(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記優先制御部は、前記通信データの種類が相対的にデータ容量の多い通信データである場合、前記広域通信モジュールよりも前記狭域通信モジュールを優先する請求項1〜3のいずれか1項に記載の無線通信装置。
前記制御部は、利用開始前に搭乗者又は接続機器の少なくとも一方を認証する認証部と、前記認証部により認証された結果に基づいて前記狭域通信モジュール及び前記広域通信モジュールの利用を制限する制限部と、を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0014】
〔実施形態〕
実施形態に係る無線通信装置としての車載ルータ1について説明する。車載ルータ1は、複数の通信モジュール10を筐体70に収容し、各通信モジュール10により無線通信する装置である。車載ルータ1は、
図1に示すように、車両2に設けられる。車載ルータ1は、例えば、車両2のインストルメントパネル2aに設けられる。車載ルータ1は、
図2に示すように、狭域通信モジュール10Aと、広域通信モジュール10Bと、アンテナ部20と、接続部としてのEthernet(登録商標)モジュール30と、カメラI/F40と、マイク端子50と、制御部としてのCPU60と、図示しない記憶部と、筐体70とを備える。なお、以下の説明では、狭域通信モジュール10Aと広域通信モジュール10Bとを総称して各通信モジュール10という場合もある。
【0015】
狭域通信モジュール10Aは、狭域で無線通信可能な通信モジュールである。ここで、狭域とは、通信距離が1cm〜300m程度の範囲を含む領域である。狭域通信モジュール10Aは、それぞれが異なる通信規格である複数の通信モジュールを含んで構成される。狭域通信モジュール10Aは、例えば、第1狭域通信モジュールとしてのWi−Fiモジュール11、第2狭域通信モジュールとしてのWi−Fiモジュール12、各Bluetoothモジュール13、14、ITS(Intelligent Transport Systems)モジュール15、V2X(Vehicle to Everything)モジュール16、NFC(Near Field Communication)モジュール17を含んで構成される。なお、「Wi−Fi」及び「Bluetooth」は、登録商標である。各Wi−Fiモジュール11、12は、無線LAN(Local Area Network)の標準規格に準拠した無線通信器である。Wi−Fiモジュール11とWi−Fiモジュール12とは、同じ通信規格である。各Wi−Fiモジュール11、12は、通信中継用のアクセスポイント3(
図4参照)と通信する。ここで、アクセスポイント3は、通信サービス事業者等が運用する外部通信ネットワーク(インターネット)8へ接続するための中継拠点である。アクセスポイント3は、所定の範囲で各Wi−Fiモジュール11、12と通信可能である。各Wi−Fiモジュール11、12は、アンテナ部20及びCPU60に接続され、アクセスポイント3からアンテナ部20を介して受信した受信信号をCPU60に出力する。また、各Wi−Fiモジュール11、12は、CPU60から出力される送信信号をアンテナ部20を介してアクセスポイント3に送信する。
【0016】
各Bluetoothモジュール13、14は、携帯端末やセンサーS(
図6参照)等と短距離で無線通信する無線通信器である。各Bluetoothモジュール13、14は、アンテナ部20及びCPU60に接続され、例えば、センサーSからアンテナ部20を介して受信した受信信号をCPU60に出力する。また、各Bluetoothモジュール13、14は、CPU60から出力された送信信号をアンテナ部20を介して携帯端末に送信する。
【0017】
ITSモジュール15は、例えば、道路沿い等に設置された路側装置9(
図6参照)と通信を行い、車両2への課金、自動運転の支援、安全運転の支援、交通管理の支援等を行う無線通信器である。ITSモジュール15は、ETC(Electronic Toll Collection)、DSRC(Dedicated Short Range Communications)等を含んで構成される。ITSモジュール15は、アンテナ部20及びCPU60に接続され、路側装置9からアンテナ部20を介して受信した受信信号をCPU60に出力する。また、ITSモジュール15は、CPU60から出力された送信信号をアンテナ部20を介して路側装置9に送信する。
【0018】
V2Xモジュール16は、他の車両との通信や、道路沿い等に設置された路側装置9との通信を行う無線通信器である。V2Xモジュール16は、アンテナ部20及びCPU60に接続され、例えば、他の車両等からアンテナ部20を介して受信した受信信号をCPU60に出力する。また、V2Xモジュール16は、CPU60から出力された送信信号をアンテナ部20を介して他の車両等に送信する。
【0019】
NFCモジュール17は、近距離で無線通信を行う無線通信器である。NFCモジュール17は、アンテナ部20及びCPU60に接続され、携帯端末等からアンテナ部20を介して受信した受信信号をCPU60に出力する。また、NFCモジュール17は、CPU60から出力された送信信号をアンテナ部20を介して携帯端末等に送信する。
【0020】
広域通信モジュール10Bは、狭域通信モジュール10Aよりも広域で無線通信可能な通信モジュールである。ここで、広域とは、通信距離が3km〜30km程度の範囲を含む領域である。広域通信モジュール10Bは、それぞれが異なる通信規格である複数の通信モジュールを含んで構成される。広域通信モジュール10Bは、例えば、携帯LTE(Long Term Evolution)モジュール18と、GPS(Global Positioning System)モジュール19とを含んで構成される。
【0021】
携帯LTEモジュール18は、3GPP(3rd Generation Partnership Project)により仕様が策定された無線通信規格に準拠した無線通信器である。携帯LTEモジュール18は、通信中継用の基地局4(
図4参照)と通信する。ここで、基地局4は、通信サービス事業者等が運用する外部通信ネットワーク8へ接続するための中継拠点である。基地局4は、各Wi−Fiモジュール11、12のアクセスポイント3よりも広い領域R3で携帯LTEモジュール18と通信する。つまり、基地局4は、個々の基地局4によりカバーできる範囲が個々のアクセスポイント3よりも広い。これにより、基地局4は、アクセスポイント3よりも広い領域R3の通信ネットワークを構築することができる。携帯LTEモジュール18は、アンテナ部20及びCPU60に接続され、基地局4からアンテナ部20を介して受信した受信信号をCPU60に出力する。また、携帯LTEモジュール18は、CPU60から出力される送信信号をアンテナ部20を介して基地局4に送信する。
【0022】
GPSモジュール19は、GPS衛星から送信される位置情報等を含む受信信号に基づいて現在位置を求める無線通信機器である。GPSモジュール19は、アンテナ部20及びCPU60に接続され、GPS衛星からアンテナ部20を介して受信した受信信号に基づく現在位置の情報をCPU60に出力する。
【0023】
アンテナ部20は、電波を送受信するものである。アンテナ部20は、複数のアンテナ21〜28を含んで構成される。各アンテナ21〜28は、例えば、線状アンテナや平面アンテナ等により形成される。各アンテナ21〜28は、線状アンテナの場合、例えば、筐体70の外側に設けられ、筐体70のアンテナ接続ポート及び通信線を介して各通信モジュール10に接続される。また、各アンテナ21〜28は、平面アンテナの場合、例えば、筐体70の内側に設けられ、通信線を介して各通信モジュール10に接続される。平面アンテナは、基板に設けてもよいし筐体70に印刷等により設けてもよい。平面アンテナは、筐体70の内側に設けられることで外部からの衝撃を受け難くなり高い信頼性を確保できる。また、平面アンテナは、筐体70の低背化を促進することができ、筐体70の搭載性の向上に貢献することができる。アンテナ部20は、例えば、Wi−Fiモジュール11用のアンテナ21、Wi−Fiモジュール12及びBluetoothモジュール13用のアンテナ22、Bluetoothモジュール14用のアンテナ23、ITSモジュール15用のアンテナ24、V2Xモジュール16用のアンテナ25、NFCモジュール17用のアンテナ26、携帯LTEモジュール18用のアンテナ27、及び、GPSモジュール19用のアンテナ28を含んで構成される。
【0024】
アンテナ21は、Wi−Fiモジュール11に接続され、当該Wi−Fiモジュール11から出力された送信信号をアクセスポイント3に送信する。また、アンテナ21は、アクセスポイント3から送信された信号を受信してWi−Fiモジュール11に出力する。アンテナ22は、Wi−Fiモジュール12に接続され、当該Wi−Fiモジュール12から出力された送信信号をアクセスポイント3に送信する。また、アンテナ22は、アクセスポイント3から送信された信号を受信してWi−Fiモジュール12に出力する。アンテナ22は、さらに、Bluetoothモジュール13に接続され、当該Bluetoothモジュール13から出力された送信信号を携帯端末等に送信する。また、アンテナ22は、センサーS等から送信された信号を受信してBluetoothモジュール13に出力する。アンテナ23は、Bluetoothモジュール14に接続され、当該Bluetoothモジュール14から出力された送信信号を携帯端末等に送信する。また、アンテナ23は、センサーS等から送信された信号を受信してBluetoothモジュール14に出力する。
【0025】
アンテナ24は、ITSモジュール15に接続され、ITSモジュール15から出力された送信信号を路側装置9に送信する。また、アンテナ24は、路側装置9から送信された信号を受信してITSモジュール15に出力する。アンテナ25は、V2Xモジュール16に接続され、V2Xモジュール16から出力された送信信号を他の車両等に送信する。また、アンテナ25は、他の車両等から送信された信号を受信してV2Xモジュール16に出力する。アンテナ26は、NFCモジュール17に接続され、NFCモジュール17から出力された送信信号を携帯端末等に送信する。また、アンテナ26は、携帯端末等から送信された信号を受信してNFCモジュール17に出力する。アンテナ27は、携帯LTEモジュール18に接続され、携帯LTEモジュール18から出力された送信信号を基地局4に送信する。また、アンテナ27は、基地局4から送信された信号を受信して携帯LTEモジュール18に出力する。アンテナ28は、GPSモジュール19に接続され、GPS衛星から送信された信号を受信してGPSモジュール19に出力する。
【0026】
Ethernetモジュール30は、IEEE−SA(Standards Association)によるLANの通信規格に準拠した機器である。Ethernetモジュール30は、例えば、有線により車両2内の通信ネットワークである車内LAN2b及びCPU60に接続される。Ethernetモジュール30は、車内LAN2bから出力された信号をCPU60に出力する。また、Ethernetモジュール30は、CPU60から出力された信号を車内LAN2bに出力する。
【0027】
カメラI/F40は、カメラ5が接続されるインターフェース部である。カメラ5は、画像を撮像する機器である。カメラ5は、例えば、搭乗者の顔を撮像した撮像信号をカメラI/F40に出力する。カメラI/F40は、CPU60に接続され、カメラ5から出力された撮像信号をCPU60に出力する。
【0028】
マイク端子50は、マイク6が接続される端子である。マイク6は、音を電気信号に変換する機器である。マイク6は、例えば、搭乗者の声を電気信号に変換した音声信号をマイク端子50に出力する。マイク端子50は、CPU60に接続され、マイク6から出力された音声信号をCPU60に出力する。
【0029】
CPU60は、各通信モジュール10を制御するものである。CPU60は、各通信モジュール10に接続され、当該各通信モジュール10と信号の送受信を行う。CPU60は、例えば、
図3に示すように、受信処理部60aと、信号処理部60bと、送信処理部60hとを有する。受信処理部60aは、Ethernetモジュール30及び各通信モジュール10から出力された信号を受信する部分である。受信処理部60aは、受信した信号を信号処理部60bに出力する。信号処理部60bは、信号を処理する部分である。信号処理部60bは、受信処理部60aから出力された信号を処理する。信号処理部60bは、例えば、プロトコル変換部60cと、切替部60dと、優先制御部60eと、認証部としてのセキュリティ認証部60fと、制限部60gとを有する。プロトコル変換部60cは、信号を所定の通信プロトコルに変換する部分である。プロトコル変換部60cは、受信処理部60aから出力された信号を所定の通信プロトコルに変換し、変換した信号を送信処理部60hに出力する。切替部60dは、Wi−Fiモジュール11とWi−Fiモジュール12とを切り替える部分である。切替部60dは、アクセスポイント3に応じてWi−Fiモジュール11とWi−Fiモジュール12とを切り替える。優先制御部60eは、予め設定された通信の優先順位に基づいて各通信モジュール10の通信経路を制御する部分である。優先制御部60eは、受信処理部60aから出力された信号を通信の優先順位に基づいて通信経路を決定し、当該通信経路を示す情報を送信処理部60hに出力する。セキュリティ認証部60fは、セキュリティの確保を目的として認証を行う部分である。セキュリティ認証部60fは、車載ルータ1の利用開始前に搭乗者又は接続機器としての機器7a〜7d(
図6参照)の少なくとも一方を認証する。制限部60gは、各通信モジュール10の利用を制限する部分である。制限部60gは、セキュリティ認証部60fにより認証された結果に基づいて、各通信モジュール10の利用を制限する。送信処理部60hは、信号処理部60bにより処理された信号の送信処理を行う部分である。送信処理部60hは、信号処理部60bにより処理された信号を各通信モジュール10又はEthernetモジュール30に出力する。
【0030】
記憶部は、通信用のデータや通信用の各種プログラム等を記憶するものである。記憶部は、例えば、各Wi−Fiモジュール11、12がアクセス可能なアクセスポイント3のリストを保存している。
【0031】
筐体70は、狭域通信モジュール10A、広域通信モジュール10B、Ethernetモジュール30、カメラI/F40、マイク端子50、及び、CPU60が組み付けられるものである。筐体70は、例えば、合成樹脂により形成され、内部空間部を有している。筐体70は、この内部空間部に狭域通信モジュール10A、広域通信モジュール10B、及び、CPU60を収容する。つまり、筐体70は、各Wi−Fiモジュール11、12、各Bluetoothモジュール13、14、ITSモジュール15、V2Xモジュール16、NFCモジュール17、携帯LTEモジュール18、GPSモジュール19、及び、CPU60を内部空間部に収容する。そして、筐体70は、カメラI/F40がカメラ5を接続可能に組み付けられ、マイク端子50がマイク6を接続可能に組み付けられる。そして、筐体70は、Ethernetモジュール30が車内LAN2bと通信可能に組み付けられる。筐体70は、例えば、車内LAN2bと接続される接続ポートを有する。筐体70は、Ethernetモジュール30を内部空間部に収容し、Ethernetモジュール30と接続ポートとを通信可能に接続する。そして、筐体70は、この接続ポートと車内LAN2bとが通信線を介して接続されることで、Ethernetモジュール30と車内LAN2bとが通信可能に接続される。
【0032】
次に、
図4及び
図5を参照して、車載ルータ1の通信例について説明する。この例では、2つの各Wi−Fiモジュール11、12により通信する例について説明する。車載ルータ1は、IG(イグニッション)電源又はACC(アクセサリー)電源がオンされ、当該車載ルータ1が起動されている。車両2は、例えば、
図4に示すように、Wi−Fiモジュール11が第1アクセスポイント3aと送受信可能な領域R1に属している。このとき、車載ルータ1の切替部60dは、Wi−Fiモジュール11により第1アクセスポイント3aに接続し信号(動画等の実データ)を受信している(ステップS1)。次に、切替部60dは、Wi−Fiモジュール12により、第1アクセスポイント3aに隣接する第2アクセスポイント3bとの接続準備を行う(ステップS2)。切替部60dは、Wi−Fiモジュール12により、通信可能なアクセスポイント3を探索する。例えば、Wi−Fiモジュール12は、記憶部に保存されたアクセスポイント3のリストに含まれるアクセスポイント3に接続する。Wi−Fiモジュール12は、予め定められたアクセスポイント3のリストに含まれる安全性が担保されたアクセスポイント3に接続するのでセキュリティを向上できる。Wi−Fiモジュール12は、例えば、アクセスポイント3のリストに含まれる第2アクセスポイント3bと通信可能な領域R2に入ると、当該第2アクセスポイント3bから定期的に送信される信号(ビーコン)を受信する。Wi−Fiモジュール12は、ビーコンを受信後、ネットワーク識別(ESS−ID)が適切であるか否かを第2アクセスポイント3bに確認する。Wi−Fiモジュール12は、ネットワーク識別の確認がとれると、第2アクセスポイント3bに接続するための認証を第2アクセスポイント3bに申請する。第2アクセスポイント3bは、所定の認証方式によりWi−Fiモジュール12の接続の認証を行う。Wi−Fiモジュール12は、第2アクセスポイント3bへの接続の認証がとれると、第2アクセスポイント3bに接続要求を行う(アソシエーション要求)。Wi−Fiモジュール12は、第2アクセスポイント3bによりアソシエーション要求が許可されると、第2アクセスポイント3bとの接続が完了する(ステップS3)。
【0033】
次に、切替部60dは、Wi−Fiモジュール11の受信状態とWi−Fiモジュール12の受信状態とを比較する。切替部60dは、Wi−Fiモジュール12の受信状態がWi−Fiモジュール11の受信状態よりもよい場合(ステップS4;Yes)、Wi−Fiモジュール11からWi−Fiモジュール12に切り替え、当該Wi−Fiモジュール12により信号(動画等の実データ)を受信する(ステップS5)。次に、切替部60dは、Wi−Fiモジュール11により次のアクセスポイント3に接続する準備を行う(ステップS6)。以後、切替部60dは、IG電源又はACC電源がオフされるまで、同様の処理を繰り返しながら各Wi−Fiモジュール11、12を用いて信号(動画等の実データ)をシームレスに受信する。なお、上述のステップS4において、切替部60dは、Wi−Fiモジュール12の受信状態がWi−Fiモジュール11の受信状態よりもよくない場合(ステップS4;No)、Wi−Fiモジュール11の受信状態とWi−Fiモジュール12の受信状態との判定を繰り返す。
【0034】
次に、車載ルータ1の優先順に基づく通信経路の切替例について説明する。車載ルータ1の優先制御部60eは、予め設定された通信の優先順位に基づいて狭域通信モジュール10A及び広域通信モジュール10Bを制御する。優先制御部60eは、例えば、ITSモジュール15、各Wi−Fiモジュール11、12、携帯LTEモジュール18、各Bluetoothモジュール13、14の順番に優先順位を高く予め設定している。ITSモジュール15は、自動運転等に利用されるので優先順位を最も高くする。各Wi−Fiモジュール11、12は、インターネットに接続する通信費を抑えるために可能な限り利用することが好ましいので優先順位を2番とする。携帯LTEモジュール18は、各Wi−Fiモジュール11、12によりインターネットに接続ができない場合に利用するので優先順位を3番とする。各Bluetoothモジュール13、14は、携帯端末やセンサーS等と一時的に接続が途切れても支障がほとんどない為、優先順位を4番とする。なお、V2Xモジュール16及びGPSモジュール19は、例えば、ITSモジュール15と同等の優先順位とし、NFCモジュール17は、例えば、各Bluetoothモジュール13、14と同等の優先順位とする。なお、上述の優先順位は、変更することも可能である。例えば、優先順位は、運転者により順番を入れ替えてもよい。また、優先順位は、携帯LTEモジュール18による通信を行わないようにし、各Wi−Fiモジュール11、12により通信を行うことに制限してもよい。
【0035】
優先制御部60eは、優先順位に基づいて通信を行う。ここで、車両2には、例えば、
図6に示すように、機器7a〜7dが搭載されている。優先制御部60eは、例えば、機器7bによりWi−Fiモジュール11を介して通信しているときに、機器7aからITSモジュール15を介して路側装置9に送信信号を送信する要求があった場合、優先順位に基づいてWi−Fiモジュール11による通信よりもITSモジュール15による送信処理を優先する。例えば、優先制御部60eは、Wi−Fiモジュール11から送信されるWi−FiデータのパケットよりもITSモジュール15から送信されるITSデータのパケットを優先して送信する。このように、優先制御部60eは、データの優先順位に基づいて各通信モジュール10を制御する。
【0036】
また、優先制御部60eは、例えば、機器7cによりBluetoothモジュール13を介して例えばセンサーS(
図6参照)と通信しているときに、機器7aからITSモジュール15を介して信号を受信する場合、優先順位に基づいてBluetoothモジュール13による通信よりもITSモジュール15による受信処理を優先する。例えば、優先制御部60eは、Bluetoothモジュール13から出力されるBluetoothデータのパケットよりもITSモジュール15から出力されるITSデータのパケットを優先して受信する。
【0037】
また、優先制御部60eは、例えば、機器7bにより各Wi−Fiモジュール11、12を介して通信できなくなった場合、優先順位に基づいて各Wi−Fiモジュール11、12から携帯LTEモジュール18に切り替える。これにより、優先制御部60eは、Wi−Fi接続できなくなった場合でも、機器7bにより携帯LTEモジュール18を介してシームレスに通信できる。そして、優先制御部60eは、例えば、機器7bにより各Wi−Fiモジュール11、12を介して通信できるようになった場合、優先順位に基づいて携帯LTEモジュール18から各Wi−Fiモジュール11、12に切り替える。これにより、優先制御部60eは、通信費を抑えることができる。このように、優先制御部60eは、各通信モジュール10の優先順位に基づいて各通信モジュール10を制御する。
【0038】
また、優先制御部60eは、緊急事態が発生したときの優先順位を別途設けてもよい。例えば、優先制御部60eは、急ブレーキや事故発生時等の緊急事態用の優先順位として、携帯LTEモジュール18、ITSモジュール15、各Wi−Fiモジュール11、12、各Bluetoothモジュール13、14の順番に優先順位を高く予め設定している。優先制御部60eは、携帯LTEモジュール18の優先順位を最も高くすることによって、緊急通報をサービスセンターに迅速に行うことができるようになる。例えば、優先制御部60eは、機器7dから緊急通報要求が出力された場合、緊急事態用の優先順位に基づいて携帯LTEモジュール18による通信を最も優先する。例えば、優先制御部60eは、ITSモジュール15から送信されるITSデータのパケットよりも携帯LTEモジュール18から送信される携帯LTEデータのパケットを優先して送信する。
【0039】
なお、優先制御部60eは、データの種類に応じて各通信モジュール10を制御してもよい。この場合、優先制御部60eは、例えば、データの種類が相対的に通信データ容量の多い動画データである場合、携帯LTEモジュール18よりも各Wi−Fiモジュール11、12を優先して使用するようにしてもよい。これにより、優先制御部60eは、通信費を抑制することができる。また、優先制御部60eは、データの種類がサービスセンターに対して搭乗者の認証を行う認証データである場合、通信エリアの関係で各Wi−Fiモジュール11、12よりも携帯LTEモジュール18を優先して使用するようにしてもよい。これにより、優先制御部60eは、通信エリアのより広い携帯LTEモジュール18を優先して使用することで認証処理を確実に実施することができる。
【0040】
次に、車載ルータ1のセキュリティの設定について説明する。車載ルータ1のセキュリティ認証部60fは、車載ルータ1の利用開始前に搭乗者又は機器7a〜7dの少なくとも一方を認証する。車載ルータ1は、例えば、予め、当該車載ルータ1を介して通信可能な機器7a〜7dの識別情報が記憶部に保存されている。セキュリティ認証部60fは、記憶部に保存された識別情報と接続対象の機器の識別情報とを比較することで認証を行う。セキュリティ認証部60fは、記憶部に保存された識別情報と同じ識別情報の機器が接続された場合には認証が適切とし、記憶部に保存された識別情報と異なる識別情報の機器が接続された場合には認証が不適切とする。制限部60gは、セキュリティ認証部60fにより認証された結果に基づいて、各通信モジュール10の利用を制限する。制限部60gは、認証が適切である場合、通信を制限せずに動作する。制限部60gは、認証が不適切である場合、例えば、サービスセンターや他の機器7a〜7dに通知し、さらに、各機器7a〜7d間の通信を制限することでセキュリティを確保する。
【0041】
また、車載ルータ1は、顔認証により接続を制限してもよい。この場合、車載ルータ1は、予め記憶部に当該車載ルータ1を利用可能な搭乗者の顔画像が保存されている。そして、車載ルータ1のセキュリティ認証部60fは、車両2にこれから搭乗する搭乗者の顔をカメラ5により撮像し、撮像した搭乗者の顔画像と記憶部に保存された顔画像とを比較することで認証を行う。セキュリティ認証部60fは、撮像した搭乗者の顔画像と記憶部に保存された顔画像とが一致する場合には認証が適切とし、撮像した搭乗者の顔画像と記憶部に保存された顔画像とが一致しない場合には認証が不適切とする。制限部60gは、認証が適切である場合には通信を制限せず、認証が不適切である場合には通信を制限する。制限部60gは、通信を制限する場合、例えば、インターネットへの接続を制限したり、車内の機器7a〜7dのソフトウェアのアップデートを制限したりする。これにより、制限部60gは、顔画像の認証が確認されない場合に、運転に支障をきたすデータの通信を制限することでセキュリティを向上できる。なお、制限部60gは、撮像した搭乗者の顔画像と記憶部に保存された顔画像とが一致しない場合、サービスセンターにその旨を通知するようにしてもよい。
【0042】
また、車載ルータ1は、携帯端末により接続を制限してもよい。この場合、車載ルータ1は、予め記憶部に当該車載ルータ1を利用可能な搭乗者の携帯端末の識別情報が保存されている。そして、車載ルータ1のセキュリティ認証部60fは、車両2にこれから搭乗する搭乗者の携帯端末の識別情報をNFCモジュール17を介して取得し、取得した識別番号と記憶部に保存された識別番号とを比較することで認証を行う。セキュリティ認証部60fは、取得した識別番号と記憶部に保存された識別番号とが一致する場合には認証が適切とし、取得した識別番号と記憶部に保存された識別番号とが一致しない場合には認証が不適切とする。制限部60gは、認証が適切である場合には通信を制限せず、認証が不適切である場合には通信を制限する。制限部60gは、通信を制限する場合、例えば、インターネットへの接続を制限したり、車内の機器7a〜7dのソフトウェアのアップデートを制限したりする。なお、制限部60gは、取得した識別番号と記憶部に保存された識別番号とが一致しない場合、サービスセンターにその旨を通知するようにしてもよい。また、セキュリティ認証部60f及び制限部60gは、クラウドを介して搭乗者が車両2に搭乗する前に認証処理及び制限解除を実施するようにしてもよい。これにより、車載ルータ1は、搭乗者が乗車後に直ぐ通信を行うことができる。
【0043】
以上のように、実施形態に係る車載ルータ1は、狭域通信モジュール10Aと、広域通信モジュール10Bと、Ethernetモジュール30と、CPU60と、筐体70とを備える。狭域通信モジュール10Aは、無線通信可能な機器である。広域通信モジュール10Bは、狭域通信モジュール10Aよりも広域で無線通信可能な機器である。Ethernetモジュール30は、車両2内の車内LAN2bに通信可能に接続される。CPU60は、狭域通信モジュール10A及び広域通信モジュール10Bを制御し、且つ、Ethernetモジュール30を介して車内LAN2bと通信する。筐体70は、狭域通信モジュール10A、広域通信モジュール10B、Ethernetモジュール30、及び、CPU60が組み付けられ、車両2に設けられる。
【0044】
この構成により、車載ルータ1は、狭域通信モジュール10A及び広域通信モジュール10Bを集約することができ、各通信モジュール10を車両2の限られたスペース内で搭載することができ、搭載性を向上できる。また、車載ルータ1は、例えば、各通信モジュール10とCPU60とを接続する配線を削減することができ、軽量化することができる。車載ルータ1は、配線を削減できるので、通信データの改竄のリスクを抑えることができる。車載ルータ1は、CPU60により狭域通信モジュール10A及び広域通信モジュール10Bを集中管理することができ、各通信モジュール10の通信経路を適切に確保することができ通信品質の低下を抑制できる。車載ルータ1は、集中管理により各通信モジュール10の制御を簡素化することができる。また、車載ルータ1は、集中管理により狭域通信モジュール10A及び広域通信モジュール10Bのセキュリティを強化することができる。このように、車載ルータ1は、各通信モジュール10を適正に制御することができる。
【0045】
上記車載ルータ1において、狭域通信モジュール10Aは、それぞれが異なる通信規格である複数の通信モジュールを含んで構成される。例えば、狭域通信モジュール10Aは、Wi−Fiモジュール11、Bluetoothモジュール13、ITSモジュール15、V2Xモジュール16、及び、NFCモジュール17を含んで構成される。広域通信モジュール10Bは、それぞれが異なる通信規格である複数の通信モジュールを含んで構成される。例えば、広域通信モジュール10Bは、携帯LTEモジュール18及びGPSモジュール19を含んで構成される。このように、車載ルータ1は、通信対象の増加に伴い各通信モジュール10が増加した場合でも、各通信モジュール10を車両2の限られたスペース内で搭載することができ、搭載性を向上できる。
【0046】
上記車載ルータ1において、狭域通信モジュール10Aは、Wi−Fiモジュール11と、Wi−Fiモジュール11と同じ通信規格のWi−Fiモジュール12とを含んで構成される。CPU60は、Wi−Fiモジュール11又はWi−Fiモジュール12の一方が、通信中継用の第1アクセスポイント3aに通信可能に接続し、Wi−Fiモジュール11又はWi−Fiモジュール12の他方が、第1アクセスポイント3aに隣接する通信中継用の第2アクセスポイント3bとの接続を準備するように制御する切替部60dを有する。この構成により、車載ルータ1は、アクセスポイント3を跨ぐ場合に、次のアクセスポイント3の探索処理や認証処理を事前に済ませておくことができる。これにより、車載ルータ1は、アクセスポイント3を跨ぐ場合でも、各Wi−Fiモジュール11、12により通信が途切れることなくシームレスに通信することができる。車載ルータ1は、携帯LTEモジュール18により通信する場合と比較して通信費を抑制することができる。車載ルータ1は、各Wi−Fiモジュール11、12と携帯LTEモジュール18とを適宜切り替えて通信することにより、携帯LTEモジュール18で通信できないエリアまでカバーすることができ通信エリアを広くすることができる。
【0047】
上記車載ルータ1において、CPU60は、予め設定された通信の優先順位に基づいて狭域通信モジュール10A及び広域通信モジュール10Bを制御する優先制御部60eを有する。この構成により、車載ルータ1は、例えば、優先度の高いデータ(例えばITSデータ)を優先して送信することができ、車両2の安全性を高めることができる。車載ルータ1は、例えば、優先度の高い通信モジュール(例えば各Wi−Fiモジュール11、12)を優先して使用することにより通信費を抑制することができる。
【0048】
上記車載ルータ1において、CPU60は、セキュリティ認証部60fと、制限部60gとを有する。セキュリティ認証部60fは、利用開始前に搭乗者又は機器7a〜7dの少なくとも一方を認証する。制限部60gは、セキュリティ認証部60fにより認証された結果に基づいて狭域通信モジュール10A及び広域通信モジュール10Bの利用を制限する。この構成により、車載ルータ1は、1回の認証で複数の通信モジュール10の利用を制限することができ、認証処理を簡素化することができる。車載ルータ1は、認証処理を行うことで車載ルータ1のセキュリティを向上できる。
【0049】
〔変形例〕
次に、実施形態の変形例について説明する。狭域通信モジュール10Aは、各Wi−Fiモジュール11、12や各Bluetoothモジュール13、14等の複数の通信モジュールを含んで構成される例について説明したが、少なくとも1つの通信モジュールを含んでいればよい。同様に、広域通信モジュール10Bは、携帯LTEモジュール18と及びGPSモジュール19の複数の通信モジュールを含んで構成される例について説明したが、少なくとも1つの通信モジュールを含んでいればよい。
【0050】
アクセスポイント3のリストは、車載ルータ1の記憶部に保存される例について説明したが、これに限定されない。アクセスポイント3のリストは、例えば、車載ルータ1がアクセス可能なクラウドに保存してもよい。この場合、車載ルータ1は、GPSモジュール19により求められた現在位置の情報に基づいて、クラウドから通信可能なアクセスポイント3のリストを取得してもよい。車載ルータ1は、取得したリストの中からアクセスポイント3を選択して接続することで接続処理を迅速に行うことができる。また、車載ルータ1は、過去に接続したアクセスポイント3を位置情報と共に記憶部に保存してもよい。この場合、車載ルータ1は、再度同じ場所を通過するときに、過去に接続したアクセスポイント3のリストの中からアクセスポイント3を選択して接続することで接続処理を迅速に行うことができる。また、車載ルータ1は、NFCモジュール17を介して記憶部のアクセスポイント3のリストを更新してもよい。
【0051】
車載ルータ1は、ラジオやテレビ等の放送電波を受信するための放送アンテナ、当該放送アンテナにより受信された放送電波を選局し信号変換するチューナー、及び、車内の複数の機器7a〜7dに接続するためのスイッチングハブを筐体70に組み付けるようにしてもよい。この場合、車載ルータ1は、放送アンテナとチューナーとを接続する同軸線を相対的に短くすることができる。車載ルータ1は、当該同軸線を相対的に短くすることで、当該同軸線で受けるノイズの影響を抑制することができ、通信品質の低減を抑制できる。また、車載ルータ1は、放送アンテナによる放送電波の受信とチューナーによる放送電波の信号変換とを同一の筐体70内で行うことにより、同軸線で減衰する信号を増幅するための増幅器を不要とすることができる。なお、放送アンテナは、筐体70の外側又は内側に組み付けられる。
【0052】
車載ルータ1は、Ethernetモジュール30を介して車内LAN2bに接続される例について説明したが、これに限定されず他の通信プロトコルを有した接続モジュールでもよい。例えば、車載ルータ1は、CAN(Controller Area Network)モジュール、FlexRayモジュール、MOST(Media Oriented Systems Transport)モジュール等を介して車内LAN2bに接続されてもよい。なお、「FlexRay」及び「MOST」は、登録商標である。また、車載ルータ1は、有線を介して車内LAN2bに接続される例について説明したが、無線により車内LAN2bに接続されてもよい。
【0053】
車載ルータ1は、上述した各通信モジュール10及びEthernetモジュール30等以外のモジュールを筐体70に組み付けてもよい。例えば、車載ルータ1は、USB(Universal Serial Bus)モジュール、HDMI(High・Definition Multimedia Interface)モジュール、GVIF(Gigabit Video InterFace)モジュール、APIX(Automotive Pixel Link)モジュール、TransferJetモジュール、WiGig(Wireless Gigabit)モジュール、RFID(Radio Frequency Identifier)モジュール、衛星電話モジュール、音声出力部等を筐体70に組み付けてもよい。なお、「HDMI」、「GVIF」、「TransferJet」、及び、「WiGig」は、登録商標である。
【0054】
車載ルータ1は、各通信モジュール10の通信帯域を調整してもよい。例えば、車載ルータ1は、カメラ5により撮像した撮像信号を送信する場合には通信帯域幅を拡大し、ITSモジュール15を介して通信する場合には通信帯域幅を縮小してもよい。また、車載ルータ1は、各通信モジュール10からの通信データ量が増加し通信帯域が不足する場合、特定の通信を制限することで通信帯域を確保してもよい。例えば、車載ルータ1は、ソフトウェアのアップデートの通信を実施しているときに動画データの受信要求があった場合、ソフトウェアのアップデートの通信を優先し動画データの通信を制限してもよい。
【0055】
車載ルータ1は、搭乗者の携帯端末(例えばスマートフォン)の携帯LTEモジュールの機能を車載ルータ1の携帯LTEモジュール18で代用してもよい。例えば、車載ルータ1は、搭乗者の携帯端末の携帯LTEモジュールのテザリング機能を車載ルータ1の携帯LTEモジュール18により実現してもよい。
【0056】
車載ルータ1は、搭乗者の携帯端末により当該車載ルータ1の設定をできるようにしてもよい。この場合、搭乗者は、例えば、携帯端末のアプリケーション等を操作して車載ルータ1の設定情報を携帯端末に登録しておく。車載ルータ1は、予め記憶部に当該車載ルータ1を利用可能な搭乗者の識別情報を保存しておく。そして、車載ルータ1は、搭乗者の携帯端末の識別情報をNFCモジュール17を介して取得し、取得した識別番号と記憶部に保存された識別番号とを比較することで認証を行う。そして、車載ルータ1は、取得した識別番号と記憶部に保存された識別番号とが一致する場合、当該車載ルータ1の設定を許可する。そして、車載ルータ1は、携帯端末に登録された設定情報を取得し、取得した設定情報に基づいて当該車載ルータの設定を行う。なお、車載ルータ1、マイク6を介して音声により当該車載ルータ1の設定を実施してもよい。