特許第6781738号(P6781738)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6781738
(24)【登録日】2020年10月20日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/68 20060101AFI20201026BHJP
   C08F 283/02 20060101ALI20201026BHJP
   C08G 65/18 20060101ALI20201026BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20201026BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20201026BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20201026BHJP
   C09D 7/41 20180101ALI20201026BHJP
   C08F 2/50 20060101ALN20201026BHJP
   C08L 63/00 20060101ALN20201026BHJP
   C08L 71/00 20060101ALN20201026BHJP
   C08F 292/00 20060101ALN20201026BHJP
   C08F 20/00 20060101ALN20201026BHJP
   C08K 3/013 20180101ALN20201026BHJP
   C08L 51/00 20060101ALN20201026BHJP
   C08L 33/14 20060101ALN20201026BHJP
   C08F 2/44 20060101ALN20201026BHJP
【FI】
   C08G59/68
   C08F283/02
   C08G65/18
   C09D4/02
   C09D163/00
   C09D7/61
   C09D7/41
   !C08F2/50
   !C08L63/00 Z
   !C08L71/00 Z
   !C08F292/00
   !C08F20/00 510
   !C08K3/013
   !C08L51/00
   !C08L33/14
   !C08F2/44 A
   !C08F2/44 B
【請求項の数】7
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-126701(P2018-126701)
(22)【出願日】2018年7月3日
(65)【公開番号】特開2019-44153(P2019-44153A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2019年6月28日
(31)【優先権主張番号】特願2017-168218(P2017-168218)
(32)【優先日】2017年9月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 惇
(72)【発明者】
【氏名】辻村 祐輔
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/196536(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/68
C08F 283/02
C08G 65/18
C09D 4/02
C09D 7/41
C09D 7/61
C09D 163/00
C08F 2/44
C08F 2/50
C08F 20/00
C08F 292/00
C08K 3/013
C08L 33/14
C08L 51/00
C08L 63/00
C08L 71/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ラジカル開始剤(A)と、酸発生剤(B)と、多官能(メタ)アクリレートモノマー(C1)と、エステル基を有さず脂環式骨格を有する炭素数5〜30の2官能エポキシモノマー(C2)と、炭素数5〜30のオキセタンモノマー(C3)と、着色剤(D)及び/又は金属酸化物粉末(E)とを含有する活性エネルギー線硬化性組成物であって、
前記2官能エポキシモノマー(C2)が、ノルボルナジエンジオキシド、ジペンテンジオキシド、ビニルシクロヘキセンジオキシド、5,6−エポキシ−4,7−メサノ−1−オキサスピロ−(2,5)−オクタン、リモネンジオキシド、下記一般式(6)で表される化合物及び下記一般式(7)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である活性エネルギー線硬化性組成物(Z)。
【化1】
【化2】
[一般式(6)及び一般式(7)中、R〜R26はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18の炭化水素基又は炭素数1〜18のアルコキシ基であり;前記炭素数1〜18の炭化水素基中の炭素原子は酸素原子で置換されていてもよく、水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく;前記炭素数1〜18のアルコキシ基中の炭素原子は酸素原子で置換されていてもよく、水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく;一般式(6)及び一般式(7)中、a〜d及びf〜gはそれぞれ独立に、0〜4の整数であり;一般式(7)中、e及hは1〜4の整数であり、e及びhは等しい値である。]
【請求項2】
前記酸発生剤(B)が、カチオン成分及びアニオン成分からなる酸発生剤であり、前記カチオン成分がスルホニウム又はヨードニウムであり、前記アニオン成分がPF又はPF(Cである請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
前記多官能(メタ)アクリレートモノマー(C1)、前記2官能エポキシモノマー(C2)及び前記オキセタンモノマー(C3)の合計重量に基づき、前記多官能(メタ)アクリレートモノマー(C1)の重量割合が29〜95重量%であり、前記2官能エポキシモノマー(C2)の重量割合が1〜30重量%であり、前記オキセタンモノマー(C3)の重量割合が4〜70重量%である請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
前記多官能(メタ)アクリレートモノマー(C1)の重量に基づき、前記光ラジカル開始剤(A)の重量割合が1〜30重量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項5】
前記2官能エポキシモノマー(C2)及び前記オキセタンモノマー(C3)の合計重量に基づき、前記酸発生剤(B)の重量割合が1〜30重量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物を含むコーティング剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光照射により表面を硬化させコーティングするいわゆるUVコーティングは、その作業性(速硬化性)や低VOC(揮発性有機化合物)化の観点から、コーティング剤や塗料、印刷インキ等適用範囲が広がりつつある。
一般にUVコーティング剤は、ラジカル重合性モノマー及び光ラジカル開始剤、並びに、用途に応じ着色剤及び添加剤を含有してなる。
着色剤は大別して顔料及び染料からなり、塗膜を着色させるために配合される。着色剤は、その色に応じた光吸収特性を持ち、硬化の際に用いる照射光の一部(又は大部分)を吸収して光が減衰されたり、照射光が遮蔽されたりするため、塗布された塗膜の深部にまで光が届かないことがある。
この問題を解決するために、ラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物とチオキサントン骨格を有する光重合開始剤を使用することが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の発明はラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物とチオキサントン骨格を有する光重合開始剤を使用するものであり、従来技術よりも少ないエネルギー照射量で硬化できる点においては改良されているが、紫外線を吸収しやすいカーボンブラックのような黒色顔料を配合したインキ組成においては硬化性が不足したり、硬化皺や縮みが発生したりするという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−60026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、照射光を減衰又は遮蔽する着色剤等の物質が高濃度で存在する場合や厚膜の場合でも、低エネルギー量で硬化可能な活性エネルギー線硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、本発明に到達した。
即ち、本発明は、光ラジカル開始剤(A)と、酸発生剤(B)と、多官能(メタ)アクリレートモノマー(C1)と、エステル基を有さず脂環式骨格を有する炭素数5〜30の2官能エポキシモノマー(C2)と、炭素数5〜30のオキセタンモノマー(C3)と、着色剤(D)及び/又は金属酸化物粉末(E)とを含有する活性エネルギー線硬化性組成物であって、
前記2官能エポキシモノマー(C2)が、ノルボルナジエンジオキシド、ジペンテンジオキシド、ビニルシクロヘキセンジオキシド、5,6−エポキシ−4,7−メサノ−1−オキサスピロ−(2,5)−オクタン、リモネンジオキシド、下記一般式(6)で表される化合物及び下記一般式(7)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である活性エネルギー線硬化性組成物(Z);前記の活性エネルギー線硬化性組成物(Z)の硬化物である。
[一般式(6)及び一般式(7)中、R〜R26はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18の炭化水素基又は炭素数1〜18のアルコキシ基であり;前記炭素数1〜18の炭化水素基中の炭素原子は酸素原子で置換されていてもよく、水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく;前記炭素数1〜18のアルコキシ基中の炭素原子は酸素原子で置換されていてもよく、水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく;一般式(6)及び一般式(7)中、a〜d、f〜gはそれぞれ独立に、0〜4の整数であり;一般式(7)中、e及hは1〜4の整数であり、e及びhは等しい値である。]
【発明の効果】
【0007】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物(Z)は、優れた硬化性を有し、かつ、硬化物は優れた基材密着性を有する。又、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物(Z)の硬化物は耐汚染性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明における活性エネルギー線硬化性組成物(Z)は、光ラジカル開始剤(A)と、酸発生剤(B)と、多官能(メタ)アクリレートモノマー(C1)と、エステル基を有さず脂環式骨格を有する炭素数5〜30の2官能エポキシモノマー(C2)と、炭素数5〜30のオキセタンモノマー(C3)と、着色剤(D)及び/又は金属酸化物粉末(E)とを含有する。
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」の表記は、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル」の表記は、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
【0009】
本発明における光ラジカル開始剤(A)としては、ベンゾイン化合物(A−1)、アルキルフェノン化合物(A−2)、アントラキノン化合物(A−3)、チオキサントン化合物(A−4)、ケタール化合物(A−5)、ベンゾフェノン化合物(A−6)、ホスフィンオキサイド化合物(A−7)及びオキシムエステル化合物(A−8)等が挙げられる。
【0010】
ベンゾイン化合物(A−1)としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル及びベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
【0011】
アルキルフェノン化合物(A−2)としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2W−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン等が挙げられる。
【0012】
アントラキノン化合物(A−3)としては、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン及び2−アミルアントラキノン等が挙げられる。
【0013】
チオキサントン化合物(A−4)としては、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン及び2−クロロチオキサントン等が挙げられる。
【0014】
ケタール化合物(A−5)としては、アセトフェノンジメチルケタール及びベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0015】
ベンゾフェノン化合物(A−6)としては、ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド及び4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
【0016】
ホスフィンオキサイド化合物(A−7)としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2、6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフォィンオキサイド及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0017】
オキシムエステル化合物(A−8)としては、1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン2−(O−ベンゾイルオキシム)及びエタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0018】
光ラジカル開始剤(A)の内、硬化性の観点から好ましいのは、アルキルフェノン化合物(A−2)、ホスフィンオキサイド化合物(A−7)であり、更に好ましいのは、α−ヒドロキシアルキルフェノン骨格を有する化合物、α−アミノアルキルフェノン骨格を有する化合物(以上、A−2)、ベンゾイル基を有するホスフィンオキサイド化合物(A−7)である。
光ラジカル開始剤(A)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記の光ラジカル開始剤(A)は、硬化性の観点から、アセトニトリル又はメタノール中で測定した波長405nmにおけるモル吸光係数(ε)が5〜1200ml/g・cmであることが好ましい。
εが、上記の好ましい範囲にある開始剤としては、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1[ε:280]、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン[ε:280]、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン[ε:7]、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド[ε:165]及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド[ε:899]等が挙げられる。
【0020】
本発明における酸発生剤(B)とは、活性光線、ラジカル又は熱により酸を発生する化合物を意味する。
前記の酸発生剤(B)としては、カチオン成分及びアニオン成分からなる酸発生剤等が挙げられる。
カチオン成分及びアニオン成分からなる酸発生剤としては、カチオン成分がスルホニウムである酸発生剤(B1)及びカチオン成分がヨードニウムである酸発生剤(B2)等が挙げられる。
【0021】
カチオン成分がスルホニウムである酸発生剤(B1)としては、下記一般式(1)又は下記一般式(2)で示される化合物等が挙げられる。
【0022】
【化1】
【0023】
一般式(1)又は(2)において、Ar〜Arはそれぞれ独立にベンゼン環骨格を少なくとも1個有し、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアシル基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、ニトロ基、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、アミノ基、シアノ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基及びフェニルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基(α)で置換されていてもよい芳香族炭化水素基、又は、前記の基(α)で置換されていてもよい複素環基である。
なお、Ar〜Ar、Ar及びArは1価の基、Arは2価の基である。
【0024】
一般式(1)及び一般式(2)におけるAr〜Arは、紫外〜可視光領域に吸収をもつ基である。
Ar〜Arにおけるベンゼン環骨格の数は、好ましくは1〜5、更に好ましくは1〜4である。
ベンゼン環骨格を1個有する場合の例としては、ベンゼン、又はベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、キノリン、クマリン等の複素環化合物から水素原子を1個又は2個除いた残基等が挙げられる。
ベンゼン環骨格を2個有する場合の例としては、ナフタレン、ビフェニル、フルオレン、又はジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、キサントン、キサンテン、チオキサントン、アクリジン、フェノチアジン及びチアントレン等の複素環化合物から水素原子を1個又は2個除いた残基等が挙げられる。
ベンゼン環骨格3個有する場合の例としては、アントラセン、フェナントレン、ターフェニル、p−(チオキサンチルメルカプト)ベンゼン及びナフトベンゾチオフェン等の複素環化合物から水素原子を1個又は2個除いた残基等が挙げられる。
ベンゼン環骨格4個有する場合の例としては、ナフタセン、ピレン、ベンゾアントラセン及びトリフェニレン等から水素原子を1個又は2個除いた残基等が挙げられる。
【0025】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられ、フッ素及び塩素が好ましい。
【0026】
前記の炭素数1〜20のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、バレリル基及びシクロヘキシルカルボニル基等が挙げられる。
【0027】
前記の炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−又はiso−プロピル基、n−、sec−又はtert−ブチル基、n−、iso−又はneo−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基等が挙げられる。
【0028】
前記の炭素数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−又はiso−プロポキシ基、n−、sec−又はtert−ブトキシ基、n−、iso−、又はneo−ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基及びオクチルオキシ基等が挙げられる。
【0029】
前記の炭素数1〜20のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−又はiso−プロピルチオ基、n−、sec−又はtert−ブチルチオ基、n−、iso−又はneo−ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基及びオクチルチオ基等が挙げられる。
【0030】
前記の炭素数1〜20のアルキルシリル基としては、トリアルキルシリル基(トリメチルシリル基及びトリイソプロピルシリル基等)等が挙げられる。
【0031】
前記のAr〜Arに置換する基(α)として、酸発生効率の観点から好ましいのは、ハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、フェニルチオ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基及び炭素数1〜20のアシル基であり、更に好ましいのは、ハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数1〜15のアルキルチオ基及び炭素数1〜15のアシル基であり、特に好ましいのは、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルチオ基及び炭素数1〜10のアシル基である。尚、上記のアルキル部分は直鎖でも分岐でも環状でもよい。
【0032】
Ar〜Ar、Ar及びArとして、酸発生効率の観点から好ましくは、フェニル基、p−メチルフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−tert−ブチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、p−(チオキサンチルメルカプト)フェニル基及びm−クロロフェニル基である。
【0033】
Arとして、酸発生効率の観点から好ましくは、フェニレン基、2−又は3−メチルフェニレン基、2−又は3−メトキシフェニレン基、2−又は3−ブチルフェニレン基及び2−又は3−クロロフェニレン基である。
【0034】
一般式(1)又は(2)において、(X及び(Xは前記のアニオン成分を表す。
前記の(X及び(Xとしては、ハロゲン化物アニオン、水酸化物アニオン、チオシアナートアニオン、炭素数1〜4のジアルキルジチオカルバメートアニオン、炭酸アニオン、炭酸水素アニオン、ハロゲンで置換されていてもよい脂肪族又は芳香族カルボキシアニオン(安息香酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、パーフルオロアルキル酢酸アニオン及びフェニルグリオキシル酸アニオン等)、ハロゲンで置換されていてもよい脂肪族又は芳香族スルホキシアニオン(トリフルオロメタンスルホン酸アニオン等)、6フッ化アンチモネートアニオン(SbF)、ホスフィンアニオン[6フッ化ホスフィンアニオン(PF)及び3フッ化トリス(パーフルオロエチル)ホスフィンアニオン(PF(C)等]及びボレートアニオン(テトラフェニルボレート及びブチルトリフェニルボレートアニオン等)等が挙げられる。
これらの内、硬化性の観点から好ましくは、ホスフィンアニオン、ハロゲンで置換された脂肪族スルホキシイオン及びボレートアニオンであり、更に好ましくはホスフィンアニオンであり、特に好ましくはPF又はPF(Cである。
【0035】
一般式(2)において、Aは、酸素原子又は硫黄原子である。酸発生効率の観点から好ましいのは、硫黄原子である。
【0036】
カチオン成分がスルホニウムである酸発生剤(B1)として、酸発生効率の観点から好ましくは、トリフェニルスルホニウム、トリ−p−トリルスルホニウム又は[p−(フェニルメルカプト)フェニル]ジフェニルスルホニウムをカチオン成分として有する化合物及び下記一般式(3)又は(4)で示される化合物であり、更に好ましくは[p−(フェニルメルカプト)フェニル]ジフェニルスルホニウムをカチオン成分として有する化合物、下記一般式(3)又は(4)で示される化合物である。
酸発生剤(B1)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0037】
【化2】
【0038】
一般式(3)及び一般式(4)における(X〜(Xは前記のアニオン成分を表し、一般式(1)又は(2)における(X又は(Xとして例示したものと同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
【0039】
前記のカチオン成分がヨードニウムである酸発生剤(B2)としては、下記一般式(5)で示される化合物等が挙げられる。
【0040】
【化3】
【0041】
一般式(5)において、Ar〜Arは、それぞれ独立にベンゼン環骨格を少なくとも1個有し、前記の基(α)で置換されていてもよい芳香族炭化水素基、又は、前記の基(α)で置換されていてもよい複素環基である。
なお、Ar〜Arは1価の基である。
一般式(5)におけるAr〜Arは、一般式(5)で表される化合物が紫外〜可視光領域に吸収をもつようになる基である。
Ar〜Arにおけるベンゼン環骨格の数は、好ましくは1〜5、更に好ましくは1〜4であり、Ar〜Arの具体例としては、一般式(1)又は一般式(2)のAr〜Arとして例示したものと同様のものが挙げられ、好ましいものは炭素数1〜20のアルキル基で置換された芳香族炭化水素基である。
【0042】
一般式(5)において、(Xは、前記のアニオン成分を表し、一般式(1)又は(2)における(X又は(Xとして例示したものと同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
【0043】
前記のカチオン成分がヨードニウムである酸発生剤(B2)として、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−(3テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムN,N’−ビス(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニル)イミデート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート等のジフェニルヨードニウム塩;ビス(4tブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムN,N’−ビス(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニル)イミデート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート等のビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩;4−メチルフェニル){4−(1−メチルエチル)フェニル}ヨードニウム・ヘキサフルオロホスフェート、(4−メチルフェニル){4−(2−メチルプロピル)フェニル}ヨードニウム・ヘキサフルオロホスフェート、[ビス(4−t−ブチルフェニル)]ヨードニウム・ヘキサフルオロホスフェート、[ビス(4−t−ブチルフェニル)]トリフルオロ[トリス(パーフルオロエチル)]ヨードニウム・ヘキサフルオロホスフェート、[ビス(4−メトキシフェニル)]ヨードニウム及び[ビス(4−メトキシフェニル)]ヨードニウム・ヘキサフルオロホスフェート、(4−メチルフェニル){4−(1−メチルエチル)フェニル}ヨードニウム・トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、(4−メチルフェニル){4−(2−メチルプロピル)フェニル}ヨードニウム・トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、[ビス(4−t−ブチルフェニル)]ヨードニウム・トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、[ビス(4−t−ブチルフェニル)]トリフルオロ[トリス(パーフルオロエチル)]ヨードニウム・トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、[ビス(4−メトキシフェニル)]ヨードニウム及び[ビス(4−メトキシフェニル)]ヨードニウム・トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート等が挙げられる。酸発生効率の観点から好ましいのは、(4−メチルフェニル){4−(1−メチルエチル)フェニル}ヨードニウム、(4−メチルフェニル){4−(2−メチルプロピル)フェニル}ヨードニウム、[ビス(4−t−ブチルフェニル)]ヨードニウム、[ビス(4−t−ブチルフェニル)]トリフルオロ[トリス(パーフルオロエチル)]ヨードニウム、[ビス(4−メトキシフェニル)]ヨードニウム及び[ビス(4−メトキシフェニル)]ヨードニウムをカチオン成分として有する化合物であり、更に好ましいのは(4−メチルフェニル){4−(1−メチルエチル)フェニル}ヨードニウム、(4−メチルフェニル){4−(2−メチルプロピル)フェニル}ヨードニウム及び[ビス(4−t−ブチルフェニル)]ヨードニウムである。
上記のカチオン成分がヨードニウムである酸発生剤は、光以外に、反応熱による熱分解又はラジカル種との酸化還元反応による化学分解によって酸を発生させることができる。発生した酸は直ちにエポキシモノマーと反応し、カチオン重合が進行する。カチオン重合に伴って発生する反応熱により、さらに自触媒的にカチオン重合が促進される。
酸発生剤(B2)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0044】
これら酸発生剤(B)のうち、硬化性の観点から好ましくはカチオン成分がヨードニウムである酸発生剤(B2)である。
【0045】
多官能(メタ)アクリレートモノマー(C1)としては、2官能(メタ)アクリレートモノマー(C11)、3官能(メタ)アクリレートモノマー(C12)及び4官能以上の(メタ)アクリレートモノマー(C13)等が挙げられる。
【0046】
前記のモノマー(C11)としては、2官能(メタ)アクリレートモノマー(C111)、2官能ウレタン(メタ)アクリレートモノマー(C112)、2官能ポリエステル(メタ)アクリレートモノマー(C113)が挙げられる。
【0047】
[2官能(メタ)アクリレートモノマー(C111)]、
前記のモノマーモノマー(C111)としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート及びプロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0048】
[2官能ウレタン(メタ)アクリレートモノマー(C112)]
前記のモノマー(C112)は、イソシアネートに、水酸基を有する(メタ)アクリル酸を反応させることにより得られる化合物であれば特に限定されず、例えば、2つのイソシアネート基を有する化合物1当量に対して水酸基を有する(メタ)アクリル酸2当量を触媒として金属系化合物(スズ化合物及びビスマス化合物等)存在下で反応させることによって得ることができる。
【0049】
前記のモノマー(C112)の原料となるイソシアネートとしては特に限定されず、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイオシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシレンジイソシアネート及び1,6,10−ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
また、上記イソシアネートとしては、ポリオール(エチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、(ポリ)プロピレングリコール、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等)と、過剰のイソシアネートとの反応により得られる鎖延長されたイソシアネート化合物も用いることができる。
【0050】
前記のモノマー(C112)の原料となる水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては特に限定されず、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及び、ポリエチレングリコール等の二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0051】
[2官能ポリエステル(メタ)アクリレートモノマー(C113)]
前記のモノマー(C113)は、ポリカルボン酸とポリオールの縮合によって得られる末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、ポリカルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0052】
前記のモノマー(C113)の構成単位であるポリオールとしては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオ−ル、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオール等)、アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール等)、脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール及び水素添加ビスフェノールA等)、ビスフェノール(ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールS等)、ビスフェノールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイド等)付加物(平均付加モル数2〜8)及びグリセリン等が挙げられる。
【0053】
前記のモノマー(C113)の構成単位であるポリカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバンチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、イソオクチルコハク酸及びアコニット酸、並びに、これらの酸の無水物又は低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0054】
[3官能(メタ)アクリレートモノマー(C12)]
前記のモノマー(C12)としては、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールの炭素数2〜3のアルキレンオキサイド1〜30モル付加物のトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート及びエトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート等が挙げられる。
【0055】
[4官能以上の(メタ)アクリレートモノマー(C13)]
前記のモノマー(C13)としては、4官能以上の(メタ)アクリレートモノマー(C131)及び4官能以上のウレタン(メタ)アクリレートモノマー(C132)等が挙げられる。
【0056】
[4官能以上の(メタ)アクリレートモノマー(C131)]
前記のモノマー(C131)としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールの炭素数2〜3のアルキレンオキサイド1〜11モル付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0057】
[4官能以上のウレタン(メタ)アクリレートモノマー(C132)]
前記のモノマー(C132)は、U−6LPA、UA−1100H、U−15HA(以上、新中村化学工業(株)製)、UN−3320HA、UN−3320HC、UN−3320HS、UN−904、UN−906S、UN−901T、UN−905、UN−952(以上、根上工業(株)製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、UA−510H(以上、共栄社化学(株)製)等として、市場から入手することができる。
【0058】
前記の(メタ)アクリレートモノマー(C1)はラジカル重合速度が大きく、反応熱が大きいことが好ましい。ラジカル重合速度が大きいと、少量のラジカル種でも硬化できる。また、反応熱が大きいと、カチオン重合反応を触媒できることから、硬化が促進される。そのため、(メタ)アクリレートモノマー(C1)は官能基密度が高いことが望ましい。
また、着色剤(D)及び/又は金属酸化物粉末(E)等の物質が高濃度で存在する場合、光が深部まで届かないため、表面付近でのみ硬化が起こり、深部(内部)での硬化が困難である。深部(内部)が未硬化である場合、基材と樹脂界面での接着力が低下するため、基材密着性が低下する。
前記の(メタ)アクリレートモノマー(C1)の内、上記の観点(硬化性、基材密着性及び耐汚染性)から好ましいのは、(C12)及び(C13)であり、更に好ましいのは(C131)である。
前記の多官能(メタ)アクリレートモノマー(C1)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0059】
本発明における多官能(メタ)アクリレートモノマー(C1)の重量平均分子量(以下、Mwと略記することがある)は、硬化性の観点から200〜50,000であることが好ましい。
本発明におけるMwは、THFを溶剤として用い、ポリオキシプロピレングリコールを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される。サンプル濃度は0.25重量%、カラム固定相はTSKgel SuperH2000、TSKgel SuperH3000、TSKgel SuperH4000(いずれも東ソー株式会社製)を各1本連結したもの、カラム温度は40℃とすればよい。
【0060】
エステル基を有さず脂環式骨格を有する炭素数5〜30の2官能エポキシモノマー(C2)としては、ノルボルナジエンジオキシド、ジペンテンジオキシド、ビニルシクロヘキセンジオキシド、5,6−エポキシ−4,7−メサノ−1−オキサスピロ−(2,5)−オクタン、リモネンジオキシド、下記一般式(6)で表される化合物及び下記一般式(7)で表される化合物等が挙げられる。
【0061】
【化4】
【0062】
【化5】
【0063】
一般式(6)及び一般式(7)中、R〜R26はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18の炭化水素基又は炭素数1〜18のアルコキシ基である。
【0064】
前記の炭素数1〜18の炭化水素基中の炭素原子は酸素原子で置換されていてもよく、水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。
前記の炭素数1〜18のアルコキシ基中の炭素原子は酸素原子で置換されていてもよく、水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。
〜R26の内、硬化性の観点から好ましくは、水素原子、ハロゲン原子及び炭素数1〜4の炭化水素基(メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等)であり、更に好ましくは水素原子である。
【0065】
また、一般式(6)及び一般式(7)中、a〜hはそれぞれ独立に、0〜4の整数である。
また、一般式(6)において、硬化性の観点から、a、b、c及びdの組み合わせとして好ましくは(a=1、b=0、c=1、d=0)、(a=1、b=1、c=1、d=0)、(a=1、b=1、c=2、d=0)、(a=1、b=1、c=1、d=1)又は(a=2、b=1、c=2、d=1)であり、更に好ましくは(a=1、b=0、c=1、d=0)、(a=1、b=1、c=1、d=0)又は(a=1、b=1、c=1、d=1)であり、特に好ましくは(a=1、b=1、c=1、d=0)である。
また、一般式(7)において、硬化性の観点から、e、f、g及びhの組み合わせとして好ましくは(e=1、f=1、g=0、h=1)、(e=1、f=1、g=1、h=1)又は(e=1、f=2、g=1、h=1)であり、更に好ましくは(e=1、f=1、g=0、h=1)である。
【0066】
一般式(6)で表される化合物としては、3a,4,7,7a−テトラヒドロインデンジオキシド等が挙げられる。
一般式(7)で表される化合物としては、ジシクロペンタジエンジオキシド等が挙げられる。
【0067】
一般式(6)で表される化合物及び一般式(7)で表される化合物は、国際公開第2014/175129号に記載の方法等で合成することができる。
【0068】
エポキシ化合物によるカチオン重合において、エポキシモノマーは官能基密度が高く、かつエステル基、ウレタン基、ウレア基、アミノ基のような高極性基を持たないことが望ましい。官能基密度が高いと、開始反応速度が大きくなり、また、高極性基を持たないと、連鎖移動反応が起きにくくなるためである。
【0069】
エポキシモノマーの官能基密度[x](ミリモル/g)は下記計算式(1)により算出できる。
[x]=(a×c/M+a×c/M+・・・
+a×c/M+・・・+a×c/M)×10 (1)
上記式(1)中、a、a、・・・a、・・・aは、エポキシモノマーを構成するエポキシ基含有化合物各成分(以下各成分と略記)の重量%、c、c1、・・・c、・・・cは、各成分中のエポキシ基の数、M、M、・・・M、・・・Mは、各成分の分子量を表す。
【0070】
前記のエポキシモノマー(C2)の内、硬化性及び基材密着性及び耐汚染性の観点から好ましくは、一般式(6)で表される化合物及び一般式(7)で表される化合物であり、更に好ましくは3a,4,7,7a−テトラヒドロインデンジオキシド、1,3a,4,6a−テトラヒドロペンタレンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド及び1−メチルジシクロペンタジエンジオキシドである。
前記のエポキシモノマー(C2)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0071】
炭素数5〜30のオキセタンモノマー(C3)としては、単官能オキセタンモノマー(C31)、2官能オキセタンモノマー(C32)及び3官能以上のオキセタンモノマー(C33)等が挙げられる。
【0072】
[単官能オキセタンモノマー(C31)]
前記(C31)としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(商品名「OXT−101」、東亞合成(株)製)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(商品名「OXT−212」、東亞合成(株)製)、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(商品名「OXT−211」、東亞合成(株)製)、3−エチル−3−シクロヘキソキシメチルオキセタン(商品名「OXT−213」、東亞合成(株)製)、3−エチル−3−アクリロキシメチルオキセタン(商品名「OXE−10」、大阪有機化学工業(株)製)及び3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタン(商品名「ETERNACOLL OXMA」、宇部興産(株)製)等が挙げられる。
【0073】
[2官能オキセタンモノマー(C32)]
前記(C32)としては、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチレンオキサイド(以下、EOと略記することがある)変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、プロピレンオキシド(以下、POと略記することがある)変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールFビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン(商品名「OXT−121」、東亞合成(株)製)、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン(商品名「OXT−221」、東亞合成(株)製)、4,4’ −ビス[3−エチル−(3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル(商品名「ETERNACOLL OXBP」、宇部興産(株)製)、ジ(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシエチルアジピン酸(商品名「アジピン酸ビスオキセタン」、宇部興産(株)製)、ビス(3−エチルオキセタン−3−イルメチル)カーボネート(商品名「ジオキセタンカーボネート」、宇部興産(株)製)及びテレフタル酸ビス−(3−エチル−オキセタン−3−イルメチル)エステル(商品名「OXTP」、宇部興産(株)製)等が挙げられる。
【0074】
[3官能以上のオキセタンモノマー(C33)]
前記(C33)としては、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
開環反応によるカチオン重合において、モノマーはエポキシモノマーとオキセタンモノマーを併用することが望ましい。エポキシモノマーは開始反応速度が大きいが、成長反応速度が小さく、連鎖移動反応速度が大きい。オキセタンモノマーは、開始反応速度が非常に小さいが、成長反応速度が大きく、連鎖移動反応速度も小さい。そのため、エポキシモノマーとオキセタンモノマーを併用することで、開環反応によるカチオン重合速度を飛躍的に高めることができ、少量の酸でも重合が進行する。そのため、オキセタンモノマーは、官能基密度が大きいことが望ましい。
前記のオキセタンモノマー(C3)の内、硬化性及び基材密着性及び耐汚染性の観点から好ましくは(C31)及び(C32)であり、更に好ましいのは(C32)である。
前記のオキセタンモノマー(C3)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0075】
着色剤(D)としては、従来、塗料及びインキ等に使用されている等の顔料(無機顔料及び有機顔料等)及び染料等が挙げられる。
【0076】
無機顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、紺青、硫酸バリウム、カドミウムレッド、酸化チタン、亜鉛華、ベンガラ、アルミナ、炭酸カルシウム、群青、カーボンブラック、グラファイト及びチタンブラック等が挙げられる。
【0077】
有機顔料としては、β−ナフトール、β−オキシナフトエ酸アニリド、アセト酢酸アニリド、ピラゾロン等の溶性アゾ顔料、β−ナフトール、β−オキシナフトエ酸、β−オキシナフトエ酸アニリド、アセト酢酸アニリドモノアゾ、アセト酢酸アニリドジスアゾ、ピラゾロン等の不溶性アゾ顔料、銅フタロシニンブルー、ハロゲン化銅フタロシアニンブルー、スルホン化銅フタロシアニンブルー、金属フリーフタロシアニン等のフタロシアニン顔料、イソシンドリノン、キナクリドン、ジオキサンジン、ペリノン及びペリレン等の多環式又は複素環式化合物が挙げられる。
【0078】
染料の具体例として、イエロー染料としては、カップリング成分としてフェノール、ナフトール、アニリン、ピラゾロン、ピリドン若しくは開鎖型活性メチレン化合物を有するアリール又はヘテリルアゾ染料、カップリング成分として開鎖型活性メチレン化合物を有するアゾメチン染料、ベンジリデン染料及びモノメチンオキソノール染料等のメチン染料、ナフトキノン染料及びアントラキノン染料等のキノン系染料等、キノフタロン染料、ニトロ、ニトロソ染料、アクリジン染料並びにアクリジノン染料等が挙げられる。
【0079】
マゼンタ染料としては、カップリング成分としてフェノール、ナフトール、アニリン、ピラゾロン、ピリドン、ピラゾロトリアゾール、閉環型活性メチレン化合物若しくはヘテロ環(ピロール、イミダゾール、チオフェン及びチアゾール等)を有するアリール又はヘテリルアゾ染料、カップリング成分としてピラゾロン又はピラゾロトリアゾールを有するアゾメチン染料、アリーリデン染料、スチリル染料、メロシアニン染料及びオキソノール染料等のメチン染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料及びキサンテン染料等のカルボニウム染料、ナフトキノン、アントラキノン及びアントラピリドン等のキノン染料並びにジオキサジン染料等の縮合多環染料等を挙げられる。
【0080】
シアン染料としては、インドアニリン染料及びインドフェノール染料等のアゾメチン染料、シアニン染料、オキソノール染料及びメロシアニン染料等のポリメチン染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料及びキサンテン染料等のカルボニウム染料、フタロシアニン染料、アントラキノン染料、カップリング成分としてフェノール、ナフトール、アニリン、ピロロピリミジノン若しくはピロロトリアジノンを有するアリール又はヘテリルアゾ染料(C.I.ダイレクトブルー14等)並びにインジゴ・チオインジゴ染料を挙げられる。
着色剤(D)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0081】
着色剤(D)の粒子径は、塗膜の鮮映性の観点から、平均粒子径として好ましくは0.01μm〜2.0μmであり、更に好ましくは0.01μm〜1.0μmである。
【0082】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物(Z)は、金属酸化物粉末(E)を含有することにより、セラミック電子部品のグリーンシート形成及び電極層形成に使用することができる。
金属酸化物粉末(E)としては、上記着色剤(D)に挙げられたものを除く、Si、Mg、Al、Ti、Zr、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Sn及びZnの酸化物を含む粒子が挙げられる。
具体的には、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、酸化ニオブ及びチタン酸ジルコン酸鉛等が挙げられる。
金属酸化物粉末(E)の形状としては、球状の粒子及び針状の粒子等が挙げられる。
金属酸化物粉末(E)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0083】
金属酸化物粉末(E)の粒子径は、誘電率の観点から、好ましくは平均粒子径として0.01μm〜2.0μmであり、更に好ましくは0.01μm〜1.0μmである。
【0084】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物(Z)は、前記の(A)、(B)、(C1)、(C2)、(C3)、(D)及び(E)以外に、その他の添加剤を含有していてもよい。
その他の添加剤としては、分散剤(F)、増感剤(G)及び溶剤等が挙げられる。
【0085】
分散剤(F)としては、ビックケミー社製分散剤(Anti−Terra−U、Disperbyk−101,103、106、110、161、162、164、166、167、168,170、174、182、184又は2020等)、味の素ファインテクノ社製分散剤(アジスパーPB711、PB821、PB814、PN411及びPA111等)、ルーブリゾール社製分散剤(ソルスパーズ5000、12000、32000、33000、36000及び39000等)が挙げられる。
分散剤(F)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0086】
本発明における増感剤(G)としては、アントラセン、チオキサントン、ベンゾフェノンチオキサントン、フェノチアゼン及びぺリレン等が挙げられる。
なかでも、アントラセンは、カチオン重合開始剤と併用することで、飛躍的に光感度を向上させることができることから好ましい。
アントラセンの増感剤としては、ジエキシアントラセン(商品名「UVS−1101」、川崎化成工業(株)製)、ジプロポキシアントラセン(商品名「UVS−1221」、川崎化成工業(株)製)、ジブトキシアントラセン(商品名「UVS−1331」、川崎化成工業(株)製)が挙げられる。
増感剤(G)の内、溶解性、硬化性の観点から好ましいのは、ジブトキシアントラセンである。
増感剤(G)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0087】
前記のモノマー(C1)の重量割合は、硬化性の観点から、前記のモノマー(C1)、前記のモノマー(C2)及び前記のモノマー(C3)の合計重量に基づき、好ましくは29〜95重量%であり、更に好ましくは50〜90重量%であり、特に好ましくは50〜75重量%である。
前記のモノマー(C2)の重量割合は、硬化性の観点から、前記のモノマー(C1)、前記のモノマー(C2)及び前記のモノマー(C3)の合計重量に基づき、好ましくは1〜30重量%であり、更に好ましくは1〜10重量%である。
前記のモノマー(C3)の重量割合は、硬化性の観点から、前記のモノマー(C1)、前記のモノマー(C2)及び前記のモノマー(C3)の合計重量に基づき、好ましくは4〜70重量%であり、更に好ましくは5〜50重量%であり、特に好ましくは20〜50重量%である。
【0088】
前記の光ラジカル開始剤(A)の重量割合は、硬化性の観点から、前記のモノマー(C1)の重量に基づき、好ましくは1〜30重量%であり、更に好ましくは5〜20重量%である。
【0089】
前記の酸発生剤(B)の重量割合は、硬化性の観点から、前記のモノマー(C2)及び前記のモノマー(C3)の合計重量に基づき、好ましくは1〜30重量%であり、更に好ましくは5〜20重量%である。
【0090】
前記の着色剤(D)及び前記の金属酸化物粉末(E)の合計重量の割合は、着色性及び機械的物性の観点から、活性エネルギー線硬化性組成物(Z)の重量に基づき、好ましくは1〜60重量%であり、更に好ましくは1〜30重量%である。
【0091】
前記の分散剤(F)の重量割合は、前記の着色剤(D)及び金属酸化物粉末(E)の分散性の観点から、前記の着色剤(D)及び金属酸化物粉末(E)の合計重量に基づき、好ましくは1〜90重量%であり、更に好ましくは5〜80重量%である。
【0092】
前記の増感剤(G)の重量割合は、硬化性の観点から、前記のモノマー(C1)、前記のモノマー(C2)及び前記のモノマー(C3)の合計重量に基づき、好ましくは0.1〜10重量%であり、更に好ましくは0.5〜5重量%である。
【0093】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物(Z)の製造方法は、特に限定はされない。
例えば、前記の光ラジカル開始剤(A)と、前記の酸発生剤(B)と、前記のモノマー(C1)と、前記のモノマー(C2)と、前記のモノマー(C3)と、前記の着色剤(D)及び/又は前記の金属酸化物粉末(E)と、必要に応じて前記の分散剤(F)と、増感剤(G)とを、20〜80℃の温度範囲で、公知の機械的混合方法(メカニカルスターラー及びマグネティックスターラー等を用いる方法)を用いることによって均一混合することで、製造することができる。
【0094】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物(Z)は、360nm〜830nmの活性光線の照射で光硬化できるため、一般的に使用されている高圧水銀灯の他、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ及びハイパワーメタルハライドランプ等(UV・EB硬化技術の最新動向、ラドテック研究会編、シーエムシー出版、138頁、2006)が使用できる。
活性光線の照射時及び/又は照射後に酸発生剤から発生した酸を拡散させる目的で、加熱を行ってもよい。
加熱温度は、好ましくは30℃〜200℃であり、更に好ましくは35℃〜150℃、特に好ましくは40℃〜120℃である。
【0095】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物(Z)の基材への塗布方法としては、公知のコーティング法(スピンコート、ロールコート及びスプレーコート等)及び公知の印刷法(平版印刷、カルトン印刷、金属印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷及びグラビア印刷等)を適用できる。また、微細液滴を連続して吐出するインクジェット方式の塗布にも適用できる。
【0096】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物(Z)は、少エネルギー量でも高着色剤濃度で厚膜硬化可能であるため、コーティング剤、インキ(UV印刷インキ及びUVインクジェット印刷インキ等)、塗料、接着剤及びセラミック電子部品製造用の材料として極めて有用である。
【実施例】
【0097】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0098】
製造例1:酸発生剤(B1−2){化学式(8)で表される化合物}の製造
ジフェニルスルホキシド12.1重量部、ジフェニルスルフィド9.3重量部及びメタンスルホン酸43.0重量部を撹拌しながら、これに無水酢酸7.9重量部を滴下し、40〜50℃で5時間反応させた後、室温(約25℃)まで冷却し、この反応溶液を20重量%トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸カリウム水溶液121重量部中に投入し、室温で1時間撹拌して、黄色の粘調な油状物が析出した。この油状物を酢酸エチルにて抽出し、有機層を水で数回洗浄した後、有機層から溶剤を留去し、得られた残渣にトルエンを加えて溶解した後、ヘキサンを加え、10℃で1時間撹拌した後に静置した。1時間後、溶液は2層に分離したため、上層を分液によって除去した。残渣にヘキサンを加え、室温でよく混合すると淡黄色の結晶が析出した。これを濾別し、減圧乾燥して、目的とする酸発生剤(B1−2)48重量部を得た。
【0099】
【化6】
【0100】
製造例2:酸発生剤(B2−1){化学式(9)で表される化合物}の製造
【0101】
トルエン[東京化成工業(株)製]6.5重量部、イソプロピルベンゼン[東京化成(株)製]8.1重量部、ヨウ化カリウム[東京化成工業(株)製]5.4重量部及び無水酢酸20重量部を酢酸70重量部に溶解させ、10℃まで冷却し、温度を10±2℃に保ちながら、濃硫酸12重量部と酢酸15重量部の混合溶液を1時間かけて滴下した。25℃まで昇温し、24時間攪拌した。その後、反応溶液にジエチルエーテル50重量部を加え、水で3回洗浄し、ジエチルエーテルを減圧留去した。残渣にトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸カリウム118重量部を水100重量部に溶解させた水溶液を加え、25℃で20時間攪拌した。その後、反応溶液に酢酸エチル500重量部を加え、水で3回洗浄し、有機溶剤を減圧留去することで目的とする酸発生剤(B2−1)5.0重量部を得た。
【0102】
【化7】
【0103】
製造例3:3a,4,7,7a−テトラヒドロインデンジオキシド(C2−1)の製造
冷却管、撹拌装置、温度計を備えたSUS製反応容器に3a,4,7,7a−テトラヒドロインデン[東京化成工業(株)製]120重量部、酢酸エチル480重量部を仕込み、過酢酸濃度30重量%の酢酸エチル溶液1,270重量部を3時間かけて滴下した。滴下中は反応温度が30℃を保つように調節した。滴下終了後、3時間反応温度を30℃に保ち、エポキシ化反応を終了した。反応液を室温まで冷却後、20重量%水酸化ナトリウム水溶液1200重量部を加え、1時間撹拌後、30分静置し、分液することにより、未反応の過酢酸及び副生成物の酢酸を除去した。蒸留装置を用いて酢酸エチルを留去した後、3a,4,7,7a−テトラヒドロインデンジオキシド(C2−1)152重量部を得た。
【0104】
製造例4:ジシクロペンタジエンジオキシド(C2−2)の製造
冷却管、撹拌装置、温度計を備えたガラス製反応容器にジシクロペンタジエン[東京化成工業(株)製]132重量部、酢酸エチル480重量部を仕込み、過酢酸濃度30重量%の酢酸エチル溶液1,270重量部を3時間かけて滴下した。滴下中は反応温度が30℃を保つように調節した。滴下終了後、3時間反応温度を30℃に保ち、エポキシ化反応を終了した。反応液を室温まで冷却後、20重量%水酸化ナトリウム水溶液1200重量部を加え、1時間撹拌後、30分静置し、分液することにより、未反応の過酢酸及び副生成物の酢酸を除去した。蒸留装置を用いて酢酸エチルを留去した後、ジシクロペンタジエンジオキシド(C2−2)164重量部を得た。
【0105】
<実施例1〜45、比較例1〜5>
表1に記載の(A)〜(G)を、表1に記載の配合組成(重量部)に従って、配合し、20℃で均一に混合後、ヤマト科学(株)製ウルトラディスパーサーを用いて周速23m/s(回転数:10,000rpm)で撹拌し、実施例1〜45の活性エネルギー線硬化性組成物(Z)及び比較例1〜5の比較用活性エネルギー線硬化性組成物を得た。
【0106】
次に、得られた各活性エネルギー線硬化性組成物(Z)を、表面処理を施した厚さ100μmのPETフィルム[商品名「コスモシャインA4300」、東洋紡(株)製]に、アプリケーターを用いて硬化後の膜厚が30μmとなるように塗布して、順風乾燥機(タバイエスペック(株)製)を用いて、80℃で1分間加熱し、溶剤を乾燥させた。大気雰囲気下及び室温で、ベルトコンベア式UV照射装置[アイグラフィックス(株)製「ECS−151U」]にて露光量500mJ/cmで硬化し、評価用硬化物を得た。
上記の硬化物を、以下の評価方法(1)〜(3)に従って、評価した。評価結果を表1〜2に示す。
【0107】
<評価方法>
(1)塗膜外観及び指触試験[硬化性の評価]
上記評価用硬化物を目視及び指触により硬化性を評価し、以下の基準で評価した。
<評価基準>
◎:硬化皺がなく、タック性なし
○:硬化皺あるが、タック性なし
△:少なくとも1部が硬化するが、タック性あり
×:未硬化
【0108】
(2)基材密着性[基材密着性の評価]
JIS K 5600−5−6に準拠し、上記評価用硬化物を2mm×2mmの碁盤目(10×10=100マス)にクロスカットし、この上に付着テープを張り付けて、引き剥し、100マス中、剥離せず密着しているマス目の個数を、目視で数え、以下の基準で評価した。
<評価基準>
◎:100/100
○:99/100〜90/100
△:89/100〜50/100
×:49/100〜0/100
【0109】
(3)耐汚染性
黒、青、赤のマジックインキ(登録商標)大型[寺西化学工業(株)製]を用いて長さ4〜5cmの直線を描いて23℃の恒温室に24時間保管した。次いで、石油ベンジンとエタノールとを同質量部混合した溶剤を脱脂綿に十分にしみこませ、圧迫しながら描写した直線を1回ふき取った。このとき塗膜に残留するインキの様子を汚染性として評価した。
◎:痕跡なし
○:かすかに痕跡はあるが、元の線の形状が判別できない。
△:薄く痕跡があり、元の線の形状が判別できる。
×:明確に痕跡が残っている。
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
表1〜2中の略号は以下のとおり。
<光ラジカル開始剤(A)>
(A−1):ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド[商品名「IRGACURE 819」、BASF(株)製、ε:899]
(A−2):2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド[商品名「IRGACURE TPO」、BASF(株)製、ε:165]
(A−3):2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン[商品名「IRGACURE 127」、BASF(株)製、ε:7]
(A−4):2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン[商品名「IRGACURE 379EG」、BASF(株)製、ε:280]
【0113】
<酸発生剤(B)>
(B1−1):ジフェニル4−チオフェノキシフェニルスルホニウム・ヘキサフルオロホスフェート[商品名「CPI−110P」、サンアプロ(株)製]
(B1−2):ジフェニル4−チオフェノキシフェニルスルホニウム・トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート
(B2−1):4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム・トリ(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート
(B2−2):4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム・ヘキサフルオロホスフェート[商品名「IRGACURE 250」、BASF(株)製]
【0114】
<(メタ)アクリレートモノマー(C1)>
(C1−1):ペンタエリスリトールテトラアクリレート[商品名「ネオマー EA−300」、三洋化成工業(株)製、Mw:352]
(C1−2):ジペンタエリスリトールペンタアクリレート[商品名「ネオマー DA−600」、三洋化成工業(株)製、Mw:524]
(C1−3):エトキシ化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート[商品名「SR494」、サートマー(株)製]
(C1−4):ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート[商品名「AD−TMP」、新中村化学工業(株)製]
<エポキシモノマー(C2)>
(C2−3):リモネンジオキシド[商品名「LDO」、巴化学工業(株)製]
(C2−4):ビニルシクロヘキセンジオキシド[商品名「ビニルシクロヘキセンジオキシド」、Sigma−Aldrich(株)製]
(比C2−1):3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート[商品名「セロキサイド2021P」、(株)ダイセル製]
(比C2−2):1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル[商品名「デナコール Ex−212」、ナガセケムテックス(株)製]
<オキセタンモノマー(C3)>
(C3−1):3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン[商品名「OXT−221」、東亞合成(株)製]
(C3−2):1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン[商品名「OXT−121」、東亞合成(株)製]
(C3−3):3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン[商品名「OXT−101」、東亞合成(株)製]
(C3−4):3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン[商品名「OXT−211」、東亞合成(株)製]
【0115】
<着色剤(D)>
(D−1):平均一次粒子径56nmのカーボンブラック[商品「Special Black 250」、デグサ(株)製)
(D−2):平均一次粒子径150nmのカーボンブラックのMEK分散液[商品「MHIブラック♯273」、御国色素(株)製、固形分濃度:18重量%)
<金属酸化物粉末(E)>
(E−1):平均一次粒子径240nmの酸化チタン粒子[商品名「PF−736」、石原産業(株)製]
<分散剤(F)>
(F−1):高分子分散剤(酸価:15mgKOH/g、重量平均分子量:3,900)[商品名「Solsperse 32000」、Lubrizol(株)製]
(F−2):高分子分散剤(酸価:45mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g、重量平均分子量約50,000)[商品名「Solsperse 36000」、Lubrizol(株)製]
<増感剤(G)>
(G−1):9,10−ジブトキシアントラセン[商品面「アントラキュア UVS−1331」、川崎化成工業(株)製]
【0116】
表1〜2の結果から、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物(Z)は、比較例の比較用活性エネルギー線硬化性組成物と比較して、硬化性に優れる。
また、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物(Z)の硬化物は、比較例の比較用活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物と比較して、基材密着性に優れており、深部硬化性も十分であることがわかる。また、耐汚染性にも優れることがわかる。
耐汚染性のメカニズムは、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物の塗膜表面が微細な凹凸構造をしており、ハスの葉が示す超撥水性能(ロータス効果)と同様の効果が発現したものと推定している。
微細な凹凸構造は、塗膜表面と塗膜内部の硬化速度差に起因する、体積収縮速度差によるものである。通常の方法では硬化速度差が大きく、粗大な凹凸構造ができるので、ロータス効果は発現しない。一方、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物では、硬化速度差が小さく、ロータス効果を示すのに理想的な微細な凹凸構造ができると推定している。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物(Z)は、着色剤及び/又は金属酸化物を含有しているが、厚膜の場合であっても、活性エネルギー線照射時の硬化性に優れ、硬化させてなる硬化物は、基材密着性に優れることから、コーティング剤、インキ(UV印刷インキ及びUVインクジェット印刷インキ等)、塗料、接着剤及びセラミック電子部品製造用の材料として極めて有用である。