(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6781696
(24)【登録日】2020年10月20日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】レーダセンサ
(51)【国際特許分類】
G01R 31/00 20060101AFI20201026BHJP
G01S 7/40 20060101ALI20201026BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20201026BHJP
【FI】
G01R31/00
G01S7/40 104
G01S13/931
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-522480(P2017-522480)
(86)(22)【出願日】2015年9月18日
(65)【公表番号】特表2017-533432(P2017-533432A)
(43)【公表日】2017年11月9日
(86)【国際出願番号】EP2015071422
(87)【国際公開番号】WO2016078799
(87)【国際公開日】20160526
【審査請求日】2017年4月25日
【審判番号】不服2019-4455(P2019-4455/J1)
【審判請求日】2019年4月4日
(31)【優先権主張番号】102014223469.7
(32)【優先日】2014年11月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】シュタインブッハ,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】オット,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】シュタインハウエル,マティアス
【合議体】
【審判長】
岡田 吉美
【審判官】
濱野 隆
【審判官】
濱本 禎広
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/117277(WO,A1)
【文献】
特開昭62−233773(JP,A)
【文献】
特開昭60−54096(JP,A)
【文献】
実開昭57−14292(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の運転者支援システム用のレーダセンサであって、アンテナ素子と、該アンテナ素子と送信部を介して接続される電子制御装置とを備え、前記電子制御装置は、高周波信号を生成しかつ処理するための集積化された部品(14)と、前記レーダセンサの機能性を監視するための監視機能を含む前記部品の機能を制御するためのコントローラ(18,22)とを有している形式のものにおいて、
前記監視機能の機能検査のために、前記部品(14)内に集積された、複数の所定のエラー状態を生ぜしめるエラーインジェクタ(26)が設けられており、
前記コントローラ(18,22)は、
前記レーダセンサの始動前に前記監視機能自体が故障しているかどうかをテストするため、前記送信部とは異なっており、かつ、前記レーダセンサが前記自動車から部分的に取り外されたときだけ外部からアクセス可能となる専用のポートへの信号の印加に応じて前記エラーインジェクタ(26)によって生ぜしめられた前記複数の所定のエラー状態に対し、それぞれに対応する所定のシステム反応が実際に開始されるかどうかを検査する
ことを特徴とするレーダセンサ。
【請求項2】
前記部品(14)が少なくとも1つのスイッチ素子(138,140,142)を有しており、該スイッチ素子(138,140,142)は、前記エラーインジェクタ(26)によって作動可能であり、前記部品(14)内の電路を遮断、短絡または減衰し、それによって前記エラー状態を生ぜしめるために設けられている請求項1に記載のレーダセンサ。
【請求項3】
前記部品(14)が少なくとも1つの信号発生器と少なくとも1つの信号インジェクタ(144,146,148)とを有しており、前記信号インジェクタ(144,146,148)は前記エラーインジェクタ(26)によって作動可能であって、前記信号発生器によって生成された妨害信号を前記部品(14)の電路に印加するために設けられている
請求項1または2に記載のレーダセンサ。
【請求項4】
前記部品(14)が内部のコントロールユニット(22)を有しており、該コントロールユニット(22)は前記部品の機能構成要素を制御するために設計されていて、この場合、前記エラーインジェクタ(26)は、少なくとも1つの機能構成要素を相応に制御することによって前記エラー状態を生ぜしめるよう、前記コントロールユニット(22)を指示するように構成されている
請求項1から3のいずれか1項に記載のレーダセンサ。
【請求項5】
前記エラーインジェクタ(26)は、テスト命令に基づいて複数の前記エラー状態の所定の連続を生ぜしめるように設計されている
請求項1から4のいずれか1項に記載のレーダセンサ。
【請求項6】
前記部品(14)は、前記テスト命令を入力するための前記専用のポート(150)を有している
請求項5に記載のレーダセンサ。
【請求項7】
前記部品(14)は内部のコントロールユニット(22)を有しており、該コントロールユニット(22)は、所定の条件下で前記エラーインジェクタ(26)のための前記テスト命令を自律的に生成するように構成されている
請求項5に記載のレーダセンサ。
【請求項8】
前記コントロールユニット(22)は、前記エラーインジェクタ(26)によって生ぜしめられた前記エラー状態に対する前記監視機能の反応が所定の目標反応に合致していることを検査するように、設計されている
請求項7に記載のレーダセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車の運転者支援システム用のレーダセンサのための電子制御装置であって、高周波信号を生成しかつ処理するための集積化された部品と、前記レーダセンサの機能性を監視するための監視機能を含む前記部品の機能を制御するためのコントローラとを有している形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、安全上重要なアシスト機能、例えば車間自動制御および/または衝突警告システムまたは衝突回避システムのために、レーダセンサがますます使用される。このような使用において、レーダセンサの機能不良は重大な結果をもたらすことになるので、レーダセンサの機能性を緊密に監視することが重要である。このような理由により、公知の制御装置に監視ルーチンが設けられており、この監視ルーチンによって、レーダセンサおよび制御装置の主要な機能を、運転中に常にまたは時々監視することができるので、制御装置は所定の自己診断能力を有している。
【0003】
レーダセンサの運転開始前に、監視機能自体も機能テストされるべきであり、それによって、監視機能が監視しようとするエラー状態を正しく検知することも保証され、また制御装置が検知されたエラーに対して、例えば部分的なまたは完全な自己遮断、エラー信号のアウトプット等によって適切に反応することが保証される。
【0004】
監視機能の機能テストのために、典型的な形式で量産に適したレーダセンサおよび所属の制御装置が考慮され、外部の修正を介してエラーがシステム内に注入される。この制御装置のソフトウエアは、このエラーを検知して、相応の対策を開始しなければならない。次いでこのエラー反応は、テスト中に観察され、評価される。
【0005】
レーダセンサのための電子制御装置には、集積化された高周波素子、いわゆるMMIC(Monilithic Microwave Integrated Circuit:モノリシックマイクロ波集積回路)がますます使用される。このようなMMICは、レーダセンサの複数の送受信チャンネルのための全高周波成分、並びに追加的に、MMICの個別の構成要素を制御するための、かつ優先的な外部の制御装置を備えたデータ通信を制御するための集積化されたコントローラ(マイクロコントローラ)を含んでいてよい。高集積化された構造形式は、多くの利点を有しているが、機能テストのためにMMIC内に内部のエラー状態を生ぜしめなければならないときに、困難となる。
【0006】
原則的には、専用のソフトウエアを用いてこのようなエラー状態を生ぜしめることが可能であるが、機能テストは、実践的な条件下で、特に機能テストの実施が支援される所定の変更が許可されない、公開されているシリーズソフトウエアを使用しても、実施されなければならない。
【0007】
機能テストを実施するための公知の方法において、MMICのプリント配線板上の信号電路および/またはプログラミング電路は、出力信号を意図的に誤らせるか若しくはデータパケットを意図的に操作するために、ニードルアダプタに接触される。
【0008】
しかしながらこの方法では、電路へのアクセスを得るために、レーダセンサを取り外して開放しなければならない、という欠点がある。このような環境変化は、実際の運転時には発生しない、エラー反応の誤りをもたらす原因となり得る。しかも、レーダセンサの取り外しおよび新たな取り付けには、時間および作業の手間がかかり、従って費用がかさむことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明の課題は、レーダセンサのための制御装置において、有意義な機能テストの実施を簡略化することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は本発明によれば、監視機能の機能検査のために、部品内に集積された、所定のエラー状態を生ぜしめるエラーインジェクタが設けられていることによって、解決される。
【発明の効果】
【0011】
従って本発明によれば、素子(MMIC)はそれ自体が、内部のプログラムおよび/または外部の命令に基づいて良好に規定されたエラー状態を生ぜしめることができるように変更されるので、レーダセンサの運転時に、許可されたシリーズソフトウエアによってこのエラーが正しく検知され、適切に処理されるかどうか、検査することができる。
【0012】
本発明の好適な実施態様および変形実施例は従属請求項に記載されている。
【0013】
エラーインジェクタはスイッチ構成要素を有していてよく、このスイッチ構成要素は、特に例えば信号電路または制御電路の短絡、遮断または減衰、ノイズ信号の生成および注入等によって、所望のエラー状態を生ぜしめるために、MMIC内に設けられている。
【0014】
一般的に、MMICは内部のコントローラも有しており、このコントローラによって、高周波成分の個別の機能構成要素が制御され得る。この場合、エラーインジェクタは、全体的にまたは部分的にソフトウエアモジュールによって形成されていてよく、このソフトウエアモジュールは内部のコントローラで動作し、コントローラによって制御された構成要素を相応に制御することによってエラー状態を生ぜしめる。
【0015】
MMICの内部のコントローラに同様に監視機能が実装されていれば、このコントローラは自律的にセルフテストルーチンを実行し、このセルフテストルーチンにおいて、エラーインジェクタを用いて所定のプログラムに従って様々なエラー状態が生ぜしめられ、コントローラはそれ自体が、これによって作動された監視機能の反応を、記憶されている相応の目標反応と比較するようになっているので、外部の制御装置に、エラーが存在しないかまたはどのような種類のエラーが検知されたかを知らせるステータスメッセージだけをアウトプットするだけでよい。
【0016】
このようなセルフテストルーチンは選択的に、外部の命令によって作動されるか、または所定の条件下、例えばそれぞれ作動電圧のスイッチオン時(MMICのパワーアップモード)に、自動的に内部のコントローラによって作動される。この場合、シリーズソフトウエアの必要不可欠な調整は、このソフトウエアがMMICのステータスメッセージ若しくはエラーメッセージを受信しかつ処理できなければならないということだけに限定される。
【0017】
別の実施例では、セルフテストルーチンは、このために特別に設けられたMMICのポートに信号が印加されることによっても作動され得る。このポートは、好適には機械的に、簡単にアクセスできないように構成されているので、レーダセンサが部分的に取り外されたときだけ、信号が印加され得るようになっている。これは、セルフテストルーチンの作動時に所定の作業コストを必要とするが、この自由なポートに信号が意図的に印加されることによってエラー注入が作動される危険性は低下する。
【0018】
別の実施例では、エラーインジェクタは、シリーズソフトウエアによって生ぜしめられる相応の命令によって作動せしめられる。この場合、この命令は予めプログラミングされたエラー注入シーケンスの作動に関係しているか、または個別のエラー状態の選択にも関係している。このために必要なシリーズソフトウエアの調整は、セルフテストのための追加的なソフトウエアモジュールを付け加えるだけでよいが、ソフトウエアはレーダセンサの規則的な運転のために手つかずにしておく必要があるので、ソフトウエアに許容されない変更を行う必要はない。
【0019】
エラーインジェクタまたはエラーインジェクタの選択された機能を作動させるための様々な可能性は、互いに組み合わせ可能である。好適な実施例では、エラーインジェクタは、実装されたそれぞれの監視機能のために、これらの監視機能をテストすることができる少なくとも1つのエラーの注入を許容する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】所属の制御装置を備えたレーダセンサのブロック図である。
【
図2】
図1に示したレーダセンサの制御装置の主要な構成部分を形成するMMICのブロック図である。
【
図3】
図2に示したMMIC内での信号生成の詳細を示す図である。
【
図4】MMIC内での送信部の詳細を示す図である。
【
図5】MMIC内での受信部の詳細を示す図である。
【
図6】MMIC内でのデジタル式のベースバンド信号処理段の詳細を示す図である。
【
図7】MMIC内での制御コントロールユニットの詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施例を以下に図面を用いて詳しく説明する。
【0022】
図1には、自動車用の角度分解型のレーダセンサが概略的に示されており、このレーダセンサは、互いに並んで配置されたN個のアンテナ素子10を有していて、これらのアンテナ素子10は、高周波電路12、例えばマイクロストリップまたは導波管を介して集積化された部品14(MMIC)に接続されている。アンテナ素子10またはこれらのアンテナ素子10のうちの少なくとも幾つかは、レーダ信号を送信するための送信アンテナとしても、またレーダエコーを受信するための受信アンテナとしても作動可能である。例として、レーダセンサの場合、FMCWレーダ(Frequency Modulated Continuous Wave:周波数変調連続波)であることが前提とされるべきである。FMCWレーダにおいては、アンテナ素子10から放射された信号の周波数がランプ状に変調され、受信されたレーダエコーがそれぞれ送信信号の一部と混合され、それによって著しく低い周波数を有するベースバンド信号が得られ、このベースバンド信号の(複素)振幅は、位置測定された対象物の間隔および相対速度に関する情報を含んでいる。さらに、様々なアンテナ素子10によって受信された信号間の位相差および/または振幅差を用いて、位置測定された対象物の方位角を少なくとも知ることができる。
【0023】
以下では短くMMICと称呼される集積化された部品14は、すべての送受信チャンネル、つまりN個のすべてのアンテナ素子10のための全高周波電子回路を有しており、さらに、集積化されたデジタル式のベースバンド信号処理段16を有しており、このベースバンド信号処理段16は、デジタル化され、かつ適切に処理されたベースバンド信号を外部のコントローラ18にアウトプットする。コントローラ18は、高速フーリエ変換によって、それぞれ周波数ランプを記録するベースバンド信号のためのスペクトルを決定し、スペクトルから、位置測定された対象物の間隔、相対速度および方位角を決定する。次いでこれらの情報が、運転者支援システム20、例えば衝突警告システムに伝送される。
【0024】
運転者支援システム20自体は、外部のコントローラ18への命令によって、レーダセンサの機能形式を制御することができる。
【0025】
MMICは内部のコントロールユニット22を有しており、このコントロールユニット22は、MMICの様々な機能素子を制御し、デジタル式のインターフェースを介して外部のコントローラ18と通信する。このようなやり方で、外部のコントローラ18はMMICに命令を伝送することができ、次いでこの命令がMMICの内部のコントロールユニット22によって変換される。
【0026】
内部のコントロールユニット22は、サブユニットとして監視モジュール24を有しており、この監視モジュール24は、MMICの様々な機能素子の状態および機能を監視し、相応のステータスメッセージを外部のコントローラ18に伝送することができる。
【0027】
さらに、内部のコントロールユニット22はエラーインジェクタ26を有しており、このエラーインジェクタ26によって、前もって規定された、MMIC内部の特定のエラー状態を生ぜしめることができる。このような形式で、エラーインジェクタを使って意図的にエラー状態を生ぜしめ、次いでこのエラーが監視モジュール24若しくは上位のソフトウエアによって検知され得るかどうかを検査することによって、監視モジュール24に機能検査を受けさせることも可能である。
【0028】
図2には、MMIC14の主要なサブシステムがブロック図で示されている。
【0029】
信号生成器28は高周波信号を供給し、この高周波信号は信号ディストリビュータ30によって分割されて、複数のシステム構成要素、特に送信部32に伝送される。送信部32はN個の平行なチャンネルを有しており、これらのチャンネルはN個のアンテナ素子10に給電するので、これらのアンテナ素子を介して高周波信号がレーダ信号として放射される。
【0030】
受信部34は、アンテナ素子10によって受信されたレーダエコーを処理するためのM個のチャンネルを有している。各チャンネル内で、受信された信号に局部発振器信号LOが混合される。この局部発振器信号LOは信号ディストリビュータ30によって提供され、信号生成器28によって生成された高周波信号に相当する。この信号の混合によって、それぞれ1つのベースバンド信号が得られ、このベースバンド信号の周波数は、受信した信号と局部発振器信号との間の周波数差に相当し、より低い周波数帯ではベースバンドに相当する。このベースバンド信号はデジタル化されて、デジタル式のベースバンド信号処理段16にアウトプットされる。
【0031】
上記構成要素および内部のコントロールユニット22の他に、MMIC14はさらに、クロック信号発生器36、インターフェースユニット38および集積化された温度センサ40を有している。
【0032】
クロック信号発生器36は、様々なシステム構成要素によって必要とされる、互いに同期化された様々なクロック信号を生成する。
【0033】
インターフェースユニット38は様々な入出力ポート42を有しており、これらの入出力ポート42を介して、MMICは外部のコントローラ18、および場合によっては例えば別のMMICの別の構造群と通信する。
【0034】
さらに、インターフェースユニット38は、MMICの一般的な機能構成要素のための閉ループ制御された作動電圧を提供する複数の電圧レギュレータを備えた電圧供給部54と、アウトプットされた作動電圧を監視するための電圧監視ブロック56とを有している。
【0035】
温度センサ40によって、MMICの温度が許容範囲内にあるかどうかが監視される。
【0036】
信号生成器28は、さらに
図3に別個に示されており、電圧閉ループ制御された局部発振器58と、分周器60と、位相同期ループ62(PLL;Phase Locked Loop)とを有しており、この位相同期ループ62によって、閉じた制御回路内で発振器の出力信号の位相および周波数が閉ループ制御される。
【0037】
発振器の出力信号は増幅器64内で増幅され、信号ディストリビュータ30(
図2)にアウトプットされる。ノイズ検出器66は増幅器64の出力における位相ノイズを監視し、位相検出器68はPLLの位相同期を監視する。
【0038】
信号ディストリビュータ30(
図2)は第1の分配段70を有しており、この第1の分配段70は、信号生成器28により提供された高周波信号を、送信部32のための送信分岐と、テスト信号分岐と、受信部34のためのLO分岐とに分配する。送信分岐は、送信しようとする信号を送信部32のN個のチャンネルに分配するための別の分配段72を有している。テスト信号分岐は、信号の位相を回転させ、次の位相回転時に周波数も変化させることができるIQモジュレータ74と、出力センサ76と、高周波信号を受信部34のM個のチャンネルのためのテスト信号TSに分配するための分配段78とを有している。
【0039】
相応に、受信部34の4つのチャンネルのための局部発振器信号LOを供給するLO分岐は、IQモジュレータ80と、出力センサ82と、分配段84とを有している。
【0040】
送信部32の個別のチャンネルは、
図4に別個に示されていて、別のIQモジュレータ86と、閉ループ制御可能な増幅器88と、出力センサ90と、位相センサ92とを有している。
【0041】
レーダセンサの典型的な機械構造において、MMIC14は図示していない基板上に取り付けられていて、この基板上に、MMICとアンテナ素子10との間で高周波信号を伝送するための回路が設けられている。この回路とMMICとの間の電気接触ははんだ球を介して製造され、このはんだ球は、レーダセンサを自動車内に組み込む際の機械的な振動に基づいて相当な機械的負荷にさらされ、従って、特に監視されなければならない。このような理由により、送信部32の各チャンネルに1つの接触テスター94が対応配設されており、この接触テスター94は当該のはんだ球との電気接触を監視する。監視は、例えば当該の電路上に直流電圧が印加され、この電路に相応の直流が流れるかどうかが検査されることによって行われる。そうでなければ、これは、はんだ球との接触が遮断されていることを示唆する。
【0042】
相応の接触テスター94は、受信部34の各入力チャンネルに対応配設されており、これらの接触テスターのうちの1つが
図5に別個に示されている。各チャンネルの高周波入力は結合器96を介して混合器98に接続されており、この混合器98に、増幅器100を介して局部発振器信号LOも供給される。混成信号は、高域フィルタ102、閉ループ制御可能な増幅器104および低域フィルタ106を介してアナログ/デジタル変換器108のアナログ入力に伝送され、アナログ/デジタル変換器108のデジタル化された出力信号は、
図6に別個に示されたベースバンド信号処理段16に伝送される。
【0043】
結合器96は、テスト信号TSを混合器98に接続するために用いられ、それによって混合器は、アンテナ素子10によって受信された「実際の」レーダエコーをシミュレートする所定のテスト信号によって機能テストされる。
【0044】
受信部34のM個のデジタル化された出力信号は、ベースバンド信号処理段16のベースバンドコンディショニング回路110の入力に印加され、ここで、位相同期および振幅同期が検査される。例えばエイジング欠陥の原因による同期エラーは、必要であれば修正される。次いで、修正されたベースバンド信号は、平行してLVDCドライバ116に伝送され、最後にポート42のうちの1つ(LVDSポート)を介して外部のコントローラ18に提供される。
【0045】
内部のコントロールユニット22は、
図7に別個に示されていて、複数の機能モジュールを有しており、これらの機能モジュールは、一部がハードウエア構成要素として、また一部がソフトウエアモジュールとして構成されていて、局所的バス118を介して互いに通信する。コントロールユニットの主要部は、不揮発性メモリ内に記憶されたプログラムを実行する内部のコントローラ(マイクロコントローラ)120である。
【0046】
コントロールモジュール132は、MMICの複数の機能構成要素を制御する。
図7でコントロールモジュール132を表すブロックは、右上のコーナーに黒の正方形によって示されている。これに対応して、
図2〜
図6には、このモジュールによって制御される機能ブロックが、左下のコーナーに黒の正方形によって示されている。これには、例えば信号生成器28の分周器60、PLL62、ノイズ検出器66および位相検出器68(
図3)、また信号ディストリビュータ30のIQモジュレータ74および80(
図2)、送信部32の様々なチャンネルの位相検出器92、IQモジュレータ86および増幅器88(
図4)、受信部34のフィルタおよび増幅器(
図5)、デジタル式のベースバンド信号処理回路16内のベースバンドコンディショニング回路110(
図6)が所属している。
【0047】
コントロールユニット22のその他の機能およびモジュールは、
図7でブロック134によって表されている。これには、例えばエラー処理のためのシステム、並びに様々な信号発生器が所属しており、これらの信号発生器は、MMIC内で必要な様々な信号、例えばIQモジュレータのための変調信号等を生成する。
【0048】
図2〜
図6に示された機能構成要素のうちのいくつかは、もっぱらまたは特に監視機能を実行するために用いられる。これらの構成要素を表すブロックは、
図2〜
図6にそれぞれ上縁部の黒いバーによって示されている。従って、例えば信号生成器28(
図3)で、検出器66および68によって発振器信号の位相位置および位相ノイズが監視される。信号ディストリビュータ30で、出力センサ76および82によって、LO回路内およびテスト信号回路内の出力レベルが監視される。同様に、送信部32内の出力センサ90および位相センサ92(
図4)が、アンテナ素子に伝送された送信信号の出力レベルおよび位相を監視する。送信部32および受信部34のための接触テスター94も、またベースバンド信号処理回路16内の監視ブロック112も、また温度センサ40およびクロック信号発生器36も、監視機能(クロック信号の監視)を有している。
【0049】
コントロールユニット22(
図7)で、これらすべての構成要素の監視信号が監視モジュール24によって受信され、正確さが検査される。不規則な状態が検知されると、外部のコントローラ18への報告が行われ、場合によっては内部でもコントロールユニット22においてエラー処理ルーチンが作動され、このエラー処理ルーチンはエラーの種類および重大さに応じて適切な対策、例えば特別なエラーメッセージの出力、所定の構成要素および機能の作動停止または全レーダセンサの自己遮断を指示する。
【0050】
しかしながら、レーダセンサの始動前に少なくとも一回だけ、監視機能が正確に作動しているかどうかまたは監視機能自体が故障しているかどうかのテストも行われるべきである。このために、コントロールユニット22内にエラーインジェクタ26が設けられており、このエラーインジェクタ26によってMMICの意図的に規定されたエラー状態が生ぜしめられ、それによって、次いで内部のコントロールユニット22内でまたは外部のコントローラ18内で、エラー状態が検知され、かつ正確に処理されるかどうか検査される。このために、例えば、エラーインジェクタ26によって表示可能なそれぞれのエラーのために、その都度どのようなシステム反応を行うべきかを示す表が記憶されており、次いで、想定された反応が実際に開始されるかどうかが自動的に検査される。
【0051】
所定のエラー状態を生ぜしめるための適切な手段は、一方ではハードウエア手段および他方ではファームウエア手段である。
【0052】
ハードウエア手段のための一例として、
図2にいくつかのスイッチ素子138(2重斜線によって表されている)が示されており、このスイッチ素子138は、テスト信号回路内に配置されていて、受信部34内の単数または複数の混合器へのテスト信号ZSの供給を遮断するために、エラーインジェクタ26によって直接作動せしめられる。このような形式で単数または複数の混合器の故障がシミュレートされ、次いで、エラーが正しく検知されるかどうか、次いでエラー処理ルーチンが正しく反応するかどうかが検査される。電路遮断の代わりに、相応のスイッチ素子138によって選択的に、当該の電路における短絡または信号減衰を生ぜしめることもできる。代替案として、
図5にはスイッチ素子140も示されており、このスイッチ素子140によって、混合器の出力電路を遮断し、短絡または減衰することができる。
【0053】
ハードウエア手段のための別の例として、
図4にスイッチ素子142が示されており、このスイッチ素子142によって、送信部32内で信号が増幅器88の出力において遮断または減衰される。その結果、出力センサ90によって測定された出力レベルは低下する。それによって、監視モジュール24内でこの出力レベルを監視するための機能が正常に作動しているかどうかを検査することができる。
【0054】
選択的に、出力センサ90の出力信号を監視モジュール24に伝送する電路も、遮断、短絡または減衰させることができる。
【0055】
信号生成器28(
図3)内のノイズ検出器66の機能を監視しようとする場合、エラーを生ぜしめるためのハードウエア手段は、好適にはMMIC内にいずれにしても設けられている前記信号発生器のうちの1つを用いてノイズ信号が人工的に生成され、このノイズ信号が信号インジェクタ144によってノイズセンサ66の入力に通じる電路内に注入されるという点にある。選択的に、対応する信号インジェクタ146を用いてノイズ信号が発振器58の制御電圧入力内に注入されてもよい。信号インジェクタは同時に位相検出器68の機能検査を可能にするので、PLL62のロック状態が正しく監視されるかどうか検査することができる。
【0056】
相応の形式で、ベースバンド信号処理段16内のノイズレベルを監視するために役立つ監視機能もテストすることができる。
【0057】
例えば送信出力を監視する監視機能をテストするためのファームウエア手段のための一例によれば、エラーインジェクタ26がプログラム制御式にコントロールモジュール132に指示を与えて、送信部32(
図4)内の調節可能な増幅器88を制御して、送信出力を人工的に低下させるようになっている。
【0058】
受信部34内の混合器98がコントロールモジュール134によって個別に遮断可能である実施例では、混合器を監視する監視機能は、個別の混合器を意図的に遮断することによってもテストすることができる。
【0059】
相応に、混合器の出力におけるノイズレベルを監視する監視機能は、既存のテスト信号発生器および信号インジェクタ148を用いてノイズ信号が混合器テスト信号として印加されることによってテストされ得る。
【0060】
PLLのロック状態を監視する機能をテストするためのファームウエア手段は、監視モジュール24内で、ロック状態が記録されているレジスタの状態が操作される点にある。
【0061】
監視モジュール24のその他の監視機能は、MMICから外部のコントローラ18へのLVDSデータの流れが監視される点にある。この監視は一般的な形式で、CRCコード化機能(Cyclic Redundancy Check:巡回冗長検査)を用いて、一種のチェックサムが形成されることによって行われる。人工的なエラー状態を生ぜしめるためのファームウエア手段は、CRCコード化機能の係数が操作される点にある。
【0062】
一般的に、
図2〜
図6に示された、監視機能を有するすべての構成要素において、ハードウエア手段またはファームウエア手段(またはこれらの組み合わせ)によって、監視モジュール24に伝送される出力信号を操作することができ、それによってエラー状態を見せかけることができるので、エラーが正しく検知されるかどうかを検査することができる。
【0063】
エラーインジェクタ26の作動は、一方では自律的に、内部のコントロールユニット22で生成された命令に基づいて行われるか、または外部のコントローラ18によって伝送された外部の命令に基づいて行われる。別の可能性は
図2に記号により示されている。
図2では、インターフェースユニット38内に専用のテストポート150が図示されている。(電圧の)信号をこのポートに印加することによって、エラーインジェクタ26内で、相応の監視機能のテストを可能にする複数のエラーの所定の連続を生ぜしめるプログラムがスタートされる。
【符号の説明】
【0064】
14 集積化された部品
16 ベースバンド信号処理段
18 コントローラ
22 コントロールユニット
26 エラーインジェクタ
138 スイッチ素子
140 スイッチ素子
142 スイッチ素子
144 信号インジェクタ
146 信号インジェクタ
148 信号インジェクタ
150 テストポート