイロット圧供給通路28と第1空間39aとの連通を遮断するように設けられる。パイロット圧供給通路28と第1空間39aとを連通させる開口部の面積は、スプール弁42が矢印Bの方向に変位するにつれて大きくなる。
【0036】
また、ノッチ45aの軸方向長さは、スプール弁42が矢印Aの方向に変位し、第1ランド部44によりパイロット通路26とパイロット圧供給通路28との連通が許容される前にパイロット圧供給通路28と第1空間39aとの連通を遮断するように設定される。つまり、スプール弁42が変位する全範囲にわたって、パイロット通路26と第1空間39aとが連通することはない。
【0037】
ソレノイド41は、図示しないコイルと、スプール弁42に一端が当接しコイルに供給される電流の大きさに応じてスプール弁42に押し付けられるプランジャ41aと、を有する。つまり、ソレノイド41は、スプール弁42に対して、スプール弁42を矢印Aの方向に駆動させる推力を付与する。
【0038】
スプリング48は、摺動孔38の底面38eとスプール弁42の第1端面42aとの間に圧縮された状態で介装されており、ソレノイド41がスプール弁42に付与する推力とは反対の方向の推力をスプール弁42に対して付与している。なお、スプリング48は、ソレノイド41に電流が供給されていないときであっても、スプール弁42とプランジャ41aとが接した状態が維持されるように、スプール弁42をプランジャ41aに対して押し付ける程度の付勢力を有していればよい。
【0039】
また、スプール弁42には、上記の推力以外に、パイロット圧供給通路28を通じてパイロット圧室35に供給される作動油の圧力に応じた推力が、スプール弁42を矢印Bの方向に駆動させる推力として付与される。
【0040】
上記形状のスプール弁42では、第2ランド部45よりソレノイド41側に設けられる第1ランド部44の外径D1の方が第2ランド部45の外径D2よりも大きい。このため、第1ランド部44の断面積から第2ランド部45の断面積を差し引いた面積を有する受圧面42dに第1拡径部38b内の作動油の圧力が作用することによって、スプール弁42を矢印Bの方向に向けて押す推力が生じる。
【0041】
具体的には、第1拡径部38b内の作動油の圧力は、第1ランド部44の側面と第2ランド部45の側面とに作用し、第1ランド部44の側面に作用する圧力はスプール弁42を矢印Bの方向に向けて押す推力となり、第2ランド部45の側面に作用する圧力はスプール弁42を矢印Aの方向に向けて押す推力となる。つまり、第1ランド部44の外径D1と第2ランド部45の外径D2とが同じ大きさであり、第1拡径部38b内の作動油の圧力を受ける第1ランド部44の側面の面積と第2ランド部45の側面の面積の大きさが同じであれば、これらの推力は相殺されことになる。
【0042】
しかしながら、上述のように、第1ランド部44の外径D1の方が第2ランド部45の外径D2よりも大きく設定されており、第1ランド部44が第1拡径部38b内の作動油の圧力を受ける面積と、第2ランド部45が第1拡径部38b内の作動油の圧力を受ける面積との間には差がある。このため、第1拡径部38b内の作動油の圧力は、第1ランド部44の断面積から第2ランド部45の断面積を差し引いた面積を有する受圧面42dに作用することとなり、結果として、スプール弁42を矢印Bの方向に向けて押す推力が生じる。
【0043】
受圧面42dには、パイロット圧室35に供給される作動油の圧力、すなわち、減圧後の圧力が作用することから、スプール弁42をソレノイド41に向けて矢印Bの方向に押す推力の大きさは、減圧後の圧力の大きさに応じて変化する。そして、上述のように、受圧面42dの大きさは、第1ランド部44の断面積と第2ランド部45の断面積との差であり、スプール弁42の最大断面積である第1ランド部44の断面積よりも小さく設定されている。このため、減圧後の圧力がスプール弁42をソレノイド41に向けて矢印Bの方向に押す推力の大きさは、従来のようにスプール弁42の横断面全体を受圧面とした場合と比較し大幅に低減される。この結果、ソレノイド41がスプール弁42を矢印Aの方向に駆動させる推力を大幅に上昇させなくとも、減圧後の圧力の大きさを比較的広い範囲にわたって調整することが可能となる。
【0044】
次に、上記構成の電磁式減圧弁40による減圧作用について説明する。
【0045】
ソレノイド41に電流が供給されていないとき、スプール弁42は、
図2に示されるように、スプリング48によってソレノイド41に向けて押し付けられた状態となる。
【0046】
この状態では、第1ランド部44によって、パイロット通路26とパイロット圧供給通路28との連通が遮断され、第2ランド部45のノッチ45aによって、パイロット圧供給通路28と第1空間39aとの連通が許容される。つまり、パイロット圧供給通路28内の作動油の圧力は、タンク21の圧力にほぼ等しい圧力となる。
【0047】
この状態において、ソレノイド41に所定の電流が供給されると、スプール弁42は、ソレノイド41により付与される推力によって矢印Aの方向に変位する。スプール弁42が矢印Aの方向に変位すると、ノッチ45aが第2摺動部38cにより閉塞されることによってパイロット圧供給通路28と第1空間39aとの連通がまず遮断され、その後、第1ランド部44が第1拡径部38b内に進入することによってパイロット通路26とパイロット圧供給通路28との連通が許容される。
【0048】
パイロット通路26とパイロット圧供給通路28との連通が許容されると、第1拡径部38b内にはパイロット通路26を通じて高圧の作動油が流入し、第1拡径部38b内の圧力は徐々に上昇する。
【0049】
ここで、第1拡径部38b内の圧力は、スプール弁42の第1ランド部44の側面と第2ランド部45の側面、つまり、第1ランド部44の断面積から第2ランド部45の断面積を差し引いた面積を有する受圧面42dに作用し、ソレノイド41により付与された推力とは反対の方向にスプール弁42を押す推力となる。このため、第1拡径部38b内の圧力が上昇することによって、第1拡径部38b内の圧力による推力とスプリング48の付勢力との合力がソレノイド41の推力を上回ると、スプール弁42が変位する方向は、矢印Aの方向から矢印Bの方向に変化する。
【0050】
スプール弁42が矢印Bの方向に変位すると、第1ランド部44が第1摺動部38a内に進入することによってパイロット通路26とパイロット圧供給通路28との連通がまず遮断され、その後、ノッチ45aが開放されることによってパイロット圧供給通路28と第1空間39aとの連通が再び許容される状態となる。
【0051】
パイロット圧供給通路28と第1空間39aとの連通が許容されると、第1拡径部38b内の作動油が第1空間39aへと流出し、第1拡径部38b内の圧力は徐々に低下する。第1拡径部38b内の圧力が低下することによって、第1拡径部38b内の圧力による推力とスプリング48の付勢力との合力がソレノイド41の推力を下回ると、スプール弁42が変位する方向は、再び矢印Aの方向に変化する。
【0052】
このように、パイロット圧供給通路28に対して、パイロット通路26と第1空間39aとが交互に連通されることが繰り返されると、やがて、第1拡径部38b内の圧力による推力とスプリング48の付勢力との合力がソレノイド41の推力と釣り合い、第1拡径部38b内の圧力は、所定の圧力に減圧された状態となる。
【0053】
つまり、減圧後の圧力の大きさ、すなわち、第1拡径部38b内の圧力の大きさは、第1拡径部38b内の圧力による推力とスプリング48の付勢力との合力がソレノイド41の推力と釣り合うような大きさに変化する。したがって、減圧後の圧力は、ソレノイド41の推力の大きさ、すなわち、ソレノイド41に供給される電流の大きさを変更することによって調整することが可能であり、ソレノイド41に供給される電流を大きくすれば減圧後の圧力も大きくなり、ソレノイド41に供給される電流を小さくすれば減圧後の圧力も小さくなる。
【0054】
ここで、スプール弁42の第2ランド部45側の第1端面42aは、ドレーン通路29に連通する第1空間39aに臨んでいる。このため、減圧後の作動油の圧力が作用する受圧面42dの面積の大きさは、上述のように、第1ランド部44の断面積から第2ランド部45の断面積を差し引いた大きさに制限され、スプール弁42の横断面積である第1ランド部44の断面積よりも小さく設定されている。
【0055】
したがって、減圧後の作動油の圧力の大きさが同じであれば、減圧後の圧力が受圧面42dに作用することで生じる推力は、スプール弁42の横断面全体を受圧面とした場合に生じる推力よりも当然に小さくなる。換言すると、同等の減圧後の圧力を得るために、ソレノイド41がスプール弁42に付与する推力は、スプール弁42の横断面全体を受圧面とした場合よりもスプール弁42の横断面の一部を受圧面42dとした場合の方が小さくなる。
【0056】
つまり、減圧後の作動油の圧力が作用する第1ランド部44の断面積から第2ランド部45の断面積を差し引いた面積を有する受圧面42dの面積を小さくすることによって、ソレノイド41がスプール弁42に付与すべき推力が低減されるため、ソレノイド41を小型化することやソレノイド41に供給される電流を低減させることが可能になる。また、減圧後の圧力を比較的高い圧力とする場合であっても、ソレノイド41による推力を極端に大きくする必要がないため、ソレノイド41を大型化することなく、電磁式減圧弁40の圧力調整範囲を拡大させることが可能となる。
【0057】
なお、減圧後の作動油の圧力である第1拡径部38b内の圧力による推力に比べてスプリング48による推力が非常に小さい場合は、第1拡径部38b内の圧力による推力のみを考慮してソレノイド41の仕様を設定してもよい。
【0058】
上述の電磁式減圧弁40,50の作動は、外部に設けられるコントローラ60によって制御される。
【0059】
コントローラ60は、中央演算装置(CPU),読み出し専用メモリ(ROM),ランダムアクセスメモリ(RAM),及び入出力インタフェース(I/O インタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ60は、単一のマイクロコンピュータで構成されていてもよいし、複数のマイクロコンピュータで構成されていてもよい。
【0060】
コントローラ60には、図示しない操作レバー等を介して作業者による操作量や操作速度が入力される。コントローラ60は、入力された操作量等に応じた電流を電磁式減圧弁40,50のソレノイド41,51に供給し、パイロット圧室35,36に導かれる作動油の圧力を制御している。
【0061】
このように、コントローラ60は、パイロット圧室35,36に導かれる作動油の圧力の大きさを調整することによって、制御弁30の作動、すなわち、アクチュエータ等の作動を制御している。
【0062】
次に、
図1及び
図2を参照して、流体圧制御装置100の作動について説明する。
【0063】
ポンプ20が駆動されると、ポンプ20から吐出される作動油は、供給通路22に設けられる背圧弁24を開弁して制御弁30に導かれるとともに、パイロット通路26,27を通じて電磁式減圧弁40,50に導かれる。このとき、背圧弁24の上流の圧力は、背圧弁24の開弁圧に起因して、下流側の圧力よりも高くなる。このため、背圧弁24の上流において供給通路22から分岐するパイロット通路26,27には、より高い圧力の作動油が導かれる。
【0064】
この状態において、操作レバー等を介して作業者の操作に応じた操作信号がコントローラ60に入力されると、操作信号に基づいていずれか一方の電磁式減圧弁40,50のソレノイド41,51に電流が供給される。
【0065】
例えば、
図1中の右側のソレノイド41に電流が供給されると、パイロット通路26に供給された作動油の圧力が電磁式減圧弁40によって減圧され、減圧された作動油がパイロット圧供給通路28を通じてパイロット圧室35に導かれる。
【0066】
このとき、
図1中の左側の電磁式減圧弁50のソレノイド51には電流が供給されないため、パイロット圧室36内の圧力は、タンク21の圧力にほぼ等しい圧力となる。したがって、2つのパイロット圧室35,36の圧力差により、スプール31は、
図1中の左側へと移動する。このようにスプール31の位置が切り換わることによって、制御弁30によりポンプ20からアクチュエータ等への作動油の流れが制御され、結果として、アクチュエータ等の作動が制御される。
【0067】
一方、コントローラ60に操作信号が入力されない場合には、何れのソレノイド41,51にも電流が供給されない。このため、両パイロット圧室35,36内の圧力は、タンク21の圧力にほぼ等しい圧力となり、スプール31は、センタリングスプリング33,34の付勢力によって中立位置に保持される。
【0068】
このように、流体圧制御装置100では、作業者の操作等に応じてスプール31の位置が切り換えられ、制御弁30を通じてアクチュエータ等に対して給排される作動油の流れ、特にポンプ20からアクチュエータ等への作動油の流れが制御される。
【0069】
また、作業者の操作速度が速い場合や操作量が大きい場合は、アクチュエータ等を迅速に作動させる必要がある。このような操作信号がコントローラ60に入力された場合、例えば、
図1中の右側のソレノイド41には比較的大きな電流が供給される。ソレノイド41に供給される電流が大きくなると、上述のように、電磁式減圧弁40によって減圧される作動油の圧力、すなわち、パイロット圧室35に供給される圧力は高くなる。したがって、2つのパイロット圧室35,36の圧力差が比較的大きくなるため、スプール31の位置は迅速に切り換わり、結果として、アクチュエータ等を迅速に作動させることが可能となる。
【0070】
このように、何れか一方のソレノイド41,51に比較的大きな電流を供給することによって、2つのパイロット圧室35,36の圧力差を大きくし、スプール31の位置の切り換えを確実に行うことで、アクチュエータ等の操作性を向上させることができる。
【0071】
また、上記構成の流体圧制御装置100では、ソレノイド41,51に供給される電流を小さくし、パイロット圧室35,36に導かれる作動油の圧力を低くすることによって、スプール31の移動速度、すなわち、アクチュエータ等の作動を緩慢にさせることも可能である。
【0072】
また、
図1に示される流体圧制御装置100のように、パイロット圧供給源が別途設けられておらず、回路内の圧力がパイロット圧として用いられている場合、スプール31の位置を迅速に切り換えるには、できるだけ高圧の作動油をパイロット圧室35,36に導く必要がある。
【0073】
流体圧制御装置100に用いられる電磁式減圧弁40,50は、上述のように、ソレノイド41,51を大型化することなく、圧力調整範囲を拡大させることが可能であるため、パイロット圧供給源が別途設けられていない場合であっても、より高圧の作動油をパイロット圧室35,36に導くことが可能である。
【0074】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0075】
電磁式減圧弁40,50では、減圧後の作動油の圧力が作用する受圧面42dの面積の大きさがスプール弁42の横断面積である第1ランド部44の断面積よりも小さく設定される。このように、減圧後の作動油の圧力が作用する受圧面42dの面積が比較的小さく設定されることで、スプール弁42に作用する減圧後の圧力による推力は小さくなる。このため、減圧後の圧力を比較的高い圧力とする場合にソレノイド41がスプール弁42に付与すべき推力が低減される。したがって、ソレノイド41を大型化することなく、電磁式減圧弁40,50の圧力調整範囲を拡大させることができる。
【0076】
なお、上記実施形態では、背圧弁24は、チェック弁である。これに代えて、背圧弁は、所定の流路抵抗を付与する切換弁等その他のものであってもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、電磁式減圧弁40,50は、制御弁30のハウジング32に組み付けられている。これに代えて、電磁式減圧弁40,50は、ハウジング32とは別のハウジングに設けられていてもよい。また、摺動孔38は、底面38eを有する非貫通孔である。これに代えて、摺動孔38は、貫通孔の一端がプラグ等により閉塞されたものであってもよい。
【0078】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0079】
パイロット通路26から流入しパイロット圧供給通路28から流出する作動油の圧力を所定の圧力に減圧する電磁式減圧弁40,50は、パイロット通路26とパイロット圧供給通路28との連通を許容又は遮断するスプール弁42と、供給される電流の大きさに応じた推力をスプール弁42に付与するソレノイド41と、を備え、スプール弁42は、パイロット圧供給通路28の圧力が作用することによって、ソレノイド41による推力とは反対方向の推力を生じさせる受圧面42dを有し、受圧面42dの面積は、スプール弁42の横断面積よりも小さく設定される。
【0080】
この構成では、受圧面42dの面積が、スプール弁42の横断面積よりも小さく設定される。このように、減圧後の作動油の圧力が作用する受圧面42dの面積の大きさがスプール弁42の横断面積である第1ランド部44の断面積よりも小さく設定されると、スプール弁42に作用する減圧後の圧力による推力が小さくなる。このため、減圧後の圧力を比較的高い圧力とする場合にソレノイド41がスプール弁42に付与すべき推力が低減される。したがって、ソレノイド41を大型化することなく、電磁式減圧弁40,50の圧力調整範囲を拡大させることができる。また、減圧後の圧力による推力に対向してスプール弁42に付与されるソレノイド41の推力は圧力調整範囲全域にわたって低減されるため、ソレノイド41を小型化することが可能になるとともにソレノイド41の電力消費を抑制させることが可能となる。
【0081】
また、電磁式減圧弁40,50は、作動油が貯留されるタンク21に連通するドレーン通路29をさらに備え、スプール弁42は、パイロット通路26とパイロット圧供給通路28との連通を遮断可能な第1ランド部44と、パイロット圧供給通路28とドレーン通路29との連通を遮断可能な第2ランド部45と、をさらに有し、第1ランド部44は、第2ランド部45よりもソレノイド41側に設けられ、第1ランド部44の外径D1は、第2ランド部45の外径D2よりも大きく設定される。
【0082】
また、受圧面42dは、第1ランド部44の断面積から第2ランド部45の断面積を差し引いた大きさの面積を有する。
【0083】
これらの構成では、第2ランド部45よりもソレノイド41側に設けられる第1ランド部44の外径D1が、第2ランド部45の外径D2よりも大きく設定され、減圧後の作動油の圧力は、第1ランド部44の断面積から第2ランド部45の断面積を差し引いた面積を有する受圧面42dに作用する。このように、減圧後の作動油の圧力が作用する受圧面42dの面積の大きさがスプール弁42の横断面積である第1ランド部44の断面積よりも小さく設定されると、スプール弁42に作用する減圧後の圧力による推力が小さくなる。このため、減圧後の圧力を比較的高い圧力とする場合にソレノイド41がスプール弁42に付与すべき推力が低減される。したがって、ソレノイド41を大型化することなく、電磁式減圧弁40,50の圧力調整範囲を拡大させることができる。また、減圧後の圧力による推力に対向してスプール弁42に付与されるソレノイド41の推力は圧力調整範囲全域にわたって低減されるため、ソレノイド41を小型化することが可能になるとともにソレノイド41の電力消費を抑制させることが可能となる。
【0084】
また、第2ランド部45側のスプール弁42の第1端面42aは、ドレーン通路29に連通する第1空間39aに臨んでいる。
【0085】
この構成では、第2ランド部45側のスプール弁42の第1端面42aが、ドレーン通路29に連通する第1空間39aに臨んでおり、減圧後の作動油の圧力が作用可能な受圧面42dの面積は、第1ランド部44の断面積から第2ランド部45の断面積を差し引いた面積に制限される。このように、減圧後の作動油の圧力が作用する受圧面42dの面積の大きさがスプール弁42の横断面積である第1ランド部44の断面積よりも小さく設定されると、スプール弁42に作用する減圧後の圧力による推力が小さくなる。このため、減圧後の圧力を比較的高い圧力とする場合にソレノイド41がスプール弁42に付与すべき推力が低減される。したがって、ソレノイド41を大型化することなく、電磁式減圧弁40,50の圧力調整範囲を拡大させることができる。また、減圧後の圧力による推力に対向してスプール弁42に付与されるソレノイド41の推力は圧力調整範囲全域にわたって低減されるため、ソレノイド41を小型化することが可能になるとともにソレノイド41の電力消費を抑制させることが可能となる。
【0086】
また、流体圧制御装置100は、パイロット通路26に作動油を供給するとともに外部のアクチュエータ等へ作動油を供給するポンプ20と、電磁式減圧弁40,50により減圧された作動油がパイロット圧供給通路28を通じて導かれるパイロット圧室35,36を有し、パイロット圧室35,36に導かれる作動油の圧力の大きさに応じてポンプ20から外部のアクチュエータ等への作動油の流れを制御する制御弁30と、を備える。
【0087】
この構成では、外部のアクチュエータ等へ作動油を供給するポンプ20から供給された作動油の圧力がパイロット圧として用いられる。このようにパイロット圧供給源が別途設けられていない場合であっても、圧力調整範囲が広い電磁式減圧弁40,50を用いることによって比較的高圧の作動油をパイロット圧室35,36に導くことができる。このため、ポンプ20からアクチュエータ等への作動油の流れを制御する制御弁30が迅速に作動し、結果としてアクチュエータ等の操作性を向上させることができる。
【0088】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。