【実施例】
【0144】
(例1) − 式(1)、(2)及び(3)の化合物の合成
中間体1:1−(2,5−ジメチルベンジル)−1H−ベンゾイミダゾール
炭酸セシウム(22.0g、100.0mmol)及びヨウ化n−ブチルアンモニウム(12.5g、34.0mmol)を、ベンゾイミダゾール(4.0g、34.0mmol)のDMF(60ml)中溶液に0℃で加えた。反応混合物を0℃で10分間撹拌し、次いで2,5−ジメチルベンジルブロミド(6.7g、34.0mmol)を加えた。反応混合物を室温に温め、3時間撹拌した。混合物を氷冷水(50ml)でクエンチし、酢酸エチル(3×40ml)で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を真空中で除去して標題化合物(8.0g、75%)をオフホワイト色固体として得た。δ
H (d
6-DMSO) 8.23 (s, 1H), 7.68-7.66 (m, 1H), 7.43-7.41 (m, 1H), 7.21-7.19 (m, 2H), 7.10 (d, J 7.6 Hz, 1H), 7.01 (d, J 7.6 Hz, 1H), 6.67 (s, 1H), 5.45 (s, 2H), 2.25 (s, 3H), 2.14 (s, 3H). LCMS (ES
+) 237 (M+H)
+.
【0145】
中間体2:5−ブロモ−2−ニトロアニリン
2−フルオロ−4−ブロモ−1−ニトロベンゼン(0.5g、2.2mmol)を、メタノール・アンモニア(10ml)に加え、室温で18時間撹拌した。次いで反応混合物を真空中で濃縮し、残渣をイソヘキサンと粉砕し、標題化合物(0.48g、97%)を黄色固体として得た。δ
H (d
6-DMSO) 7.88 (d, J 8.8 Hz, 1H), 7.53 (br s, 2H), 7.25 (d, J 3.0 Hz, 1H), 6.75 (dd, J 9.2, 2.0 Hz, 1H).
【0146】
中間体3:5−ブロモ−N−(2,5−ジメチルベンジル)−2−ニトロアニリン
水素化ナトリウム(60%油中分散液、0.82g、20.7mmol)を、中間体2(5.0g、23.0mmol)のDMF(50ml)中撹拌溶液に0℃で加えた。2,5−ジメチルベンジルブロミド(4.56g、23.0mmol)を加え、反応混合物を室温に温め、5時間撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチし、酢酸エチル(3×50ml)で抽出し、水(2×30ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO
2、5%EtOAc/イソヘキサン)により精製し、標題化合物(4.89g、63%)を黄色固体として得た。δ
H (d
6-DMSO) 8.42 (br s, 1H), 8.01 (d, J 8.8 Hz, 1H), 7.12-6.86 (m, 4H), 6.85 (d, J 7.2, 1.6 Hz, 1H), 4.54 (d, J 5.6 Hz, 2H), 2.28 (s, 3H), 2.21 (s, 3H).
【0147】
中間体4:5−ブロモ−N1−(2,5−ジメチルベンジル)ベンゼン−1,2−ジアミン
SnCl
2(20.2g、89.4mmol)を、中間体3(10.0g、29.8mmol)のEtOH(200ml)中撹拌溶液に加え、反応混合物を80℃へ5時間加熱した。次いで反応混合物を真空中で濃縮し、残渣を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和してDCM(3×100ml)で抽出した。合わせた有機物を水(2×50ml)で洗浄し、抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO
2、5%MeOH/DCM)により精製し、標題化合物(5.4g、69%)を暗褐色の油として得た。δ
H (d
6-DMSO) 7.08 (s, 1H), 7.06 (d, J 7.6 Hz, 2H), 6.97 (d, J 7.6 Hz, 1H), 6.53 (dd, J 8.4, 2.0 Hz, 1H), 6.47 (d, J 8.0 Hz, 1H), 6.45 (d, J 2.0 Hz, 1H), 5.06 (t, J 5.4 Hz, 1H), 4.77 (br s, 2H), 4.15 (d, J 5.2 Hz, 1H), 2.27 (s, 3H), 2.22 (s, 3H). LCMS (ES
+) 305 (M+H)
+.
【0148】
中間体5:6−ブロモ−1−(2,5−ジメチルベンジル)−1H−ベンゾイミダゾール
中間体4(0.40g、1.31mmol)とギ酸(10ml)との混合物を室温で18時間撹拌した。反応混合物を真空中で濃縮し、残渣を酢酸エチルと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液との間で分配した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO
2、20〜75%EtOAc/イソヘキサン)により精製し、標題化合物(0.20g、48%)を白色固体として得た。δ
H (d
6-DMSO) 8.24 (s, 1H), 7.74 (d, J 1.7 Hz, 1H), 7.64 (d, J 8.6 Hz, 1H), 7.34 (dd, J 8.6, 1.9 Hz, 1H), 7.12 (d, J 7.7 Hz, 1H), 7.02 (d, J 7.8 Hz, 1H), 6.61 (s, 1H), 5.47 (s, 2H), 2.24 (s, 3H), 2.15 (s, 3H). LCMS (ES
+) 316 (M+H)
+.
【0149】
中間体6:[6−ブロモ−1−(2,5−ジメチルベンジル)−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル](ピリジン−4−イル)メタノール
0℃へ冷却したTHF(10ml)中のジイソプロピルアミン(2.8ml)に、n−BuLi(12.5ml、ヘキサン中1.6M)を加え、得られた混合物を0℃で10分間撹拌した。この新たに調製したLDA(1.8ml、1.62mmol)のアリコートを、中間体5(0.25g、0.81mmol)のTHF(5ml)中溶液に−78℃で加えた。反応混合物を−78℃で2時間撹拌し、次いでピリジン−4−カルボキシアルデヒド(0.15ml、1.62mmol)を加え、反応混合物を−78℃で10分間撹拌した。混合物を飽和塩化ナトリウム水溶液でクエンチし、室温に温めた。混合物を酢酸エチル(3×40ml)で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO
2、0〜10%MeOH/DCM)により精製し、標題化合物(0.18g、51%)を白色固体として得た。LCMS (ES
+) 423 (M+H)
+.
【0150】
中間体7:5−(3−フルオロ−4−ニトロフェニル)−2−メトキシピリジン
6−メトキシピリジン−3−イルボロン酸(40.0g、262mmol)、4−ブロモ−2−フルオロ−1−ニトロベンゼン(52.3g、238mmol)及びNa
2CO
3(76g、713mmol)を、1,2−ジメトキシエタン(1200mL)及び水(300mL)中で混合した。反応混合物をアルゴンでパージした。Pd(PPh
3)
2Cl
2(8.34g、11.89mmol)を加え、混合物を90℃へ1.5時間加熱した。EtOAc及び水を加えた。有機相を分離し、水相をEtOAcで2回抽出した。合わせた有機層をNa
2SO
4で乾燥させ、その後、溶媒を真空中で除去した。残渣をトルエンから再結晶化し、標題化合物(42.00g、169.2mmol、71%)を得た。MS [ESI+] m/z: 249 [M+H]
+.
【0151】
中間体8:N−[2−(ジフルオロメトキシ)ベンジル]−5−(6−メトキシピリジン−3−イル)−2−ニトロアニリン
2−(ジフルオロメトキシ)ベンジルアミン(2.093g、12.09mmol)をNMP(20ml)に溶解した。中間体7(2g、8.06mmol)及びK
2CO
3(1.336g、9.67mmol)を加えた。この混合物をマイクロ波照射下で150℃で30分間加熱した。EtOAc及び水を加えた。有機相を分離し、水相をEtOAcで2回抽出した。合わせた有機層を水で3回、ブラインで2回洗浄した。Na
2SO
4で乾燥させた後、溶媒を真空中で除去した。残渣をヘプタン/EtOAc(100/25ml)から再結晶化し、標題化合物(2.513g、6.26mmol、78%)を得た。MS [ESI+] m/z: 402 [M+H]
+.
【0152】
中間体9:N1−[2−(ジフルオロメトキシ)ベンジル]−5−(6−メトキシピリジン−3−イル)ベンゼン−1,2−ジアミン
パラジウム炭素(1.10g、10wt%)を、中間体8(2.512g、6.26mmol)のEtOAc(150mL)中溶液に加え、アルゴンでフラッシュした。雰囲気をH
2雰囲気で置き換え、反応混合物を1バールのH
2下で1時間撹拌した。混合物を珪藻土の層を通して濾過した。濾液を真空中で濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィーを使用してヘプタン中7〜60%のEtOAcで精製し、標題化合物(2.07g、5.57mmol、89%)を得た。MS [ESI+] m/z: 372 [M+H]
+.
【0153】
中間体10:5−{4−アミノ−3−[2−(ジフルオロメトキシ)ベンジルアミノ]フェニル}ピリジン−2(1H)−オン
ピリジン塩酸塩(10.64g、92mmol)を中間体9(6.84g、18.42mmol)に加えた。反応混合物を開放容器中で165℃へ3分間加熱した。水を加え、混合物を超音波処理した。沈殿物を濾取し、次いで沸騰アセトニトリル中で粉砕した。沈殿物を濾過し、標題化合物(3.822g、9.95mmol、54%)を得た。MS [ESI+] m/z: 358 [M+H]
+.
【0154】
化合物(1):[1−(2,5−ジメチルベンジル)−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル](ピリジン−4−イル)メタノール
中間体1(0.25g、1.06mmol)のTHF(10ml)中溶液に−78℃で1.6Mのn−ブチルリチウム(0.79ml、1.27mmol)をゆっくりと滴加し、反応混合物を20分間撹拌した。THF(1ml)中のイソニコチンアルデヒド(0.17g、1.59mmol)をゆっくりと滴加した。さらに10分後、反応混合物を水(1ml)でクエンチし、室温に温めた。反応混合物を酢酸エチル/水中に注いだ。有機層を分離し、乾燥させ(MgSO
4)、真空中で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO
2、0〜30%MeOH/DCM)により精製し、標題化合物(0.2g、55%)をオフホワイト色固体として得た。δ
H (CDCl
3) 8.31 (d, J 5.9 Hz, 2H), 7.69 (d, J 8.0 Hz, 1H), 7.28-7.16 (m, 4H), 7.00-6.95 (m, 2H), 6.87-6.85 (m, 1H), 6.16 (s, 2H), 5.84 (s, 1H), 5.35-5.09 (dd, J
AB17.0 Hz, 2H), 2.25 (s, 3H), 1.89 (s, 3H). LCMS (ES
+) 344 (M+H)
+.
【0155】
化合物(2):[1−(2,5−ジメチルベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル](ピリジン−4−イル)メタノール
1−メチル−4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール(0.15g、0.71mmol)、及び2Mの炭酸ナトリウム溶液(2ml)を、中間体6(0.15g、0.36mmol)の1,4−ジオキサン:水(4:1、5ml)中溶液に加え、反応を10分間脱気した。PdCl
2(dppf)(0.01g、0.05mmol)を添加し、反応混合物を10分間脱気し、Biotageマイクロ波反応器中で100℃へ60分間加熱した。酢酸エチルを加え、反応混合物を、セライトパッドを通して濾過した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣を分取HPLCにより精製し、標題化合物を白色固体として得た。δ
H (d
6-DMSO) 8.39 (dd, J 4.5, 1.6 Hz, 2H), 8.03 (s, 1H), 7.76 (s, 1H), 7.64 (d, J 8.8 Hz, 1H), 7.44-7.41 (m, 2H), 7.28 (d, J 5.6 Hz, 2H), 7.06 (d, J 7.7 Hz, 1H), 6.87 (d, J 6.8 Hz, 1H), 6.70 (d, J 5.5 Hz, 1H), 6.01 (d, J 5.5 Hz, 1H), 5.83 (s, 1H), 5.63-5.43 (m, 2H), 3.82 (s, 3H), 2.33 (s, 3H), 1.92 (s, 3H). LCMS (ES
+) 424 (M+H)
+.
【0156】
化合物(3):5−(1−[2−(ジフルオロメトキシ)ベンジル]−2−{[3−(2−オキソ−ピロリジン−1−イル)フェノキシ]メチル}−1H−ベンゾイミダゾール−6−イル)−ピリジン−2(1H)−オン
2−[3−(2−オキソピロリジン−1−イル)フェノキシ]酢酸(2当量)を、HATU(2当量)のDMF(2mL)中溶液に添加した。混合物を30分間撹拌した。中間体9(1当量)のDMF(2mL)中溶液を加え、混合物を室温で24時間撹拌した。次いで温度を50℃へ上昇させ、撹拌を24時間継続した。溶媒を蒸発させ、残渣を酢酸(4mL)中に溶解させ、80℃へ5時間加熱した。酢酸を蒸発によって除去した。残渣を水/クロロホルム(1:1、6mL)間で、50℃で分配した。層を相分離器の使用により分離した。水層をクロロホルム(4mL)で洗浄し、有機層を蒸発により乾燥させた。残渣をDMSO(1mL)中に取り、分取LCMSにより精製して、標題化合物を得た。
【0157】
(例2) − 式(4)のコンジュゲートの合成
中間体10:1−(2,5−ジメチルベンジル)−6−[4−(ピペラジン−1−イルメチル)−フェニル]−2−(ピリジン−4−イルメチル)−1H−ベンゾイミダゾール
中間体7、8及び9の調製に相当する一連のステップによる合成の後、適切なボロン酸、適切なアミン、及び適切なカルボン酸を利用して化合物(3)を調製した。
【0158】
コンジュゲート(4)
中間体10(27.02mg、0.0538mmol)をDMSO(2mL)に溶解した。5(−6)カルボキシフルオレセインスクシニミルエステル(24.16mg、0.0510mmol)(Invitrogenカタログ番号:C1311)をDMSO(1mL)に溶解し、明黄色の溶液を得た。2つの溶液を室温で混合すると、混合物が赤色になった。混合物を室温で撹拌した。混合後すぐに、20μLのアリコートを取り出し、AcOH:H
2Oの80:20混合物で希釈して、1200RR−6140LC−MSシステムでLC−MS解析した。クロマトグラムは、1.42及び1.50分の保持時間の2つの近い溶出ピークを示し、これらのピークは両方とも質量(M+H)
+=860.8amuであり、5−及び6−置換カルボキシフルオレセイン基で形成された2つの生成物に相当した。保持時間2.21分でのさらなるピークは、(M+H)
+=502.8amuの質量を有し、中間体10に相当した。未反応の5(−6)カルボキシフルオレセインスクシニミルエステルについてのピークは観察されなかった。ピーク面積は、3つのシグナルについて22.0%、39.6%及び31.4%であり、その時間点で61.6%が所望の生成物の2つの異性体に変換されていることが示された。さらに20μLのアリコートを数時間後に抽出し、次いで一晩撹拌した後、先のように希釈し、LC−MS解析を行った。これらの時間点で、変換の割合はそれぞれ79.8%及び88.6%と決定された。混合物を、UV指示分取HPLCシステムで精製した。プールされた精製画分を凍結乾燥し、過剰の溶媒を除去した。凍結乾燥後、オレンジ色の固体(23.3mg)が収集され、これは0.027mmolの生成物と同等であり、反応及び分取HPLC精製に対して全収率53%に相当した。
【0159】
(例3) − TNFαに結合する化合物のスクリーニング
式(1)及び(2)の化合物を、以下のアッセイを使用してスクリーニングした。
【0160】
384ウェルの未コーティングプレート(標準結合)Meso Scale Discoveryプレート(MSD)を、TNFRの細胞外ドメイン(TNFR−ECD)(10μl、PBS中1ug/mL)で一晩コーティングした。均一な分布を確実にするために、プレートを1000rpmで2分間遠心分離した。次いでプレートを密閉し、+4℃で一晩保存した。
【0161】
プレートのウェルを、次いで0.05%Tween20を含む50μlのリン酸緩衝生理食塩水pH6.5(PB)(洗浄バッファー)で3回洗浄し、次いで50μlの2%BSAでブロックした。次いで、プレートを室温で振とう器(600rpm)において2時間インキュベートした。このインキュベーション後、プレートを洗浄した(ウェル当たり3×50μlの洗浄バッファー)。
【0162】
ブロッキングインキュベーションの間、式(1)及び(2)の化合物を、TNF(R&D Systems)とプレインキュベートしてから、予めブロックした洗浄MSDプレートに加えた。
図3Aに示すシングルポイントアッセイのため、化合物を、最終濃度100μM(5%最終v/v DMSO)でアッセイした。
【0163】
EC50値の決定
図3B及び3C)のため、アッセイに加えるときに試験化合物の最高濃度が50又は100μM(5%最終v/v DMSO)となるように、式(1)及び(2)の化合物をDMSOで2倍又は3倍希釈した。予め希釈した式(1)及び(2)の化合物を、1:1の比率で4ng/mLのTNF(最終濃度2ng/ml)に加え、次いで室温で600rpmの振とう器において1時間インキュベートした。
【0164】
式(1)又は(2)の化合物とTNFαとの10μlのプレインキュベート混合物を、調製したMSDプレートに加え、室温で振とう器において1時間インキュベートした。
【0165】
次いで、プレートを洗浄バッファー(ウェル当たり3×50μl)で洗浄した。次いでスルホタグ化抗TNFポリクローナル抗体を各ウェルに加え、プレートを室温で振とう器においてさらに1.5時間インキュベートした。
【0166】
次いでプレートを洗浄し(ウェル当たり3×50μlの洗浄バッファー)、その後、50μlのMSD ReadバッファーTと界面活性剤(H
2Oで2分の1に希釈)を加え、SECTOR Imager6000で読み取った。
【0167】
シングルポイントアッセイのため、阻害パーセンテージを、化合物を含まない対照試料を使用して計算した。
【0168】
EC50のため、判定結果を、4パラメータロジスティックモデル(シグモイド型用量応答モデル)を使用して標準的手段により計算した。
【0169】
図3Aから分かるように、当技術分野で既知のTNFαアンタゴニストの代表例である「SPD−304」と標識された化合物は、+80%の阻害値%を有し、このことから、この化合物がTNFαのその受容体への結合を阻害することが示される。対照的に、試験した化合物のいくつかは、負の阻害値%を有し、このことから、これらの化合物がTNF受容体へのTNFαの結合を増強することが示される。
【0170】
同様に、式(1)の化合物
図3B)及び式(2)の化合物
図3C)の用量応答は、負の阻害曲線を生じる。別言すると、固定化ECD−TNFRへのTNFαの結合は、化合物の濃度が増加するにつれて増強されるようである。この理由により、IC50でなくEC50(全効果の50%を与える化合物の濃度)を計算する必要がある。この場合に、式(1)の化合物のEC50は4.6μMであり、式(2)の化合物のEC50は3.7μMであった。
【0171】
また表面プラズモン共鳴を使用するBIA(Biomolecular Interaction Analysis)を使用して、化合物誘導性のTNF受容体へのTNFαの結合増強を測定することができる。この目的のために、Biacore A100/4000を使用した。いわゆる溶液内競合/増強アッセイにおいて、TNF受容体の細胞外ドメイン(ECD−TNFR)を、pH5で、HBS−Pバッファー(10mMのHEPES pH7.4、0.15MのNaCl、0.005%の界面活性剤P20、BIAcore、GE Healthcare)中のCM5センサに1KRUのレベルまで固定化した。
【0172】
化合物は、アッセイにおける最高濃度が20μMとなるように、段階的に2倍希釈した。例えば、典型的アッセイでは、20μM、10μM、5μM、2.5μM、1.25μM、0.625μM、0.312μM、0.156μM、0.078μM、0.039μMの化合物溶液を使用しうる。化合物を、0.5〜1nMのTNFαと混合し、少なくとも5時間平衡化した。対照化合物を、10〜15サイクル毎に試験した。TNFα/化合物混合物を、固定化されたTNFR上に3分間流動し、続けて表面再生を各サイクル後に10mMのHCL1回30mLを流量30mL/分で注入して行った。バックグラウンド減算結合曲線を、標準的手法に従って、BIAevaluationソフトウェアを使用して解析した。EC50データは、4パラメータロジスティック適応を使用して決定した。
図4A及び
図4Bは、式(1)及び式(2)の化合物についての進行曲線をそれぞれ示している。化合物の非存在下でのTNFαに対するRU(共鳴単位)値を曲線から差し引いているため、化合物により誘導された結合の増加のみがここで示されている。化合物の濃度が増加するにつれて、より高いRU値で進行曲線はプラトーに達する。この曲線から、4パラメータロジスティック適応モデルを使用して、50%の最大効果を与える化合物の濃度を決定することにより、EC50値を計算することができる。これらの実験において、式(1)の化合物のEC50は298nMであり、式(2)の化合物のEC50は280nMであると計算された。
【0173】
EC50がアッセイ間変動を示すこと並びにBiacoreアッセイ及びMSDアッセイについての条件が非常に異なっていることに注意を要する場合がある。結果として、測定されたEC50は、2つのアッセイ形式について一致するとは予測されない。
【0174】
(例4) − TNFαへの化合物1の結合の質量分析解析
質量分析は、典型的に、Waters LCT−premier飛行時間型質量分析計又はWaters SynaptG2 Q−TOF質量分析計を使用して行った。試料を、従来の分析計に代わるAdvion Triversa Nanomateナノフロー注入装置を使用して導入し、試料注入は、公称流量100nl/分の5μMノズルサイズを有する「A」シリーズチップを介した。Waters LCT−premier飛行時間型質量分析計へのさらなる改変は、供給源温度の正確な制御を可能にするカスタマイズされた供給源冷却装置及び供給源領域における真空状態に正確な制御を与える市販の圧力制御装置を含む。これらの改変はまとまって、TNFαトリマーが天然のフォールディングされたコンフォメーションを保持することを助け、弱い親和性で試験化合物と形成される複合体の検出を容易にする。典型的な設定は、供給源温度:10℃、供給源圧力3.74e
−3mbar、解析機圧力1.54e
−6mbarであった。
【0175】
イオンは、TNFαに複数の電荷をもたらす標準的な正イオンエレクトロスプレー条件を使用して生成した。
【0176】
質量分析は、タンパク質試料中に存在するバッファー塩に対して非常に敏感である。リン酸カリウム又はリン酸ナトリウムなどの典型的なバッファー塩は、イオン化に深刻な有害作用を有する。したがって、タンパク質を質量分析適合バッファー系、典型的にはpH6.8の50mMの酢酸アンモニウムへと交換するZeba脱塩スピンカラムを使用してタンパク質試料を前処理し、これらの塩を除去した。
【0177】
ソフトイオン化条件下でトリマー種の100%透過が観察されるとき、トリマー形態が+12、+13及び+14イオンを含む荷電状態エンベロープとして観察される100%水性環境の天然条件下で5%v/v DMSOを添加すると、荷電状態エンベロープがより低いm/z(より高いz)に移行し、予測されたように、有機共溶媒が溶液中でトリマー種の一部のアンフォールディングを生じさせることが示され、モノマーレベルの上昇も検出される。10%v/v DMSOを添加すると、モノマー形態に関連する荷電状態エンベロープのみが観察され、このレベルのDMSOが溶液中のトリマー形成を妨害することが示される。典型的に、試験化合物は、10mMのDMSOストック溶液として存在させたため、それらを溶液中のTNFαとインキュベートするとき、最終DMSO濃度は5%である。ソフトイオン化条件下で、荷電状態エンベロープは、5%DMSO対照スペクトルだけでなく100%水性下で取得されるスペクトルと比較しても、より高いm/z(より低いz)へ移行することが観察され、試験化合物が5%DMSOの不安定化効果を克服できること及び天然条件下での観察を上回る安定化を与えることができることが示される。このことは、記載される様々な条件下でタンパク質によって取得される電荷の数が変化することによって証拠付けられる。
【0178】
測定される「結合」速度は、速度定数k
onと試験化合物の濃度との算術積であり、高濃度の試験化合物で観察される速度は、低濃度で観察される速度よりも大きい。質量分析により様々な試験化合物濃度で観察される速度を実験的に測定することにより、誘導すべき速度定数(k
on)の値が与えられる。典型的な実験では、試験化合物とTNFαトリマーとの混合物を、Advion Triversa Nanomateロボットを使用して、TNFα及び試験化合物のストック溶液から所望の濃度で調製する。次いで、試料を、質量分析計に数分間にわたって注入し、その期間、遊離TNFαとTNFα/試験化合物複合体の質量スペクトルのシグナル比率を記録する。この作業をいくつかの様々な試験化合物/TNFα比について繰り返す。
【0179】
様々な試験化合物/TNFα比について記録したデータを、Graphpad PRISM v.5を使用して、理論単相対数会合曲線(theoretical one phase logarithmic association curve)に適応させてk
on値を導出した。これにより、Biacoreで観察された低いk
on値が確認された。
【0180】
試験化合物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)中の10mM溶液として調製した。したがって、試験化合物の非存在下で天然のTNFαトリマーに対するDMSOの影響を確立する必要があった。DMSOをTNFαトリマーの水溶液に加えて最終濃度を5%v/vとし、質量スペクトルを取得した。
【0181】
100%水性環境において、つまりDMSOの非存在下で、大部分のTNFαはトリマー形態で存在するが、有意な割合でTNFαモノマーが存在する。100%水性環境において、TNFαのトリマー形態は、+12、+13及び+14イオンを含む荷電状態エンベロープとして観察される
図5、下部トレース)。
【0182】
5%v/v DMSOの添加で、観察されるトリマーTNFαはより少なくなった。荷電状態エンベロープは、より低い質量/電荷比(m/z)に移行し、DMSOがトリマー種の部分的なアンフォールディングを引き起こしたことが示される。モノマーTNFαのレベルの上昇が、5%v/v DMSOの存在下においても検出された。
【0183】
10%v/v DMSOを添加したとき、モノマー形態に関係する荷電状態エンベロープのみが観察され、このレベルのDMSOがTNFαのトリマー形成を妨害することが示される
図5、上部トレース)。
【0184】
式(1)の化合物を、TNFα及び5%v/v DMSOを含む溶液に加え、質量スペクトルを取得した。トリマーTNFαは、式(1)の化合物の存在下で5%v/v DMSOの溶液中に存在することが分かった
図5、中央トレース)。式1の化合物が結合されたTNFαについて観察される荷電状態エンベロープは、より高いm/z値(専ら+12及び+11)に移行し、式(1)の化合物が、DMSOのTNFαに対する弱いアンフォールディング作用を克服するだけでなく、DMSOの非存在下で観察されるものを上回るトリマーTNFα複合体の安定化に至ることを明らかにする。
【0185】
試験化合物が結合する前に十分にトリマーTNFα複合体を弱めるためにDMSOを存在させることが必要かという疑問に対処するために、100%水溶性条件下で水溶性化合物を用いて実験を繰り返した。DMSOの非存在下において、トリマー複合体に結合された化合物は、DMSOが存在したときの観察と同じ高いm/z比への移行を生じさせた(データ示さず)。これにより、試験化合物が、TNFαトリマーへ結合するためにDMSOの存在を必要としないこと、及び不安定化剤の存在にかかわらずそれらの安定化効果を発揮しうることが確認された。
【0186】
試験化合物によるTNFαのトリマー形態の安定化のさらなる証拠を、天然のトリマー形態のモノマーへの分解に有利な傾向である、より厳しいイオン化条件下で試料を解析することから取得した。TNFαが式(1)の化合物と結合するとき、これらの条件下で検出されるTNFαモノマーの量は顕著に減少した(データ示さず)。このことは、試験化合物が、TNFαトリマーを質量分析法による妨害から保護することを示唆する。
【0187】
(例5) − TNFα−式(1)の化合物複合体の化学量論
式(1)の化合物を含む試験化合物のライブラリーとTNFαとのインキュベーションを、ソフトイオン化条件下で質量分析によりモニターした。データは、TNFαトリマー当たり1分子の式(1)の化合物としての結合化学量論を示す
図6。式(1)の化合物は、TNFαのモノマー形態への結合は観察されなかった。TNFαのダイマー形態の安定化について証拠となるものはなかった。このことは、式(1)の化合物を含む試験化合物が、TNFαのダイマー形態を安定化する既知の化合物とは異なる作用様式を有することを立証する。
【0188】
(例6) − TNFαトリマーにおけるモノマー交換
ヒト及びマウスのTNFαホモトリマー(それぞれH
3及びM
3)を一緒にインキュベートし、溶液のアリコートを、交差種のヘテロトリマーの出現について、質量分析によりモニターした。質量分析の解析により、天然TNFαトリマー間のモノマー交換が溶液中で生じうることが確認された。交換速度は遅く、完全な平衡が達成されるまでに4時間の経過にわたってモニターした(データ示さず)。機構は不明であるが、ダイマー形態は何ら観察されなかったので、ダイマー形態の形成が関与している可能性は低い。モノマー交換は、純粋なヒトトリマーとマウストリマーとの間で生じているようであり、マウストリマーとヒトトリマーとを単純に混合するだけで、この交換が質量分析により確認できるようになる。
【0189】
第2の一連の実験において、過剰な式(1)の化合物をヒトTNFαとインキュベートし、次いで、過剰な式(1)の化合物を除去した。質量スペクトル解析により、1:1複合体が、式(1)の化合物とh−TNFαとの間で形成されていることが確認された。マウスTNFαをこの試料に加え、次いで、数時間にわたって質量スペクトル解析に供した。18時間後、試料の組成の変化は観察されなかった。モノマーサブユニット交換は特に生じず、MH
2及びM
2Hのような遊離体又はMH
2L及びM
2HLのようなライゲート体のいずれの混合ヘテロトリマー種の形成も観察されなかった。さらに、M
3L種の形成の証拠はなく、ライゲートされていないH
3種の形成の証拠もなかった。このことは、式(1)の化合物がh−TNFαに一旦結合すると、測定可能な解離速度がないことを強く示唆する。そのように、h−TNFαと共にプレインキュベートするとき、式(1)の化合物はヒトトリマーを閉鎖し、それゆえ、交差種モノマーサブユニット交換が観察されなかった。
【0190】
次いで、実験を逆方向で繰り返した。過剰な式1の化合物をマウスTNFαとインキュベートし、次いで、過剰な式(1)の化合物を除去した。質量スペクトル解析により、1:1複合体が、式(1)の化合物とm−TNFαとの間で形成されていることが確認された。ヒトTNFαをここでこの試料に加え、次いで、数時間にわたって質量スペクトル解析に供した。データからモノマーサブユニット交換が生じうることが明確に示され、混合ヘテロトリマー種の形成が、遊離体(MH
2及びM
2H)並びにライゲート体(MH
2L及びM
2HL)状態の両方で観察された。さらに、ライゲートされたヒトホモトリマー(H
3L)、ライゲートされていないマウスホモトリマー(M
3)及び未結合の式(1)の化合物(L)の証拠があった。このことから、式(1)の化合物とマウスTNFαホモトリマーとの間で1:1複合体は形成されるが、測定可能な解離速度があることが示唆される。一旦この複合体(M
3L)が解離すると、H
3種とM
3種との間とのモノマーサブユニット交換が進行し、解放されたリガンドは溶液中に存在する4つ全てのトリマー種と複合体を形成することができるようになる。そのように、m−TNFαとプレインキュベートするとき、式(1)の化合物はモノマーサブユニット交換を阻止せず、混合ヘテロトリマーの形成が観察された。
【0191】
次いで、これらの2つの実験を、式(1)の化合物に代えて式(2)の化合物を用いて繰り返した。式(2)の化合物をh−TNFαとプレインキュベートし、1:1複合体を得て、その後、ライゲートされていないm−TNFαと混合したときの結果は、式(1)の化合物を用いた場合と同じであった。モノマーサブユニット交換は観察されず、18時間後、H
3L種及びM
3種のみが溶液中で観察され、式(2)の化合物はまた、h−TNFαと複合体化されたとき、測定可能な解離速度を有しないことが確認された。そのように、h−TNFαとプレインキュベートするとき、式(2)の化合物はヒトトリマーを閉鎖し、それゆえ、交差種モノマーサブユニット交換が観察されなかった。
【0192】
しかしながら、式(1)の化合物とは対照的に、式(2)の化合物をm−TNFαとプレインキュベートしたとき、1:1複合体が形成され、次いでライゲートされていないh−TNFαと混合すると、モノマーサブユニット交換は観察されず、18時間後、M
3L種及びH
3種のみが溶液中で観察された。このことは、式(2)の化合物は、m−TNFαと複合体化されたときも、測定可能な解離速度を有しないことを示唆する。そのように、m−TNFαとプレインキュベートするとき、式(2)の化合物はマウストリマーを閉鎖し、それゆえ、交差種モノマーサブユニット交換が観察されなかった。
【0193】
まとめると、これらのデータから、式(1)の化合物と式(2)の化合物とはヒトTNFαに対して同様の親和性を有する一方で、マウスTNFαトリマーに対しては異なる親和性を有し、式(2)の化合物は、マウスTNFαトリマーに対して、式(1)の化合物よりも強固に結合することが示唆される。
【0194】
(例7) − TNFα、TNF−R及び式(1)の化合物を使用するサイズ排除実験からの画分の質量分析の解析
TNFα、TNF−R及び式(1)の化合物の混合物のサイズ排除クロマトグラフィーからの画分を、液体クロマトグラフィー質量分析(LC−MS)により解析した。2つの試料をサイズ排除クロマトグラフィーのために調製した。第1の試料では、式(1)の化合物をTNFαとプレインキュベートした後、化合物−トリマー複合体をTNF−Rに加えた。第2の試料では、式(1)の化合物を、TNFαとTNF−Rとの予め形成された複合体に加えた。LC−MS解析により、式(1)の化合物が、2つのタンパク質を含有するこれらの化合物画分と会合していることが分かり
図7、このことから、添加の順序にかかわらず、式(1)の化合物が依然としてTNFαに結合できること、つまり、式(1)の化合物が、TNF−Rの存在下であってもTNFαに結合することが示唆される。
【0195】
(例8) − TNF−RへのTNFα及び式(2)の化合物−TNFαトリマー複合体の結合の等温熱量解析
ITCバッファー(50mMのHEPES、150mMのNaCl、pH7.4)中のTNFα(128μM)を、化合物2のDMSOストックと60分間インキュベートし、5%DMSO中300mMの最終化合物濃度を得た(試験試料)。また化合物でなくDMSOをTNFα試料に加えた対照試料を60分間インキュベートした(対照)。
【0196】
インキュベーション後、試料を、Nap5サイズ排除カラム(GE Healthcare)でゲル濾過した。カラムを15mlのITCバッファーで平衡化した後、500μlの試料を加えてカラムに流し、1mlのITCバッファーを使用して溶出した。このプロセスは、TNF及び化合物結合TNFを、遊離化合物及びDMSOから分離する。
【0197】
280nmでの吸光度読取りを使用して、NAP5カラムから溶出された後の試験試料又は対照中のTNFα濃度を決定し、試料を64μMのTNFα濃度へ希釈した。
【0198】
200μlのTNFR1(10mM)の細胞外ドメイン(ECD)を、(Plates Standard Bプロトコルを使用して)自動的にAutoITC200(GE Healthcare)の試料セルに装着した。2つの実験において、40μlの試験試料又は対照のいずれかを、同じプロトコルを使用して自動的に注入シリンジに装填した。
【0199】
ITC実験を、等温プロット
図8A及びB)で説明されているITC注入プロトコルを使用して、1000rpmで撹拌しながら25℃で実施した。
【0200】
データを収集し、Origin4.0 SoftwareのGE Healthcare ITCアプリケーションを使用して解析し、結果を、1部位結合アルゴリズムを使用して計算した。
【0201】
試験化合物の非存在下におけるTNF−RへのTNFαの結合のK
Dは77nMと計算された
図8A)。式(2)の化合物の存在下におけるTNF−RへのTNFαの結合のK
Dは、熱量計の感度の範囲未満であり、正確に計算することはできなかった。しかしながら、熱量計の検出下限は約1nMである。したがって、式(2)の化合物の存在下におけるTNF−RへのTNFαの結合のK
Dは、1nM以下であるはずである
図8B参照)。
【0202】
(例9) − 式(1)の化合物へ結合されたトリマーTNFαの結晶構造
TNFαを式(1)の化合物とプレインキュベートして、得られた化合物−トリマー複合体を結晶化した。化合物−トリマーTNFα複合体の結晶構造を、X線結晶解析を使用して決定した。複合体の2.2Åの分解能での結晶構造を、
図9に示す。化合物が、もはや対称でないトリマーの中央に見える。
【0203】
(例10) − 本発明の化合物によるTNFαの中和
L929中和アッセイを、Baarsch MJJ et al(Immunol Methods 1991; 140: 15-22)及びGalloway CJ et al J(Immunol Methods 1991; 140: 37-43)に開示されているプロトコルを使用して実施した。
【0204】
簡単に述べると、L929細胞(ECACC、85011425)を、10%のFCS(PAA)、2mMのグルタミン(Gibco)、50U/mlのペニシリン(Gibco)及び50μg/mlのストレプトマイシン(Gibco)を含むRPMI1640(Gibco)からなる培養培地で培養した。継代されたとき、細胞をカルシウム及びマグネシウムを含まない10mLのダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(Gibco)で3回洗浄し、次いで3mlのトリプシン−EDTA(Gibco)を2分間加え、細胞をフラスコから取り出した。培養培地を加えてトリプシンを中和し、細胞をピペットで上下して、あらゆる塊を除去した。
【0205】
L929細胞は、使用の前日に1/2又は1/3に分割し、さらに24時間培養した。次いで、フラスコを上記のようにトリプシン処理し、96ウェルの平底プレート(Becton Dickinson)のウェル毎に100μl中2×10
4個の細胞を加えた。プレートは、アッセイを設置する前に24時間培養した。
【0206】
段階希釈液を、化合物のDMSOストックから作製した。典型的には、化合物の濃縮溶液から2倍希釈して、25、12.5、6.25、3.125、1.56、0.78、0.39、0.2、0.1μMの最終アッセイ濃度を得ることにより、9点滴定曲線を作成する。
【0207】
アッセイ培地は培養培地と同じであるが、1μg/mlのアクチノマイシンD(Sigma)を含んだ。培地をプレートからはじき飛ばし、アッセイ試料プラスTNFα、標準及び対照を100μlの体積に2連で加えた。プレートをさらに16時間インキュベートし、次いで、ウェル当たり10μlの5mg/mlメチルチアゾールテトラゾリウム(MTT;Sigma)の培養培地中溶液をさらに4時間加えた。反応を、50%のジメチルホルムアミド(DMF;BDH)及び50%脱イオン水に溶解した20%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS、BDH)を含有する100μlの溶解バッファーの添加により停止した。
【0208】
37℃で一晩インキュベートして色素を溶解させた後、プレートをMultiskan EXプレートリーダー(Labsystem)で、570nmで読み取り、630nmでの読取りを減算した。データを、Genesisソフトウェアパッケージを使用して分析した。
【0209】
式(1)の化合物と式(2)の化合物の両方がヒトTNFαの細胞殺傷活性を阻害し
図10、このことから、式(1)の化合物と式(2)の化合物の両方がTNF−Rを通じたヒトTNFα誘導性シグナル伝達を阻害することができることが示された。この例において、式(1)の化合物のIC
50値は306nMであり、式(2)の化合物のIC
50値は125nMであった。またTNF−Rを通じたヒトTNFα誘導性シグナル伝達を阻害することが同じく分かった式(3)の化合物を使用して、プロトコルを繰り返した。したがって、式(3)の化合物のIC
50値は21nMであった。
【0210】
(例11) − 式(1)の化合物によるTNFα誘導性IL−8産生の阻害
健常ドナー由来の静脈血を、静脈穿刺(venupuncture)によりナトリウム/ヘパリン含有チューブ(BD Biosciences)に収集した。末梢血単核球(PBMC)を、Ficoll Paque(Amersham Biosciences)を用いて、密度勾配遠心分離により単離した。簡単に述べると、10mLの血液を、RPMI1640(Gibco)を用いて1:1(v/v)希釈し、20mLのFicoll Paque上に慎重に積層した。細胞を30分間(min)470gでスピンして沈降させ、PBMCを収集し、RPMI1640で1回洗浄し、任意の残余の混入赤血球を、赤血球溶解バッファー(1g/LのKHCO
3、8.3g/LのNH
4Cl、0.0372g/LのEDTA)で溶解した。PBMCからの単球の単離は、製造業者の説明書に従って、CD14+Magnetic MicroBeads(Miltenyi Biotec)を使用して実施した。簡単に述べると、PBMCを、5%のBSA(Sigma)及び2mMのEDTA(Sigma)を含有するダルベッコ変法イーグル培地に1×10
7細胞/mlで再懸濁した。10
7個の全細胞当たり25μLのCD14 MicroBeadsを、室温で15分間インキュベートした。磁気分離を、LSカラム(Miltenyi Biotec)を使用して実施した。細胞/ビーズ混合物をカラムに適用する前に、カラムを磁場に置き、5mLのバッファーで2回洗浄した。次いで、細胞懸濁液を磁場中でカラムにかけた。CD14
+MicroBeadsに結合する単球はLSカラムに保持され、一方で残余のPBMCをカラムに通過させた。単球を単離するために、カラム(保持された細胞を含む)を、磁石から取り出して、収集チューブに入れた。5mLのバッファーをカラムに加え、CD14
+細胞を、カラムの上部にシリンジプランジャーを適用することにより、カラムから収集した。収集した細胞をRPMI1640で1回洗浄した。
【0211】
化合物(ストック濃度10mM)の11点3倍段階希釈(ブランクを含む)を、96ウェルの丸底プレート中で、DMSOで行った。精製された単球を、遠心分離(300gで5分間)によって洗浄し、1×10
6細胞/mLの濃度で完全培地に再懸濁した。160μLのこの細胞集団を、96ウェルの丸底プレート中で、40μLの化合物及びRPMI1640中のTNFα(最終濃度(約1ng/ml)又は適切な対照とともに、37℃で三連にてインキュベートした。
【0212】
18時間後、プレートをスピンダウンし(300g、5分間)、上清をサイトカイン測定のために収集した。
【0213】
ヒトIL−8を、R&D Systems Ltd.からの酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)キットを使用して、製造業者の説明書に従って細胞培養上清中で測定した。ELISAのために使用した基質は、TM Blue(Serologicals Corporation)であった。プレートを630nmの波長で読み取り、470nmで補正した。式(1)の化合物は、濃度依存的様式でTNFα誘導性のIL−8産生を阻害し
図11、IC
50値は454.1nMであった。
【0214】
(例12) − 式(2)の化合物によるTNFα誘導性NF−κB活性化の阻害−レポーター遺伝子アッセイ
TNF−アルファによるHEK−293細胞の刺激により、NF−kB経路の活性化が導かれる。TNFアルファ活性を決定するために使用したレポーター細胞系を、Invivogenから購入した。HEK−Blue(商標)CD40Lは、5NF−kB結合部位に融合されたIFN−ベータ最小プロモーターの制御下でSEAP(分泌アルカリ性ホスファターゼ)を発現する安定な形質転換体である。これらの細胞によるSEAPの分泌は、濃度依存的様式で、TNF−アルファ(0.5ng/ml)、IL−1−ベータ(0.5ng/ml)及び活性化抗ヒトTNFR1抗体(300ng/ml)により刺激される。
【0215】
化合物を、10mMのDMSOストック(最終アッセイ濃度0.3%)から希釈し、10点3倍段階希釈曲線(30,000nMから2nMの最終濃度)を作成した。それら化合物希釈液を、384ウェルのマイクロタイタープレート中で1時間、刺激リガンドと混合した。新たに解凍して洗浄した細胞を、化合物/刺激物の混合物に加え、さらに18時間インキュベートした。SEAP活性を、比色定量基質Quanti−blue(商標)(Invivogen)を使用して上清中で決定した。
【0216】
化合物希釈液の阻害パーセンテージを、DMSO対照及び最大阻害(過剰の対照化合物による)と、Activity Baseのxlfit(4パラメータロジスティックモデル)を使用して計算したIC50との間で計算した。
【0217】
各化合物のTNF−アルファ応答に対する比活性を、カウンタースクリーン(counterscreen)(IL−1ベータ及び抗ヒトTNFR1抗体)で見られる比活性と比較した。
【0218】
式(2)の化合物は、TNFαによるNF−κBの活性化を濃度依存的様式で阻害し、IC
50は113nMであった
図12A)。対照的に、式(2)の化合物は、IL−1βによるNF−κBの活性化
図12B)又はTNF−R1抗体の活性化
図12C)を阻害しなかった。30,000nMを超えるIC
50値がそれぞれの場合で得られた。したがって、式(2)の化合物は、TNF−R1を介するTNFα誘導性シグナル伝達を特異的に阻害するが、他のシグナル伝達経路により(例えば、IL−1βにより)誘導されるか又はTNFαによるTNF−R1からのシグナル伝達の開始が(例えば、活性化TNF−R1抗体の使用により)バイパスされるときのNF−κB活性化には影響を与えない。
【0219】
(例13) − TNFαへの結合動態の決定
表面プラズモン共鳴を使用して、式(1)及び(2)の化合物のTNFαへの会合速度、解離速度及び親和性を測定した
図13A及びB)。この試験の目的のために、Biacore T100/T200を使用した。
【0220】
TNFαを、HBS−Pバッファー(10mMのHEPES pH7.4、0.15MのNaCl、0.005%の界面活性剤P20、BIAcore、GE Healthcare)中pH5で5〜8KRUのレベルまでCM5センサ上に固定化した。次いで、TNFαを、HBS−P中、5%DMSOと共に少なくとも5時間平衡化した。試料を、10mMのストックからDMSO対応バッファーに希釈し、少なくとも5時間放置して溶解させた。流量は30μL/分であった。
【0221】
このアッセイは、式(1)の化合物について25μM及び式(2)の化合物について1μMの最高濃度から開始して、次いでこの試料を段階的に希釈し、4又は5つの濃度の化合物を加えることにより実施した。バックグラウンド減算結合曲線を、標準的手法に従って、BIAevaluationソフトウェアを使用して解析した。結合、親和性、及び動態パラメータを、Biacoreソフトウェアを使用して決定した。動態データを、levenberg marquardtアルゴリズムを使用して適応させた。
【0222】
実験により、式(1)の化合物について2.668e
3M
−1s
−1のk
on図13A)及び式(2)の化合物について1.119e
3M
−1s
−1のk
on図13B)で証拠付けられるように、これらの化合物が、固定化されたTNFαに非常にゆっくり結合することが示された。またこれらの化合物は、この作用様式を有する化合物に特徴的とみられる非常に遅い解離速度を有する。式(1)の化合物についての解離速度定数(k
off)は9.46e
−5s
−1であり、式(2)の化合物についての解離速度定数は、2.24e
−5s
−1と等しい。これは、それぞれ2時間及び8時間を超える解離半減期(t
1/2)に等しい。解離定数(K
D)は、2つの定数の比k
off/k
onから計算することができる。この実験では、式(1)の化合物及び式(2)の化合物についてのK
D値はそれぞれ35nM及び2nMであった。これは、例4に示されるBiacoreで決定されたEC
50より有意に低く、アッセイ形式の違いを反映しているようである。さらにTNFαの形態が、例13の動態アッセイではTNFαが固定化されている点で異なっている。
【0223】
式(3)の化合物のTNFαへの会合速度、解離速度及び親和性を測定するために、実験を繰り返した
図13C)。式(3)の化合物は、5470M
−1s
−1のk
on、4.067e
−5s
−1の解離速度定数、及び7nMのK
Dを有することが分かった。
【0224】
(例14) − 式(1)の化合物及び式(2)の化合物は、in vivoでTNFα活性に拮抗する。
別の試験で、式(1)及び式(2)の化合物を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解させたTNFαの20μM溶液と混合し、2μM、20μM及び200μMの濃度にした。したがって、各化合物のTNFαに対する比率は、0.1:1(試料1)、1:1(試料2)及び10:1(試料3)であった。この溶液を、室温で3時間インキュベートして、化合物をTNFαに結合させ、その後、Zeba Spin脱塩カラム(Thermo Scientific)を使用してゲル濾過した。この処理は、タンパク質結合化合物と遊離化合物とを分離する。PBSのみを含む対照試料を同様に処理して、試験のためのビヒクル対照を得た。溶出タンパク質の濃度を、Nanodrop(ND−1000)を使用して決定した。TNFα:化合物複合体をPBSで希釈して、0.03μg/kgの注入濃度にした。
【0225】
試験について、典型的に、各グループは10匹の雄Balb/cマウス(Charles River)を含み、これとは別に、抗ヒトTNFα抗体陽性対照では1セット5匹のマウスを使用した。抗体対照マウスに、抗hTNFαを10mg/kg(100μL)で腹腔内(i.p.)注入により投与し、5分後(t=−5)、PBS又はhTNFαのいずれかを0.1μg/kg(t=0)でi.p.注入により与えた。
【0226】
試験マウスに、t=0で、ゲル濾過ビヒクル(PBS)、hTNFα(0.03μg/kg)又は試料1、2及び3(TNFαとそれぞれ0.1:1、1:1及び10:1の比で結合した化合物)のいずれかを100μLでi.p.注入した。
【0227】
好中球動員に対する化合物の効果を評価するために、化合物のみのマウスも試験に含めた。
【0228】
全てのマウスを、hTNFαの注入2時間後(t=2h)で頚椎脱臼により殺傷し、腹腔を、3mLのFACSバッファー(2gのウシ血清アルブミンを含む500mLのPBS、6mLのHEPESバッファー、及び500mLのEDTA)で洗浄した。洗浄液を吸引し、好中球数を、下記に詳述するようなFACSにより抗Gr1PE及び抗CD45FITCで細胞を染色することによって評価した。
【0229】
各試料からの100μLの洗浄液をFACSチューブに分割した。FACSカクテルを、FACSバッファー中で抗GR−1PE(BD cat#553128 Lot#75542)を1対39希釈及び抗CD45FITC(BD cat#553080 Lot#80807)を1対19希釈で使用して作製した。Fcブロック(BD Cat#553142 Lot#87810)をFACSバッファー中、1対10希釈で調製し、10μLを、抗体カクテルの添加の5分前に各試料に加えた。10μlの抗体カクテルを、100μLの試料を含有する各チューブに加えた。試料を氷上で20分間放置した。1mLのFACS溶解溶液(BD Cat#349202 Lot#29076、dH
20中で1:10に希釈)を各チューブに加え、混合し、室温で5分間放置した。1mLのFACSバッファーを次いで各チューブに加え、400gで5分間遠心分離した。次いで、FACSバッファーを慎重に注ぎ出し、チューブの先端を吸収紙上で軽くたたいて、チューブを完全に乾燥させた。次いで、FACSバッファー中で1対10希釈した300μLの参照ビーズ溶液(Sigma cat#P2477 Lot#116K1612)を各チューブに加えた。
【0230】
試料をFACScalibur II及びFloJoソフトウェアを使用して解析した。
【0231】
図14は、式(1)の化合物(A)及び式(2)の化合物(B)についての結果を示す。ビヒクル単独は、化合物単独と同様に((B)がわずかに高い)、好中球動員に対してほとんど影響を与えなかった。各試験の試料1(化合物:TNFα比0.1:1)は、化合物の非存在下でTNFαを加えた場合と有意な違いはなかった。試料2(1:1)及び試料3(10:1)は、好中球動員の有意な阻害を示した(それぞれ86%及び85%)。同様に、式(2)の化合物の試料2及び試料3は、好中球動員の有意な阻害を示した(それぞれ101%及び102%)。抗体対照マウスは、好中球動員の100%阻害を示した(データ示さず)。
【0232】
さらなる実験において、マウスをhTNFα(0.3μg/ml)で処理し、式(1)の化合物を経口(p.o.)で投与した。
【0233】
式(1)の化合物を、covaris機を使用して、1%メチルセルロースビヒクル中懸濁液にした。
【0234】
抗ヒトTNFαモノクローナル抗体(抗hTNFα、UCB)を、この試験で陽性対照として利用した。
【0235】
4匹のマウスを使用した抗hTNFαを与えた群を除いて、1群当たり10匹の雄Balb/cマウスを使用した。
【0236】
マウスに、ビヒクル(1%メチルセルロース)又は式(1)の化合物のいずれか100μLを30mg/kg又は100mg/kgでp.o.で30分間(t=−30)又は抗hTNFαを10mg/kgでi.p.で5分間(t=−5)与えてから、ヒトTNFαを注入した。t=0で、マウスに、0.03μg/kgのPBS又はhTNFαのいずれか100μLをi.p.で注入した。
【0237】
全てのマウスを、hTNFαの注入2時間後(t=2h)で頚椎脱臼により殺傷し、腹腔を洗浄し、上記のように好中球数を測定した。
【0238】
30mg/kg及び100mg/kgの式(1)の化合物の経口投与により、腹腔へのTNFα刺激好中球動員が、それぞれ49%及び79%に減少した
図15。i.p.注入によって与えた陽性対照抗体(10mg/kg)は、好中球動員を完全に阻害した。
【0239】
したがって、式(1)の化合物は、TNFαと予め混合し、i.p経路により投与したときだけでなく、経口により投与したときも、in vivoでTNFα活性を拮抗することができる。
【0240】
(例15) − 式(1)及び(2)の化合物によるTNFα安定化の解析
蛍光プローブ温度変性アッセイを実施して、化合物結合の尺度として、TNFαの熱安定性に対する化合物の効果を評価した。反応混合物は、5μlの30×SYPRO(登録商標)オレンジ色素(Invitrogen)、並びに5μlのTNFa(1.0mg/ml)、37.5μlのPBS、pH7.4、及び2.5μlの化合物(DMSO中2mM)を含んだ。10μlの混合物を384PCR光学ウェルプレートに四連で分注し、7900HT Fast Real−Time PCR System(Agilent Technologies)にかけた。PCR System加熱装置を20℃〜99℃に傾斜率1.1℃/分で設定し、ウェルの蛍光変化を電荷結合素子(Charge−coupled device(CCD))によりモニターした。蛍光強度の増加を、温度の関数としてプロットし、T
mをこの変性曲線の中点(変曲点として決定)として計算した(表1)。
【0241】
TNFαの安定化が、Tmの増加により示される。式(1)及び(2)の化合物の両方がTNFαのTmを増加させる(表1に示されるように)。したがって、式(1)及び(2)の化合物の両方が、TNFαトリマーの安定性を高める。
【0242】
表1は、化合物(1)又は(2)のいずれかの存在下におけるTNFαの温度遷移中点(Tm)を示す。
【表1】
【0243】
(例16) − TNFαへの式(4)の化合物の結合に対する式(1)、(2)及び(3)の化合物の効果を決定するための蛍光偏光アッセイ
式(1)の化合物を、5%DMSOに対して100μMの最終濃度から開始して10種の濃度で、60分間、周囲温度で、20mMのTris、150mMのNaCl、0.05%のTween20中で、TNFαと共にプレインキュベートした後、式(4)の化合物を添加し、さらに周囲温度で一晩インキュベートすることによって、試験した。TNFα及び式(4)の化合物の最終濃度は、25μLの全アッセイ体積でそれぞれ50nM及び10nMであった。プレートをAnalystHTリーダーで読み取った。ActivityBaseのxlfit(4パラメータロジスティックモデル)を使用して、IC50を計算した。
【0244】
結果を、
図16にグラフで示す。式(1)の化合物は、TNFαへの式(4)の化合物の結合を、167nMのIC
50値で阻害することができた。
【0245】
実験を、式(2)及び(3)の化合物を使用して繰り返した。式(2)の化合物は、TNFαへの式(4)の化合物の結合を、102nMのIC
50値で阻害することができた。式(3)の化合物は、TNFαへの式(4)の化合物の結合を、20nMのIC
50値で阻害することができた。
【0246】
(例17) − TNFスーパーファミリーの他のメンバーを用いた予備試験
質量分析の解析により、ホモトリマーも形成するCD40Lが、DMSOにより不安定化され、トリマーCD40Lの量の減少に至ることが示された。使用したアッセイプロトコルは、TNFαについての実施例3に記載のプロトコルと同様であるが、代わりにCD40Lを使用した。式(1)の化合物は、DMSOの存在下で、トリマーCD40Lを安定化することが示された(
図17)。このことは、TNFαの試験に適用された質量分析技術、不安定化剤の存在下におけるそのコンフォメーション、及び本発明による化合物の効果が、TNFスーパーファミリーの他のメンバーにも適用可能であることを示している。
【0247】
(例18) − Maら(2014)及びSilvianら(2011)の化合物及び複合体は、本発明の化合物及び複合体と異なる特徴を有する
Maら(2014)JBC289:12457−12466の12458頁に記載されているように、C87は、TNFβの外部表面との相互作用において、TNFR1のループ2/ドメイン2由来の7アミノ酸ペプチドによって占められる空間に適応する分子を見つけることを試みるバーチャルスクリーニングを通じて発見された。MaらからのC87化合物、及びSilvian et al. (2011) ACS Chemical Biology 6:636-647からのBIO8898化合物を、本発明者によって試験した。
【0248】
知見の要約
Maらで記載されたC87についてのBiacore観察結果は再現することができなかった。
細胞におけるTNF特異的阻害の証拠は観察されなかった。
さらにC87は、ミリモルの親和性に感受性である質量分析で結合が観察されなかった。
広範な結晶学的試みで、アポ−TNF(化合物なしのTNF)のみが製造された。
蛍光偏光(FP)アッセイにおいて、C87は、蛍光読出しを有する化合物の干渉レベルを超える有意な阻害を示さなかった。
TNFαの熱融解温度の安定化を測定するThermofluorで、C87についての小さな安定化が示された。
要約すると、トリマーの中心にC87が結合している証拠は見つからなかった。圧倒的多数のデータが、TNFαとの直接的相互作用がないことを示唆した。BIO8898もTNFαに結合しないことが分かった。
【0249】
細胞−TNF誘導性HEK NFKBレポーター遺伝子アッセイ
C87を、TNFαと1時間プレインキュベートしてから、NFκBの制御下にSEAPで安定的にトランスフェクトしたHEK−293細胞に加えた。適切なカウンタースクリーンも、非TNF関連(オフターゲット)活性を検出するために試験した。アッセイを一晩インキュベートした後、阻害を、対照化合物による100%ブロッキングと比較して測定した。最大C87濃度は10,000nMであり、3倍段階希釈した。
【0250】
阻害効果は検出されず、オフターゲット活性に帰属させることはできなかった。
【0251】
Biacore
avi−タグリンカーを使用してTNFを固定化し、C87にチップを通過させた。一実験では、最高濃度の10μMからC87の用量応答を行った。結合は何ら観察されなかった。
【0252】
第2の実験では、チップを通過するC87の流量は減少した。小さなシフトが観察されたが、全体的な結合は無視できる程度であった。
【0253】
Maらに記載のTNFへのC87の結合は、Y軸上のRU値に基づいた超化学量論である可能性が高かった。チップ上の標準TNF密度で、この値は、単純な1:1結合について、予測されるよりも30倍高い領域にあった。
【0254】
別の実験では、BIO8898を、Biacore4000機器のSPRにより、CD40Lの固定化可溶性形態及びTNFαの可溶性形態に対して試験した。17μMの幾何平均IC50がCD40Lに対する結合について決定され、一方で、このアッセイにおいて、TNFαに対する結合は100μMまでの濃度で検出されなかった。
【0255】
質量分析
400μMの濃度でC87のヒトTNFα(20μM)への結合の証拠はなかった。より低い分子量(約473Da)種が、5%未満の占有率で結合しているようである。C87は、503Daの分子量を有する。400μMの濃度での占有率に基づいて、低分子量種の1mMを超える親和性が予測される。
【0256】
結晶学
全体的に、TNFαとのC87の結晶化について、本出願に記載の化合物における通常的手段の試験条件を含め、多大な努力が注がれた。これには、様々リガンド濃度、様々なタンパク質濃度、及び様々な浸漬時間での多数の結晶化の試みの設定が含まれる。いくつかの結晶が観察され、解析によって、塩、つまり化合物を有しないTNFであることが分かった。
【0257】
蛍光偏光(FP)
C87を、蛍光化合物(プローブ)に対するアッセイの前に1時間、TNFαと共にプレインキュベートした。蛍光化合物との直接的(同じ部位で結合する)又は間接的(TNFを妨害する)のいずれかの競合が、FPの減少により検出される。
【0258】
阻害曲線の外挿により、約100μMのIC50が得られた。しかしながら、最高濃度の阻害剤で蛍光消光が観察され、差し引くと、このアッセイでC87の阻害は無視できる程度となった。
【0259】
Thermofluor
Thermofluorは、タンパク質を安定化又は妨害のいずれかをする化合物によるTNFαの融解温度(Tm)の変化を測定する。3.8℃での安定化効果が500μMの濃度のC87で観察されることから、非特異的でありうる弱い結合の可能性が示唆される。
【0260】
Sequence listing
SEQ ID NO: 1 (HCVR of 1974)
DVQLVESGGGLVQPGRSLKLSCAASGFTFSAYYMAWVRQAPTKGLEWVASINYDGANTFYRDSVKGRFTVSRDNARSSLYLQMDSLRSEDTATYYCTTEAYGYNSNWFGYWGQGTLVTVSS
SEQ ID NO: 2 (LCVR of 1974)
DIQMTQSPASLPASPEEIVTITCQASQDIGNWLSWYQQKPGKSPQLLIYGATSLADGVPSRFSASRSGTQYSLKISRLQVEDFGIFYCLQGQSTPYTFGAGTKLELK
SEQ ID NO: 3 (1974 HC mIgG1 full)
DVQLVESGGGLVQPGRSLKLSCAASGFTFSAYYMAWVRQAPTKGLEWVASINYDGANTFYRDSVKGRFTVSRDNARSSLYLQMDSLRSEDTATYYCTTEAYGYNSNWFGYWGQGTLVTVSSAKTTPPSVYPLAPGSAAQTNSMVTLGCLVKGYFPEPVTVTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVPSSTWPSETVTCNVAHPASSTKVDKKIVPRDCGCKPCICTVPEVSSVFIFPPKPKDVLTITLTPKVTCVVVDISKDDPEVQFSWFVDDVEVHTAQTQPREEQFNSTFRSVSELPIMHQDWLNGKEFKCRVNSAAFPAPIEKTISKTKGRPKAPQVYTIPPPKEQMAKDKVSLTCMITDFFPEDITVEWQWNGQPAENYKNTQPIMDTDGSYFVYSKLNVQKSNWEAGNTFTCSVLHEGLHNHHTEKSLSHSPGK
SEQ ID NO: 4 (1974 LC kappa full)
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SEQ ID NO: 5 (HCVR of 1979)
EVHLVESGPGLVKPSQSLSLTCSVTGYSITNSYWDWIRKFPGNKMEWMGYINYSGSTGYNPSLKSRISISRDTSNNQFFLQLNSITTEDTATYYCARGTYGYNAYHFDYWGRGVMVTVSS
SEQ ID NO: 6 (LCVR of 1979)
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SEQ ID NO: 7 (1979 HC mIgG1 full)
EVHLVESGPGLVKPSQSLSLTCSVTGYSITNSYWDWIRKFPGNKMEWMGYINYSGSTGYNPSLKSRISISRDTSNNQFFLQLNSITTEDTATYYCARGTYGYNAYHFDYWGRGVMVTVSSAKTTPPSVYPLAPGSAAQTNSMVTLGCLVKGYFPEPVTVTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVPSSTWPSETVTCNVAHPASSTKVDKKIVPRDCGCKPCICTVPEVSSVFIFPPKPKDVLTITLTPKVTCVVVDISKDDPEVQFSWFVDDVEVHTAQTQPREEQFNSTFRSVSELPIMHQDWLNGKEFKCRVNSAAFPAPIEKTISKTKGRPKAPQVYTIPPPKEQMAKDKVSLTCMITDFFPEDITVEWQWNGQPAENYKNTQPIMDTDGSYFVYSKLNVQKSNWEAGNTFTCSVLHEGLHNHHTEKSLSHSPGK
SEQ ID NO: 8 (1979 LC Kappa full)
DIQMTQSPASLSASLEEIVTITCQASQDIGNWLSWYQQKPGKSPHLLIYGTTSLADGVPSRFSGSRSGTQYSLKISGLQVADIGIYVCLQAYSTPFTFGSGTKLEIKRTDAAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRNEC